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【発明の名称】 ホログラム記録媒体
【発明者】 【氏名】林田 直樹

【氏名】小須田 敦子

【氏名】吉成 次郎

【要約】 【課題】青色レーザを用いたホログラフィックメモリ記録において、高い屈折率変化、柔軟性、高感度、低散乱、耐環境性、耐久性、低寸法変化(低収縮性)、及び高多重度が達成される、ホログラム記録媒体を提供する。

【構成】ホログラム記録材料層を少なくとも含むホログラム記録媒体であって、ホログラム記録材料層21は、Ti−O結合を少なくとも有する有機金属化合物と光重合性化合物とを少なくとも含み、記録媒体は、波長405nmにおいて50%以上の光透過率を有するものであるか、又は波長405nmにおいて25%以上の光反射率を有するものであるホログラム記録媒体11。有機金属化合物は、好ましくは、対応する金属のアルコキシド化合物を、環状エーテル骨格及びカルボニル酸素のいずれをも含まない有機溶媒中で加水分解及び重合反応することにより得られたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラム記録材料層を少なくとも含むホログラム記録媒体であって、
ホログラム記録材料層は、Ti−O結合を少なくとも有する有機金属化合物と光重合性化合物とを少なくとも含み、
記録媒体は、波長405nmにおいて50%以上の光透過率を有するものであるか、又は波長405nmにおいて25%以上の光反射率を有するものであるホログラム記録媒体。
【請求項2】
有機金属化合物は、さらにSi−O結合を有している、請求項1に記載のホログラム記録媒体。
【請求項3】
ホログラム記録材料層は、さらに光重合開始剤を含む、請求項1又は2に記載のホログラム記録媒体。
【請求項4】
有機金属化合物は、対応する金属のアルコキシド化合物を、環状エーテル骨格及びカルボニル酸素のいずれをも含まない有機溶媒中で加水分解及び重合反応することにより得られたものである、請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載のホログラム記録媒体。
【請求項5】
有機溶媒は、モノアルコール、ジアルコール、及びジアルコールのモノアルキルエーテルからなる群から選ばれる、請求項4に記載のホログラム記録媒体。
【請求項6】
ホログラム記録材料層は、少なくとも100μmの厚みを有する、請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載のホログラム記録媒体。
【請求項7】
波長350〜450nmのレーザ光によって記録/再生される、請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載のホログラム記録媒体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、体積型ホログラム記録に適したホログラム記録材料層を有するホログラム記録媒体に関する。特に、本発明は、青色レーザ光による記録/再生に好適なホログラム記録材料層を有するホログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量、高速転送を可能とする記録技術として、ホログラフィックメモリーの研究開発が進められている。O plus E, Vol. 25, No. 4, 385-390 (2003)には、ホログラフィックメモリーの基本構成及び今後の展望が記載されている。
【0003】
ホログラム記録材料に求められる特性として、記録の際の高い屈折率変化、高感度、低散乱、耐環境性、耐久性、低寸法変化、及び高多重度等が挙げられる。これまで、緑色レーザを用いたホログラフィックメモリ記録については、以下のように種々報告されている。
【0004】
ホログラム記録材料として、有機バインダーポリマーと光重合性モノマーとを主成分とするフォトポリマー材料が知られている。しかしながら、フォトポリマー材料は、耐環境性、耐久性等において問題がある。フォトポリマー材料の問題点を解決するために、無機マトリックスと光重合性モノマーとを主成分とする有機−無機ハイブリッド材料が注目され検討されている。無機マトリックスは、耐環境性、耐久性に優れる。
【0005】
例えば、特許2953200号公報には、無機物質ネットワークの膜中に、光重合性モノマー又はオリゴマー、及び光重合開始剤を含む光記録用膜が開示されている。また、無機ネットワークを有機修飾して、無機ネットワーク膜の脆さを改善することも開示されている。しかしながら、無機物質ネットワークと光重合性モノマー又はオリゴマーとの相溶性は良くない。そのため、均一な膜は得られにくい。同号公報に具体的に開示されているのは、厚み約10μmの感光層([0058])を514.5nmのアルゴンレーザで露光した([0059])ことである。
【0006】
特開平11−344917号公報には、有機−無機ハイブリッドマトリックス中に光活性モノマーを含む光記録媒体が開示されている。前記有機無機ハイブリッドマトリックスは、金属元素にアルキル基(メチル基)又はアリール基(フェニル基)を有する。しかしながら、メチル基の導入によっては、ハイブリッドマトリックスと光活性モノマーとの相溶性を改善できない。フェニル基の導入は、メチル基の導入よりは相溶性の改善が得られる。しかし、フェニル基の導入によって、ハイブリッドマトリックス前駆体の硬化速度が低下(同号公報[0015])する。同号公報に具体的に開示されているのは、厚み100μmのホログラム記録層を532nmのYAGレーザで記録した(例3、[0031])ことである。
【0007】
特開2002−236439号公報には、主鎖構成成分としてエチレン性不飽和二重結合を含有する有機金属化合物とエチレン性不飽和二重結合を有する有機モノマーとを共重合させてなる有機−無機ハイブリッドポリマー及び/又はその加水分解重縮合物からなるマトリックス、光重合性化合物、及び光重合開始剤を含むホログラム記録材料が開示されている。大きな有機主鎖成分をマトリックス材料に導入することにより、マトリックスと光重合性化合物との相溶性は改善される。しかしながら、大きな有機主鎖成分の導入は、マトリックス材料中に有機主鎖と無機ネットワークの二成分構造が存在することになり、記録の際のマトリックスとしての単一の挙動を示さない可能性があり、記録の不均一を起こすことが考えられる。また、マトリックス中の有機主鎖成分の割合が大きいと、有機バインダーポリマーを用いたフォトポリマー材料におけるのと同じ問題が生じる。同号公報に具体的に開示されているのは、厚み20μmのホログラム記録材料層([0080])を514.5nmのアルゴンレーザで露光した([0081])ことである。
【0008】
上記各公報に開示されたホログラム記録材料の問題点を解決すべく、特開2005−321674号公報には、少なくとも2種の金属(Si、Ti)、酸素、及び芳香族基を少なくとも有し、且つ2つの芳香族基が1つの金属(Si)に直接結合している有機金属単位を有している有機金属化合物と、光重合性化合物とを含むホログラム記録材料が開示されている。同号公報の実施例1(特に[0074]〜[0078])には、前記ホログラム記録材料の厚み100μmの層を有するホログラム記録媒体は、Nd:YAGレーザ(532nm)での記録において、高い透過率、高い屈折率変化、低散乱、及び高多重度が得られたことが開示されている。
【0009】
【非特許文献1】O plus E, Vol. 25, No. 4, 385-390 (2003)
【特許文献1】特許2953200号公報
【特許文献2】特開平11−344917号公報
【特許文献3】特開2002−236439号公報
【特許文献4】特開2005−321674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記いずれの公報においても、緑色レーザを用いたホログラフィックメモリ記録については開示されているが、青色レーザを用いたホログラフィックメモリ記録については開示がない。
【0011】
本発明の目的は、青色レーザを用いたホログラフィックメモリ記録に好適なホログラム記録媒体を提供することにある。より詳しくは、本発明の目的は、青色レーザを用いたホログラフィックメモリ記録において、高い屈折率変化、柔軟性、高感度、低散乱、耐環境性、耐久性、低寸法変化(低収縮性)、及び高多重度が達成される、体積型ホログラム記録に適したホログラム記録材料層を有するホログラム記録媒体を提供することにある。
【0012】
本発明者らが検討したところ、特開2005−321674号公報に開示のホログラム記録媒体に、青色レーザを用いてホログラフィックメモリ記録すると、透過率の低下が生じ、良好なホログラフィックメモリ記録特性が得られないことが分かった。透過率が低下すると、記録層中においてホログラム(干渉縞)が記録層の厚み方向に不均一に形成され、散乱性ノイズ等が生じる。良好なホログラム画像特性を得るには、媒体が50%以上の光透過率を有することが必要であることが判明した。
【0013】
ホログラム記録層の光透過率は、その厚みに依存する。記録層の厚みを薄くすれば、光透過率は向上するが、記録されたパターンに再生光を入射させたときに得られる回折ピークの幅が広がり、隣接する回折ピーク同士間の分離性が悪くなる。従って、十分なSN比を得るためには、多重記録する際にシフト間隔(角度など)を広くとらなければならず、このため、高多重度を達成できない。高多重度を確保したホログラフィックメモリ記録特性を達成するためには、どのような記録システムでホログラム記録媒体を使用するにしても、最低でも100μmの厚みの記録層が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明には、以下の発明が含まれる。
(1) ホログラム記録材料層を少なくとも含むホログラム記録媒体であって、
ホログラム記録材料層は、Ti−O結合を少なくとも有する有機金属化合物と光重合性化合物とを少なくとも含み、
記録媒体は、波長405nmにおいて50%以上の光透過率を有するものであるか、又は波長405nmにおいて25%以上の光反射率を有するものであるホログラム記録媒体。
【0015】
(2) 有機金属化合物は、さらにSi−O結合を有している、上記(1) に記載のホログラム記録媒体。
【0016】
(3) ホログラム記録材料層は、さらに光重合開始剤を含む、上記(1) 又は(2) に記載のホログラム記録媒体。
【0017】
(4) 有機金属化合物は、対応する金属のアルコキシド化合物を、環状エーテル骨格及びカルボニル酸素のいずれをも含まない有機溶媒中で加水分解及び重合反応することにより得られたものである、上記(1) 〜(3) のうちのいずれかに記載のホログラム記録媒体。
【0018】
(5) 有機溶媒は、モノアルコール、ジアルコール、及びジアルコールのモノアルキルエーテルからなる群から選ばれる、上記(4) に記載のホログラム記録媒体。
【0019】
(6) ホログラム記録材料層は、少なくとも100μmの厚みを有する、上記(1) 〜(5) のうちのいずれかに記載のホログラム記録媒体。
【0020】
(7) 波長350〜450nmのレーザ光によって記録/再生される、上記(1) 〜(6) のうちのいずれかに記載のホログラム記録媒体。
【0021】
(8) ホログラム記録材料層を少なくとも含むホログラム記録媒体であって、ホログラム記録材料層は、Ti−O結合を少なくとも有する有機金属化合物と光重合性化合物とを少なくとも含み、記録媒体は、波長405nmにおいて50%以上の光透過率を有するものであるか、又は波長405nmにおいて25%以上の光反射率を有するものであるホログラム記録媒体を製造する方法であって、
対応する金属のアルコキシド化合物(少なくともTiのアルコキシド化合物を含んでいる)を、環状エーテル骨格及びカルボニル酸素のいずれをも含まない有機溶媒中で加水分解及び縮合反応させ、有機金属化合物ないしはその前駆体を得る工程と、
前記加水分解の前、加水分解している時、又は加水分解の後において、光重合性化合物を混合し、ゾル状態のホログラム記録材料を得る工程と、
前記ゾル状態のホログラム記録材料を基板上に塗布し、乾燥を行うと共に重縮合反応をさらに進行させ、Ti−O結合を少なくとも有する有機金属化合物と光重合性化合物とを少なくとも含むホログラム記録材料層を得る工程と、
を少なくとも備えるホログラム記録媒体の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ホログラム記録材料層はマトリックス材料としてTi−O結合を有する有機金属化合物(有機基含有金属酸化物)を含んでいるのでマトリックス材料の高い屈折率を得ることができる。そのため、ホログラム記録媒体は、マトリックス材料の高い屈折率を維持しつつ、波長405nmにおいて50%以上の光透過率を有するものであるか、又は波長405nmにおいて25%以上の光反射率を有するものであり、青色レーザを用いたホログラフィックメモリ記録において、記録材料層及び媒体の光透過率が低下することなく、良好なホログラフィックメモリ記録特性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のホログラム記録媒体は、少なくともホログラム記録材料層を含んでなる。通常は、ホログラム記録媒体は、支持基体(すなわち基板)とホログラム記録材料層とを含んでなるが、支持基体を有さずホログラム記録材料層のみから構成されることもある。例えば、基板上に塗布によりホログラム記録材料層を形成し、その後、ホログラム記録材料層を基板から剥離することにより、ホログラム記録材料層のみから構成される媒体を得ることができる。
【0024】
本発明のホログラム記録媒体は、波長405nmにおいて50%以上の光透過率を有するものであるか、又は波長405nmにおいて25%以上の光反射率を有するものである。すなわち、透過光によって再生を行う場合、本発明のホログラム記録媒体は、波長405nmにおいて50%以上の光透過率を有するものであり、反射光によって再生を行う場合、本発明のホログラム記録媒体は、波長405nmにおいて25%以上の光反射率を有するものである。
【0025】
ホログラム記録媒体は、用いる光学系装置によって、透過光によって再生を行う構成の媒体(以下、透過光再生タイプという)、又は反射光によって再生を行う構成の媒体(以下、反射光再生タイプという)のいずれかである。
【0026】
透過光再生タイプの媒体は、読み取りのためのレーザ光が媒体に入射し、入射した前記レーザ光がホログラム記録材料層の記録済み信号によって回折し、媒体を透過した前記レーザ光を撮像素子によって電気信号に変換するように構成されている。すなわち、透過光再生タイプの媒体においては、媒体への再生レーザ光の入射側とは反対の側へ検出されるべきレーザ光が透過する。透過光再生タイプの媒体は、通常、記録材料層が2つの支持基体に挟まれた構成である。用いる光学系装置は、媒体を基準として、光源から発振された再生レーザ光の入射側とは反対の側に、透過レーザ光を検出する撮像素子が設けられている。
【0027】
従って、透過光再生タイプの媒体においては、支持基体、記録材料層、及びその他の任意の層の全てが透光性材料からなり、再生レーザ光の透過を遮る要素は実質的に存在してはならない。支持基体は、通常、ガラス、又は樹脂製の剛性基板である。
【0028】
一方、反射光再生タイプは、読み取りのためのレーザ光が媒体に入射し、入射した前記レーザ光がホログラム記録材料層の記録済み信号によって回折し、その後反射膜によって反射され、反射した前記レーザ光を撮像素子によって電気信号に変換するように構成されている。すなわち、反射光再生タイプの媒体においては、媒体への再生レーザ光の入射側と同じ側に検出されるべきレーザ光が反射する。反射光再生タイプの媒体は、通常、再生レーザ光の入射側に位置する支持基体の上に記録材料層が設けられ、記録材料層上に反射膜及び支持基体が設けられている構成である。用いる光学系装置は、媒体を基準として、光源から発振された再生レーザ光の入射側と同じ側に、反射レーザ光を検出する撮像素子が設けられている。
【0029】
従って、反射光再生タイプの媒体においては、再生レーザ光の入射側に位置する支持基体、記録材料層、及びその他の任意の層のうちの反射膜よりも再生レーザ光の入射側に位置する層は、それぞれ透光性材料からなり、入射する及び反射する再生レーザ光を遮る要素は実質的に存在してはならない。支持基体は、通常、ガラス、又は樹脂製の剛性基板であり、再生レーザ光の入射側に位置する支持基体は、透光性が必要である。
【0030】
透過光再生タイプの媒体、又は反射光再生タイプの媒体のいずれであっても、ホログラム記録材料層が波長405nmにおいて例えば50%以上の高い光透過率を有することが重要である。例えば、マトリックス材料(有機基含有金属酸化物材料)のみからなる層(厚み100μm)を考慮した場合、波長405nmにおいて90%以上の高い光透過率を有していると好ましい。
【0031】
本発明のホログラム記録媒体において、ホログラム記録材料層は、Ti−O結合を少なくとも有する有機金属化合物(有機基含有金属酸化物)と光重合性化合物とを必須成分として含むホログラム記録材料組成物からなる層である。
【0032】
前記有機金属化合物は、さらにSi−O結合を有していることが好ましい。2種以上の金属を構成元素として含むことにより、屈折率等の特性制御が容易となり、記録材料の設計上好ましい。
【0033】
前記有機金属化合物は、1種又は2種以上の対応する金属のアルコキシド化合物を加水分解及び重合反応(いわゆるゾル−ゲル反応)することにより得られるものであり、ゲル状もしくはゾル状となっている。前記有機金属化合物は、ホログラム記録材料層においてマトリックスないしは光重合性化合物の分散媒として機能する。すなわち、液相の光重合性化合物がゲル状もしくはゾル状の前記有機金属化合物中に均一に相溶性良く分散される。
【0034】
ホログラム記録材料層に干渉性のある光を照射すると、露光部では光重合性有機化合物(モノマー)が重合反応を起こしポリマー化すると共に、未露光部から光重合性有機化合物が露光部へと拡散移動し、さらに露光部のポリマー化が進む。この結果、光強度分布に応じて光重合性有機化合物から生じたポリマーの多い領域とポリマーの少ない領域とが形成される。この際、前記ポリマーの多い領域から前記有機金属化合物が前記ポリマーの少ない領域に移動して、前記ポリマーの多い領域は前記有機金属化合物の少ない領域となり、前記ポリマーの少ない領域は前記有機金属化合物の多い領域となる。このようにして、露光により前記ポリマーの多い領域と前記有機金属化合物の多い領域とが形成され、前記ポリマーと前記有機金属化合物との間に屈折率差があるとき、光強度分布に応じて屈折率変化が記録される。
【0035】
ホログラム記録材料においてよりよい記録特性を得るためには、光重合性化合物から生じた前記ポリマーの屈折率と、前記有機金属化合物の屈折率との差が大きいことが必要である。前記ポリマーと前記有機金属化合物の両者の屈折率の高低については、どちらを高くしてどちらを低く設計してもよい。
【0036】
本発明においては、前記有機金属化合物は必須構成元素としてTiを含んでいるので、前記有機金属化合物の高い屈折率を得ることができる。従って、前記有機金属化合物を高屈折率として、前記ポリマーを低屈折率として、ホログラム記録材料を設計するとよい。前記有機金属化合物におけるTiの数とSiの数については、所望の屈折率を考慮して適宜決定すればよい。例えば、Siの数(s)、Ti及びその他の任意の金属(例えばZr、Ge、Sn、Al、Zn)の数(m)は、
0.3s≦m≦3s
の関係を満たしていることが好ましい。
【0037】
上述のように、Tiは高い屈折率を実現できる観点から好適な前記有機金属化合物の構成元素である。一方で、Tiは青色領域の波長の光に対して吸収を持ち易いという難点がある。すなわち、前記有機金属化合物が青色領域の波長の光に対して吸収を有していると、そのようなホログラム記録材料層を用いたホログラム記録媒体は、青色レーザを用いたホログラフィックメモリ記録において、光透過率が低下してしまう。
【0038】
本発明者らは、鋭意検討したところ、構成元素としてTiを含有する有機金属化合物(有機基含有金属酸化物)を対応する金属(Ti、及び他の任意金属例えばSi)のアルコキシド化合物の加水分解及び重合反応(いわゆるゾル−ゲル反応)によって合成する際に、有機溶媒として、環状エーテル骨格及びカルボニル酸素のいずれをも含まない有機溶媒を用いることによって、得られる有機金属化合物の青色光に対する吸収を低減できることを見いだした。すなわち、有機金属化合物の青色光に対する吸収は、有機金属化合物が含有する有機基に起因しているほか、ゾル−ゲル反応の際に用いた有機溶媒との間で形成されるTiの錯体(あるいはTiへの配位)に起因することが分かった。
【0039】
環状エーテル骨格のエーテル酸素や、カルボニル酸素はTiへの配位能が高い。従って、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセチルアセトン等は用いるべきではない。
【0040】
好適な有機溶媒としては、モノアルコール、ジアルコール、及びジアルコールのモノアルキルエーテルが挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのモノアルコール類; エチレングリコール、プロピレングリコールなどのジアルコール類; 1−メトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)などのジアルコールのモノアルキルエーテル類が挙げられる。これらの中から適宜選択すればよい。あるいはこれらの混合溶媒とすることもできる。また、水を付加的に用いてもよい。これらの溶媒は、Tiへの配位能が低いか、もしくは配位しても低エネルギーの遷移吸収帯を生じない。従って、これらの溶媒が前記有機金属化合物中に残存していても、得られる有機金属化合物の青色光に対する吸収は低減される。
【0041】
本発明において、柔軟性を有する好ましい有機金属化合物(有機基含有金属酸化物)について説明する。
【0042】
本発明において、ホログラム記録材料において更によい記録特性を得るためには、光重合性化合物の拡散・ポリマー化が前記有機金属化合物と共存した状態で容易に行われることが必要である。前記有機金属化合物が柔軟性を有していると、マトリックスないしは光重合性化合物の分散媒として機能し、光重合性化合物の拡散・ポリマー化が容易に行われる。これにより、光照射によって、露光部と未露光部との間の屈折率変化がより大きくなる。
【0043】
本発明において好ましい前記有機金属化合物は、Ti及びSiを含む少なくとも2種の金属(M)、酸素、及び芳香族基(Ar)を少なくとも有し、且つ2つの芳香族基(Ar)が1つの金属(M)に直接結合している有機金属単位(Ar−M−Ar)を有している。このような有機金属化合物は柔軟性を有している。
【0044】
金属(M)同士は酸素原子を介して結合している。ここで、Ti及びSi以外の他の金属(M)は、例えば、Zr、Ge、Sn、Al及びZnからなる群から任意に選ばれる。2種以上の金属のうちの1種の金属のみが前記有機金属単位を構成していてもよいし、他の種類の金属も別個の前記有機金属単位を構成していてもよい。前記有機金属化合物が、Ti及びSiを含む2種以上の金属を構成金属として含むことにより、屈折率などの特性の制御を行いやすく、記録材料の設計がしやすい。
【0045】
前記有機金属化合物は、対応する金属(M)のアルコキシド化合物、及び有機金属単位を構成する金属(M)のジアリールアルコキシド化合物を用いて、加水分解及び重合反応、いわゆるゾル−ゲル反応によって形成される。
【0046】
前記有機金属化合物において、好ましくは、前記有機金属単位(Ar−M−Ar)は、2つの芳香族基が1つのSiに直接結合している単位(Ar−Si−Ar)である。Siのジアリールアルコキシド化合物は、原料入手が容易である。しかしながら、Si以外の他の金属に芳香族基が直接結合していることを除外するものではない。
【0047】
前記有機金属化合物において、より好ましくは、前記有機金属単位(Ar−M−Ar)は、2つのフェニル基(Ph)が1つのSiに直接結合している単位(Ph−Si−Ph)である。Siのジフェニルアルコキシド化合物は、原料入手が容易であり、加水分解及び重合の反応性も良好である。また、フェニル基は置換基を有していてもよい。
【0048】
前記有機金属化合物は、2つの芳香族基が1つの金属に直接結合している有機金属単位を有するが、このような有機金属単位以外にも、1つの金属に1つの芳香族基が直接結合している有機金属単位を有していてもよく、1つの金属に3つの芳香族基が直接結合している有機金属単位を有していてもよい。
【0049】
Siに2つの芳香族基(フェニル基)を導入することにより、後述する光重合性化合物やそれの重合により生成する有機ポリマーとの相溶性が良好となる。また、前記有機金属化合物の屈折率も高くなる。
【0050】
本発明において、好ましい前記有機金属化合物としては、次の化学式で示される(I)、(II)等のものが例示される。これらの例示では、Siのアルコキシドとしてメトキシドとされ、Tiのアルコキシドとしてブトキシドとされている。他のアルコキシドも可能なことは明らかである。
【0051】
【化1】


【0052】
【化2】


【0053】
これらの有機金属化合物は、Siのジフェニルアルコキシド化合物とTiのアルコキシド化合物を用いて、加水分解及び重合反応を行うことにより得ることができる。例えば、Siのジフェニルアルコキシド化合物としてジフェニルジメトキシシランを用いて、Tiのアルコキシド化合物としてチタンブトキシド多量体を用いた場合の反応式は、次の化学式に示される。両原料のアルコキシド体が加水分解され続いて重合され、SiとTiとは酸素原子を介して結合される。その結果、SiとTiを構成金属とし、ジフェニルシラン単位を包含する、種々の分子量の前記有機金属化合物が得られる。この化学式では、(I)及び(II)が前記有機金属化合物の例として示されている。すなわち、前記有機金属化合物は、種々の分子量のものの組成物形態として得られる。また、この組成物の中には、例えば、Tiを含まないシラン化合物(III) のようなものも含まれているであろう。
【0054】
【化3】


【0055】
本発明において、前記有機金属化合物に含まれるフェニル基の数(p)、Siの数(s)及びSi以外の他の金属の数(m)は、前記有機金属化合物の組成物において、
s≦p<3s、及び
0.3s≦m≦3s の関係を満たしていることが好ましい。具体的には、前記有機金属化合物組成物全体としては、1つのSi原子に1つ以上3つ未満のフェニル基が結合していることが、光重合性化合物やそれの重合により生成する有機ポリマーとの相溶性の観点から好ましい。また、Ti等のSi以外の他の金属の数(m)は、Siの数(s)に対して上記の範囲となることが好ましい。他の金属の数(m)が0.3s未満であると、前記有機金属化合物に2種以上の金属を包含させる効果、すなわち屈折率などの特性の制御が行いやすい効果が薄くなり、一方、他の金属の数(m)が3sを超えて多くなると、前記有機金属化合物全体として、無機マトリックスの性質を帯びやすくなり、相溶性や柔軟性の低下が見られる。
【0056】
本発明において、前記有機金属化合物のSiには、芳香族基以外の有機基、例えば、アルキル基が導入されていてもよい。例えば、本発明の効果を損なわない範囲において、メチルフェニルジメトキシシラン等を用いることができる。また、トリメチルメトキシシラン等のモノアルコキシシランが存在すると、重合反応は停止されるので、モノアルコキシシランを分子量の調整に用いることができる。
【0057】
また、前記有機金属化合物には、上記した以外のその他の微量の元素が含まれていてもよい。
【0058】
本発明において、光重合性化合物は光重合可能なモノマーである。光重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物が好ましい。
【0059】
ラジカル重合性化合物としては、分子内に1つ以上のラジカル重合性不飽和二重結合を有するものであれば特に制限はないが、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基を有する単官能又は多官能化合物を用いることができる。なお、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基、及びアクリロイル基を総称する表記である。
【0060】
このようなラジカル重合性化合物のうち、(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス〔4-(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン等の多官能(メタ)アクリレート;
が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0061】
また、ビニル基を有する化合物としては、モノビニルベンゼン、エチレングリコールモノビニルエーテル等の単官能ビニル化合物; ジビニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等の多官能ビニル化合物が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0062】
ラジカル重合性化合物の1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明において、前記有機金属化合物を高屈折率とし、有機ポリマーを低屈折率とする場合には、上記のラジカル重合性化合物のうちで芳香族基を有していない低屈折率(例えば、屈折率1.5以下)のものが好ましい。また、前記有機金属化合物との相溶性をより向上させるために、より親水的なポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコール誘導体が好ましい。
【0063】
本発明において、光重合性化合物は、前記有機金属化合物全体の重量に対して、例えば5〜1000重量%程度、好ましくは10〜300重量%用いるとよい。5重量%未満では、記録の際に大きな屈折率変化を得られにくく、1000重量%を超えた場合も、記録の際に大きな屈折率変化を得られにくい。
【0064】
本発明において、ホログラム記録材料組成物には、さらに記録光の波長に対応する光重合開始剤が含まれることが好ましい。光重合開始剤が含まれていると、記録の際の露光により光重合性化合物の重合が促進され、より高感度が得られるようになる。
【0065】
光重合性化合物としてラジカル重合性化合物を用いた場合には、光ラジカル開始剤を用いる。光ラジカル開始剤としては、例えば、ダロキュア1173、イルガキュア784 、イルガキュア651 、イルガキュア184 、イルガキュア907 (いずれもチバスペシャルティ・ケミカルズ社製)が挙げられる。光ラジカル開始剤の含有量は、例えば、ラジカル重合性化合物を基準として0.1〜10重量%程度、好ましくは0.5〜5重量%程度である。
【0066】
光重合開始剤の他に記録光波長に対応した光増感剤となる色素などが含有されることが好ましい。光増感剤としては、例えば、チオキサンテン−9−オン、2,4−ジエチル−9H−チオキサンテン−9−オン等のチオキサントン類)、キサンテン類、シアニン類、メロシアニン類、チアジン類、アクリジン類、アントラキノン類、及びスクアリリウム類等が挙げられる。光増感剤の使用量は、光ラジカル開始剤の5〜50重量%程度、例えば10重量%程度とするとよい。
【0067】
次に、ホログラム記録材料層の製造について説明する。
まず、ゾル−ゲル法等の加水分解及び重合反応により、前記有機金属化合物を調製する。例えば、Siのジフェニルアルコキシド化合物とTiのアルコキシド化合物を原料として用いて、両原料を加水分解及び重合反応させ、SiとTiを構成金属とし、ジフェニルシラン単位を包含する、種々の分子量の前記有機金属化合物の組成物を得る。
【0068】
この加水分解及び重合反応は、公知のゾル−ゲル法におけるのと同様の操作及び条件で実施することができる。例えば、所定割合の金属アルコキシド化合物原料(Siのジフェニルアルコキシド化合物とTiのアルコキシド化合物)を、前述した好適な有機溶媒に溶かして均一溶液として、その溶液に適当な酸触媒を滴下し、水の存在下で溶液を攪拌することにより、反応を行うことができる。溶媒の量は、限定されないが、金属アルコキシド化合物全体100重量部に対して10〜1000重量部とするとよい。
【0069】
また、酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸; ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸等が挙げられる。
【0070】
加水分解重合反応は、金属アルコキシド化合物の反応性にもよるが、一般に室温でも行うことができ、0〜150℃程度の温度、好ましくは室温〜50℃程度の温度で行うことができる。反応時間は、反応温度との関係で適宜定めればよいが、0.1〜240時間程度である。また、反応は、窒素ガス等の不活性雰囲気下で行ってもよく、0.5〜1気圧程度の減圧下で、重合反応で生成するアルコールを除去しながら行ってもよい。
【0071】
前記加水分解の前、加水分解している時、又は加水分解の後において、光重合性有機化合物を混合する。光重合性有機化合物と金属アルコキシド化合物原料は、加水分解後混合しても良いし、加水分解している時あるいは加水分解前に混合しても良い。加水分解後に混合する場合には、均一に混合するために、有機金属化合物を含むゾル−ゲル反応系がゾルの状態で、光重合性有機化合物を添加混合することが好ましい。また、光重合開始剤や光増感剤の混合も、前記加水分解の前、加水分解している時、又は加水分解の後において行うことができる。
【0072】
光重合性有機化合物とゾル状態の有機金属化合物が均一に混合されたホログラム記録材料溶液が得られる。ホログラム記録材料溶液を基板上に塗布し、溶媒乾燥及びゾル−ゲル反応を進行させることにより、フィルム状のホログラム記録材料層が得られる。このようにして、前記有機金属化合物中に光重合性有機化合物が均一に含有されたホログラム記録材料層が作製される。
【0073】
このようにして得られたホログラム記録材料層は、青色レーザの高い透過率を有する。そのため、記録材料層の厚み100μmとした場合であっても、透過光再生タイプの場合、波長405nmにおいて50%以上、好ましくは55%以上の光透過率を有する記録媒体が得られ、又は、反射光再生タイプの場合、波長405nmにおいて25%以上、好ましくは27.5%以上の光反射率を有する記録媒体が得られる。高多重性を確保したホログラフィックメモリ記録特性を達成するためには、100μm以上、好ましくは200μm以上の厚みの記録材料層が必要となるが、本発明によれば、例えば1mmの記録材料層厚みとした場合においても、波長405nmにおいて50%以上の光透過率(透過光再生タイプ)、又は波長405nmにおいて25%以上の光反射率(反射光再生タイプ)を確保することができる。
【0074】
上記ホログラム記録材料層を用いることで、データストレージに適した100μm以上の記録層厚みをもつホログラム記録媒体を得ることができる。ホログラム記録媒体は、基板上にフィルム状のホログラム記録材料を形成したり、あるいは、フィルム状のホログラム記録材料を基板間に挟み込むことにより作製できる。
【0075】
透過光再生タイプの媒体においては、基板には、ガラスや樹脂などの記録再生波長に対して透明な材料が用いられることが好ましい。ホログラム記録材料層とは反対側の基板の表面には、ノイズ防止のため記録再生波長に対する反射防止膜が施され、またアドレス信号等が付与されていることが好ましい。ホログラム記録材料の屈折率と基板の屈折率とは、ノイズとなる界面反射を防止するため、ほぼ等しいことが好ましい。また、ホログラム記録材料層と基板との間に、記録材料や基板とほぼ同等の屈折率を有する樹脂材料やオイル材料からなる屈折率調整層を設けてもよい。基板間のホログラム記録材料層の厚みを保持するために、前記基板間の厚みに適したスペーサを設けてもよい。また、記録材料媒体の端面は、記録材料の封止処理がなされていることが好ましい。
【0076】
反射光再生タイプの媒体においては、再生レーザ光の入射側に位置する基板には、ガラスや樹脂などの記録再生波長に対して透明な材料が用いられることが好ましい。再生レーザ光の入射側に位置する基板としては、反射膜付き基板を用いる。具体的には、ガラス又は樹脂製の剛性基板(透光性は必要ではない)の表面に、例えばAl、Ag、Au、又はこれら金属を主成分とする合金などからなる反射膜を、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の各種成膜法によって成膜し、反射膜付き基板を得る。この基板の反射膜表面にホログラム記録材料層を所定厚みで設け、さらにこの記録材料層表面に、透光性基板を貼り合わせる。ホログラム記録材料層と前記反射膜との間、及び/又はホログラム記録材料層と前記透光性基板との間に接着剤層、平坦化層等が設けられてもよいが、それらの層もレーザ光透過の妨げになってはならない。それら以外のことは、上記の透過光再生タイプの媒体におけるのと同様である。
【0077】
また、支持基体を有さずホログラム記録材料層の単層から構成されるホログラム記録媒体は、例えば、基板上に塗布によりホログラム記録材料層を形成し、その後、ホログラム記録材料層を基板から剥離することにより得ることができる。この場合、ホログラム記録材料層は、例えばmmオーダーの厚膜のものである。この際に用いる基板としては、ガラスや樹脂などの材料からなる基板を用いることができ、基板の表面には予め剥離処理を施しておいてもよい。
【0078】
本発明のホログラム記録媒体によれば、記録材料層は均一であるので、光散乱の問題は起こらない。さらに、記録に際して、露光部において光重合性有機化合物はポリマー化されるが、好ましい前記有機金属化合物は2つの芳香族基が1つの金属に直接結合している有機金属単位を有しているため、前記有機金属化合物とポリマーとの相溶性にも非常に優れている。このため、本発明のホログラム記録媒体によれば、記録時や記録後においても、十分な相溶性が確保され、光散乱や透過率低下の問題は起こらない。
【0079】
従って、本発明のホログラム記録媒体は、波長350〜450nmのレーザ光によって記録/再生されるシステムに好適に用いることができる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0081】
[実施例1]
ジフェニルジメトキシシランと次の構造式で示されるチタンブトキシド多量体を用いて、ゾル−ゲル法により以下の手順で、ホログラム記録材料を作製した。
【0082】
【化4】


【0083】
(マトリックス材料の合成)
ジフェニルジメトキシシラン7.8gと、チタンブトキシド多量体(日本曹達製、B−10)7.2gとを1−メトキシ−2−プロパノール溶媒40mL中で混合し、金属アルコキシド溶液とした。すなわち、SiとTiのモル比は1:1であった。
水2.1mL、1N塩酸水溶液0.3mL、及び1−メトキシ−2−プロパノール5mLからなる溶液を、前記金属アルコキシド溶液に攪拌しながら室温で滴下し、2時間攪拌を続け加水分解反応を行った。このようにして、Si:Ti:フェニル基=1:1:2(モル比)で含む有機金属化合物のゾル溶液を得た。
【0084】
(光重合性化合物)
光重合性化合物としてポリエチレングリコールジアクリレート(東亜合成製、M−245)100重量部に、光重合開始剤としてIRG−907(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ)3重量部と、光増感剤としてチオキサンテン−9−オン 0.3重量部とを加え、混合した。
【0085】
(ホログラム記録材料溶液)
有機金属化合物(不揮発分として)の割合が67重量部、光重合性化合物の割合が33重量部となるように、前記ゾル溶液と光重合性化合物とを室温にて混合し、ほぼ無色透明なホログラム記録材料溶液を得た。
【0086】
(ホログラム記録材料)
ホログラム記録媒体の概略断面を示す図1を参照して説明する。
片面に反射防止膜(22a) が設けられた1mm厚のガラス基板(22)を準備した。ガラス基板(22)の反射防止膜(22a) が設けられていない面上に、所定厚みのスペーサ(24)をおき、得られたホログラム記録材料溶液を塗布し、室温で1時間乾燥し、次いで40℃で24時間乾燥し、溶媒を揮発させた。この乾燥工程により、有機金属化合物のゲル化(縮合反応)を進行させ、有機金属化合物と光重合性化合物とが均一に分散した乾燥膜厚400μmのホログラム記録材料層(21)を得た。
【0087】
(ホログラム記録媒体)
ガラス基板(22)上に形成されたホログラム記録材料層(21)上を片面に反射防止膜(23a) が設けられた別の1mm厚のガラス基板(23)でカバーした。この際、ガラス基板(23)の反射防止膜(23a) が設けられていない面がホログラム記録材料層(21)面と接するようにカバーした。このようにして、ホログラム記録材料層(21)を2枚のガラス基板(22)(23)で挟んだ構造をもつホログラム記録媒体(11)を得た。
【0088】
(特性評価)
得られたホログラム記録媒体サンプルについて、図2に示すようなホログラム記録光学系において、特性評価を行った。図2の紙面の方向を便宜的に水平方向とする。
【0089】
図2において、ホログラム記録媒体サンプル(11)は、記録材料層が水平方向と垂直となるようにセットされている。
【0090】
図2のホログラム記録光学系において、シングルモード発振の半導体レーザ(405nm)の光源(101) を用い、この光源(101) から発振した光を、ビーム整流器(102) 、光アイソレータ(103) 、シャッター(104) 、凸レンズ(105) 、ピンホール(106) 、及び凸レンズ(107) によって空間的にフィルタ処理しコリメートし、約10mmφのビーム径に拡大した。拡大されたビームを、ミラー(108) 及び1/2波長板(109) を介して45°偏光の光を取り出し、偏光ビームスプリッター(110) でS波/P波=1/1に分割した。分割されたS波をミラー(115) 、偏光フィルタ(116) 、虹彩絞り(117) を介して、及び分割されたP波を1/2波長板(111) を用いてS波に変換しミラー(112) 、偏光フィルタ(113) 、虹彩絞り(114) を介して、ホログラム記録媒体サンプル(11)に対する2光束の入射角合計θが37°となるようにし、サンプル(11)で2光束の干渉縞を記録した。
【0091】
ホログラムはサンプル(11)を水平方向に回転させて多重化(角度多重:Angle multiplexing,サンプル角度−21°〜+21°,角度間隔3°)し、さらに、サンプル(11)面に対する垂直軸を中心として回転させて多重化(Peristrophic multiplexing ,サンプル角度0°〜90°,角度間隔10°)して記録した。多重度は150。記録時には虹彩絞り(114) 、同(117) を4φにして露光した。
【0092】
この多重記録の詳細を述べる。サンプル(11)を水平方向に(紙面に対する垂直軸を中心として)−21°〜+21°まで、角度間隔3°で回転させて多重化し、その後、サンプル(11)をサンプル(11)面に対する垂直軸を中心として10°(レーザ光入射側から見て10°)回転させ、再び水平方向に−21°〜+21°まで、角度間隔3°で回転させて多重化し、これを10回繰り返し、サンプル(11)をサンプル(11)面に対する垂直軸を中心として0°〜90°まで回転させて、多重度150の多重記録を行った。
なお、2光束が成す角θを2等分する中心線(図示されていない)に対して、サンプル(11)面が90°となる位置を、水平方向回転における±0°とした。また、サンプル(11)面に対する垂直軸とは、サンプル(11)が矩形の場合には2本の対角線の交点を通る垂直軸であり、サンプル(11)が円形の場合には円の中心を通る垂直軸である。
【0093】
ホログラム記録後、残留する未反応成分を反応させるため、1光束のみで十分な光を照射した。再生の際には、シャッター(121) により遮光し、虹彩絞り(117) を3φにして1光束のみ照射して、サンプル(11)を水平方向に−23°〜+23°まで連続的に回転させ、さらに、サンプル(11)面に対する垂直軸を中心として0°〜90°まで角度間隔10°で回転させ、それぞれの角度位置において回折効率をパワーメータ(120) で測定した。記録前後において記録材料層の体積変化(記録収縮)や平均屈折率の変化がない場合には、前記水平方向の回折ピーク角度は記録時と再生時とで一致する。しかしながら、実際には、記録収縮や平均屈折率の変化が起こるため、再生時の水平方向の回折ピーク角度は、記録時の水平方向の回折ピーク角度から僅かにずれる。このため、再生時においては、水平方向の角度を連続的に変化させ、回折ピークが出現した時のピーク強度から回折効率を求めた。なお、図2において、(119) はこの実施例では用いられていないパワーメータである。
【0094】
このとき、ダイナミックレンジ:M#(回折効率の平方根の和)は、17.8(ホログラム記録材料層の厚みを1mmとした時に換算した値)と高い値が得られた。また、記録露光前(初期)の405nmにおける媒体の光透過率は71%であった。記録後における405nm(記録波長)における媒体の光透過率の低下は見られなかった。
【0095】
この際の反射防止膜付きガラス基板(22)(23)による光透過率の減少は0.6%であった。すなわち、図1を参照して、サンプル(11)に基板(22)側からレーザ光を入射させて基板(23)の方へ透過させた場合、反射防止膜(22a) の存在によって、空気と反射防止膜(22a) との界面において0.3%が反射し、99.7%が透過し(吸収は0%)、そして、基板(23)の反射防止膜(23a) と空気との界面において透過した光(すなわち99.7%)の0.3%が反射するので、結果として、99.4%が透過する。
【0096】
なお、ガラス基板(22)(23)の屈折率とホログラム記録材料層(21)の屈折率はほぼ等しいので、ガラス基板(22)と記録材料層(21)との界面、及び記録材料層(21)とガラス基板(23)との界面において反射はない。
【0097】
[比較例1]
マトリックス材料合成時の溶媒として、1−メトキシ−2−プロパノールに代えて、テトラヒドロフランを用いた以外は実施例1と同様にして、ホログラム記録材料溶液を調製し、ホログラム記録媒体を作製した。
【0098】
得られたホログラム記録媒体サンプルについて、実施例1と同様にして特性評価を行った。このとき、ダイナミックレンジ:M#は8.7(ホログラム記録材料層の厚みを1mmとした時に換算した値)であり、実施例1よりも低い値となった。
【0099】
また、記録露光前(初期)の405nmにおける透過率は43%であり、実施例1における透過率よりも低く、記録後にはさらに透過率が低下した。記録後に露光部を目視観察すると、透明性が低下し白濁していた。これは、有機金属化合物からなるマトリックスと光重合性化合物とが相分離を起こした結果によるものと推測される。すなわち、記録露光前の透過率が低いために、露光時の熱が蓄積されやすく、記録層の温度が上昇した状態でモノマーの拡散及び重合反応が進行したと考えられる。そのため、モノマー重合相とマトリックス相のサイズが巨大化しやすく、光を散乱し、白濁を生じたものと考えられる。
【0100】
以上、波長405nmにおいて50%以上の光透過率を有する透過光再生タイプの媒体についての実施例を示したが、同様のホログラム記録材料層を用いることにより、波長405nmにおいて25%以上の光反射率を有する反射光再生タイプの媒体についても作製できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】実施例で作製されたホログラム記録媒体の概略断面を示す図である。
【図2】実施例で用いられたホログラム記録光学系の概略を示す平面図である。
【符号の説明】
【0102】
(11):ホログラム記録媒体
(21):ホログラム記録材料層
(22a) (23a) :反射防止膜
(22)(23):ガラス基板
(24):スペーサ
【出願人】 【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
【出願日】 平成18年9月1日(2006.9.1)
【代理人】 【識別番号】100100561
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 正広


【公開番号】 特開2008−58834(P2008−58834A)
【公開日】 平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願番号】 特願2006−238342(P2006−238342)