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【発明の名称】 運転模擬試験装置
【発明者】 【氏名】米川 隆

【氏名】坂口 靖雄

【氏名】名切 末晴

【要約】 【課題】映像にちらつきが生じることを抑制することができる運転模擬試験装置を提供する。

【構成】運転模擬試験装置は、模擬車両が搭載された可動台を運動させる第1運動付与装置4と、模擬車両と可動台との間に配置され、可動台に対して模擬車両を運動させる第2運動付与装置6と、車両の走行により生じる車両運動のうち、車両姿勢角および路面凹凸により生じる加速度を模擬するように第2運動付与装置を制御するとともに、路面凹凸以外により生じる加速度を模擬するように第1運動付与装置を制御する制御装置14と、可動台と連動するスクリーンに車両の走行を視覚的に模擬する映像を表示する視覚模擬装置9と、を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
模擬車両が搭載された可動台を運動させる第1運動付与装置と、
前記模擬車両と前記可動台との間に配置され、前記可動台に対して前記模擬車両を運動させる第2運動付与装置と、
車両の走行により生じる車両運動のうち、車両姿勢角および路面凹凸により生じる加速度を模擬するように前記第2運動付与装置を制御するとともに、路面凹凸以外により生じる加速度を模擬するように前記第1運動付与装置を制御する制御装置と、
前記可動台と連動するスクリーンに車両の走行を視覚的に模擬する映像を表示する視覚模擬装置と、
を備えることを特徴とする運転模擬試験装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
車両が凹凸のない路面を走行する際に生じる第1車両加速度を演算する第1車両加速度演算手段と、
車両が凹凸のある路面を走行する際に生じる第2車両加速度を演算する第2車両加速度演算手段と、
路面凹凸により生じる第3車両加速度として、前記第1車両加速度と前記第2車両加速度との差分を演算する第3車両加速度演算手段と、
車両の姿勢角を演算する車両姿勢角演算手段と、
前記車両の姿勢角および前記第3車両加速度を模擬するように前記第2運動付与装置を制御する第2運動付与装置制御手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の運転模擬試験装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1車両加速度演算手段により演算された第1車両加速度を模擬するように前記第1運動付与装置を制御する第1運動付与装置制御手段を有することを特徴とする請求項2に記載の運転模擬試験装置。
【請求項4】
前記制御装置は、路面凹凸以外により生じる加速度として、車両に生じる前後方向加速度および横方向加速度を模擬するように前記第1運動付与装置を制御することを特徴とする請求項1に記載の運転模擬試験装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第2運動付与装置が前記可動台に及ぼす振動量のデータを取得する振動量取得手段と、前記振動量のデータに基づいて前記第1運動付与装置を制振制御する制振制御手段と、を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の運転模擬試験装置。
【請求項6】
前記第2運動付与装置は、前記可動台と前記模擬車両の各車輪取付部位との間に配置され、前記可動台に対して前記各車輪取付部位を上下動させる上下動付与装置を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の運転模擬試験装置。
【請求項7】
前記第1運動付与装置は、前記可動台を並進運動させる並進運動付与装置と、前記可動台をチルト運動させるチルト運動付与装置とを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の運転模擬試験装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の運転操作に応じて車両の運動を模擬する運転模擬試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の開発や運転者の訓練などを目的として、被験者の運転操作に応じて車両の運動を模擬体感することができるドライビングシミュレータが知られている。ドライビングシミュレータは、各種操作系やメータなどを装備する車両モデルが内部に設置された可動台を備えており、可動台のチルト運動(ピッチ方向、ロール方向)を制御する(特許文献1参照)。この可動台へのチルト運動によって車両モデルに前後加速度や横加速度またはピッチ角やロール角などを模擬的に作用させ、被験者に車両を運転している感覚を模擬的に体感させる。なお、特許文献1のドライビングシミュレータには、可動台と車両モデルとの間に車両走行時の振動を再現するための加振装置が設けられている。
【特許文献1】特開昭61−194465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術に係るドライビングシミュレータでは、車両のピッチ角やロール角などの姿勢角が可動台のチルト運動により模擬されるとともに、運転時の視界が可動台と連動するスクリーンに表示される映像により模擬される。よって、車両の姿勢角を再現するために可動台をチルト運動させた場合には、スクリーンに表示される映像も同時に回転させる必要がある。このように映像を大きく移動させた場合には、画像の解像度や更新レートが粗いほど映像にちらつきが生じてしまう。このため、被験者に違和感を与えたり、被験者がシミュレータ酔いをしやすくなってしまう。
【0004】
そこで、本発明は、映像にちらつきが生じることを抑制することができる運転模擬試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した目的を達成するために、本発明に係る運転模擬試験装置は、模擬車両が搭載された可動台を運動させる第1運動付与装置と、模擬車両と可動台との間に配置され、可動台に対して模擬車両を運動させる第2運動付与装置と、車両の走行により生じる車両運動のうち、車両姿勢角および路面凹凸により生じる加速度を模擬するように第2運動付与装置を制御するとともに、路面凹凸以外により生じる加速度を模擬するように第1運動付与装置を制御する制御装置と、可動台と連動するスクリーンに車両の走行を視覚的に模擬する映像を表示する視覚模擬装置と、を備えることを特徴とする。
【0006】
上述した運転模擬試験装置によれば、制御装置は、車両の走行により生じる車両運動のうち、車両姿勢角および路面凹凸により生じる加速度を模擬するように第2運動付与装置を制御するとともに、路面凹凸以外により生じる加速度を模擬するように第1運動付与装置を制御する。よって、車両の姿勢角および路面凹凸による加速度は、第2運動付与装置により模擬されており、第1運動付与装置により模擬されていない。このため、スクリーンに映像を表示して、模擬車両の周囲環境を視覚的に模擬する場合には、車両の姿勢角が変化する状況や車両が路面凹凸により振動する状況に応じて、スクリーンに表示される映像を回転させたり振動させる必要はない。このため、車両の姿勢角が変化する状況や車両が凹凸のある路面を走行する状況を模擬する時に映像にちらつきが生じることを抑制することができ、映像のちらつきによる被験者の違和感やシミュレータ酔いなどを低減することができる。また、上述した運転模擬試験装置によれば、従来技術と比較して、実際の車両により近い走行環境を再現することが可能となる。
【0007】
上述した運転模擬試験装置において、制御装置は、車両が凹凸のない路面を走行する際に生じる第1車両加速度を演算する第1車両加速度演算手段と、車両が凹凸のある路面を走行する際に生じる第2車両加速度を演算する第2車両加速度演算手段と、路面凹凸により生じる第3車両加速度として第1車両加速度と第2車両加速度との差分を演算する第3車両加速度演算手段と、車両の姿勢角を演算する車両姿勢角演算手段と、車両の姿勢角および第3車両加速度を模擬するように第2運動付与装置を制御する第2運動付与装置制御手段と、を有することが好ましい。
【0008】
この構成によれば、制御装置は、路面凹凸により生じる第3車両加速度として、車両が凹凸のない路面を走行する際に生じる第1車両加速度と、車両が凹凸のある路面を走行する際に生じる第2車両加速度との差分を演算する。そして、制御装置は、車両の姿勢角および第3車両加速度を模擬するように第2運動付与装置を制御する。このような制御装置の動作により、車両の姿勢角および路面凹凸による加速度は第2運動付与装置を用いて模擬されるため、車両の姿勢角および路面凹凸による加速度は第1運動付与装置を用いて模擬されない。よって、車両の姿勢角および路面凹凸による加速度に応じて第1運動付与装置が駆動されないため、車両の姿勢角変化や路面凹凸に応じてスクリーンに表示される映像を回転させたり振動させる必要をなくすことができる。
【0009】
上述した運転模擬試験装置において、制御装置は、第1車両加速度演算手段により演算された第1車両加速度を模擬するように第1運動付与装置を制御する第1運動付与装置制御手段を有することが好ましい。この構成によれば、第1運動付与装置は、車両が凹凸のない路面を走行する際に車両に生じる加速度を模擬するように制御されるものであるため、車両の姿勢角および路面凹凸による加速度に応じて駆動されない。よって、車両の姿勢角変化や路面凹凸に応じて、スクリーンに表示される映像を回転させたり振動させる必要をなくすことができる。
【0010】
上述した運転模擬試験装置において、制御手段は、第2運動付与装置が可動台に及ぼす振動量の情報を取得する振動量取得手段と、振動量の情報に基づいて第1運動付与装置を制振制御する制振制御手段と、を有することが好ましい。この構成によれば、制御手段は、第2運動付与装置が可動台に及ぼす振動量の情報を取得し、制振制御手段は、振動量のデータに基づいて第1運動付与装置を制振制御する。よって、第1運動付与装置は、第2運動付与装置の運動による可動台の共振を抑制するように可動台に対して運動を与えるため、可動台の異常振動が抑制されて、被験者が不快な振動を感じることを防止することができる。
【0011】
上述した運転模擬試験装置において、第2運動付与装置は、可動台と模擬車両の各車輪取付部位との間に配置され、可動台に対して各車輪取付部位を上下動させる上下動付与装置を含むことが好ましい。この構成によれば、第2運動付与装置である上下動付与装置を用いて模擬車両の各車輪取付部位を上下動させることで、車両の姿勢角および路面凹凸による加速度を好適に模擬することができる。
【0012】
上述した運転模擬試験装置において、第1運動付与装置は、可動台を並進運動させる並進運動付与装置と、可動台をチルト運動させるチルト運動付与装置とを含むことが好ましい。この構成によれば、第1運動付与装置である並進運動付与装置およびチルト運動付与装置を用いて可動台を運動させることで、車両に生じる前後方向加速度および横方向加速度を好適に模擬することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の運転模擬試験装置によれば、映像にちらつきが生じることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係る運転模擬試験装置の実施の形態を説明する。
【0015】
本実施の形態では、本発明に係る運転模擬試験装置を、被験者の運転操作に応じて車両の運動を模擬するドライビングシミュレータに適用する。本実施の形態に係るドライビングシミュレータは、車両を模擬した車両モデルが内部に設置されるドームを備え、ドームを並進運動させるためのXY並進機構、ドームをチルト運動させるためのヘキサポッドを備えている。また、本実施の形態に係るドライビングシミュレータは、ドームの内部に設けられる複数のシェーカであって、ドームに対して車両モデルをチルト運動させるためのシェーカを備えている。
【0016】
図1〜図3を参照して、実施の形態に係るドライビングシミュレータ1について説明する。図1は、本実施の形態に係るドライビングシミュレータ1の全体を示す斜視図である。図2は、図1のドームの内部およびヘキサポッドを示す側面図である。図3は、本実施の形態に係るドライビングシミュレータ1の構成図である。
【0017】
ドライビングシミュレータ1は、被験者の運転操作に応じて車両の運動状態を算出し、その算出した運動状態を被験者が体感できるようにドームおよび車両モデルに対して各種運動を付与する。特に、ドライビングシミュレータ1では、目標加速度に応じた並進制御およびチルト制御を行う。そのために、ドライビングシミュレータ1は、主なものとして、ドーム2、XY並進機構3、ヘキサポッド4、可動台5、シェーカ6、車両モデル7、スクリーン8、プロジェクタ9、スピーカ10、データベース11、コンピュータ(制御装置)14を備えている。
【0018】
ドーム2は、略円筒形状であり、底面に円形状の可動台5が設けられる。可動台5の上面には、車両モデル7の4輪の位置にそれぞれシェーカ6が設置され、この4個のシェーカ6によって車両モデル7が支持される。ドーム2内の車両モデル7の周りには、スクリーン8が、ドーム2に固定された状態で設けられており、言い換えれば、可動台に対して固定された状態で設けられている。スクリーン8は、車両モデル7の前方、両側方、後方などに設けられる。また、ドーム2内の上方には、各スクリーン8に投影可能な位置および角度でプロジェクタ9が設けられる。
【0019】
XY並進機構3は、ドーム2を車両の前後方向(X方向)および車両の横方向(Y方向)に並進運動させるための機構であり、特許請求の範囲の並進運動付与装置に相当する。XY並進機構3には、X方向に沿って6対のレール3aが敷設され、各レール3aの間にベルト3bがそれぞれ1本づつ設けられる。また、XY並進機構3には、6対のレール3aの上にY方向に沿って1対のレール3cが配置され、レール3cの間にベルト3dが設けられる。レール3cは、レール3a上をX方向に沿って移動自在に設けられ、下部に6本のベルト3bが取り付けられている。レール3c上には、ヘキサポッド4の台座となる基台3eが配置される。基台3eは、レール3c上をY方向に沿って移動自在に設けられ、下面にベルト3dが取り付けられている。
【0020】
モータ制御部3gは、コンピュータ14からのX並進制御信号を受信すると、そのX並進制御信号に応じて駆動電流をX並進駆動モータ3fに供給する。X並進駆動モータ3fは、モータ制御部3gから駆動電流が供給されると、駆動電流に応じて回転する。6本のベルト3bのそれぞれは、X並進駆動モータ3fによって回転駆動され、レール3cをX方向に並進移動させる。また、モータ制御部3iは、コンピュータ14からのY並進制御信号を受信すると、そのY並進制御信号に応じて駆動電流をY並進駆動モータ3hに供給する。Y並進駆動モータ3hは、モータ制御部3iから駆動電流が供給されると、駆動電流に応じて回転する。ベルト3dは、Y並進駆動モータ3hによって回転駆動され、基台3eをY方向に並進移動させる。
【0021】
ヘキサポッド4は、ドーム2をピッチ方向、ロール方向にチルト運動させるための機構であり、特許請求の範囲のチルト運動付与装置に相当する。ヘキサポッド4は、6本の油圧シリンダ4aを備えており、油圧シリンダ4aが基台3eと可動台5との間に配設される。油圧制御部4bは、コンピュータ14からのヘキサポッドシリンダ制御信号を受信すると、そのヘキサポッドシリンダ制御信号に応じて作動油圧を供給する。油圧シリンダ4aのそれぞれは、油圧制御部4bから作動油圧が供給されると、作動油圧に応じて伸縮する。6本の油圧シリンダ4aのそれぞれが伸縮することによって、可動台5(ドーム2)が基台3eに対して三次元的に傾く。なお、図3には、油圧シリンダ4aおよび油圧制御部4bを1組しか描いていないが、実際には6組ある。
【0022】
XY並進機構3およびヘキサポッド4は、被験者の運転操作に応じて車両モデル7に生じる前後方向加速度および横方向加速度(言い換えれば、車両の走行により生じる車両運動のうち、路面凹凸以外により生じる加速度)を模擬するために主に利用される。特に本実施形態では、前後方向加速度および横方向加速度の高周波成分がXY並進機構3により模擬され、前後方向加速度および横方向加速度の低周波成分がヘキサポッド4により模擬される。すなわち、車両が急に発進、加速、減速、停止、旋回などした時に生じる高周波数の加速度がXY並進機構3により模擬され、車両が緩やかに発進、加速、減速、停止、旋回などした時に生じる低周波数の加速度がヘキサポッド4により模擬される。以上に説明したように、XY並進機構3およびヘキサポッド4の組み合わせは、前後方向加速度および横方向加速度を模擬するための機構であり、特許請求の範囲の第1運動付与装置に相当する。
【0023】
4個のシェーカ6は、ドーム2内で車両モデル7をピッチ方向、ロール方向、バウンス方向(上下方向)に運動させるための機構であり、特許請求の範囲の第2運動付与装置および上下動付与装置に相当する。4個のシェーカ6は、被験者の運転操作に応じて車両モデル7に生じる姿勢変化(ピッチ、ロール)、および路面凹凸により車両モデル7に生じる上下方向加速度を模擬するために主に利用される。4個のシェーカ6のそれぞれは、ドーム2内で車両モデル7をピッチ方向、ロール方向、バウンス方向に運動させるために、車両モデル7の車輪取付部位を支持するとともに上下方向に伸縮する。油圧制御部6bは、コンピュータ14からのシェーカシリンダ制御信号を受信すると、そのシェーカシリンダ制御信号に応じて作動油圧を供給する。油圧シリンダ6aのそれぞれは、油圧制御部6bから作動油圧が供給されると、作動油圧に応じて伸縮し、車両モデル7の各車輪取付部位を上下方向に移動させる。4本の油圧シリンダ6aのそれぞれが独立して伸縮することによって、車両モデル7が可動台5に対して三次元的に傾く。なお、図3には、油圧シリンダ6aおよび油圧制御部6bを1組しか描いていないが、実際には4組ある。上述したシェーカ6は油圧制御されるものであるが、シェーカは電磁力により駆動制御されるものでもよい。
【0024】
車両モデル7は、車両の車体および車両の内装などを備えており、被験者が着座して各種運転操作を行うことができる。そのために、車両モデル7には、操作部7aやメータ7bなどが装備されている。操作部7aは、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール、シフトレバーなどから構成される。また、操作部7aには、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイールの各操作量を検出するための各センサやシフトレバーのシフトポジションを検出するためのセンサが設けられている。操作部7aの各センサは、検出した検出値を検出信号としてコンピュータ14に送信する。また、操作部7aのアクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール、シフトレバーには、操作反力発生部7cによって被験者が体感する操作反力が与えられる。操作反力発生部7cは、コンピュータ14から操作反力信号を受信すると、各操作反力信号に応じて操作反力を発生させる。メータ7bは、スペードメータ、タコメータ、シフトポジションの表示部などから構成される。コンピュータ14から各メータや表示部に対して車両情報信号が出力されると、車両情報信号に応じて各メータが駆動されたり表示部の表示が行われる。
【0025】
プロジェクタ9のそれぞれは、コンピュータ14から画像信号を受信すると、各画像信号に応じて模擬画像(模擬走行路を走行した場合に車両内から見える景色の画像)を各スクリーン8に投影する。すなわち、プロジェクタ9のそれぞれは、可動台5と連動するスクリーン8に車両の走行を視覚的に模擬する映像を表示する視覚模擬装置である。被験者は、スクリーン8に投影されている模擬画像を見ながら走行路や標識、信号、他車両、歩行者などの情報を取得し、その情報に応じた運転操作を行う。スピーカ10では、コンピュータ14から音信号を受信すると、各音信号に応じて模擬音(走行中に運転者に聞こえる音(排気音、エンジン音、風切音、ロードノイズなどを合成した音))を出力する。データベース11は、模擬走行路を走行した場合の各走行位置における車両内から見える景色の画像情報、模擬走行路を走行した場合の道路情報(路面の勾配、路面の凹凸、路面の摩擦係数など)、走行中に運転者に聞こえる音情報などを格納したデータベースであり、コンピュータ14に接続される。
【0026】
コンピュータ14は、ドライビングシミュレータ1を統括制御するコンピュータである。コンピュータ14は、車両の運動方程式に基づいて車両の運動を算出する車両運動演算処理、被験者に運転操作を体感させるための運転制御、プロジェクタ9による画像表示をするための画像処理、スピーカ10から音出力するための音処理、ドーム2および車両モデル7に対して各種運動を与えるためにXY並進機構3、ヘキサポッド4およびシェーカ6の動作を制御する駆動制御などを行う。
【0027】
次に、図4を参照して、ドライビングシミュレータ1の制御方法の概略を説明する。図4は、ドライビングシミュレータ1の制御方法を示す概要図である。図4に示される処理は、コンピュータ14により一定時間ごとに実行されている。なお、図4では、コンピュータ14による演算処理が機能ブロックとして示されており、機能ブロック間でやり取りされる情報が矢印で示されている。
【0028】
ブロック401において、コンピュータ14は、被験者による操作量(アクセルペダルストローク、ブレーキペダルストローク、ハンドルの操舵角、シフトレバーの位置など)の検出値を取り込む。ブロック402において、コンピュータ14は、被験者による操作量に基づいて運動方程式を解いて、車両の運動を演算する。ここでは、車両が凹凸のない路面を走行した場合の車両運動を求めるために、路面から4つの車輪への変位入力がないものとする。この演算により、車両が凹凸のない路面を走行した場合に車両に生じる加速度が演算される。なお、ブロック402の車両運動演算は、特許請求の範囲の第1車両加速度演算手段に相当する。路面からの変位入力は、路面変位を実測して求めたデータでも、設計者により妥当な路面変位が設定されたデータでもよい。
【0029】
また、別の処理として、ブロック403において、コンピュータ14は、被験者による操作量に基づいて運動方程式を解いて、車両の運動を演算する。ここでは、凹凸のある路面を走行した場合の車両運動を求めるために、路面から4つの車輪への変位入力があるものとする。この演算により、車両が凹凸のある路面を走行した場合に車両に生じる加速度が演算される。そして、ブロック404において、コンピュータ14は、路面凹凸を考慮して演算された車両加速度から、路面凹凸を考慮しないで演算された車両加速度を減算する。ここで演算された車両加速度の差分は、路面凹凸のみにより生じる車両加速度に相当する。なお、ブロック403の車両運動演算は、特許請求の範囲の第2車両加速度演算手段および車両姿勢角演算手段に相当する。また、符号404の差分演算は、特許請求の範囲の第3車両加速度演算手段に相当する。
【0030】
ブロック405において、コンピュータ14は、路面凹凸を考慮しないで演算された車両加速度に基づいて第1運動付与装置(XY並進機構3およびヘキサポッド4)を駆動制御する。これにより、車両に生じる前後方向加速度および横方向加速度を模擬するようにドームの位置および姿勢が制御される。また、ブロック406において、コンピュータ14は、路面凹凸を考慮して演算された車両姿勢角および路面凹凸のみにより生じる車両加速度に基づいて第2運動付与装置(シェーカ6)を駆動制御する。これにより、車両の姿勢角(ピッチ角、ロール角)および路面凹凸により車両に生じる上下方向加速度を模擬するように車両モデル7の姿勢が制御される。なお、ブロック405の駆動制御は、特許請求の範囲の第1運動付与装置制御手段に相当する。また、ブロック406の駆動制御は、特許請求の範囲の第2運動付与装置制御手段に相当する。
【0031】
以上、図4を参照して、ドライビングシミュレータ1の制御方法の概略について説明した。次に、図5を参照して、ドライビングシミュレータ1の制御方法の具体的内容についてさらに詳しく説明する。図5は、ドライビングシミュレータ1の制御方法を示す概要図である。図5に示される処理は、コンピュータ14により一定時間ごとに実行されている。なお、図5では、コンピュータ14による演算処理が機能ブロックとして示されており、機能ブロック間でやり取りされる情報が矢印で示されている。
【0032】
ブロック501において、コンピュータ14は、被験者による操作量(アクセルペダルストローク、ブレーキペダルストローク、ハンドルの操舵角、シフトレバーの位置など)の検出値を取り込む。また、ブロック502において、コンピュータ14は、データベース11から、現在走行が模擬されている路面の凹凸データを読み出す。
【0033】
ブロック503において、コンピュータ14は、一定時間ごとに、アクセルペダル、ブレーキペダル、ハンドルの各操作量やシフトポジションおよび現在走行している道路の環境情報に基づいて一般的な車両の運動方程式を解くことにより、模擬走行路を走行している車両の運動を演算する。ここでは、車両が凹凸のない路面を走行した場合の車両運動を求めるために、道路の環境情報には、データベース11から読み出された路面凹凸データが含まれておらず、路面から4つの車輪への変位入力がないものとされている。この演算により、車両の運動として、車両に作用する前後方向加速度X2、横方向加速度Y2、上下方向加速度Z2(路面凹凸に起因する上下方向加速度を除く)、車両のピッチ角P、ロール角R、ヨー角Y、車速、エンジン回転数などが算出される。なお、ブロック503の車両運動演算は、特許請求の範囲の第1車両加速度演算手段に相当する。
【0034】
また、ブロック504において、コンピュータ14は、一定時間ごとに、アクセルペダル、ブレーキペダル、ハンドルの各操作量やシフトポジションおよび現在走行している道路の環境情報に基づいて一般的な車両の運動方程式を解くことにより、模擬走行路を走行している車両の運動を演算する。ここでは、車両が凹凸のある路面を走行した場合の車両運動を求めるために、道路の環境情報には、データベース11から読み出された路面凹凸データが含まれており、路面から4つの車輪への変位入力があるものとされている。この演算により、車両の運動として、車両に作用する前後方向加速度X2r、横方向加速度Y2r、上下方向加速度Z2r(路面凹凸に起因する上下方向加速度を含む)、車両のピッチ角Pr、ロール角Rr、ヨー角Yr、車速、エンジン回転数などが算出される。なお、ブロック504の車両運動演算は、特許請求の範囲の第2車両加速度演算手段および車両姿勢角演算手段に相当する。
【0035】
なお、一般的な車両の運動方程式としては、例えば、下記の数式(1)〜数式(6)を用いればよい。ここで、数式(1)は前後方向の並進運動に関する式であり、数式(2)は横方向の並進運動に関する式であり、数式(3)は上下方向の並進運動に関する式である。また、数式(4)はローリングに関する式であり、数式(5)はピッチングに関する式であり、数式(6)はヨーイングに関する式である。
【0036】
【数1】


【0037】
ブロック503の車両運動の演算では、上下方向の並進運動に関する数式(3)、ローリングに関する数式(4)およびピッチングに関する数式(5)において、タイヤに作用する上下力Fziに、路面凹凸がない場合にタイヤに作用する上下力が代入される。これにより、車両が凹凸のない路面を走行した場合の車両運動が求められる。一方、ブロック504の車両運動の演算では、上下方向の並進運動に関する数式(3)、ローリングに関する数式(4)およびピッチングに関する数式(5)において、タイヤに作用する上下力Fziに、路面凹凸がある場合にタイヤに作用する上下力が代入される。これにより、車両が凹凸のある路面を走行した場合の車両運動が求められる。
【0038】
ブロック505において、コンピュータ14は、路面凹凸を考慮しないで演算された車両加速度X2,Y2,Z2に対してフィルタリング処理を行って、車両加速度X2,Y2,Z2を、車両加速度の高周波成分X2h,Y2h,Z2hと低周波成分X2l,Y2l,Z2lとに分離する。ここで、車両加速度の高周波成分X2h,Y2h,Z2hは、急に車両が発進、加速、減速、停止、旋回などをした時に生じる車両加速度である。一方、車両加速度の低周波成分X2l,Y2l,Z2lは、緩やかに車両が発進、加速、減速、停止、旋回などをした時に生じる車両加速度である。なお、路面凹凸を考慮しないで演算された車両加速度Z2は、低周波成分Z2lが主であり、高周波成分Z2hはほぼゼロである。
【0039】
ブロック506において、コンピュータ14は、路面凹凸を考慮して演算された上下方向加速度Z2rから、路面凹凸を考慮しないで演算された上下方向加速度Z2を減算して、路面凹凸のみにより車両に生じる上下方向加速度Z2rrを演算する。なお、ブロック506の差分演算は、特許請求の範囲の第3車両加速度演算手段に相当する。
【0040】
ブロック507において、コンピュータ14は、シェーカ6が可動台5に及ぼす振動量を演算する。すなわち、コンピュータ14は、シェーカ6が駆動される時にシェーカ6から可動台5に作用する振動量として、シェーカ6から可動台5に作用する力を演算する。ここで演算される力は、シェーカ6が上下方向加速度Z2rrを模擬するように制御されることにより生じる力Zm、シェーカ6がピッチ角Prを模擬するように制御されることにより生じる力Pm、シェーカ6がロール角Rrを模擬するように制御されることにより生じる力Rmである。これらの力Zm,Pm,Rmは、次の数式(7)、数式(8)および数式(9)により算出される。なお、ブロック507の振動量演算は、特許請求の範囲の振動量取得手段に相当する。
【0041】
【数2】


【0042】
ブロック508において、コンピュータ14は、車両加速度の高周波成分X2h,Y2hを模擬するようにXY並進機構3を駆動制御する。これにより、急に車両が発進、加速、停止などした時の状態が再現される。また、ブロック509において、コンピュータ14は、車両加速度の低周波成分X2l,Y2l,Z2lを模擬するようにヘキサポッド4を駆動制御する。これにより、緩やかに車両が発進、加速、停止などした時の状態が再現される。このようにXY並進機構3およびヘキサポッド4が駆動制御されることにより、車両に作用する前後方向加速度X2および横方向加速度Y2を模擬するようにドーム2が駆動される。なお、ブロック508およびブロック509の駆動制御は、特許請求の範囲の第1運動付与装置制御手段に相当する。また、ブロック509の駆動制御は、特許請求の範囲の制振制御手段に相当する。
【0043】
また、ブロック509において、コンピュータ14は、シェーカ6が可動台5に及ぼす力Zm,Pm,Rmに基づいて、シェーカ6の加振による可動台5の共振の逆伝達関数を導出し、この逆伝達関数によりヘキサポッド4の各油圧シリンダ4aのシリンダ長を演算し、演算されたシリンダ長となるようにヘキサポッド4を駆動制御する。これによって、ヘキサポッド4は、シェーカ6の加振による可動台5の共振を抑制するように可動台5に対してチルト運動を与える。これによって、異常振動が発生せず、被験者が不快な振動を感じない。
【0044】
ブロック510において、コンピュータ14は、車両姿勢角Pr,Rrを模擬するようにシェーカ6を駆動制御する。これにより、車両の加減速時に生じるピッチ角、および車両の旋回走行時に生じるロール角などが再現される。また、ブロック510において、コンピュータ14は、路面凹凸による上下方向加速度Z2rrを模擬するようにシェーカ6を駆動制御する。これにより、車両が路面凹凸を通過した時に生じる上下方向の運動が再現される。この際、スクリーン8は車両モデル7のピッチ運動、ロール運動、路面凹凸による運動に関係なくほぼ水平方向に維持されているため、プロジェクタ9はスクリーン8に表示される画像を回転したり振動する必要はない。よって、被験者に違和感を与えることがなく、また被験者がシミュレーション酔いしない。なお、ブロック510の駆動制御は、特許請求の範囲の第2運動付与装置制御手段に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施の形態に係るドライビングシミュレータの全体を示す斜視図である。
【図2】ドーム内部およびヘキサポッドを示す側面図である。
【図3】本実施形態に係るドライビングシミュレータの構成図である。
【図4】ドライビングシミュレータの制御方法の概略を説明するための機能ブロック図である。
【図5】ドライビングシミュレータの制御方法の詳細を説明するための機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0046】
1…ドライビングシミュレータ、2…ドーム、3…XY並進機構、3a…レール、3b…ベルト、3c…レール、3d…ベルト、3e…基台、3f…X並進駆動モータ、3g…モータ制御部、3h…Y並進駆動モータ、3i…モータ制御部、4…ヘキサポッド、4a…油圧シリンダ、4b…油圧制御部、5…可動台、6…シェーカ、6a…油圧シリンダ、6b…油圧制御部、7…車両モデル、7a…操作部、7b…メータ、7c…操作反力発生部、8…スクリーン、9…プロジェクタ、10…スピーカ、11…データベース、14…コンピュータ。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
【出願日】 平成18年8月28日(2006.8.28)
【代理人】 【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹

【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹

【識別番号】100122770
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 和弘


【公開番号】 特開2008−52216(P2008−52216A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−231074(P2006−231074)