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樹脂製複製版、及びその製造方法 - 特開2008−89859 | j-tokkyo
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【発明の名称】 樹脂製複製版、及びその製造方法
【発明者】 【氏名】船田 洋

【要約】 【課題】ホログラム等の微細凹凸パターンを複製するための樹脂製複製版において、基材と凹凸パターン樹脂層との密着性、並びに複製版表面の離型性を同時に満足させる樹脂製複製版を提供する。

【解決手段】基材上に樹脂製で且つ複製の親となる凹凸パターンが形成された表面を有する凹凸パターン層の凹凸パターン面に、シリカ薄膜及び含フッ素薄膜がこの順序で積層されていることを特徴とする樹脂製複製版である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に樹脂製で且つ複製の親となる凹凸パターンが形成された表面を有する凹凸パターン層の凹凸パターン面に、シリカ薄膜及び含フッ素薄膜がこの順序で積層されていることを特徴とする樹脂製複製版。
【請求項2】
前記シリカ薄膜が、アモルファス状シリカ薄膜である、請求項1に記載の樹脂製複製版。
【請求項3】
前記アモルファス状シリカ薄膜が、前記凹凸パターン表面にシリカ前駆体を含有する溶液を塗布し、水と反応させることにより形成されたものである、請求項2に記載の樹脂製複製版。
【請求項4】
前記シリカ前駆体が、ポリシラザンである、請求項3に記載の樹脂製複製版。
【請求項5】
前記含フッ素薄膜が、含フッ素樹脂で形成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の樹脂製複製版。
【請求項6】
前記含フッ素樹脂が、含フッ素環を有する含フッ素高分子を含有することを特徴とする、請求項5に記載の樹脂製複製版。
【請求項7】
前記含フッ素樹脂が、極性基を有する含フッ素化合物を含有していることを特徴とする請求項5又は6に記載の樹脂製複製版。
【請求項8】
前記含フッ素薄膜が、前記シリカ薄膜の表面に、前記含フッ素樹脂をフッ素系溶媒中に溶解させた含フッ素薄膜用コーティング液を塗布することにより形成されたものである、請求項5乃至7のいずれかに記載の樹脂製複製版。
【請求項9】
前記含フッ素薄膜用コーティング液が、含フッ素樹脂及び極性基を有する含フッ素化合物を含有することを特徴とする、請求項8に記載の樹脂製複製版。
【請求項10】
前記凹凸パターン層は、光硬化性及び/又は熱硬化性樹脂組成物の硬化物で形成されていることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の樹脂製複製版。
【請求項11】
複製の親となる凹凸パターンが形成された凹凸パターン層の凹凸パターン面にシリカ薄膜を形成し、該シリカ薄膜の表面に含フッ素薄膜を形成することを特徴とする樹脂製複製版の製造方法。
【請求項12】
前記凹凸パターンの表面にシリカ前駆体を含有する溶液を塗布し、水と反応させることにより前記シリカ薄膜を形成することを特徴とする請求項11に記載の樹脂製複製版の製造方法。
【請求項13】
前記シリカ前駆体がポリシラザンである、請求項12に記載の樹脂製複製版の製造方法。
【請求項14】
前記シリカ薄膜の表面に、含フッ素樹脂をフッ素系溶媒中に溶解させた含フッ素薄膜用コーティング液を塗布することにより、前記含フッ素薄膜を形成することを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の樹脂製複製版の製造方法。
【請求項15】
前記含フッ素薄膜用コーティング液が、含フッ素樹脂及び極性基を有する含フッ素化合物を含有することを特徴とする請求項14に記載の樹脂製複製版の製造方法。
【請求項16】
前記凹凸パターン層の凹凸パターン表面とは反対側の面に樹脂製基材層が積層されていることを特徴とする、請求項11乃至15のいずれかに記載の樹脂製複製版の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは樹脂製複製版に関する。特には、レリーフホログラムや回折格子等が記録された微細な凹凸パターンを大量に複製するために用いられる樹脂製複製版、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レリーフホログラムや回折格子は、レーザー光を干渉させて発生する干渉縞が微細凹凸パターンとして記録されている。この微細凹凸パターンは、長さ1mmあたり数百から数千本の微細な凸状として形成されている。
このような微細凹凸パターンを複製する場合、レーザー光の干渉縞が直接記録された原版から複製版を作製し、該複製版の凹凸パターンを樹脂材料に賦型することで微細凹凸パターンを複製することができる。
【0003】
上記複製版として従来は、ガラス基板上に設けたフォトレジスト層の表面にフォトプロセスにより凹凸パターンを形成し、該凹凸パターンの表面に金属メッキや電鋳等により型取りして得られた金属製の複製型、いわゆる電鋳版が用いられていた。この複製型を用いて、基材上に塗布された熱可塑性樹脂を熱圧成形することにより、凹凸パターンを大量に複製することができる。しかしこのような金属製の複製型を使用する複製方法は、版自体が大変高価であり、更に保存場所が嵩張る等、取り扱いが不便であるという問題があった。
【0004】
そこで、金属製の複製型の代わりに樹脂製基材上に電離放射線硬化性樹脂や熱可塑性樹脂等から微細凹凸層を形成した樹脂製複製版を用いて凹凸パターンを複製する方法が提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
【0005】
特許文献1には、シート状支持体上に電子線又は紫外線硬化可能なアクリレート樹脂、および分子中にフッ素原子を含有する重合性単量体との混合物からなる樹脂層を塗布した後、該樹脂層の表面に微細なレリーフパターンを有するホログラム原版を密着させ、電子線または紫外線を照射して該樹脂層を硬化して樹脂製複製版を製造する方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、濡れ調整剤としてシリコーンを含有する電離放射線硬化性樹脂組成物に電離放射線を照射して凹凸パターンを形成した樹脂製複製版が開示されている。
【0007】
樹脂製複製版を用いた場合、電鋳により製造される金属製複製版(電鋳版)と比較すると、(1)製造コストが非常に安い、(2)多品種小ロットの生産に適している、(3)場所を取らずに保管に便利である、(4)樹脂を用いるので、版胴のつなぎ加工がしやすい、(5)非常に薄い樹脂フィルムの表面へのホログラムパターン複製に有利である、という利点がある。
より詳しくは、前記利点(5)については、電鋳版の場合には、電鋳版を貼り付けたシリンダーごと保管する必要があり、シリンダーが嵩張る(円筒周長が数10cm程度、幅が数10cm以上)ことに加えて、シリンダー表面の電鋳版が有する微細なホログラムパターンを傷つけないように十分な緩衝空間を確保しなければならないため、非常に広い保管場所が必要になるのに対して、樹脂製複製版の場合にはシート状の積層体なので、表面のホログラムパターンを保護フィルムで覆いさえすれば、複数の樹脂製複製版を重ね置きすることができ、非常に収納性に優れている。前記利点(4)については、つなぎ加工によりエンドレス版の製造が可能となり、これは電鋳版では実現困難であった。また前記利点(5)については、樹脂製複製版は金属製複製版と比べて柔らかな素材からなるものなので、厚さ数ミクロン程度の極薄の樹脂フィルムに熱エンボス加工したときに該樹脂フィルムを切断させずに複製が可能であるという利点がある。
【0008】
その一方で、樹脂製複製版は、電鋳により製造された金属製複製版に比べて、以下のような問題があった。
【0009】
微細な凹凸パターンの複製を精度良く行う為には、複製版の表面に塗布した樹脂が凹部内に入り込み易く、また複製版から樹脂を剥離する場合には複製版から樹脂が抜け易いことが重要である。
複製用の樹脂が複製版から抜け難い場合には、版離れが悪くなり複製版の凹部内に樹脂の一部が付着して詰まった状態で剥離してしまう、いわゆる『版取られ』現象が発生しやすくなる。版取られ現象が発生すると、複製版の凹部内に樹脂が詰まったまま残留してしまい、凹凸パターンの正確な賦型が出来なくなり、複製版として使用不能となる。このように複製用樹脂が複製版から抜け難い場合、版の寿命が短くなって耐刷性が低下し、高耐刷性が期待できないという問題があった。
従って、樹脂製複製版の複製においては、前世代の複製版表面と賦型後の電離放射線硬化性樹脂との離型性が良好であることが求められる。
【0010】
従来の電鋳により製造された金属製複製版においては、離型性を向上させるために、フッ素表面処理を施すことが一般的であった。しかしながら、従来のフッ素表面処理は500℃程度での焼成工程を必要とするので、樹脂製複製版においては耐熱性の点で、このようなフッ素表面処理は不可能と考えられていた。
【0011】
前記特許文献1においては、フッ素原子を含有する単量体を複製版表面を形成する電離放射線硬化性樹脂に添加し、重合させることにより、樹脂製複製版の耐熱性と離型性の向上を図っているが、電離放射線硬化性樹脂がフッ素原子を含有しているため、基材(複製版の支持体)に対する密着性が低下するという問題を含んでいる。
また、含フッ素化合物と樹脂とは一般的に相溶性が低く、含フッ素化合物を添加すると相分離しやすい。含フッ素化合物と樹脂との組み合わせによっては、含フッ素化合物を微量添加に止めれば分離しないものの、その場合には含フッ素化合物の添加量が制限され、離型性が発現しにくいという大きな欠点がある。
【0012】
特許文献3には、含フッ素環構造を有する含フッ素樹脂からなる薄膜コーティングの被覆対象物に対する密着性向上を目的として、当該含フッ素樹脂に水酸基等の極性基を有する含フッ素化合物を加える技術が開示されている。しかしながら、ここで開示されている被覆対象物は、ガラスなど、極性の大きな基材表面を有する材料に限定されており、極性の小さな基材への積層は困難であった。
【0013】
一方、前記特許文献2においては、離型性の向上、具体的には「版取られ」を防止するために、樹脂製複製版の表面を形成する電離放射線硬化性樹脂中にシリコーンなどの濡れ調整剤を当該複製版の表面の濡れ調整剤の濃度が当該複製版の内部よりも高くなるように添加する技術が開示されている。しかしながら、濡れ調整剤として使用されるシリコーンが非反応性シリコーンであるため、この技術で得られた樹脂製複製版を用いて複製を繰り返す場合には、当該複製版の表面に当初存在していたシリコーンが少しずつ複製物へ離脱・移行してしまい、複製版表面の離型性が次第に低下する、すなわち離型性が持続しないという問題を含んでいる。更に、濡れ調整剤としてのシリコーンは、フッ素化合物ほど離型性を向上させることができないという事情もある。
【0014】
また非反応性シリコーンではなく反応性シリコーンを樹脂製複製版の表面を形成する電離放射線硬化性樹脂中に添加する方法も提案されているが、この方法も、やはりフッ素系化合物を使用する場合に比べて離型効果に劣る。
【0015】
【特許文献1】特開平2−111988号公報
【特許文献2】特開2005−91596号公報
【特許文献3】特開2004−115622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上記従来技術の欠点を解決しようとするものであり、金属製複製版に比べて工業的に有利な利点を持つ樹脂製複製版において、基材との密着性、並びに複製物と複製版との離型性が良好な樹脂製複製版を提供することを目的とする。
特に本発明においては、樹脂製複製版表面の更なる離型性向上と、樹脂製複製版とその支持体である基材との密着性を損なわないという、相反する課題を解決し、更には、従来シリコーンを濡れ調整剤として使用する際に見られた離型剤の離脱を防止することを目的とする。
更には、「版取られ」現象を防止することにより従来、樹脂製複製版の欠点であった耐刷性を向上させることも目的とする。
また本発明は、上記の複製版の製造方法を提供することを別の目的とする。
また本発明は、樹脂で形成された表面の離型処理方法を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
ポリシラザン薄膜を大気中で焼成してポリシラザンをシリカ転化させて得られるシリカ薄膜は、緻密で耐久性に優れた皮膜として、半導体基板等の皮膜として従来使用されてきた。
また近年は、常温環境下でシリカ転化させることのできる技術が提案されている(特開平11−116815号公報、特開2003−347294号公報)。
本発明者は、鋭意研究の結果、微細な凹凸パターンを表面に形成した樹脂製凹凸パターン層の凹凸パターン面に特定ポリシラザン溶液を塗布乾燥させることにより、凹凸パターンの幾何学的表面形状に沿って該凹凸パターン表面に薄いシリカ薄膜を形成し、従来、凹凸パターン層として使用されてきた極性の低い樹脂層表面に、従来のガラス基板表面と同様の極性を持たせうることに着目して本発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち本発明により提供される樹脂製複製版は、基材上に樹脂製で且つ複製の親となる凹凸パターンが形成された表面を有する凹凸パターン層の凹凸パターン面に、シリカ薄膜及び含フッ素薄膜がこの順序で積層されていることを特徴とする樹脂製複製版である。
【0019】
本発明においては、前記シリカ薄膜がアモルファス状シリカ薄膜であることが好ましい。
前記アモルファス状シリカ薄膜は、前記凹凸パターン表面にシリカ前駆体を含有する溶液を塗布し、水と反応させることにより形成することができる。
前記シリカ前駆体としては、ポリシラザンが好ましく用いられる。
【0020】
本発明においては、前記含フッ素薄膜が含フッ素樹脂で形成されていることが好ましい。
前記含フッ素樹脂は、含フッ素環を有する含フッ素高分子を含有することが好ましい。
また、前記含フッ素樹脂は、極性基を有する含フッ素化合物を含有していることが好ましい。
【0021】
本発明においては、前記含フッ素薄膜が、前記シリカ薄膜の表面に、前記含フッ素樹脂をフッ素系溶媒中に溶解させた含フッ素薄膜用コーティング液を塗布することにより形成されたものであることが好ましい。
前記含フッ素薄膜用コーティング液は、含フッ素樹脂及び極性基を有する含フッ素化合物を含有するものであることが好ましい。
【0022】
本発明においては、前記凹凸パターン層は、光硬化性及び/又は熱硬化性樹脂組成物の硬化物で形成されていることが好ましい。
【0023】
また、本発明により提供される樹脂製複製版の製造方法は、複製の親となる凹凸パターンが形成された凹凸パターン層の凹凸パターン面にシリカ薄膜を形成し、該シリカ薄膜の表面に含フッ素薄膜を形成することを特徴とする樹脂製複製版の製造方法である。
【0024】
本発明の製造方法においては、前記凹凸パターンの表面にシリカ前駆体、好ましくはシリカ前駆体としてポリシラザンを含有する溶液を塗布し、水と反応させることにより前記シリカ薄膜を形成することが好ましい。
【0025】
前記シリカ薄膜の表面に、含フッ素樹脂をフッ素系溶媒中に溶解させた含フッ素薄膜用コーティング液を塗布することにより、前記含フッ素薄膜を形成することが好ましい。
前記含フッ素薄膜用コーティング液としては、含フッ素樹脂及び極性基を有する含フッ素化合物を含有するものが好ましく用いられる。
【0026】
本発明の製造方法においては、前記凹凸パターン層の凹凸パターン表面とは反対側の面に樹脂製基材層が積層されているものを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、樹脂製複製版において離型性と基板との密着性を向上させ、従来樹脂製複製版の課題であった耐刷性の向上を図ることができる。
また本発明によれば、凹凸パターンを形成する樹脂層自体を含フッ素樹脂等の離型性の高い樹脂にする必要がないので、微細な凹凸パターンを正確に形成しうる賦型性と、「版取られ」を防止する離型性とを兼ね備えた樹脂材料を選択することが困難であった従来技術の問題を解消することができる。すなわち、本発明によれば、凹凸パターン層を形成する樹脂材料の選択の幅が広がる、という利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明により提供される樹脂製複製版は、基材上に樹脂製で且つ複製の親となる凹凸パターンが形成された表面を有する凹凸パターン層の凹凸パターン面に、シリカ薄膜及び含フッ素薄膜がこの順序で積層されていることを特徴としている。
図1は、本発明に係る樹脂製複製版の一態様を示す模式図である。図1に示す樹脂製複製版は、基材2上に樹脂製で且つ複製の親となる凹凸パターンが形成された表面を有する凹凸パターン層3が積層されて支持されている。すなわち基材2は、樹脂製の凹凸パターン層3の厚みが非常に薄い場合に、凹凸パターン層3の自立性を補助する支持体である。そして、当該凹凸パターン層3の凹凸パターン面3aに、シリカ薄膜4及び含フッ素薄膜5がこの順序で積層されている。
以下、図1に示した各層について順に説明する。
【0029】
(基材)
樹脂製複製版1の基材2としては、通常、プラスチックシート等の樹脂素材を用いる。とりわけ、後述するロールツーロール法により効率的に大量生産できる観点から、円筒状の版胴に巻きつけて使用することができるプラスチックシートが好適である。ただし、凹凸パターン層が樹脂で形成されたものである限り、その支持体である基材は、樹脂素材からなるものでなくてもよい。
プラスチックシートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート‐イソフタレート共重合体、テレフタル酸‐シクロヘキサンジメタノール‐エチレングリコール共重合体及びポリエチレンテレフタレート/ポリエチレンナフタレートの共押し出しフィルムなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66及びナイロン610などのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート及びポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、イミド系樹脂、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエ−テル、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリアラミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルファイト及びポリカーボネートなどのエンジニアリングプラスチック、ABS樹脂などのスチレン系樹脂、セロファン、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート及びニトロセルロースなどのセルロース系フィルムなどがある。
プラスチックシートは、前記樹脂を主成分とする共重合樹脂、又は混合体(ポリマーアロイを含む)、若しくは複数層からなる積層体であってもよい。プラスチックシートは、延伸シートでも未延伸シートでもよいが、強度が向上するという観点からは一軸方向又は二軸方向に延伸したシートが好ましい。
基材2は、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系のフィルムが、耐熱性、寸法安定性、耐電離放射線性を有することから好適に使用され、とりわけポリエチレンテレフタレートが最適である。また基材には、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤及び帯電防止剤等の添加剤を加えてもよい。基材2の厚さは、通常25〜2000μm程度のものが使用でき、50〜200μmが好適である。
基材2の表面には、凹凸パターン層を形成するのに先だって、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理などの易接着処理を行ってもよい。
(凹凸パターン層)
【0030】
凹凸パターン層3の表面に賦形された微細な凹凸パターン(レリーフ)は、さまざまな凹凸パターンを複製するための親型として機能するものであり、特にホログラムおよび回折格子の複製に好適に用いられる。
ホログラムの画像としては実物を撮影した画像以外に、記号、文字、数字、イラスト等が利用できる。ホログラム画像自体は、実物の撮影以外に、ホログラム回折格子を計算で求めたり、デジタルカメラで取り込んだデジタル画像、コンピュータグラフィックスから得られる2次元あるいは3次元の画像データから、ホログラフィックステレオグラムなどの適宜な手段により、作成することもできる。回折格子は、その輪郭により文字等の画像を表現できる。
【0031】
レリーフホログラムは、物体光と参照光との光の干渉による干渉縞の光の強度分布が凹凸模様で記録されたホログラムや回折格子が適用できる。該レリーフホログラムとしては、フレネルホログラム、フラウンホーファーホログラム、レンズレスフーリエ変換ホログラム、イメージホログラム等のレーザー再生ホログラム、およびレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらにそれらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータホログラム、ホログラムディスプレイ、マルチプレックスホログラム、ホログラフィックステレオグラム、ホログラフィック回折格子などがある。
【0032】
回折格子は、ホログラム記録手段を用いたホログラフィック回折格子、その他に精密旋盤や電子線描画装置等を用いて、機械的、描画的に回折格子を作成することにより、計算に基づいて得られる回折格子などが挙げられる。回折格子の場合の具体的形状としては、例えば、鋸歯状溝のブレーズドホログラフィックグレーティング(BHG)、正弦波状溝のホログラフィックグレーティング(HG)、矩形状溝のラミナーグレーティング等が挙げられる。
【0033】
これらのホログラム、回折格子などは単一に記録しても、あるいは多重に記録しても、組合わせて記録しても何れでもよい。また回折格子は、凸条の方向および/または凸条の間隔および/または凹凸の形状および/または凹凸の高さが、異なる複数の領域を有する集合体であってもよい。回折方向の異なる複数の領域を、規則的またはランダムに組合わせると、表面がキラキラと輝く視覚効果、所謂アイキャッチ効果が得られる。
【0034】
(凹凸パターン層の形成方法)
本発明における凹凸パターン層3は、樹脂からなる凹凸パターン形成層の表面に特定形状の微細凹凸パターンを賦型してレリーフ表面を形成したものである。したがって、表面に微細な凹凸パターンを形成することが可能な樹脂が使用される。
凹凸パターン形成層の材料となる樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂組成物等の光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、及び光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を両方とも含有する樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物等が挙げられるが、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、光及び熱硬化性樹脂組成物等の硬化反応性樹脂組成物が好ましく、とりわけ電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましい。
凹凸パターン層3は、好ましくは電離放射線硬化性樹脂組成物を電離放射線で硬化させて構成する。電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線で重合(硬化ともいう)反応する少なくとも1つの官能基を有する硬化性成分を必須成分として含有する。電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性を有する限り、比較的低分子量のモノマーやオリゴマー、及び高分子量のバインダーポリマーの中から1種又は2種以上を任意に選び用いることができる。
該電離放射線硬化性成分としては、ラジカル重合性官能基を有する化合物が適用でき、1官能モノマー、2官能以上の多官能モノマー、官能オリゴマー、官能ポリマーなどがある。ラジカル重合性官能基としては、例えば、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基又はアリル基等のエチレン性不飽和結合を有する官能基や、エポキシ基又はグリシジル基等のオキシラン構造を有する基がある。
【0035】
前記1官能モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸‐2‐エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、メチルメタクリレート、2‐エチルヘキシルアクリレート、2‐ヒドロキシエチルアクリレート、2‐ヒドロキシプロピルアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート(DNPA)、2‐ヒドロキシ‐3‐フェノキシプロピルアクリレート(HPPA)、3‐エチル‐3‐ヒドロキシメチルオキセタン、などの(メタ)アクリル酸又はそのアルキル若しくはアリールエステル、スチレン、メチルスチレン、スチレンアクリロニトリル、n‐ビニルピロリドンなどが適用できる。
また、本明細書においては、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸もしくはメタクリル酸を意味する。(メタ)アクリレートとは、アクリレートもしくはメタクリレートを意味し、同様の表記はこれに準ずる。
【0036】
前記2官能モノマーとしては、例えば、1,6‐ヘキサンジオールアクリレート(HDDA)、ヘキサメチレンジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート(DEGDA)、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ポリエチレングリコール400ジアクリレート(PEG400DA)、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート(HPNDA)、ビスフェノールAEO変成ジアクリレート、1,4‐ビス[(3‐エチル‐3‐オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼンなどが適用できる。
【0037】
2官能以上の多官能モノマーとしては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の2官能以上の化合物に、(メタ)アクリル酸又はその誘導体を2分子以上反応させて得られる2官能以上の(メタ)アクリロイルモノマーなどが適用でき、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(PEHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレートなどが例示できる。
【0038】
前記重合性オリゴマー(プレポリマーとも呼ばれる)としては、重量平均分子量が約300〜5000程度で、分子内に(メタ)アクリロイル基、又はアリル基などのラジカル重合性二重結合を有するポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系が適用でき、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエステル‐ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、アミノ変性トリアクリレート、脂肪酸アクリレートなどが例示できる。
【0039】
前記重合性ポリマーとしては、重量平均分子量が約1000〜30万程度で、(メタ)アクリロイル基又はアリル基などのラジカル重合性二重結合を有するウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル‐ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートが適用できる。
凹凸パターン形成層の表面にロールツーロール方式で連続エンボス加工を行って微細凹凸パターンを賦形する場合には、凹凸パターン形成層は硬化させる前に半固形又は固形状態である必要がある。そのような半固形又は固形状態が必要とされる場合には、凹凸パターン形成層を形成するための電離放射線硬化性樹脂組成物には、重合性ポリマーや、非重合反応性の熱可塑性ポリマー等のポリマーを配合することが好ましい。
【0040】
電離放射線硬化性成分は、電離放射線硬化性樹脂組成物の固形分中、5質量%以上、好ましくは10〜90質量%、更に好ましくは20〜80質量%の範囲で含有させる。
また、電離放射線硬化性樹脂組成物には、反応性希釈剤と呼ばれるモノマーを含ませても良い。反応性希釈剤とは、(メタ)アクリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、またはエポキシ基などの重合性官能基を1分子中に1つだけを有するモノマー、すなわち上述した1官能モノマーである。反応性希釈剤は低分子量ゆえ、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度を下げる作用があるが、トルエンなどの有機溶剤とは異なり、硬化反応後にはマトリックスの一部となる。通常、電離放射線硬化性樹脂組成物は粘度が高く、有機溶剤で粘度を下げるように調整しないと塗布することができない。しかし、該反応性希釈剤を電離放射線硬化性樹脂組成物へ含有させると粘度が下がり、溶剤を用いる必要がなくなり、ノンソルベント(無溶剤)で使用することができる。また、比較的分子量が小さいオリゴマーも、反応性希釈剤として用いられる。
【0041】
さらに、モノマーやオリゴマーは重合反応の速度を向上させ、また、オリゴマーやポリマーは、硬化後の凹凸パターン層の架橋密度、凝集力などを調整することができる。このために、モノマー、および/またはオリゴマー、および/またはポリマーを適宜組み合わせ且つ配合比を変えることによって、電離放射線硬化性樹脂組成物の性能を用途や目的に合わせて調節できる。
【0042】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、光ラジカル重合開始剤、架橋剤、重合禁止剤、可塑剤、滑剤、老化防止剤、染料や顔料などの着色剤、増量やブロッキング防止などのための体質顔料、充填剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤等の添加剤を含有していてもよく、さらには、熱硬化性樹脂や非重合反応性の熱可塑性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂以外のバインダー成分を含有していてもよい。
電離放射線硬化性樹脂組成物に適正な熱硬化触媒を配合する場合には、当該樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層に賦形処理と電離放射線照射を行った後、さらに熱硬化処理を行うことによって完全に硬化させることも可能である。
【0043】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電子線により十分に硬化可能であるが、紫外線照射で硬化させる場合には、光重合開始剤、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α‐アミノキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイド、チオキサントン類などの光重合開始剤と、必要に応じて光増感剤、例えば、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ‐n‐ブチルホスフィンなどを添加する。
【0044】
電離放射線硬化性樹脂組成物を用いて凹凸パターン形成層を形成する場合、凹凸パターンを付与した凹凸パターン形成層に、電離放射線が照射されて硬化処理が行われる。電離放射線は、電磁波が有する量子エネルギーで区分される場合もあるが、本明細書において電離放射線とは、すべての紫外線(UV‐A、UV‐B、UV‐C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線を包含するものと定義する。従って、電離放射線としては、紫外線(UV)、可視光線、ガンマー線、X線、または電子線などを含み、そのなかでも紫外線、電子線が好適である。
【0045】
電子線照射は、電子線加速器により発生させた電子線を照射する。電子線照射装置としては、たとえば、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器などを用いて、エクレトロンカーテン方式、ビームスキャニング方式などで、電子線を照射する。好ましくは、線状のフィラメントからカーテン状に均一な電子線を照射できる装置「エレクトロカーテン」(商品名)である。電子線の照射量は、通常100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを持つ電子を、0.5〜20Mrad程度の照射量で照射する。照射量が0.5Mrad未満の場合、未反応モノマーが残留して硬化が不十分となる恐れがあり、また、照射量が20Mradを超えると、架橋密度が高くなり硬化したバインダー、若しくは基材が、損傷を受ける恐れがある。また、硬化の際の雰囲気は、酸素濃度500ppm以下で行われ、通常は200ppm程度で行うのが好ましい。
【0046】
紫外線硬化に用いる紫外線(UV)ランプとしては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプが適用でき、紫外線の波長は200〜400nm程度で、接着剤組成物に応じて波長を選択すれば良い。その照射量は、組成物の材質や量と、UVランプの出力と、加工速度に応じて照射すれば良い。
【0047】
凹凸パターン層を形成する方法としては、先ず、レリーフホログラムや回折格子等の微細凹凸パターンを有する原版を作成する。大元の原版は作製困難ゆえ、限られた数のマスタ版、すなわち原版から直接複製された複製物(第一次中間版材)を作成するときのみ使用し、大切に保管するのが一般的である。
そして、該マスタ版(第1次中間版材)やマスタ版からさらに複製を重ねて得られた複製物(第2次以降の中間版材)を複製版用原版として用い、樹脂製凹凸パターン形成層の表面に微細凹凸パターンを形成することにより、本発明の樹脂製複製版を製造する。
【0048】
電離放射線硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層に複製版用原版の凹凸パターンを形成する方法としては、Photo Polymerization法(略して2P法と言うこともある)やロールツーロール法など公知の方法を挙げることができる。
2P法による場合は、図2にその基本原理を示すように、複製版用原版6に、液状の電離放射線硬化性樹脂組成物7を盛るように塗布して凹凸パターン形成層を形成し、この上から基材8を押圧して基材8と電離放射線硬化性樹脂組成物7とを密着させ電離放射線を照射して電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化又は半硬化させ、凹凸パターンを転写された硬化又は半硬化した電離放射線硬化樹脂組成物7’を基材8とともに複製版用原版から剥離し、樹脂製複製版9を得る。
【0049】
上記基材と凹凸パターン形成層とが一体化してなる中間製造体は、凹凸パターン形成層が完全に硬化していない状態でも、見かけ上は指触乾燥状態に形成されていて剥離可能な状態であれば、このような仮硬化状態で複製版用原版6から剥離して、剥離後にさらに紫外線あるいは電子線を照射することによって、完全に硬化させることができる。その場合、十分に凹凸パターン形成層を硬化させて、複製版の硬度、耐熱性、耐溶剤性などを一層向上させることができる。
【0050】
樹脂製複製版9をロールツーロール法により製造する場合には、長く連続する基材上に、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる固形状又は半固形状の凹凸パターン形成層を形成した長尺状ホログラム形成用フィルムと、ロール形状の側面に複製版用原版を設けたエンボスローラーを準備し、長尺状ホログラム形成用フィルムをエンボスローラーに供給しながら連続的にエンボス加工を行う。
【0051】
ホログラム形成用フィルムの凹凸パターン形成層は、基材上に電離放射線硬化性樹脂組成物を、例えばスピンコート、ナイフコート、ロールコート、バーコート等既知の塗布方法により塗工し、必要に応じて塗膜を乾燥することにより形成できる。凹凸パターン層を基材上に部分的に形成しようとする場合には、スクリーン印刷、グラビア印刷等の一般的な印刷技術を用いるか、或いは転写方法を用いることができる。
基材上の凹凸パターン形成層は、例えば凹凸パターンとしてレリーフホログラムを複製する場合には、通常0.1〜50μm、望ましくは0.5〜20μmの膜厚で形成される。なお、この膜厚は、複製しようとする凹凸パターンの使用目的によって適宜、選択することができる。
【0052】
図3は、ホログラム複製装置の一例を示す図、図4は、図3の装置の転写装置付近を示す拡大図である。ホログラム複製装置10には、ベッド13に固定された一対の本体フレーム12に供給装置20、転写装置30、照射装置50、巻取装置60が順次配設されている。
【0053】
供給装置20は、本体フレーム12に固定されたコロ23に回転自在に支持されたシャフト22を備え、このシャフト22には、樹脂製複製版となるホログラム形成フィルム1の巻取ロール21が装着され、その先端は、バウダーブレーキ(不図示)に連結されている。
【0054】
転写装置30は、本体フレーム12の中央部に固定された軸受に軸32が回転自在に支持されたエンボスローラー31と、一対のアーム42に回転自在に支持された押付けローラー40と、加圧機構38とを備えている。加圧機構38は、一対のアーム42とエアシリンダ45からなり、エアシリンダ45のピストンロッド46の先端には、アタッチメント47が装着され、アタッチメント47は、アーム42の中央下部にピン48を介して回転自在に支持され、エアシリンダ45は、本体フレーム12に固定されたピン49に回転自在に支持されている。一対のアーム42は、ロッド44によって固定連結され、本体フレーム12に固定されたピン43に回転自在に支持されている。
【0055】
従って、エアシリンダ45のピストンロッド46の作動によりアーム42がピン43を支点として回転し、押付けローラー40がエンボスローラー31に押付けられる。押付けローラー40には、加熱装置(不図示)が装備され、押付けローラー40の表面を加熱するようになっている。
【0056】
エンボスローラー31は、図4に示すように、その周表面に複製版用原版34が設けられたものであり、通常は、シリンダーの周表面に複製版用原版を貼りつけたものが使用される。複製版用原版を2枚以上並べて貼り付けて多面取りを行なってもよい。エンボスローラー31の軸32の駆動側先端には、不図示の駆動手段に連結されている。エンボスローラー31は、冷却装置(不図示)装備され、ローラー表面を冷却するようになっている。
【0057】
照射装置50は、距離を隔てて本体フレーム12に回転自在に支持された巻付けローラー51と対向する位置に、支持部材(不図示)を介して、本体フレーム12に固定され、巻付けローラー51に巻付けられたホログラム形成フィルム1に紫外線または電子線を照射するようになっている。
【0058】
巻取装置60は、本体フレーム12に固定されたコロ63に回転自在に支持されたシャフト62と、不図示のパウダークラッチからなり、このシャフト62には、ホログラム形成フィルム1が巻取けられるようになっている。
【0059】
また、エンボスローラー31と供給装置20との間には、本体フレーム12に回転自在に支持されたガイドローラー71、72が設けられ、エンボスローラー31と巻付けローラー51との間であって、エンボスローラー31の近傍には、ガイドローラー73が設けられている。
【0060】
次に、上述したホログラム複製装置10の動作を説明する。まず、供給装置20より繰り出されたホログラム形成用フィルム1は、ガイドローラー71、72を介してエンボスローラー31に案内される。このとき、バウダーブレーキによりホログラム形成用フィルム1’は、適正なテンションに調整されている。
【0061】
次いで、エアシリンダ45の作動により、押付けローラー40によって、フィルム1がエンボスローラー31に一定圧で押付けられる。押付けローラー40の表面は、加熱されているため、凹凸パターン形成層3’が軟化し、図4に示すように、複製版用原版34の凹凸が凹凸パターン形成層3’に転写される。凹凸パターン形成層3’が複製版用原版34に密着した状態でエンボスローラー31が駆動モータにより回転し、ガイドローラー73の近傍で複製版用原版34より凹凸の形成された凹凸パターン形成層3’が剥離される。
【0062】
このとき、エンボスローラー31の表面は、冷却されているため軟化状態にある凹凸パターン形成層3’はある程度固まり、複製版用原版34より剥離されても転写時の凹凸形状をくずすことなく、次の巻付けローラー51に案内される。巻付けローラー51に巻付けられたフィルム1に、照射装置50より紫外線または電子線が照射され、凹凸パターン形成層3’が硬化する。ここで、巻付けローラー51は、冷却されているため、紫外線または電子線の照射によりフィルム1が発熱して熱収縮するのを防止することができる。
【0063】
この後、ホログラム形成用フィルム1’は、駆動モータ14に連結されたシャフト62に巻取られる。このとき、パウダークラッチによりフィルム1は、適正なテンションに調整されているため、しわ等が発生せずに巻取られる。
【0064】
(シリカ薄膜)
本発明におけるシリカ薄膜は、微細な凹凸パターンが形成された樹脂製の凹凸パターン層と含フッ素薄膜との密着性を高めるアンカー層として機能するものである。
シリカ薄膜は、凹凸パターン層の凹凸パターン面にシリカ前駆体を含有する溶液を塗布して塗膜を形成した後で塗膜中の前駆体を化学反応によりシリカに変化させる種々の湿式製膜法、及び、シリカ又はその前駆体をガス化させて凹凸パターン層の凹凸パターン面に堆積させ、必要に応じて堆積物を化学変化させる物理蒸着法(PVD法)や化学蒸着法(CVD法)等の種々の気相製膜法を利用して形成することができる。
特に、シリカ前駆体溶液を用いる湿式製膜法によれば、凹凸パターン面に対する密着性の高い、均一なアモルファス状のシリカ薄膜を形成することができる。
【0065】
シリカ前駆体としては、ポリシラザンが非常に好ましい。凹凸パターン層の凹凸パターン面にポリシラザン溶液を塗布乾燥させることにより、凹凸パターンの幾何学的表面形状に沿って該凹凸パターン表面に薄いシリカ薄膜を形成することができる。その結果、従来、凹凸パターン層として使用されてきた極性の低い樹脂層表面に、従来のガラス基板表面と同様の極性を持たせることが可能となる。
このようなポリシラザン溶液を用いる湿式製膜法によれば、凹凸パターン層それ自体を含フッ素樹脂等の離型性の高い樹脂で形成する必要がないので、凹凸パターン層を形成する樹脂材料の選択の幅が広がる、という利点がある。
すなわち、本発明によれば、微細な凹凸パターンを正確に形成しうる賦型性と、「版取られ」を防止する離型性とを兼ね備えた樹脂材料を選択することが困難であった従来技術の問題を解消しうるという非常に優れた効果を奏することができる。
【0066】
ポリシラザン溶液を用いる湿式製膜法によりシリカ薄膜を形成する方法としては、特開平11−116815号公報、特開2003−347294号公報に記載されているような方法を適用できる。
より具体的には、ポリシラザン、適当な有機溶剤及び触媒からなるポリシラザン組成物を、スプレー塗布、ロールコーター、フローコートなどの公知塗布方法で凹凸パターン形状に沿って塗布し、大気中に放置させることにより、ポリシラザンを常温環境下でシリカ転化させる。
この方法によれば、シリカ前駆体の塗膜を数百度以上の高温環境で焼成しなくても十分に緻密なシリカ薄膜を凹凸パターン表面上に形成することができる。また極力高湿度環境(例えば室温27度において相対湿度90%など)で行うことがポリシラザンと水との反応を加速する観点から好ましい。
【0067】
ポリシラザンとしては種々のものが知られているが、得られる薄膜の緻密性の点からは、「パーヒドロポリシラザン(Perhydropolysilazane)」(例えばクラリアント社製の商品名「アクアミカ(AQUAMICA)」)と、大気中の水分とを反応させて下記式の如くシリカ転化させてシリカ薄膜を得ることが好ましい。
【0068】
【化1】


【0069】
ポリシラザンを室温でシリカ転化させるための触媒としては、N−ヘテロ環状化合物が好ましく、具体的には、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ピラゾリン、ピロリン、ピラジン、インドール、イミダゾール、トリアジン等の他、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、7−アザビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン等の複素架橋環系化合物や、1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン、4,4’−トリメチレンビス(1−メチルピペリジン)、2,2−ジピリジルアミン等の環集合複素環系化合物を挙げることができる。これら触媒は、ポリシラザンに対して0.1〜10wt%添加することが好ましい。
【0070】
パーヒドロポリシラザンを溶解させる有機溶剤としては、ジブチルエーテル91.0〜98.8%とアニソール0.2〜9.0%とからなる有機溶剤などが好適である。
【0071】
シリカは極性分子なので、シリカ薄膜の表面に含フッ素薄膜を形成する場合には、樹脂製凹凸パターン層の表面に含フッ素薄膜を直接形成する場合と比べて、下地に対する含フッ素薄膜の密着性が向上する。
また、含フッ素薄膜を構成するフッ素化合物がシラノール基(Si−OH)と共有結合や水素結合等の化学的または物理化学的結合を形成できる官能基を有している場合には、シリカ薄膜が有するシラノール基との相互作用によって、それらの結合が含フッ素薄膜とシリカ薄膜の間に形成され、より強固な密着性が得られる。
【0072】
シリカ薄膜の極性を示す目安として親水性パラメータである対水接触角(水に対する接触角)を利用できる。本発明において、シリカ薄膜形成前の凹凸パターン層の凹凸表面の対水接触角は、凹凸パターン層を形成する樹脂組成物に含有される成分及びその含有量にもよるが概ね60〜90度である。そしてシリカ薄膜形成後の凹凸表面の対水接触角は、形成前の測定値よりも低い値になる。上記測定方法は、具体的には、被測定表面に純水を滴下し、滴下してから1分後の接触角を測定するものである。測定機としては、協和界面科学(株)製の接触角計CA−Dを使用できる。
【0073】
また凹凸パターン面上に形成するシリカ薄膜の厚さは、用途に合わせて調整することが可能であるが、本発明の用途においては、0.05〜0.2μmとすることが好ましく、0.05〜0.1μmとすることがさらに好ましい。シリカ薄膜の厚さが0.05μm未満では含フッ素薄膜との十分な密着性が得られない場合がある。一方、シリカ薄膜の厚さが0.2μmを超えると、凹凸パターン面の形状がシリカ薄膜上に正確に浮き上がらない場合がある。
【0074】
(含フッ素薄膜)
本発明における含フッ素薄膜とはフッ素化合物を含有する薄膜であり、含フッ素化合物の作用によって、凹凸パターン層表面に優れた離型性が付与される。含フッ素化合物としては、薄膜形成能力に優れる点から含フッ素樹脂が好ましく用いられる。ここで含フッ素樹脂とは、非重合反応性を有する又は有しない含フッ素ポリマー、又は、最終的に高分子化できる重合反応性又は架橋反応性を有する含フッ素モノマー又は含フッ素オリゴマー(比較的低分子量のポリマー)のことを意味する。
好適には、含フッ素薄膜は、特開2004−115622号に開示されているような、フッ素を含む環構造(本発明においては含フッ素環構造と称する)を有する含フッ素ポリマーと、極性基を備え且つフッ素系溶剤に可溶な含フッ素化合物とからなる組成物をフッ素系溶剤に溶解させた溶液をシリカ薄膜上に塗布・乾燥することにより得られる。
【0075】
含フッ素環構造を有する含フッ素ポリマーとしては、繰り返し単位(a)−CF−CF−と、下記一般式で表される繰り返し単位(b)とを含むポリマーを用いることができる。
【0076】
【化2】


【0077】
(式中、X1及びX2はそれぞれ独立に−F又は−CFであり、Yは−F、−ORfであり、Rfは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である。)
【0078】
含フッ素環構造を有する含フッ素ポリマーの分子量は、5,000以上1,000,000以下が好ましい。分子量が5,000未満であると、被膜形成能力が劣る場合があるため好ましくない。一方、分子量が1,000,000を超えると、フッ素系溶剤への溶解性が低下し、塗布が困難となる場合がある。
【0079】
極性基を備え、且つフッ素系溶剤に可溶な含フッ素化合物としては、フッ素系モノマー、又は、オリゴマーであってもよいフッ素系ポリマーのいずれであってもよい。
具体的には、炭素数4〜21のポリフルオロアルキル基又はポリフルオロエーテル基を含む化合物を用いることができる。また、極性基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シラノール基、リン酸基、アルコキシルシリル基などを用いることができる。本発明において、極性基とは、分子に極性を付与する官能基を意味する。この極性基によって、シリカ薄膜に対する密着性が向上する。
【0080】
上記含フッ素化合物としては、一般式C2n+1RX(但し、4未満では≦n≦21、Rはアルキレン基、Xは極性基を示す。)で表される化合物が挙げられる。このうち、C13COOH、C15COOH、C17COOH、C19COOH、C1021COOH、C1123COOH、C1225COOH、C1327COOH、C1429COOH、C1531COOH、C1633COOH、C1735COOH、C1837COOH、C1939COOH、C2041COOH、C2143COOHなどのパーフルオロアルキルエチルカルボン酸類、C13Si(OCH、C15Si(OCH、C17Si(OCH、C19Si(OCH、C1021Si(OCH、C1123Si(OCH、C1225Si(OCH、C1327Si(OCH、C1429Si(OCH、C1531Si(OCH、C1633Si(OCH、C1735Si(OCH、C1837Si(OCH、C1939Si(OCH、C2041Si(OCH、C2143Si(OCHなどのパーフルオロアルキルエチルトリメトキシシラン類が好ましい。
【0081】
また、上記含フッ素化合物としては、炭素数4〜21のポリフルオロアルキル基又はポリフルオロエーテル基を有する不飽和化合物と、極性基を備えた不飽和化合物との共重合物を用いることもできる。共重合比は、極性基を備えた不飽和化合物が、共重合物全体に対して50重量%以下であることが好ましい。50重量%を超えると、フッ素系溶剤に対する共重合物の溶解性が低下するので好ましくない。特に、10重量%以下が好ましい。
【0082】
上記含フッ素化合物である共重合物としては、一般式C2m+1SON(CH)COCOCH=CH(但し、4≦m≦21)と、HOCOCOCH=CHとの共重合物を挙げることができる。また、(CF12OCOC(CH)=CHと、(OH)SiCOCOCH=CHとの共重合物なども挙げることができる。
【0083】
上記含フッ素化合物である共重合物は、対応する単量体を適当な有機溶媒に溶解させ、重合開始剤(使用する有機溶媒に可溶な過酸化物、アゾ化合物など)、又は電離性放射線の作用などにより、溶液重合することによって得ることができる。溶液重合に好適な溶剤としては、トルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコール、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン、テトラクロロジフルオロエタン、メチルクロロホルムなどを用いることができる。
【0084】
上記した、極性基を備え、かつフッ素系溶剤に可溶な含フッ素化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0085】
含フッ素環構造を有する含フッ素ポリマー及び含フッ素化合物を溶解させるフッ素系溶剤としては、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナンなどのパーフルオロカーボン類、一般式CF[(OCF(CF)CF(OCF]OCF(但し、0≦p≦14、0≦q≦14)で表されるパーフルオロポリエーテル類、一般式HCF[OCF(CF)CF(OCF]OCFH(但し、0≦r≦14、0≦s≦14)で表されるハイドロフルオロポリエーテル類、メチルパーフルオロイソブチルエーテル、メチルパーフルオロブチルエーテルなどのハイドロフルオロエーテル類、2,3−ジハイドロパーフルオロペンタンなどのハイドロフルオロカーボン類、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンなどのハイドロクロロフルオロカーボン類などを用いることができる。上記フッ素系溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
含フッ素環構造を有する含フッ素ポリマーと、含フッ素化合物とをそれぞれ異なったフッ素系溶剤に溶解させて、含フッ素ポリマー溶液及び含フッ素化合物溶液をそれぞれ調製した後、両者を混合することにより、含フッ素ポリマーと含フッ素化合物とを含んだ溶液(含フッ素薄膜用コーティング液)を調製してもよい。
【0087】
含フッ素薄膜用コーティング液の塗布方法としては、シリカ薄膜形成の場合と同様の塗布・乾燥工程を使用できる。
【0088】
含フッ素樹脂が含フッ素環構造を有する場合には、フッ素系溶剤を用いることで十分に溶解し、薄膜形成に適したコーティング液を調製できる。本発明においては、含フッ素薄膜用コーティング液の固形分濃度を0.1重量%程度以下にすることによって、サブミクロンオーダーのレリーフパターンの凹凸に沿って厚さ10〜20nmの厚みの非常に薄い含フッ素薄膜が形成可能となり、ホログラムパターンの凹凸が埋もれずにフッ素処理することができる。
【0089】
またシリカ薄膜上に形成する含フッ素薄膜の厚さは、用途に合わせて調整することが可能であるが、本発明用途においては、10〜20nmとすることが好ましい。含フッ素薄膜の厚さが10nm未満では、シリカ薄膜との十分な密着性や十分な離型性が得られない場合がある。一方、含フッ素薄膜の厚さが20nmよりも厚くなっても密着性や離型性はあまり向上しないので、凹凸形状に沿って正確に塗工することを考慮すると20nmを超える厚みは望ましくない。
【0090】
なお本発明における含フッ素薄膜は、上記含フッ素樹脂及び含フッ素化合物以外の成分、例えば非フッ素系樹脂などを含有していてもよい。
【0091】
(凹凸パターンの複製方法)
本発明によれば、以上のようにして、基材との密着性、並びに複製物と複製版との離型性が良好な樹脂製複製版が得られる。
本発明の樹脂製複製版は、レリーフホログラムや回折格子等の微細凹凸パターンを、2P法やロールツーロール法を利用して樹脂製表面に複製するために好適に用いられる。
特にロールツーロール法による高速エンボス加工を行う場合でも優れた離型性が長期間持続するので、複製物の材料樹脂の版取られを起こさずに連続大量生産が可能である。
また、本発明の樹脂製複製版は、金属製複製版と比べて弾性がある。そのため、基材上に樹脂からなる非常に薄い凹凸パターン形成層、例えば厚さが2μm以下の凹凸パターン形成層を設けた複製物形成用シートに、本発明の樹脂製複製版を用いてエンボス加工を行って微細凹凸パターンを賦形する場合には、金属製複製版を用いる場合と比べて、凹凸パターン形成層の切断が発生し難いという利点がある。
【0092】
本発明の樹脂製複製版を使用してロールツーロール法によりレリーフホログラムを複製する場合には、長く連続する基材上に、樹脂組成物からなる固形状又は半固形状の凹凸パターン形成層を形成した長尺状複製物形成用シートと、ロール形状の側面に本発明の樹脂製複製版を貼り付けたエンボスローラーを準備し、長尺状複製物形成用シートをエンボスローラーに供給しながら連続的にエンボス加工を行う。
【0093】
複製物形成用シートは、エンボス加工可能な樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を基材上に設けたものである。複製物の凹凸パターン形成層の材料としては、電離放射線硬化性樹脂組成物等の光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、及び光硬化性樹脂と熱硬化性樹脂を両方とも含有する樹脂組成物、熱可塑性樹脂組成物等が挙げられるが、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、光及び熱硬化性樹脂組成物等の硬化反応性樹脂組成物が好ましく、とりわけ電離放射線硬化性樹脂組成物が好ましい。
【0094】
複製物形成用シートの凹凸パターン形成層の材料は、バインダーポリマーに、必要に応じて光硬化性や熱硬化性等の硬化反応を引き起こし、促進し又は調節する成分及び他の成分を配合することにより調製される。
【0095】
バインダーポリマーは、それ自体が硬化性を有しているもの及び有していないもののいずれを用いてもよく、また、2種類以上のバインダーポリマーを組み合わせて用いても良い。バインダーポリマーが硬化性を有しない場合には、硬化性を有するモノマー又はオリゴマーを1種以上使用することで、樹脂組成物に硬化性を付与することができる。
【0096】
バインダーポリマーとしては、基材フィルム等の支持体上に塗布した時に微細凹凸パターンを賦形するのに充分な厚さの皮膜とすることができる成膜性を有すると共に、光硬化後において光学物品の用途に応じて、透明性、強度、耐擦傷性、耐熱性、耐水性、耐薬品性、基材に対する密着性、可とう性等の一般的性質を満足する微細凹凸パターンの表面構造を形成し得るポリマーを用いる。
【0097】
例えば、アクリル樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、スチロール樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
適当なバインダーポリマーとしては、アクリル樹脂;ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート等のアクリレート;及び、特公平4−5681号公報に記載されているようなハードセグメントとソフトセグメントを分子内に有する樹脂等が好ましく用いられる。
上記の中でも、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート、及び、ポリエステルアクリレートは特に好ましい。
【0099】
上記複製物形成用シートにエンボス加工を行って複製物を製造するためのロールツーロール法は、上述した樹脂製複製版を製造するためのロールツーロール法と同様の手順及び装置で行うことができる。
【0100】
(樹脂製表面の離型処理方法)
本発明の樹脂製複製版の凹凸パターン面に適用される離型処理の方法は、樹脂で形成された表面の離型処理方法として広く適用可能である。すなわち、樹脂製表面にシリカ薄膜を形成し、該シリカ薄膜の表面に含フッ素薄膜を形成することにより、樹脂材料と接触する際に優れた離型性を発揮する離型面が得られる。
特に、樹脂製表面が凹凸パターンに賦型されている場合にも、優れた離型性が発揮される。
【0101】
本発明の離型処理方法においては、前記樹脂製表面にシリカ前駆体、好ましくはシリカ前駆体としてポリシラザンを含有する溶液を塗布し、水と反応させることにより前記シリカ薄膜を形成することが好ましい。
また、本発明の離型処理方法においては、前記シリカ薄膜の表面に、含フッ素樹脂をフッ素系溶媒中に溶解させた含フッ素薄膜用コーティング液を塗布することにより、前記含フッ素薄膜を形成することが好ましい。
また、前記含フッ素薄膜用コーティング液が、含フッ素樹脂及び極性基を有する含フッ素化合物を含有することが好ましい。
【実施例】
【0102】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。尚、実施例中、部は特に特定しない限り重量部を表す。
【0103】
<実施例1>
(凹凸パターンの複製)
ポリカーボネート基材上に下記組成Aの紫外線硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を形成し、ロールツーロール法により凹凸パターン形成層の表面にレリーフホログラム原版の微細凹凸パターンを複製し、硬化させて紫外線硬化樹脂(前記紫外線硬化性樹脂組成物の硬化物)からなる凹凸パターン層を形成した。すなわち、複製版表面に微細凹凸パターンからなるレリーフ表面を複製した。
(組成A)
ビスフェノールA系エポキシアクリレート 28重量部
ポリエステルアクリレート その1 20重量部
ポリエステルアクリレート その2 35重量部
特殊アクリレート(多官能アクリレート)A 10重量部
特殊アクリレート(多官能アクリレート)B 3重量部
イルガキュア184(商品名) 5重量部
【0104】
(シリカ薄膜の形成)
パーヒドロポリシラザンをジブチルエーテル/アニソール(95:4)混合溶剤に溶解した溶液に、常温シリカ転化触媒として1,3−ジ−4−ピペリジルプロパン(DPP)をパーヒドロポリシラザンに対して1wt%添加し、シリカ薄膜形成用溶液(プライマーインキとも言う)を得た。
上記の如く得られたプライマーインキを、複製版表面に形成された微細凹凸パターンからなるレリーフ表面に塗布した後、温度27℃、相対湿度90%の雰囲気にて90分間、静置した。
【0105】
(含フッ素薄膜の形成)
フッ素環構造を有し、かつ水酸基を導入した含フッ素樹脂を不燃性のフッ素系溶剤に溶解し、溶液化したフッ素コーティング剤(株式会社フロロテクノロジー製 商品名:FG−5010S135−0.1)を用意し、これを含フッ素薄膜用コーティング液として使用した。
【0106】
上記の如く用意した含フッ素薄膜用コーティング液を、凹凸パターン表面に形成されたシリカ薄膜上に塗布した後、温度60℃にて90分間、加熱乾燥させた。
【0107】
<比較例1>
(凹凸パターンの複製)
ポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に下記組成Bの紫外線硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を形成し、以下、実施例1と同様の手順で、紫外線硬化樹脂からなり、且つ、レリーフホログラムのパターンを有する凹凸パターン層を形成した。
(組成B)
ビスフェノールA系エポキシアクリレート 28重量部
ポリエステルアクリレート その1 20重量部
ポリエステルアクリレート その2 35重量部
特殊アクリレート(多官能アクリレート)A 10重量部
特殊アクリレート(多官能アクリレート)B 3重量部
イルガキュア184(商品名) 5重量部
非反応性ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン 2.5重量部
【0108】
<比較例2>
(凹凸パターンの複製)
ポリエチレンテレフタレート(PET)基材上に下記組成Cの紫外線硬化性樹脂組成物からなる凹凸パターン形成層を形成し、以下、実施例1と同様の手順で、紫外線硬化樹脂からなり、且つ、レリーフホログラムのパターンを有する凹凸パターン層を形成した。
(組成C)
ビスフェノールA系エポキシアクリレート 28重量部
ポリエステルアクリレート その1 20重量部
ポリエステルアクリレート その2 35重量部
特殊アクリレート(多官能アクリレート)A 10重量部
特殊アクリレート(多官能アクリレート)B 3重量部
イルガキュア184(商品名) 5重量部
反応性ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン 17.8重量部
【0109】
<離型性の評価>
複製版表面の離型性を評価する指標として、含フッ素薄膜が形成された凹凸パターン表面の純水の接触角を測定した。結果を表1に示す。表中の接触角の値は、純水滴下1分後の接触角の測定値について、滴下と測定を3回繰り返して得られた測定値の平均値である。
【0110】
【表1】


【0111】
比較例2は従来、ホログラムの樹脂製複製版として実際に用いられていたものである。従来品と比較し、本発明に係る樹脂製複製版は離型性が著しく向上していることがわかる。
【0112】
<耐刷性の評価>
次に、上記実施例及び比較例において作製した複製版を実際のホログラム複製装置に使用した場合の耐刷性テストを行った。
耐刷性テストは、図5に例示されるロールツーロール法による複製装置を使用して行った。
上記実施例及び比較例において作製した複製版を上記装置における転写装置30のエンボスローラー31の周表面に巻き付けて使用した。
【0113】
凹凸パターンを転写される複製物形成用シート(テスト用原反)としては、PET基材上にホログラム形成用紫外線硬化性樹脂組成物を塗工したものを使用したが、従来品との比較を目的とするため、基材/樹脂間の密着性を向上させる処理は特に行っていない。
テスト用原反の供給開始から「版取られ」が発生するまでに供給した原反の長さを表2に示す。
【0114】
【表2】


【0115】
<比較例3>
実施例1で用いた組成Aに、大阪有機化学工業社製、フッ素アクリルモノマーであるV−3F(2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート)1重量部を添加し、下記組成Dの樹脂組成物を調製した。
(組成D)
ビスフェノールA系エポキシアクリレート 28重量部
ポリエステルアクリレート その1 20重量部
ポリエステルアクリレート その2 35重量部
特殊アクリレート(多官能アクリレート)A 10重量部
特殊アクリレート(多官能アクリレート)B 3重量部
イルガキュア184(商品名) 5重量部
2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート(商品名V−3F)1重量部
【0116】
しかし、フッ素アクリルモノマーは紫外線硬化樹脂と相溶することなく分離してしまった。樹脂組成物中で離型成分であるフッ素添加剤が偏在するため、もしこの樹脂組成物を用いて凹凸パターン層を形成すると、離型性が非常に優れる部分と極めて劣る部分が混在することとなり、離型性が劣る部分で版とられが発生してしまう。これでは実際の複製版に用いることはできない。
そこでV−3F(2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート)の添加量を0.3重量部にしたところ紫外線硬化樹脂に溶けたが、純水滴下後1分後の接触角は60.2°となり、添加物なしの紫外線硬化樹脂の接触角60.0°と殆ど変わらなかった。つまりフッ素添加剤が分離しない程度の添加量では離型性の改善が見られなかった。
【0117】
<比較例4>
実施例1で用いた組成Aに、大阪有機化学工業社製、フッ素アクリルモノマーであるV−4F(2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート)0.5重量部を添加し、下記組成Eの樹脂組成物を調製した。
(組成E)
ビスフェノールA系エポキシアクリレート 28重量部
ポリエステルアクリレート その1 20重量部
ポリエステルアクリレート その2 35重量部
特殊アクリレート(多官能アクリレート)A 10重量部
特殊アクリレート(多官能アクリレート)B 3重量部
イルガキュア184(商品名) 5重量部
2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート(商品名V−4F)0.5重量部
【0118】
しかし、フッ素アクリルモノマーは紫外線硬化樹脂と相溶することなく分離してしまった。樹脂組成物中で離型成分であるフッ素添加剤が偏在するため、もしこの樹脂組成物を用いて凹凸パターン層を形成すると、離型性が非常に優れる部分と極めて劣る部分が混在することとなり、離型性が劣る部分で版とられが発生してしまう。これでは実際の複製版に用いることはできない。
そこで、V−4F(2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート)の添加量を0.1重量部にしたところ、紫外線硬化樹脂に溶けたが、純水滴下後1分後の接触角は60.5°となり、添加物なしの紫外線硬化樹脂の接触角60.0°と殆ど変わらなかった。つまりフッ素添加剤が分離しない程度の添加量では離型性の改善が見られなかった。
【0119】
(試験結果)
比較例1は、凹凸パターン層に非反応性シリコーン化合物を添加することで離型処理を行なったが、テスト用原反を300m分供給した時点で版取られが発生した。比較例1は、凹凸パターン形成層に非反応性シリコーン化合物を添加することで離型処理を行なったので、比較例1よりも凹凸パターン層の離型性が持続したが、テスト用原反を8,000m分供給した時点で版取られが発生した。
また、比較例3及び比較例4においてフッ素系添加物を用いたところ、シリコーン系と比較して離型性が非常に優れる反面、樹脂との相溶性が極めて悪いため、離型性が発現するに十分な量の添加剤を樹脂に添加できないという大きな欠点が見られた。
これに対し、実施例1において用いた本発明の樹脂製複製版は、比較例1及び比較例2と比べて凹凸パターン層の離型性が格段に長く持続し、テスト用原反を20,000m分供給するまで版取られが発生しなかった。このように本発明の樹脂製複製版は、従来品と比較して耐刷性が格段に向上し、且つ、版取られが発生するまでの長い作業時間を通じて基材からの凹凸パターン層の剥離は発生しなかった。この結果から、複製版の寿命が飛躍的に向上していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、ホログラムや回折格子のような視覚効果を発揮しうる印刷材料を工業的に製造する分野において、製造効率、製造コスト、複製版自体の寿命等を更に改善することに利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明に係る樹脂製複製版の基本構成を示す略式断面図である。
【図2】2P法を説明する概念図である。
【図3】ホログラム複製装置の一例を示す図である。
【図4】図3の装置における転写装置付近を示す拡大図である。
【符号の説明】
【0122】
1 樹脂製複製版
1’ ホログラム形成用フィルム
2 基材
3 凹凸パターン層
3a 凹凸パターン面
3’ 凹凸パターン層形成層
4 シリカ薄膜
5 含フッ素薄膜
6 複製版用原版
7 電離放射線硬化性樹脂
8 基材
9 樹脂製複製版
10 ホログラム複製装置
12 本体フレーム
13 ベッド
14 駆動モータ
20 供給装置
21 巻取ロール
22 シャフト
23 コロ
30 転写装置
31 エンボスローラー
32 軸
34 ホログラム親型
38 加圧機構
40 押付けローラー
42 アーム
44 ロッド
45 エアシリンダ
46 ピストンロッド
47 アタッチメント
48 ピン
50 照射装置
51 捲付けローラー
60 巻取装置
62 シャフト
63 コロ
71、72、73 ガイドローラー
【出願人】 【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
【出願日】 平成18年9月29日(2006.9.29)
【代理人】 【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人

【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦


【公開番号】 特開2008−89859(P2008−89859A)
【公開日】 平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願番号】 特願2006−269467(P2006−269467)