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【発明の名称】 ピアノの音色制御装置
【発明者】 【氏名】永瀧 周

【要約】 【課題】押鍵操作に基づき打弦がなされるピアノにおいて、鍵の押鍵時の静荷重を変化させることに応じて発生する音色変化の自由度を従来に比べて大きくできるようにする。

【構成】複数のウェイトレバーを鍵の長手方向上で移動させて押鍵時の静荷重を変化させることに応じて、アコースティック演奏モードと電子楽音演奏モードとの間の切替え制御が実行される(S100〜S130、S180,S190)。しかも、電子楽音演奏モードでは、使用される電子楽音の音色が、鍵の長手方向上の複数のウェイトレバーの移動状態に基づき変化する押鍵時の静荷重に応じて種々の音色に変化される(S140)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押鍵された鍵に対応した弦の打弦を行う打弦機構と、
静荷重可変装置と、
電子楽音設定装置と、
を備えたピアノの音色制御装置であって、
前記静荷重可変装置は、
長尺状に形成された複数のウェイトレバーと、
ピアノが有する複数の鍵のうち夫々の前記ウェイトレバーに対応する1つの鍵の上方において、夫々の前記ウェイトレバーの長手方向の一端側部分が、上下方向に揺動自在となり、当該対応する鍵の演奏側とは反対側の上面に自重で接触して、当該対応する鍵に荷重をかけるよう、夫々の前記ウェイトレバーの長手方向の他端側部分を回動自在に支持する支持手段と、
前記複数のウェイトレバーが鍵の長手方向に移動するよう、前記支持手段を移動させる移動手段と、
を備え、
前記静荷重可変装置は、前記移動手段により前記複数のウェイトレバーを移動させることで、夫々の前記ウェイトレバーが接触している鍵の押鍵時の静荷重を変化させるよう構成され、
前記電子楽音設定装置は、
前記移動手段による前記複数のウェイトレバーの移動状態を検出する移動状態検出手段と、
前記移動状態検出手段によって検出された前記移動状態が変化した場合には、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色が変化するよう、前記移動状態検出手段によって検出された前記移動状態に基づき、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色を設定する音色設定手段と、
を備えたことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のピアノの音色制御装置において、
前記打弦機構は、
略平行に配設された発音のための複数の弦と、
各弦毎に設けられ、押鍵に基づき各弦を打弦するハンマと、
各ハンマを夫々支持するハンマシャンクと、
を少なくとも有することを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のピアノの音色制御装置において、
前記打弦機構は、更に、
前記ハンマによる打弦時に弦から離間され、打弦後に弦に当接されて弦の振動を抑制するダンパと、
前記ダンパを支持するダンパレバーワイヤと、
を各弦毎に備えたことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のピアノの音色制御装置において、
押鍵時に押鍵された鍵に対応する前記ハンマが打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、該ハンマの打弦動作に連動して駆動される連動部材に当接することで、該ハンマによる打弦を阻止する当接部材を有する止音機構を更に備え、
前記止音機構は、
前記ハンマが打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、前記連動部材に前記当接部材が当接する前記当接部材の止音位置と、
前記当接部材が前記止音位置から退避されることで、前記ハンマが打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、前記連動部材に前記当接部材が当接せず、前記ハンマによる打弦がなされる前記当接部材の退避位置と、
のうちのいずれかに前記当接部材の位置を位置決めする位置決め機構を備えたことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項5】
請求項3に記載のピアノの音色制御装置において、
押鍵時に押鍵された鍵に対応する前記ハンマが打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、該ハンマを支持する前記ハンマシャンクに当接することで、該ハンマによる打弦を阻止する止音機構を更に備え、
前記止音機構は、
前記ダンパレバーワイヤと前記ハンマシャンクとの間に配置され、前記ハンマによる打弦時に前記ダンパが弦から離間されたときに前記ダンパレバーワイヤに当接して前記ダンパを予め定めた停止位置で停止させる長尺状のダンパストップレールと、
前記ハンマが打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、該ハンマを支持する前記ハンマシャンクに前記ダンパストップレールが当接する前記ダンパストップレールの止音位置と、前記ダンパストップレールが前記止音位置から退避されることで、前記ハンマが打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、前記ハンマシャンクに前記ダンパストップレールが当接せず、前記ハンマによる打弦がなされる前記ダンパストップレールの退避位置と、のうちのいずれかに前記ダンパストップレールの位置を位置決めする位置決め機構と、
を備えたことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のピアノの音色制御装置において、
前記移動状態検出手段によって検出された前記移動状態に基づき、前記止音機構を動作させ、前記ハンマによる打弦を前記止音機構によって阻止しない許容状態と、前記ハンマによる打弦を前記止音機構によって阻止する阻止状態とのうちのいずれかになるよう前記止音機構の設定を行う止音機構設定手段を更に備えたことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載のピアノの音色制御装置において、
前記止音機構設定手段により、前記阻止状態になるよう前記止音機構の設定がされている場合だけ、前記音色設定手段によって設定された音色の電子楽音を押鍵操作に応じて当該音色制御装置外部に出力させる出力設定手段を更に備えたことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載のピアノの音色制御装置において、
前記音色設定手段は、
前記止音機構設定手段によって前記止音機構が動作され前記阻止状態とされる場合だけ、前記移動状態検出手段によって検出された前記移動状態に基づき、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色の設定を行うことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれかに記載のピアノの音色制御装置において、
前記移動手段は、前記複数のウェイトレバーを鍵の長手方向における予め定められた移動範囲内の位置に移動させるものとして構成され、
前記止音機構設定手段は、
前記予め定められた移動範囲内の前記複数のウェイトレバーの位置のうち、各鍵の押鍵時の静荷重を予め定められた荷重範囲内の静荷重にする位置に前記複数のウェイトレバーの位置が変化した場合に前記移動状態検出手段によって検出される前記移動状態に基づき、前記ハンマによる打弦がなされるよう前記止音機構の設定を行う一方、
前記予め定められた移動範囲内の前記複数のウェイトレバーの位置のうち、各鍵の押鍵時の静荷重を前記予め定められた荷重範囲内の静荷重以外の静荷重にする位置に前記複数のウェイトレバーの位置が変化した場合に前記移動状態検出手段によって検出される前記移動状態に基づき、前記ハンマによる打弦が阻止されるよう前記止音機構の設定を行うものとして構成されたことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載のピアノの音色制御装置において、
前記予め定められた移動範囲内の前記複数のウェイトレバーの位置のうち、各鍵の押鍵時の静荷重を予め定められた荷重範囲内の静荷重にする位置が、
前記複数のウェイトレバーを前記予め定められた移動範囲内で移動させることで得られる最大の静荷重に各鍵の押鍵時の静荷重を設定する位置を含んだものであることを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項11】
請求項4又は5に記載のピアノの音色制御装置において、
前記止音機構により前記ハンマによる打弦を阻止する阻止状態にされたか否かを検出する阻止状態検出手段と、
前記阻止状態検出手段により前記阻止状態であると検出された場合だけ、前記音色設定手段によって設定された音色の電子楽音を押鍵操作に応じて当該音色制御装置外部に出力させる出力許容手段と、
を更に備えたことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載のピアノの音色制御装置において、
前記音色設定手段は、
前記阻止状態検出手段により前記阻止状態であると検出された場合だけ、前記移動状態検出手段によって検出された前記移動状態に基づき、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色の設定を行うことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のピアノの音色制御装置において、
前記音色設定手段は、
前記移動状態検出手段によって検出された前記移動状態が変化した場合には、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色を、音色が異なる複数種類のピアノの音色のうちのいずれかに変化させるよう、前記移動状態検出手段によって検出された前記移動状態に基づき、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色を設定することを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項14】
請求項13に記載のピアノの音色制御装置において、
前記音色設定手段は、
前記移動状態検出手段によって検出された前記移動状態に対応した、各鍵の押鍵時の静荷重を有するピアノの音色として予め設定された特定種類のピアノの音色に、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色を設定することを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項15】
請求項14に記載のピアノの音色制御装置において、
前記移動状態検出手段によって検出された前記移動状態に対応した、各鍵の押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノに関連した情報であって予め定められたものを明示する明示手段を更に備えたことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項16】
請求項15に記載のピアノの音色制御装置において、
前記移動手段は、
ピアノの外側に引出された操作子を有し、
前記移動手段は、該操作子を操作することで、前記複数のウェイトレバーを鍵の長手方向に移動できるよう構成され、
前記明示手段は、
前記操作子の位置に応じたピアノの外側の箇所に、前記移動状態検出手段によって検出された前記移動状態に対応した、各鍵の押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノに関連した情報であって予め定められたものを明示する明示板として構成されたことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項17】
請求項15又は16に記載のピアノの音色制御装置において、
前記の各鍵の押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノに関連した情報であって予め定められたものが、前記移動状態検出手段によって検出された前記移動状態に対応した、各鍵の押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノの名称と、該特定種類のピアノが歴史上登場した時期と、該特定種類のピアノを用いて作曲活動を行った作曲者名と、該作曲者の代表曲とのうちの少なくとも1つであって予め定められたものであることを特徴とするピアノの音色制御装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれかに記載のピアノの音色制御装置において、
前記音色設定手段は、
前記移動手段により前記複数のウェイトレバーが鍵の長手方向に予め定められた距離だけ移動される毎に、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色が異なるものに変化するよう、前記移動状態検出手段によって検出された前記移動状態に基づく電子楽音の音色の設定を行うことを特徴とするピアノの音色制御装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鍵を操作するとき鍵の演奏側先端にかかる静荷重を調整するための装置を備えたピアノに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、押鍵操作に基づき打弦がなされるピアノとして、ピアノの各鍵の上方に長尺状のウェイトレバーを配置してなるものが知られている(特許文献1の図4参照)。
このピアノでは、ウェイトレバーを鍵の長手方向に移動させることができる。そして、このピアノでは、このようにウェイトレバーを移動させることにより、押鍵時に鍵の演奏側先端にかかる静荷重(換言すれば、演奏者が鍵をゆっくり押し下げようとするときに演奏者の指に知覚される重さ)を連続的に変化させることができる。
【特許文献1】特開2003−216143
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来のピアノでは、ウェイトレバーを鍵の長手方向に移動させることで、押鍵時にピアノから発音される楽音の音色が多少変化する。この音色変化は、ウェイトレバーの移動により鍵の押鍵時の静荷重が変化することに伴い押鍵時の打弦力が変化するため、起きるものである。
【0004】
しかし、ウェイトレバーの移動により起きるこの音色変化は、上述したように押鍵時の打弦力が変化することに伴うものであるため、通常は、電子ピアノにおいて音色を変化させる操作をした場合に起こすことができる音色変化に比べれば、音色変化の度合いが小さなものになり易く、音色変化の自由度が小さい。
【0005】
そこで、本発明は、押鍵操作に基づき打弦がなされるピアノにおいて、鍵の押鍵時の静荷重を変化させることに応じて発生する音色変化の自由度を従来に比べて大きくできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るピアノの音色制御装置は、押鍵された鍵に対応した弦の打弦を行う打弦機構と、静荷重可変装置と、電子楽音設定装置とを備える。
静荷重可変装置は、長尺状に形成された複数のウェイトレバーと、ピアノが有する複数の鍵のうち夫々のウェイトレバーに対応する1つの鍵の上方において、夫々のウェイトレバーの長手方向の一端側部分が、上下方向に揺動自在となり、当該対応する鍵の演奏側とは反対側の上面に自重で接触して、当該対応する鍵に荷重をかけるよう、夫々のウェイトレバーの長手方向の他端側部分を回動自在に支持する支持手段と、複数のウェイトレバーが鍵の長手方向に移動するよう、支持手段を移動させる移動手段と、を備える。
【0007】
そして、静荷重可変装置は、移動手段により複数のウェイトレバーを移動させることで、夫々のウェイトレバーが接触している鍵の押鍵時の静荷重を変化させるよう構成されている。
【0008】
電子楽音設定装置は、移動手段による複数のウェイトレバーの移動状態を検出する移動状態検出手段と、移動状態検出手段によって検出された移動状態が変化した場合には、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色が変化するよう、移動状態検出手段によって検出された移動状態に基づき、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色を設定する音色設定手段と、を備える。
【0009】
本発明の音色制御装置では、移動手段により複数のウェイトレバーが移動されることに基づき押鍵時の静荷重が変化することに応じて、電子楽音の音色が変化される。
つまり、本発明の音色制御装置では、押鍵時の静荷重を変化させることに応じて発生させる音色変化を電子楽音の音色変化として発生させる。
【0010】
電子楽音は、押鍵時に打弦機構による打弦に基づき発生する楽音とは異なり、ピアノが備える弦の振動に基づく楽音ではない。電子楽音の音色は、ピアノが備える弦や打弦機構といった構成による制約を受けず、自由に設定できる。
【0011】
従って、本発明によれば、このように電子楽音の音色設定が自由にできるものである分だけ、押鍵時の静荷重変化に応じて生じる打弦力変化だけに基づき音色を変化させていた従来の場合に比べ、押鍵時の静荷重を変化させることに応じて発生させる音色変化の自由度を大きくできる。
【0012】
具体的には、例えば、押鍵時の静荷重を変化させることに応じて発生させる音色変化の度合いが従来の打弦力変化に基づく音色変化の度合いより大きくなる音色設定が可能となるよう音色設定手段を構成できる。
【0013】
なお、上記において、移動状態検出手段が検出する複数のウェイトレバーの「移動状態」は、鍵の長手方向上の複数のウェイトレバーの位置に対応したものを示すものであれば、特定のものに限定されない。
【0014】
ここでいう「移動状態」は、例えば、鍵の長手方向上の複数のウェイトレバーの位置に対応する情報あるいは信号であっても良い。
また、ここでいう「移動状態」は、例えば、鍵の長手方向上の複数のウェイトレバーの位置自体を示す情報あるいは信号であっても良いし、移動手段が備える部材あるいはその他の部材のうち、複数のウェイトレバーが移動手段によって移動されることに連動して移動される部材、の位置自体を示す情報あるいは信号であっても良い。
【0015】
本発明の音色制御装置において、打弦機構は、例えば、略平行に配設された発音のための複数の弦と、各弦毎に設けられ、押鍵に基づき各弦を打弦するハンマと、各ハンマを夫々支持するハンマシャンクと、を少なくとも有するものとして構成されていても良い。
【0016】
また、打弦機構は、上述の構成に加え、ハンマによる打弦時に弦から離間され、打弦後に弦に当接されて弦の振動を抑制するダンパと、ダンパを支持するダンパレバーワイヤと、を各弦毎に備えたものであってもよい。
【0017】
本発明の音色制御装置を備えたピアノにおいて、例えば、押鍵時に打弦機構による打弦がなされるアコースティック演奏モードと、押鍵時に打弦機構による打弦が阻止され電子楽音が出力される電子楽音演奏モードとの切り換えが好適にできるよう、本発明の音色制御装置は、止音機構を更に備えていても良い。
【0018】
止音機構は、押鍵時に押鍵された鍵に対応するハンマが打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、該ハンマの打弦動作に連動して駆動される連動部材に当接することで、該ハンマによる打弦を阻止する当接部材を有していても良い。
【0019】
このように止音機構が当接部材を備える場合、止音機構は、当接部材の位置を「当接部材の止音位置」と「当接部材の退避位置」とのうちのいずれかに位置決めする位置決め機構を備えていても良い。
【0020】
ここで、「当接部材の止音位置」とは、ハンマが打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に連動部材に対する当接部材の当接が起きる、当接部材の位置のことである。「当接部材の退避位置」とは、当接部材が「当接部材の止音位置」から退避されることで、ハンマが打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、連動部材に当接部材が当接せず、ハンマによる打弦がなされる、当接部材の位置のことである。
【0021】
そして、この場合には、位置決め機構により当接部材の位置を「当接部材の止音位置」に位置決めすることで、押鍵された鍵に対応したハンマによる打弦が阻止される。これにより、例えば、上述した電子楽音演奏モードを好適に実現できる。
【0022】
また、位置決め機構により当接部材の位置を「当接部材の退避位置」に位置決めすることで、押鍵された鍵に対応したハンマによる打弦が許容される。これにより、例えば、上述したアコースティック演奏モードを好適に実現できる。
【0023】
一方、止音機構は、押鍵時に押鍵された鍵に対応するハンマが打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、該ハンマを支持するハンマシャンクに当接することで、該ハンマによる打弦を阻止するものであっても良い。
【0024】
この場合、止音機構は、長尺状のダンパストップレールと、位置決め機構とを備えたものであっても良い。
ここで、ダンパストップレールは、ダンパレバーワイヤとハンマシャンクとの間に配置される部材である。ダンパストップレールは、ハンマによる打弦時にダンパが弦から離間されたときにダンパレバーワイヤに当接してダンパを予め定めた停止位置で停止させる。
【0025】
また、この場合の位置決め機構は、ダンパストップレールの位置を「ダンパストップレールの止音位置」と「ダンパストップレールの退避位置」とのうちのいずれかに位置決めする機構である。
【0026】
ここでいう「ダンパストップレールの止音位置」とは、ハンマが打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、該ハンマを支持するハンマシャンクに対するダンパストップレールの当接がおきる、ダンパストップレールの位置のことである。「ダンパストップレールの退避位置」とは、ダンパストップレールが「ダンパストップレールの止音位置」から退避されることで、ハンマが打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、ハンマシャンクにダンパストップレールが当接せず、ハンマによる打弦がなされる、ダンパストップレールの位置のことである。
【0027】
この場合には、位置決め機構によりダンパストップレールの位置を「ダンパストップレールの止音位置」に位置決めすることで、押鍵された鍵に対応したハンマによる打弦が阻止される。これにより、例えば、上述した電子楽音演奏モードを好適に実現できる。
【0028】
また、位置決め機構によりダンパストップレールの位置を「ダンパストップレールの退避位置」に位置決めすることで、押鍵された鍵に対応したハンマによる打弦が許容される。これにより、例えば、上述したアコースティック演奏モードを好適に実現できる。
【0029】
本発明の音色制御装置が上述した止音機構のいずれかを備える場合、本発明の音色制御装置は、移動状態検出手段によって検出された移動状態に基づき、止音機構を動作させ、ハンマによる打弦を止音機構によって阻止しない許容状態と、ハンマによる打弦を止音機構によって阻止する阻止状態とのうちのいずれかになるよう止音機構の設定を行う止音機構設定手段を更に備えていても良い。
【0030】
このようにすれば、移動手段により押鍵時の静荷重を変化させることにより、電子楽音の音色変化と、止音機構の動作による「許容状態」、「阻止状態」間の変化と、の両方を実現できる。
【0031】
なお、ここでいう「許容状態」とは、「当接部材の退避位置」または「ダンパストップレールの退避位置」のことである。また、ここでいう「阻止状態」とは、「当接部材の止音位置」または「ダンパストップレールの止音位置」のことである。
【0032】
このように本発明の音色制御装置が止音機構設定手段を備える場合、本発明の音色制御装置は、次の出力設定手段を備えていても良い。
出力設定手段は、止音機構設定手段により、ハンマによる打弦を阻止する阻止状態になるよう止音機構の設定がされている場合だけ、音色設定手段によって設定された音色の電子楽音を押鍵操作に応じて当該音色制御装置外部に出力させる。
【0033】
このようにすれば、移動手段により押鍵時の静荷重を変化させることにより、本発明の音色制御装置を備えたピアノから押鍵動作に応じて発生する楽音の音色変化を、電子楽音の音色変化として発生させることができるだけでなく、電子楽音の音色と打弦機構による打弦に基づく楽音(アコースティックピアノの音)の音色との間の音色変化としても発生させることができるようになる。
【0034】
そして、本発明の音色制御装置が出力設定手段を備える場合には、音色設定手段は次のように構成されたものであっても良い。
すなわち、音色設定手段は、止音機構設定手段によって止音機構が動作され阻止状態とされる場合だけ、移動状態検出手段によって検出された移動状態に基づき、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色の設定を行うものとして構成されていても良い。
【0035】
このようにすれば、押鍵操作に応じて音色制御装置外部に電子楽音が出力される場合だけ音色設定手段による電子楽音の音色設定が実行される。つまり、押鍵操作に応じて音色制御装置外部に電子楽音が出力されない場合には音色設定手段による電子楽音の音色設定が省かれる。
【0036】
従って、この場合には、電子楽音が出力されない場合にも音色設定手段による電子楽音の音色設定が実行される場合に比べ、音色制御装置によって実行される制御を合理化できる。
【0037】
本発明の音色制御装置において、移動手段は、複数のウェイトレバーを鍵の長手方向における予め定められた移動範囲内の位置に移動させるものとして構成されていても良い。
このように移動手段が構成されている場合、止音機構設定手段は、上記予め定められた移動範囲内の複数のウェイトレバーの位置のうち、各鍵の押鍵時の静荷重を予め定められた荷重範囲内の静荷重にする位置に複数のウェイトレバーの位置が変化した場合に移動状態検出手段によって検出される移動状態に基づき、ハンマによる打弦がなされるよう止音機構の設定を行うものとして構成されていても良い。
【0038】
また、止音機構設定手段がこのように構成されている場合には、止音機構設定手段は、更に、上記予め定められた移動範囲内の複数のウェイトレバーの位置のうち、各鍵の押鍵時の静荷重を上記予め定められた荷重範囲内の静荷重以外の静荷重にする位置に複数のウェイトレバーの位置が変化した場合に移動状態検出手段によって検出される移動状態に基づき、ハンマによる打弦が阻止されるよう止音機構の設定を行うものとして構成されていても良い。
【0039】
このようにすれば、例えば、移動手段により、各鍵の押鍵時の静荷重が上記予め定められた荷重範囲内の静荷重とされた場合には、上述したアコースティック演奏モードを好適に実現できる一方、各鍵の押鍵時の静荷重が上記予め定められた荷重範囲内の静荷重以外の静荷重とされた場合には上述した電子楽音演奏モードを好適に実現できるという効果が得られる。
【0040】
ここで、上記予め定められた移動範囲内の複数のウェイトレバーの位置のうち、各鍵の押鍵時の静荷重を予め定められた荷重範囲内の静荷重にする位置については、複数のウェイトレバーを上記予め定められた移動範囲内で移動させることで得られる最大の静荷重に各鍵の押鍵時の静荷重を設定する位置を含んだものであっても良い。
【0041】
このようにすれば、例えば、各鍵の押鍵時の静荷重が比較的大きくなる演奏モードとして上述したアコースティック演奏モードを好適に実現できるという効果が得られる。
本発明の音色制御装置が上述した止音機構のいずれかを備える場合、本発明の音色制御装置は、止音機構によりハンマによる打弦を阻止する阻止状態にされたか否かを検出する阻止状態検出手段を更に備えていても良い。
【0042】
この場合、本発明の音色制御装置は、阻止状態検出手段により阻止状態であると検出された場合だけ、音色設定手段によって設定された音色の電子楽音を押鍵操作に応じて当該音色制御装置外部に出力させる出力許容手段を更に備えていても良い。
【0043】
このようにすれば、止音機構によりハンマによる打弦が阻止された阻止状態においては、電子楽音と、打弦機構による打弦に基づく楽音(アコースティックピアノの音)と、のうち、電子楽音だけを押鍵動作に応じて発生させることができる。一方、止音機構によりハンマによる打弦が阻止されない許容状態においては、電子楽音と、打弦機構による打弦に基づく楽音と、のうち、打弦機構による打弦に基づく楽音だけを押鍵動作に応じて発生させることができる。
【0044】
そして、本発明の音色制御装置が阻止状態検出手段と出力許容手段とを備える場合には、音色設定手段は次のように構成されたものであっても良い。
すなわち、音色設定手段は、阻止状態検出手段により阻止状態であると検出された場合だけ、移動状態検出手段によって検出された移動状態に基づき、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色の設定を行うものとして構成されていても良い。
【0045】
このようにすれば、押鍵操作に応じて音色制御装置外部に電子楽音が出力される場合だけ音色設定手段による電子楽音の音色設定が実行される。つまり、押鍵操作に応じて音色制御装置外部に電子楽音が出力されない場合には音色設定手段による電子楽音の音色設定が省かれる。
【0046】
従って、この場合には、電子楽音が出力されない場合にも音色設定手段による電子楽音の音色設定が実行される場合に比べ、音色制御装置によって実行される制御を合理化できる。
【0047】
本発明において、音色設定手段によって設定される電子楽音の音色としては種々の態様が考えられ、特定のものに限定されないが、次の態様も考えられる。
すなわち、音色設定手段は、移動状態検出手段によって検出された移動状態が変化した場合には、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色を、音色が異なる複数種類のピアノの音色のうちのいずれかに変化させるよう、移動状態検出手段によって検出された移動状態に基づき、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色を設定するものとして構成されていても良い。
【0048】
このようにすれば、移動手段により複数のウェイトレバーを移動させることで、本発明の音色制御装置を備えたピアノを演奏する演奏者に、当該ピアノを、各鍵の押鍵時の静荷重と、押鍵時に発生する楽音の音色との両方が異なる複数種類のピアノとして体感させることができる。
【0049】
そして、この場合には、音色設定手段は、更に、移動状態検出手段によって検出された移動状態に対応した、各鍵の押鍵時の静荷重を有するピアノの音色として予め設定された特定種類のピアノの音色に、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色を設定するものとして構成されていても良い。
【0050】
このようにすれば、移動手段により複数のウェイトレバーを移動させることで、本発明の音色制御装置を備えたピアノを演奏する演奏者に、当該ピアノを、各鍵の押鍵時の静荷重と、押鍵時に発生する楽音の音色との両方が異なる複数の特定種類のピアノとして体感させることができる。
【0051】
また、このように音色設定手段が予め設定された特定種類のピアノの音色に電子楽音の音色を設定する場合には、本発明の音色制御装置は明示手段を更に備えていても良い。
明示手段は、移動状態検出手段によって検出された移動状態に対応した、各鍵の押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノに関連した情報であって予め定められたものを明示するものとして構成される。
【0052】
このようにすれば、移動手段による複数のウェイトレバーの移動状態に応じて、本発明の音色制御装置を備えたピアノを演奏する演奏者に、当該ピアノを、複数の特定種類のピアノのうちのどのピアノであるかを認識させることができる。
【0053】
ここで、移動手段は、ピアノの外側に引出された操作子を有していても良い。この場合、移動手段は、該操作子を操作することで、複数のウェイトレバーを鍵の長手方向に移動できるよう構成されていても良い。
【0054】
そして、移動手段がこのように操作子を備える場合には、明示手段は、操作子の位置に応じたピアノの外側の箇所に、移動状態検出手段によって検出された移動状態に対応した、各鍵の押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノに関連した情報であって予め定められたものを明示する明示板として構成されていても良い。
【0055】
なお、上記において、明示手段あるいは明示板が明示する「各鍵の押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノに関連した情報であって予め定められたもの」については、移動状態検出手段によって検出された移動状態に対応した、各鍵の押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノの名称と、該特定種類のピアノが歴史上登場した時期と、該特定種類のピアノを用いて作曲活動を行った作曲者名と、該作曲者の代表曲とのうちの少なくとも1つであって予め定められたものであっても良い。
【0056】
そして、この場合、上記「特定種類のピアノ」は、例えば、歴史上実在した複数種類の実際のピアノのうちのいずれかであっても良い。
このようにすれば、音色設定手段が予め設定された特定種類のピアノの音色に電子楽音の音色を設定する場合には、移動手段により複数のウェイトレバーを移動させることで、本発明の音色制御装置を備えたピアノを演奏する演奏者に、当該ピアノを、歴史上実在した複数種類の実際のピアノとして体感させることができる。
【0057】
一方、本発明の音色制御装置において、音色設定手段は、移動手段により複数のウェイトレバーが鍵の長手方向に予め定められた距離だけ移動される毎に、各鍵の押鍵動作に応じて発生させる電子楽音の音色が異なるものに変化するよう、移動状態検出手段によって検出された移動状態に基づく電子楽音の音色の設定を行うものとして構成されていても良い。
【0058】
このようにすれば、移動手段により複数のウェイトレバーが鍵の長手方向に予め定められた距離だけ移動される毎に、本発明の音色制御装置を備えたピアノを演奏する演奏者に、当該ピアノを、各鍵の押鍵時の静荷重と、押鍵時に発生する楽音の音色との両方が異なる別のピアノであると体感させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明が適用された実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態をとり得る。
[第1実施形態]
本実施形態のピアノの音色制御装置は、打弦機構1と、静荷重可変装置50と、止音機構100と、明示板200と、制御機構300とを備える。以下、まず、本実施形態の音色制御装置が備える各構成要素の構成につき説明する。
【0060】
[打弦機構1が有する鍵周辺の構成と静荷重可変装置50の構成に関する説明]
図1は、本実施形態の音色制御装置が有する打弦機構1と静荷重可変装置50との関係を示す側面断面図である。
【0061】
図1に示すように、打弦機構1は、鍵3と、アクション機構20とを有する。打弦機構1は、演奏者の押鍵動作による鍵3の動きを、アクション機構20による打弦運動に変える働きをする。
【0062】
このうち、鍵3は、ピアノ1台あたり88鍵設置され、筬中5を支点に揺動できるように設置されている。この鍵3は押鍵されると、鍵3の揺動時の支点を境に演奏者側とは反対側となる鍵3の部分が上昇して、その押鍵動作をアクション機構20に伝達する。
【0063】
具体的には、押鍵動作は、鍵3の演奏者側とは反対側となる部分の先端に設けられたキャプスタンワイヤー7の先のキャプスタンボタン9を介してアクション機構20に伝達され、そして更にハンマ26(図4参照)に伝達される。
【0064】
以下の説明では、鍵3の演奏者側(図1右側)を手前側、その反対側(図1左側)を奥側と言う。また、ピアノの幅方向(鍵3の配列方向;図1の紙面に垂直な方向)を左右方向とも言う。
【0065】
静荷重可変装置50は、各鍵3毎に1つずつ設けられてなる複数のウェイトレバー52と、複数のウェイトレバー52を支持する支持装置54と、複数のウェイトレバー52を支持装置54と共に鍵3の長手方向(詳しくは、鍵3の演奏部分3aの長手方向(図2参照))に移動させる移動装置56と、を備える。
【0066】
このうち、支持装置54は、ストッパーレール58と、複数のフレンジ60と、複数のレール支持部材62と、を備える。また、移動装置56は、スライドレール64と、フレンジ66と、アーム68と、を備える。
【0067】
まず、支持装置54の構成要素について説明する。ストッパーレール58は、鍵3の奥側の上部において、複数の鍵3(本実施形態では全ての鍵3)を跨ぐように左右方向に延設された長尺状の部材である。
【0068】
ストッパーレール58の左右方向の両端及び中間部分(ブレイク部分)は、それぞれ、上下方向に延在するレール支持部材62によって支持されている。
ストッパーレール58の手前側部分には、鍵3毎に上下方向に長いフレンジ60が上部をネジ止めされて固定されている。更に、そのフレンジ60の下部に設けられた回動軸60aには鍵3毎にウェイトレバー52が回動自在に取り付けられている。
【0069】
個々のウェイトレバー52は、長尺状の部材であり、その長手方向が鍵3の長手方向(具体的には、鍵3の演奏部分3aの長手方向(図2参照))と略平行になるよう配置されている。ウェイトレバー52では、手前側の端部52aが回動軸60aに回動自在に取り付けられることで、奥側の端部52bが上下方向に揺動して鍵3の演奏者側とは反対側となる部分(詳しくは、後述するレバー受けスクリュー4)に自重で接触して当該鍵3に荷重をかけるようにされている。ウェイトレバー52の側面にはウェイトレバー52の重量を調整するために鉛等からなる錘70が埋め込まれている。
【0070】
ウェイトレバー52の上面には、ウェイトレバー52がストッパーレール58と接触した際に発生する音を軽減させるための緩衝材72が設けられている。一方、ウェイトレバー52の下面には、ウェイトレバー52の直下である鍵3の上面部分に設けられたレバー受けスクリュー4とウェイトレバー52との接触時の発生音を軽減するための緩衝材74が設けられている。レバー受けスクリュー4におけるウェイトレバー52との接触部は丸みをおびた形状となっている。
【0071】
尚、緩衝材72,74は、ウェイトレバー52とストッパーレール58あるいはレバー受けスクリュー4との接触時の発生音を軽減できるものであれば、特定の素材のものに限定されない。緩衝材72,74の素材としては、例えば、フェルト、クロス、ゴム等が考えられる。
【0072】
上記の複数のレール支持部材62は、それぞれ、スライドレール64の上レール64aに固定されている。レール支持部材62の個数に対応して複数存在するスライドレール64はそれぞれ類似の形状を有しているため、以下ではその1つについて説明する。
【0073】
スライドレール64は、棚板48の上において鍵3に平行となるよう(詳しくは、鍵3の演奏部分3aの長手方向と平行となるよう(図2参照))、上述したレール支持部材62の下に設置されている。
【0074】
スライドレール64は、上レール64aと下レール64bとによって構成され、そのうち下レール64bの方はピアノ本体に固定されている。また、下レール64bと上レール64aの間には両者の摩擦を低減されるためのベアリング(図示せず)が設けられており、上レール64aは下レール64bの上を、奥側(図1の左側)と手前側(図1の右側)との間で自在にスライドできるようになっている。
【0075】
そして、上レール64aのスライドに伴って上レール64aに固定されているレール支持部材62も奥側と手前側との間で移動し、この移動に伴って、ストッパーレール58、及びストッパーレール58に取り付けられている複数のフレンジ60及び複数のウェイトレバー52等も移動する。
【0076】
また、複数存在するスライドレール64のうち、左右方向において最も外側に設置されたスライドレール64の上レール64aの手前側先端にはフレンジ66が設けられており、フレンジ66が備えるアームピン66aが、アーム68から与えられる上レール64aのスライド方向以外の力を逃がし、アーム68と上レール64aとを連動させる役目を担っている。
【0077】
アーム68は、複数存在するスライドレール64のうち、左右方向において最も外側に設置されたスライドレール64の上レール64aにのみ取り付けられている。すなわち、アーム68は2本存在する。アーム68のそれぞれの一端68aは、棚板48の下面に設けられた取り付け部76において連結シャフト78を中心にして回転可能に取り付けられている。その結果、2本のアーム68は連結シャフト78を介して連動する。一方、アーム68の他端68bは棚板48の下部から棚板48を突き抜けて鍵3まで延びている。
【0078】
尚、2本のアーム68のうち一方の他端68bは、更にピアノが備えるケース部材(図示せず)を貫通してピアノの外側にまで操作子68cとして突出しており(図3参照)、演奏者がピアノを開けることなくアーム68(操作子68c)を操作できるようになっている。
【0079】
[静荷重可変装置50の作動に関する説明]
次に、静荷重可変装置50の作動に関する説明を行う。
演奏者がピアノの外部に引出された一方のアーム68の端部68b(操作子68c)を操作することで、アーム68を矢印A(図1,図3参照)の方向に回転させると、上レール64aが奥側にスライドし、そのスライドに伴って複数のレール支持部材62、ストッパーレール58、複数のフレンジ60及び複数のウェイトレバー52が奥側(矢印Bに示す方向(図1参照))に移動する。
【0080】
また、演奏者がピアノの外部に引出された一方のアーム68の端部68b(操作子68c)を操作することで、アーム68を矢印Aと逆方向に回転させると、上レール64aが手前側にスライドし、そのスライドに伴って複数のレール支持部材62、ストッパーレール58、複数のフレンジ60及び複数のウェイトレバー52が手前側(矢印Bに示す方向と反対方向)に移動する。
【0081】
操作子68cは、矢印A(図1,図3参照)の方向上の予め定められた移動範囲X内(図3参照)で移動できるよう構成されている。つまり、本実施形態では、操作子68cを上記の移動範囲X内で移動できることに対応して、複数のウェイトレバー52を鍵3の長手方向における予め定められた移動範囲内の位置に移動させることができる。
【0082】
このように、本実施形態では、演奏者がアーム68の端部68b(操作子68c)を操作することによってウェイトレバー52等の位置を変更させることができ、それに伴って個々のウェイトレバー52の鍵3(レバー受けスクリュー4)に対する作用点が移動する。その結果、鍵3の押鍵時の静荷重を連続的に調整することができる。
【0083】
また、上述したように2本のアーム68は連動するよう構成されているため、そのうち一方をピアノの外側から操作するだけで全てのウェイトレバー52を均一に移動させることが可能である。
【0084】
次に、鍵3を上方から見た図を用いてウェイトレバー52とレバー受けスクリュー4との関係を説明する。図2は低音側の鍵3、ウェイトレバー52及びレバー受けスクリュー4を一組だけ抜き出したものを上方から見た図であり、図2(a)はウェイトレバー52が手前側にある場合、図2(b)はウェイトレバー52が奥側にある場合を示した図である。鍵3は、低音側の鍵3であるため、中間部3bで屈折している。尚、図示しないが、高音側の鍵3は、図2で示した鍵3とは逆側に屈折している。
【0085】
図2からわかるように、本実施形態では、ウェイトレバー52を鍵3の演奏部分3aと平行に移動させても、レバー受けスクリュー4によってウェイトレバー52が支持された状態が維持される。
【0086】
つまり、本実施形態では、レバー受けスクリュー4を鍵3に設けることによって、ウェイトレバー52を鍵3の奥側部分3cと平行に移動させなくても、鍵3の演奏部分3aと平行に移動させるだけで、鍵3の押鍵時の静荷重を連続的に調整することができる。
【0087】
[明示板200の構成に関する説明]
図3は、本実施形態の音色制御装置が備える明示板200と操作子68cとの関係を示す図である。
【0088】
本実施形態では、アーム68(操作子68c)を矢印Aの方向に回転させるに従い、鍵3の押鍵時の静荷重が大きくなり、逆に、アーム68(操作子68c)を矢印Aと逆方向に回転させるに従い、鍵3の押鍵時の静荷重が小さくなるよう、静荷重可変装置50が構成されている(図1,3参照)。
【0089】
そして、本実施形態では、図3に示すように、操作子68cの矢印A方向上の位置に応じたピアノの外側の箇所に、操作子68cの位置毎に実現される押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノに関連した情報であって予め定められたものを明示する明示板200が配置されている。
【0090】
本実施形態では、「操作子68cの位置毎に実現される押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノに関連した情報」として、明示板200には、以下の(1)〜(3)の情報が表示されている。
(1)操作子68cの位置毎に実現される押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノの名称。具体的には、「HAMMER FLUGEL」、「STEIN」、「BROADWOOD」、「PLEYEL」(登録商標)、「ERARD」、「KAWAI」(登録商標)といった歴史上実在した実際のピアノの名称(ここでいう「名称」には商標を含む)。
(2)上記(1)で明示した特定種類のピアノが歴史上登場した時期。具体的には、「HAMMER FLUGEL」が歴史上登場した年代である「1750」、「STEIN」が歴史上登場した年代である「1780」、「BROADWOOD」が歴史上登場した年代である「1820」、「PLEYEL」が歴史上登場した年代である「1845」、「ERARD」が歴史上登場した年代である「1860」、「KAWAI」が歴史上登場した年代である「1950」。
(3)上記(1)で明示した特定種類のピアノを用いて作曲活動を行った作曲者名。具体的には、「HAMMER FLUGEL」を用いて作曲活動を行ったバッハ「BACH」、「STEIN」を用いて作曲活動を行ったモーツアルト「MORZALT」、「BROADWOOD」を用いて作曲活動を行ったベートーベン「BEETHOOVEN」、「PLEYEL」を用いて作曲活動を行ったショパン「CHOPIN」、「ERARD」を用いて作曲活動を行ったリスト「LISZT」。
【0091】
なお、上記(1)〜(3)の情報の他、上記(1)で明示した特定種類のピアノを用いて作曲活動を行った作曲者の代表曲名が、「操作子68cの位置毎に実現される押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノに関連した情報」として、明示板200に表示されても良い。
【0092】
[打弦機構1が有するアクション機構20の構成と止音機構100の構成に関する説明]
図4は、本実施形態の音色制御装置における、止音機構100と、打弦機構が備えるアクション機構20との関係を示す側面断面図である。図5は、本実施形態における止音機構100が備える止音装置(ダンパストップレール)の構成を示す分解斜視図である。図6は、本実施形態における止音機構100全体の構成を示す斜視図である。図7は、本実施形態における止音機構100の変位状態を説明する説明図である。
【0093】
図4に示すように、アクション機構20は、ハンマ26を中心とするハンマ機構21と、ダンパ35を中心とするダンパ機構31と、を備える。
ハンマ機構21では、各鍵3に対応するように設けられ、ハンマシャンク25に支持されたハンマ26が、鍵3の押鍵操作がなされた際に、打弦動作を行うよう構成されている。
【0094】
ダンパ機構31では、各鍵3に対応するように設けられ、ダンパレバーワイヤ34に支持されたダンパ35が、ハンマ26による打弦時には弦30から離間され、打弦後に弦30に当接されて弦30の振動を抑制するよう構成されている。
【0095】
ハンマ機構21は、ウイッペン22と、ジャック23と、バット24と、ハンマシャンク25と、ハンマ26と、キャッチャシャンク27と、キャッチャ28と、ハンマレール29と、弦30と、を各鍵3毎に備える。
【0096】
ウイッペン22は、ウイッペンフレンジ38を介してセンターレール39に回動可能に支持されている。ウイッペン22は、鍵3に設けられたキャプスタンボタン9が当該鍵3の押鍵時に上昇されることに伴い、上向きに回動する。
【0097】
ジャック23は、ウイッペン22に回動可能に連結されている。上記のようにウイッペン22が上向きに回動した際に、ジャック23は、ジャックテール23aがレギュレチングボタン40に当接するまでウイッペン22と共に上昇する。
【0098】
バット24は、ジャック23に対して当接・離間すると共に、センターレール39に固着されたバットフレンジ24aのセンターピン24bに回動可能に支持されている。
ハンマシャンク25は、バット24に連結され、バット24がジャック23により突き上げられると、反時計回りに回動する。
【0099】
ハンマ26は、ハンマシャンク25の先端に装着されている。押鍵操作に伴い、ハンマシャンク25が上記のように反時計回りに回動されると、ハンマ26による弦30の打弦がなされる。
【0100】
キャッチャシャンク27は、ハンマシャンク25と直交する方向に突出するようバット24に設けられ、キャッチャシャンク27の先端にはキャッチャ28が設けられている。
ハンマレール29は、打弦後に揺り戻されたハンマシャンク25の側部と当接してハンマ26の振動を緩和する緩衝部29aをその表面に有している。
【0101】
ダンパ機構31は、支持部材32と、ダンパレバー33と、ダンパレバーワイヤ34と、ダンパ35と、ダンパレバースプリング36と、ダンパスプーン37と、を各鍵3毎に備える。
【0102】
支持部材32は、センターレール39にダンパ機構31を支持する部材として取り付けられている。
ダンパレバー33は、支持部材32の固定軸32aにより、弦30に向けて揺動可能に支持されている。ダンパレバーワイヤ34は、ダンパレバー33の上端部から上方に伸びた部材として構成されている。
【0103】
ダンパ35は、ダンパヘッド35aと、ダンパヘッド35aに設けられた緩衝材35b(本実施形態では、フェルトからなる緩衝材35b)と、を備える。緩衝材35bは、ハンマ26による打弦後に弦30に当接することで、弦30の振動を抑制する。
【0104】
ダンパレバースプリング36は、ダンパレバー33の上端部と支持部材32とに当該ダンパレバースプリング36の両端部が固定されることで、ダンパ35の緩衝材35bが弦30に当接する方向にダンパレバー33を付勢する。
【0105】
ダンパスプーン37は、ウイッペン22におけるキャプスタンボタン9とは反対側の端部に設けられ、ウイッペン22の回動に応じてダンパレバー33の下端部に当接するよう構成されている。
【0106】
一方、図4、6に示すように、止音機構100は、ダンパストップレール102と、位置決め機構120と、を備える。そして、位置決め機構120は、支持機構122と、回動機構130とを備える。
【0107】
図4に示すように、ダンパストップレール102は、ダンパレバーワイヤ34とハンマシャンク25との間に配置されている。押鍵によりダンパレバー33がダンパ35を弦30から離間させる方向(図中右方向)に回転した際に、ダンパストップレール102は、ダンパレバーワイヤ34に当接して、その回転を停止させる。
【0108】
本実施形態では、ダンパストップレール102は、ピアノの各音階のダンパレバーワイヤ34の移動を阻止できるよう、ピアノの幅方向(鍵3の配列方向)に全音域に渡って延在する長尺状の部材として構成されている。
【0109】
ダンパストップレール102は、基材104と、止音部材106と、緩衝材112,114と、を有する。
基材104は、ピアノの幅方向に全音域に渡って延在する長尺状の部材であり、その断面は、平行に配置された1組の長辺と1組の短辺とを有する長方形となるよう構成されている。ピアノの幅方向に直交する方向を向いた、基材104が有する4つの側面のうちの1つの側面であって、基材104の断面の長手方向上に存在する2つの側面のうちの一方の側面には、止音部材106が設けられている。
【0110】
図5に示すように、止音部材106は、基台108と、緩衝材110とを備える。
基台108は、基材104と略同じ長さの板材からなっており、その板面には、固定ねじ111aを挿通するための複数の取付け孔108aが、当該基台108の長手方向に沿って略等間隔に穿設されている。
【0111】
そして、基台108は、これら各取付け孔108aに各固定ねじ111aを挿通し、この挿通された各固定ねじ111aの周囲にコイルスプリング111bを配設して、コイルスプリング111bを基材104と基台108との間で挟持させ、更に、各固定ねじ111aを基材104側の各取付け孔104aに螺入する、といった手順で基材104に固定されている。
【0112】
本実施形態のダンパストップレール102では、基台108の基材104からの突出量を、各固定ねじ111aの基材104への螺入量によって調整できる。
緩衝材110は、基台108における基材104と反対側の面に設けられている。また、基材104における止音部材106と反対側の側面およびこの側面と直交する一方の側面には、緩衝材112,114が設けられている。
【0113】
止音部材106の緩衝材110は、後述のように、当該緩衝材110がハンマシャンク25と対向する位置(止音位置)にダンパストップレール102が配置された際に、ハンマシャンク25に当接することで、ハンマ26による打弦を阻止する。また、緩衝材112,114は、ダンパレバーワイヤ34に当接して、その回転移動を阻止する。
【0114】
緩衝材110,112,114は、ダンパレバーワイヤ34、或いは、ハンマシャンク25と当接した際の衝撃を吸収できるよう、クッションフェルト、或いは、ゴム、合成樹脂等からなる弾性材により形成されている。
【0115】
一方、図4,6に示すように、支持機構122は、支持軸124と、アクションブラケット126と、を備える。
支持軸124は、基材104の長手方向(左右方向)上の両端部に突設されている軸材であり、ダンパストップレール102をアクションブラケット126に回動可能に固定している。
【0116】
ここで、アクションブラケット126は、センターレール39やハンマレール29を固定するために、ピアノの鍵3の配列方向上の複数箇所(例えば、左右両端とその中央部の3箇所)に設けられたものである。
【0117】
本実施形態では、ダンパストップレール102は、支持軸124を介して、ダンパストップレール102の左右両側に配置されたアクションブラケット126に回動自在に固定されている。
【0118】
次に、回動機構130は、図6に示す如く、アーム132と、コイルスプリング134と、ワイヤ136と、を有する。
ダンパストップレール102の左右両端から突出された支持軸124のうち、一方の支持軸124は、アクションブラケット126から更に突出されている。アーム132は、当該支持軸124の先端部に固定されている。アーム132は、長尺状の板材からなっており、その長手方向上の略中心位置にて支持軸124に固定されている。
【0119】
アーム132の両端には、アーム132の各端部を同一方向に引っ張るためのコイルスプリング134とワイヤ136が夫々取り付けられている。ワイヤ136におけるアーム132と反対側の一端は、固定部材138を介してピアノの側板に固定されたチューブ140に通され、更に、アクチュエータ320(図8も参照)に接続されている。
【0120】
アクチュエータ320は、CPU302(図8参照)からの制御信号に基づき、ワイヤ136を矢印C方向(図6参照)あるいは矢印C方向と反対方向に移動させる。ワイヤ136のこの移動により、支持軸124(延いては、ダンパストップレール102)の回動位置が調整される。
【0121】
[止音機構100の作動に関する説明]
次に、止音機構100の作動に関する説明を行う。
本実施形態では、上述のアクチュエータ320によるワイヤ136の移動により、ダンパストップレール102の回動位置が、止音位置と退避位置とのいずれかに切り替えられる。
【0122】
ここで、止音位置とは、図7に破線で示すダンパストップレール102の位置のことである(なお、図4でも、ダンパストップレール102が止音位置にある状態が示されている)。
【0123】
止音位置では、ダンパストップレール102の止音部材106がハンマシャンク25と対向し、ダンパストップレール102における止音部材106と反対側側面に設けられた緩衝材112がダンパレバーワイヤ34と対向する。
【0124】
この場合には、押鍵された鍵3に対応するハンマ26が打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、止音部材106がハンマシャンク25に当接することで、ハンマ26による打弦を阻止する。
【0125】
また、退避位置とは、図7に実線で示すダンパストップレール102の位置のことである。退避位置では、ダンパストップレール102が止音位置から退避されることで、止音部材106が支持軸124の下方に位置し、基材104における止音部材106が設けられた側面と直交する側面に設けられた緩衝材114がダンパレバーワイヤ34と対向する。
【0126】
この場合には、押鍵された鍵3に対応するハンマ26が打弦動作を開始してから実際に打弦を行うまでの間に、止音部材106がハンマシャンク25に当接することはなく、ハンマ26による打弦がなされる。
【0127】
[制御機構300の構成に関する説明]
図8は、本実施形態の音色制御装置が有する制御機構300の構成を説明するブロック図である。
【0128】
本実施形態では、制御機構300は、中央処理装置(以下、「CPU」という)302と、プログラムメモリ、ワークメモリを含むものとして構成された音源制御データ生成部304と、音源306とがシステムバス308で相互に接続されたものとして構成されている。システムバス308は、制御機構300が有する各構成要素間でアドレス信号、データ信号、あるいは制御信号等を送受するために使用される。
【0129】
CPU302には、位置センサ310,312と、キーセンサ314と、アクチュエータ320と、が接続されている。
本実施形態では、位置センサ310は、操作子68cの矢印A方向上の位置(図3参照)を検出するセンサであり、本実施形態では、この位置センサ310により、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の移動状態が検出され、CPU302に出力される。
【0130】
なお、位置センサ310は、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の移動状態を検出することができるものであれば、特定のものに限定されない。位置センサ310は、例えば、下レール64bに対する上レール64aのスライド位置を検出するものであっても良いし、または、支持装置54あるいはウェイトレバー52の鍵3の長手方向上の位置を検出するものであっても良い。
【0131】
一方、位置センサ312は、ワイヤ136の矢印C方向上の位置(図6参照)を検出するセンサであり、本実施形態では、この位置センサ312により、ダンパストップレール102の回動位置が検出され、CPU302に出力される。後述のように、CPU302では、位置センサ312からの入力信号に基づき、ダンパストップレール102の回動位置が止音位置と退避位置とのうちいずれであるかが判断される。
【0132】
尚、位置センサ310,312は、例えば、可変抵抗式、あるいは光センサ式等の位置センサとして構成可能である。
キーセンサ314は、各鍵3の押鍵操作を検出するための非接触式センサ(光センサ等)である。キーセンサ314は、鍵3が所定以上の深さまで押し下げられたときに、当該鍵3の押鍵がなされた旨を示す押鍵信号を生成し、CPU302に出力する。
【0133】
なお、キーセンサ314としては、異なる押鍵深さでそれぞれ第1押鍵信号および第2押鍵信号を生成してCPU302に出力するものであっても良い。このようにキーセンサ314を構成すれば、第1押鍵信号および第2押鍵信号に基づき、CPU302が、押鍵の速さ(強さ)を表すベロシティデータを生成して、当該データを電子楽音の発音強弱に反映させることができる。
【0134】
アクチュエータ320は、上述したように、CPU302からの制御信号に基づき、ワイヤ136(図6参照)を矢印C方向あるいは矢印C方向と反対方向に移動させることで、ダンパストップレール102の回動位置を変化させる(図4、7参照)。
【0135】
一方、CPU302は、位置センサ310,312やキーセンサ314からの入力信号に基づき、音源制御データ生成部304が有するプログラムメモリに記憶されている制御プログラムに従って、音源306やアクチュエータ320を制御する。CPU302によって実行されるこの制御(演奏制御処理)については、図9を用いて後述する。
【0136】
音源制御データ生成部304が有するプログラムメモリは、例えば、リードオンリメモリ(ROM)から構成されている。このプログラムメモリは、上述した制御(演奏制御処理)用の制御プログラムの他、CPU302が使用する種々の固定データ、複数の音色パラメータ等を記憶している。1つの音色パラメータは、所定の楽器音の所定の音域の音色を発生するために使用される。各音色パラメータは、例えば、波形アドレス、周波数データ、エンベロープデータ、フィルタ係数等で構成されている。
【0137】
本実施形態では、上記複数の音色パラメータとして、音色が異なる複数種類のピアノ(具体的には、明示板200に名称が明示された、歴史上実在した複数種類のピアノ)の音色を実現するのに必要な複数種類の音色パラメータが音源制御データ生成部304におけるプログラムメモリに記憶されている。
【0138】
音源制御データ生成部304が有するワークメモリは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)から構成されている。このワークメモリは、CPU302が各種処理を実行する際に、種々のデータを一時記憶するために使用される。
【0139】
音源306は、少なくとも1つのオシレータを有し、押鍵操作に対応する音色パラメータを受け取った際に、当該音色パラメータに基づき、デジタル楽音信号を生成するよう構成されている。
【0140】
具体的には、音源306は次の処理を行う。まず、後述のように、CPU302が、位置センサ310からCPU302に入力された入力信号に基づいて音源制御データ生成部304に記憶された複数種類のピアノの音色パラメータの中から1種類のピアノの音色に相当する音色パラメータを押鍵検出時に使用する電子楽音の音色パラメータとして選択(設定)する。その後、CPU302は、キーセンサ314からの入力信号に基づいて押鍵操作を検出した際に、上記のように選択(設定)した音色パラメータであって押鍵操作に対応したものを音源306に送信する。音源306は、このように送信された音色パラメータに基づき、デジタル楽音信号を生成する。
【0141】
音源306はこのように生成したデジタル楽音信号をD/A変換してアナログ楽音信号にした上で増幅器(アンプ)316に送信する。
増幅器316は、音源306から受信したアナログ楽音信号を増幅して出力部318に送信する。出力部318としては、例えば、ヘッドホン、スピーカ、あるいは響板アクチュエータなどが考えられる。ヘッドホンやスピーカでは、増幅器316から受け取った楽音信号に基づき特定種類のピアノの楽音が当該音色制御装置外部に発生される。響板アクチュエータは、増幅器316から受け取った楽音信号に基づき電磁駆動され、この電磁駆動に応じて響板(図示省略)が所定周波数で振動されることにより、特定種類のピアノの楽音が当該音色制御装置外部に発生される。
【0142】
[演奏制御処理に関する説明]
次に、制御機構300(主としてCPU302)が実行する演奏制御処理につき図9を用いて説明する。図9は、本実施形態における制御機構300が実行する演奏制御処理を示すフローチャートである。
【0143】
図9に示す如く、演奏制御処理が開始されると、まず、S100(Sはステップを表す)にて、位置センサ310からの入力信号に基づき、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の移動状態が検出される。
【0144】
次に、S110では、S100での検出結果に基づき、各鍵3の押鍵時の静荷重を予め定められたアコースティックピアノ演奏用静荷重にする位置に複数のウェイトレバー52が位置しているか否かが判断される。
【0145】
具体的には、本実施形態では、S100での検出結果に基づき、操作子68cが移動範囲X内の移動範囲f内(図3参照)に位置しているか否かを判断することにより、各鍵3の押鍵時の静荷重をアコースティックピアノ演奏用静荷重にする位置に複数のウェイトレバー52が位置しているか否かが判断される。
【0146】
尚、本実施形態では、鍵3の長手方向上における複数のウェイトレバー52の位置のうち、各鍵3の押鍵時の静荷重をアコースティックピアノ演奏用静荷重にする位置(移動範囲f内の位置)が、複数のウェイトレバー52を鍵3の長手方向に移動させることで得られる最大の静荷重に各鍵3の押鍵時の静荷重を設定する位置を含んでいる。
【0147】
具体的には、本実施形態では、操作子68cが移動範囲f内の矢印A方向の端部に当る位置fa(図3参照)に位置しているときに、各鍵3の押鍵時の静荷重が最大となる。本実施形態では、操作子68cの位置がこのような位置faを含む移動範囲f内に位置しているときに、S110にて、各鍵3の押鍵時の静荷重をアコースティックピアノ演奏用静荷重にする位置に複数のウェイトレバー52が位置していると判断される(S110:YES)。
【0148】
S110にて否定判断された際、すなわち、操作子68cが移動範囲X内における移動範囲a,b,c,d,eのいずれか内(図3参照)に位置していると判断された際には(S110:NO)、S120に移行する。
【0149】
S120では、位置センサ312からの入力信号に基づき、ダンパストップレール102の現在の回動位置が止音位置であるか否かが判断される。
そして、S120にてダンパストップレール102の現在の回動位置が止音位置ではないと判断された場合には(S120:NO)、S130に移行する。S130では、CPU302からの制御信号に基づいてアクチュエータ320を駆動させることにより、ダンパストップレール102の回動位置が止音位置に設定され、S140に移行する。
【0150】
一方、S120にてダンパストップレール102の現在の回動位置が止音位置であると判断された場合には(S120:YES)、S130の処理を経ることなく、S140に移行する。
【0151】
S140では、S100にて検出された複数のウェイトレバー52の移動状態に基づき、電子楽音の音色(音色パラメータ)の選択(設定)がなされる。
具体的には、S100にて操作子68cが移動範囲a内(図3参照)に位置していると判断された場合には、S140では、「HAMMER FLUGEL」の音色が押鍵検出時に使用される電子楽音の音色として設定される。S100にて操作子68cが移動範囲b内(図3参照)に位置していると判断された場合には、S140では、「STEIN」の音色が押鍵検出時に使用される電子楽音の音色として設定される。S100にて操作子68cが移動範囲c内(図3参照)に位置していると判断された場合には、S140では、「BROADWOOD」の音色が押鍵検出時に使用される電子楽音の音色として設定される。S100にて操作子68cが移動範囲d内(図3参照)に位置していると判断された場合には、S140では、「PLEYEL」の音色が押鍵検出時に使用される電子楽音の音色として設定される。S100にて操作子68cが移動範囲e内(図3参照)に位置していると判断された場合には、S140では、「ERARD」の音色が押鍵検出時に使用される電子楽音の音色として設定される。
【0152】
次に、S150では、キーセンサ314からの入力信号に基づいて押鍵操作がなされたか否かが判断される。S150にて押鍵操作がなされたと判断された場合には(S150:YES)、S160の処理が実行される。
【0153】
S160では、押鍵操作に対応した電子楽音の発音処理が実行される。
具体的には、S160では以下の処理が実行される。まず、S140で設定された電子楽音(特定種類のピアノの楽音)の音色パラメータであって押鍵操作に対応したものが音源306に送信される。音源306では、このように送信された音色パラメータに基づいてアナログ楽音信号を生成し、この信号を増幅器316に送信する処理が実行される。そして、増幅器316では、受信されたアナログ楽音信号を増幅した上で出力部318に送信する処理が実行される。これにより、出力部318から特定種類のピアノの楽音であって押鍵処理に対応したものが発生され、演奏者が、この楽音を聞くことが可能となる。
【0154】
S160の処理が実行されると、今度は、S170の処理が実行される。また、S150にて押鍵操作がなされていないと判断された場合には(S150:NO)、S160の処理が実行されることなく、S170の処理が実行される。
【0155】
S170では、今回のフローで実行されたS100の処理時点における位置センサ310からの入力信号と、当該S170の処理が行われる時点における位置センサ310からの入力信号とが比較される。そして、S170では、この比較の結果に基づき、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の現在の移動状態が、今回のフローで実行されたS100の処理時点における、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の移動状態から変化したか否かが判断される。
【0156】
S170にて否定判断された際、すなわち、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の現在の移動状態が今回のフローのS100の処理実行時点から変化していないと判断された際には(S170:NO)、S150に移行する。
【0157】
S170にて肯定判断された際、すなわち、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の現在の移動状態が今回のフローのS100の処理実行時点から変化したと判断された際には(S170:YES)、当該演奏制御処理が一端終了され、再びS100以降の処理が実行される。
【0158】
一方、S110にて肯定判断された際、すなわち、操作子68cが移動範囲f内(図3参照)に位置していると判断された際には(S110:YES)、S180に移行する。
S180では、位置センサ312からの入力信号に基づき、ダンパストップレール102の現在の回動位置が退避位置であるか否かが判断される。
【0159】
S180にてダンパストップレール102の現在の回動位置が退避位置ではないと判断された場合には(S180:NO)、S190に移行する。S190では、CPU302からの制御信号に基づいてアクチュエータ320を駆動させることにより、ダンパストップレール102の回動位置が退避位置に設定される。
【0160】
S190の処理が完了した後、および、S180にてダンパストップレール102の現在の回動位置が退避位置であると判断された場合には(S180:YES)、他の処理(例えば、S140〜S170の処理)を全く行うことなく、当該演奏制御処理が一端終了される。
【0161】
つまり、S110にて肯定判断された際には(S110:YES)、押鍵操作時に電子楽音の発音処理(S160)が実行されることはないし、電子楽音の音色設定処理(S140)が実行されることもない。
【0162】
なお、S190の処理が完了すると、再びS100以降の処理が実行される。
[対応関係の説明]
本実施形態においては、支持装置54が支持手段に相当し、移動装置56が移動手段に相当し、位置センサ310が移動状態検出手段に相当する。また、S140の処理は音色設定手段の動作に相当し、S110〜S130,S180,S190の処理は止音機構設定手段の動作に相当し、S160の処理は出力設定手段の動作に相当する。
【0163】
[効果の説明]
本実施形態では、操作子68cの位置を移動範囲f内(図3参照)にすると、CPU302からの制御信号に基づいてアクチュエータ320が駆動されることにより、ダンパストップレール102の回動位置が退避位置に設定される(S190)。
【0164】
この場合には、押鍵操作に応じて打弦動作が実行されるが電子楽音の出力はされないアコースティック演奏モードが実現される。
また、操作子68cの位置を移動範囲a,b,c,d,e内(図3参照)にすると、CPU302からの制御信号に基づいてアクチュエータ320が駆動されることにより、ダンパストップレール102の回動位置が止音位置に設定される(S130)。
【0165】
この場合には、押鍵時に打弦動作が阻止され電子楽音が出力される電子楽音演奏モード(S150,S160)が実現される。電子楽音演奏モードでは、操作子68cの位置が移動範囲a,b,c,d,eのいずれにあるかに応じて、押鍵時に出力される電子楽音の音色が変化される(S140)。
【0166】
このように、本実施形態では、操作子68cを移動範囲X内で移動させて(複数のウェイトレバー52を鍵3の長手方向上で移動させて)押鍵時の静荷重を変化させることに応じて、種々の音色変化を発生させることができる。
【0167】
すなわち、本実施形態によれば、操作子68cの移動範囲X内の移動状態に応じて、打弦動作に基づく楽音(アコースティックピアノの音)の音色と電子楽音の音色との間の音色変化(アコースティック演奏モードと電子楽音演奏モードとの間の切替え)を発生させることができる。しかも、電子楽音演奏モードで使用される電子楽音の音色も、操作子68cの移動状態に基づき変化する押鍵時の静荷重に応じて種々の音色に変化される。
【0168】
従って、本実施形態によれば、このように種々の音色変化を発生させることができる分だけ、押鍵時の静荷重変化に応じて生じる打弦力変化だけに基づき音色を変化させていた従来の場合に比べ、押鍵時の静荷重を変化させることに応じて発生する音色変化の度合いが大きくなる。
【0169】
また、本実施形態では、押鍵時に発生するピアノの音色が、操作子68cの移動範囲X内の位置毎に実現される押鍵時の静荷重に対応した歴史上実在したピアノの音色となるよう、演奏制御処理が実行される(S100〜S140,S180,S190)。
【0170】
更に、明示板200には、操作子68cの位置毎に実現される、本実施形態の音色制御装置を備えたピアノの状態を示す情報(歴史上実在した複数種類のピアノのうち、どのピアノにおける押鍵時の静荷重と音色が再現されているか;上記[明示板200の構成に関する説明]参照)が明示されている。
【0171】
従って、本実施形態の音色制御装置を備えたピアノの演奏者は、操作子68cを操作して複数のウェイトレバー52を移動させることにより、当該ピアノを、歴史上実在した複数種類のピアノとして演奏時に体感することができる。
【0172】
しかも、明示板200に表示された情報により、当該演奏者は、本実施形態の音色制御装置を備えたピアノの状態(歴史上実在した複数種類のピアノのうち、どのピアノにおける押鍵時の静荷重と音色が再現されているか)を正確に知ることができる。
【0173】
つまり、当該ピアノの演奏者は、操作子68cを操作するだけで、ピアノの歴史(押鍵時の静荷重と音色の変化の歴史)を、押鍵操作を通じて実感できる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。
【0174】
尚、上記第1実施形態と同様な箇所の説明は、省略又は簡略化する。
[第1実施形態との相違点]
本実施形態(第2実施形態)の音色制御装置は、以下の(1)、(2)の点で第1実施形態の音色制御装置と異なる。
(1)まず、第1実施形態では、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の移動状態の検出結果に応じてCPU302から出力される制御信号に基づき、アクチュエータ320が駆動され、これにより、ダンパストップレール102の回動位置が、止音位置と退避位置とのいずれかに切り替えられていた(図9のS100〜S130,S180,S190参照)。
【0175】
一方、本実施形態では、制御機構300がアクチュエータ320駆動用のスイッチ330を更に備えている(図8参照)。制御機構300では、スイッチ330の操作状態を示す信号がCPU302に入力され、CPU302が当該信号に基づいてアクチュエータ320を駆動させることで、ダンパストップレール102の回動位置が、止音位置と退避位置とのいずれかに切り替えられるよう構成されている。
【0176】
スイッチ330の操作状態に基づき、スイッチ330の操作状態を示す信号が、ダンパストップレール102の回動位置を止音位置に設定する旨を示す信号と、同回動位置を退避位置に設定する旨を示す信号とのうちのいずれかに設定される。
【0177】
スイッチ330の操作状態を示す信号が、ダンパストップレール102の回動位置を止音位置に設定する旨を示す信号である場合には、CPU302からの制御信号に基づきアクチュエータ320が駆動されることにより、ダンパストップレール102の回動位置が止音位置に設定される。
【0178】
逆に、スイッチ330の操作状態を示す信号が、ダンパストップレール102の回動位置を退避位置に設定する旨を示す信号である場合には、CPU302からの制御信号に基づきアクチュエータ320が駆動されることにより、ダンパストップレール102の回動位置が退避位置に設定される。
(2)また、本実施形態では、図9に示された演奏制御処理の代わりに、図10に示された演奏制御処理を制御機構300(主としてCPU302)が実行する。
【0179】
[第2実施形態における演奏制御処理に関する説明]
以下、本実施形態において、制御機構300(主としてCPU302)が実行する演奏制御処理につき図10を用いて説明する。図10は、本実施形態における制御機構300が実行する演奏制御処理を示すフローチャートである。
【0180】
図10に示す如く、演奏制御処理が開始されると、まず、S300の処理が実行される。S300では、位置センサ312からの入力信号に基づき、ダンパストップレール102の現在の回動位置が止音位置(阻止状態)であるか否かが判断される。本実施形態では、スイッチ330の操作によりダンパストップレール102の現在の回動位置が止音位置に設定されているか否かが、位置センサ312からの入力信号に基づき、判断されることになる。
【0181】
S300にてダンパストップレール102の現在の回動位置が止音位置であると判断された場合には(S300:YES)、S310に移行する。
S310では、位置センサ310からの入力信号に基づき、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の移動状態が検出される。
【0182】
そして、続くS320では、S310にて検出された複数のウェイトレバー52の移動状態に基づき、電子楽音の音色(音色パラメータ)の選択(設定)がなされる。
具体的には、S310にて操作子68cが移動範囲a内(図3参照)に位置していると判断された場合には、S320では、「HAMMER FLUGEL」の音色が押鍵検出時に使用される電子楽音の音色として設定される。S310にて操作子68cが移動範囲b内(図3参照)に位置していると判断された場合には、S320では、「STEIN」の音色が押鍵検出時に使用される電子楽音の音色として設定される。S310にて操作子68cが移動範囲c内(図3参照)に位置していると判断された場合には、S320では、「BROADWOOD」の音色が押鍵検出時に使用される電子楽音の音色として設定される。S310にて操作子68cが移動範囲d内(図3参照)に位置していると判断された場合には、S320では、「PLEYEL」の音色が押鍵検出時に使用される電子楽音の音色として設定される。S310にて操作子68cが移動範囲e内(図3参照)に位置していると判断された場合には、S320では、「ERARD」の音色が押鍵検出時に使用される電子楽音の音色として設定される。更に、本実施形態では、S310にて操作子68cが移動範囲f内(図3参照)に位置していると判断された場合には、S320では、「KAWAI」の音色が押鍵検出時に使用される電子楽音の音色として設定される。
【0183】
次に、S330では、キーセンサ314からの入力信号に基づいて押鍵操作がなされたか否かが判断される。S330にて押鍵操作がなされたと判断された場合には(S330:YES)、S340の処理が実行される。
【0184】
S340では、押鍵操作に対応した電子楽音の発音処理が実行される。
具体的には、S340では以下の処理が実行される。まず、S320で設定された電子楽音(特定種類のピアノの楽音)の音色パラメータであって押鍵操作に対応したものが音源306に送信される。音源306では、このように送信された音色パラメータに基づいてアナログ楽音信号を生成し、この信号を増幅器316に送信する処理が実行される。そして、増幅器316では、受信されたアナログ楽音信号を増幅した上で出力部318に送信する処理が実行される。これにより、出力部318から特定種類のピアノの楽音であって押鍵処理に対応したものが発生され、演奏者が、この楽音を聞くことが可能となる。
【0185】
S340の処理が実行されると、今度は、S350の処理が実行される。また、S330にて押鍵操作がなされていないと判断された場合には(S330:NO)、S340の処理が実行されることなく、S350の処理が実行される。
【0186】
S350では、位置センサ312からの入力信号に基づき、ダンパストップレール102の回動位置が止音位置から退避位置(許容状態)に変更されたか否かが判断される。本実施形態では、スイッチ330の操作によりダンパストップレール102の回動位置が止音位置から退避位置に変更されたか否かが、位置センサ312からの入力信号に基づき、判断されることになる。
【0187】
S350にてダンパストップレール102の回動位置が止音位置から退避位置に変更されていないと判断された場合には(S350:NO)、S360に移行する。
S360では、一番最近において実行されたS310の処理時点における位置センサ310からの入力信号と、当該S360の処理が行われる時点における位置センサ310からの入力信号とが比較される。そして、S360では、この比較の結果に基づき、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の現在の移動状態が、一番最近のS310の処理時点における、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の移動状態から変化したか否かが判断される。
【0188】
S360にて否定判断された際、すなわち、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の現在の移動状態が一番最近のS310の処理実行時点から変化していないと判断された際には(S360:NO)、S330に移行する。
【0189】
S360にて肯定判断された際、すなわち、鍵3の長手方向上の複数のウェイトレバー52の現在の移動状態が一番最近のS310の処理実行時点から変化したと判断された際には(S360:YES)、S310に移行する。
【0190】
一方、S300にてダンパストップレール102の現在の回動位置が止音位置でないと判断された場合や(S300:NO)、S350にてダンパストップレール102の回動位置が止音位置から退避位置に変更されたと判断された場合(S350:YES)、すなわち、ダンパストップレール102の現在の回動位置が退避位置であると判断された場合には、当該演奏制御処理が一端終了される。そして、再びS300以降の処理が実行される。
【0191】
本実施形態の演奏制御処理では、ダンパストップレール102の現在の回動位置が退避位置であると判断されると(S300:NO,S350:YES)、当該判断の後に電子楽音の発音処理(S340)が実行されることはない。また、S300にてダンパストップレール102の現在の回動位置が止音位置でないと判断されると(S300:NO)、当該判断の後には、電子楽音の発音処理(S340)だけでなく、電子楽音の音色設定処理(S320)も実行されない。
【0192】
[対応関係の説明]
本実施形態においても、支持装置54が支持手段に相当し、移動装置56が移動手段に相当し、位置センサ310が移動状態検出手段に相当する。また、本実施形態では、位置センサ312が阻止状態検出手段に相当し、S320の処理が音色設定手段の動作に相当し、S340の処理が出力許容手段の動作に相当する。
【0193】
[効果の説明]
本実施形態では、スイッチ330の操作によりダンパストップレール102の回動位置が退避位置に設定されると(S300:NO,S350:YES)、押鍵操作に応じて打弦動作が実行されるが電子楽音の出力はされないアコースティック演奏モードが実現される。
【0194】
また、スイッチ330の操作によりダンパストップレール102の回動位置が止音位置に設定されると(S300:YES)、押鍵時に打弦動作が阻止され電子楽音が出力される電子楽音演奏モード(S330,S340)が実現される。
【0195】
電子楽音演奏モードでは、操作子68cの位置が移動範囲a,b,c,d,e,fのいずれにあるかに応じて、押鍵時に出力される電子楽音の音色が種々の音色に変化される(S320)。
【0196】
従って、本実施形態によれば、このように操作子68cの移動状態により発生させる音色変化を電子楽音の音色変化として発生させることができる分だけ、押鍵時の静荷重変化に応じて生じる打弦力変化だけに基づき音色を変化させていた従来の場合に比べ、押鍵時の静荷重を変化させることに応じて発生させる音色変化の度合いを大きくできる。
【0197】
また、本実施形態では、ダンパストップレール102の回動位置が止音位置に設定されている場合においては、押鍵時に発生するピアノの音色が、操作子68cの移動範囲X内の位置毎に実現される押鍵時の静荷重に対応した歴史上実在したピアノの音色となるよう、演奏制御処理が実行される(S310,S320)。
【0198】
更に、明示板200には、操作子68cの位置毎に実現される、本実施形態の音色制御装置を備えたピアノの状態を示す情報(歴史上実在した複数種類のピアノのうち、どのピアノにおける押鍵時の静荷重と音色が再現されているか;上記[明示板200の構成に関する説明]参照)が明示されている。
【0199】
従って、本実施形態の音色制御装置を備えたピアノの演奏者は、操作子68cを操作して複数のウェイトレバー52を移動させることにより、当該ピアノを、歴史上実在した複数種類のピアノとして演奏時に体感することができる。
【0200】
しかも、明示板200に表示された情報により、当該演奏者は、本実施形態の音色制御装置を備えたピアノの状態(歴史上実在した複数種類のピアノのうち、どのピアノにおける押鍵時の静荷重と音色が再現されているか)を正確に知ることができる。
【0201】
つまり、当該ピアノの演奏者は、操作子68cを操作するだけで、ピアノの歴史(押鍵時の静荷重と音色の変化の歴史)を、押鍵操作を通じて実感できる。
[その他]
(1)上記においては、図9に示された演奏制御処理と図10に示された演奏制御処理とが別々の実施形態に属するものとして説明した。しかし、両演奏制御処理が同一の実施形態に属するものとなるよう、ピアノの音色制御装置が構成されていても良い。
【0202】
具体的には、例えば、制御機構300が制御モード切替用のスイッチ332(制御モード切替手段の一例)を更に備えていても良い(図8参照)。
この場合、制御機構300では、スイッチ332の操作状態を示す信号がCPU302に入力され、CPU302が当該信号に基づいて図9に示された演奏制御処理と図10に示された演奏制御処理とのうちのいずれかを実行する。
【0203】
この場合、スイッチ332は、図9に示された演奏制御処理実行時の操作位置1と図10に示された演奏制御処理実行時の操作位置2とのいずれかに、その操作状態を切替可能に構成される。
【0204】
スイッチ332の操作状態を操作位置1に設定した際には、図9に示された演奏制御処理を実行する旨の信号がスイッチ332の操作状態を示す信号としてCPU302に入力される。この場合、CPU302はこの信号に応じて図9に示された演奏制御処理を実行する。
【0205】
一方、スイッチ332の操作状態を操作位置2に設定した際には、図10に示された演奏制御処理を実行する旨の信号がスイッチ332の操作状態を示す信号としてCPU302に入力される。この場合、CPU302はこの信号に応じて図10に示された演奏制御処理を実行する。
(2)上記実施形態では、ダンパストップレール102を回動させることで、ダンパストップレール102の位置を、打弦動作を阻止するための止音位置と、打弦動作を許容するための退避位置とのいずれかに切り替えられるよう、止音機構100が構成されていた。
【0206】
しかし、ダンパストップレール102の位置の止音位置、退避位置間の切り替えは、ダンパストップレール102の回動操作以外の操作により行ってもよい。
例えば、ダンパストップレール102を矢印D方向(図4参照)にスライド移動できるようにし、当該スライド移動により、ダンパストップレール102の位置を止音位置、退避位置間で切り替えられるよう構成してもよい。
【0207】
つまり、この場合には、ダンパストップレール102の上記スライド移動により、ダンパストップレール102とハンマシャンク25との間の矢印D方向上の相対的距離を変化させることにより、ハンマ26による打弦を阻止したり許容したりする。
(3)上記実施形態では、押鍵時の打弦動作を阻止するため、ハンマ26による打弦動作時にハンマ26に連動して駆動される連動部材(ハンマシャンク25)に当接する当接部材としてダンパストップレール102を用いた。
【0208】
しかし、止音機構100においては、当接部材として、ダンパストップレール102以外の他の部材を用いてもよい。また、連動部材は、ハンマシャンク25以外の他の部材(例えば、バット24、キャッチャシャンク27等)であってもよい。
(4)上記実施形態では、「操作子68cの位置毎に実現される押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノに関連した情報」を明示する明示板200が設けられていた(図3参照)。
【0209】
しかし、「操作子68cの位置毎に実現される押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノに関連した情報」を明示するもの(明示手段に相当)は、明示版200以外の態様のものであってもよい。
【0210】
例えば、制御機構300が、「操作子68cの位置毎に実現される押鍵時の静荷重を有する特定種類のピアノに関連した情報」をCPU302からの制御信号に基づき表示するLCD,LED表示器等の表示パネル340(明示手段の一例)を備えていてもよい(図8参照)。
(5)第2実施形態では、回動機構130のワイヤ136の駆動をアクチュエータ320によってではなく、手動で行えるよう構成してもよい。
【0211】
具体的には、例えば、ワイヤ136におけるアーム132と反対側の一端は、第2実施形態の音色制御装置を備えたピアノの棚板下面等に設けられた操作レバー(図示省略)に接続され、演奏者等がこの操作レバーを操作することで、ワイヤ136を矢印C方向あるいは矢印C方向と反対方向に移動させることができるようにしてもよい(図6参照;但し、図6ではアクチュエータ320が設けられる態様だけが明示されている)。
【0212】
このようにすれば、演奏者等による操作レバーの手動操作により、ダンパストップレール102の回動位置を止音位置と退避位置とのいずれかに切り替えることができる。
(6)上記実施形態は、アップライトピアノについて説明しているが、グランドピアノで実施することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0213】
【図1】実施形態の音色制御装置が有する打弦機構と静荷重可変装置との関係を示す側面断面図である。
【図2】実施形態において、ウェイトレバー及びレバー受けスクリューを一組だけ抜き出したものを上方から見た図である。
【図3】実施形態の音色制御装置が備える明示板と操作子との関係を示す図である。
【図4】実施形態の音色制御装置における、止音機構と、打弦機構が備えるアクション機構との関係を示す側面断面図である。
【図5】実施形態における止音機構が備える止音装置(ダンパストップレール)の構成を示す分解斜視図である。
【図6】実施形態における止音機構全体の構成を示す斜視図である。
【図7】実施形態における止音機構の変位状態を説明する説明図である。
【図8】実施形態の音色制御装置が有する制御機構の構成を説明するブロック図である。
【図9】第1実施形態における制御機構が実行する演奏制御処理を示すフローチャートである。
【図10】第2実施形態における制御機構が実行する演奏制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0214】
1…打弦機構、3…鍵、4…レバー受けスクリュー、5…筬中、7…キャプスタンワイヤー、9…キャプスタンボタン、20…アクション機構、21…ハンマ機構、22…ウイッペン、23…ジャック、23a…ジャックテール、24…バット、24a…バットフレンジ、24b…センターピン、25…ハンマシャンク、26…ハンマ、27…キャッチャシャンク、28…キャッチャ、29…ハンマレール、29a…緩衝部、30…弦、31…ダンパ機構、32…支持部材、32a…固定軸、33…ダンパレバー、34…ダンパレバーワイヤ、35…ダンパ、35a…ダンパヘッド、35b…緩衝材、36…ダンパレバースプリング、37…ダンパスプーン、38…ウイッペンフレンジ、39…センターレール、40…レギュレチングボタン、48…棚板、50…静荷重可変装置、52…ウェイトレバー、54…支持装置、56…移動装置、58…ストッパーレール、60…フレンジ、60a…回動軸、62…レール支持部材、64…スライドレール、64a…上レール、64b…下レール、66…フレンジ、66a…アームピン、68…アーム、68c…操作子、70…錘、72…緩衝材、74…緩衝材、76…取り付け部、78…連結シャフト、100…止音機構、102…ダンパストップレール、104…基材、106…止音部材、108…基台、110,112,114…緩衝材、111a…固定ねじ、111b…コイルスプリング、120…位置決め機構、122…支持機構、124…支持軸、126…アクションブラケット、130…回動機構、132…アーム、134…コイルスプリング、136…ワイヤ、138…固定部材、140…チューブ、200…明示板、300…制御機構、304…音源制御データ生成部、306…音源、308…システムバス、310,312…位置センサ、314…キーセンサ、316…増幅器、318…出力部、320…アクチュエータ、330,332…スイッチ、340…表示パネル
【出願人】 【識別番号】000001410
【氏名又は名称】株式会社河合楽器製作所
【出願日】 平成18年6月27日(2006.6.27)
【代理人】 【識別番号】100082500
【弁理士】
【氏名又は名称】足立 勉


【公開番号】 特開2008−8971(P2008−8971A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−176873(P2006−176873)