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【発明の名称】 衝突で回転が制御される微細機械の可動要素
【発明者】 【氏名】フィリップ マルミー

【氏名】ベンジャミン クラエヘンビュエル

【氏名】ティエリー コヌス

【要約】 【課題】その回転が衝突により制御される可動要素を提供すること。

【構成】本発明の可動要素は、剛性中央領域(2)と、剛性中央領域(2)から半径方向に歯(8)を含む周辺領域方向に、延びるアーム(6)とを有し、前記アーム(6)は、前記歯(8)の接線方向または半径方向の動きが可能となるように柔軟性があり、前記アーム(6)は、湾曲し、可動要素の回転に対し接線方向に徐々に曲がり、前記アーム(6)の太さ又は厚さは、徐々に減少し、前記歯は、前記アーム(6)の端部に形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その回転が衝突により制御される可動要素において、
前記可動要素は、剛性中央領域(2)と、剛性中央領域(2)から半径方向に歯(8)を含む周辺領域方向に、延びるアーム(6)とを有し、
前記アーム(6)は、前記歯(8)の接線方向または半径方向の動きが可能となるように柔軟性があり、
前記アーム(6)は、湾曲し、可動要素の回転に対し接線方向に徐々に曲がり、
前記アーム(6)の太さ又は厚さは、徐々に減少し、
前記歯は、前記アーム(6)の端部に形成される
ことを特徴とする可動要素。
【請求項2】
前記アーム(6)は、前記可動要素の回転方向とは反対方向に曲げられ、
前記アーム(6)の端部において、前記歯(8)は、前記可動要素の回転方向に曲げられる
ことを特徴とする請求項1記載の可動要素。
【請求項3】
前記アーム(6)は、可動要素の回転方向に曲げられる
ことを特徴とする請求項1記載の可動要素。
【請求項4】
前記剛性中央領域(2)は、軸真に適合する開口(4)を有する
ことを特徴とする請求項1、2あるいは3記載の可動要素。
【請求項5】
前記開口(4)は、柔軟性付与機構(5)を有し、
前記柔軟性付与機構(5)は、前記開口(4)に、可動要素を軸真(3)に適合させる柔軟性を与える
ことを特徴とする請求項4記載の可動要素。
【請求項6】
前記可動要素は、金属または合金製で、プレートを機械加工して形成するか、あるいはLIGA技術で成形する
ことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の可動要素。
【請求項7】
前記可動要素は、もろい材料、例えばガラス、水晶、シリコン等で形成され、エッチングにより成形される
ことを特徴とする請求項1−5のいずれかに記載の可動要素。
【請求項8】
前記可動要素は、機械式時計のムーブメントのテンプ調整システムの第1ガンギ歯車(1)を形成し、
前記テンプ調整システムは、前記第1ガンギ歯車(1)に同軸に搭載された第2ガンギ歯車(11)を有する
ことを特徴とする請求項1−7のいずれかに記載の可動要素。
【請求項9】
前記アームは、第2ガンギ歯車(11)の角度位置示す隆起部(7)を有する
ことを特徴とする請求項8記載の可動要素。
【請求項10】
ガラスにより閉鎖されたケースを有する時計において、
前記ガラスの下に少なくとも1個のアナログ表示を示す文字板が配置され、
前記文字板が、機械式ムーブメントのハウジングを形成し、
前記ムーブメントの調整システムは、前記請求項のいずれかに記載の第1ガンギ歯車(1)を有する
ことを特徴とする時計。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、微細機械の可動要素に関し、特に、その歯列にかかる衝突により回転が制御される歯車またはピニオンに関する。本発明は、特に、機械式時計のムーブメント用のテンプの調整システムのガンギ歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来公知のように、機械式時計のムーブメントの脱進機は、それがスイス型脱進機あるいは同軸レバーの脱進機であろうとも、多かれ少なかれ複雑な部品を有する。この部品には、通常ルビー製のアンクル石の衝突を吸収する歯を有するガンギ歯車を含む。このガンギ歯車の形状は、図2に示すが、実質的は変更はない。このガンギ歯車は、真を駆動する開口4を有する剛性中央領域2と、歯8を有する剛性な輪1と、剛性部品を形成する4本の剛性なアーム6とを有する。改善点は、潤滑を容易にし磨耗を減らす歯の数と形状に関する。特許文献1と2は、潤滑油の貯蔵庫を形成するノッチを有する歯の実施例を開示する。
【0003】
【特許文献1】スイス特許第230743号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第1192984号明細書
【特許文献3】ヨーロッパ特許第018796号明細書
【非特許文献1】G. Daniels entitled “La Montre: Principes st Methodes de Fabrication”, pages 249-252, editions Scriptar S.A., La Conversion, Lausanne, 1993
【0004】
十分な機械的強度を持たせるために、ガンギ歯車の材料は、通常金属あるいは合金である。しかし、このことは大きな衝撃が加わった時に損傷を受ける歯のリスクを全く排除するものではない。このリスクは、特に衝撃に敏感な(弱い)材料でガンギ歯車の材料である金属を置換する場合、さらに上がる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、前記の従来技術の欠点を解決することである。本発明により、歯を衝突(衝撃)により損傷を受けることがないように工夫し、その歯に加わる衝突により回転が制御される可動要素を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、この種の可動要素に関し、この可動要素は、剛性中央領域と、剛性中央領域から半径方向に歯を含む周辺領域方向に、延びるアームとを有し、前記アームは、前記歯の接線方向または半径方向の動きが可能となるように柔軟性がある。本発明において、前記アームは、湾曲し、可動要素の回転に対し接線方向に徐々に曲がり、前記アームの太さ又は厚さは、徐々に減少し、前記歯は、前記アームの端部に形成される。
【0007】
本発明の第1実施例において、前記アームは、可動要素の回転方向に曲げられる。
【0008】
本発明の第2実施例において、前記アームは、前記可動要素の回転方向とは反対方向に曲げられ、前記アームの端部において、前記歯は、前記可動要素の回転方向に曲げられる。
【0009】
剛性中央部品は、可動要素が回転できるように軸真内で駆動用開口を有する。この回転は、剛性中央領域と一体になった軸を用いて達成される。
【0010】
以下の説明において、「可動要素」とは、機械式時計のテンプの調整システムのガンギ歯車である。バンギ歯車の歯は、通常ルビー製のアンクル石の衝突(衝撃)を受ける。
【実施例】
【0011】
本発明は、同軸レバーの脱進機を例に説明する。この脱進機のガンギ歯車の歯は、アンクル石の衝突を受ける。
【0012】
この種の脱進機は、特許文献3で公知である。この操作と改良点は、非特許文献1に開示されている。この改良された脱進機を図1、2に示す。
【0013】
この機構は、第1ガンギ歯車1と第2ガンギ歯車11とを有する。この第2ガンギ歯車11は、インパルス・ピニオンとも称し、第1ガンギ歯車1と同一の軸真3の上に搭載される。この2つのガンギ歯車は、互いに固定して回転し、同一数の歯を有する。第1ガンギ歯車1の形状を図2に示す。すなわち、従来のスイス・レバー型のガンギ歯車の形状をしている。同軸脱進機の改良版においては、インパルス・ピニオンでもある第2ガンギ歯車11は、中間歯車17と噛み合うことにより、脱進機ピニオン(かな)15として機能する(図3)。この構造は、脱進機機構の高さを減らす利点がある。テンプ(balance)のテーブル・ローラ19は、衝突ピン21と直接衝突ツメ23とを搭載する。この直接衝突ツメ23は、第1ガンギ歯車1の歯8と当たる(図1)。アンクル25は、そのフォーク27は衝突ピン21と当たる(図5,6)が、間接衝突ツメ24と、入りツメ26と、出ツメ28を有する(図1)。間接衝突ツメ24は、第2ガンギ歯車11の歯13と当たる。ツメ26、28は、第1ガンギ歯車1の歯8と当たる。この同軸の脱進機の組み立ては、厳密な許容差を必要とし、高級時計用である。
【0014】
通常の動作において、テーブル・ローラ19が時計方向に回転駆動されると(図5の矢印)、ロックが入りづめ26に発生する(図1)。
【0015】
テーブル・ローラ19が反時計方向に回転駆動されると(図6の矢印)、ロックが出づめ28に発生する(図1)。ツメ23は、第1ガンギ歯車1の歯8に非常に近い点を通過する。このため、非常に正確な寸法の脱進機を組み立てる必要がある。
【0016】
本発明は、歯が衝撃を吸収できるように、半径方向と接線方向に柔軟性を有する点に特徴がある。
【0017】
図3の第1ガンギ歯車1は、図5、6に示す第1ガンギ歯車1に対応し、同軸の脱進機機構の動作を説明するものであり、本発明の第1実施例を示す。
【0018】
同図に示すように、アーム6は、湾曲し、可動要素の回転方向に対し接線方向に向い徐々に曲がっている。アーム6は、所定の長さで比較的薄く、柔軟性を有する。さらに、第1ガンギ歯車1は、輪(円周リング)を有さない。歯8は、アーム6の端部により形成されている。輪が存在しないことにより、アーム6は、他のアームとは独立に曲がることができる利点がある。アーム6は、従来のアームのように半径方向に単に向いているのではないため、半径方向と接線方向の両方に曲がることができる。さらに、アームの構造は、ホイールの周囲に「渦巻いている」。このことは、アームは、ある直径のホイールに対しさらに長くなっていることを意味する。
【0019】
アームの端部でもある歯8は、平坦な部分となる。この平坦な部分は、ツメ23、26、28と当たる。これは、図2に示す従来のガンギ歯車の歯の側面と同様である。アーム6の柔軟性は、歯8とアンクル石との間の衝突により引き起こされる衝撃を吸収する。実際に、この衝突により大きな応力がかかり、もろい材料製のアームを破損することがある。
【0020】
本発明によれば、アーム6の湾曲度は徐々に進み、衝突による応力をアームの全長にわたって分散する。さらに図3から分かるように、アームの太さ(又は肉厚)は、その端部に向かって徐々に減少している。ここに示した構造においては、せん断応力は、アームの根本の方がその先端部より大きい。このような状態において、アームが徐々に細く(薄く)なることにより、柔軟性と強度の相反する要件を満たすことができる。
【0021】
ここに示した実施例においては、第1ガンギ歯車1は、8本のアーム6と同一数の歯8とを有する。アームと歯の数は、8以外でもよい。
【0022】
図4は、本発明の第2実施例を示す。この第2実施例が第1実施例と異なる点は、アーム6が歯車の回転方向と反対方向に歯の周囲で渦巻いていることである。この第2実施例においては、各歯8は、アームの端部により形成される。この歯8は、歯車の回転方向に曲がっている。
【0023】
図3、4においては、中央開口4は、ある程度の弾性が得られるような柔軟性付与機構5を有する。この柔軟性付与機構5は、脱進機を形成する材料がある程度の柔軟性を有するがもろい材料(例えばガラス、水晶、シリコン)である場合、特に利点がある。
【0024】
同図から分かるように、アーム6は隆起部7を有する。これらの隆起部7は、脱進機機構を組み立てた時に、インパルス・ピニオンである第2ガンギ歯車11を第1ガンギ歯車1に対し角度をもって配置するために用いられる。歯車とピニオンが互いに正しい方向を向いて組み立てられた後は、これらの2つの部品は、接合あるいは他の適宜の方法により互いに結合される。第2ガンギ歯車11は、第1ガンギ歯車1で記載したの構造の1つの特徴を有する。
【0025】
本発明の可動要素は、従来公知の技術により形成することができる。使用される材料が金属または合金の場合には、可動要素は、プレートを、打ち抜き、ワイヤ・スパーク機械加工等で切断することにより、あるいはLIGA技術により成形することにより、形成される。使用される材料がもろい材料(例、ガラス、水晶、シリコン)の場合には、可動要素は、エッチングで形成することもできる。
【0026】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来技術にかかる同軸レバーの脱進機を表す斜視図。
【図2】図1のガンギ歯車の上面図。
【図3】本発明のガンギ歯車の第1実施例を表す図。
【図4】本発明のガンギ歯車の第2実施例を表す図。
【図5】脱進機の機構に組み込まれた本発明のガンギ歯車を表す上面図。
【図6】脱進機の機構に組み込まれた本発明のガンギ歯車を表す上面図。
【符号の説明】
【0028】
1 第1ガンギ歯車
2 剛性中央領域
3 軸真
4 開口
5 柔軟性付与機構
6 アーム
7 隆起部
8 歯
11 第2ガンギ歯車
13 歯
15 脱進機かな
17 中間歯車
19 テーブル・ローラ
21 衝突ピン
23 直接衝突アンクル
24 間接衝突アンクル
23,25 アンクル石
26 入りづめ
27 フォーク
28 出づめ
【出願人】 【識別番号】507202574
【氏名又は名称】オメガ エスエー
【出願日】 平成19年6月18日(2007.6.18)
【代理人】 【識別番号】100081053
【弁理士】
【氏名又は名称】三俣 弘文


【公開番号】 特開2008−3086(P2008−3086A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2007−159947(P2007−159947)