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【発明の名称】 メトロノーム
【発明者】 【氏名】鈴木 佳昭

【要約】 【課題】メトロノームを小型化する。

【構成】振り子軸12には、振り子軸板13が取り付けられる。がんぎ車17は、駆動力が供給されて回転する。がんぎ車17は、2つの歯車17−1,17−2からなり、2つの歯車17−1,17−2のそれぞれの周縁部に形成された突起17−1b,17−2bが、交互に打突振り子18の係止部18−1,18−2を係止する。打突振り子18は、揺動して、その先端部と振り子軸板13の板面とが衝突して打突音を発生させ、先端部は振り子軸板13の凹溝の内壁面を付勢し、振り子軸12は、揺動する。内壁面で打突振り子18の付勢力が、交差する方向に転換されるため、振り子軸12とがんぎ車17の回転軸17aとを平行にすることができ、メトロノーム1は、小型化される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振り子支点を中心に揺動し、前記揺動を補助するための固定錘が下端に固定され、前記揺動の振動数を設定するための遊錘が上下に移動するように取り付けられた振り子と、
前記振り子を、前記振り子支点で揺動可能に支持する振り子軸と、
板面と板面との中間部に切り欠き溝が形成された凹形の板部材であり、前記振り子軸に取り付けられ、前記切り欠き溝の内壁面が、前記振り子軸の軸方向に加えられた付勢力により前記振り子軸を揺動させる形状に形成された振り子軸板と、
回転軸が前記振り子軸と平行に配置され、複数の突起が周縁部の周方向に一定間隔で形成され、さらに、形成された複数の突起が回転軸方向に2列になって交互に配置され、供給された駆動力によって前記回転軸を中心に回転するがんぎ車と、
前記がんぎ車に前記駆動力を供給する駆動力供給部と、
前記がんぎ車に形成された複数の突起の2つの列の間に介挿され、前記振り子軸の揺動方向とは交差する方向に揺動するための揺動支点を有し、後端部に、前記がんぎ車の2つの列の各突起に交互に係止される2つの係止部が形成され、リズムを刻む打突音を発生させるために前記2つの係止部が前記がんぎ車の2つの列の突起に交互に係止されて前記揺動支点を中心に揺動し、前記振り子軸板の前記切り欠き溝の内壁面に対し、前記振り子軸の軸方向に付勢力を加えて前記振り子軸を揺動させつつ前記切り欠き溝を通り抜けるように構成された打突振り子と、を備えた、
ことを特徴とするメトロノーム。
【請求項2】
前記振り子軸板は、前記振り子の最大傾斜位置で前記板面が最下点近傍に位置し、前記振り子の前記固定錘の最下点で前記切り欠き溝が最下点近傍に位置するように形成されたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載のメトロノーム。
【請求項3】
前記打突振り子の先端部と前記振り子軸板の板面とを衝突させて前記打突音を発生させるように構成された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のメトロノーム。
【請求項4】
前記振り子軸板の前記切り欠き溝の内壁面は、断面が楔形となるように形成されたものであり、前記内壁面に対する付勢力が前記振り子軸の軸方向に加えられて、前記振り子軸板が前記振り子軸を揺動させるように構成された、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のメトロノーム。
【請求項5】
前記振り子軸板の前記切り欠き溝の内壁面は、断面が円弧となるように形成されたものであり、前記内壁面に対する付勢力が前記振り子軸の軸方向に加えられて、前記振り子軸板が前記振り子軸を揺動させるように構成された、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のメトロノーム。
【請求項6】
前記駆動力供給部は、
駆動力源と、
前記駆動力源の駆動力によって回転し、回転力を前記がんぎ車の回転軸に直接伝達することにより前記がんぎ車に駆動力を供給する1番車と、を備えたものである、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のメトロノーム。
【請求項7】
前記がんぎ車は、それぞれ、複数の突起が周縁部に形成された2つの歯車が間隔をもって配置されることによって構成されたものである、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のメトロノーム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、メトロノームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、メトロノームは、駆動源(ぜんまい)から複数の歯車を介してがんぎ車に動力を伝達し、これを、振り子軸に設けられた部品とこのがんぎ車とが噛み合うことで、打突音をならしたり振り子を揺動させたりするための推力としている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来のメトロノーム50は、図13(a)に示すように、振り子51と、振り子軸52と、香箱53と、1番車54と、2番車55と、がんぎ車56と、を備える。
【0004】
振り子51の下端には、振り子51の揺動を補助するための固定錘51aが固定され、振り子51が揺動する振動数を設定するための遊び錘51bが上下に移動可能となるように取り付けられている。
【0005】
このメトロノーム50の機構部は、図13(b)に示すようなメトロノーム本体61に組み込まれる。振り子51は、目盛板62上に配置され、使用しないときは、前カバー63によって覆われる。
【0006】
メトロノーム本体61の側面には、ぜんまい巻き64が備えられ、このぜんまい巻き64を巻くことにより、香箱53に内蔵されたぜんまいが巻き上げられる。
【0007】
巻き上げられたぜんまいが元の状態に復帰しようとする際に発生する駆動力により1番車54が回転して、駆動力を2番車55に伝達し、2番車55が、がんぎ車56に駆動力を伝達する。
【0008】
がんぎ車56の周縁部には、複数の突起56bが2列になって配置されており、突起56bの端部は、断面が楔形の形状を有している。がんぎ車56は、回転軸56aを介して図示しない支持部に支持されている。
【0009】
振り子軸52には、図14(a)に示すような振り子軸ピン57が取り付けられており、がんぎ車56の突起56bは、この振り子軸ピン57と係合し、振り子軸ピン57を付勢する。尚、図14(a)〜(c)における下の各図は、各状態における振り子51を上部からみた図である。
【0010】
図14(b)に示すように、振り子軸ピン57が揺動して突起56bの端部に当接すると、突起56bは、端部で振り子軸ピン57を、がんぎ車56の回転軸56a方向に付勢する。
【0011】
振り子軸ピン57は、付勢されて揺動し、この付勢力が振り子51の推力となる。そして、振り子軸ピン57は、図14(c)及び図14(c)のP部を拡大した図14(d)に示すように、他方の列の突起56bに当接する。
【0012】
このように、従来のメトロノーム50では、ぜんまいから1番車54、2番車55を介してがんぎ車56に駆動力が伝達される。また、従来のメトロノーム50は、振り子軸52に取り付けられた振り子軸ピン57とがんぎ車56の突起56bとが係合することにより、打突音を発生させ、振り子51の推力を得るようにしている。
【0013】
このため、従来のメトロノーム50では、駆動力伝達用の1番車54、2番車55の回転軸と、がんぎ車56の回転軸56aとは平行となり、がんぎ車56の回転軸56aと振り子軸52とは、ねじれの位置にある。
【特許文献1】特公昭62−60671号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来のメトロノーム50では、振り子軸52とがんぎ車56の回転軸56aとがねじれの位置にあるため、メトロノーム50において振り子軸52の軸と平行な方向の厚さは、動力伝達用の1番車54、2番車55及びがんぎ車56の直径方向の大きさに依存する。このため、メトロノーム50の小型化、特に、薄型化が困難となる。
【0015】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、小型化が可能なメトロノームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るメトロノームは、
振り子支点を中心に揺動し、前記揺動を補助するための固定錘が下端に固定され、前記揺動の振動数を設定するための遊錘が上下に移動するように取り付けられた振り子と、
前記振り子を、前記振り子支点で揺動可能に支持する振り子軸と、
板面と板面との中間部に切り欠き溝が形成された凹形の板部材であり、前記振り子軸に取り付けられ、前記切り欠き溝の内壁面が、前記振り子軸の軸方向に加えられた付勢力により前記振り子軸を揺動させる形状に形成された振り子軸板と、
回転軸が前記振り子軸と平行に配置され、複数の突起が周縁部の周方向に一定間隔で形成され、さらに、形成された複数の突起が回転軸方向に2列になって交互に配置され、供給された駆動力によって前記回転軸を中心に回転するがんぎ車と、
前記がんぎ車に前記駆動力を供給する駆動力供給部と、
前記がんぎ車に形成された複数の突起の2つの列の間に介挿され、前記振り子軸の揺動方向とは交差する方向に揺動するための揺動支点を有し、後端部に、前記がんぎ車の2つの列の各突起に交互に係止される2つの係止部が形成され、リズムを刻む打突音を発生させるために前記2つの係止部が前記がんぎ車の2つの列の突起に交互に係止されて前記揺動支点を中心に揺動し、前記振り子軸板の前記切り欠き溝の内壁面に対し、前記振り子軸の軸方向に付勢力を加えて前記振り子軸を揺動させつつ前記切り欠き溝を通り抜けるように構成された打突振り子と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
前記振り子軸板は、前記振り子の最大傾斜位置で前記板面が最下点近傍に位置し、前記振り子の前記固定錘の最下点で前記切り欠き溝が最下点近傍に位置するように形成されたものであってもよい。
【0018】
前記打突振り子の先端部と前記振り子軸板の板面とを衝突させて前記打突音を発生させるように構成されたものであってもよい。
【0019】
前記振り子軸板の前記切り欠き溝の内壁面は、断面が楔形となるように形成されたものであり、前記内壁面に対する付勢力が前記振り子軸の軸方向に加えられて、前記振り子軸板が前記振り子軸を揺動させるように構成されたものであってもよい。
【0020】
前記振り子軸板の前記切り欠き溝の内壁面は、断面が円弧となるように形成されたものであり、前記内壁面に対する付勢力が前記振り子軸の軸方向に加えられて、前記振り子軸板が前記振り子軸を揺動させるように構成されたものであってもよい。
【0021】
前記駆動力供給部は、
駆動力源と、
前記駆動力源の駆動力によって回転し、回転力を前記がんぎ車の回転軸に直接伝達することにより前記がんぎ車に駆動力を供給する1番車と、を備えたものであってもよい。
【0022】
前記がんぎ車は、それぞれ、複数の突起が周縁部に形成された2つの歯車が間隔をもって配置されることによって構成されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、メトロノームを小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係るメトロノームを図面を参照して説明する。
本実施形態に係るメトロノーム1の構成を図1に示す。また、図2(a)、(b)に、それぞれ、メトロノーム1の前面、背面の外観を示す。
【0025】
本実施形態に係るメトロノーム1は、図1に示すように、振り子11と、振り子軸12と、振り子軸板13と、香箱14と、1番車15と、2番車16と、がんぎ車(3番車)17と、打突振り子18と、を備える。
【0026】
振り子11は、振動数を設定するためのものである。図2(a)に示すようにメトロノーム本体21の前面には、目盛板22が設けられ、振り子11は、目盛板22上に配置される。そして、目盛板22と振り子11とは、前カバー23によって覆われる。
【0027】
図1(a)、(b)に示すように、振り子11の下端には、揺動を補助するための固定錘11aが固定されている。また、振り子11には、振動数設定用の遊錘11bが、矢印で示す上下方向に移動するように取り付けられる。
【0028】
振り子11は、図3に示すように、振り子支点としての軸心11cを中心に揺動する。振り子軸12の軸心11cを交点とするXY軸を考えたとき、図3(a)に示すように、固定錘11aの中心とY軸とが合致しているとき固定錘11aの中心位置は最下点Lとなる。振り子11は、図3(b)、(c)に示す位置で振れ戻り、この時の固定錘11aの中心位置は、最上点Hとなり、振り子11の傾斜は最大となる。
【0029】
振り子軸12は、振り子11を、軸心11cで揺動可能に支持するものである。
【0030】
振り子軸板13は、振り子軸12に取り付けられて振り子軸12を揺動させ、また、後述する打突振り子18により打突音を発生させるためのものである。
【0031】
図4(a)、(b)は、それぞれ、振り子軸板13の平面図、およびそのA−A線での断面図であり、振り子軸板13は、図4(b)に示すように、板部材からなる。振り子軸板13の板面13aと板面13bとの中間部には、図4(a)、(b)に示すように、切り欠き溝としての凹溝13cが形成され、振り子軸板13は、凹形の形状を有している。
【0032】
また、凹溝13cの内壁面13dは、振り子軸12の軸方向に加えられた付勢力の方向を90°転換し、振り子軸板13を介して振り子軸12を揺動させるため、その断面が楔形に形成されている。
【0033】
また、振り子軸板13には、取付孔13eが形成され、この取付孔13eに振り子軸12が挿入され、振り子軸板13が振り子軸12に取り付けられる。そして、振り子軸板13は、振り子11の最大傾斜位置で板面13a又は13bが最下点L近傍に位置し、振り子11の固定錘11aの最下点Lで凹溝13cが最下点L近傍に位置するように形成される。これにより、振り子11の長手方向の軸(Y軸)と凹溝13cの位置とが対応する。
【0034】
図1に戻り、香箱14は、ぜんまい(図示せず)を収納する円形の箱であり、1番車15の側面に取り付けられている。図2(b)に示すように、メトロノーム本体21の背面には、ぜんまい巻き24が取り付けられており、ぜんまいは、このぜんまい巻き24をねじることにより巻き上げられる。
【0035】
1番車15は、巻き上げられたぜんまいが復帰するときの駆動力によって回転する歯車であり、その回転軸は振り子軸12と平行に配置される。
【0036】
2番車16は、その周縁部と1番車15の周縁部とが当接することにより、1番車15の回転によって回転し、ぜんまいの駆動力をがんぎ車17に供給するための歯車であり、その回転軸は振り子軸12と平行に配置される。
【0037】
がんぎ車17は、2番車16から供給された駆動力によって回転軸17aを中心に回転することにより、打突振り子18を揺動させるためのものであり、その回転軸17aは振り子軸12と平行に配置される。
【0038】
がんぎ車17は、2つの歯車17−1,17−2からなる。2つの歯車17−1,17−2の周縁部には、それぞれ、図5に示すように、複数の突起17−1b,17−2bが等間隔で形成されている。
【0039】
また、歯車17−1,17−2は、間隔をもって配置され、歯車17−1,17−2のそれぞれの突起17−1b,17−2bは2列になって交互に配置される。
【0040】
打突振り子18は、振り子軸板13の板面13a,13bに衝突することにより、打突音を発生させるとともに、振り子軸12を、振り子軸12の周方向に揺動させるためのものである。
【0041】
打突振り子18は、歯車17−1,17−2にそれぞれ形成された複数の突起17−1b,17−2bの2つの列の間に介挿される。打突振り子18は、図6に示すように、揺動支点18aを有している。
【0042】
また、打突振り子18の後端部には、係止部18−1,18−2が形成されている。この係止部18−1,18−2は、歯車17−1,17−2の2つの列の各突起17−1b,17−2bに、それぞれ、係止されるものである。
【0043】
図7(a)に示すように、がんぎ車17が矢印方向に回転して、係止部18−1は、歯車17−1の突起17−1bに係止される。がんぎ車17が回転すると、係止部18−1は、突起17−1bに係止されたまま、突起17−1bによって付勢され、打突振り子18は、図7(b)に示すように、揺動支点18aを中心にY1方向に揺動する。係止部18−1は、突起17−1bから外れ、係止部18−2は、歯車17−2の突起17−2bに係止される。
【0044】
がんぎ車17がさらに回転すると、係止部18−2は、突起17−2bに係合されたまま、突起17−2bによって付勢され、図7(c)に示すように、打突振り子18は、元の姿勢となる。
【0045】
がんぎ車17がさらに回転すると、図7(d)に示すように、係止部18−2は、突起17−2bによって付勢され、打突振り子18は、揺動支点18aを中心にY2方向に揺動する。
【0046】
係止部18−2は、突起17−2bから外れ、係止部18−1は、歯車17−1の突起17−1bに再び係止される。打突振り子18は、このような動作を繰り返し、振り子軸12の揺動方向と交差する方向Y1、Y2方向に揺動する。
【0047】
尚、突起17−1b、17−2bは、図3(a)に示すY軸と固定錘11aの中心とが合致しているとき、あるいは、振り子軸板13の凹溝13cが振り子軸12の真下に位置するときに、図7(a)、(c)の状態となるように、それぞれ、歯車17−1、17−2の周縁部に形成される。
【0048】
そして、図6に示す打突振り子18の先端部18bと振り子軸板13の板面13a,13bとは、振り子11の固定錘11aが最上点Hに位置したときに衝突して打突音を発生させる。
【0049】
また、先端部18bは、打突振り子18が揺動することにより、振り子軸板13の凹溝13cの内壁面13dに対し、振り子軸12の軸方向に付勢力を加えて振り子軸12を振り子軸12の周方向に揺動させる。この付勢力が振り子11の推力となる。
【0050】
打突振り子18の先端部18bが、振り子軸板13の凹溝13cの内壁面13dを付勢して振り子軸板13が揺動し、凹溝13cが振り子軸12の真下に位置すると、先端部18bは、この凹溝13cを通過して反対面側に移動する。打突振り子18は、このような動作を繰り返し行う。
【0051】
次に本実施形態に係るメトロノーム1の動作を説明する。
振り子11の重心位置は、振り子11の遊錘11bの位置に基づいて設定され、振り子11の振動数は、振り子11の軸心11cから、振り子11の重心位置までの長さに基づいて設定される。
【0052】
揺動を開始する前の振り子11は、通常、図2に示す振り子押さえ100によって揺動不能にされる。振り子11が振り子押さえ100によって揺動不能にさせられている位置は、例えば図3(b)に示すように振り子11が傾斜状態にあって、図10(9)に示すように打突振り子18の先端部18bが振り子軸板13の凹溝13cを通過できない位置であればよい。
【0053】
ぜんまい巻き24によりぜんまいが巻き上げられると、巻き上げられたぜんまいが元の状態に復帰しようとする際に駆動力が発生し、この駆動力によって、1番車15が回転する。2番車16は、1番車15の回転によって回転し、ぜんまいの駆動力をがんぎ車17に供給する。がんぎ車17は、ぜんまいの駆動力が供給されて回転軸17aを中心に回転する。
【0054】
ぜんまいが巻き上げられると、がんぎ車17は上述したように回転を始める。しかし上述したように振り子軸板13が図10(9)の状態にあるために、打突振り子18の先端部18bは振り子軸板13の板面13aに当接した状態で停止させられる。そのためがんぎ車17もそれ以上回転をすることができず停止させられてしまう。
【0055】
このようにして、振り子押さえ100によって振り子11が揺動不能な状態に停止させられていれば、ぜんまいが巻かれていてもがんぎ車17は回転することができないので、メトロノーム1は動作をしない。この状態でメトロノーム1の動作準備が完了する。
【0056】
次に、振り子押さえ100から振り子11を外し、振り子11を傾けてから振り子11を自由にすると振り子11は軸心11cを中心に揺動を開始する。
【0057】
図8〜図10は、各タイミングにおける振り子11、振り子軸板13、打突振り子18の位置関係を示す。尚、図8〜図10において、(1)〜(10)の(A)は、振り子11の裏側からメトロノーム本体21の前面側をみたときの図であり、(B)は、図中、上側がメトロノーム本体21の背面側、下側がメトロノーム本体21の前面側であることを示す。
【0058】
振り子11は、図8(1)に示す状態から揺動を開始して、固定錘11aが最下点Lを通過するものとする。
【0059】
図8(1a)は、図8(1)に対応する斜視図であり、がんぎ車17は、図8(1a)に示すように、矢印方向に回転し、歯車17−1の突起17−1bは、打突振り子18の係止部18−1に当接する。歯車17−1は、突起17−1bで係止部18−1を係止し、がんぎ車17が回転して、突起17−1bは係止部18−1を付勢する。
【0060】
打突振り子18は、係止部18−1が付勢されて揺動し、打突振り子18の先端部18bは、図8(2)に示すように、振り子軸板13から離れていく。
【0061】
振り子11の固定錘11aが最上点Hに到達したときに、打突振り子18の係止部18−1は、歯車17−1の突起17−1bから外れ、歯車17−2の突起17−2bが打突振り子18の係止部18−2に当接する。
【0062】
歯車17−2は、突起17−2bで係止部18−2を係止し、がんぎ車17が回転して、突起17−2bは係止部18−2を付勢する。そして、がんぎ車17は打突振り子18を反対方向に揺動させる。
【0063】
突起17−2bが係止部18−2を付勢したまま、がんぎ車17が図8(3a)に示す位置まで回転すると、図8(3)に示すように、打突振り子18の先端部18bと振り子軸板13bの板面13a又は13bとが衝突し、打突振り子18の先端部18bと振り子軸板13とは、打突音を発する。
【0064】
さらに、突起17−2bが係止部18−2を付勢したまま振り子軸板13が図9(4)に示す位置に来ると、がんぎ車17が回転して、図9(4)に示すように、打突振り子18は、先端部18bで振り子軸板13の凹溝13cの内壁面13dを付勢する。
【0065】
内壁面13dの断面が楔形の形状となっているため、内壁面13dに付勢力が加わると、加えられた付勢力の方向は90°転換し、振り子軸板13は矢印方向に移動して、打突振り子18は振り子軸12を揺動させる。このようにして、振り子11の推力が得られる。
【0066】
振り子軸12が揺動して、振り子軸板13の凹溝13cが振り子軸12の真下に移動すると、打突振り子18の先端部18bは、図9(5)に示すように、この凹溝13cを通り抜ける。
【0067】
図9(6a)に示すように、突起17−2bが係止部18−2を付勢しつつ、がんぎ車17が回転すると、図9(6a)に対応する図9(6)に示すように、打突振り子18の先端部18bは、振り子軸板13から離れていく。
【0068】
打突振り子18の先端部18bは、図10(7)に示すように、歯車17−1の突起17−1bが係止部18−1に当接するまで離れていく。
【0069】
そして、がんぎ車17が回転すると、図10(8)に示すように、打突振り子18の係止部18−2は、歯車17−2の突起17−2bから外れ、歯車17−1の突起17−1bが打突振り子18の係止部18−1に当接する。
【0070】
突起17−1bが係止部18−1を係止しつつ付勢して、がんぎ車17が回転すると、図10(9)に示すように、打突振り子18の先端部18bと振り子軸板13bとが衝突し、打突振り子18の先端部18bと振り子軸板13とは、打突音を発する。
【0071】
図10(10a)に示すように、がんぎ車17がさらに回転すると、打突振り子18は、図10(10)に示すように、先端部18bで振り子軸板13の凹溝13cの内壁面13dを付勢し、加えられた付勢力の方向が内壁面13dで90°転換する。振り子軸板13は、図9(4)とは逆方向の矢印方向に移動して、振り子軸12も逆方向に揺動する。
【0072】
メトロノーム1は、このような動作を繰り返し、一定周期で打突音を発することにより、規則正しくリズムを刻む。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、振り子軸12に振り子軸板13が取り付けられ、打突振り子18が振り子軸板13の板面13a,13bに衝突して、打突音を発生させる。また、打突振り子18は、振り子軸板13の凹溝13cの内壁面13dを付勢することにより、振り子軸板13を揺動させるようにした。
【0074】
即ち、本実施形態のメトロノーム1は、従来のメトロノーム50のがんぎ車56の突起56aと振り子軸ピン57との代わりに、振り子軸板13と打突振り子18とで、打突音を発生させ、がんぎ車17の駆動力の方向を90°転換させて振り子11の推力を得るようにした。
【0075】
従って、がんぎ車17の回転軸17aと振り子軸12とを平行にすることができ、メトロノーム1の厚さは、1番車15,2番車16、がんぎ車17の直径ではなく、これらの厚さに依存する。このため、メトロノーム1の厚みを小さくすることができ、小型化、特に、薄型化することができ、例えば、メトロノーム1を約10mm薄型化することが可能となる。
【0076】
また、メトロノーム1がこのように構成されても、振り子11は、規則正しくリズムを刻むことができ、メトロノーム1の機能は維持される。
【0077】
尚、本発明を実施するにあたっては、種々の形態が考えられ、上記実施形態に限られるものではない。
例えば、振り子軸板13において、凹溝13cの内壁面13dの形状は、図4に示すようなものに限られるものではなく、図11(a)、(b)に示すようなものであってもよい。
【0078】
即ち、内壁面13dは、断面が円弧状に形成されている。このような形状であっても、打突振り子18の先端部18bは内壁面13dを付勢し、付勢力が内壁面13dで90°転換されて、先端部18bは、振り子軸板13を介して振り子軸12を揺動させることができる。
【0079】
また、図12に示すように、2番車16を省いて、1番車15が直接がんぎ車17に駆動力を伝達することもできる。このようにすればメトロノーム1をさらに小型化することができる。
【0080】
また、歯車による機械的損失が軽減するため、振り子11の振動数の安定化や駆動音の静音化など駆動の効率化を図ることができる。また、2番車16の空いたスペース分だけぜんまいの巻き数を多くすれば、メトロノーム1をさらに長時間駆動させることもできる。
【0081】
もちろん、ぜんまいの巻き数と、2番車16を省くことによって得られる空きスペースと、を勘案すれば、2番車16を省かない場合よりもメトロノーム1を小型化でき、かつ長時間駆動することができるメトロノーム1を実現することも可能である。
【0082】
また、がんぎ車17は、2つのがんぎ車17−1,17−2によって構成されたものでなくてもよく突起17−1b,17−2bが2列に並ぶ一体のものであってもよい。
【0083】
また、振り子11を振り子押さえ100にセットする振り子11は図10の(9)の状態になり振り子11は揺動不能な状態になるが、この振り子を押さえる位置は図8の(3)に示す位置であってもよい。
【0084】
もしくは振り子を押さえる位置は図9の(5)に示す位置であってもよい。ただし、この場合はその位置において振り子軸板13と打突振り子18の先端部18bとが当接して揺動不能になるような位置関係にしておく。
【0085】
また、打突音を発生させる板面13a、13bと、振り子11を付勢する内壁面13dとは別個に設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の実施形態に係るメトロノームの構成を示す図であり、(a)は、メトロノームの斜視図、(b)は、側面図である。
【図2】メトロノームの外観を示す図であり、(a)は、メトロノーム本体の前面を示す斜視図であり、(b)は、背面を示す斜視図である。
【図3】図1の振り子を示す図である。
【図4】図1の振り子軸に取り付けられた振り子軸板を示す図であり、(a)は、振り子軸板の平面図であり、(b)は、(a)に示すA−A線での断面図である。
【図5】図1のがんぎ車を示す図である。
【図6】図1の打突振り子を示す図であり、(a)は、その上面図、(b)は、その正面図である。
【図7】図1のがんぎ車の突起と打突振り子の係止部との位置関係を示す図である。
【図8】図1のメトロノームの動作(その1)を示す図である。
【図9】図1のメトロノームの動作(その2)を示す図である。
【図10】図1のメトロノームの動作(その3)を示す図である。
【図11】振り子軸板の応用例を示す図であり、(a)は、振り子軸板の平面図であり、(b)は、(a)に示すA−A線での断面図である。
【図12】メトロノームの応用例として、2番車を省略したときの側面図である。
【図13】従来のメトロノームの構成を示す図であり、(a)は、従来のメトロノームの内部を示す斜視図であり、(b)は、その外観を示す図である。
【図14】図13に示す従来のメトロノームの動作を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 メトロノーム
11 振り子
12 振り子軸
13 振り子軸板
13a,13b 板面
13c 凹溝
13d 内壁面
17 がんぎ車
17−1,17−2 歯車
17−1b,17−2b 突起
18 打突振り子
18−1,18−2 係止部
18b 先端部
【出願人】 【識別番号】396004981
【氏名又は名称】セイコープレシジョン株式会社
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満

【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典


【公開番号】 特開2008−2936(P2008−2936A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172416(P2006−172416)