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【発明の名称】 ステップモータ
【発明者】 【氏名】前田 俊成

【要約】 【課題】保持トルクの値を設定し易く、時計の小型化の設計をし易いステップモータの構成を提供することを目的とする。また、輪列用の軸孔や固定ピン用の孔を設計し易い、保持トルク設定手段を備えたステップモータを提供することを目的とする。

【解決手段】ロータ軸17を回転可能に支持する上側軸受5と下側軸受6の少なくともいずれか一方を、軟磁性材により形成するとともに、ロータ磁石16側に位置する表面に、ステータ連結部9を設けた方向とは異なる設定角度で形成された、切り欠き溝よりなる保持トルク設定手段を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性材で形成された磁芯に導線を巻き回したコイルと、
径方向に2極に着磁されたロータ磁石とロータ軸とを有するロータと、
軟磁性材で形成され、前記磁芯の両端に結合し、かつほぼ中央に配したロータ孔に前記ロータを配設することで、前記コイルで励磁された磁束の流れを前記ロータ磁石に導くステータと、
前記ロータを回転可能に支持する、ロータ軸端の上側に配した上側軸受と、ロータ軸端の下側に配した下側軸受と、を備え、
前記ステータは、前記ロータ孔の近傍で、ロータ磁石の径方向にニ片に分割され、その分割箇所に非磁性体を挟持することで、励磁した前記コイルで発生する磁界を磁気的に分離するステータ連結部を有し、
前記上側軸受と前記下側軸受の少なくともいずれか一方を軟磁性材により形成するとともに、ロータ磁石側に位置する軸受の表面に、前記ステータ連結部を設けた方向とは異なる設定角度で形成された切り欠き溝よりなる保持トルク設定手段を設けた
ことを特徴とするステップモータ。
【請求項2】
前記上側軸受と前記下側軸受の両方に、前記保持トルク設定手段が形成されてなる
ことを特徴とする請求項1に記載のステップモータ。
【請求項3】
前記保持トルク設定手段が形成される前記設定角度を、前記上側軸受と前記下側軸受で同じ方向とした
ことを特徴とする請求項2に記載のステップモータ。
【請求項4】
前記保持トルク設定手段が形成される前記設定角度を、前記上側軸受と前記下側軸受で異なる方向とした
ことを特徴とする請求項2に記載のステップモータ。
【請求項5】
前記保持トルク設定手段が形成された前記上側軸受または前記下側軸受は、非磁性材で形成され前記ロータ軸を回転可能に支持する中心部と、軟磁性材で形成され当該中心部の外周を囲むように配置する外周部とを有し、
当該外周部に前記保持トルク設定手段を設けた
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のステップモータ。
【請求項6】
前記ステータ連結部は、励磁した前記コイルから発生する磁界を磁気的に分離することで、磁束飽和部として作用するステータ狭窄部により構成されてなる
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のステップモータ。
【請求項7】
ロータ磁石の外周部縁からロータ孔内周部縁までの距離が、前記ロータ磁石の外周部縁から前記保持トルク設定手段が形成された軸受までの最短距離よりも小さくなる様に、かつ前記ロータ孔内周部縁から前記保持トルク設定手段が形成された軸受までの最短距離よりも小さくなるように、前記保持トルク設定手段が形成された軸受と、前記ロータ磁石と、前記ロータ孔とが配置されてなる
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のステップモータ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログ式電子時計に用いられるステップモータに関する。
【背景技術】
【0002】
まず、従来のアナログ式電子時計の構成について概略説明する。
この従来のアナログ式電子時計は、大別して水晶振動子を含み基準信号を発生する回路部と、その基準信号に従い間欠回転駆動し、歯車を介して回転を伝達するステップモータとにより構成される。なお、この従来のアナログ式電子時計では、回路部とステップモータとで電力が消費されている。
【0003】
しかし、このアナログ式電子時計に含まれる回路部は、半導体集積回路にて構成されており、そこで消費する電力の大部分はステップモータで消費されている。そのため、ステップモータでの消費電力の低減は、時計全体の低消費電力化に与える効果は大きい。
【0004】
ここで、従来のアナログ式電子時計で一般的に用いられているステップモータの構成について説明する。図16と図17は、従来のステップモータの概略構造を説明するための上面図と断面図である。なお、図17(a)は、図16におけるL1−L1断面及びL2−L2断面を示しており、図17(b)は、図16におけるK−K断面を示している。
【0005】
図16に示す様に、ステップモータ100は、高透磁率材で形成された磁芯12に導線13を巻き回したコイル2(図17(b)参照)と、磁芯12の両端でネジ14により結合し磁気的に接続したステータ3(図17(a)参照)と、ステータ3のほぼ中央に形成したロータ孔15の中に配設したロータ4と、コイル2とステータ3とロータ4とを位置決めし固定する、図示しない地板とにより構成される。
【0006】
また、図17(b)に示す様に、前述したロータ4は、地板に配設した下側軸受(図示せず)によりロータ孔15の周方向に回転可能に支持したロータ軸17と、径方向に2極に着磁されたロータ磁石16とにより構成される。
【0007】
また、この従来のステップモータ100には、図16に示す様に、ロータ孔15内周部には周方向に更に非磁性体で溶接した構造であるステータ連結部9と、保持トルク設定手段1000とが形成されている。
【0008】
次に、このステップモータ100の1ステップの動作について説明する。図18と図19と図20は、従来のステップモータ100の1ステップ毎の動作を説明するための上面図である。なお、図18は、ステップモータ100の非駆動時の初期状態を示しており、図19は、このステップモータ100の駆動時の回転状態を示しており、図20は、ステップモータ100の1ステップ動作終了後で180度ロータ磁石16が回転した後の状態を示している。
【0009】
図18の初期状態では、ロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生した磁束がステータ3とコイル2とを通り、再びロータ磁石16の径方向側面部にあるS極に戻る閉磁路18が形成されている。この様に、閉磁路18が形成されることで、このステップモータ100は磁気エネルギーを保有する構成となる。この磁気エネルギーを以下の説明では「保持ポテンシャル」と呼ぶこととする。
【0010】
この保持ポテンシャルが最小になる安定状態において、ロータ磁石16は、ステータ3
と磁気的に釣り合った状態となり、ロータ磁石16は停止する。ここで、本図面におけるステータ連結部9の配設位置からロータ磁石16の停止位置の成す角度を、以下の説明では「初期位相角θ」と呼ぶこととする。
【0011】
この初期位相角θは、ロータ孔15内周部の周方向に形成されたステータ連結部9と、保持トルク設定手段1000のそれぞれの寸法、及びロータ磁石16の寸法と材料特性、特に磁力の大きさにより設定される。この様に、初期位相角θを設定することで、ロータ磁石16の回転方向が規定されて、図18では反時計方向へ回転するように規定される。
【0012】
そして、このステップモータ100は、前述したロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生する磁束の量は磁力の大きさに比例する形態となる。つまり、ロータ磁石16の磁力の大きさが大きい程、保有する保持ポテンシャルの大きさは大きくなり、ステータ3との釣り合い位置に保持しておこうとして働く力も大きくなる。このステータ3との釣り合い位置に保持しておこうとして働く力を、以下の説明では「保持トルク」と呼ぶこととする。
【0013】
この保持トルクの大きさも初期位相角θと同様に、ロータ孔15内周部の周方向に形成されたステータ連結部9と、保持トルク設定手段1000のそれぞれの寸法、及びロータ磁石16の寸法と材料特性、特に磁力の大きさにより設定される。
【0014】
次に、図19に示す様に、駆動電圧をコイル2に印加して図に示す方向に磁束の流れを発生させる。この様にして、コイル2に流した電流の方向と大きさに応じた磁界を磁気的に接続したステータ3、及びロータ孔15に発生させることが出来る。そして、ロータ磁石16が発生する磁束の流れとは逆方向になるような方向に閉磁路21を発生させることで、ロータ磁石16には図23の矢印方向の回転力が発生する。
【0015】
このロータ磁石16の回転力の大きさは、コイル2に流した電流の大きさと、ロータ孔15の寸法と、ロータ磁石16の寸法と磁力の大きさにより設定される。この回転力を以下の説明では「駆動トルク」と呼ぶこととする。
【0016】
この駆動トルクは、前述した保持トルクに抗して働き、駆動トルクが保持トルクより大きければロータ磁石16は回転し、保持トルクの方が大きければロータ磁石16は回転せずに図18の初期状態に戻ってしまうこととなる。そして、ロータ磁石16が図18から図19を経て180度回転して図20に示す状態となる。ここでは、ロータ磁石16のN極から発生した磁束が図18とは逆方向でステータ3とコイル2とを通り、再びロータ磁石16のS極に戻る閉磁路18が形成されている。また、ロータ磁石16は、ステータ3と磁気的に釣り合った状態となり、ロータ磁石16は初期位相角θで停止している。
【0017】
以上述べた内容より、従来のアナログ式電子時計で用いられるステップモータ100において消費電力の低減を図るためには、駆動トルクを大きくし、かつその駆動トルクに抗するように作用する保持トルクの大きさを大幅に小さくなるよう設定すれば良いことが判る。
【0018】
そしてそのためには、ロータ孔15内周部の周方向に形成されたステータ連結部9と、保持トルク設定手段1000のそれぞれの寸法、及びロータ磁石16の寸法と材料特性、特に磁力の大きさを設定すれば良いことが判る。
【0019】
そこで、保持トルクの大きさを小さく設定するための手段として、ステータ連結部9あるいは、保持トルク設定手段の寸法を微小に設定することは加工上困難であるという課題に対する解決策が提案された(例えば、特許文献1参照)。
【0020】
この特許文献1に記載の解決策を図16を参酌して説明する。この従来のステップモータ100では、保持トルクが、ステータ連結部9及び保持トルク設定手段1000のそれぞれにより設定される保持トルクのベクトル合成、つまり重ね合せの原理により決定されるということを利用し、ステータ連結部9、及び保持トルク設定手段1000を加工可能なある程度大きな寸法としても、任意の小さな大きさの保持トルクを設定することが可能というものである。
【0021】
その原理について下記に示す。
本特許文献1に記載の構成では、ステータ連結部9あるいは、保持トルク設定手段1000のそれぞれにより発生する保持トルクは、供に以下の理論式(1)に基づくものであり、ステータ連結部9あるいは、保持トルク設定手段1000の寸法は、磁気抵抗Rの角度θ微分項に影響を与えている。
T=(ΔW/Δθ)=(1/2)*(Φ^2)*(dR/dθ)・・・(1)
Φ:一定
ここで、上記(1)式におけるWは、ロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生した磁束がステータ2と磁芯12とを通り、再びロータ磁石16の径方向側面部にあるS極に戻る磁路が形成されることで保有する保持ポテンシャルを示しており、Φは、ロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生し、ステータ3と磁芯12とを通り、再びロータ磁石16の径方向側面部にあるS極に戻る磁束量を示している。また、Rは、ロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生した磁束がステータ3と磁芯12とを通り、再びロータ磁石16の径方向側面部にあるS極に戻る磁路のステータ3と磁芯12での磁気抵抗を示している。そして、θは、ロータ回転角度を示している。
【0022】
なお、この磁気抵抗Rは微小であるため、殆どがロータ磁石16とロータ孔15との隙間の影響による。ステータ連結部9や保持トルク設定手段1000がある部分では、ロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生した磁束が流れる閉磁路の磁気抵抗が大きくなる。
【0023】
この様に、特許文献1に記載のステップモータ100は、上記(1)式における(dR/dθ)項をなるべく小さくする、つまりステータ連結部9や保持トルク設定手段1000のそれぞれの寸法を出来る限り小さく加工することで、目的とする小さな振幅の、目的とする位相の保持トルクを得ることができる。
【0024】
また、特許文献1に記載のステップモータ100は、ステータ連結部9及び、保持トルク設定手段1000のそれぞれにより設定される保持トルクのベクトル合成、つまり以下の(2)式にあるような重ね合せの原理を利用することで、目的とする保持トルクを得ている。その特許文献1に記載の保持トルクと他の部材との関係を下記に示す。
Ta(θ)=Ts(θ)+Tn(θ)・・・(2)
Ta(θ):最終的に得られる保持トルク
Ts(θ):ステータ連結部により発生する保持トルク
Tn(θ):保持トルク設定手段により発生する保持トルク
【0025】
【特許文献1】特許第3597467号公報(第29貢、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、従来のステップモータ100の構成には2つの問題点があった。以下に2つの問題点を順番に説明する。
【0027】
従来のステップモータ100における第1の問題点は、コイルの磁芯12を通る磁束を更に増やそうとした場合、ステータ連結部9及び保持トルク設定手段1000の両部位からの加工誤差の影響が保持トルクの設定値に大きく現れてしまい、保持トルクの大きさや位相角を設計通りに形成することは、実際には困難であったという点にある。以下に第1の問題点について詳細に説明する。
【0028】
ステップモータ100の低消費電力化を図るために、より少ない電流をコイル2に流してロータ磁石16を回転させるためには、ロータ磁石16には回転駆動させるのに十分な駆動トルクを作用させる必要がある。そのためには、コイル2の磁芯12を通る磁束を増やし、ステップモータ100の電気機械結合の度合いを高めなくてはならない。このコイル2の磁芯12を通る磁束を増やす方法として、以下の二つが考えられる。
【0029】
第1の方法として、近年開発が進んでいる磁石を更に磁力の大きな材質、例えばサマリウムコバルトからネオジウムに変更したり、磁石寸法を大きくしたりする方法が考えられる。また、第2の方法として、ロータ孔15の径を小さくして、ロータ孔15の外縁部とロータ磁石16との距離を近づけることで、ロータ磁石16からのモレ磁束の割合を極力減らす方法が考えられる。
【0030】
しかし、これらいずれの方法にしろ、コイル2の磁芯12を通る磁束を増やすためには、前述の保持トルクの理論式(1)中でのΦ項を大きくする必要が生じる。そうすると、ステータ連結部9や保持トルク設定手段1000に発生する保持トルクの大きさが共に大きくなり、ステータ連結部9、及び保持トルク設定手段1000の両部位からの加工誤差の影響も一緒に大きく現れてしまう。また、これら影響が重ね合わさって現れるため、保持トルクの設計値と、製作した後の保持トルクの実測値にはおおきなズレが発生してしまう。この様に、保持トルクの大きさや位相角を設計通りに形成することは、モータ特性を設計する上での大きな課題となっていた。
【0031】
また、従来のステップモータ100における第2の問題点は、ステータ連結部9、及び保持トルク設定手段1000を避けて、輪列用の軸孔や固定ピン用の孔を別途設ける必要があり、実際にはモータ設計上の自由度が限られてしまっていたという点にある。以下に第2の問題点について詳細に説明する。
【0032】
腕時計の小型化を図るためには、輪列用の軸孔や固定ピン用の孔をロータ孔15周辺に出来る限り近づけて設け、小さな径寸法の輪列で構成するのが望ましいとされている。
【0033】
ここで、輪列用の軸孔や固定ピン用の孔の配置を設計する際、既にベクトル合成により厳密に振幅と位相角とを設定している保持トルクの値に影響を与えないよう注意する必要がある。そのためには、ロータ孔15周辺に設けたステータ連結部9、及び保持トルク設定手段1000の設置位置を避け、十分な余裕を設けて配置する必要がある。つまり、モータの性能と時計の小型化とを、輪列用の軸孔や固定ピン用の孔の配置を設計する際に同時に考える必要があり、限られた寸法内で両方の要求を満たすためには、必然的に設計の自由度は限られてしまう。そのため、輪列用の軸孔や固定ピン用孔の設計上の自由度を上げることは、小型な腕時計を設計する上での課題の1つとなっていた。
【0034】
そこで、本発明の目的は、上述のような課題を解決するもので、保持トルクの大きさや位相角を任意の目的値に設定し易い、保持トルク設定手段を備えたステップモータを提供することを目的とする。
【0035】
また、本発明の目的は、輪列用の軸孔や固定ピン用の孔を設計し易い、保持トルク設定手段を備えたステップモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明のステップモータは、基本的に下記記載の構成を採用するものである。
本発明のステップモータは、軟磁性材で形成された磁芯に導線を巻き回したコイルと、径方向に2極に着磁されたロータ磁石とロータ軸とを有するロータと、軟磁性材で形成され、磁芯の両端に結合し、かつほぼ中央に配したロータ孔にロータを配設することで、コイルで励磁された磁束の流れをロータ磁石に導くステータと、ロータを回転可能に支持する、ロータ軸端の上側に配した上側軸受と、ロータ軸端の下側に配した下側軸受とを備え、上記ステータが、ロータ孔の近傍で、ロータ磁石の径方向にニ片に分割され、その分割箇所に非磁性体を挟持することで、励磁したコイルで発生する磁界を磁気的に分離するステータ連結部を有し、上側軸受と下側軸受の少なくともいずれか一方を軟磁性材により形成するとともに、ロータ磁石側に位置する軸受の表面に、ステータ連結部を設けた方向とは異なる設定角度で形成された切り欠き溝よりなる保持トルク設定手段を設けたことを特徴とするものである。
【0037】
また、本発明のステップモータは、上側軸受と下側軸受の両方に、保持トルク設定手段が形成されてなることを特徴とするものである。
【0038】
また、本発明のステップモータは、保持トルク設定手段が形成される設定角度を、上側軸受と下側軸受で同じ方向としたことを特徴とするものである。
【0039】
また、本発明のステップモータは、保持トルク設定手段が形成される設定角度を、上側軸受と下側軸受で異なる方向としたことを特徴とするものである。
【0040】
また、本発明のステップモータは、保持トルク設定手段が形成された上側軸受または下側軸受が、非磁性材で形成されロータ軸を回転可能に支持する中心部と、軟磁性材で形成され当該中心部の外周を囲むように配置する外周部とを有し、当該外周部に保持トルク設定手段を設けたことを特徴とするものである。
【0041】
また、本発明のステップモータは、ステータ連結部が、励磁したコイルから発生する磁界を磁気的に分離することで、磁束飽和部として作用するステータ狭窄部より構成されてなることを特徴とするものである。
【0042】
また、本発明のステップモータは、ロータ磁石の外周部縁からロータ孔内周部縁までの距離が、ロータ磁石の外周部縁から保持トルク設定手段が形成された軸受までの最短距離よりも小さくなる様に、かつ当該ロータ孔内周部縁から保持トルク設定手段が形成された軸受までの最短距離よりも小さくなるように、保持トルク設定手段が形成された軸受と、ロータ磁石と、ロータ孔とが配置されてなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0043】
本発明のステップモータは、従来の構成では利用されていなかった、ロータ磁石の軸方向上面あるいは下面にあるN極から発生し、軸方向の同面にあるS極に戻るモレ磁束を利用して保持トルク設定手段を有して構成される。この様に構成すれば、保持トルク設定手段で利用するモレ磁束の量は、主磁束に対して1/2〜1/4程度であるため、上記(1)式におけるΦ項による保持トルクの値への影響が、主磁束を利用した場合と比較して、大幅に小さくすることができる。
【0044】
また、コイルの磁芯を通る磁束を更に増やそうとした場合にも、(dR/dθ)項に影響を与える保持トルク設定手段の寸法を、極端に小さく加工する必要はなく、大きな寸法であっても十分作用させることができる。そして、大きな寸法で形成された保持トルク設
定手段は、保持トルクの設計値からの加工精度によるズレが生じたとしても、そのズレ量による影響を受け難くなり、保持トルクの大きさや位相角を任意の設計値からのマージンが広がる。
【0045】
また、本発明のステップモータは、ロータ磁石の軸方向上側あるいは下側に保持トルク設定手段を備えているので、輪列用の軸孔や固定ピン用の孔をロータ孔周囲に配置し易くすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明のステップモータは、軟磁性材で形成された磁芯に導線を巻き回したコイルと、軟磁性材で形成され、磁芯の両端で結合して磁気的に接続したステータと、当該ステータのほぼ中央に形成したロータ孔に配設し、径方向に2極に着磁されたロータ磁石とロータ軸からなるロータとを備える。そして、ロータに配したロータ軸端の上側に配置した上側軸受と、ロータ軸端の下側に配置した下側軸受とで、ロータを回転可能に支持した構成となっている。
【0047】
また、上側軸受の外周部と下側軸受の外周部の少なくともいずれか一方は、ロータ磁石側表面にロータ孔径方向の分割箇所とは異なる設定角度で形成された切り欠き溝よりなる保持トルク設定手段を有し、かつ当該保持トルク設定手段が形成された上側軸受の外周部と下側軸受の外周部は、軟磁性材により構成されている。
【0048】
この様に構成することにより、保持トルクの大きさや位相角を目的の値に設定し易くすることが出来る。また、輪列用の軸孔や固定ピン用の孔を設計し易くすることが出来る。
以下に、本発明のステップモータの具体的な構成を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0049】
まず、本実施形態のステップモータについて説明する。
図1と図2は、本実施形態におけるステップモータの構成例を説明するための上面図と断面図である。なお、図2(a)は、図1におけるB1−B1断面及びB2−B2断面を示しており、図2(b)は、図1におけるA−A断面を示している。また、図3は、図1からロータ4を取り去った状態の上面図を示していおり、図4は、上側軸受5と保持トルク設定手段10を設けた下側軸受6の斜視図を示している。
【0050】
図1、図2(b)、図3に示すように、本発明のステップモータ1は、パーマロイなどの軟磁性材で形成された磁芯12に導線13を巻き回したコイル2と、図1、図2(a)に示す様に、パーマロイなどの軟磁性材で形成され、磁芯12の両端でネジ14などにより結合して磁気的に接続したステータ3と、図1に示すように、当該ステータ3のほぼ中央に形成したロータ孔15に配設されて、径方向に2極に着磁されたロータ磁石16とロータ軸17からなるロータ4とを有して構成されている。
【0051】
このステータ3は、図1、図3に示す様に、ロータ孔15の径方向に(図1、図3の場合は、A−A方向に位置する方向に)ニ片に分割されており、その分割箇所にニクロムなどの非磁性体を挟持したステータ連結部9を配しているので、励磁したコイル2で発生する磁界を、ロータ4近傍で磁気的に分離することが出来る。なお、このステータ連結部を、エポキシ接着材などの非磁性材で分割箇所を接着固定した構成としても構わない。
【0052】
ここで、図1におけるB1−B1、およびB2−B2断面の構成について説明する。
図2(b)に示す様に、本発明のステップモータ1は、ロータ軸17端の上側に配した上側軸受5と、ロータ軸17端の下側に配した下側軸受6とで、ロータ4を回転可能に支持して構成される。
【0053】
そして、この上側軸受5と下側軸受6は、純鉄や珪素鋼板などの軟磁性材により形成されてなり、図3に示す様に、下側軸受6には、ロータ磁石16側表面にロータ孔15径方向の分割箇所とは異なる設定角度で形成された切り欠き溝よりなる保持トルク設定手段10を有して構成される。この状態を示したのが図4であって、保持トルク設定手段10がこの下側軸受6に形成されているのが見て取れる。なお、本図においては、上側軸受5には、この保持トルク設定手段10は形成されていない。
【0054】
また、図2(b)に示す様に、本発明のステップモータ1は、真鍮などの非磁性材で形成し、コイル2とステータ3と下側軸受6とを位置決めし固定する地板7と、上側軸受5を位置決めして固定する輪列受板8とを備えている。また、リン青銅などの非磁性材で形成し、ロータ磁石16をロータ軸17に固定し、下側軸受6との隙間距離を調整する座11とを備えている。
【0055】
上述した説明では、本実施例では図4に示す様に、下側軸受6のみに保持トルク設定手段10を形成した構成例を示したが、上側軸受5のみに保持トルク設定手段10を形成しても構わない。
【0056】
次に、上述したロータ磁石16の各面からの発生磁束及びその流れである磁路について詳細に説明する。
図5は、ロータ磁石16の各面からの発生磁束量を説明するための図であり、本図では、ロータ磁石16を0[deg]から180[deg]まで回転させた際の磁束の変化を示している。
【0057】
図5に示すように、ロータ磁石16から発生する総磁束量aは、ロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生し、ステータ3、磁芯12を通る閉磁路を形成する主磁束bと、ロータ磁石16の軸方向の上下面にあるN極から発生し、軸方向の上下面にあるS極に戻る閉磁路を形成するモレ磁束cとに分けられる。ここで、ロータ磁石16からの総発生磁束量aと、モレ磁束量bとは一定である。そして、ロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生する磁束(a−c)も一定であるが、ロータ磁石16を回転させ、角度ζを0[deg]から180[deg]まで変化させた場合、磁芯12を通る磁束bはサイン曲線を描くことが判る。
【0058】
図16〜図20に示した従来の構成では、主磁束bを利用して保持トルクが目的の値となる様に、保持トルク設定手段1000を設定していた。それに対して、本発明の構成では、従来は利用されていなかった、モレ磁束cを利用して保持トルクを設定している。図5に示すように、モレ磁束cの量は主磁束bに対して1/2〜1/4程度となっていることが判る。図5に示すこのモレ磁束cは、ロータ磁石16の上下両面の合計量であるため、上側のみ、あるいは下側のみのモレ磁束cを利用する際は、更にその半分の大きさの1/4〜1/8程度となる。
【0059】
次に、このモレ磁束cを保持トルクに利用した、本発明に係る保持トルク設定手段を有するステップモータ1の作用について説明する。
図6〜図8は、本実施例におけるステップモータ1の作用を説明するための上面図である。図6は、ステップモータ1の非駆動時の初期状態を示しており、同図の右上にロータ磁石16の中心を通るE−E断面図を示した。図7は、コイル2を励磁させてロータ磁石16を駆動した時の回転状態を示しており、同様に、同図右上にロータ磁石16の中心を通るF−F断面図を示した。また、図8は、ロータ磁石16が1ステップの動作が終了後で、180度ロータ磁石16が回転した後の状態を示していおり、同図右上にロータ磁石16の中心を通るG−G断面図を示した。
【0060】
図6に示す本発明のステップモータ1の初期状態では、ロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生した磁束がステータ3と磁芯12とを通り、再びロータ磁石16の径方向側面部にあるS極に戻る閉磁路18が形成されていることが判る。また、ロータ磁石16の軸方向の下面にあるN極から発生し、軸方向の下側にある下側軸受6を通り、ロータ磁石16の軸方向下面にあるS極に戻る閉磁路19と、ロータ磁石16の軸方向の上面にあるN極から発生し、ロータ磁石16の軸方向上面にあるS極に戻る閉磁路20とが形成されている。
【0061】
この様に、ロータ磁石16から発生する磁束がそれぞれ閉磁路を形成することで、このステップモータ1は、それぞれで保持ポテンシャルを保有する形態となる。この際、閉磁路18では、ステータ連結部9と直角な方向で保持ポテンシャルが最小となり、その方向へ回転しようとする保持トルクが発生する。また閉磁路19では、下側軸受6に設けた切り欠き溝(保持トルク設定手段)と直角な方向で保持ポテンシャルが最小となり、その方向へ回転しようとする保持トルクが発生する。また閉磁路20では、ロータ磁石16が回転中磁路の磁気抵抗が変化することがないため、保持ポテンシャルは変化することなく保持トルクも発生しない。
【0062】
つまり、閉磁路18による保持トルクと、閉磁路19による保持トルクとがベクトル合成され、最終的な保持トルクが設定されることとなる。そして、ロータ磁石16は、ステータ3と下側軸受6と磁気的に釣り合った状態である、初期位相角θで停止する。なお、この時ロータ磁石16は、軟磁性体からなる軸受側で、本実施例で示す形態の場合は、下側軸受6側に引きつけられて静止している。
【0063】
次に、コイル2を励磁させてロータ磁石16を駆動した時の回転状態について説明する。
図7の状態では、駆動電圧をコイル2に印加して電流を流した状態を示している。これにより、コイル2に流した電流の方向と大きさに応じた磁界を、磁気的に接続したステータ3、及びロータ孔15に発生させることが出来る。この様に、閉磁路18の磁束の流れとは逆方向になるような方向に閉磁路21を発生させることで、図7の矢印方向の駆動トルクを発生させることが出来る。
【0064】
なお、図6に示した初期状態からのロータ磁石16の回転に伴い、保持トルクの値、つまり下側軸受6への引きつけられる力の量が徐々に減少していく。ここで、保持トルクがある程度低下した段階では、ロータ磁石16は閉磁路18による引力により下側軸受6から引き離された状態で安定する。その際、駆動トルクと抗するように働いている保持トルクは急激に低下し、より駆動トルクによる作用の影響が大きく働くようになる。
【0065】
次に、ロータ磁石16が1ステップの動作が終了後で、初期状態から180度ロータ4が回転した後の状態について説明する。
図8の状態は、ロータ磁石16が図6から図7に示した状態を経て180度回転した状態を示している。この状態においては、ロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生した磁束がステータ3と磁芯12とを通り、再びロータ磁石16の径方向側面部にあるS極に戻る閉磁路18が形成されている。また、ロータ磁石16の軸方向の下面にあるN極から発生し、軸方向の下側にある下側軸受6を通り、ロータ磁石16の軸方向下面にあるS極に戻る閉磁路19と、ロータ磁石16の軸方向の上面にあるN極から発生し、ロータ磁石16の軸方向上面にあるS極に戻る閉磁路20とが形成されている。なお、この時ロータ磁石16は、再び軟磁性体からなる軸受側、本実施例で示す形態の場合は、下側軸受6側に引きつけられて静止している。
【0066】
この様に、ロータ磁石16から発生する磁束に、それぞれの閉磁路が形成させることで、このステップモータ1は、それぞれで保持ポテンシャルを保有する。このとき、閉磁路18では、ステータ連結部9と直角な方向で保持ポテンシャルが最小となり、その方向へ回転しようとする保持トルクが発生する。また閉磁路19では、下側軸受6に設けた切り欠き溝(保持トルク設定手段)と直角な方向で保持ポテンシャルが最小となり、その方向へ回転しようとする保持トルクが発生する。また閉磁路20では、ロータ磁石16が回転中磁路の磁気抵抗が変化することがないため、保持ポテンシャルは変化することなく保持トルクも発生しない。
【0067】
つまり、閉磁路18による保持トルクと閉磁路19による保持トルクとがベクトル合成され、最終的な保持トルクは設定される。そして、再びロータ磁石16を、ステータ3と下側軸受6と磁気的に釣り合った状態である初期位相角θで停止させることが出来る。
【0068】
そして、次回以降は、コイル2に流す電流の方向を1秒毎に切り替え、上述した図6〜図8に示した動作を周期的に繰り返すことで、図示しないロータ軸に固定される指針を一定方向に一定速度で送ることが出来、小型のアナログ式電子時計に適用可能となる。
【0069】
次に、上述したロータ磁石16とステータ3と下側軸受6との最良と考えられる、各部材の配置関係について詳細に説明する。図9は、ロータ磁石16とステータ3と下側軸受6の断面図と、各部材の配置関係を示す図面である。
【0070】
本発明のステップモータ1は、図9に示すように、ロータ磁石16の外周部縁からロータ孔15内周部縁までの距離aと、ロータ磁石16の外周部縁から下側軸受6までの最短距離bと、ロータ孔15内周部縁から下側軸受6までの最短距離cとを、a<bであり、かつa<cとなるように各部材を配置する。
【0071】
その理由について下記に説明する。
このロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生した主磁束が流れる閉磁路の磁気抵抗を考えたとき、磁気抵抗Rは、各部材の距離により以下の式(3)で表すことが出来る。そして、下記式(3)から、磁気抵抗Rは、ロータ磁石16と他の部材における隙間の距離に比例していることが判る。
R = L / (u0*S)・・・(3)
L:ロータ磁石からの隙間の距離
u0:空気の透磁率
S:ロータ磁石の径方向側面部にあるN極から発生した磁束が通る磁路の面積
【0072】
そのため、ロータ磁石16の外周部縁からロータ孔15内周部縁までの磁気抵抗a’と、ロータ磁石16の外周部縁から下側軸受6までの磁気抵抗b’と、ロータ孔15内周部縁から下側軸受6までの磁気抵抗c’とは、a’<b’であり、かつa’<c’の関係となる。
【0073】
そして、ロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生した磁束は、より磁気抵抗が小さい閉磁路を選択して通る。つまり、ロータ磁石16のN極で発生する磁束の殆どがロータ孔15に届き、図示しないコイルの磁芯を通るようになる。
【0074】
このとき、ロータ磁石16の軸方向の上下面にあるN極から発生し、軸方向の上下面にあるS極に戻ってしまうモレ磁束は、殆どがロータ孔15に届くことなく、ロータ軸方向に配置されている下側軸受6を通る閉磁路を選択して通すことができる。この様にして、本発明に係る保持トルク設定手段を有効に作用させることができるのである。
【0075】
次に、上述したロータ磁石16とステータ3と下側軸受6との、各部材の配置関係についての変形例について説明する。図10は、本実施形態におけるロータ磁石16とステータ3と下側軸受6の断面図と、各部材の配置関係を示す図面である。
【0076】
本発明に係るロータ磁石16とステータ3は、図10に示すように、ロータ磁石16の下側軸受6がある側の径が上側より小さく、またロータ孔15の下側軸受6がある側の径が上側より大きくなる様に設定されている。そして、図9で示した形態と同様に、外周部縁からロータ孔15内周部縁までの距離aと、ロータ磁石16の外周部縁から下側軸受6までの最短距離bと、ロータ孔15内周部縁から下側軸受6までの最短距離cとを、a<bであり、かつa<cとなるように各部材を配置している。
【0077】
この様に構成することで、図9に示した形態と同様に、ロータ磁石16の外周部縁からロータ孔15内周部縁までの磁気抵抗a’と、ロータ磁石16の外周部縁から下側軸受6までの磁気抵抗b’と、ロータ孔15内周部縁から下側軸受6までの磁気抵抗c’とは、a’<b’であり、かつa’<c’の関係となる。
【0078】
そのため、ロータ磁石16の径方向側面部にあるN極から発生した磁束は、より磁気抵抗が小さい閉磁路を選択して通すことができる。つまり、ロータ磁石16のN極で発生する磁束の殆どが、主磁束としてロータ孔15に届き、ここでは図示しないコイルの磁芯を通るようになる。また、図示しないコイルを励磁してロータ孔15に磁界を発生させた場合に、その磁界は下側軸受6を通ることなく、より有効的にロータ磁石16に作用させることができる。
【0079】
以上説明したように、本発明のステップモータ1とすれば、ロータ磁石16の軸方向の下面にあるN極から発生し、軸方向の下側にある下側軸受6を通り、ロータ磁石16の軸方向下面にあるS極に戻るモレ磁束の閉磁路19(図6、図8参照)により発生する保持トルクを設定することができる。
【0080】
ここで、図5を用いて先に説明した様に、閉磁路19を流れるの磁束量は、閉磁路18を流れる磁束量の1/4〜1/8程度である。そのため、駆動トルクを大きくするためにロータ磁石16の磁力を増しても、ここでは図示しないステータ連結部9の加工誤差の影響のみが大きく現れるとしても、保持トルク設定手段10(図4(b)参照)の寸法は、極端に小さく加工する必要はない。したがって、同じ特性を得るのであれば、大きな寸法でこの下側軸受6に保持トルク設定手段10を形成できる。そのため、この保持トルク設定手段10の加工精度による影響は受け難くなり、保持トルクの大きさや位相角を任意の目的値に設定し易くなる。
【0081】
この様に、図1〜図4に示す本発明の構成によれば、ロータ磁石16の寸法を大きくし、磁力を増すためにロータ軸17を固定する孔径を小さく出来る。そのため、材料の非線形の度合いを下げることが出来、保持トルクの大きさ、位相を設計段階での予測値からのズレを更に小さくすることが出来る。つまり、本発明の構成によれば、保持トルクの大きさや位相角を任意の目的値に設定し易くなる。
【0082】
また、図1〜図4に示す本発明の構成によれば、従来の構成のようにロータ孔15の径方向に保持トルク設定手段を設けていないので、輪列用の軸孔や固定ピン用の孔をより自由度を高く、設計することが可能となる。
【0083】
また、図1〜図4に示す本発明の構成によれば、ロータ磁石16の回転中にロータが軸方向に動き、保持トルクが急激に低下することから、より少ない電流で駆動することが出来る。
【0084】
また、図9、図10に示す本発明の構成によれば、ロータ磁石16から発生し、コイルの磁芯を通る磁束量をほとんど減らさずに済むため、ステップモータの電気機械結合の度合いを下げずに、保持トルクを設定することが可能となる。
【0085】
また、図10に示す本発明の構成によれば、コイルを励磁して発生する磁界も、有効的にロータ磁石16に作用させることが出来るため、ステップモータの駆動トルクを下げずに、保持トルクを設定することが可能となる。
【実施例2】
【0086】
次に、本発明のステップモータの他の構成例について説明する。
図11は、本実施形態における上側軸受と下側軸受の構成例を説明するための断面図と斜視図である。なお、図11(a)は、図2(b)におけるA−A断面に変わるロータ4とコイル2部分の断面図を、図11(b)は、第2の保持トルク設定手段22を設けた上側軸受5と保持トルク設定手段10を設けた下側軸受6の斜視図を示している。
【0087】
本実施例で示す構成の特徴とする点は、実施例1で示した形態では、上側軸受5あるいは下側軸受6のどちらか一方に保持トルク設定手段10を形成していたものを、上側軸受5と下側軸受6の両方に保持トルク設定手段を形成した点にある。ここで、説明を容易にするために、以下の説明では、上側軸受5に設けた保持トルク設定手段を第2の保持トルク設定手段22と記載する。なお、本実施例に示す形態における他の構成は、実施例1に示した形態と同じであるので、本実施例における以降の説明は、この上側軸受5と下側軸受6についてのみ行い、他の構成についてのここでの詳細な説明は割愛する。
【0088】
まず、本発明のステップモータの作用について説明する。
図11(a)に示す様に、本実施例におけるステップモータでは、ロータ磁石16の軸方向の下面にあるN極から発生し、保持トルク設定手段10(図11(b)参照)を形成した下側軸受6を通り、再びロータ磁石16の下面にあるS極に戻るモレ磁束の閉磁路28と、ロータ磁石16の軸方向の上面にあるN極から発生し、第2の保持トルク設定手段22(図11(b)参照)を形成した上側軸受5を通り、再びロータ磁石16の上面にあるS極に戻るモレ磁束の閉磁路29とが形成されている。
【0089】
この様に、ロータ磁石16の上面と下面に、ロータ磁石16を回転駆動させるための閉磁路とは別に、モレ磁束の閉磁路28と閉磁路29とがそれぞれ形成されるので、このロータ磁石16に、第1の保持トルクと第2の保持トルクを発生させることが出来る。なお、第1の保持トルクと第2の保持トルクとをベクトル合成する、つまり重ね合せることで、本実施例におけるロータ磁石16の保持トルクが設定される。
【0090】
ここで、上側軸受5と下側軸受6の両方に設けた、保持トルク設定手段10と第2の保持トルク設定手段22の具体的構成について説明する。
本実施例における、保持トルク設定手段10と第2の保持トルク設定手段22とは、設定角度を同じ方向としている。この様に構成することで、ベクトル合成された保持トルクの振幅を最大に設定することが出来る。
【0091】
また、この保持トルク設定手段10と第2の保持トルク設定手段22の設定角度を異なる方向としても良い。この様に構成することで、ベクトル合成された保持トルクの振幅、位相を任意により細かく調整して設定することが出来る様になる。この様に構成すれば、上側軸受5と下側軸受6とで保持トルク設定手段10と第2の保持トルク設定手段22との設定角度を90度に近くする程、合成された保持トルクの振幅をゼロに近づけることが出来るため、非常に小さな振幅の保持トルクを設定することが出来る。
【0092】
この様にステップモータを構成することで、小型化の設計上、仕方なくロータ磁石16の径を小さくし、ロータ磁石16から発生する磁力が弱くなってしまったとしても、十分な大きさの保持トルクを設定することが出来る様になる。また、磁石材料開発が現在以上に進み、ロータ磁石16で発生する磁力が更に強くなったとしても、上述したようにベクトル合成を考慮することにより、任意の保持トルクの値に設定することが出来る。
【実施例3】
【0093】
次に、本発明のステップモータの他の構成例について説明する。
図12は、本実施形態におけるステップモータの他の構成例を説明するための断面図であり、図2(b)におけるA−A断面に変わるロータ4とコイル2部分の断面図を示している。
【0094】
本実施例で示す構成の特徴とする点は、実施例1に示した保持トルク設定手段が形成された下側軸受6を、材質の異なる中心部23と外周部24とを組み合わせて構成した点にある。なお、図11では、実施例2に示した上側軸受5に保持トルク設定手段を設け、下側軸受6に第2の保持トルク設定手段を設けるとともに、下側軸受6と同様に、上側軸受5にも中心部25と外周部26とを設けた構成例を示しているが、上側軸受5と下側軸受6の一方に保持トルク設定手段を設けても構わない。他の構成は、実施例1または2と同じであるので、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0095】
図12に示す様に、本実施例におけるステップモータの上側軸受5と下側軸受6における中心部23、25は、セラミックスなどの非磁性材で形成し、ロータ軸17を回転可能に支持する。また、この中心部23、25の外周を囲むように配置する外周部24、26は、純鉄や珪素鋼板などの軟磁性材で形成してなる。さらに、本図面では明示していないが、この外周部24、26のみに、保持トルク設定手段が形成されている。
【0096】
この様に構成することで、ロータ軸17が摺動する中心部23、25には、摺動摩擦が小さく、耐磨耗性の大きく、かつ磁性材より加工が容易な材料を選択することが出来る。そのため、本実施例におけるステップモータによれば、先の実施例に比べて更に低消費電力化が達成出来、また耐摩耗性の高いステップモータを実現することが出来る。
【実施例4】
【0097】
次に、本発明のステップモータの他の構成例について説明する。
図13は、本実施形態におけるステップモータの他の構成例を説明するための上面図を示している。図14は、図13からロータ4を取り去った状態の上面図を示しており、図15は、上側軸受5と保持トルク設定手段10を設けた下側軸受6の斜視図を示している。
【0098】
本実施例で示す構成の特徴とする点は、実施例1に示したステータ連結部9(図1参照)を、励磁したコイル2から発生する磁界を磁気的に分離するための磁束飽和部27として作用するステータ狭窄部とした点にある。なお、他の構成は同じであるので、ここでの詳細な説明は割愛する。
【0099】
実施例1(図1参照)のように、ステータ3を二片に分割し、この分割した間隙に非磁性体を挟持する様に配するステータ連結部9を有するステップモータ1は、ステータ連結部9による保持トルクが、ロータ磁石16の径方向側面部から発生した大きな量の主磁束により発生する形態となっている。そのため、この保持トルクには、ロータ磁石16の加工精度による影響を大きく含む構成といわざるを得ない。この様に、実施例1に示したステップモータ1は、従来のステップモータ(図16参照)の様に、ステータ連結部9とロ
ータ孔15内周部に設けた保持トルク設定手段1000の両方の加工精度の影響が、重なり合ってさらに大きく出てしまうことはないが、それでもステータ連結部9の加工精度による影響は大きく残ってしまうという問題を抱えていた。
【0100】
それに対して、図13、図14に示す様に、このステップモータにおけるステータ3に、磁束飽和部27としてステータ狭窄部を有する構成とすることにより、ロータ磁石16から発生する磁束により磁束飽和することはなく、材料特性が非線形な領域になることもない。更に、本構成によれば、磁束飽和部27であるステータ狭窄部による保持トルクは発生しない。
【0101】
この様に構成することで、保持トルクをロータ磁石16の軸方向に配置されている下側軸受6に設けた保持トルク設定手段のみにより設定することが出来る。つまり、本構成によれば、先に示した実施例での構成のように、ベクトル合成により保持トルクを設定する必要がないために、先の実施例での構成に比べて更に振幅と位相とを設定し易くすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明のステップモータの構成を示す上面図である。(実施例1)
【図2】本発明のステップモータの構成を示す断面図である。(実施例1)
【図3】本発明のステップモータの構成でロータを取り去った状態を示す上面図である。(実施例1)
【図4】本発明のステップモータの構成でロータを取り去った状態を示す斜視図である。(実施例1)
【図5】本発明に係るロータ磁石の各面からの発生磁束量を説明するための図である。(実施例1)
【図6】本発明のステップモータの作用を説明する上面図である。(実施例1)
【図7】本発明のステップモータの作用を説明する上面図である。(実施例1)
【図8】本発明のステップモータの作用を説明する上面図である。(実施例1)
【図9】本発明に係るロータ磁石とステータと下側軸受の配設位置の関係を説明するための断面図である。(実施例1)
【図10】本発明に係るロータ磁石とステータと下側軸受の配設位置の関係の変形例を説明するための断面図である。(実施例1)
【図11】本発明のステップモータの他の構成を示す断面図と斜視図である。(実施例2)
【図12】本発明のステップモータの他の構成を示す断面図である。(実施例3)
【図13】本発明のステップモータの他の構成を示す上面図である。(実施例4)
【図14】本発明のステップモータの他の構成でロータを取り去った状態を示す上面図である。(実施例4)
【図15】本発明のステップモータの他の構成でロータを取り去った状態を示す斜視図である。(実施例4)
【図16】従来のステップモータの構成を示す上面図である。
【図17】従来のステップモータの構成を示す断面図である。
【図18】従来のステップモータの作用を説明する上面図である。
【図19】従来のステップモータの作用を説明する上面図である。
【図20】従来のステップモータの作用を説明する上面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 ステップモータ
2 コイル
3 ステータ
4 ロータ
5 上側軸受
6 下側軸受
7 地板
8 輪列受板
9 ステータ連結部
10 保持トルク設定手段
11 座
12 磁芯
13 導線
14 ネジ
15 ロータ孔
16 ロータ磁石
17 ロータ軸
18 閉磁路
19 閉磁路
20 閉磁路
21 閉磁路
22 第2の保持トルク設定手段
23 中心部
24 外周部
25 中心部
26 外周部
27 磁束飽和部
28 閉磁路
29 閉磁路
【出願人】 【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズンホールディングス株式会社
【出願日】 平成18年12月18日(2006.12.18)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−151644(P2008−151644A)
【公開日】 平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願番号】 特願2006−339960(P2006−339960)