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【発明の名称】 ピアノのアクション部品
【発明者】 【氏名】吉末 健治

【氏名】阿部 岐令

【要約】 【課題】合成樹脂が有する利点を保ちながら、より高い剛性を有し、それにより、同等のピアノの音量をより小さな押鍵エネルギーで得ることができるとともに、アクションの応答性を向上させることができるピアノのアクション部品を提供する。

【解決手段】鍵52の押鍵に伴って回動することによって、鍵52の押鍵エネルギーをハンマーに伝達するためのピアノのアクション部品1であって、アクション部品1が、熱可塑性樹脂で被覆された、ペレットと同じ長さの繊維状の強化材を含む当該ペレットを射出成形することによって成形品を得る長繊維法で成形された、補強用の長繊維を含有する熱可塑性樹脂の成形品で構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵の押鍵に伴って回動することによって、前記鍵の押鍵エネルギーをハンマーに伝達するためのピアノのアクション部品であって、
当該アクション部品が、熱可塑性樹脂で被覆された、ペレットと同じ長さの繊維状の強化材を含む当該ペレットを射出成形することによって成形品を得る長繊維法で成形された、補強用の長繊維を含有する熱可塑性樹脂の成形品で構成されていることを特徴とするピアノのアクション部品。
【請求項2】
前記長繊維は炭素繊維であることを特徴とする、請求項1に記載のピアノのアクション部品。
【請求項3】
前記アクション部品は、その重量を軽減するための断面減少部を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のピアノのアクション部品。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂はABS樹脂であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載のピアノのアクション部品。
【請求項5】
前記アクション部品は、押鍵された前記鍵で突き上げられることにより回動するウィッペンであることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載のピアノのアクション部品。
【請求項6】
前記ウィッペンは、
前後方向に延びるとともに、前部と、水平軸線回りに回動自在に支持される後部と、前記前部と前記後部の間に位置し、前記前部および前記後部よりも上下方向長さが大きい中央部とを有する本体部と、
当該本体部の前記中央部から下方に突出し、前記本体部の前記前部および前記後部に、斜め直線状または曲線状の下面を有する移行部を介して連続し、前記鍵によって突き上げられるヒール部と、
前記本体部および前記ヒール部の少なくとも一方に設けられ、その重量を軽減するための凹部と、
を備えることを特徴とする、請求項5に記載のピアノのアクション部品。
【請求項7】
前記本体部の前記前部および前記後部の少なくとも一方が、斜め直線状または曲線状の上面を有する移行部を介して前記本体部の前記中央部に連続していることを特徴とする、請求項6に記載のピアノのアクション部品。
【請求項8】
前記ヒール部は、その剛性を補強するための肉厚補強部を有することを特徴とする、請求項6または7に記載のピアノのアクション部品。
【請求項9】
前記ウィッペンは、
前後方向に延び、後端部において水平軸線回りに回動自在に支持された本体部と、
当該本体部から下方に突出し、前記本体部に連なる前面および背面の少なくとも一方が斜め直線状または曲線状に形成されたヒール部と、
前記本体部および前記ヒール部の少なくとも一方に設けられ、その重量を軽減するための凹部と、
を備えることを特徴とする、請求項5に記載のピアノのアクション部品。
【請求項10】
前記凹部が前記本体部および前記ヒール部にわたって連続的に設けられていることを特徴とする、請求項6または9に記載のピアノのアクション部品。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵の押鍵に伴って回動することによって、鍵の押鍵エネルギーをハンマーに伝達するためのピアノのアクション部品に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、グランドピアノのアクション部品の1つであるウィッペンは、木材で構成され、後端部(以下、演奏者から見て先方側を後部とする)を中心として回動自在に取り付けられ、鍵の後部に載置されており、押鍵された鍵で突き上げられることによって上方に回動し、ジャックなどの他のアクション部品を連動させることで、ハンマーを上方に回動させることにより、上方に張られた弦を打弦させる。その後、ウィッペンは、重力によって上方から下方に回動し、鍵の後部に当接し、それにより、次の押鍵態勢がとられる。このように、ウィッペンは、鍵の押鍵エネルギーをハンマーに伝達する主要なアクション部品である。さらに、アクションがその一部であるウィッペンを介して鍵に載置される関係上、アクションの重さは、鍵のタッチ重さと密接に関係しており、この鍵のタッチ重さが、鍵の前部に取り付けられた鍵重りとアクションの重さとのバランスによって調整される。
【0003】
また、上述したようなウィッペンとして、従来、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この特許文献1では、ウィッペンの重量を大きくするために、ウィッペンが金属や合成樹脂で構成されるか、あるいは、ウィッペンに重りが取り付けられている。この構成により、ウィッペンの重量を大きくすることで、上方に回動したウィッペンの下降を早め、速やかに鍵に当接させるようにしている。
【0004】
上述したように、ウィッペンは押鍵エネルギーを伝達する役割を担う。ウィッペンが一般に木材で構成されるのは、木材が、軽量でかつ剛性が高いという特性を有するので、押鍵エネルギーを伝達するという役割に適しているからである。しかし、木材は、例えば合成樹脂と比較し、加工精度が低いので、アクションの作製時の調整作業が煩雑になるだけでなく、乾湿による寸法変化が大きいので、他のアクション部品との位置関係がずれやすいことから、アクションの動作を正常に維持するのが難しい。
【0005】
一方、ウィッペンを合成樹脂で構成した場合には、木材で構成した場合の上述したような不具合はないものの、木材よりも剛性が低いので、木材の場合と比較して、ハンマーの回動速度が遅くなり、その結果、同等の音量を得るために、大きな押鍵エネルギーが必要になってしまう。また、木材の場合と比較して、合成樹脂は比重が大きいので、ウィッペンの動きが鈍くなり、応答性が低下してしまい、その結果、打弦タイミングが遅くなってしまう。さらに、比重がより大きいことにより、ウィッペンを含むアクション全体の重さが大きいので、同様のタッチ重さを得るために、前述した鍵重りを余分に取り付けなければならない。
【0006】
また、ウィッペンを金属で構成した場合には、合成樹脂と同様、木材で構成した場合の不具合はないものの、金属は、合成樹脂の場合と比較して、さらに比重が大きいので、上述した打弦タイミングの遅れおよび鍵重りの増加が顕著になってしまう。このことは、ウィッペンに重りを取り付けた場合にも同様である。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、合成樹脂が有する利点を保ちながら、より高い剛性を有し、それにより、同等のピアノの音量をより小さな押鍵エネルギーで得ることができるとともに、アクションの応答性を向上させることができるピアノのアクション部品を提供することを目的とする。
【0008】
【特許文献1】実開昭62−146194号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため、請求項1による発明は、鍵の押鍵に伴って回動することによって、鍵の押鍵エネルギーをハンマーに伝達するためのピアノのアクション部品であって、アクション部品が、熱可塑性樹脂で被覆された、ペレットと同じ長さの繊維状の強化材を含む当該ペレットを射出成形することによって成形品を得る長繊維法で成形された、補強用の長繊維を含有する熱可塑性樹脂の成形品で構成されていることを特徴とする。
【0010】
上述した構成によれば、アクション部品は、長繊維法で成形された、補強用の長繊維を含有する熱可塑性樹脂の成形品で構成されている。この長繊維法は、熱可塑性樹脂で被覆した同じ長さの繊維状の強化材を含むペレットを射出成形することによって、成形品を得るものである。この長繊維法によれば、成形品中に、例えば0.5mm以上の長さを有する比較的長い繊維状の強化材が含有される。したがって、本発明のアクション部品は、比較的長い補強用の長繊維を含有するので、合成樹脂のみで構成したアクション部品と比較して、非常に高い剛性を得ることができる。それにより、鍵によって突き上げられた際のアクション部品の変形による押鍵エネルギーの伝達ロスを低減できるので、ハンマーの回動速度を高めることができる。したがって、同等のピアノの音量をより小さな押鍵エネルギーで得ることができる。また、熱可塑性樹脂によってアクション部品を構成するので、加工精度および寸法安定性が高いという合成樹脂の利点を得ることができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のピアノのアクション部品において、長繊維は炭素繊維であることを特徴とする。
【0012】
アクション部品の可動部分にほこりが付着すると、アクション部品の動きが鈍くなり、それにより、アクションの応答性が低下するおそれがある。また、一般に、炭素繊維は、他の補強用の長繊維、例えばガラス繊維よりも導電性が高い。したがって、上記のように、そのような炭素繊維を、アクション部品を構成する熱可塑性樹脂に含有した補強用の長繊維として用いることによって、アクション部品の導電性を高め、その帯電性を低減することができる。それにより、アクション部品にほこりが付着するのを抑制することができるので、アクション部品の動きおよびアクションの応答性を良好に保つことができる。また、このアクション部品へのほこりの付着の抑制により、アクションの外観を良好な状態に保つことができるとともに、アクションの調整作業などの際に、作業者の手や服が汚れるのを抑制することができる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のピアノのアクション部品において、アクション部品は、その重量を軽減するための断面減少部を有することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、アクション部品に断面減少部が設けられているので、その分、アクション部品の重量を軽減することができる。したがって、アクション部品の動きを軽快にすることができるので、アクションの応答性を向上させることができる。また、アクション部品の重量の軽減に伴い、アクション全体の重量も軽減されるので、鍵重りを削減することができる。さらに、合成樹脂のみで構成されたアクション部品では、押鍵エネルギーを十分に伝達するのに必要な剛性を確保する観点から、重量の軽減に限界がある。これに対し、本発明のアクション部品は、前述した長繊維によって非常に高い剛性を有し、剛性に余裕があるので、アクション部品の重量を軽減しても、それによる剛性への影響度合は非常に小さい。したがって、アクション部品の重量の軽減を積極的に図ることが可能になり、上記の断面減少部による断面減少によって、アクション部品を最大限に軽量化することが可能になる。その結果、アクション部品の軽量化と高剛性を両立することができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載のピアノのアクション部品において、熱可塑性樹脂はABS樹脂であることを特徴とする。
【0016】
一般に、アクション部品には他の部品が固定されることが多い。一方、ABS樹脂は、熱可塑性樹脂の中でも高い接着性を有する。したがって、アクション部品を構成する熱可塑性樹脂として、上記のようにABS樹脂を用いることによって、アクション部品に他の部品を接着剤で容易に接着でき、アクションの組立性を向上させることができる。
【0017】
また、一般に、炭素繊維などの強化材を含有した熱可塑性樹脂を射出成形する場合、そのメルトフローレートが大きいと、熱可塑性樹脂の金型内への流入速度が大きくなるために、強化材が成形品中に特定の方向に並びやすいことで、成形品の剛性に異方性が生じやすい。また、ABS樹脂は、ゴム状重合体を含む熱可塑性樹脂であり、そのメルトフローレートは小さい。したがって、アクション部品を前述したようにABS樹脂で構成することによって、アクション部品の剛性の異方性を抑制できるので、高い剛性を安定して得ることができる。さらに、ABS樹脂がもつ延性によって、アクション部品の衝撃強度を高めることができる。
【0018】
請求項5に係る発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載のピアノのアクション部品において、アクション部品は、押鍵された鍵で突き上げられることにより上方に回動するウィッペンであることを特徴とする。
【0019】
ウィッペンは、鍵で直接、突き上げられることにより回動し、それにより、他のアクション部品を介して、押鍵エネルギーをハンマーに伝達する機能をもつ主要なアクション部品である。したがって、上記のように本発明をウィッペンに適用することによって、その剛性が非常に高められることで、鍵で突き上げられたときの変形を抑制でき、その結果、押鍵エネルギーの伝達効率をさらに高めることができ、請求項1による前述した作用をより良く、かつ効果的に得ることができる。また、ウィッペンは、他のアクション部品を連動させることで、ハンマーを回動させ、打弦を行わせるものであるので、ウィッペンに前述した断面減少部が設けられた場合には、その重量の軽減により、その動きを軽快にすることができる。
【0020】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載のピアノのアクション部品において、ウィッペンは、前後方向に延びるとともに、前部と、水平軸線回りに回動自在に支持される後部と、前部と後部の間に位置し、前部および後部よりも上下方向長さが大きい中央部とを有する本体部と、本体部の中央部から下方に突出し、本体部の前部および後部に、斜め直線状または曲線状の下面を有する移行部を介して連続し、鍵によって突き上げられるヒール部と、本体部およびヒール部の少なくとも一方に設けられ、その重量を軽減するための凹部と、を備えることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、前後方向に延びるウィッペンは、ヒール部が鍵で突き上げられることによって、後部を中心として水平軸線回りに回動する。このため、ヒール部およびこれに連なる本体部の中央部は、鍵の突き上げ力による曲げ荷重が直接、作用することによって、特に変形しやすい。これに対して、本発明によれば、本体部の上下方向の長さが前部および後部よりも大きいことと、ヒール部が斜め直線状または曲線状の下面を有する移行部を介して前部および後部に連続していて、ヒール部と本体部の境界部において、ウィッペンの断面が徐々に変化していることにより、ウィッペンの曲げ剛性を高め、中央部とヒール部を合わせた剛性をより大きくすることで、鍵で突き上げられたときの変形を抑制できるので、押鍵エネルギーの伝達効率をさらに高めることができる。また、上記のように境界部においてウィッペンの断面が徐々に変化しているので、鍵の突き上げ力が作用したときの境界部での応力集中、およびそれによるウィッペンへの悪影響を回避することができる。
【0022】
さらに、本体部および/またはヒール部に凹部(肉盗み)が設けられているので、その分、ウィッペンの重量を軽減することができ、それにより、その動きを軽快にすることができる。また、本発明のウィッペンは非常に高い剛性を有するので、前述した断面減少部と同様、凹部による断面減少によって、ウィッペンを最大限に軽量化することが可能になる。
【0023】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載のピアノのアクション部品において、本体部の前部および後部の少なくとも一方が、斜め直線状または曲線状の上面を有する移行部を介して本体部の中央部に連続していることを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、ウィッペンの本体部の前部および/または後部が、斜め直線状または曲線状の移行部を介して本体部の中央部に連続していて、前部および/または後部と中央部との境界部において、ウィッペンの断面が徐々に変化しているので、境界部の剛性を高めることができるとともに、境界部での応力集中を回避することができる。
【0025】
請求項8に係る発明は、請求項6または7に記載のピアノのアクション部品において、ヒール部は、その剛性を補強するための肉厚補強部を有することを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、鍵によって突き上げられるヒール部が肉厚補強部によって補強されているので、変形しやすいヒール部の剛性を特に補強することができる。
【0027】
請求項9に係る発明は、請求項5に記載のピアノのアクション部品において、ウィッペンは、前後方向に延び、後端部において水平軸線回りに回動自在に支持された本体部と、本体部から下方に突出し、本体部に連なる前面および背面の少なくとも一方が斜め直線状または曲線状に形成されたヒール部と、本体部およびヒール部の少なくとも一方に設けられ、その重量を軽減するための凹部と、を備えることを特徴とする。
【0028】
この構成によれば、ウィッペンの本体部に連なるヒール部の前面および/または背面が、斜め直線状または曲線状に形成されていて、ヒール部と本体部の境界部において、ヒール部からその前後に向かってウィッペンの断面、すなわち剛性が徐々に減少している。したがって、断面が急激に減少する従来の場合と比較して、境界部の剛性を高めることができる。さらに、上記のようにヒール部と本体部の境界部において、ウィッペンの断面が徐々に変化しているので、鍵の突き上げ力が作用したときの境界部での応力集中、およびこれに起因する不具合を回避することができる。また、本体部および/またはヒール部に凹部が設けられているので、その分、ウィッペンの重量を軽減することができる。
【0029】
請求項10に係る発明は、請求項6または9に記載のピアノのアクション部品において、前記凹部が前記本体部および前記ヒール部にわたって連続的に設けられていることを特徴とする。
【0030】
この構成によれば、ウィッペンの広範囲にわたって凹部が設けられているので、ウィッペンの軽量化を十分に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図3は、本発明の第1実施形態によるウィッペン1(アクション部品)を含むグランドピアノのアクション51を、鍵52の離鍵状態において示している。このアクション51は、前後方向(同図の左右方向)に延び、鍵52の後部(同図の左部)にキャプスタンスクリュー60を介して載置されたウィッペン1と、ウィッペン1に回動自在に取り付けられたレペティションレバー53およびジャック54とを備えている。ウィッペン1は、後端部において、ウィッペンフレンジ58に水平軸線回りに回動自在に支持されている。さらに、レペティションレバー53の前部には、シャンクローラ55を介してハンマー56が載置されている。また、鍵52の前部には、タッチ重さを調整するための鍵重り(図示せず)が取り付けられている。
【0032】
この離鍵状態から、鍵52が押鍵されると、ウィッペン1が突き上げられることにより、レペティションレバー53およびジャック54がウィッペン1と一緒に上方に回動する。そして、回動したジャック54がシャンクローラ55を介してハンマー56を突き上げることによって、ハンマー56が弦Sを打弦する。
【0033】
ウィッペン1は、長繊維法で成形されており、以下に述べるようなペレットを用いて射出成形することによって成形される。このペレットは、炭素繊維で構成されたロービングを、所定の張力を加えた状態で揃えながら、ゴム状重合体を含む熱可塑性樹脂である、例えばABS樹脂を押出機で押し出したもので被覆することによって成形される。これにより、ペレットの成形時に、炭素繊維のロービングを折ることなく、ペレットに含有させることができるので、ペレットには、それと等しい長さの炭素繊維が含まれる。本実施形態では、ペレットの長さは5〜15mmに設定されており、それにより、このペレットを用いて射出成形されたウィッペン1には、0.5〜2mmの長さの炭素繊維が含有される。なお、上記のゴム状重合体のメルトフローレートは、比較的小さな値に設定されており、例えば230℃、2.16kg荷重の試験条件で0.1〜50g/10分の範囲に設定されている。
【0034】
ウィッペン1は、図1に示すような側面形状を有しており、前後方向に延びる本体部2と、この本体部2の下側に連続し、鍵52によって突き上げられるヒール部3を備えている。ウィッペン1の左右方向の厚さは、後述する凹部以外の部分では、所定の大きさ(例えば9.6mm)に設定されている。また、ウィッペン1の全体の重量は約10gである。
【0035】
本体部2は、前側から順に、前部6、中央部8および後部7に区分されており、前部6および後部7は、断面が基本的に矩形状に形成されている。前部6は、所定の一定の高さH2(上下方向長さ)を有し、前後方向に延びている。後部7は、前後方向に延びており、所定の高さH2とほぼ同じ所定の高さH3(上下方向長さ)を有し、その中間部は一段低く形成されており、それよりも後ろ側は、斜め上方に若干延びた後、水平な後端部になっている。中央部8の高さH1(上下方向長さ)は、前部6および後部7の高さH2およびH3よりも大きく設定されている。また、中央部8の後ろよりの部分には、レバー取付部8aが上方に突出するように一体に設けられている。さらに、中央部8と前部6および後部7との上部間は、移行部8eおよび8fをそれぞれ介して連続している。前側の移行部8eの上面は、前部6から中央部8に向かって斜め上方に、かつ外向きに若干凸に湾曲した状態で曲線状に延びている。一方、後ろ側の移行部8fの上面は、後部7から中央部8に向かって斜め上方に、かつ内向きに若干凸に湾曲した状態で曲線状に延びている。
【0036】
ヒール部3は、中央部8から下方に突出しており、ヒール部3と前部6および後部7との下部間は、移行部3aおよび3bをそれぞれ介して連続している。前側の移行部3aの下面は、前部6からヒール部3に向かって斜め下方に、かつ内向きに若干凸に湾曲した状態で曲線状に延びている。一方、後ろ側の移行部3bの下面は、後部7からヒール部3に向かって斜め下方に、かつ内向きに若干凸に前側の移行部3aよりも緩やかに湾曲した状態で曲線状に延びている。また、ヒール部3の底面の中央部には、若干へこんだキャプスタンスクリュー当接部3cが形成されており、この部分がキャプスタンスクリュー60に当接している。
【0037】
ウィッペン1の左右の側面には、重量を軽減するための複数の凹部(断面減少部)、すなわち前凹部11、後ろ凹部12、上凹部13、および中央凹部14(いずれも一方のみ図示)が、それぞれ互いに対応するように形成されている。各凹部は、ウィッペン1の射出成形時に一体に形成される。また、上凹部13以外の凹部11、12および14の深さは、互いに同じ値に設定されており、具体的には、ウィッペン1の成形をすることが可能な厚みの下限値(例えば1mm)に設定されている。
【0038】
前凹部11は、前部6の前後方向の中央部から前側の移行部3aにわたり、所定の幅の外縁部を残して前後方向に延びている。
【0039】
後ろ凹部12は、後部7の後端部の手前の部分から後ろ側の移行部8fにわたり、所定の幅の外縁部を残して前後方向に延びている。
【0040】
上凹部13は、レバー取付部8aの下端部に配置され、レバー取付部8aの外面に沿い、かつ上述した後ろ凹部12および中央凹部14から間隔を隔てるようにほぼ三角状に形成されている。
【0041】
中央凹部14は、中央部8からヒール部3の全体にわたって連続するとともに、ヒール部3の下面、ならびに移行部3a、3bおよび8eなどの外面から所定の幅の外縁部を残すように形成されている。
【0042】
中央凹部14の下部には、キャプスタンスクリュー当接部3cの真上の位置に、ヒール部3の剛性を補強するための肉厚補強部15が形成されている。この肉厚補強部15は、ウィッペン1の射出成形時に一体に形成される。また、肉厚補強部15は、全体として円錐状になっており、その頂点を上にした状態で中央凹部14の底面から左右両側に側方に突出しており、その最も突出した部分がヒール部3の側面と面一になっている。
【0043】
なお、図2に示すように、前部6の前側は、従来のウィッペンと同様、左右に二股に分岐したジャック取付部6aになっており、各分岐部に、ジャック54を取り付けるためのジャック取付孔6bが左右方向に貫通するように形成されている。このジャック取付孔6bには、ジャック54を支持するピンが通されるブッシングクロス(いずれも図示せず)が接着剤を用いて貼り付けられる。また、前部6の上面には、ジャック取付部6aよりも後ろ側に、上下方向に貫通するスプーン取付孔6cが形成されている。このスプーン取付孔6cに、スプーン57(図3参照)が圧入される。
【0044】
さらに、レバー取付部8aは、左右に二股に分岐しており、各分岐部の上端部および中央部にはそれぞれ、レペティションレバー53を取り付けるためのレバー取付孔8b、およびレペティションスプリング61(図3参照)を取り付けるためのスプリング取付孔8cが、左右方向に貫通するように形成されている。このレバー取付孔8bにも、ブッシングクロス(図示せず)が接着剤を用いて貼り付けられる。
【0045】
また、後部7の後端部には、左右方向に貫通する被支持孔7aが形成されている。ウィッペン1は、被支持孔7aに通されたセンターピンを介して、ウィッペンフレンジ58(図3参照)に回動自在に支持される。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、ウィッペン1は、0.5〜2mmの長さを有する比較的長い炭素繊維を補強用の長繊維として含有するので、非常に高い剛性を得ることができる。また、本体部2の中央部8の高さH1が、前部6および後部7の高さH2およびH3よりも大きく設定されていることによって、中央部8の剛性が高められる。さらに、ヒール部3が曲線状の移行部3aおよび3bを介して、中央部8が曲線状の移行部8eおよび8fを介して、前部6および後部7にそれぞれ連続していて、これらの境界部において、その前後に向かってウィッペン1の断面、すなわち剛性が徐々に減少しており、この境界部の剛性が高められる。また、ヒール部3の肉厚補強部15により、ヒール部3の剛性が高められる。以上により、ウィッペン1が非常に高い剛性を有するので、押鍵エネルギーの伝達ロスの低減によって、ハンマー56の回動速度を高めることができ、したがって、同等のピアノの音量をより小さな押鍵エネルギーで得ることができる。
【0047】
また、補強用の長繊維として炭素繊維を含有するので、ウィッペン1にほこりが付着するのを抑制することができ、したがって、ウィッペン1の動きおよびアクション51の応答性を良好に保つことができる。さらに、ウィッペン1へのほこりの付着の抑制により、アクション51の外観を良好な状態に保つことができるとともに、アクション51の調整作業などの際に、作業者の手や服が汚れるのを抑制することができる。また、熱可塑性樹脂によってウィッペン1が構成されるので、加工精度および寸法安定性が高いという合成樹脂の利点を得ることができる。さらに、ウィッペン1が高い接着性を有するABS樹脂で構成されているので、ウィッペン1のジャック取付孔6bおよびレバー取付孔8bに、前述したブッシングクロスを接着剤で容易に固定できるなど、アクション51の組立性を向上させることができる。
【0048】
また、移行部3a、3b、8eおよび8fによって、ヒール部3と本体部2の境界部ならびに前部6および後部7と中央部8の境界部において、ウィッペン1の断面が緩やかに変化しているので、鍵52の突き上げ力が作用したときの各境界部での応力集中、およびそれによるウィッペン1への悪影響を回避することができる。
【0049】
さらに、前述したように、凹部11〜14が、ウィッペン1の側面に最大限の大きさで配置され、かつその深さも最大限に設定されているので、ウィッペン1の大幅な軽量化によって、ウィッペン1の動きを軽快にすることができる。したがって、打弦タイミングが早められるなど、押鍵に対するアクション51の応答性を向上させることができる。また、ウィッペン1の軽量化に伴って、アクション51全体の重量も軽減できるので、鍵重りを削減することができる。
【0050】
さらに、中央凹部14、前凹部11、後ろ凹部12および上凹部13が互いに連続しておらず、独立していて、それらの境界部が肉厚のリブ状に形成されているので、この境界部の剛性を確保することができる。
【0051】
また、ウィッペン1を構成するABS樹脂に含まれるゴム状重合体のメルトフローレートが比較的小さいので、炭素繊維が成形品中に特定の方向に並ぶのを抑制できるので、ウィッペン1の剛性に異方性が生じるのを抑制することができ、したがって、ウィッペン1の高い剛性を安定して得ることができる。さらに、ABS樹脂の延性によって、ウィッペン1の衝撃強度を高めることができる。
【0052】
図4は、以上のようにして構成されたウィッペン1を用いた場合の、および木材で構成したウィッペンを用いた場合の鍵52の押鍵速度KV(m/s)とハンマー56の回動速度HV(m/s)の関係を、実線および一点鎖線でそれぞれ示したものである。同図に示すように、ウィッペン1を用いた場合の方が、木材で構成した場合よりも、押鍵速度KVに対するハンマー56の回動速度HVが若干大きい。このように、前述したウィッペン1の剛性の向上によって、木材と同等またはそれ以上の剛性を有するウィッペン1を得ることができた。
【0053】
一般に、鍵の強打時の音量は、ハンマーの回動速度が大きいほどより大きくなる。また、ハンマーの回動速度は、鍵の押鍵速度、すなわち鍵の押鍵エネルギーが大きいほどより大きくなり、鍵の押鍵エネルギーが非常に大きくなると、限界に達し、飽和状態になる。以上の関係から、ハンマーの回動速度の飽和値が低ければ、鍵を強く押鍵しても、ピアノの音量が十分に得られなくなるため、そのようなピアノでは、音楽的な表現力が乏しくなってしまう。一方、ハンマーの回動速度の飽和値は、ウィッペンの剛性が高いほどより大きい。これに対して、本発明のウィッペン1は、上記のように、木材で構成したものと比較して、高い剛性が得られるので、ハンマー56の回動速度HVの飽和値を大きくすることができ、したがって、豊かな音楽的表現を実現することができる。
【0054】
図5および図6は、本発明の第2実施形態によるウィッペン20(アクション部品)を示している。同図において、第1実施形態のウィッペン1と同じ構成の部分については、同じ符号を用いて示している。本実施形態のウィッペン20は、第1実施形態と比較して、その側面形状、およびウィッペン20の重量を軽減するための凹部35(断面減少部)の構成が、主に異なるものである。
【0055】
ウィッペン20の上面は、前部6の後端部から斜め上がりに後方に、かつ内向きに若干凸に湾曲した状態で延びた後、水平に延び、レバー取付部8aに連続している。また、ウィッペン20の上面のレバー取付部8aよりも後ろ側の形状は、上述した前側の部分と対称になっている。レバー取付部8aの各分岐部の下端部には、前述した上凹部13に代えて、重量を軽減するための断面減少孔30(一方のみ図示)(断面減少部)が、左右方向に貫通するように形成されている。
【0056】
ヒール部22は、前部6の後端部からほぼ垂直に下方に延びる前面22aと、その前面22aの下端から斜め下がりに後方に若干延びる前斜面22bと、前斜面22bの下端から段部を経て凸状に水平に延びる底面22cと、底面22cの後端から段部を経て斜め上がりに後方に若干延びる後ろ斜面22dと、後ろ斜面22dの後端から斜め上がりに若干湾曲して延びる背面22eとによって取り囲まれた側面形状を有している。前後の斜面22bおよび22dの形成により、前面22aおよび背面22eと底面22cとを単純につないだ場合と比較して、断面が減少され、その分、軽量化を図ることができる。
【0057】
本体部2およびヒール部22の各側面には、後部7からヒール部22の全体にわたり、所定の幅の外縁部を残すようにして、凹部35(一方のみ図示)が形成されている。各凹部35の深さは、前述した第1実施形態の中央凹部14などと同じ値に設定されている。
【0058】
また、凹部35には、中央部8からヒール部22にわたって、左右方向に貫通する計9つの断面減少孔31(断面減少部)が形成されている。具体的には、これらの断面減少孔31は、凹部35の上部でレバー取付部8aの下側に2つ、中央部に4つ、下部に3つ形成され、前後方向に等間隔にそれぞれ配置されており、また、全体として千鳥状に配置されている。
【0059】
以上のように、凹部35が、第1実施形態の中央凹部14などと同じ深さに設定されているとともに、後部7からヒール部22の全体にわたって形成されていること、さらに、断面減少孔30および31が形成されていることによって、ウィッペン20を最大限に軽量化することができる。
【0060】
図7および図8は、本発明の第3実施形態によるウィッペン70(アクション部品)を示している。同図において、第1実施形態のウィッペン1と同じ構成の部分については、同じ符号を用いて示している。本実施形態のウィッペン70は、第1実施形態と比較して、その側面形状、およびウィッペン70の重量を軽減するための凹部(断面減少部)の構成が、主に異なるものである。
【0061】
レバー取付部71aは、その前面および背面の形状のみが第1実施形態のものと異なっており、具体的には、前面が、内向きに凸に湾曲した湾曲面を介して中央部71の上面に連続し、背面が、直線状に延びる斜面を介して中央部71の上面に連続している。
【0062】
中央部71は、前部6および後部7よりも大きな所定の高さH4(上下方向長さ)を有し、下方に突出している。ヒール部72は、上下方向にほぼ直線状に延びる前面72aおよび背面72bと、前面72aと背面72bの下端間に前後方向に延びる底面72dとによって囲まれた側面形状を有している。ヒール部72の底面72dは、中央の若干へこんだキャプスタンスクリュー当接部72cを中心として前後対称に形成されており、前面72aおよび背面72bの下端よりも若干上方の位置から中心に向かって斜めに延びている。
【0063】
また、ヒール部72の前面72aは、直線状に延びる前斜面71b(移行部)を介して、前部6の下面と連続している。ヒール部72の背面72bは、直線状に延びる後斜面71c(移行部)を介して、後部7の下面と連続している。ヒール部72と中央部71との間の境界部には、下内リブ81が前後方向に水平に延びるように形成され、下内リブ81の前端部および後端部が、前斜面71bおよび後斜面71cとそれぞれ連続している。
【0064】
また、凹部は、本体凹部75、レバー凹部76およびヒール凹部77によって構成されている。この本体凹部75は、前部6の後ろ寄りの部分と後部7の中間部との間にわたって、前後方向に長く延びている。また、本体凹部75は、本体部2の上面および下面に沿う外リブ82と、下内リブ81によって取り囲まれた形状を有し、外凹部75aと中央凹部75bで構成されている。
【0065】
中央凹部75bは、前後方向に延びており、上底辺が下底辺よりも長い逆台形状を有し、上底辺および下底辺は、中央部71の上面と平行に延び、残りの二つの斜辺は、前斜面71bおよび後斜面71cとそれぞれ平行に延びている。中央凹部75bは、以上のような形状を有するとともに、その外側の本体凹部75の残りの部分が、外凹部75aとなっている。図9に示すように、外凹部75aの深さは、第1所定値W1(例えば3.3mm)に設定され、中央凹部75bの深さは、第1所定値W1よりも大きな、第2所定値W2(例えば3.4mm)に設定されている。
【0066】
レバー凹部76は、レバー取付部71aの下部に配置されており、所定の形状を有している。具体的には、本体凹部75とレバー取付部71aとの間の境界部に、上内リブ83が前後方向に水平に延びるように形成されており、レバー凹部76は、レバー取付部71aの上内リブ83とスプリング取付孔8cとの間に、その全体にわたって設けられており、その上部の輪郭は、上方に凸に湾曲して後方に延びる形状になっている。また、レバー取付部71aの前面および背面のそれぞれのリブの厚さは、上内リブ83よりも若干薄い。レバー凹部76の深さは、後述するヒール凹部77と同じ第3所定値W3に設定されている。
【0067】
ヒール凹部77は、下内リブ81と、ヒール部72の前面72a、底面72dおよび背面72bとによって取り囲まれた形状を有している。図9に示すように、ヒール凹部77の深さは、第3所定値W3(例えば3.3mm)に設定されている。
【0068】
また、ヒール凹部77には、第1実施形態と同様、キャプスタンスクリュー当接部72cの真上の位置に、ヒール部72の剛性を補強するための肉厚補強部85が形成されている。この肉厚補強部85は、全体としてほぼ円錐台状の形状を有し、ヒール凹部77の上下方向の全体にわたって設けられ、左右両側に側方に突出していて、その最も突出した部分がヒール部72の側面と面一になっている。
【0069】
以上のように、本体部2の両側面の広い範囲にわたって本体凹部75が形成されるとともに、これに加えて、ヒール部72にヒール凹部77が、レバー取付部71aにレバー凹部76が形成されるので、ウィッペン70の軽量化を十分に達成することができる。また、第1実施形態と同様、中央部71の高さH4が前部6および後部7よりも大きいことによって、中央部71の剛性が高められる。さらに、ヒール部72の肉厚補強部85によって、ヒール部72の剛性が高められる。また、前述したように、ウィッペン70には、そのヒール部72が鍵52で突き上げられることによって被支持孔7aを中心として水平軸線回りに回動するため、曲げ荷重が加わり、曲げ応力が発生する。この曲げ応力は、一般的に、ウィッペン70の中央側で小さく、外側で大きい。これに対して、本実施形態によれば、本体凹部75の深さが、中央凹部75bでは大きく、外凹部75aではより小さく設定されているので、上記の曲げ応力の分布に合致した高い剛性を過不足なく得ることができる。以上により、ウィッペン70の高剛性と軽量化をバランスよく両立させることができる。
【0070】
また、本体凹部75の外凹部75aと中央凹部75bが、段状に形成されているため、ウィッペン70を成形するための金型を、凹部の深さが連続的に変化するようなウィッペンの金型と比較して、容易に作製することができる。
【0071】
図10〜図12は、本発明の第4実施形態によるウィッペン90(アクション部品)を示している。同図において、第1実施形態のウィッペン1と同じ構成の部分については、同じ符号を用いて示している。本実施形態のウィッペン90は、第1実施形態と比較して、その側面形状、およびウィッペン90の重量を軽減するための凹部の構成が、主に異なるものである。
【0072】
レバー取付部91aの下端部は、第1実施形態のそれと異なり、二股に分岐しておらず、その側面形状がほぼ台形状になっている。また、レバー取付部91aの下端部の前面および背面は、内向きに凸に湾曲しており、本体部2の中央部91および後部92にそれぞれ連続している。
【0073】
後部92の被支持孔7aが設けられている部分は、後述する凹部を除いた他の部分よりも薄くなっており、この部分よりも前側および後ろ側の付近の部分は、これに向かってテーパ状に形成されている(図10(a)参照)。
【0074】
ヒール部93は、前面93a、背面93b、およびこれらの下端間に前後方向に延びる底面93cによって囲まれた側面形状を有している。ヒール部93の前面93aは、本体部2の前部6の後端から後側に向かって斜め下方に、かつ内向きに若干凸に緩やかに湾曲した状態で曲線状に延びた後、ほぼ直線状に下方に若干延びている。ヒール部93の背面93bは、前面93aとほぼ対称になっており、後部92の前端から前側に向かって斜め下方に、かつ内向きに若干凸に緩やかに湾曲した状態で曲線状に延びた後、ほぼ直線状に下方に若干延びている。ヒール部93の底面93cは、中央の若干へこんだキャプスタンスクリュー当接部93dを中心として前後対称に形成されており、前面93aおよび背面93bの下端よりも若干上方の位置から中心に向かって斜めに延びている。
【0075】
凹部(断面減少部)は、本体凹部94およびレバー凹部95によって構成されている。この本体凹部94は、一定の深さ(例えば3.8mm)を有しており、後部92の被支持孔7aが設けられている部分を除き、本体部2およびヒール部93の外面から所定の幅の外縁部を残して、前部6の後ろ寄りの部分から、中央部91、ヒール部93および後部92の全体にわたって連続するように形成されている。
【0076】
また、本体凹部94の前端部には、前述したスプーン取付孔6cに対応する部分に、この部分の剛性を補強するための補強部96が形成されている。この補強部96は、全体として上下方向に延びる円柱状になっており、左右両側に側方に突出している。また、図11および図12に示すように、補強部96は、その中心に沿ってスプーン取付孔6cが延びるようにするため、前部6の上面付近の演奏者から見て右よりの位置から、左前方に向かって斜めに延びるように形成されている。このため、補強部96は、左側面側よりも右側面側の方が大きく突出しており、その最も突出した部分が前部6の右側面と面一になっている。
【0077】
レバー凹部95は、レバー取付部91aの下端部に配置され、レバー取付部91aの外面に沿い、かつ上述した本体凹部94から間隔を隔てるようにほぼ台形状に形成されている。また、レバー凹部95は、一定の深さを有しており、この深さは、本体凹部94よりも若干大きい所定値(例えば4.0mm)に設定されている。
【0078】
以上のように、本体部2に連なるヒール部93の前面93aおよび背面93bが曲線状に形成されているので、ヒール部93と本体部2の境界部の剛性を高めることができるとともに、鍵の突き上げ力が作用したときの境界部での応力集中、およびこれに起因する不具合を回避することができる。また、本体部2およびヒール部93の両側面の広い範囲にわたって連続するように本体凹部94が形成されるとともに、これに加えて、レバー取付部91aにレバー凹部95が形成されているので、ウィッペン90の軽量化を十分に達成することができる。
【0079】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明をグランドピアノのアクションのウィッペンに適用したが、本発明はこれに限らず、グランドピアノのウィッペン以外のアクション部品、およびアップライトピアノのウィッペンを含めたアクション部品に適用することが可能である。その場合に、ウィッペン以外のアクション部品の中でも、ハンマー56への押鍵エネルギーの伝達に関わる部品、例えばジャック54などに本発明を適用することによって、本発明の効果を良好に得ることができる。また、本発明を、前端部にレバースキン59(図3参照)が貼り付けられるレペティションレバー53に適用してもよく、それにより、これをABS樹脂の成形品で構成することで、上記のレバースキン59を接着剤で容易に固定でき、アクション51の組立性を向上させることができる。
【0080】
さらに、重量を軽減するための凹部として、前述した凹部11〜14などを、本体部2およびヒール部3、22、72または93に形成したが、これらのいずれか一方に形成してもよい。また、凹部11〜14などの形状および大きさは、本発明の目的である軽量化と高剛性の両立を達成できるものであれば、実施形態のものに限らず任意である。
【0081】
さらに、移行部8eおよび8fの上面を曲線状に形成したが、斜め直線状に形成してもよい。また、移行部8eおよび8fを、ウィッペン1の中央部8と前部6および後部7との境界部の双方に設けたが、一方のみに設けてもよい。さらに、肉厚補強部15の形状および大きさは、ヒール部3の剛性を補強できれば、実施形態のものに限らず任意である。また、ヒール部93の前面93aおよび背面93bの双方を、曲線状に形成したが、これらのいずれか一方のみを曲線状に形成してもよく、あるいは、これらの双方またはいずれか一方を斜め直線状に形成してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態によるウィッペンの側面図である。
【図2】図1のウィッペンの斜視図である。
【図3】図1のウィッペンを適用したアクションを含む鍵盤装置の側面図である。
【図4】図1のウィッペンおよび木材で構成されたウィッペンを用いた場合の押鍵速度とハンマーの回動速度との関係を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態によるウィッペンの側面図である。
【図6】図5のウィッペンの斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態によるウィッペンの側面図である。
【図8】図7のウィッペンの斜視図である。
【図9】図7のウィッペンのX1−X1に沿う断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態によるウィッペンの(a)平面図、および(b)左側面図である。
【図11】図10のウィッペンの斜視図である。
【図12】図10のウィッペンの右側面の一部分を示す図である。
【符号の説明】
【0083】
1 ウィッペン(アクション部品)
2 本体部
6 前部
7 後部
8 中央部
3a 移行部
3b 移行部
3 ヒール部
11 前凹部(断面減少部、凹部)
12 後ろ凹部(断面減少部、凹部)
13 上凹部(断面減少部、凹部)
14 中央凹部(断面減少部、凹部)
8e 移行部
8f 移行部
15 肉厚補強部
52 鍵
56 ハンマー
20 ウィッペン(アクション部品)
22 ヒール部
30 断面減少孔(断面減少部、凹部)
31 断面減少孔(断面減少部、凹部)
35 凹部
H1 中央部の高さ(上下方向長さ)
H2 前部の高さ(上下方向長さ)
H3 後部の高さ(上下方向長さ)
70 ウィッペン(アクション部品)
71 中央部
72 ヒール部
71b 前斜面(移行部)
71c 後斜面(移行部)
75 本体凹部(断面減少部、凹部)
75a 外凹部(断面減少部、凹部)
75b 中央凹部(断面減少部、凹部)
76 レバー凹部(断面減少部、凹部)
77 ヒール凹部(断面減少部、凹部)
85 肉厚補強部
H4 中央部の高さ(上下方向長さ)
90 ウィッペン(アクション部品)
93 ヒール部
93a ヒール部の前面(前面)
93b ヒール部の背面(背面)
94 本体凹部(断面減少部、凹部)
95 レバー凹部(断面減少部、凹部)
【出願人】 【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
【出願日】 平成19年12月3日(2007.12.3)
【代理人】 【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄


【公開番号】 特開2008−122978(P2008−122978A)
【公開日】 平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願番号】 特願2007−312926(P2007−312926)