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【発明の名称】 車両用通信装置
【発明者】 【氏名】荻野 博康

【要約】 【課題】ICカードへの課金情報の書き込みが失敗した場合でも、ユーザが操作することなく自動的に書き込み処理を達成できるようにする。

【構成】車載器1は、ICカード3が装着されると、電源を供給して活性化、認証処理を経てアクセス許可を得る(A1〜A5)。料金所の路側機2と無線通信を行って課金処理を行い、ICカード3への記録指示を受信すると(B1〜B10)、通信終了後にICカードへの記録処理を実行する。ここで、接触不良やノイズなどで記録が失敗すると、車載器1は、再記録処理を実行する。ここでは、ユーザに記録処理をする旨の通知をすると共に、再起動処理、再認証処理を経て同一のICカード3であることを判断してから課金情報を記録する(C1〜C8)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードが装着可能に構成され、装着されたICカードに記録されている使用者情報を読み出すと共に、路側機との間で無線通信を行って利用料金の課金処理を行うようにした車両用通信装置において、
前記ICカードが装着されるとその内部に設けられた記憶手段へのアクセス許可を得るための起動処理および認証処理を行うアクセス手段と、
前記アクセス許可を得たICカードの記憶手段にアクセスして情報の授受を行うように設けられ、前記課金処理を行って前記ICカードの記憶手段に記憶させる情報がある場合にはその情報を記録する処理を行う制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記ICカードへの情報の記録処理が達成できなかったときに、前記アクセス手段により再度アクセス許可を得た上でICカードへの情報の再記録処理を実行するように構成されていることを特徴とする車両用通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用通信装置において、
前記制御手段は、前記ICカードへの情報の記録処理が完了しないときを判断する場合に、前記ICカードからの応答が正常でない場合あるいはICカードから情報を読み出せない場合を条件としていることを特徴とする車両用通信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用通信装置において、
前記制御手段は、前記ICカードへの情報の再記録処理の実行中においては、そのICカードが非装着状態になったことを検出すると、その再記録処理を中断するように構成されていることを特徴とする車両用通信装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の車両用通信装置において、
前記制御手段は、前記ICカードへの情報の再記録処理の実行中においては、そのICカードが非装着状態になったことを検出すると、そのICカードから読み出した情報および前記路側機との通信で受信した課金処理に関する情報を消去するように構成されていることを特徴とする車両用通信装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の車両用通信装置において、
前記制御手段は、前記アクセス手段により再度アクセス許可を得る処理を実行する場合には、前記ICカードを一旦起動停止する非活性化処理を実施した後に再度起動する活性化処理を起動処理として実施することを特徴とする車両用通信装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の車両用通信装置において、
前記制御手段は、前記アクセス手段により再度アクセス許可を得る処理を実行する場合には、前記ICカードとの間で再認証処理を実施した上で記憶手段から情報を読み出す処理を実行することを特徴とする車両用通信装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用通信装置において、
前記制御手段は、前記ICカードとの間で行う再認証処理として、前記認証処理に加えて前記記憶手段から情報を読み出す処理を含んで実施するように構成されていることを特徴とする車両用通信装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の車両用通信装置において、
前記制御手段は、前記ICカードへの再記録処理では、前記記憶手段に記憶されている既存情報に最新情報を追加する追記処理および既存情報を最新情報に更新する上書き処理を含んでいることを特徴とする車両用通信装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の車両用通信装置において、
報知手段を設け、
前記制御手段は、前記ICカードへの情報の記録処理が完了しない場合に、前記アクセス手段により再度アクセス許可を得た上でICカードへの情報の再記録処理を実行する期間中は、前記報知手段により前記ICカードへのアクセス中であることを知らせる報知動作を行うように構成されていることを特徴とする車両用通信装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の車両用通信装置において、
前記制御手段は、前記再認証処理で読み出したICカード情報と既に読み出して内部に記憶しているICカード情報とを照合し、一致した場合に同一のICカードであることを認証して再記録処理を実施することを特徴とする車両用通信装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の車両用通信装置において、
前記制御手段は、前記ICカードへの記録処理が達成できなかったときに、その記録すべきすべての情報を内部に記憶すると共に、前記ICカードへ再記録処理を実施する場合には、そのICカードへの情報の記録処理ができなかった情報のみについて記録することを特徴とする車両用通信装置。
【請求項12】
請求項11に記載の車両用通信装置において、
前記制御手段は、前記再記録処理を再度アクセス許可を得た後、次の新たな課金情報の記録処理の時点で同時に実施することを特徴とする車両用通信装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードが装着可能に構成され、装着されたICカードに記録されている使用者情報を読み出すと共に、路側機との間で無線通信を行って利用料金の課金処理を行うようにした車両用通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有料道路の料金所などにおいてノンストップで料金収受処理を行えるようにしたETCシステムは、出口料金所あるいは入口料金所のゲートに無線機としての路側機を配設すると共に、この路側機のアンテナを介して無線通信をして料金収受処理を行う車載器を車両側に搭載して構成している。車載器には料金の支払いをする使用者の情報を記憶させたICカードを装着するように構成されており、無線通信の際に使用者や車両の確認と共に料金所の料金情報などを授受して記録するように構成されている。
【0003】
課金処理の手順としては、例えば、接触式のICカードを車載器に装着すると、車載器はICカードに記憶されている契約情報や料金所情報などを読み出し、車載器内部の記憶部に記憶する。また、料金所を通過する際には、車載器は、路側機との間で無線通信を行って、車載器内部に登録された車両情報とICカードから読み出した契約情報や料金所情報などを送信すると共に、路側機から通行料金に関する課金情報を得てこれをICカードに書き込む処理を行って一連の処理を終了する。
【0004】
上記したICカードの情報として示した契約情報は、ICカードの識別情報や有効期限情報あるいは決済に関する情報であり、これらはICカードの発行時に内部に固定的に記録された情報である。また、ICカードに記録する情報としては、この他に、最後に利用した料金所の情報や、利用履歴に関する情報などがある。
【0005】
また、車両情報としては、車両の形状や重量などの車両の特徴を表す情報であり、これらの情報は、車載器を対象車両にセットアップする作業の時に車載器内部の記憶手段に記憶されるものである。
【0006】
そして、課金処理に必要な料金所情報としては、路側機との無線通信で受信する入口情報や通行履歴情報などであり、ETC料金所通過時に受信した最新情報がICカードに記録されるようになっている。この料金所情報は、次の料金所において無線通信を介して読み出され、どの料金所を経由したかを知ることで課金処理を行うことに利用される。
【0007】
上記のように、ETCシステムにおいては、ICカードに記憶されている情報を使用して課金処理を行うと共に、課金処理の結果が車載器によりICカードに記録されるように構成されているので、ICカードとの情報の授受が失敗すると正しい課金情報が記録されないことになり、次の料金所において正常に課金処理が行えなくなる問題がある。
【0008】
この原因としては、ICカードが接触式のものであることから、例えば車両の振動等で装着したICカードと車載器の読み取り部との接触が不良となるような場合や、ICカードの接触する電極部に汚れがあったりこれを介して静電気などの悪影響を受けてICカードとのデータのやり取りが異常となったりする場合などが考えられる。
【0009】
そして、上記したようなICカードへの書き込み処理の失敗が生ずると、従来のシステムにおいては、ユーザに対してカードエラー等が発生した旨の警告通知を行い、ユーザにICカードの再装着を行うように促すことが行われている。これにより、ICカードとの間の電極の接触状態を回復させたり、再起動したりすることによって異常状態の回避を図ろうとするものである。
【0010】
ところが、上記のような処置を実行する場合に問題となる事情がある。すなわち、ICカードのセキュリティ上の点から、ICカードが車載器から抜き取られると、その時点でICカードから読み出していた契約情報、料金所から受信した料金所情報などの決済情報について破棄をすることが望ましいため、ICカードを再装着した時点ではICカードに書き込むべき課金情報も破棄されているので、書き込むべき課金情報がなく、最新の課金情報が更新記録されることもなくなってしまうというものであった。
【0011】
このような不具合を回避するために、例えば特許文献1に示すような技術がある。これは、ICカードへの記録異常が発生した時点で車載器に一旦情報を記憶しておき、ユーザによってICカードが再装着された後にICカードへの記録を再施行しようとするものである。
【特許文献1】特開平11−195152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述した特許文献1に示したものでは、例えばICカードを抜き取った状態つまりICカードが装着されていない状態にあってもICカードの契約情報や料金所情報が車載器にデータとして保持されていることになるから、決済情報のセキュリティ保護の点で採用することは難しい。加えて、この方法では、ユーザへのICカード再装着操作が必要条件となるが、ユーザがICカードの再装着をうっかり忘れてしまったような場合には、車載器内に記憶しているデータをICカードに記録する処理を実行することができない。さらに、契約情報や料金所情報などの重要情報にはアクセス制限があるのが一般的であり、ICカード内部の情報にアクセス許可されないと記録処理が行えないという不都合がある。
【0013】
本発明は上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、課金処理が終了してICカードへの課金情報の書き込みの際に失敗した場合でも、ユーザが操作することなく自動的に書き込み処理を達成すべく処置をとることができるようにした車両用通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明によれば、ICカードが装着されると、アクセス手段により、内部に設けられた記憶手段へのアクセス許可を得るための起動処理および認証処理を行い、この後、制御手段によりアクセス許可を得たICカードの記憶手段にアクセスし、使用者情報を読み出すと共に、有料道路などの路側機との間で無線通信を行って利用料金の課金処理を行い、ICカードの記憶手段に記憶させる情報がある場合にはその情報を記録する処理を行う。
【0015】
このとき、制御手段は、ICカードへの情報の記録処理が達成できなかったときに、アクセス手段により再度アクセス許可を得た上でICカードへの情報の再記録処理を実行するので、例えば装着されたICカードの電極が接触不良やノイズなどに起因した復帰可能な一時的な不具合で記録処理が失敗するような場合に、使用者によってICカードが取り出される前に再記録処理によって課金処理の情報を失わずに記録することができるようになる。
【0016】
請求項2の発明によれば、上記発明において、制御手段により、ICカードへの情報の記録処理が完了しないときを判断する場合に、ICカードからの応答が正常でない場合あるいはICカードから情報を読み出せない場合を条件としているので、故障などの復帰が不能な場合を除いて、例えば振動やノイズなどの一時的な原因である場合にこの条件で判断することで再記録処理を行うことで記録処理を達成することができる率を高めることができるようになる。
【0017】
請求項3の発明によれば、上記各発明において、制御手段により、ICカードへの情報の再記録処理の実行中においては、そのICカードが非装着状態になったことを検出すると、その再記録処理を中断するようにしたので、非装着状態となった後に再度ICカードが装着されても再記録処理を実施して不用意にICカードの記録情報や課金情報などを引き出されることを防止することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、上記各発明において、制御手段により、ICカードへの情報の再記録処理の実行中においては、そのICカードが非装着状態になったことを検出すると、そのICカードから読み出した情報および前記路側機との通信で受信した課金処理に関する情報を消去するようにしたので、上述の請求項3の発明に加えてさらに高いセキュリティを維持することができるようになる。
【0019】
請求項5の発明によれば、上記各発明において、制御手段により、アクセス手段が再度アクセス許可を得る処理を実行する場合には、ICカードを一旦起動停止する非活性化処理を実施した後に再度起動する活性化処理を起動処理として実施するようにしたので、ノイズなどに起因した誤動作で記録処理が失敗した場合でも再起動することで復帰させた上で再記録処理をすることができるようになる。
【0020】
請求項6の発明によれば、上記各発明において、制御手段により、アクセス手段が再度アクセス許可を得る処理を実行する場合には、ICカードとの間で再認証処理を実施した上で記憶手段から情報を読み出す処理を実行するようにしたので、装着状態のICカードを確実に認識した上で再記録処理を行えるようになり、これによってICカードが装着された状態を不正な手段で成立させて別のICカードにより不正に情報を引き出そうとするような行為をも防止することができるようになる。
【0021】
請求項7の発明によれば、上記請求項6の発明において、制御手段により、ICカードとの間で行う再認証処理として、認証処理に加えて記憶手段から情報を読み出す処理を含んで実施するようにしたので、ICカードを認識するための情報を取得してセキュリティの向上を図ることができるようになる。
【0022】
請求項8の発明によれば、上記各発明において、制御手段により、ICカードへの再記録処理では、記憶手段に記憶されている既存情報に最新情報を追加する追記処理および既存情報を最新情報に更新する上書き処理を含んでいるので、必要とされる追記処理および上書き処理を共に実行することができる。
【0023】
請求項9の発明によれば、上記各発明において、報知手段を設け、制御手段により、ICカードへの情報の記録処理が完了しない場合に、アクセス手段により再度アクセス許可を得た上でICカードへの情報の再記録処理を実行する期間中は、報知手段によりICカードへのアクセス中であることを知らせる報知動作を行うように構成したので、使用者がICカードを抜き取ってしまうことを防止して再記録処理の達成を高い率で実施することができるようになる。
【0024】
請求項10の発明によれば、上記各発明において、制御手段により、再認証処理で読み出したICカード情報と既に読み出して内部に記憶しているICカード情報とを照合し、一致した場合に同一のICカードであることを認証して再記録処理を実施するようにしたので、ICカードが同一であることを確実に認識することができるようになり、セキュリティ性を高めることができるようになる。
【0025】
請求項11の発明によれば、上記各発明において、制御手段により、ICカードへの記録処理が達成できなかったときに、その記録すべきすべての情報を内部に記憶すると共に、ICカードへ再記録処理を実施する場合には、そのICカードへの情報の記録処理ができなかった情報のみについて記録するようにしたので、再記録処理を必要最小限の時間で達成することができ、再記録処理中にICカードが引き抜かれる前に記録処理を達成する率を高めると共に、ICカードへのアクセスが競合するなどの不都合も極力抑制することができるようになる。
【0026】
請求項12の発明によれば、前記請求項11の発明において、制御手段により、再記録処理を再度アクセス許可を得た後、次の新たな課金情報の記録処理の時点で同時に実施するようにしたので、ICカードの装着状態が保持される場合には、ICカードへのアクセス時間を極力抑制して競合する率を低減することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
(第1の実施形態)
以下、本発明をETC車載器に適用した場合の第1の実施形態について図1ないし図3を参照して説明する。
【0028】
図1は全体のブロック構成を示すもので、車両用通信装置としての車載器1は、ETCシステムで料金所に設けられる路側機2のアンテナ2aとの間で無線通信を行うもので、例えば車両のダッシュボード部や運転席の近傍に設けられており、ICカード3が装着可能に構成されている。
【0029】
車載器1において、アクセス手段および制御手段としての制御回路4は、マイコンやROM、RAMなどを含んで構成されるもので、ETCシステムの課金処理に対応した動作をするようにプログラムが予め組み込まれている。制御回路4には、路側機2と通信を行うための無線部5およびアンテナ5aが接続されている。路側機2との間の無線通信では、DSRC(Dedicated Short Range Communication;狭域通信)方式を採用した通信処理を行うものである。アンテナ6は、車載器1の本体に一体に設けられるものや本体からワイヤを介して独立した構成として設けられフロントガラスなどに装着するものなどがある。
【0030】
制御回路4には、この他に外部機器接続部7、記憶部8、表示部9、入力操作部10、ICカード制御部11、ICカードコネクタ12などが接続されている。外部機器接続部7には、例えばカーナビゲーション装置などが接続可能に構成されていて、データの授受を行うことで相互に情報を利用して利用者にとって有益な情報を提供することができるようになっている。記憶部8は、フラッシュメモリに代表される不揮発性の記憶手段であり、車両に搭載する際に車両情報などが予め登録されたデータが記憶されると共に、課金処理に必要な各種のデータが記憶されるようになっている。
【0031】
表示部9は、報知手段として機能するもので、LEDなどの表示手段で課金処理を実行していることを使用者に表示により伝えたり、警告などを表示により行ったりするもので、例えば処理中を表示する「緑」や警告を表示する「赤」などの異なる色のLEDを設けたり、あるいは液晶表示部などを設けたりする。入力操作部10は、操作ボタンにより各種設定作業を行ったり所定の情報を表示させたりするための操作入力を受け付けるものである。
【0032】
なお、報知手段として、外部機器接続部7に接続されたカーナビゲーション装置を利用することができる。制御回路4から、例えばカーナビゲーション装置のスピーカを利用して音声案内をする情報を送信し、これによって音声による通知をすることができるようにしたものである。
【0033】
ICカード制御部11はICカードコネクタ12に装着されるICカード3を認識してデータの授受を行うためのものである。具体的には、制御回路4の制御により後述するようにしてデータの授受の制御が行われる。ICカードコネクタ12は、ICカード3に設けられた電極部と電気的に接触する電極部を備えたコネクタである。
【0034】
また、車載器1の各部は電源部13から給電されるようになっており、電源部13は車載バッテリからキースイッチのアクセサリスイッチ(ACCスイッチ)を介して接続されており、アクセサリスイッチがオンされると所定の直流電圧を生成して給電するように構成されている。
【0035】
ICカード3は、制御部14および記憶手段としての記憶部15を備えると共に、外部とデータの授受を行うための電極部が設けられている。制御部14はマイコンなどを主体とした構成とされていて、車載器1に記憶部15に記憶している情報を要求に応じて出力したり、車載器1から要求される書き込むべきデータの書き込み処理を行ったりするようになっている。記憶部15としては、フラッシュメモリに代表される不揮発性の記憶手段が設けられている。
【0036】
次に、上記構成を利用して行う課金処理の一連の流れと本実施形態の特徴的な動作について図2、図3を参照して説明する。
【0037】
図2は全体のシーケンスを示すもので、車載器1、路側機2、ICカード3とユーザ(使用者)の間のやり取りを表している。一般的な使用手順として、まずユーザが車両に乗り込みACCスイッチをオンすると、車載器1は車載バッテリから給電され電源ONとなる(A1)。
【0038】
この後、ICカード3がユーザにより車載器1のICカードスロットに挿入装着されると(A2)、車載器1の制御回路4は、ICカード制御部11を介してICカード3の活性化処理を開始する(A3)。活性化処理では、制御回路4は、ICカード3に対して、電源供給およびクロック供給を行うと共に、リセットを解除することにより活性化する。
【0039】
続いて、車載器1の制御回路4は、ICカード3の種類を判別しETCカードであることを認識すると、ICカード3との相互認証処理を行う。この相互認証処理では、ICカード3と車載器1とが互いに相手から送られる認証データの正当性を確認する。そして、相互認証が正常に完了すると、この後、制御回路4は、ICカード3から契約情報や料金所情報などのICカード情報を読み出す。
【0040】
なお、これらのICカード情報は、ICカード内でアクセス制限されており、車載器1は、相互認証が成立することでアクセス許可を取得することができるようになっている(A4)。そして、必要なICカード情報の読み出しが完了すると、車載器1はETCシステムの料金所の路側機2との通信が可能になったことを表示部9のLEDなどで通知したり、接続されているカーナビゲーション装置を通じて音声出力を行ったりすることによりユーザに通知する(A5)。これにより路側機2との間の無線通信が開始可能なスタンバイ状態となる。
【0041】
次に、上記状態において車両が有料道路の料金所を通過する際にその路側機2との間で通信を開始すると、次のような処理が実行される。まず、路側機2側から車載器1に対して契約情報と車両情報について取得要求が送信される(B1)。車載器1は、これに応じて制御回路4により契約情報と車両情報とを読み出して路側機2側に送信する(B2)。ここで送信する契約情報にはICカード3の有効期限情報や決済に関する情報などが含まれており、車両情報には車両の形状や重量などの車両の特徴を表す情報が含まれており、これによって車種が識別可能となっている。
【0042】
続いて、路側機2側から車載器1に対して料金所情報の取得要求が送信される(B3)
。車載器1の制御回路4は、これに応じて料金所情報として入口料金所の情報や通行履歴情報などの情報を路側機2に送信する(B4)。路側機2側においては、受信した料金所情報をもとにして通行料金の課金計算を実行すると共に課金処理としてユーザに対する支払いの処理を実行する(B5)。
【0043】
路側機2は、課金処理が終了すると、車載器1に対して最新の料金所情報に更新する旨の内容を料金所情報更新要求として送信する(B6)。これを受けて車載器1の制御回路4は、記憶部8に記憶している料金所情報を更新すると共に更新が完了したことを路側機2に対して応答する(B7)。
【0044】
次に、路側機2は、通行料金や料金所通行可能指示などの課金情報を課金情報更新要求として車載器1側に送信する(B8)。このとき、必要に応じてICカード3内への情報記録指示情報もあわせて送信する。車載器1の制御回路4は、これを受信すると課金情報およびICカード3への記録指示情報を受信した旨の応答を路側機2側に行う(B9)と共に、ユーザに対して表示部9や音声案内などにより通行料金や料金所の通行可能案内等の車載器情報を通知する(B10)。
【0045】
この後、車載器1の制御回路4は、路側機2との無線通信処理を終了し、受信した料金所情報や課金情報をICカード3に記録する処理を実行する(C1)。ICカード3側において制御部14により受信した情報が正常に記憶部15に記録処理がなされると記録が成功した旨の応答が車載器1側になされるのでこれにより一連の課金処理が終了することになる。
【0046】
なお、上記したユーザへの車載器情報通知、ICカード3への記録処理および無線通信の終了処理については、特に順序が規定されておらず、適宜の順序で実行することができるものである。
【0047】
さて、本実施形態の特徴的な処理動作は、上記のICカード3への記録処理が失敗した場合に対応する処理の部分であり、以下にその手順を説明する。上記のように、車載器1の制御回路4がICカード3に対して記録指示を送信して料金所情報および課金情報を記録させる場合に、ICカード3側から正常に記録処理が行えた旨の応答がない場合、つまり、たとえば電極の接触不良などで記録指示を受け取れない場合や、記録処理をしたがその応答ができない場合、あるいは記録処理中にノイズなどの悪影響を受けて正常な動作が行えない場合などである(C2)。これらの場合には、車載器1側では、制御回路4がICカード3に情報記録の要求を送信した時点から一定時間を経過しても応答がないか、あるいは応答はあっても異常な応答内容であるようなときにはICカード記録が失敗したと判断する。
【0048】
そして、このような場合には、車載器1は、ICカード3への記録処理が完了しておらず、ICカード3に対して情報の授受を行うためのアクセス許可権を再取得する必要があると認識し、ICカード3に対する再記録処理を実行する。なお、このときには、すでにICカード3に対して記録すべき情報の一部が記録されている場合もあるので、その場合には記録できなかった情報のみを再記録すればよい。そこで、車載器1においては、記録に成功している情報と失敗した情報とを区別して記憶部8に記憶しておくことで対応するようになっており、これによって再記録処理の時間短縮を図っている。
【0049】
さて、車載器1の制御回路4は、まずユーザに対して、表示部9あるいは音声案内などによりICカード3への再記録処理を実行する旨を表示することで通知を行う(C3)。これはユーザが再記録処理中にICカード3を抜き取ってしまうことのないように促すためである。
【0050】
次に、制御回路4は、ICカード3へのアクセス許可権を取得するために、ICカード3の再起動処理および再認証処理を続けて実行する(C4)。再起動処理をすることは、ICカードのセキュリティ上およびノイズなどで暴走している場合などに対応して実施するもので、再認証処理はこの再起動処理に伴って必要となる処理である。しかし、この場合においては、ICカード3は装着されたままの状態であるから、最初の装着時に読み込まれた各種情報は車載器1の記憶部8内に記憶された状態となっている。
【0051】
そして、この再認証処理においては、装着したままの状態で再起動したICカード3が同じICカードであることが確認できれば足りるので、認証に必要な最低限の情報を読み出す処理をすることで処理時間の短縮を図るようにしている。これによって、再記録処理中にICカード3が引き抜かれたり車載器1の電源がオフされたりするなどの事態が発生して失敗する確率を低減するようにしている。
【0052】
さて、上記のようにして再起動処理および再認証処理が終了して車載器1からのICカード3へのアクセス許可権を得ると(C5)、ICカード3に情報の再記録処理を行い(C6)、ICカード3側で再記録処理が実行され正常に終了すると、その旨を車載器1側に送信する(C7)。車載器1の制御回路4はこれを受けて再記録が成功したことを表示部9あるいは音声出力によりユーザに通知する(C8)。
【0053】
以上の処理は車載器1と路側機2およびICカード3との間のやり取りのシーケンスの概略的な説明であるが、次に、図3を参照して車載器1の制御回路4によるICカード3への情報の記録処理についてもう少し詳細に説明する。車載器1の制御回路4は(以下単に制御回路4とする)、路側機2との無線通信処理が終了すると、図3の記録処理プログラムをスタートし、以下のような手順で処理を実行する。
【0054】
まず、制御回路4は、路側機2からICカード3への情報記録指示を受けているかどうかを判断し(ステップS1)、「YES」の場合にはICカード記録処理を実行する(ステップS2)。なお、情報記録指示を受けていない場合には、制御回路4は、「NO」と判断して情報記録処理を終了する。
【0055】
ステップS2では、制御回路4は、前述したように料金所情報や通行料金などの課金情報をICカード3に対してICカード制御部11、ICカードコネクタ12を介して出力し、ICカード3においては、制御部14がこれを入力すると必要な情報を記憶部15に更新記録あるいは追加記録する処理を行う。
【0056】
この間、制御回路4は、ICカード3側から記録処理が成功した旨の応答が入力されるのを待機している(ステップS3)。例えば、一定期間が経過しても記録成功の応答がない場合あるいは異常な応答がある場合などは、制御回路4は、記録失敗と判断してステップS4に移行する。また、記録成功の応答があった場合には、制御回路4は、前述したように記録成功の通知をユーザに対して実施して(ステップS15)処理を終了する。
【0057】
さて、ステップS4では、制御回路4は、まず、ICカード3への再記録処理を実行する旨の通知を開始させる。具体的には、前述したように表示部9によりLEDを記録処理実行状態であることを「緑」の点滅動作で表示したり、本体からあるいはカーナビゲーション装置を介して音声案内したりすることによりその旨を通知する。
【0058】
この記録処理の実行状態であることの通知は、ユーザが料金所を通過した直後にICカード3を引き抜いたりしないようにするためである。このようにICカード3を装着したままとすることで、セキュリティ上で実施しているICカード3の抜き取りに伴う課金情報の破棄の条件を維持しつつ、後述する再記録処理を実施することができるようにしたのである。
【0059】
次に、制御回路4は、ICカード3に対してリセット状態にすると共に、電源供給およびクロック供給を停止することでICカード非活性化処理を行う(ステップS5)。続いて、制御回路4は、ICカード3への電源供給およびクロック供給を開始してリセット解除することでICカード活性化処理を行う(ステップS6)。
【0060】
この活性化処理によりICカードの再起動が成功すると(ステップS7で「YES」)、制御回路4はICカード相互認証処理を実行する(ステップS8)。ここで、ICカード3の再起動が失敗していた場合、例えば再起動処理中にICカード3がICカードコネクタ12から引き抜かれてしまった場合や、再起動が不能である場合には処理を中止して後述するようにステップS16に移行する。
【0061】
さて、ICカード相互認証処理では、制御回路4は、ICカード3および車載器1が互いに相手から送られる認証データの正当性を確認する。相互認証が正常に完了すると(ステップS9で「YES」)、制御回路4は、ICカード3内の契約情報や料金所情報などのICカード情報へのアクセスが可能となる(アクセス許可権の取得)。ここで、ICカード3との間の再認証が失敗した場合にも、ステップS7の場合と同様に処理を中止してステップS16に移行する。
【0062】
次に、制御回路4は、ステップS9からS10を経て読み出したICカード3を特定するための契約情報について、先に記憶した契約情報を読み出してこれと照合をし、同一の情報であるか否かを判断する(ステップS11)。ここで照合するために読み出す契約情報は、ICカード3内に記憶されている全ての契約情報とする必要はなく、同一であることを確認することができる一部の情報として簡略化することができる。これはICカード3を装着したままの状態であったことから同一である可能性が高いことと、最小限の一致照合をできる情報とすることで読み出しに要する時間を短縮して迅速な処理を達成するためである。なお、何らかの理由により同一のICカードであることが識別できなかったときには再記録処理を中断してステップS16に移行する。
【0063】
同一のICカード3であることが認識できた場合には、制御回路4は、先に記録処理で失敗した情報の再記録処理を実行する(ステップS12)。この場合においても、再記録処理をする情報は、路側機2から指示された課金情報のすべてを再び記録するのではなく、再記録に失敗している情報のみを記録することでアクセス時間の短縮を図ることができる。
【0064】
再記録処理が正常に終了してICカード3から再記録成功の応答があった場合には(ステップS13で「YES」)、制御回路4は、表示部9にてLEDの点滅動作などでICカード3への再記録処理の実行中である旨の表示を行っていたのを終了すると共に、再記録が成功したことを表示部9および音声案内により通知する(ステップS14,S15)。再記録処理が失敗している場合には(ステップS13で「NO」)、制御回路4は、ICカード3への再記録処理を中止してステップS16に移行する。
【0065】
上述の場合において、ステップS7,S9,S11,S13の各判断ステップにおいて「NO」と判断した場合には、制御回路4は、ICカード3への再記録処理を中止した上でステップS16に移行し、表示部9による再記録処理の試行中である旨の表示動作を停止させる。そして、ICカード3の引き抜きによってICカード3への再記録処理が中止された場合には、制御回路4は、記憶している契約情報や料金所情報などの決済情報を破棄し(ステップS17)、ICカード3への記録処理が失敗したことを表示部9により表示したり、あるいは音声案内によって音声出力でユーザに通知したりする処理を実行し(ステップS18)、一連の記録処理を終了する。
【0066】
このような本実施形態によれば、車載器1の制御回路4により、路側機2との間で実施した課金処理の無線通信の終了後にICカード3への記録処理が失敗した場合には、そのままの状態で再度起動処理、再認証処理を経て課金情報を再記録処理するようにしたので、振動などに起因したICカード3の電極の接触不良やノイズなどに起因した異常の発生などの復帰可能な一時的な不具合を迅速にリカバリーできるようになる。
【0067】
また、車載器1においては、ICカード3が抜き取られると内部に記憶しているICカード3から読み出した情報や課金情報の破棄をセキュリティ上の関係で実施している条件をそのまま残して安全性を損なうことなく再記録処理を実施することができるようになる。また、記録処理の失敗の直後に実施するので、ユーザがICカード3を抜き取ってしまう確率を低減して課金情報の消失を極力防止することができるようになる。
【0068】
そして、再記録処理の実行時には、制御回路4は、本来の記録処理が失敗したことをユーザに通知することなく単に記録処理を実行する旨の通知を行って再記録処理を実行するようにしたので、ユーザに記録処理に失敗したという不安な印象を与えることなく、またこれによって故障と早合点するなどのICカード3を抜き取るきっかけとなるようなことを防止することができる。
【0069】
さらに、車載器1の制御回路4により、ICカード3の認証処理や情報読み出しあるいは再記録処理において、必要最小限の情報の読み出しおよび書き込みの処理で行うようにしたので、ICカード3へのアクセス時間を通常の記録処理のときよりも短縮して迅速に実施することができ、これによってICカード3の抜き取りに対する再記録処理の成功率を高めることができる。
【0070】
(第2の実施形態)
図4および図5は本発明の第2の実施形態を示すもので、以下、第1の実施形態と異なる部分について説明する。
【0071】
第1の実施形態においては、車載器1によるICカード3への課金情報の記録処理が失敗した時点で、続けて再記録処理を実行するようにしたが、これに代えて、次の記録処理が発生したときにあわせて記録処理をするようにしたところである。
【0072】
図4において、全体の処理シーケンスでは、車載器1は、ICカード3へのアクセスおよび路側機2との間の課金処理では第1の実施形態と同様に進行するが、ICカード3への記録処理(C1a)では図5に示すようなフローチャートに従うようになっている。そして、ICカード3への記録処理が失敗した場合に(C2)、ICカード3の再起動および再認証処理(C4)まで実施してアクセス許可権を得た状態で一連の処理を終了する。なお、この状態では、次の料金所で路側機2と無線通信処理を行う場合には、B1のシーケンスから開始することができるようになっている。また、ICカード3への記録が失敗した課金情報などは車載器1の記憶部8に記憶保持された状態となっている。
【0073】
さて、車載器1の制御回路4は、図5に示すICカード記録処理を実行すると、ステップS1にてICカード記録指示があるか否かを判断し、「YES」の場合には、前回記録処理で失敗して書き込み処理ができていないデータ(未書込みデータ)があるかどうかを判断する(ステップS19)。制御回路4は、「YES」の場合にはその未書込みデータの読み出しを行い(ステップS20)、続いて記録指示されたデータと未書込みデータとをICカード3にまとめて記録する処理を行い(ステップS2)、「NO」の場合にはステップS2にジャンプしてICカード3へ記録指示されたデータの記録処理を行う。これにより、前回記録処理が失敗して記録ができなかった課金情報については、途中でICカード3が抜き取られていない限りこの時点で記録することができるようになる。
【0074】
この後、制御回路4は、第1の実施形態と同様にして、今回の記録処理が失敗した場合には、ステップS3〜S11までを実行してICカード3が同一のものであることを認識してアクセス許可権を得るところまで進める。この状態で記録処理を一旦終了して待機状態となる。
【0075】
このような第2の実施形態によれば、制御回路4により、ICカード3への記録処理が失敗した場合において、その後再記録処理を進めることでアクセス状態を継続することを止めて、次回の記録処理実行時に同時に追加記録データとして記録処理を行うようにしたので、ICカード3へのアクセスによる占有状態を極力少なくして他の処理との競合状態が発生することによる弊害を抑制することができるようになる。
【0076】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張できる。
【0077】
ETC用の車載器1に限らず、車両用通信装置全般に適用することができる。
【0078】
音声案内を外部機器接続部7に接続されたカーナビゲーション装置を利用することで行うようにしたが、車載器1内部に音声案内をする機能を設けることもできる。
【0079】
再記録処理で認証を行うときの情報は1個にすることもできるし、安全性を高めるために複数個とすることもできる。
【0080】
再記録をする情報として課金情報をすべて書き直すようにすることもできるし、実施形態で示したように記録失敗した情報のみを記録するようにすることもできる。
【0081】
表示部9としてLEDによる通知を行う構成としたが、音により報知する構成としても良いし、液晶などの表示部を設けてこれに表示するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す電気的なブロック構成図
【図2】シーケンス図
【図3】書き込み処理が失敗した場合の処理を示すフローチャート
【図4】本発明の第2の実施形態を示す図2相当図
【図5】図3相当図
【符号の説明】
【0083】
図面中、1は車載器(車両用通信装置)、2は路側機、3はICカード、4は制御回路(アクセス手段、制御手段)、5は無線部、8は記憶部(記憶手段)、11はICカード制御部、15は記憶部(記憶手段)である。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成19年9月25日(2007.9.25)
【代理人】 【識別番号】100123191
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高順

【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則

【識別番号】100147234
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 聡

【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦


【公開番号】 特開2008−16059(P2008−16059A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2007−247696(P2007−247696)