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【発明の名称】 鍵盤楽器の回動体支持構造
【発明者】 【氏名】釘本 英範

【要約】 【課題】乾湿にかかわらず、回動体のスムーズな動作を確保することにより、良好なタッチ感を安定して得ることができるとともに、製造工程の簡略化によって製造コストを削減することができる鍵盤楽器の回動体支持構造を提供する。

【構成】押鍵に伴って回動する回動体4を支持する鍵盤楽器の回動体支持構造であって、回動体4を取り付けるためのフレンジ11と、フレンジ11および回動体4の一方に設けられ、二股状に分岐し、ピン孔11bをそれぞれ有する2つの支持部11a、11aと、フッ素樹脂の繊維で構成され、2つのピン孔11b、11bにそれぞれ取り付けられた筒状の軸受け12、12と、フレンジ11および回動体4の他方に設けられ、2つの軸受け12、12に通されたピン13と、を備え、回動体4は、ピン13および軸受け12、12を介してフレンジ11に回動自在に支持されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押鍵に伴って回動する回動体を支持する鍵盤楽器の回動体支持構造であって、
前記回動体を取り付けるためのフレンジと、
当該フレンジおよび前記回動体の一方に設けられ、二股状に分岐し、ピン孔をそれぞれ有する2つの支持部と、
フッ素樹脂の繊維で構成され、前記2つのピン孔にそれぞれ取り付けられた筒状の軸受けと、
前記フレンジおよび前記回動体の他方に設けられ、前記2つの軸受けに通されたピンと、を備え、
前記回動体は、前記ピンおよび前記軸受けを介して前記フレンジに回動自在に支持されていることを特徴とする鍵盤楽器の回動体支持構造。
【請求項2】
前記支持部は合成樹脂で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器の回動体支持構造。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、押鍵に伴って回動する回動体を支持する鍵盤楽器の回動体支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鍵盤楽器の回動体支持構造として、例えば特許文献1に開示されたピアノのアクションフレンジが知られている。このフレンジは二股状に分岐した2つの軸受部を有しており、両軸受部には孔が同軸状に形成されている。各孔には、羊毛のクロスで構成されたブッシングクロスが取り付けられている。また、ブッシングクロスには1本のセンターピンが通されており、例えばアップライトピアノの場合、このセンターピンは、ハンマーを有するハンマー組立て品やダンパーなどに一体に取り付けられている。以上の構成により、ハンマー組立て品などは、センターピンおよびブッシングクロスを介して、フレンジに回動自在に支持されている。
【0003】
ブッシングクロスは、例えば以下のようにして取り付けられる。まず、平板状の羊毛製のクロスを用意し、それを円筒状に丸め、軸受部の孔に嵌入して接着剤で接着する。そして、円筒状のブッシングクロスに所定の径のピンを嵌入することによって、ブッシングクロスを圧縮し、その状態で、所定の温湿度条件で所定の処理を行った後、ピンを取り外す。以上のような「セット」という工程により、ブッシングクロスは、円筒状に成形された状態で、軸受部の孔にセットされる。また、以上のような工程を行うことにより、湿度の変化に伴って発生するブッシングクロスの膨潤や収縮が抑制される。
【0004】
しかし、ブッシングクロスを構成する羊毛のクロスは天然繊維であるため、湿度変化に伴う膨潤や収縮を十分に抑制できず、それによる不具合が発生することがある。具体的には、湿度の上昇に伴ってブッシングクロスが膨潤した場合には、センターピンが圧迫されることにより、例えばハンマーが回動する際のセンターピンとブッシングクロスとの間の摩擦力が増大する結果、ハンマーのスムーズな回動が阻害されるとともに、鍵のタッチ重さが重くなり、鍵のタッチ感が変化してしまう。
【0005】
逆に、ブッシングクロスが湿度の低下に伴って収縮した場合には、センターピンとの間に隙間が生じることにより、ハンマー組立て品にがたつきが発生し、やはりハンマーのスムーズな回動が阻害されるおそれがある。また、従来のフレンジでは、湿度変化に伴うブッシングクロスの膨潤や収縮を抑制するために、製造工程において前述したような「セット工程」などの煩雑な処理を行っているため、製造コストが増大してしまう。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、乾湿にかかわらず、回動体のスムーズな動作を確保することにより、良好なタッチ感を安定して得ることができるとともに、製造工程の簡略化によって製造コストを削減することができる鍵盤楽器の回動体支持構造を提供することを目的としている。
【0007】
【特許文献1】特開平8−241074号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、押鍵に伴って回動する回動体を支持する鍵盤楽器の回動体支持構造であって、回動体を取り付けるためのフレンジと、フレンジおよび回動体の一方に設けられ、二股状に分岐し、ピン孔をそれぞれ有する2つの支持部と、フッ素樹脂の繊維で構成され、2つのピン孔にそれぞれ取り付けられた筒状の軸受けと、フレンジおよび回動体の他方に設けられ、2つの軸受けに通されたピンと、を備え、回動体は、ピンおよび軸受けを介してフレンジに回動自在に支持されていることを特徴とする。
【0009】
この鍵盤楽器の回動体支持構造では、例えばハンマーやウィッペンなどの回動体、およびフレンジの一方に設けられた二股状の2つの支持部のピン孔に、フッ素樹脂の繊維で構成された筒状の軸受けがそれぞれ取り付けられている。また、これらの軸受けには、回動体およびフレンジの他方に設けられたピンが通されており、以上の構成により、回動体は、ピンおよび軸受けを介してフレンジに回動自在に支持されている。このように、ピンが直接、接触する軸受けがフッ素樹脂繊維で構成され、また、フッ素樹脂は摺動性能に優れていることから、回動体が回動する際にピンと軸受けとの間に作用する摩擦力を、従来よりも低減させることができる。その結果、回動体は、押鍵に伴ってスムーズに回動することができる。
【0010】
また、フッ素樹脂は合成樹脂の1つであり、湿度変化に対する寸法安定性に優れているので、湿度が変化した場合でも、軸受けのサイズがほとんど変化せず、ピンが軸受けに対してきつくなったり、緩くなったりすることがない。したがって、乾湿にかかわらず、回動体のスムーズな動作を確保することができる。また、フッ素樹脂は耐摩耗性にも優れていることにより、軸受けの摩耗を抑制でき、それにより、回動体のがたつきを防止することができる。さらに、例えば回動体に、その回動方向や軸方向に大きな負荷がかかっても、フッ素樹脂繊維がもつ弾力性によって、軸受けが緩衝材になるので、軸受けを支持する支持部の変形を防止することができる。以上により、回動体のスムーズな動作と、それによる安定したタッチ重さおよび良好なタッチ感を、長期にわたって維持することができる。
【0011】
また、本発明による回動体支持構造は、従来のものと比較して軸受けの材質が異なるだけなので、従来とほぼ同じ組立て工程により製造することができる。また、上述したようにフッ素樹脂繊維の軸受けは乾湿の影響を受け難いことから、軸受けの膨潤および収縮を抑制するための「セット工程」のような従来の煩雑な工程を省略でき、したがって、製造コストを削減することができる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の鍵盤楽器の回動体支持構造において、支持部は合成樹脂で構成されていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、支持部が合成樹脂で構成されていることにより、温度や湿度が変化した場合でも、支持部は膨張および収縮することなく一定のサイズに保たれる。その結果、支持部に設けられたピン孔のサイズも一定に保たれるので、温度や乾湿にかかわらず、回動体のスムーズな動作を確実に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態による回動体支持構造を用いたアップライトピアノのアクション1、鍵盤2、およびハンマー3を有するハンマー組立て品4などを、離鍵状態において示している。なお、以下の説明では、演奏者側から見たときのアップライトピアノの手前側を「前」、奥側を「後」として説明する。
【0015】
鍵盤2は、アップライトピアノの左右方向に並んだ多数の鍵2a(1つのみ図示)によって構成されている。各鍵2aは、前後方向(図1の左右方向)に延び、その中央において、棚板10上の筬5にバランスピン5aを中心として回動自在に支持されている。
【0016】
棚板10の左右の端部には、アクションブラケット(図示せず)がそれぞれ設けられており、アクション1は、鍵盤2の後端部の上方に配置され、両アクションブラケットの間に設けられている。また、アクション1は、ウィッペン21、ジャック22およびバット23などを有しており、これらは、鍵2aごとに設けられている(いずれも1つのみ図示)。また、図2に示すように、バット23の上面にはハンマー3が取り付けられており、両者23、3などによってハンマー組立て品4(回動体)が構成されている。
【0017】
また、左右のアクションブラケットの間には、センターレール6およびハンマーレール7などが渡されており、このセンターレール6の前面上端部には、バットフレンジ11(フレンジ)が、バットフレンジスクリュー11cによって固定され、鍵2aごとに設けられている。各バットフレンジ11は合成樹脂で構成され、その上部には、二股状に分岐した左右2つの支持部11a、11aが設けられている。各支持部11aには、左右方向に貫通するピン孔11bが形成されており、これらのピン孔11b、11bは互いに同軸状になっている。
【0018】
各ピン孔11bには軸受け12が取り付けられている。軸受け12は、フッ素樹脂の繊維で構成された例えば市販の平板状のフェルトを、筒状に丸めたものであり、支持部11aのピン孔11bに挿入されるとともに、例えば接着剤で接着されている。フッ素樹脂の繊維は、従来の羊毛と比較して、湿度変化に対する寸法安定性が非常に優れている。具体的には、フッ素樹脂は合成樹脂であり、吸湿性がないため、それにより構成された繊維には、湿度変化に伴う膨潤または収縮が発生しない。また、フッ素樹脂は、摩擦係数が非常に小さく、優れた滑性を有するとともに耐摩耗性にも優れている。以上のように、フッ素樹脂の繊維で構成された軸受け12は、湿度変化に対する寸法安定性、高い滑性および耐摩耗性を兼備しており、軸受けとして優れた性質を有している。
【0019】
また、支持部11a、11aの軸受け12、12には、1本のセンターピン13(ピン)が通され、取り付けられている。また、センターピン13の左右の支持部11a、11aの間の部分は、ハンマー組立て品4のバット23の下端部とバットプレート23aとの間に挟み付けられた状態で、バットプレートスクリュー23bによって固定されており、それにより、センターピン13はバット23と一体になっている。以上の構成によって、ハンマー組立て品4は、センターピン13および左右の軸受け12、12を介してバットフレンジ11に回動自在に支持されている。
【0020】
ウィッペン21(回動体)は合成樹脂で構成され、所定の形状に形成されており、下方に突出するヒール部21aを有し、このヒール部21aを介して、対応する鍵2aの後端部に設けたキャプスタンボタン2bに載置されている。また、ウィッペン21は、その後端部において、ウィッペンフレンジ14(フレンジ)に支持されている。図3に示すように、ウィッペンフレンジ14は、上述したバットフレンジ11と同様に構成されており、ピン孔14bを有する二股状の左右の支持部14a、14aと、各ピン孔14bに取り付けられた軸受け12などを有している。このウィッペンフレンジ14は、支持部14a、14aを下側にした状態で、センターレール6の後面の下端部にねじ止めされている。
【0021】
ウィッペン21の後端部は、左右方向に貫通するピン取付け孔21bを有し、左右の支持部14a、14aの間に配置されており、その状態で、1本のセンターピン13が、左右の軸受け12、12と、これらの間のピン取付け孔21bに通されている。センターピン13はウィッペン21に対して一体であり、ウィッペン21は、センターピン13および軸受け12、12を介してウィッペンフレンジ14に回動自在に支持されている。
【0022】
ウィッペン21の前後方向の中央には、上方に延びるフレンジ部15(フレンジ)が一体に設けられている。このフレンジ部15は、前述したバットフレンジ11およびウィッペンフレンジ14と同様、ピン孔15bを有する二股状の左右の支持部15a、15a、および各ピン孔15bに取り付けられた軸受け12、12を有している。ジャック22(回動体)は、このフレンジ部15に取り付けられている。
【0023】
ジャック22は合成樹脂によって構成され、前後方向に延びる基部22aと、その後端部から上方に延びるハンマー突上げ部22bによって、L字形に形成されている。基部22aとハンマー突上げ部22bとの角部は、左右方向に貫通するピン取付け孔22cを有し、左右の支持部15a、15aの間に配置されており、その状態で、センターピン13が、軸受け12、12、およびこれらの間のピン取付け孔22cに通されている。センターピン13はジャック22に対して一体であり、ジャック22は、センターピン13および軸受け12、12を介してフレンジ部15に回動自在に支持されている。
【0024】
また、図1に示すように、センターレール6には、前方に延びる複数のレギュレティングブラケット8a(1つのみ図示)と、その前端部に取り付けられ、左右方向に延びるレギュレティングレール8bとが設けられている。また、レギュレーティングレール8bには、その下方において鍵2aごとにレギュレティングボタン8c(1つのみ図示)が取り付けられている。また、ウィッペン21のウィッペンフレンジ14よりも後側には、後述するダンパー25を駆動するためのスプーン24が立設されている。
【0025】
また、センターレール6の上面には、ダンパーフレンジ16(フレンジ)が取り付けられている。このダンパーフレンジ16は、前述したバットフレンジ11およびウィッペンフレンジ14と同様に構成されており、ピン孔(図示せず)が形成された左右の支持部16a、16a(1つのみ図示)と、各ピン孔に取り付けられた軸受け12、12(1つのみ図示)を有している。このダンパーフレンジ16は、支持部16a、16aを後側にした状態でセンターレール6にねじ止めされている。
【0026】
ダンパーフレンジ16にはダンパー25(回動体)が取り付けられている。ダンパー25は、上下方向に延びるダンパーレバー25a、ダンパーレバー25aに立設されたダンパーワイヤ25b、およびその上端部に取り付けられたダンパーヘッド25cなどを有している。ダンパー25は、ダンパーレバー25aの上下方向の中央に形成されたピン取付け孔(図示せず)、および左右の軸受け12、12に通されたセンターピン13によって、ダンパーフレンジ16に回動自在に支持されている。ダンパーヘッド25cは、ダンパーレバースプリング25dによって後方に付勢されており、離鍵状態では、後方に張られた弦Sに当接している。
【0027】
以下、上述したアップライトピアノの押鍵の開始から終了までの一連の動作について、説明する。演奏者により、図1に示す離鍵状態から鍵2aが押鍵されると、鍵2aは、バランスピン5aを中心として同図の時計方向に回動し、その後端部に載置されたウィッペン21は、鍵2aによって突き上げられることにより、センターピン13を中心として上方(図1の反時計方向)に回動する。このウィッペン21の回動に伴い、ダンパー25がスプーン24で駆動され、そのセンターピン13を中心として時計方向に回動することによって、ダンパーヘッド25cが弦Sから離れる。また、ジャック22はウィッペン21と一緒に上方に移動し、ハンマー3は、バット23を介してジャック22のハンマー突上げ部22bで突き上げられることにより、バット23のセンターピン13を中心として、後方の弦Sに向かって反時計方向に回動する。
【0028】
鍵2aがさらに回動すると、ジャック22の基部22aが、レギュレティングボタン8cに下方から当接する。これにより、ジャック22は、レギュレティングボタン8cにより上方への移動が阻止されることによって、ウィッペン21に対して、センターピン13を中心として時計方向に回動する。
【0029】
そして、鍵2aがさらに回動したときに、ハンマー突上げ部22bがバット23から前方に外れ、ジャック22がハンマー組立て品4から離脱する。ハンマー3は、ジャック22が離脱した後にも慣性によって回動し、弦Sを打弦することにより振動させることによって、ピアノ音を発生させる。そして、ハンマー組立て品4は、弦Sの反発力によって、時計方向へ復帰回動する。
【0030】
押鍵が終了し、鍵2aが離鍵されるのに伴い、鍵2aはバランスピン5aを中心として、また、アクション1のウィッペン21、ジャック22およびダンパー25は、押鍵時と逆方向に復帰回動し、最終的に離鍵状態に復帰する。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、バットフレンジ11、ウィッペンフレンジ14、フレンジ部15およびダンパーフレンジ16に、滑性に優れたフッ素樹脂繊維で構成された軸受け12が取り付けられ、ハンマー組立て品4、ウィッペン21、ジャック22およびダンパー25のセンターピン13が、対応するフレンジの軸受け12に通されている。したがって、これらの回動体4、21、22および25が回動する際にセンターピン13と軸受け12との間に作用する摩擦力を、従来よりも低減させることができ、それにより、各回動体は、押鍵に伴って非常にスムーズに回動することができる。また、アクション1およびハンマー3は、上記のような複数の回動体と、これらをそれぞれ回動自在に支持する支持構造との組合わせによって構成されているので、押鍵および離鍵に伴うアクション1およびハンマー3のスムーズな動作を確保することができる。
【0032】
また、フッ素樹脂繊維は合成樹脂の1つであり、湿度変化に対する寸法安定性に優れているので、湿度が変化した場合でも、軸受け12のサイズがほとんど変化せず、センターピン13が軸受け12に対してきつくなったり、緩くなったりすることがない。したがって、乾湿にかかわらず、回動体のスムーズな動作を確保することができる。また、フッ素樹脂繊維は耐摩耗性にも優れていることにより、軸受け12の摩耗を抑制でき、それにより、回動体のがたつきを防止することができる。さらに、例えば回動体に、その回動方向や軸方向に大きな負荷がかかっても、フッ素樹脂繊維がもつ弾力性によって、軸受け12が緩衝材になるので、軸受け12を支持する支持部の変形を防止することができる。以上により、回動体のスムーズな動作と、それによる安定したタッチ重さおよび良好なタッチ感を、長期にわたって維持することができる。
【0033】
また、前述した本実施形態の回動体支持構造は、従来のものと比較して軸受け12の材質が異なるだけなので、従来とほぼ同じ組立て工程により製造することができる。また、フッ素樹脂繊維の軸受け12は乾湿の影響を受け難いことから、軸受け12の膨潤および収縮を抑制するための「セット工程」のような従来の煩雑な工程を省略でき、したがって、製造コストを削減することができる。
【0034】
また、各部のフレンジ11、14、15および16が合成樹脂で構成されていることにより、温度や湿度が変化した場合でも、各フレンジの支持部は膨張および収縮することなく一定のサイズに保たれる。その結果、フレンジの支持部に形成されたピン孔のサイズも一定に保たれるので、温度や乾湿にかかわらず、回動体のスムーズな動作を確実に維持することができる。
【0035】
図4は、本発明の第2実施形態による回動体支持構造を用いたグランドピアノのハンマー31およびアクション32を示している。アクション32は、多数の鍵30aで構成された鍵盤30の後端部の上方に設けられており、ウィッペンレール34に取り付けられたウィッペン51、およびウィッペン51に回動自在に支持されたジャック52およびレペティションレバー53などを有している。
【0036】
図5は、ハンマー31(回動体)およびこれを支持するハンマーシャンクフレンジ44を示している。このハンマーシャンクフレンジ44は、合成樹脂で構成され、複数のブラケット33、33(図4に1つのみ図示)の間に渡されたハンマーレール35の上面にねじ44aによって固定され、鍵30aごとに設けられている。ハンマーシャンクフレンジ44の後端部および前部は、中央よりも幅が若干、狭くなっており、後端部には左右方向に貫通するピン取付け孔44cが形成されている。また、ピン取付け孔44cよりも前側の部分には、ドロップスクリュー44bが下方からねじ込まれている。このドロップスクリュー44bには、レペティションレバー53が下方から対向している。
【0037】
ハンマー31は、前後方向に延びるハンマーシャンク31a、およびその後端部に設けられたハンマーへッド31bを有しており、ハンマーヘッド31bは、上方に張られた弦Sに対向している。ハンマーシャンク31aは木材で構成され、その前端部が取付け部31cになっている。この取付け部31cは、断面矩形で、左右方向の幅が他の部分よりも広くなっており、その下面にはシャンクローラ31dが取り付けられている。
【0038】
また、取付け部31cの前端部には、二股状に分岐した左右2つの支持部31e、31eが設けられている。このように、前述したアップライトピアノの各部の回動体支持構造では、回動体を支持するフレンジ側に2つの支持部が設けられているのに対し、グランドピアノのハンマー31の支持構造では、回動体であるハンマー31側に支持部31e、31eが設けられている。この支持構造は、前述したアップライトピアノの回動体支持構造と基本的に同様に構成されている。
【0039】
具体的には、左右の支持部31e、31eには、ピン孔31f、31fが形成されており、各ピン孔31fには軸受け12、12が取り付けられている。また、支持部31e、31eは、ハンマーシャンクフレンジ44の後端部の両側に配置されており、その状態で、1本のセンターピン13が、軸受け12、12およびこれらの間のピン取付け孔44cに通されている。センターピン13は、ハンマーシャンクフレンジ44に対して一体であり、ハンマー31は、軸受け12、12およびセンターピン13を介してハンマーシャンクフレンジ44に回動自在に支持されている。また、離鍵状態においては、ハンマー31は、そのシャンクローラ31dを介してレペティションレバー53によって下方から支持されている。
【0040】
また、グランドピアノでは、他の回動体も、前述したアップライトピアノの各部の回動体支持構造と同様の支持構造により、回動自在に支持されている。アクション32のウィッペン51(回動体)は、軸受け12に通されたセンターピン13を中心として、ウィッペンフレンジ41(フレンジ)に回動自在に支持されている。同様に、ジャック52(回動体)はウィッペン51の前端部のフレンジ部42(フレンジ)に、レペティションレバー53は(回動体)ウィッペン51の中央のフレンジ部43(フレンジ)に、それぞれ軸受け12に通されたセンターピン13を中心として回動自在に支持されている。また、図示しないが、アクション32の後方に配置されたダンパーもまた、ダンパーレールにねじ止めされたダンパーレバーフレンジに、同様の支持構造を用いて回動自在に支持されている。
【0041】
以上の構成によれば、鍵の押鍵に伴ってアクション32が作動し、ウィッペン51、ジャック52、レペティションレバー53およびダンパーは、それぞれのセンターピン13を中心として回動する。ハンマー31は、ジャック52によりシャンクローラ31dを介して突き上げられ、前端部のセンターピン13を中心として図4の時計方向に回動することにより弦Sを打弦し、それにより、ピアノ音が発生する。
【0042】
以上のように、本実施形態においても、各部の回動体は、押鍵に伴い、センターピン13およびフッ素樹脂繊維で構成された軸受け12を介して回動する。したがって、前述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
なお、本発明は、上述した第1および第2実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、第2実施形態では、木製のハンマーシャンク31aを用いているが、ハンマーシャンク31aの全体、または支持部31eを含む部分を合成樹脂で構成してもよい。また、上述した第1および第2実施形態は、本発明による回動体支持構造を、アコースティックなピアノに用いた例であるが、例えば、回動体を有する電子ピアノなどの他の鍵盤楽器に用いてもよい。その他、細部の構成を、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態による回動体支持構造を用いたアップライトピアノの鍵盤、アクションおよびハンマーなどを、離鍵状態において示す側面図である。
【図2】図1のハンマーおよびバットフレンジなどを分解した状態で示す斜視図である。
【図3】図1のウィッペン、ジャック、およびウィッペンフレンジなどを分解した状態で示す斜視図である。
【図4】本発明の第2実施形態による回動体支持構造を用いたグランドピアノの鍵盤、アクションおよびハンマーなどを、離鍵状態において示す側面図である。
【図5】図4のハンマーおよびハンマーシャンクフレンジを分解した状態で示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
1 アクション
4 ハンマー組立て品(回動体)
11 バットフレンジ(フレンジ)
11a 支持部
12 軸受け
13 センターピン(ピン)
14 ウィッペンフレンジ(フレンジ)
14a 支持部
15 フレンジ部(フレンジ)
15a 支持部
21 ウィッペン(回動体)
22 ジャック(回動体)
31 ハンマー(回動体)
31e 支持部
32 アクション
41 ウィッペンフレンジ(フレンジ)
42 フレンジ部(フレンジ)
43 フレンジ部(フレンジ)
44 ハンマーシャンクフレンジ(フレンジ)
51 ウィッペン(回動体)
52 ジャック(回動体)
53 レペティションレバー(回動体)
【出願人】 【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
【出願日】 平成18年8月23日(2006.8.23)
【代理人】 【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄


【公開番号】 特開2008−51973(P2008−51973A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−227065(P2006−227065)