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【発明の名称】 鍵盤楽器の鍵
【発明者】 【氏名】阿部 岐令

【氏名】釘本 英範

【要約】 【課題】鍵本体へのキャプスタンの取付け位置を前後方向の任意の位置に調整でき、それにより、鍵のタッチ重さをより広い範囲で調整することができる鍵盤楽器の鍵を提供する。

【解決手段】押鍵に伴って回動することにより、アクション21を駆動する鍵盤楽器の鍵2であって、前後方向に延び、中央において支点Sに回動自在に支持された鍵本体2aと、鍵本体2aの支点Sよりも後ろ側に、前後方向に移動自在に設けられたキャプスタン取付け部材13と、移動したキャプスタン取付け部材13を、前後方向の任意の位置において鍵本体2aに保持する取付け部材保持手段15と、キャプスタン取付け部材13に一体に設けられ、アクション21が載置されるとともに、押鍵に伴ってアクション21を突き上げるキャプスタン14と、を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押鍵に伴って回動することにより、アクションを駆動する鍵盤楽器の鍵であって、
前後方向に延び、中央において支点に回動自在に支持された鍵本体と、
前記鍵本体の前記支点よりも後ろ側に、前後方向に移動自在に設けられたキャプスタン取付け部材と、
移動した前記キャプスタン取付け部材を、前後方向の任意の位置において前記鍵本体に保持する取付け部材保持手段と、
前記キャプスタン取付け部材に一体に設けられ、前記アクションが載置されるとともに、押鍵に伴って前記アクションを突き上げるキャプスタンと、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器の鍵。
【請求項2】
前記キャプスタン取付け部材は、前記鍵本体の上面に載置されるとともに、前後方向に延びかつ上下方向に貫通する長孔を有し、
前記取付け部材保持手段は、前記長孔を介して前記鍵本体にねじ込まれ、前記キャプスタン取付け部材を前記鍵本体に固定するねじで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵。
【請求項3】
前記キャプスタン取付け部材は、前記鍵本体の上面に載置されるとともに、前後方向に貫通するねじ孔を有し、
前記鍵本体の上面の前記キャプスタン取付け部材よりも前側および後ろ側にそれぞれ配置され、前記鍵本体と一体に設けられた前後のねじ支持部と、
前記キャプスタン取付け部材の前後方向の位置を調整するために、前記キャプスタン取付け部材の前記ねじ孔にねじ込まれるとともに、前記前後のねじ支持部に回転自在かつ前後方向に移動不能に支持された調整ねじと、
をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵。
【請求項4】
前記鍵本体は、前後方向に延びるとともに上下方向に貫通する長孔を有し、
前記キャプスタン取付け部材は、上下方向に貫通するねじ取付け孔を有し、
前記取付け部材保持手段は、
上方から前記ねじ取付け孔および前記長孔に通されたねじと、
前記鍵本体の下面に回転不能に設けられ、前記ねじがねじ込まれたナットと、
を有していることを特徴とする請求項3に記載の鍵盤楽器の鍵。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、押鍵に伴って回動することにより、アクションを駆動する鍵盤楽器の鍵に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アコースティックピアノの鍵には、押鍵時にアクションを駆動するためにキャプスタンが設けられている。アップライトピアノでは、中央において支点に支持された鍵の後端部に、例えば真鍮で構成されたポストワイヤが立設されており、キャプスタンは、その上端部に取り付けられていて、その上にアクションが載置されている。また、キャプスタンは、押鍵時に鍵が支点を中心として回動するのに伴い、アクションを突き上げ、それに応じてハンマーが打弦することによって、ピアノ音が発生する。
【0003】
また、ポストワイヤは、これを前方または後方に曲げることによって、鍵のタッチ感を調整するのに用いられる。例えば、ポストワイヤを前方に曲げると、キャプスタンとアクションとの接点が前側に移動し、接点と鍵の支点との間の距離が小さくなることによって、アクションなどの重量により支点回りに作用するモーメントが小さくなる。このように、ポストワイヤを曲げることにより、支点回りのモーメントが変化し、鍵の静的荷重が変化することによって、鍵のタッチ重さが調整される。
【0004】
しかし、上記のようにポストワイヤを曲げると、ポストワイヤと鍵の間の角度関係が本来の垂直な関係から斜めに変化するため、押鍵時に、鍵の駆動力がキャプスタンを介してアクションに十分、伝達されなくなるおそれがある。また、例えば、グランドピアノでは、ポストワイヤは用いられず、キャプスタンスクリューが鍵に直接、取り付けられているので、上記のような調整の手法を用いることはできない。
【0005】
一方、従来のグランドピアノの鍵として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この鍵は、バランスピンを中心として回動自在の鍵本体と、鍵本体の上面のバランスピンよりも後ろ側に設けられたキャプスタンスクリューを備えており、キャプスタンスクリューにはアクションが載置されている。
【0006】
また、鍵本体の上面には、キャプスタンスクリューに連結されたウォーム歯車機構が設けられており、このウォーム歯車機構は、ウォームホイール、およびウォームホイールとキャプスタンスクリューを連結する連結杆などを有している。このウォームホイールを回すことにより、キャプスタンスクリューは上下方向に移動し、その高さ位置が調整される。
【0007】
キャプスタンスクリューの高さが変化すると、キャプスタンスクリューとこれに載置されたアクションとの接点の高さもまた変化し、それにより、接点とバランスピンの間を斜めに結ぶ距離が変化する。その結果、アクションなどの重量によるバランスピン回りのモーメントが変化することによって、鍵のタッチ重さが調整される。
【0008】
しかし、上記の従来の鍵では、キャプスタンスクリューを上下させることによりバランスピンとの間の斜めの距離を増減させているので、キャプスタンスクリューの上下方向の移動量に対するバランスピン回りのモーメントの変化量が非常に小さく、したがって、タッチ重さの調整範囲が非常に狭い。このため、所望のタッチ重さを得られないおそれがある。また、上述したようなウォームホイールや連結杆などを有する複雑な構成のウォーム歯車機構を鍵ごとに設けなければならず、製造コストが増大してしまう。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、鍵本体へのキャプスタンの取付け位置を前後方向の任意の位置に調整でき、それにより、鍵のタッチ重さをより広い範囲で調整することができる鍵盤楽器の鍵を提供することを目的としている。
【0010】
【特許文献1】実開昭53−133728号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、押鍵に伴って回動することにより、アクションを駆動する鍵盤楽器の鍵であって、前後方向に延び、中央において支点に回動自在に支持された鍵本体と、鍵本体の支点よりも後ろ側に、前後方向に移動自在に設けられたキャプスタン取付け部材と、移動したキャプスタン取付け部材を、前後方向の任意の位置において鍵本体に保持する取付け部材保持手段と、キャプスタン取付け部材に一体に設けられ、アクションが載置されるとともに、押鍵に伴ってアクションを突き上げるキャプスタンと、を備えていることを特徴とする。
【0012】
この鍵盤楽器の鍵によれば、押鍵に伴って鍵が支点を中心として回動するのに伴い、鍵の後端部のキャプスタンにより、これに載置されたアクションが突き上げられ、鍵の駆動力がアクションに伝達される。また、この鍵では、鍵本体の支点よりも後ろ側に設けられたキャプスタン取付け部材を、前後方向に移動させるとともに、移動したキャプスタン取付け部材を、取付け部材保持手段により鍵本体に保持することによって、キャプスタン取付け部材およびこれと一体のキャプスタンの取付け位置が、前後方向の任意の位置に調整される。
【0013】
このように、キャプスタン取付け部材を移動させると、キャプスタンとアクションとの接点(以下、単に「接点」という)の位置が前後方向に変化することによって、鍵の静的荷重を調整することができる。例えば、キャプスタン取付け部材を後方に移動させると、鍵本体の支点と接点の間の距離が長くなるのに伴い、アクションなどの重量による支点回りのモーメントが大きくなるので、鍵の静的荷重は増大する。
【0014】
以上のように、キャプスタン取付け部材の前後方向の位置を調整するだけで、鍵の静的荷重を容易に変更でき、鍵のタッチ重さを容易に調整することができる。また、キャプスタンが前後方向に移動するので、上下方向に移動させる従来の場合と比較して、接点と支点の間の距離をより大きく変化させることができ、それにより、鍵のタッチ重さをより広い範囲で調整することができる。また、調整に伴い、キャプスタンは前後方向に移動するだけで、その角度は変化しないので、押鍵による駆動力を鍵からアクションに十分に伝達することができる。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵において、キャプスタン取付け部材は、鍵本体の上面に載置されるとともに、前後方向に延びかつ上下方向に貫通する長孔を有し、取付け部材保持手段は、長孔を介して鍵本体にねじ込まれ、キャプスタン取付け部材を鍵本体に固定するねじで構成されていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、キャプスタン取付け部材の前後方向に延びる長孔に通したねじを緩めた状態で、キャプスタン取付け部材を、鍵本体の上面に沿って前後方向に移動させた後、ねじを鍵本体にねじ込むことにより、キャプスタン取付け部材およびキャプスタンは、鍵本体の上面の前後方向の任意の位置に固定される。以上のようなキャプスタン取付け部材の移動とねじの締付けという単純な作業で鍵の静的荷重を容易に変更でき、鍵のタッチ重さを容易に調整することができる。また、本発明による鍵は、上記のような長孔を有するキャプスタン取付け部材と、これを鍵本体に固定するねじという単純な構成を付加するだけでよいので、前述した従来のグランドピアノの鍵よりも製造コストを削減することができる。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器の鍵において、キャプスタン取付け部材は、鍵本体の上面に載置されるとともに、前後方向に貫通するねじ孔を有し、鍵本体の上面のキャプスタン取付け部材よりも前側および後ろ側にそれぞれ配置され、鍵本体と一体に設けられた前後のねじ支持部と、キャプスタン取付け部材の前後方向の位置を調整するために、キャプスタン取付け部材のねじ孔にねじ込まれるとともに、前後のねじ支持部に回転自在かつ前後方向に移動不能に支持された調整ねじと、をさらに備えていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、キャプスタン取付け部材のねじ孔にねじ込まれた調整ねじを回すと、調整ねじの前後方向の移動が、前後のねじ支持部により阻止されることによって、キャプスタン取付け部材は、前方または後方に鍵本体の上面を摺動し、キャプスタンとともに移動する。以上のように、調整ねじを回すだけで、キャプスタンの取付け位置を前後方向の任意の位置に無段階に設定できるので、鍵のタッチ重さをきめ細かく容易に調整することができる。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の鍵盤楽器の鍵において、鍵本体は、前後方向に延びるとともに上下方向に貫通する長孔を有し、キャプスタン取付け部材は、上下方向に貫通するねじ取付け孔を有し、取付け部材保持手段は、上方からねじ取付け孔および長孔に通されたねじと、鍵本体の下面に回転不能に設けられ、ねじがねじ込まれたナットと、を有していることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、キャプスタン取付け部材のねじ取付け孔と、鍵本体の前後方向に延びる長孔に通されたねじを緩めた状態で、調整ねじを回すことにより、キャプスタン取付け部材は、鍵本体の上面に沿って前後方向に移動する。そして、鍵本体の下面に回転不能に設けられたナットにねじをねじ込むことによって、キャプスタン取付け部材およびキャプスタンは、鍵本体の上面の前後方向の任意の位置に固定される。このように、キャプスタン取付け部材を移動させた後、ねじを締め付けるだけで、キャプスタン取付け部材を容易に固定・保持することができる。また、キャプスタン取付け部材は、調整ねじがねじ込まれた状態で鍵本体に固定されるので、キャプスタン取付け部材をより安定して保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態による鍵を含むグランドピアノの鍵盤1、アクション21、ハンマー32などを、離鍵状態において示している。なお、以下の説明では、演奏者側から見たときのピアノの手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。
【0022】
鍵盤1は、複数の白鍵2(鍵)および黒鍵3(鍵)(図2にそれぞれ1つのみ図示)で構成されている。各白鍵2は、鍵本体2aと、その前部に取り付けられた白鍵カバー2bを有している。鍵本体2aは、例えばスプルスなどの木質材で構成され、前後方向に延び、断面矩形に形成されている。また、白鍵カバー2bは、アクリルなどの合成樹脂の成形品で構成され、L字形に形成されており、鍵本体2aの上面前半部および前面に、これらを覆うように貼り付けられている。各黒鍵3は、白鍵2の鍵本体2aよりも短い鍵本体3aと、その上面前部に貼り付けられ、フェノールなどの合成樹脂の成形品で構成された黒鍵カバー3bを有している。
【0023】
白鍵2および黒鍵3は、互いにほぼ同じ構成を有するので、以下、これらを代表して白鍵2について説明する。鍵本体2aの上面中央には、堅木で構成された中座板4が貼り付けられており、鍵本体2aから中座板4にわたって、上下方向に貫通するバランスピン孔2cが形成されている。
【0024】
一方、棚板5上には筬6が設けられており、筬6は、前側から順に筬前6a、筬中6bおよび筬後6cを有し、これらは左右方向に延びている。筬中6bは、鍵本体2aの中央に相当する位置に配置されており、筬中6bの白鍵2および黒鍵3に相当する部位には、例えば真鍮で構成されたバランスピン6dが立設されている(2つのみ図示)。また、筬中6b上には、バランスピン6dごとにパンチングクロス6eが設けられており、白鍵2は、そのバランスピン孔2cがバランスピン6dに係合した状態で、バランスピン6dの根元付近を支点Sとして、パンチングクロス6eを介して筬中6bに回動自在に支持されている。
【0025】
また、筬前6aは、鍵本体2aの前端部に相当する位置に配置されており、筬前6aの白鍵2および黒鍵3に相当する部位には、フロントピン(図示せず)が立設されている。このフロントピンには、鍵本体2aの前端部の下面に形成されたフロントピン穴(図示せず)が係合している。また、筬後6cは、鍵本体2aの後端部に相当する位置に配置されており、その上面にはフェルトで構成された鍵盤枕6fが貼り付けられていて、離鍵状態において、鍵本体2aの後端部が鍵盤枕6fに着座している。
【0026】
鍵本体2aの上面の中座板4よりも後ろ側の部分は、他の部分よりも低くなっており、この上面後部には、後ろ側から順にバックチェック座板11およびキャプスタン座板13(キャプスタン取付け部材)が設けられている。バックチェック座板11は鍵本体2aに固定されており、また、バックチェック座板11にはバックチェックワイヤ12aが立設されていて、その上端部にはバックチェック12が取り付けられている。
【0027】
図3に示すように、キャプスタン座板13は、鍵本体2aに沿って前後方向に延びており、その上面の中央にはキャプスタンホルダ13aが固定されている。キャプスタンホルダ13aは円筒状に形成され、上方に開放するねじ穴13bを有しており、このねじ穴13bには、キャプスタンスクリュー14(キャプスタン)がねじ込まれている。キャプスタンスクリュー14は、円柱状のキャプスタン本体14aと、下方に突出するねじ部14bを有しており、ねじ部14bがキャプスタンホルダ13aのねじ穴13bにねじ込まれることによって、キャプスタンホルダ13aに取り付けられている。また、キャプスタン本体14aの上面は上方に凸に緩やかに湾曲しており、この上面に、アクション21の後述するウィッペン24が載置されている。
【0028】
キャプスタン座板13には、キャプスタンホルダ13aの前後両側に、長孔13c、13cがそれぞれ形成されている。各長孔13cは、前後方向に延びるとともにキャプスタン座板13を上下方向に貫通している。以上の構成のキャプスタン座板13は、鍵本体2aに載置されており、ねじ15(取付け部材保持手段)が各長孔13cを介して鍵本体2aにねじ込まれることによって、キャプスタンスクリュー14とともに鍵本体2aの上面に固定されている。
【0029】
黒鍵3もまた、その中央のバランスピン孔3cを介して、バランスピン6dに係合しており、このバランスピン6dの根元付近を支点Sとして、筬中6bに回動自在に支持されている。また、鍵本体3aの上面後部には、バックチェック12や、キャプスタン座板13およびキャプスタンスクリュー14などが、白鍵2と同様に設けられている。
【0030】
図1に示すように、アクション21は、鍵盤1の後部の上方に設けられており、左右方向に並設された複数のブラケット22(1つのみ図示)の間に渡されたウィッペンレール23に、回動自在に取り付けられたウィッペン24と、ウィッペン24に回動自在に支持されたジャック25およびレペティションレバー26などを、鍵ごとに有している(いずれも1つのみ図示)。ウィッペン24の前後方向の中央には、下方に突出するヒール部24aが設けられており、このヒール部24aが、前述したキャプスタンスクリュー14の上面に接点Cを介して接触した状態で、アクション21がキャプスタン14に載置されている。
【0031】
また、複数のブラケット22の間に渡されたハンマーシャンクレール27には、ハンマーシャンクフレンジ31、およびこれに回動自在に取り付けられたハンマー32が、鍵ごとに設けられている(ともに1つのみ図示)。ハンマー32は、そのシャンクローラ32aを介してレペティションレバー26によって下方から支持され、上方に張られた弦80に対向している。
【0032】
以上の構成によれば、白鍵2の支点S回りには、アクション21およびハンマー32の重量によるモーメントが作用している。また、アクション21およびハンマー32は、接点Cを介して白鍵2のキャプスタンククリュー14に載置されているので、支点S回りには、接点Cと支点Sの間の距離D(図1参照)に応じた大きさのモーメントが作用する。白鍵2は、押鍵されると、このモーメントに抗して、支点Sを中心として回動する。その際、このモーメントの大きさに応じた反力が演奏者の指先にタッチ重さとして伝えられる。
【0033】
この押鍵に伴い、アクション21は、キャプスタンスクリュー14でウィッペン24が突き上げられることにより作動し、押鍵力は、ウィッペン24およびレペティションレバー26を介してハンマー32に伝達される。そして、最終的にジャック25で突き上げられることにより、ハンマー32が図1の時計方向に回動し、弦80を打弦することによって、ピアノ音が発生する。
【0034】
次に、鍵本体2aへのキャプスタンスクリュー14の取付け位置を調整する方法について説明する。まず、キャプスタン座板13を鍵本体2aに固定する前後のねじ15、15を緩めた後、キャプスタン座板13を鍵本体2aの上面に沿い、前後方向の任意の位置に移動させる。このときのキャプスタン座板13の移動範囲は、長孔13cの長さの範囲内である。そして、ねじ15、15を締め付けることにより、キャプスタン座板13は、キャプスタンスクリュー14とともに鍵本体2aの任意の位置に固定・保持される。
【0035】
上記のような調整作業により、キャプスタン座板13を例えば前方に移動させると、図4に示すように、接点Cはより前方に位置し、支点Sにより近づいた状態になる。したがって、このときの接点Cと支点Sとの間の距離D1はより小さくなり、支点S回りのモーメントが小さくなる。一方、キャプスタン座板13を後方に移動させると、図5に示すように、接点Cはより後方に位置し、支点Sからより遠い状態になる。したがって、このときの接点Cと支点Sとの間の距離D2はより大きくなり、支点S回りのモーメントは大きくなる。また、黒鍵3についても、白鍵2と同様にキャプスタン座板13の前後方向の位置を変更することにより、接点Cと支点Sとの間の距離Dが調整される。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、キャプスタン座板13を前後方向に移動させ、ねじ15、15を締め付けることによって、キャプスタンスクリュー14の取付け位置を前後方向の任意の位置に無段階に設定でき、接点Cと支点Sの間の距離Dを調整することができる。それにより、鍵の静的荷重を容易に変更でき、鍵のタッチ重さを容易に調整することができる。また、キャプスタンスクリュー14はキャプスタン座板13とともに前後方向に移動するので、キャプスタンスクリュー14を上下方向に移動させる従来の場合と比較して、距離Dをより大きく変化させることができ、鍵のタッチ重さをより広い範囲で調整することができる。また、タッチ重さの調整に伴い、キャプスタンスクリュー14は、前後方向に移動するだけで、その角度は変化しないので、押鍵による駆動力を鍵からアクション21に十分に伝達することができる。
【0037】
また、上記のように、キャプスタン座板13の移動と、ねじ15、15の締付けという簡単な作業で、鍵のタッチ重さを容易に調整することができる。さらに、白鍵2および黒鍵3は、一般的な鍵に対し、長孔13c、13cを有するキャプスタン座板13と、これを固定するねじ15、15という単純な構成を付加しただけのものなので、前述した従来のグランドピアノの鍵よりも製造コストを削減することができる。
【0038】
さらに、キャプスタンスクリュー14は、キャプスタン座板13のキャプスタンホルダ13aにねじ込まれているので、ねじ込み量を調整することにより、接点Cの高さを調整することができる。したがって、キャプスタンスクリュー14の前後方向の位置に加え、上下方向の位置を調整することによって、鍵のタッチ重さをよりきめ細かく調整することが可能である。
【0039】
図6は、本発明の第2実施形態による鍵を含むアップライトピアノの鍵盤41、アクション61およびハンマー71などを、離鍵状態において示している。鍵盤41は、複数の白鍵42(鍵)および黒鍵43(鍵)(図7にそれぞれ1つのみ図示)で構成されている。白鍵42は、第1実施形態のグランドピアノの白鍵2と同様、鍵本体42aおよび白鍵カバー42bを有しており、また、黒鍵43も、鍵本体43aおよび黒鍵カバー43bを有している。本実施形態においても、白鍵42および黒鍵43は互いにほぼ同じ構成を有するので、以下、これらを代表して白鍵42について説明する。
【0040】
棚板44上には、白鍵42および黒鍵43の前部から中央に相当する位置に筬46が設けられており、筬46の後端部には左右方向に延びるバランスレール46bが設けられている。白鍵42は、そのバランスピン孔42cがバランスレール46bに立設されたバランスピン6dに係合しており、バランスピン6dの根元付近を支点Sとして、バランスレール46bにパンチングクロス6eを介して回動自在に支持されている。また鍵本体42aは、離鍵状態においてバックレール47に設けられた鍵盤枕47aに着座している。
【0041】
図8〜図10に示すように、白鍵42の鍵本体42aの下面後端部には、前後方向に長い矩形状の凹部42bが形成されている。また、鍵本体42aには、凹部42bと上面の間を上下方向に貫通する左右2つの長孔42c、42cが形成されており、両長孔42c、42cは、前後方向に互いに平行に延びている。
【0042】
また、鍵本体42aの上面には、凹部42bに対応する位置に、ブロック状のキャプスタン取付け部材51が設けられている。キャプスタン取付け部材51は、左右の長孔42c、42cを前後方向に部分的に覆うように鍵本体42aに載置されている。このキャプスタン取付け部材51には、例えば真鍮製のポストワイヤ52aが、鍵本体42aの上面に対して垂直に立設されており、その上端部にキャプスタンボタン52(キャプスタン)が設けられている。キャプスタンボタン52は上下方向に長い円柱状に形成されており、このキャプスタンボタン52に、アクション61の後述するウィッペン63が載置されている。また、キャプスタン取付け部材51には、ポストワイヤ52aの左右両側に、上下方向に貫通するねじ取付け孔51a、51aがそれぞれ形成されている。
【0043】
以上の構成のキャプスタン取付け部材51は、保持金具53(取付け部材保持手段)によって、鍵本体42aの上面に固定されている。保持金具53は、各ねじ取付け孔51aおよび長孔42cに上方から通された固定ねじ53a(ねじ)と、鍵本体42aの凹部42b内に設けられた固定板53bと、各固定ねじ53aがねじ込まれたナット53cを有している。固定板53bは、凹部42bとほぼ同じ幅と凹部42bよりも短い前後方向の長さを有しており、凹部42bに収容されている。また、固定板53bには、固定ねじ53a、53aを通すための左右2つの孔が形成されており、固定板53bの下面には、これらの孔に対応する位置に、左右2つのナット53c、53cが固定されている。以上の構成の保持金具53により、キャプスタン取付け部材51は、キャプスタンボタン52とともに鍵本体42aの上面に固定されている。
【0044】
また、キャプスタン取付け部材51には、前後方向に貫通するねじ孔51bが形成されており、このねじ孔51bに調整ねじ54のねじ部54bがねじ込まれいる。このねじ部54bは、調整ねじ54に両端部を残して形成されており、調整ねじ54の前端面には、この調整ねじ54を回すための溝54aが形成されている。
【0045】
また、キャプスタン取付け部材51の前後両側には、ブロック状の支持部材55、56(前後の支持部)がそれぞれ設けられ、鍵本体42aの上面に固定されている。前後の支持部材55、56には、ねじ取付け孔55aおよびねじ取付け穴56aが、キャプスタン取付け部材51のねじ孔51bとそれぞれ同心状に形成されている。また、ねじ取付け孔55aは、前後方向に貫通しており、その前端部の径は、他の部分よりも若干、小さい抜止め部55bになっている。また、後ろ側の支持部材56のねじ取付け穴56aの背面側は背壁56bによってふさがれている。
【0046】
前側の支持部材55のねじ取付け孔55aには、調整ねじ54の前部が嵌合しており、その前方への移動が抜止め部55bによって規制される。また、後ろ側の支持部材56のねじ取付け穴56aには、調整ねじ54の後端部が嵌合しており、その後方への移動が背壁56bによって規制される。したがって、調整ねじ54は、前後の支持部材55、56に挟まれた状態で前後方向に移動不能かつ回転自在に支持されている。
【0047】
黒鍵43もまた、その中央のバランスピン孔43cを介して、バランスピン6dに係合しており、バランスピン6dを支点Sとして、バランスレール46bに回動自在に支持されている。また、鍵本体43aの上面後端部には、キャプスタン取付け部材51や調整ねじ54などが、白鍵42と同様に設けられている。
【0048】
図6に示すように、アクション61は、鍵盤41の後端部の上方に配置されており、鍵ごとに設けられたウィッペン63、バット65、およびダンパー66を有し(いずれも1つのみ図示)、これらは、センターレール62に回動自在に取り付けられている。また、ウィッペン63にはジャック64が回動自在に取り付けられ、バット65に下方から係合している。また、ウィッペン63の下端部が前述したキャプスタンボタン52に接点Cを介して接触した状態で、アクション61がキャプスタンボタン52に載置されている。また、バット65にはハンマー71が一体に設けられており、後方に張られた弦80に対向している。
【0049】
以上の構成によれば、第1実施形態のグランドピアノの白鍵2の場合と同様に、アクション61およびハンマー71が、接点Cを介して白鍵42のキャプスタンボタン52に載置されているので、白鍵42の支点S回りには、接点Cと支点Sの間の距離D(図6参照)に応じた大きさのモーメントが作用する。その結果、このモーメントの大きさに応じたタッチ重さが得られる。
【0050】
押鍵に伴い、アクション61は、キャプスタンボタン52でウィッペン63が突き上げられることにより作動し、押鍵力は、ウィッペン63およびジャック64を介してハンマー71に伝達される。そして、ジャック64で突き上げられることにより、ハンマー71が図6の反時計方向に回動し、弦80を打弦することによってピアノ音が発生する。
【0051】
次に、鍵本体42aへのキャプスタンボタン52の取付け位置を調整する方法について説明する。まず、固定ねじ53a、53aを緩めることにより、固定ねじ53a、ナット53cおよび固定板53bの締付け状態を解除し、キャプスタン取付け部材51を移動可能な状態にする。次いで、図11に示すように、ドライバTにより溝54aを介して調整ねじ54を回す。この場合、調整ねじ54の前後方向の移動が前後の支持部材55、56により規制されるので、キャプスタン取付け部材51は、鍵本体42aの上面を前後方向に摺動する。次に、固定ねじ53a、53aを回し、ナット53c、53cとの間で締め付けることにより、キャプスタン取付け部材51は、キャプスタンボタン52とともに鍵本体42aの任意の位置に固定・保持される。
【0052】
上記のような調整作業によりキャプスタン取付け部材51を前方に移動させると、図12に示すように、接点Cと支点Sとの間の距離D3はより小さくなることによって、支点S回りのモーメントが小さくなり、それに応じてタッチ重さも小さくなる。一方、キャプスタン取付け部材51を後方に移動させると、図13に示すように、接点Cと支点Sとの間の距離D4はより大きくなり、タッチ重さが大きくなる。また、黒鍵43についても、白鍵42と同様にキャプスタン取付け部材51の前後方向の位置を変更することにより、接点Cと支点Sとの間の距離Dが調整される。
【0053】
以上のように、本実施形態によれば、固定ねじ53aを緩め、調整ねじ54を回すことによって、キャプスタン取付け部材51の取付け位置を前後方向の任意の位置に無段階に設定することができる。それにより、支点S回りのモーメントが増減し、鍵の静的荷重が変化するので、鍵のタッチ重さをきめ細かく容易に調整することができる。また、その状態で、固定ねじ53aを締め付けるだけで、移動させたキャプスタン取付け部材51を鍵本体42aの任意の位置に容易に固定・保持することができる。
【0054】
また、キャプスタン取付け部材51は、調整ねじ54がねじ込まれた状態で鍵本体42aに固定されているので、前述した第1実施形態と比較して、キャプスタン取付け部材51をより安定して保持することができる。さらに、前述した第1実施形態のキャプスタンスクリュー14と同様、キャプスタンボタン52は、前後方向に移動するだけで、その角度は変化しないので、押鍵による駆動力を鍵からアクション61に十分に伝達することができる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、第2実施形態では、キャプスタンとして、キャプスタンボタン52が、キャプスタン取付け部材51にポストワイヤ52aを介して取り付けられているが、より高さの低いアップライトピアノに適用するために、キャプスタンボタン52およびポストワイヤ52aに代えて、第1実施形態と同様のキャプスタンスクリューを用いてもよい。
【0056】
また、第1実施形態のグランドピアノにおけるキャプスタン座板13に代えて、第2実施形態のキャプスタン取付け部材51および調整ねじ54などを用いてもよい。また、第2実施形態のアップライトピアノにおけるキャプスタン取付け部材51および調整ねじ54などに代えて、第1実施形態のキャプスタン座板13などを用いてもよい。
【0057】
さらに、実施形態は、本発明をアップライトピアノまたはグランドピアノの鍵に適用した例であるが、他の鍵盤楽器、例えば、押鍵に伴い、鍵に設けたキャプスタンにより駆動されるアクションなどを有する鍵盤楽器の鍵に適用してもよい。その他、細部の構成を、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1実施形態による鍵を用いたグランドピアノの鍵盤、アクションおよびハンマーなどを示す側面図である。
【図2】図1のグランドピアノの鍵盤を示す斜視図である。
【図3】図1の鍵のキャプスタン座板およびキャプスタンスクリューなどとその付近を示す斜視図である。
【図4】図1のキャプスタン座板およびキャプスタンスクリューを前方に移動させた状態を示す側面図である。
【図5】図1のキャプスタン座板およびキャプスタンスクリューを後方に移動させた状態を示す側面図である。
【図6】本発明の第2実施形態による鍵を用いたアップライトピアノの鍵盤、アクションおよびハンマーなどを示す側面図である。
【図7】図6のアップライトピアノの鍵盤を示す斜視図である。
【図8】図7の線A−Aに沿う断面図である。
【図9】図7の線B−Bに沿う断面図である。
【図10】鍵本体の下面の後端部を示す平面図である。
【図11】ドライバによるキャプスタン取付け部材の前後方向の位置の調整方法を示す図である。
【図12】図6のキャプスタン取付け部材およびキャプスタンボタンを前方に移動させた状態を示す側面図である。
【図13】図6のキャプスタン取付け部材およびキャプスタンボタンを後方に移動させた状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0059】
2 白鍵(鍵)
2a 鍵本体
3 黒鍵(鍵)
3a 鍵本体
13 キャプスタン座板(キャプスタン取付け部材)
13c 長孔
14 キャプスタンスクリュー(キャプスタン)
15 ねじ(取付け部材保持手段)
21 アクション
42 白鍵(鍵)
42a 鍵本体
42c 長孔
43 黒鍵(鍵)
43a 鍵本体
51 キャプスタン取付け部材
51a ねじ取付け孔
52 キャプスタンボタン(キャプスタン)
53 保持金具(取付け部材保持手段)
53a 固定ねじ(ねじ)
53c ナット
54 調整ねじ
55 支持部材(支持部)
56 支持部材(支持部)
61 アクション
S 支点
【出願人】 【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
【出願日】 平成18年10月4日(2006.10.4)
【代理人】 【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄


【公開番号】 特開2008−90167(P2008−90167A)
【公開日】 平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願番号】 特願2006−273079(P2006−273079)