トップ :: G 物理学 :: G03 写真;映画;光波以外の波を使用する類似技術;電子写真;ホログラフイ

【発明の名称】 ホログラフィック記録方法及びホログラフィック記録装置
【発明者】 【氏名】福島 義仁

【要約】 【課題】露光エネルギーの記録のための閾値を有するホログラフィック記録媒体にホログラム等を記録する場合に、記録層内部に干渉縞を正確に記録するホログラフィック記録方法及び該ホログラフィック記録方法を適用したホログラフィック記録装置を提供する。

【構成】参照光は、信号光と干渉する偏光成分と該信号光と干渉しない偏光成分とからなり、該参照光中の前記信号光と干渉しない偏光成分による露光エネルギーを前記閾値aの50%〜150%の範囲内とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光エネルギーについて記録のための閾値を有する記録層を備えるホログラフィック記録媒体に偏光させた参照光および信号光を照射して、それらの光干渉パターンにより該記録層にホログラムまたはホログラフィックステレオグラムを記録するホログラフィック記録方法において、
前記参照光は、前記信号光と干渉する偏光成分と該信号光と干渉しない偏光成分とからなり、該参照光中の前記信号光と干渉しない偏光成分による露光エネルギーを前記閾値の50%〜150%の範囲内とすることを特徴とするホログラフィック記録方法。
【請求項2】
前記参照光の、前記信号光と干渉する偏光成分がS偏光成分であり、該信号光と干渉しない偏光成分がP偏光成分であることを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック記録方法。
【請求項3】
前記参照光は直線偏光であり、前記信号光は該参照光のS偏光成分と同じ方向の直線偏光であることを特徴とする請求項2に記載のホログラフィック記録方法。
【請求項4】
前記信号光を前記記録層に対して垂直に入射させ、前記参照光を平面波として該記録層に対して所定の入射角度で斜めに入射させることを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック記録方法。
【請求項5】
前記記録層は、ラジカル重合性の有機化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック記録方法。
【請求項6】
前記記録層に、被写体を異なる観察点から撮影した複数の原画それぞれを要素ホログラムとして順次記録するホログラフィックステレオグラム方式で記録することを特徴とする請求項1に記載のホログラフィック記録方法。
【請求項7】
レーザー光源と、該レーザー光源からの光を異なる偏光成分の2つの光に分離する偏光ビームスプリッターと、前記分離された一方の光(S光)を信号光としてホログラフィック記録媒体に導く第1の光学系と、該第1の光学系内に設けられ前記信号光に画像情報を付与する画像表示器と、前記分離された他方の光(P光)を前記ホログラフィック記録媒体に導く第2の光学系と、該第2の光学系に設けられ前記P光を前記信号光と干渉する偏光成分と該信号光と干渉しない偏光成分とからなる光に変化させて参照光とする偏光状態可変手段とを備え、
請求項1〜6のいずれかに記載のホログラフィック記録方法により、露光エネルギーについて記録のための閾値を有する記録層を備えるホログラフィック記録媒体に前記参照光および信号光を照射して、その光干渉パターンにより該記録層にホログラムまたはホログラフィックステレオグラムを記録することを特徴とするホログラフィック記録装置。
【請求項8】
前記偏光状態可変手段は、前記P光を前記信号光と干渉する偏光成分の光(S2光)に変化させる第1の偏光状態可変部と、前記S2光の一部を前記信号光と干渉しない偏光成分に変化させる第2の偏光状態可変部とを有することを特徴とする請求項7に記載のホログラフィック記録装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィック記録媒体にホログラムまたはホログラフィックステレオグラムを記録するホログラフィック記録方法及びホログラフィック記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィック記録は、信号光と参照光を干渉させ、その干渉光の強度分布に応じて記録材料内の物性を変化させ、記録することである。この記録材料としてのフォトポリマーは、(1)大きな屈折率変調が得られ高い回折効率を得ることができる、(2)処理が容易である、(3)低ノイズ、(4)低コスト、などの特徴を有し、ホログラフィック記録を実用化するにあたり、極めて有望な材料である。特に、ラジカル重合は、重合法が単純であることから、ホログラム記録の分野においても、近年多くの光ラジカル重合性フォトポリマーの開発が行われている。しかし、光ラジカル重合性フォトポリマーは、一般的には、その反応性の高さから、未使用状態での保存安定性に劣る問題があった。
【0003】
その問題を解決するために、種々の対策が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。例えば、材料中に意図的に酸素を混入させ、残留酸素による重合阻害を利用する場合がある。一般にラジカル種と酸素との反応速度は、アクリルとの反応速度に比べ、3桁程度大きいため、記録媒体の保管中、熱などにより意図せずラジカル種ができた場合でも、酸素と選択的に反応が起こり、重合は進まない。
【0004】
図1はこのようなホログラフィック記録媒体の記録感度特性である。ホログラムが記録される照射エネルギーにある閾値(Eth)を有し、Eth以下の照射エネルギーで露光しても、材料中の酸素と選択的に反応が起こり、重合が進まず、ホログラムは記録されない。一方で、ホログラム記録においては、この酸素による重合阻害は、干渉縞を材料中に正確に記録する際の障害となる。干渉光の上記閾値以下の光強度変調成分は材料中に記録されないためである。
【0005】
この問題を解決するために、記録する前に、プレ露光処理を行うことがなされている。酸素阻害による閾値に相当する露光量をあらかじめ材料に照射しておくものである。しかし、ホログラフィックステレオグラムのように、ドットもしくは線状にホログラム要素を順次記録していく場合は、プレ露光から記録するまでの時間が各ホログラム要素によってまちまちとなるため、例えばプレ露光から記録するまでの時間が長いと、基材からの再酸素進入により、プレ露光の効果が落ちてしまうことも考えられる。もちろん、プレ露光から記録するまでの時間が、各要素ホログラムで一定になるような構成にすることも不可能ではないが、記録装置及び記録プロセスが複雑になってしまう。
【0006】
また、閾値に相当する強度分だけ、参照光の強度を大きくすることに関しては、そのオフセット量が信号光の強度分布に依存するため、図2に示すように干渉光に一定のオフセットを与えることができなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−212253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、ホログラム記録のための露光エネルギーの閾値を有するホログラフィック記録媒体にホログラム等を記録する場合に、記録層材料内部に干渉縞を正確に記録するホログラフィック記録方法及び該ホログラフィック記録方法を適用したホログラフィック記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために提供する本発明は、露光エネルギーについて記録のための閾値を有する記録層を備えるホログラフィック記録媒体に偏光させた参照光および信号光を照射して、それらの光干渉パターンにより該記録層にホログラムまたはホログラフィックステレオグラムを記録するホログラフィック記録方法において、前記参照光は、前記信号光と干渉する偏光成分と該信号光と干渉しない偏光成分とからなり、該参照光中の前記信号光と干渉しない偏光成分による露光エネルギーを前記閾値の50%〜150%の範囲内とすることを特徴とするホログラフィック記録方法である。
【0010】
ここで、前記参照光の、前記信号光と干渉する偏光成分がS偏光成分であり、該信号光と干渉しない偏光成分がP偏光成分であることが好ましく、また前記参照光は直線偏光であり、前記信号光は該参照光のS偏光成分と同じ方向の直線偏光であることが好ましい。
【0011】
また、前記信号光を前記記録層に対して垂直に入射させ、前記参照光を平面波として該記録層に対して所定の入射角度で斜めに入射させるとよい。
【0012】
また、前記記録層は、ラジカル重合性の有機化合物を含むことが好ましい。
さらに、前記記録層に、被写体を異なる観察点から撮影した複数の原画それぞれを要素ホログラムとして順次記録するホログラフィックステレオグラム方式で記録することが好適である。
【0013】
前記課題を解決するために提供する本発明は、レーザー光源と、該レーザー光源からの光を異なる偏光成分の2つの光に分離する偏光ビームスプリッターと、前記分離された一方の光(S光)を信号光としてホログラフィック記録媒体に導く第1の光学系と、該第1の光学系内に設けられ前記信号光に画像情報を付与する画像表示器と、前記分離された他方の光(P光)を前記ホログラフィック記録媒体に導く第2の光学系と、該第2の光学系に設けられ前記P光を前記信号光と干渉する偏光成分と該信号光と干渉しない偏光成分とからなる光に変化させて参照光とする偏光状態可変手段とを備え、請求項1〜6のいずれかに記載のホログラフィック記録方法により、露光エネルギーについて記録のための閾値を有する記録層を備えるホログラフィック記録媒体に前記参照光および信号光を照射して、その光干渉パターンにより該記録層にホログラムまたはホログラフィックステレオグラムを記録することを特徴とするホログラフィック記録装置である。
【0014】
ここで、前記偏光状態可変手段は、前記P光を前記信号光と干渉する偏光成分の光(S2光)に変化させる第1の偏光状態可変部と、前記S2光の一部を前記信号光と干渉しない偏光成分に変化させる第2の偏光状態可変部とを有することが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のホログラフィック記録方法によれば、ホログラムが記録される露光エネルギーに閾値を有するホログラフィック記録媒体についても、露光領域全体に均一で前記閾値に対応するオフセットを与えることにより、正確に干渉縞を記録することができ、鮮明なホログラムもしくはホログラフィックステレオグラムを作成することが可能となる。特に、光ラジカル重合性フォトポリマーを記録材料として使用する場合、保存安定性を維持しつつ、正確な干渉縞を記録することが可能となる。
また本発明のホログラフィック記録装置によれば、ホログラムが記録される露光エネルギーに閾値を有するホログラフィック記録媒体についても、該閾値に相当する均一なオフセットを簡単に与えることができ、これにより正確に干渉縞を記録できることから、鮮明なホログラムもしくはホログラフィックステレオグラムを作成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
通常、ホログラム記録においては、信号光と参照光の干渉効率を上げるため、信号光、参照光それぞれの偏光状態を同じ状態にしている。これらの干渉光によるエネルギー分布の概念図を図3に示す。干渉効率が良いため、干渉光によるエネルギーは0近傍からの分布を示す。この干渉光を用いて、通常のホログラフィック記録材料からなる記録層に記録を行うと、該記録層内部において前記干渉光のエネルギー分布に応じた光重合が進み、干渉縞を形成することになる。
【0017】
ここで、ホログラムが記録される露光エネルギー(光照射エネルギー)に閾値を有するホログラフィック記録媒体を使用する場合、図3に示すように記録層は露光エネルギーについて記録するための閾値aを有する。そのため、前記のような従来の信号光、参照光それぞれの偏光状態を同じ状態にしたホログラム記録条件では、エネルギー分布のうちこの閾値を下回る領域が干渉縞として反映されないこととなり、ホログラフィック記録媒体に干渉縞を正確に記録することができなくなっていた。
【0018】
発明者は、係る問題を解決するための手段として、参照光の偏光状態を信号光の偏光状態からわずかにずらすことが効果的であることを見出した。すなわち、参照光中に、信号光と干渉しない偏光成分を意図的に導入し、この偏光成分が、信号光とは干渉しないため、光強度に一定のオフセットを与えることができるものである。以下、本発明の詳細について説明する。
【0019】
本発明に係るホログラフィック記録方法は、露光エネルギーについて記録のための閾値を有する記録層を備えるホログラフィック記録媒体に偏光させた参照光および信号光を照射して、それらの光干渉パターンにより該記録層にホログラムまたはホログラフィックステレオグラムを記録するものであって、前記参照光は、前記信号光と干渉する偏光成分と該信号光と干渉しない偏光成分とからなり、該参照光中の前記信号光と干渉しない偏光成分による露光エネルギーを前記閾値の50%〜150%の範囲内とすることを特徴とする。
【0020】
本発明における、参照光が信号光と干渉しない成分を持つときの、信号光と参照光の干渉光Iによるエネルギー分布の概念図を図4に示す。従来の参照光が信号光との非干渉成分を持たない場合(図3)に比べ、干渉光Iのエネルギー分布はこの非干渉成分による照射エネルギーに対応した一定のオフセットIを有する。このとき、非干渉成分による照射エネルギーを、ホログラムが記録される記録層の照射エネルギーの閾値a程度にしておけば、ホログラム記録として有効な干渉縞のエネルギー分布Iは、閾値aを下回ることなくその干渉縞を正確に記録層に記録することができる。
【0021】
ここで、非干渉成分による照射エネルギーが小さすぎると、ホログラム記録として有効な干渉縞の一部が記録されない状況に陥り、正確な干渉縞を記録することができない。一方、非干渉成分による照射エネルギーが大きすぎると、そのエネルギーの一部が重合を引き起こすことになるので、材料中のモノマーが無駄に消費されてしまうことになり、好ましくない。これらの制約から、非干渉成分による照射エネルギーは、ホログラムが記録される照射エネルギーの閾値aの50%から150%の範囲に収めておくことが望ましい。
【0022】
つぎに本発明のホログラフィック記録方法の詳細について、本発明に係るホログラフィック記録装置に基づいて説明する。本発明のホログラフィック記録装置は、本発明のホログラフィック記録方法を実現するのに好適な構成となっている。
【0023】
図5は、本発明に係るホログラフィック記録装置の光学系の概略構成を示すものである。
図5における符号として、1は、レーザー光源であり後述の実施例ではYAGレーザーの第二高調波(532nm)を使用した。2は、図示しない外部制御装置により必要な照射時間だけ開閉するシャッターである。3は、信号光5の強度調整用として使用する1/2波長板である。4は、信号光5と参照光となる光6aに分離する偏光ビームスプリッターである。7は、参照光6dの強度を調整する1/2波長板である。8は、偏光ビームスプリッターである。また、偏光ビームスプリッター8を透過したP偏光が光学系内で迷光とならないよう、光吸収体9を使用するのが望ましい。10は、参照光となる光6cを反射するミラーである。11は、参照光6dの信号光5との干渉成分(S偏光)と非干渉成分(P偏光)の強度比を調整する1/2波長板である。12は、信号光5を反射するミラーである。13は、画像表示器である。14は、シリンドリカルレンズである。15は、ホログラフィック記録媒体である。
【0024】
ここで、図6に、本発明で用いるホログラフィック記録媒体15の構成例を示す。
図6に示すように、ホログラフィック記録媒体15は、下部の透明基材151、露光エネルギーについて記録のための閾値を有する記録層154、上部の透明基材157とが積層された構成となっている。
【0025】
透明基材151,157は、ガラスもしくはプラスチック製の透明基材であり、記録時の干渉効率を悪化させないよう、光学的異方性の小さな材料が好ましい。後述の実施例においては、厚さ100μmのポリカーボネート製フィルムを使用した。
【0026】
記録層154は、ホログラフィック記録材料からなり、例えばアクリルアミド、スチレン、フェニルアクリレートなどの光ラジカル重合性フォトポリマーを一種類以上使用できる。また、光ラジカル重合用に反応開始剤や増感剤が含まれる。反応開始剤には、例えばアゾ化合物、ジアリールヨードニウム塩、トリアジン類などの一般的な化合物が使用できる。また増感剤は、可視レーザー光を吸収するための色素のような有色化合物であり、例えばシアニン系色素が使用できる。
【0027】
この記録層154では、屈折率変化が生じることによってホログラムの記録が行われる。すなわち、感光する光の波長域が所望の特定の波長に変えられるように、記録層154の材料には所望の波長に感光する反応開始剤や増感剤等の感光剤が配合されており、特定の波長域の光が照射されると光硬化反応が開始するようになっている。また、未使用時の保存安定性を確保するために、無酸素条件下で媒体の作成を行うことはせず、記録材料中に酸素を含んだ状態となっている。
【0028】
なお、記録層154を構成するホログラフィック記録材料を透明基材151または157に塗布する場合、溶剤に溶かした液状の状態で塗布し、その後溶剤を蒸発させる方法が取られることが多い。このとき透明基材151または157と溶剤が反応する場合は、溶剤と反応しない反応防止層152,156を導入することが好ましい。
【0029】
また、透明基材151,157と記録層154との密着性を挙げるために、接着層153,155を導入することが好ましい。ただし、透明基材151,157と記録層154との間で実使用上問題ない接着強度が取れている場合は、この限りではない。
【0030】
本発明のホログラフィック記録装置では、図5において、つぎのような調整が行われて、ホログラフィック記録媒体15に記録が行われる。
(S11)レーザー光源1から出射されたレーザー光は、シャッター2を通過し、1/2波長板3で信号光のために強度が調整された後に、偏光ビームスプリッター4にてS偏光である信号光5とP偏光である参照光となる光6aに分離される。
(S12)分離された信号光5は、ミラー12で反射されて画像表示器13に入射し、該画像表示器13で画像情報を有する信号光5とされる。
(S13)画像表示器13を出た信号光5は、シリンドリカルレンズ14により、ホログラフィック記録媒体15上に集光される。
【0031】
(S14)参照光となる光6aは、1/2波長板7により参照光6dの強度が調整される。具体的には、参照光となる光6aはP偏光の一部が参照光6cとなるためのS偏光とされた光6bとなるが、このS偏光の割合は1/2波長板7の回転により調整される。
(S15)ついで、偏光ビームスプリッター8において、参照光となる光6bのうち、P偏光成分は透過され、光吸収体9に吸収される。また、参照光となる光6bのうち、S偏光成分は参照光となる光6cとして偏光ビームスプリッター8により反射され、さらにミラー10で反射されて1/2波長板11に入射する。
(S16)参照光となる光6cは、1/2波長板11により参照光6dにおける信号光5との非干渉成分の割合が調整される。具体的には、参照光となる光6cはS偏光の一部がP偏光とされ、これにより信号光5と干渉する偏光成分(S偏光成分)と信号光5と干渉しない偏光成分(P偏光成分)とからなる参照光6dとされる。したがって、このP偏光成分が図4におけるオフセットIとなり、このとき、オフセットI量はP偏光の割合として1/2波長板11の回転により調整される。
(S17)1/2波長板11から出た参照光6dはホログラフィック記録媒体15に入射する。
以上のように、ホログラフィック記録媒体15に信号光5及び参照光6dが照射され、記録層154に適正な記録が行われる。
【0032】
ここで、ホログラフィック記録媒体15に記録する際に信号光5と参照光6dを効率よく干渉させるとよいが、その偏光状態をホログラフィック記録媒体15中で揃えることが重要である。そのためには、信号光5と参照光6dの電場ベクトルが材料内部で同じ方向を向く直線偏光にすることが好ましい。すなわち、信号光5を記録層154に対して垂直に入射させ、参照光6dを平面波として記録層154に対して所定の入射角度で斜めに入射させ、参照光6dは直線偏光であり、信号光5は参照光6dのS偏光成分と同じ方向の直線偏光であることが好ましい。その様子を図7に示す。
【0033】
参照光6dのS偏光成分(電場の振動方向がd2方向)を含む平面波とし、信号光5もそれに応じた偏光方向(電場の振動方向がd2方向)の直線偏光にすると、信号光5と参照光6dが記録層154内部において、もっとも効率的に干渉する。なお、透明基材151,157に複屈折がある場合は、偏光状態がその複屈折の影響をうけるため、干渉性の低下が起こるので、これを補償するために、予め参照光の偏光状態を変えておく方法などが知られている(特開2003−15509号公報)が、そのような透明基材の複屈折の影響を受けない範囲では、上述のように光入射させる時点で、偏光方向を揃えておくのが、干渉効率を低下させない一般的な手法である。
【0034】
また、本発明のホログラフィック記録方法において、記録層154に、被写体を異なる観察点から撮影した複数の原画それぞれを要素ホログラムとして順次記録するホログラフィックステレオグラム方式で記録することが好ましい。
【0035】
ホログラフィックステレオグラムとは、被写体を異なる観察点から撮影した複数の原画を、ホログラフィック記録媒体に、短冊状もしくはドット状の要素ホログラムとして順次記録することにより作成されるものである。
【0036】
図8は、横方向に視差情報を有するホログラフィックステレオグラムの原画を撮影する様子を示す。被写体31を横方向の異なる観察点からカメラ32で順次撮影することにより複数の原画を得る。
【0037】
ついで、このようにして得られた原画を画像表示器13で順次表示し、表示された画像にレーザー光を照射し、画像情報を有するレーザー光(信号光5)をシリンドリカルレンズ14で集光する。集光された信号光5と平面波である参照光6dの干渉によって生じる干渉縞をホログラフィック記録媒体15に順次記録する(図9)。
【0038】
このようにして作成したホログラフィックステレオグラムは、横方向の異なる観察点からの画像情報を、短冊状の要素ホログラムとして横方向に順次記録されている。ある位置から片方の目で見た場合には、各要素ホログラムの一部分として記録されている画像情報の集合体が2次元の画像として認識され、もう片方の目で見た場合には、他の2次元画像として認識される。そして、これを両方の目で見た場合には、左右の目の視差により、3次元画像として認識される。
【実施例】
【0039】
本発明のホログラフィック記録装置を用いて本発明のホログラフィック記録方法によりホログラフィック記録媒体に記録した実施例を以下に説明する。なおここでは、図6のホログラフィック記録媒体15を装着した図5のホログラフィック記録装置を前提に説明する。
【0040】
(実施例1)
単色のホログラムを記録する場合を説明する。ここでは、レーザー光源1としてYAGレーザーの第二高調波(532nm)を使用した。
まず、ホログラフィック記録媒体15の記録層154の記録感度特性を確認する。記録感度特性の確認としては、できれば実際の光学系で行うのが望ましいが、より簡易的な方法として、平面波同士の単純な干渉縞を記録した際の記録感度特性でも、それほど大きな違いはない。本実施例においては、ホログラムの記録され始める照射エネルギー(Eth)は、6mJ/cmであった。このホログラムが記録される照射エネルギーは、信号光と参照光の照射エネルギーの和をとっている。
【0041】
また、回折効率が90%以上で、明るさとして問題ないのは、照射エネルギーとしては30mJ/cmであった。そのうち、6mJ/cmが、重合以外に消費されるエネルギーとすると、重合に費やされる照射エネルギーは、24mJ/cmである。
【0042】
これらの感度特性を把握した上で、実際のホログラフィック記録装置(図5)における露光方法の実施例を説明する。
まず、ホログラフィック記録媒体15における信号光5の照射エネルギーが、12mJ/cm(上記24mJ/cmの半分)になるように調整する。記録時の露光時間が0.25秒とすると、信号光の強度が48mW/cmになるように、1/2波長板3を回転し調整する。
【0043】
次に、参照光6dに関しては、信号光5との干渉成分に相当する照射エネルギー12mJ/cmと、非干渉成分に相当する照射エネルギー6mJ/cmの和である18mJ/cmがホログラフィック記録媒体15で得られるよう調整する。記録時の露光時間が0.25秒とすると、光強度として72mW/cmになるように、1/2波長板7を回転し調整する。
【0044】
最後に、参照光6dの、信号光5との干渉成分(S偏光)に相当する光強度が48mW/cm(照射エネルギーとして12mJ/cm)、非干渉成分(P偏光)に相当する光強度が24mW/cm(照射エネルギーとして6mJ/cm)になるように、1/2波長板11を回転し調整する。なお、その調整のときだけ1/2波長板11の後に、S偏光のみ(もしくはP偏光のみ)透過する偏光板を挿入し、偏光板を通過後の光強度を測定し、所望の光強度が得られるよう調整するとよい。
【0045】
このように、光学系を調整することにより、ホログラムが記録される照射エネルギーに6mJ/cmという閾値があっても、その影響を受けることなく、ホログラフィック記録媒体に正確に干渉縞を記録することが可能となった。もちろん、参照光に信号光との非干渉成分を含ませることができれば、上記記載の光学系には限定されない。
【0046】
本実施例においては、参照光6dは、S偏光成分の強度が48mW/cmで、P偏光成分が24mW/cmの直線偏光であるが、必ずしも直線偏光である必要はない。これらの強度成分を有する楕円偏光であっても本質的には同じ効果が得られる。しかし、光学系の簡易さを考えた場合は、本実施例のごとく、参照光も直線偏光にしておくのが望ましい。
【0047】
(実施例2)
本発明は、RGB三原色波長のそれぞれのレーザーで記録し、フルカラーのホログラムを作成する場合でも適用可能である。この場合の露光方法も基本的には実施例1と同様の方法をとるが、3つの光を用いるため閾値に対応したオフセットの取り方が単色の場合と異なる。
【0048】
一般に、RGBの3色に感光するホログラム記録材料においても、RGBのそれぞれの波長において記録感度は異なる。例えば、RGBそれぞれ単色で記録したときの、ホログラムが記録される照射エネルギーの閾値Eth(R)、Eth(G)、Eth(B)はそれぞれ異なるのが普通である。
【0049】
その場合、参照光の、信号光との非干渉成分を与える方法は、その記録方式に依存する。例えばRGBの要素をそれぞれ別の領域に独立に記録する場合は、それぞれの参照光で、Eth(R)、Eth(G)、Eth(B)を与える非干渉成分を考えればよい。
【0050】
一方、同じ場所に3色を同時に露光する場合には、ある一色において閾値Ethを与える非干渉成分を導入するか、もしくは、それぞれの波長において、Eth(R)/3、Eth(G)/3、Eth(B)/3のオフセットを与える非干渉成分を導入しても良い。しかし、それぞれの増感色素が十分存在する場合には、一番記録感度の良い波長において、Ethを与える非干渉成分を導入するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】ホログラフィック記録媒体の記録感度特性を示す図である。
【図2】干渉光によるエネルギー分布の概念図である。
【図3】従来のホログラフィック記録方法における干渉光によるエネルギー分布を示す図である。
【図4】本発明のホログラフィック記録方法における干渉光によるエネルギー分布を示す図である。
【図5】本発明に係るホログラフィック記録装置の光学系を示す構成図である。
【図6】本発明で用いるホログラフィック記録媒体の構成例を示す断面図である。
【図7】ホログラフィック記録媒体への信号光、参照光が照射される様子を示す概略図である。
【図8】ホログラフィックステレオグラム方式での撮影の様子を示す概略図である。
【図9】ホログラフィックステレオグラム方式での記録の様子を示す概略図である。
【符号の説明】
【0052】
1・・・レーザー光源、2・・・シャッター、3,7,11・・・1/2波長板、4,8・・・偏光ビームスプリッター、5・・・信号光、6a,6b,6c・・・参照光となる光、6d・・・参照光、9・・・光吸収体、10,12・・・ミラー、13・・・画像表示器、14・・・シリンドリカルレンズ、15・・・ホログラフィック記録媒体、151,157・・・透明基材、152,156・・・反応防止層、153,155・・・接着層、154・・・記録層、31・・・被写体、32・・・カメラ
【出願人】 【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
【出願日】 平成18年7月10日(2006.7.10)
【代理人】 【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子


【公開番号】 特開2008−15392(P2008−15392A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−188815(P2006−188815)