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【発明の名称】 位置制御装置、位置制御方法、ロボット制御装置およびロボット制御方法
【発明者】 【氏名】大石 潔

【氏名】宮崎 敏昌

【氏名】中田 広之

【氏名】橋本 敦実

【氏名】向井 康士

【要約】 【課題】位置指令の共振周波数成分を消去する帯域消去フィルタを用いて振動を抑制する際、ロボットを構成する各軸で共振周波数が違う場合に、帯域消去フィルタの位相差により、動作軌跡に誤差が生じることを防止する。

【構成】位置指令を微分する微分器30と、微分器の出力を入力とし関節軸の共振周波数を中心周波数とする成分を消去するノッチフィルタ31と、ノッチフィルタの出力を積分する積分器32と、ノッチフィルタの出力を増幅する増幅器33と、積分器の出力と増幅器の出力とを加算して位置制御ブロックに出力する第2の位置指令を生成する加算器50とを備えた。帯域消去フィルタとして、速度成分フィードフォワード補償機能を付加したノッチフィルタを用いることにより、軸毎で帯域消去周波数が異なっても、ノッチフィルタの軸間位相差に起因する軌跡動作の誤差を最小限に抑えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動する機器に対する位置指令と前記モータの位置を検出して得られる位置フィードバック信号とを比較し、電流指令を出力する制御ブロックを備え、前記電流指令により前記モータに電流を流す位置制御装置であって、
前記位置指令を微分する微分器と、
前記微分器の出力を入力とし所定の周波数成分を消去する帯域消去フィルタと、
前記帯域消去フィルタの出力を積分する積分器と、
前記帯域消去フィルタの出力を増幅する増幅器と、
前記積分器の出力と前記増幅器の出力とを加算して前記位置制御ブロックに第2の位置指令を出力する加算器とを備えた位置制御装置。
【請求項2】
モータにより駆動する機器に対する位置指令と前記モータの位置を検出して得られる位置フィードバック信号とを比較し、電流指令を出力するステップを含み、前記電流指令により前記モータに電流を流す位置制御方法であって、
前記位置指令を微分するステップと、
前記微分した信号のうち所定の周波数成分を消去するステップと、
前記所定の周波数成分が消去された信号を積分するステップと、
前記所定の周波数成分が消去された信号を増幅するステップと、
前記積分された信号と前記増幅された信号とを加算して前記位置フィードバック信号と比較する第2の位置指令を出力するステップとを含む位置制御方法。
【請求項3】
複数のアームおよび関節軸を有し前記関節軸の近傍に設けられた減速機を用いてモータにより駆動するロボットに対する位置指令と前記モータの位置を検出して得られる位置フィードバック信号とを比較し、電流指令を出力する制御ブロックを備え、前記電流指令により前記モータに電流を流すロボット制御装置であって、
前記位置指令を微分する微分器と、
前記微分器の出力を入力とし前記関節軸の共振周波数を中心周波数とする成分を消去する帯域消去フィルタと、
前記帯域消去フィルタの出力を積分する積分器と、
前記帯域消去フィルタの出力を増幅する増幅器と、
前記積分器の出力と前記増幅器の出力とを加算して前記位置制御ブロックに第2の位置指令を出力する加算器とを備えたロボット制御装置。
【請求項4】
複数のアームおよび関節軸を有し前記関節軸の近傍に設けられた減速機を用いてモータにより駆動するロボットに機器に対する位置指令と前記モータの位置を検出して得られる位置フィードバック信号とを比較し、電流指令を出力するステップを含み、前記電流指令により前記モータに電流を流すロボット制御方法であって、
前記位置指令を微分するステップと、
前記微分した信号のうち前記関節軸の共振周波数を中心周波数とする周波数成分を消去するステップと、
前記周波数成分が消去された信号を積分するステップと、
前記周波数成分が消去された信号を増幅するステップと、
前記積分された信号と前記増幅された信号とを加算して前記位置フィードバック信号と比較する第2の位置指令を出力するステップとを含むロボット制御方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、減速機を介してモータにより駆動される機器に関する位置制御装置および位置制御方法に関し、特に、ロボットにおける振動抑制を行うためのロボット制御装置およびロボットの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
減速機を用いたロボットでは、減速機のばね成分等に起因する共振が存在する。そして、無対策の状態でロボットをこの共振周波数近傍で動作をさせると、振動が発生し、軌跡精度や停止精度に悪影響を与える。
【0003】
この対策方法としては、サーボループ内で検出信号の共振周波数成分を消去し、共振による振動が発生しにくい制御系を構成する方法(例えば、特許文献1参照)や、動作指令信号から共振周波数成分を消去し、振動が発生する周波数での動作を避ける方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【0004】
図7はロボットで用いられる一般的な位置制御ループを示すブロック図である。図7において、位置制御ブロック21は、位置指令θcom17とモータ18の位置を検出するエンコーダ19から得られる位置フィードバック(以下FBと略す)信号θfb20とを比較し、速度指令ωcom25を速度制御ブロック22へ出力する。速度制御ブロック22は、速度指令ωcom25と位置FB信号θfb20を微分要素S24で微分して得られる速度FB信号ωfb26とを比較し、電流指令icom27をサーボアンプ23に出力する。サーボアンプ23は電流指令icom27に従ってモータ18に電流を流す。
【0005】
ここで、上述したサーボループ内で検出信号の共振周波数成分を消去し、共振による振動が発生しにくい制御系を構成する方法(例えば、特許文献1参照)について、図面を用いて説明する。この方法の例としては、図8や図9に示すように、図7に示す閉ループ内に共振周波数の帯域消去特性を持つノッチフィルタ31を挿入することが考えられる。なお、図10は、ノッチフィルタの振幅と位相の周波数特性の一例である。なお、ノッチフィルタ31は、特定の周波数に急峻な減衰を与えるフィルタである。
【0006】
しかし、この方法では、共振周波数が特定できれば効果を発揮することができるが、例えば垂直多関節6軸ロボットのようにロボットの姿勢の変化で刻々と共振周波数が変化するような対象に対しては、共振信号のみを正確に消去することは困難である。
【0007】
そして、共振周波数とノッチフィルタ31の帯域消去周波数に不一致が発生すると、共振消去をしない場合、すなわちノッチフィルタ12を挿入していない場合と比べ、位置制御に必要な信号も消去される可能性がある。なお、位置制御に必要な信号が消去されると、閉ループ特性を劣化させ、位置制御自体が不安定になる可能性があり、副作用を出さないで効果を得ることは難しい。
【0008】
一方、動作指令信号から共振周波数を消去し、振動が発生する周波数での動作を避ける方法(例えば、特許文献2参照)を示したものが図11である。図11では、図7の位置指令θcom17の後にノッチフィルタ31を挿入し、第2の位置指令θcom2(29)を位置制御ブロック21へ出力する。
【0009】
この方法では、ノッチフィルタ31がサーボループの外側に置かれる。そのため、共振周波数とノッチフィルタ31の帯域消去周波数がずれても、第2の位置指令θcom2(29)に共振しやすい周波数が残り、振動抑制効果が弱くなるだけであり、位置制御の閉ループ特性は従来のままであり、位置制御自体が不安定になるリスクは避けることができる。
【特許文献1】特開2004−129416号公報
【特許文献2】特開2001−293638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来の動作指令信号から共振周波数を消去し、振動が発生する周波数での動作を避ける方法にも課題がある。
【0011】
ロボットの一例である垂直多関節6軸ロボットにおいては、各軸の負荷イナーシャや減速機のばね定数が異なるので、ロボットの軸毎に共振周波数が異なる。
【0012】
つまり、図11のノッチフィルタ31の帯域消去周波数がロボットの軸毎に異なる。帯域消去周波数が異なる場合のノッチフィルタ31の振幅と位相の周波数特性を図12に示す。図12は、ノッチフィルタ31の帯域消去中心周波数が8Hzの場合の振幅38および位相40の周波数特性と、中心周波数が16Hzの場合の振幅39および位相41の周波数特性を示している。なお、図12では、ロボットがある姿勢である負荷である場合に、ロボットの第1軸の共振周波数が8Hz、ロボットの第2軸の共振周波数が16Hzであったとした場合を例として示している。
【0013】
ここで問題となるのが、位相周波数特性40と位相周波数特性41との間の位相差である。図12より、周波数が1Hz(10の0乗Hz)の場合に、約7°の位相差42が発生していることがわかる。これは、図11の位置指令θcom17が1Hzの正弦波であった場合、第2の位置指令θcom2(29)が軸間で約7°の位相差を持つことになる。
【0014】
このことは、各軸単独で動作させる場合は大きな問題にはならないが、例えばロボットの先端軌跡を直線動作させようとすると、全軸を同期して動作させる必要が出てくる。この時、第2の位置指令θcom2(29)においてロボットの軸間で位相差42が発生していると、軌跡に誤差が発生する。
【0015】
以上のことを、以下に示す数式で説明する。一般に用いられるノッチフィルタ31の伝達関数をG(s)とすると、G(s)は以下の式で表すことが出来る。
【0016】
【数1】


ここで、図11における位置指令θcom17と第2の位置指令θcom2(29)間の誤差をeθとすると、以下の式で表すことが出来る
【0017】
【数2】


ノッチフィルタ帯域消去角周波数ωc(=2・π・fc)より十分に低い周波数域、すなわちs<<ωcの場合は、(数2)において、s/ωc=0とすることにより、以下の様に近似することが出来る。
【0018】
【数3】


つまり、図11においては、ノッチフィルタ帯域消去周波数fcより十分に低い周波数域では、位置指令を微分した速度成分s・θcom(s)に比例した位置指令誤差eθが常に発生する。また、ノッチフィルタ帯域消去角周波数fcが異なれば、位置指令誤差eθにも差が生じることとなる。
【0019】
すなわち、図11における帯域消去周波数が異なる場合のノッチフィルタ31の振幅および位相の周波数特性を示した図12を(数3)で説明することが出来る。
【0020】
以上の説明で示したように、従来の方式では、動作指令信号から共振周波数を消去し、振動が発生する周波数での動作を避けることで振動を抑制することは可能であるが、ロボットを構成する各軸で共振周波数が異なる場合に、帯域消去フィルタの位相差により動作軌跡に誤差が生じるという問題があった。
【0021】
したがって、本発明の目的は、上記課題を解決するものであり、動作指令信号から共振周波数を消去することでロボットの振動を抑制する方式において、ロボットを構成する各軸の共振周波数が異なる場合でも、動作軌跡の誤差を最小限に抑えることができる位置制御装置、位置制御方法、ロボット制御装置およびロボット制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の位置制御装置は、モータにより駆動する機器に対する位置指令とモータの位置を検出して得られる位置フィードバック信号とを比較し、電流指令を出力する制御ブロックを備え、電流指令によりモータに電流を流す位置制御装置であって、位置指令を微分する微分器と、微分器の出力を入力とし所定の周波数成分を消去する帯域消去フィルタと、帯域消去フィルタの出力を積分する積分器と、帯域消去フィルタの出力を増幅する増幅器と、積分器の出力と増幅器の出力とを加算して位置制御ブロックに第2の位置指令を出力する加算器とを備えたものである。
【0023】
請求項2記載の位置制御方法は、モータにより駆動する機器に対する位置指令とモータの位置を検出して得られる位置フィードバック信号とを比較し、電流指令を出力するステップを含み、電流指令によりモータに電流を流す位置制御方法であって、位置指令を微分するステップと、微分した信号のうち所定の周波数成分を消去するステップと、所定の周波数成分が消去された信号を積分するステップと、所定の周波数成分が消去された信号を増幅するステップと、積分された信号と増幅された信号とを加算して位置フィードバック信号と比較する第2の位置指令を出力するステップとを含むものである。
【0024】
請求項3記載のロボット制御装置は、複数のアームおよび関節軸を有し関節軸の近傍に設けられた減速機を用いてモータにより駆動するロボットに対する位置指令とモータの位置を検出して得られる位置フィードバック信号とを比較し、電流指令を出力する制御ブロックを備え、電流指令によりモータに電流を流すロボット制御装置であって、位置指令を微分する微分器と、微分器の出力を入力とし関節軸の共振周波数を中心周波数とする成分を消去する帯域消去フィルタと、帯域消去フィルタの出力を積分する積分器と、帯域消去フィルタの出力を増幅する増幅器と、積分器の出力と増幅器の出力とを加算して位置制御ブロックに第2の位置指令を出力する加算器とを備えたものである。
【0025】
請求項4記載のロボット制御方法は、複数のアームおよび関節軸を有し関節軸の近傍に設けられた減速機を用いてモータにより駆動するロボットに機器に対する位置指令とモータの位置を検出して得られる位置フィードバック信号とを比較し、電流指令を出力するステップを含み、電流指令によりモータに電流を流すロボット制御方法であって、位置指令を微分するステップと、微分した信号のうち関節軸の共振周波数を中心周波数とする周波数成分を消去するステップと、周波数成分が消去された信号を積分するステップと、周波数成分が消去された信号を増幅するステップと、積分された信号と増幅された信号とを加算して位置フィードバック信号と比較する第2の位置指令を出力するステップとを含むものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明の位置制御装置によれば、位置指令を微分する微分器と、微分器の出力を入力とし所定の周波数成分を消去する帯域消去フィルタと、帯域消去フィルタの出力を積分する積分器と、帯域消去フィルタの出力を増幅する増幅器と、積分器の出力と増幅器の出力とを加算して位置制御ブロックに第2の位置指令を出力する加算器とを備えたので、位置指令の共振周波数成分を消去する帯域消去フィルタとして速度成分フィードフォワード補償機能を付加したノッチフィルタを用いることで、機器の要素毎で帯域消去周波数が異なっても位置指令誤差を少なくすることができる。これにより、帯域消去フィルタを用いて動作指令信号から共振周波数を消去して振動が発生する周波数での動作を避けることで振動を抑制する際、ノッチフィルタの機器の要素間位相差に起因する軌跡動作の誤差を最小限に抑えることができる。
【0027】
本発明の位置制御方法によれば、位置指令を微分するステップと、微分した信号のうち所定の周波数成分を消去するステップと、所定の周波数成分が消去された信号を積分するステップと、所定の周波数成分が消去された信号を増幅するステップと、積分された信号と増幅された信号とを加算して位置フィードバック信号と比較する第2の位置指令を出力するステップとを含むので、位置指令の共振周波数成分を消去する際、速度成分フィードフォワード補償機能を付加することで、機器の要素毎で帯域消去周波数が異なっても位置指令誤差を少なくすることができ、上記発明と同様の効果が得られる。
【0028】
本発明のロボット制御装置によれば、位置指令を微分する微分器と、微分器の出力を入力とし関節軸の共振周波数を中心周波数とする成分を消去する帯域消去フィルタと、帯域消去フィルタの出力を積分する積分器と、帯域消去フィルタの出力を増幅する増幅器と、積分器の出力と増幅器の出力とを加算して位置制御ブロックに第2の位置指令を出力する加算器とを備えたので、位置指令の共振周波数成分を消去する帯域消去フィルタとして速度成分フィードフォワード補償機能を付加したノッチフィルタを用いることで、関節軸毎で帯域消去周波数が異なっても位置指令誤差を少なくすることができる。これにより、帯域消去フィルタを用いて動作指令信号から共振周波数を消去して振動が発生する周波数での動作を避けることで振動を抑制する際、ノッチフィルタの関節軸間位相差に起因する軌跡動作の誤差を最小限に抑えることができる。
【0029】
本発明のロボット制御方法によれば、位置指令を微分するステップと、微分した信号のうち関節軸の共振周波数を中心周波数とする周波数成分を消去するステップと、周波数成分が消去された信号を積分するステップと、周波数成分が消去された信号を増幅するステップと、積分された信号と増幅された信号とを加算して位置フィードバック信号と比較する第2の位置指令を出力するステップとを含むので、位置指令の共振周波数成分を消去する際、速度成分フィードフォワード補償機能を付加することで、関節軸毎で帯域消去周波数が異なっても位置指令誤差を少なくすることができ、上記発明と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図6を用いて説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態における垂直多関節6軸ロボットの概略構成図であり、ロボットメカ1とロボット制御装置2とから構成される。また、図1には明示していないが、ロボットメカ1は、複数のアームおよび関節軸を有しており、各関節軸の近傍に設けられた減速機を用いて駆動されるものである。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態における垂直多関節ロボットの位置制御に関する構成を示すブロック図であり、ロボットメカ1とロボット制御装置2の内部構成の概略を示す。
【0033】
図2において、ロボット制御装置2の内部に設けられたメイン制御部4は、操作・教示部3で指示され記憶された軌跡に従い、ロボットの6軸の各軸の位置指令を出力する。そして、その位置指令に追従するように、ロボットの各軸の第1のサーボ制御部5から第6のサーボ制御部10が、ロボットメカ1内の第1のモータ部11から第6のモータ部16をそれぞれ制御する。
【0034】
図3は、本発明の実施の形態におけるモータ位置指令に位相補償帯域消去フィルタを挿入したロボットの位置制御ループを示すブロック図である。
【0035】
図3に示すように、ロボットの第1軸目についての第1のサーボ制御部5と第1のモータ部11とで構成されている。第1のモータ部11は、モータ18とエンコーダ19とから構成されている。また、ロボットの第2〜6軸目も同様に、各々独立してサーボ制御部6〜10とモータ部12〜16とから構成されている。ここで、図3において、従来技術で説明した図7、図8、図9、図11と同様の要素については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0036】
図3において、従来の構成と異なるのは、背景技術で説明した図11におけるノッチフィルタ31に代えて、詳細な構成は後述するが位相補償帯域消去フィルタ28を備えた点である。
【0037】
背景技術の図11の説明において、(数3)で示したように、位置指令を微分した速度成分s・θcom(s)に比例した位置指令誤差eθが常に発生していることに着目し、この誤差を削減するため、図3における位相補償帯域消去フィルタ28は、速度成分フィードフォワード補償機能をノッチフィルタに付加している。この位相補償帯域消去フィルタ28のブロック図を図4に示す。
【0038】
図4に示すように、位相補償帯域消去フィルタ28は、位置指令θcom17を入力する微分器s30と、微分器s30の出力を入力とし所定の周波数成分を消去するノッチフィルタ31と、ノッチフィルタ31の出力を積分する積分器1/s32と、ノッチフィルタ31の出力を増幅する増幅器であるフィードフォワード補償ゲインKcomp33と、積分器1/s32の出力とフィードフォワード補償ゲインKcomp33の出力を加算して第2の位置指令θcom2(29)を出力する加算器50とを備えている。この場合、ノッチフィルタ31は、微分器s30の出力を入力としロボットの関節軸の共振周波数を中心周波数とする成分を消去する。
【0039】
上記のように構成した位置補償帯域消去フィルタ28の動作について説明する。すなわち、位相補償帯域消去フィルタ28は、ノッチフィルタ31の前段に微分器s30を持ち、図2で示したメイン制御部4から各軸に出力された位置指令θcom17を微分して位置指令速度成分dθcom45を生成し、ノッチフィルタ31に入力する。次に、ノッチフィルタ31の出力を積分器1/s32で積分したものと、ノッチフィルタ31の出力をフィードフォワード補償ゲインKcomp33で乗じたものを加算器50で加算し、加算器50は第2の位置指令θcom2(29)として出力する。
【0040】
ここで、フィードフォワードゲインKcomp33の決定方法の一例を述べる。
【0041】
図4において、ノッチフィルタ31の伝達関数G(s)を背景技術で説明した(数1)と同じとすると、位置指令θcom17と第2の位置指令θcom2(29)間の位置指令誤差eθは以下の式で表すことが出来る。
【0042】
【数4】


そして、ノッチフィルタ帯域消去角周波数ωc(=2・π・fc)より十分に低い周波数域、すなわちs<<ωcの場合は、(数4)において、s/ωc=0とすることにより、以下の様に近似することが出来る。
【0043】
【数5】


ここで、フィードフォワードゲインKcomp33を以下の様に設定すれば、(数5)より求める位置指令誤差eθをゼロにすることができる。
【0044】
【数6】


つまり、ノッチフィルタ帯域消去周波数fcより十分に低い周波数域では、位置指令誤差eθ≒0であり、以下の式が成り立つ。
【0045】
【数7】


図4で示した位相補償帯域消去フィルタ28において、帯域消去周波数が異なる場合の振幅および位相の周波数特性を図6に示す。図6は、例として、ロボットがある姿勢である負荷である場合に、ロボットの第1軸の帯域消去中心周波数が8Hzの場合の振幅34および位相36の周波数特性、そして、ロボットの第2軸の中心周波数が16Hzの場合の振幅35および位相37の周波数特性を示している。
【0046】
背景技術で説明した図12の振幅38,39および位相40,41の周波数特性と比較して、図6においては、振幅34,35の帯域消去周波数は、図12の振幅38,39から変化は無いが、図6において位相特性36と位相特性37の周波数が1Hz(10の0乗Hz)における位相差は、背景技術で説明した図12の位相特性40と位相特性41との間の位相差42よりも遙かに小さくなっていることがわかる。
【0047】
つまり、ロボットの先端軌跡を例えば直線動作させようと全軸を同期して動作させる場合でも、動作軌跡の誤差は最小限に抑制することができる。
【0048】
ここで、図4に示す位相補償帯域消去フィルタ28を構成するブロック図は、ハード的にも構成することができるが、実際にはソフトウェアで実行されることが多いので、その方法を図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0049】
図5のフローチャートにおいて、位置指令θcomを入力(ステップS1)した後、これを微分処理したものを図5に示すS2の変数aに記憶する(ステップS2)
【0050】
【数8】


次に中間変数aを、ノッチフィルタ処理し中間変数bを求める(ステップS3)
【0051】
【数9】


次に、中間変数bを積分して中間変数cを求める処理(ステップS4)と、フィードフォワード補償ゲインKcomp33で乗じて中間変数dを求める処理(ステップS5)を実行する。
【0052】
【数10】


最後に、S4で算出した中間変数cとS5で算出したdを加算し、第2の位置指令θcom2(29)として出力する。(ステップS6)
【0053】
【数11】


以上により、ソフトウェアにおいてもθcom2(29)を求めることが可能である。
【0054】
なお、本実施の形態においては、位置制御装置および位置制御方法の例としてはロボットに適用した例を示したが、これに限るものではなく、共振周波数の異なる複数の軸に相当する要素を同時にあるいは個別に駆動し、共振抑制のための帯域消去フィルタの位相差が問題となるロボット以外の機器にも適用できることは言うまでもない。
【0055】
なお、本実施形態では図3に示すように、位置ループ、速度ループの構成で電流指令を作成する方式としたが、位置ループ速度ループの区別無く電流指令を作成する方式にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の位置制御装置および制御方法によれば、帯域消去フィルタを用いて動作指令信号から共振周波数を消去して振動が発生する周波数での動作を避けることで振動を抑制する際、軸間の位相差に起因する動作軌跡の誤差を最小限に抑えることができるので、共振周波数の異なる複数の軸に相当する要素を同時にあるいは個別に駆動し、共振抑制のための帯域消去フィルタの位相差が問題となる機器にも適用でき、産業上有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態における垂直多関節ロボットの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における垂直多関節ロボットの位置制御に関する構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるモータ位置指令に位相補償帯域消去フィルタを挿入した制御ループを示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態における位相補償帯域消去フィルタの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態における位相補償帯域消去フィルタの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施の形態におけるノッチフィルタ帯域消去中心周波数が異なる場合の振幅および位相の周波数特性を示す図である。
【図7】共振の振動抑制が無い従来のモータ位置制御ループを示すブロック図である。
【図8】従来のモータ位置制御ループ内に共振抑制ノッチフィルタを設けた例を示すブロック図である。
【図9】従来のモータ位置制御ループ内に共振抑制ノッチフィルタを設けた例を示すブロック図である。
【図10】従来のノッチフィルタの振幅および位相の周波数特性を示す図である。
【図11】従来のモータ位置指令に共振抑制ノッチフィルタを挿入した例を示すブロック図である。
【図12】従来のノッチフィルタ帯域消去中心周波数が異なる場合の振幅および位相の周波数特性を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ロボットメカ
2 ロボット制御装置
3 操作・教示部
4 メイン制御部
5〜10 第1のサーボ制御部〜第6のサーボ制御部
11〜16 第1のモータ部〜第6のモータ部
17 位置指令θcom
18 モータ
19 エンコーダ
20 位置フィードバックθfb
21 位置制御ブロック
22 速度制御ブロック
23 サーボアンプ
24 微分要素s
25 速度指令ωcom
26 速度フィードバックωfb
27 モータ電流指令Icom
28 位相補償帯域消去フィルタ
29 第2の位置指令θcom2
30 微分要素s
31 ノッチフィルタ
32 積分要素1/s
33 フィードフォワード補償ゲインKcomp
34 位相補償帯域消去フィルタの振幅周波数特性(帯域消去中心周波数8Hz)
35 位相補償帯域消去フィルタの振幅周波数特性(帯域消去中心周波数16Hz)
36 位相補償帯域消去フィルタの位相周波数特性(帯域消去中心周波数8Hz)
37 位相補償帯域消去フィルタの位相周波数特性(帯域消去中心周波数16Hz)
38 ノッチフィルタの振幅周波数特性(帯域消去中心周波数8Hz)
39 ノッチフィルタの振幅周波数特性(帯域消去中心周波数16Hz)
40 ノッチフィルタの位相周波数特性(帯域消去中心周波数8Hz)
41 ノッチフィルタの位相周波数特性(帯域消去中心周波数16Hz)
42 ノッチフィルタの位相差
43 ノッチフィルタの振幅周波数特性
44 ノッチフィルタの位相周波数特性
45 位置指令速度成分dθcom
50 加算器
【出願人】 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】 【識別番号】100076174
【弁理士】
【氏名又は名称】宮井 暎夫


【公開番号】 特開2008−4007(P2008−4007A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−175317(P2006−175317)