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【発明の名称】 光応答性記録材料およびそれを使用する光情報記録媒体
【発明者】 【氏名】福田 隆史

【氏名】金 俊永

【氏名】茨田 大輔

【氏名】八瀬 清志

【氏名】千崎 利英

【要約】 【課題】ホログラフィックな光情報記録における光誘起複屈折、長期保存安定性、繰り返し耐久性などの諸特性を改善する光情報記録材料得る。

【構成】光応答性部位として次式(1)および(2)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光応答性部位として次式(1)および(2)
【化1】


(式中、Ar1〜Ar4は独立にベンゼン環またはヘテロ芳香環構造を示し、R1〜R4は独立に前記環構造に結合する水素原子または置換基を示し、m、nおよびs、tはその結合数を示し、uは1又は2を示し、X1〜X4は末端基または連結基を示し、各式の少なくとも一方は連結基としてコポリマーの主鎖または側鎖に連結されており、末端基は水素原子または置換基である。)で表わされる構成単位を主鎖および側鎖の少なくとも一方に有するコポリマーであることを特徴とする光応答性記録材料。
【請求項2】
コポリマーの分子量(Mn)が、700〜1000000である請求項1記載の光応答性記録材料。
【請求項3】
式(1)および(2)で表わされる構成単位の存在比(モル比)が、2:8〜8:2の範囲である請求項1または2に記載の光応答性記録材料。
【請求項4】
式(1)および(2)で表わされる構成単位以外の他の構成単位を、80モル%以下含む請求項1〜3のいずれかに記載の光応答性記録材料。
【請求項5】
式(1)および(2)で表わされる構成単位の少なくとも一部に光誘起分子再配向を促進させるための液晶性基、光応答性の光誘起分子再配向状態を安定に保持する機能を有する官能基、大きな光学的異方性を有する官能基またはコポリマーの溶媒溶解性、製膜性を向上させるための官能基を有する請求項1〜4のいずれかに記載の光応答性記録材料。
【請求項6】
他の構成の単位の少なくとも一部が、光誘起分子再配向を促進させるための液晶性基、光応答性の光誘起分子再配向状態を安定に保持する機能を有する官能基、大きな光学的異方性を有する官能基またはコポリマーの溶媒溶解性、製膜性を向上させるための官能基を有する請求項4に記載の光応答性記録材料。
【請求項7】
連結基が、エステル、チオエステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、スルホン、スルホニル、スルホンアミド、イミン、アゾ、炭化水素鎖またはその1以上の組合せからなる結合基を含む基である請求項1〜6のいずれかに記載の光応答性記録材料。
【請求項8】
コポリマーの主鎖が炭素鎖であって、その側鎖に式(1)及び式(2)で表わされる構成単位を有する請求項1〜7のいずれかに記載の光応答性記録材料。
【請求項9】
主鎖の炭素鎖は、炭素-炭素不飽和結合を有する2種以上のモノマーの共重合により形成されたものである請求項8の光応答性記録材料。
【請求項10】
炭素-炭素不飽和結合を有するモノマーが、次式(3)および(4)
【化2】


(式中、X2、Ar1〜Ar4、R1〜R4、m、nおよびs、t、uは、式(1)および(2)と同じ意味であり、R5、R6は水素原子またはメチル基を示す。Xは結合基COOと共に連結基X1またはX3を構成する。)で表わされるモノマーを必須成分として含むモノマーである請求項9記載の光応答性記録材料。
【請求項11】
次式(5)および(6)
【化3】


(式中、Ar1〜Ar4は独立にベンゼン環またはヘテロ芳香環構造を示し、R1〜R4は独立に前記環構造に結合する水素原子または置換基を示し、m、nおよびs、tはその結合数を示し、uは1又は2を示し、X2、X4は末端基または連結基を示し、末端基は水素原子または置換基である。L1、L3は連結基であり、M1、M3は重合性官能基を有する重合性基である。)で表わされるモノマーを必須成分として含むモノマーを共重合することを特徴とするコポリマーの製造方法。
【請求項12】
式(5)および(6)で表されるモノマーと共に、次式(7)
M-Y1 (7)
(式中、Mは重合性官能基を有する重合性基を示し、Y1は水素原子又は置換基を示す。)で表わされるモノマーを、全モノマーに対し80モル%以下使用する請求項11に記載のコポリマーの製造方法。
【請求項13】
式(5)および(6)で表わされるモノマーが、次式(3)および(4)
【化4】


(式中、X2、Ar1〜Ar4、R1〜R4、m、nおよびs、t、uは、式(5)および(6)と同じであり、R5、R6は水素原子またはメチル基を示す。Xは結合基COOと共に連結基を構成する。)で表わされるモノマーである請求項11又は12に記載のコポリマーの製造方法。
【請求項14】
式(7)におけるY1の少なくとも一部が、光誘起分子再配向を促進する液晶性基またはその安定化基、光学的異方性基、コポリマーの溶媒溶解性、製膜性を向上させるための官能基を有する置換基である請求項12に記載のコポリマーの製造方法。
【請求項15】
光照射または局所加熱により発生する光の吸収特性変化または屈折率変化による光情報記録を可能とする媒体であって、請求項1〜10のいずれかに記載の光応答性記録材料を使用することを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項16】
書き換えが可能な体積ホログラムメモリとして用いられる請求項15記載の光情報記録媒体。
【請求項17】
書き換えが可能な表面レリーフ型メモリとして用いられる請求項15の光情報記録媒体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アゾ化合物及びトラン骨格をもつ化合物から得られるコポリマーからなる光応答性記録材料およびそれを使用する光情報記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
社会は著しい高度情報化の波を迎えており、それに伴って情報の処理・記録に関わる技術・材料への社会的要求と重要性が増大している。しかしながら、現行のデジタル記録方式による光(あるいは磁気)記録では、今後の技術進展を見込んだとしても、1 TB/inch2 程度が限界と考えられており、5〜10年後にはこの限界に達することが懸念されている。したがって、新しい超高密度記録方式を模索し、この限界を打破できる技術を確立することが必要である。
【0003】
ホログラフィックメモリは3次元情報をそのまま3次元で、また、2次元の面状データを多層化して3次元的に、光の干渉を用いて記録することを可能とする技術である。特に、2次元データをページ単位として記録・再生する方式は、現行のデジタル記録方式の信号処理システムと互換性が高く、また、記録・再生の高速転送が可能となる点で高い潜在力を秘めた技術であり、1 TB/inch2を大きく上回る超高密度・超大容量化が可能である。
【0004】
これまで、ホログラフィックメモリを実現する光情報記録媒体用の材料として、フォトリフラクティブ材料や光重合性フォトポリマー、フォトクロミック有機材料(特に、高分子)が知られている。フォトリフラクティブ材料は無機結晶性材料(チタン酸バリウム、ニオブ酸リチウムなど)が代表的なものとして知られているが、感度が低い、非破壊読み出しが原理的に困難、書き込み光の波長に対する選択性に乏しい、もろく、加工性に乏しい、薄膜化が困難などの欠点があった。また、光重合性フォトポリマーは上述の欠点を回避する材料設計が比較的自由に行える点で有望であるが、この材料の場合は情報の書き換えはできないため、ライトワンスメディア用途に限定される。一方、フォトクロミック有機材料を用いたものでは、アゾベンゼン構造を含有するポリマーが代表的なものとして既に知られており、干渉露光や多光子反応、局所熱励起、表面変形など種々の物理的原理に基づく情報記録が行える。ただし、その材料の感度、応答速度、長期保存安定性、繰り返し耐久性など種々の特性にわたって全てを充足する材料はまだ見出されていない。
【0005】
【特許文献1】WO00/54111号公報
【特許文献2】WO00/54112号公報
【特許文献3】特開2001-294652号公報
【非特許文献1】Chem. Rev., vol.5 (1993) p.403-411
【非特許文献2】Macromol. Chem. Arys., vol.196 (1995) p.1375-1390
【非特許文献3】ACS Symposium Series, vol.672 (1997) p.236-250
【非特許文献4】Macromolecules, vol.31 (1998) p.1155-1161
【0006】
非特許文献1には光誘起複屈折とそれを利用したホログラム記録について、また、光感応性を持つアゾベンゼンと形状異方性の高い液晶性部位の2種類の構成単位からなる共重合高分子材料の有用性が述べられている。非特許文献2には光感応性を持つアゾベンゼンと形状異方性の高い液晶性部位の2種類の構成単位からなる共重合高分子材料におけるホログラムの形成と緩和ダイナミクスについての知見が述べられている。非特許文献3および4にはアゾベンゼン高分子において、直線偏光の照射により分子の配向が制御され、複屈折の分布を利用して情報を記録できること、また、円偏光によってその分子配向を乱すことで情報を消去できることが明記されている。更には、形状異方性の高い共重合成分のダイポールが特性に与える影響についても論じている。
【0007】
特許文献1〜3にはアゾベンゼン構造含有コポリマーを書き換え可能な光記録媒体として利用すること、とりわけホログラフィック光記録媒体として利用することが開示されている。しかしながら、これら材料は光誘起複屈折の大きさが十分でなく、この目的の光記録材料としての性能も不十分であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ホログラフィックな光情報記録における可視光吸収、光誘起複屈折、長期保存安定性、繰り返し耐久性などの諸特性を改善する光情報記録材料または光応答性記録材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは超大容量データを高速に記録再生できる材料について鋭意研究を重ねた結果、従来代表的、かつ、現時点において比較的良好な特性を示すことで知られているアゾ化合物の化学構造を改変し、また、それらの双極子モーメントの組み合わせを最適化する意図に基づいて、アゾ化合物と、トラン骨格をもつ化合物を側鎖に有するコポリマー材料を新規に開発すると共に、ホログラフィックな光情報記録における可視光吸収、光誘起複屈折、長期保存安定性、繰り返し耐久性などの諸特性の向上が図れることを見出し、本発明に至った。
【0010】
本発明は、光応答性部位として次式(1)および(2)
【化1】


(式中、Ar1〜Ar4は同一であっても異なってもよいベンゼン環またはヘテロ芳香環構造を示し、R1〜R4は同一であっても異なってもよい前記環構造に結合する水素原子または置換基を示し、m、nおよびs、tはその結合数を示す。uは1又は2の整数を示し、X1〜X4は末端基または連結基であって、各式の少なくとも一方は連結基としてコポリマーの主鎖または側鎖に連結されており、末端基は水素原子または置換基であることを示す。)で表わされる構成単位を主鎖および側鎖の少なくとも一方に有するコポリマーであることを特徴とする光応答性記録材料である。
【0011】
また本発明は、次式(5)および(6)
【化2】


(式中、Ar1〜Ar4、R1〜R4、m、n、t、u、X2およびX4は式(1)および(2)と同じ意味を有する。L1、L3は連結基であり、M1、M3は重合性官能基を有する重合性基である。)で表わされるモノマーを必須成分として含むモノマーを共重合することを特徴とするコポリマーの製造方法である。
【0012】
ここで、式(5)および(6)で表されるモノマーとしては、次式(3)および(4)で表されるモノマーが好ましく例示される。
【化3】


(式中、式(5)および(6)と同じ符号は同じ意味を有し、R5、R6は水素原子またはメチル基を示す。Xは結合基COOと共に連結基(式(5)および(6)のL1またはL3)を構成する。)
【0013】
ここで、コポリマーが次のいずれか1以上の要件を満足することはより優れた光応答性記録材料を与える。
1) コポリマーの分子量(Mn)が、700〜1000000の範囲にあること、2)式(1)および(2)で表わされる構成単位の存在比(モル比)が、2:8〜8:2の範囲にあること、3)式(1)および(2)で表わされる構成単位以外の他の構成単位を、80モル%以下含むこと、4)式(1)および(2)で表わされる構成単位中に光誘起分子再配向を促進させるための液晶性基、光応答性の光誘起分子再配向状態を安定に保持する機能を有する官能基、大きな光学的異方性を有する官能基またはコポリマーの溶媒溶解性、製膜性を向上させるための官能基を有すること、5)上記他の構成の単位の少なくとも一部が、光誘起分子再配向を促進させるための液晶性基、光応答性の光誘起分子再配向状態を安定に保持する機能を有する官能基、大きな光学的異方性を有する官能基またはコポリマーの溶媒溶解性もしくは製膜性を向上させるための官能基を有すること、6)連結基が、エステル、チオエステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、スルホン、スルホニル、スルホンアミド、イミン、アゾ、炭化水素鎖またはその1以上の組合せからなる結合基を含む基であること、7)コポリマーの主鎖が炭素鎖であって、その側鎖に式(1)及び式(2)で表わされる構成単位を有していること、8)主鎖の炭素鎖は、炭素-炭素不飽和結合を有する2種以上のモノマーの共重合、またはこれらのモノマーと重合反応性基を有する他のモノマーとの共重合により形成されたものであること。
【0014】
更に本発明は、光照射または局所加熱により発生する光の吸収特性変化または屈折率変化による光情報記録を可能とする媒体であって、上記の光応答性記録材料を使用することを特徴とする光情報記録媒体である。本発明の光情報記録媒体は、書き換えが可能な体積ホログラムメモリまたは書き換えが可能な表面レリーフ型メモリとして好適に用いられる。
【0015】
また本発明は、式(3)および(4)で表わされるモノマーを必須成分として含むモノマーを共重合して得られる上記の光応答性記録材料である。上記光応答性記録材料の製造方法において、光誘起分子再配向を促進する液晶性基またはその安定化基、光学的異方性基、コポリマーの溶媒溶解性、製膜性を向上させるための官能基を有する1種以上のモノマーを使用すると優れた光応答性記録材料が得られる。
【0016】
本発明の光応答性記録材料は、上記式(2)で表されるトラン骨格をもつ単位(トラン単位という)と式(1)で表されるアゾ基をもつ単位(アゾ単位という)をコポリマー中に構成単位として有する。これらの単位を有することが、アゾ単位を有するがトラン単位を有しない従来既知の記録材料に比べて優れた性能を示すのは以下の理由に基づくと推測される。
1) トラン単位はアゾ単位に比べ、より長いπ共役電子系を有するため、分子が配向した際に発現される複屈折値は大きくなる。
2) トラン単位を側鎖に導入することによってコポリマーに液晶性が付与され、アゾ単位とトラン単位の2種類の側鎖または主鎖が自発的に、かつ、分子協調的に光配向を起こす。
そして、アゾ単位は光異性化特性を主に与え、トラン単位は透明な複屈折特性を主に与える。これらの総合的な結果として、それぞれの単位単独のポリマーの場合には得られなかった大きな光誘起複屈折値を実現することができる。
【0017】
まず、本発明の光応答性記録材料について、その製造方法をまじえて説明する。
本発明の光応答性記録材料は、上記式(1)で表されるアゾ単位および(2)で表されるトラン単位を光応答性部位として有するコポリマーからなる。ここで、コポリマーとはオリゴマーを含む意味で使用され、平均分子量(Mn)として、700〜1000000、好ましくは1000〜100000、より好ましくは3000〜30000の範囲であることがよい。
【0018】
このコポリマーは、アゾ単位およびトラン単位のみからなるものであっても、その他の構成単位(他の構成単位という)を1以上含んでもよい。他の構成単位を含む場合は、80モル%以下、好ましくは10〜70モル%の範囲とすることがよい。
【0019】
コポリマー中におけるアゾ単位とトラン単位の存在モル比は、1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2、より好ましくは4:6〜6:4の範囲にあることがよい。この範囲を外れると、有機溶媒に対する溶解性が低く、光学品質の高い薄膜を得ることが難しくなる。
【0020】
式(1)、(2)において、Ar1〜Ar4は独立に、ベンゼン環またはヘテロ芳香環構造を示すが、好ましいヘテロ芳香環構造はヘテロ原子が1個の単環構造であり、より好ましくはピリジン環またはベンゼン環である。R1〜R4は独立に、前記環構造に結合する水素原子または置換基を示すが、好ましくは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ基である。m、nおよびs、tはその結合数を示す。この数は、Ar1〜Ar4がベンゼン環である場合は4であるが、置換基の数としては0、1または2が好ましい。uは1または2である。
【0021】
1〜X4は、末端基または連結基であって、各式の少なくとも一方は連結基としてコポリマーの主鎖または側鎖に連結されている。X1およびX3が連結基であって、X2およびX4が末端基であることが好ましい。しかし、全てのX1〜X4が連結基であることもできる。例えば、X1〜X4を介して複数の式(1)または(2)で表される構成単位や、他の構成単位が連結することもできる。X1〜X4が連結基である場合は、-Xn-(nは1〜4のいずれか)で表される基であると理解される。
【0022】
連結基としては、エステル、チオエステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、スルホン、スルホニル、スルホンアミド、イミン、アゾ、炭化水素鎖またはその1以上の組合せからなる結合基を含む基が好ましいものとして例示される。連結基は、Ar1〜Ar4のいずれかに結合して、隣接する構成単位と結合する。隣接する構成単位は主鎖を構成する構成単位であっても、側鎖を構成する構成単位であってもよい。なお、結合基は2つの構成単位が反応によって結合するとき生じる上記のような基であり、連結基は結合基のみからなるものであってもよく、主鎖に結合する側鎖の自由度を上げるためのスペーサとなる基を含むものであってもよい。
【0023】
末端基は水素原子または置換基であるが、好ましくは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基またはアルコキシ基である。
【0024】
コポリマーの主鎖または側鎖は、上記のような連結基で連結する。好ましくは、比較的長い主鎖と1または2程度の構成単位からなる側鎖を有する。主鎖としては、炭素-炭素不飽和二重結合が重合して生じる炭化水素鎖の他、ポリエステル鎖、ポリアミド鎖等があるが、炭化水素鎖が好ましいものとして例示される。
【0025】
式(1)および(2)で表わされる構成単位中または他の構成単位の少なくとも一部、好ましくはR1〜R4、X1〜X4またはY1中に、次のような官能基を有することが望ましい。光誘起分子再配向を促進させるための液晶性基またはその安定化基、光応答性の光誘起分子再配向状態を安定に保持する機能を有する官能基、大きな光学的異方性を有する官能基またはコポリマーの溶媒溶解性、製膜性を向上させるための官能基。
【0026】
本発明の光応答性記録材料に適するコポリマーの製造方法の一例を次に示す。
上記式(5)および(6)で表される2種の重合性モノマー、あるいはこれらと他の重合性モノマーを、重合開始剤等の触媒の存在下または不存在下で重合させ、コポリマーを得る。他の重合性モノマーとしては、下式(7)表される重合性モノマーが挙げられる。式(5)および(6)で表される重合性モノマーは、式(1)および(2)で表される構成単位を与え、式(7)表される重合性モノマーは上記他の構成単位を与える。
M-Y1 (7)
【0027】
式(5)および式(6)において、Ar1〜Ar4、R1〜R4、m、n、s、tおよびuは式(1)および(2)と同じ意味を有する。X2、X4は末端基または連結基を形成する官能基を示し、末端基であるときは、式(1)および(2)と同じ意味を有する。L1、L3は連結基である。この連結基は式(1)および(2)のX1〜X4が連結基である場合の、連結基と同じであることができる。
【0028】
式(5)〜式(7)において、M1、M3およびMは重合性官能基を有する重合性基を表す。重合性官能基とは、重縮合反応性、重付加反応性、付加重合性、異性化重合性または開環重合性を有する官能基いうが、重合性不飽和結合または重合反応性官能基であることがよい。
【0029】
これらの重合性基を有するモノマーは、共重合性を有すればM1、M3およびMは同一であっても、異なってもよい。例えば、M1、M3およびMがエチレン性不飽和結合を有する重合性基である場合は、全てが同一であってもよい。しかし、例えばエステル結合のような結合により主鎖または側鎖を形成する場合は、OHやCOOHのような異なる重合性官能基をモノマー中に2種有するか、OHを2つ有するモノマーとCOOHを2つ有するモノマーを併用することになるので、式(5)で表されるモノマーは2種類以上となる場合がある。これは、式(6)〜式(7)で表されるモノマーについても同様である。また、共重合性を有すればM1が2種以上の重合性基からなってもよく、M3およびMについても同様である。
【0030】
コポリマーがオリゴマーである場合は、式(5)、(6)またはこれらと式(7)で表されるモノマーをテトラカルボン酸等の多官能の縮合剤を使用してすることでもよい。この場合、上記モノマーは多官能の縮合剤の官能基と反応して結合する基、例えばOH基を有する。
【0031】
式(5)〜式(7)において、連結基を形成する官能基または重合反応性官能基の一例を示せば、一方の官能基がカルボキシ基類(酸無水物、酸ハライド等の基であってもよい)、他方の官能基がヒドロキシ基である場合があり、この場合エステル結合を含む連結基またはコポリマーが形成される。
【0032】
式(7)において、Mは式(5)および式(6)におけるM1、M3と同様な意味を有する。Y1は水素または置換基であるが、好ましくは光誘起分子再配向を促進させるための液晶性基、水素結合などを介して光応答性の光誘起分子再配向状態を安定に保持する機能を有する官能基、大きな光学的異方性を有する官能基またはコポリマーの溶媒溶解性や製膜性を向上させるための官能基を有する持つ置換基である。必要により上記特性の2以上を向上させるため、2種以上の他の重合性モノマーを使用することもできる。なお、R1〜R4の一部をY1と同じ官能基とすることにより、式(7)で表される他のモノマーを使用しなくとも同様な効果が期待される。
【0033】
式(5)および式(6)で表される2種の重合性モノマーを重合させる場合、M1、M3とX2、X4が重合反応する場合は、式(1)および式(2)で表されるアゾ単位およびトラン単位が主鎖中に含まれることになる。一方、M1、M3が重合反応する場合は、M1、M3から生じる構成単位が主鎖を形成し、アゾ単位およびトラン単位は側鎖に含まれることになる。有利には、アゾ単位およびトラン単位が側鎖に含まれることになる重合性モノマーを使用することである。M1、M3から生じる構成単位が主鎖を形成する場合は、M1、M3は重合性の不飽和結合を有する基であることが望ましいが、上記したようにカルボキシ基類とヒドロキシ基のような重合反応性の官能基を2つ有する基であることもできる。この場合、式(5)で表されるモノマーを2種類使用し、カルボキシ基類を2つ有するM1を含むモノマーとヒドロキシ基2つ有するM1を含むモノマーを使用することもできる。式(6)で表されるモノマーにあっても同様である。M1、M3が重合性の不飽和結合を有する基である場合は、M1を含むモノマーから生じる構成単位とM3を含むモノマーから生じる構成単位がランダムに結合したもの、交互またはブロック状に結合したものなどがあるが、式(1)および式(2)で表される構成単位の相互作用を高める点で、ランダムまたは交互に結合したものが好ましい。式(7)表される他の重合性モノマーを、式(5)および式(6)で表される重合性モノマーと共に使用する場合、他の重合性モノマーの使用量は全モノマーの80モル%以下、好ましくは10〜70モル%の範囲とすることがよい。
【0034】
式(5)および式(6)で表される重合性モノマーの中でも、式(3)および式(4)で表される重合性モノマーが好ましいモノマーとして挙げられる。ここで、X2、X4、Ar1〜Ar4、R1〜R4、m、nおよびs、t、uは、式(5)および(6)と同じ意味であり、R5、R6は水素原子またはメチル基を示す。Xは結合基COOと共に連結基L1またはL3を構成する。この重合性モノマーは(メタ)アクリル酸エステルであるので、(メタ)アクリレートモノマーともいう。
【0035】
式(3)および式(4)で表わされるモノマーまたはこれを含むモノマーを共重合すると、ビニル基が主鎖を構成し、アゾ単位およびトラン単位が側鎖を構成する。この場合、式(1)および式(2)におけるX1、X3は、COO-Xとなる。共重合する際には、AIBN等の重合開始剤を存在させることがよい。
【0036】
アゾ単位およびトラン単位が側鎖を構成する場合、コポリマーは式(8)および式(9)のような構成単位を有する。また、必要に応じて、式(10)のような繰返し単位を含むことも可能である。
【0037】
【化4】


【0038】
上記式(8)〜(9)において、Ar1〜Ar4、R1〜R4、m、n、s〜tおよびX1〜X4は前記式(1)〜(2)と同じである。
【0039】
好ましくは、(R1)m、(R2)nおよび(R3)s〜(R4)tは、水素原子または電子吸引性もしくは電子供与性置換基である。末端基であるX2およびX4は、-H、-F、-Cl、-Br、-I、-CN、-NO2、-CF3、-CCl3、-N+(CH3)3、-S+(CH3)3、-NH2、-CH3、-OHのような基である。
【0040】
連結基であるX1およびX3は、-O-、-S-、-(NR8)-、-(CR9R10)-、-(CO)-、-(CO-O)-、-(CO-NR8)-、-(SO2)-、-(SO2-O)-、-(SO2-NR8)-、-(C=NR11)-、-(CNR11-NR8)-)-、-(CR9=CR10)-、-(C≡C)-、-(N=N)-、C1〜C20のアルキレン基、C3〜C10のシクロアルキレン基、C2〜C20のアルケニレン基、C6〜C10のアリーレン基またはこれらの組合せを含む2価の基である。R8およびR11はそれぞれ、C1〜C20のアルキル基、C3〜C10のシクロアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C10のアリール基を示し、R9およびR10はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、C1〜C20のアルキル基、C1〜C20のアルコキシ基、C3〜C10のシクロアルキル基、C2〜C20のアルケニル基、C6〜C10のアリール基を示す。この連結基は主鎖と側鎖の回転の自由度を与えるため、ある程度の長さを持つことが好ましく、このためにはC1〜C5のアルキレン基を有することが有利である。
【0041】
式(8)〜(10)において、P1、P2、P3はそれぞれ重合後の主鎖骨格構造を表す。x、y、zは共重合における各モノマー単位の存在数を表し、1以上の整数である。
【0042】
コポリマーの主鎖が、炭素-炭素不飽和二重結合が重合して生じる炭化水素鎖の場合、炭化水素鎖は側鎖を結合しうる官能基を有することが望ましい。かかる官能基としては。カルボキシ基、ヒドロキシ基、ビニル基等がある。これらの官能基はこれらと反応する官能基を有する側鎖構成単位と結合して連結基を構成する。
【0043】
本発明の光情報記録材料は、これをディスク状等任意、所定の形状に成形して、光情報記録媒体とする。本発明の光情報記録媒体は、書き換え可能な体積ホログラムメモリまたは書き換え可能な表面レリーフ型メモリの用途に適する。
【発明の効果】
【0044】
本発明によるとホログラフィックな光情報記録における可視光吸収、光誘起複屈折、長期保存安定性、繰り返し耐久性などの諸特性を改善する光情報記録材料得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明について更に詳細に説明する。
【0046】
合成例1
下式に従いシアノアゾピリジン基を有するアゾ化合物を合成した。
【化5】


【0047】
2-シアノ-5-アミノピリジン 5.236g(44mmol)を2M塩酸に溶解し、氷浴中で攪拌した。そこへ、蒸留水に溶解した亜硝酸ナトリウム 3.036g(44mmol)をゆっくり滴下した。そこへ、フェノール 3.6g(40mmol)を水酸化ナトリウム水溶液に溶解した溶液をゆっくり滴下し、0℃で2h、その後室温で3h攪拌した後、ろ過することによって橙色の沈殿物を取り出した。さらに、これを蒸留水で良く洗浄した後、エタノール/水混合液から再結晶し、濾過後、減圧乾燥した。収率72%。
【0048】
続いて、このアゾ化合物にメチレンスペーサを以下の方法にて導入した。
【化6】


【0049】
上記のアゾ化合物 2.23g(10mmol)、2-ブロモエタノール 2.5g(20mmol)、炭酸カリウム 2.76g(20mmol)を100mlのアセトンに溶解し、50℃で72h環流し、反応させた。反応後、室温に冷却し、溶媒をエバポレータで除去した。この粗生成物をクロロホルムと飽和炭酸カリウム水溶液で抽出し、さらに、クロロホルムと塩化ナトリウム水溶液で再度抽出した。続いて、蒸留水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。クロロホルムを減圧下で除去し、エタノールから再結晶させて、精製した。この方法により、黄橙色の固体を得た。収率60%。
【0050】
次に、このスペーサ導入アゾ化合物に次式に従い重合性基を導入して、重合性アゾ化合物を合成した。
【化7】


【0051】
ジクロロメタン中に上記反応で得たスペーサ導入アゾ化合物 0.7g(2.62mmol)とトリエチルアミン 0.53g(5.24 mmol)を溶解し、窒素ガス雰囲気下にて氷浴中で攪拌しながらメタクリロイルクロライド0.57g(5.24 mmol)をゆっくり滴下した。2h攪拌した後、室温に戻し、さらに24h攪拌した。このあと、エバポレータでトリエチルアミンなどを除去した後、クロロホルムと飽和炭酸カリウム水溶液で抽出し、さらに、クロロホルムと塩化ナトリウム水溶液で再度抽出した。続いて、蒸留水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。クロロホルムを減圧下で除去し、n-ヘキサンから再結晶させて、精製した。この方法により、黄橙色の固体を得た。収率51%。)
得られた重合性アゾ化合物の紫外可視吸収スペクトルを図1に示す。
【0052】
合成例2
下記反応式に従い、シアノフェニル基を有するアゾ化合物を合成した。
【化8】


【0053】
4-シアノアニリン 4.25g(36mmol)を2M塩酸に溶解し、氷浴中で攪拌した。そこへ、蒸留水に溶解した亜硝酸ナトリウム2.5g(36mmol)をゆっくり滴下した。そこへ、フェノール 2.8g(30mmol)を水酸化ナトリウム水溶液に溶解した溶液をゆっくり滴下し、0℃で2h、その後室温で3h攪拌した後、ろ過することによって橙色の沈殿物を取り出した。さらに、これを蒸留水で良く洗浄した後、エタノール/水混合液から再結晶し、濾過後、減圧乾燥した。収率67%。
【0054】
続いて、このアゾ化合物にメチレンスペーサを合成例1と同様にして導入した。収率60%。
【化9】


【0055】
次に、下式に従い末端に重合性基を導入して、重合性アゾ化合物を合成した。
【化10】


【0056】
ジクロロメタン中に上記反応で得たスペーサ導入アゾ化合物 0.7g(2.62mmol)とトリエチルアミン 0.53g(5.24mmol)を溶解し、窒素ガス雰囲気下にて氷浴中で攪拌しながらメタクリロイルクロライド 0.57g(5.24 mmol)をゆっくり滴下した。2h攪拌した後、室温に戻し、さらに24h攪拌した。このあと、エバポレータでトリエチルアミンなどを除去した後、クロロホルムと飽和炭酸カリウム水溶液で抽出し、さらに、クロロホルムと塩化ナトリウム水溶液で再度抽出した。続いて、蒸留水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。クロロホルムを減圧下で除去し、n-ヘキサンから再結晶させて、精製した。この方法により、黄橙色の固体を得た。収率51%。
得られた重合性アゾ化合物の紫外可視吸収スペクトルを図2に示す。
【0057】
合成例3
下式に従いトリフルオロメチル基を有するシアノフェニル基を有するアゾ化合物を合成した。
【化11】


【0058】
4-トリフルオロメチルアニリン 4.83g(30mmol)を2M塩酸に溶解し、氷浴中で攪拌した。そこへ、蒸留水に溶解した亜硝酸ナトリウム 1.8g(30mmol)をゆっくり滴下した。そこへ、2-(N-エチルアニリノ)エタノール 4.13g(25mmol)を水酸化ナトリウム水溶液に溶解した溶液をゆっくり滴下し、0℃で2h、その後室温で6h攪拌した後、ろ過することによって橙色の沈殿物を取り出した。さらに、これを蒸留水で良く洗浄した後、エタノール/水混合液から再結晶し、濾過後、減圧乾燥した。収率60%。
この化合物1H NMRデータ(600MHz, JEOL Model, CDCl3)を図3に示す。
【0059】
次に、下式に従い末端に重合性基を導入して、重合性アゾ化合物を合成した。
【化12】


【0060】
テトラヒドロフラン中に上記反応で得たアゾ化合物 3.13g(9.3mmol)とトリエチルアミン1.8g(18.6 mmol)を溶解し、窒素ガス雰囲気下にて氷浴中で攪拌しながらメタクリロイルクロライド1.944g(18.6mmol)をゆっくり滴下した。2h攪拌した後、室温に戻し、さらに24h攪拌した。このあと、エバポレータでトリエチルアミンなどを除去した後、クロロホルムと飽和炭酸カリウム水溶液で抽出し、さらに、クロロホルムと塩化ナトリウム水溶液で再度抽出した。続いて、蒸留水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。
クロロホルムを減圧下で除去し、赤色の粘性を帯びた固体を得た。収率50%。
得られた重合性アゾ化合物の1H NMRデータを図4に示す。また、紫外可視吸収スペクトルを図5に示す。
【0061】
合成例4
以下の反応を行い、トラン基を有するモノマーを合成した。
【0062】
4-ヨードフェノール 1.10g(5mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム 0.289g、ヨウ化銅 19mg をトリエチルアミンとテトラヒドロフラン(THF)の混合したものに溶解し、4-エチニルトリフルオロトルエン 0.935g(5.5mmol)を加えて、窒素ガスのフロー下、室温で15h攪拌した。その後、エーテルで抽出し、さらに、カラムクロマトグラフィーによって分離精製し、濃縮、ろ過後、減圧乾燥することで下記の化合物を得た。収率 93%。
【化13】


【0063】
続いて、上記の化合物を1.31g(5.0mmol)、2-ブロモエタノール 1.25g(10.0mmol)、炭酸カリウム 1.38g (10.0mmol) を50mlのアセトンに溶解し、72h還流した。反応後、カラムクロマトグラフィーで精製し、下記の化合物を得た。収率 73%。
【化14】


【0064】
その後、上記反応で得た化合物 0.755g(2.5mmol)とトリエチルアミン 0.506g(5.0mmol)をTHF中に溶解し、窒素ガス雰囲気下にて氷浴中で攪拌しながらメタクリロイルクロライド 0.523g(5.0mmol)をゆっくり滴下した。2h攪拌した後、室温に戻し、さらに24h攪拌した。このあと、エバポレータでトリエチルアミンなどを除去した後、クロロホルムと飽和炭酸カリウム水溶液で抽出し、さらに、クロロホルムと塩化ナトリウム水溶液で再度抽出した。続いて、蒸留水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。クロロホルムを減圧下で除去し、エタノール溶液から再結晶を行い、下記のトリフルオロメチルトラン基を有するメタクリレートモノマー(白色の固体)を得た。収率65%。
【化15】


【0065】
合成例5
以下の反応により、トラン基を有するモノマーを合成した。
【0066】
4-ヨードフェノール 1.10g(5mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム 0.289g、ヨウ化銅 19mg をトリエチルアミンとTHFの混合したものに溶解し、1-ブロモ-4-エチニルベンゼン 0.996g(5.5mmol)を加えて、窒素ガスのフロー下、室温で15h攪拌した。その後、エーテルで抽出し、さらに、カラムクロマトグラフィーによって分離精製し、濃縮、ろ過後、減圧乾燥することで下記の化合物を得た。収率95%。
【化16】


【0067】
続いて、上記で得られた、4-ヒドロキシ-4'-ブロモトラン 0.683g(2.5mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム 0.145g(0.127mmol)、ヨウ化銅 9.5mg(0.05mmol)をトリエチルアミンとTHFの混合したものに溶解し、4-エチニルトリフルオロトルエン 0.45ml(2.76mmol)を加えて、窒素ガスのフロー下、90℃で15h攪拌した。その後、エーテルで抽出し、さらに、カラムクロマトグラフィーによって分離精製し、濃縮、ろ過後、減圧乾燥することで下記の化合物を得た。収率87%。
【化17】


【0068】
続いて、上記の化合物を 0.955g (2.64mmol)、2-ブロモエタノール 0.55ml(7.76mmol)、炭酸カリウム 0.725g(5.25mmol)を10mlのブタノンに溶解し、72h還流した。反応後、カラムクロマトグラフィーで精製し、アセトンから再結晶することで下記の化合物を得た。収率47%。
【化18】


【0069】
その後、上記反応で得た化合物 0.354g(0.87mmol)とトリエチルアミン 0.36ml(2.58mmol)をTHF中に溶解し、窒素ガス雰囲気下にて氷浴中で攪拌しながらメタクリロイルクロライド 0.135g(1.29mmol)をゆっくり滴下した。2h攪拌した後、室温に戻し、さらに24h攪拌した。このあと、エバポレータでトリエチルアミンなどを除去した後、クロロホルムと飽和炭酸カリウム水溶液で抽出し、さらに、クロロホルムと塩化ナトリウム水溶液で再度抽出した。続いて、蒸留水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。クロロホルムを減圧下で除去し、下記のトリフルオロメチルビストラン基を有するメタクリレートモノマー(白色の固体を)得た。収率51.5%。
【化19】


【0070】
合成例6
4-ヨード-2-メチルフェノール 1.17g(5mmol)、テトラキストリフェニルホスフィノパラジウム 0.289g、ヨウ化銅 19mgをトリエチルアミンとTHFの混合したものに溶解し、4-エチニルトリフルオロトルエン 0.935g(5.5mmol)を加えて、窒素ガスのフロー下、室温で15h攪拌した。その後、エーテルで抽出し、さらに、カラムクロマトグラフィーによって分離精製し、濃縮、ろ過後、減圧乾燥することで下記の化合物を得た。収率 80%。この化合物の1H NMRデータ(600MHz, JEOL Model, DMSO)を図6に示す。
【化20】


【0071】
続いて、上記の化合物を 1.31g(5.0mmol)、2-ブロモエタノール 1.25g(10.0mmol)、炭酸カリウム 1.38g(10.0mmol)を50mlのアセトンに溶解し、72h還流した。反応後、カラムクロマトグラフィーで精製し、下記の化合物を得た。収率69%。
【化21】


【0072】
その後、上記反応で得た化合物 0.755g(2.5mmol)とトリエチルアミン 0.506g(5.0mmol)をTHF中に溶解し、窒素ガス雰囲気下にて氷浴中で攪拌しながらメタクリロイルクロライド 0.523g(5.0mmol)をゆっくり滴下した。2h攪拌した後、室温に戻し、さらに24h攪拌した。このあと、エバポレータでトリエチルアミンなどを除去した後、クロロホルムと飽和炭酸カリウム水溶液で抽出し、さらに、クロロホルムと塩化ナトリウム水溶液で再度抽出した。続いて、蒸留水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過した。クロロホルムを減圧下で除去し、エタノール溶液から再結晶を行い、下記のトラン基を有するモノマー(白色の固体)を得た。収率72%。
【化22】


【実施例1】
【0073】
合成例1〜3で得た重合性アゾ化合物と合成例4〜6で得たトラン基を有するモノマーを使用して共重合を行い、コポリマーを得た。ここで、合成例1〜3で得た重合性アゾ化合物をそれぞれ、重合性アゾ化合物(1)〜(3)といい、合成例4〜6で得たトラン基を有するモノマーをそれぞれ、トラン基を有するモノマー(4)〜(6)という。
【0074】
合成例1で得た重合性アゾ化合物(1)と合成例4で得たトラン基を有するモノマー(4)の共重合を行った。
重合性アゾ化合物(1) 0.067g(0.20mmol)とトラン基を有するモノマー(4) 0.025g(0.10 mmol)を混合し、1mlのTHFに溶解。これに、3wt%の2,2'-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3.42mgを加え、液体窒素を用いて脱気した後、系を封じ、60℃にて重合を行った。24h後、重合物を取り出し、メタノール中にて2回再沈殿することにより精製した。この結果、黄橙色粉末の2:1ランダム共重合体(PPMT33:数平均分子量(Mn)=11000)を得た。この共重合体DSC分析によるガラス転移温度が88℃であり、その固体薄膜の吸収スペクトル(1μm厚さ)は図7のとおりであった。
同様にして、モノマー比を1:1(PPMT50)、1:2(PPMT66)及び1:4(PPMT80)としたランダム共重合体(Mn=8000〜22000)も得た。
【実施例2】
【0075】
合成例3で得た重合性アゾ化合物(3)と合成例4で得たトラン基を有するモノマー(4)の共重合を行った。
【0076】
実施例1と同様に、重合性アゾ化合物(3) 0.050g(0.15mmol)とトラン基を有するモノマー(4) 0.025g(0.15mmol)を混合し、1mlのTHFに溶解。これに、3wt%のAIBN3.42mgを加え、液体窒素を用いて脱気した後、系を封じ、60℃にて重合を行った。24h後、重合物を取り出し、メタノール中にて2回再沈殿することにより精製した。この結果、黄橙色粉末の1:1ランダム共重合体(PCMT50:Mn=13000)を得た。このコポリマーのDSC分析によるガラス転移温度が75℃であり、その固体薄膜の吸収スペクトル(1μm厚さ)は図8のとおりであった。同様にして、モノマー比が2:1(PCMT33)、1:2(PCMT66)及び1:4(PCMT80)のランダム共重合体(Mn=9000〜23000)も得た。
【実施例3】
【0077】
合成例1で得た重合性アゾ化合物(1)と合成例5で得たトラン基を有するモノマー(5)の共重合を行った。
【0078】
実施例1と同様に、重合性アゾ化合物(1) 0.05g(0.15mmol)とトラン基を有するモノマー(5) 0.071g(0.15mmol)を混合し、1mlのテトラヒドロフランに溶解。これに、2wt%のAIBN 2.28mgを加え、液体窒素を用いて脱気した後、系を封じ、65℃にて重合を行った。24h後、重合物を取り出し、メタノール中にて2回再沈殿することにより精製した。この結果、黄橙色粉末の1:1ランダム共重合体(Mn 8100)を得た。このコポリマーのDSC分析によるガラス転移温度が160℃であり、またその固体薄膜の吸収スペクトル(1μm厚さ)は図9のとおりであった。同様にして、モル比2:1、1:2および1:4のランダム共重合体(Mn 7000〜10000)も得た。
【実施例4】
【0079】
合成例1で得た重合性アゾ化合物、合成例5で得たトラン基を有するモノマーおよびメチルメタクリレートの共重合を行った。
【0080】
実施例1と同様に、重合性アゾ化合物(1) 0.05g(0.15mmol)とトラン基を有するモノマー(5) 0.071g(0.15mmol)とメチルメタクリレートモノマー 0.026g(0.30mmol)を混合し、1mlのTHFに溶解。これに、3wt%のAIBN 3.42mgを加え、液体窒素を用いて脱気した後、系を封じ、60℃にて重合を行った。24h後、重合物を取り出し、メタノール中にて2回再沈殿することにより精製した。この結果、黄橙色粉末の1:1:2ランダム共重合体(Mn 14000)を得た。このコポリマーのDSC分析によるガラス転移温度が140℃であり、またその固体薄膜の吸収スペクトル(1μm厚さ)は図10のとおりであった。
なお、図7〜10における吸収スペクトルは、1μm薄膜に対して紫外可視吸光度計で測定された光学密度(μm-1)である。
【実施例5】
【0081】
実施例1で得たモル比2:1(PPMT33)、1:1(PPMT50)、1:2(PPMT66)および1:4(PPMT80)のコポリマー薄膜の光誘起複屈折特性を測定した。
各材料の光誘起複屈折特性を評価するための光学系には図11のようなものを用いた。励起光には488nmの直線偏光、プローブ光には633nmの直線偏光、互いは45°をなす方位に設定されている。試料の後方におかれたポラリメータには633nmのプローブ光のみが入るよう、フィルターが設置され、ポラリメータによって測定された楕円偏光の状態を解析することによってアゾ化合物コポリマー薄膜に光誘起された複屈折値を求めた。
【0082】
各コポリマー薄膜の厚さは約1μmで、励起光照射hは170秒、励起光強度は1W/cm2である。測定結果を図12に示す。図中(a)、(b)、(c)はそれぞれ、モル比2:1、1:2、1:4のコポリマーに関する光応答ダイナミクス(複屈折値Δnと励起光照射時間の関係)であり、光励起を停止した後の光誘起複屈折値(Δn)がいずれの材料においても全く緩和(低減)していない点が優れた特徴である。
【0083】
また、いずれの場合も光照射開始後、約100秒程で光誘起複屈折値は飽和していることがわかり、その値を図13に示す。
この結果から、光異性化特性を持たないトラン側鎖の分率が増大するにつれて次第に光誘起複屈折値の絶対値は減少することがわかったが、一方で、励起波長における材料の吸収係数もトラン側鎖の分率が増大するにつれて次第に減少することがわかった。
【0084】
材料の吸収係数が減少するということは、厚膜材料においても材料の内部まで励起光が浸透することに対応するので、ホログラムメモリなど体積記録方の情報記録を行う際には好適な特性となる。
そこで、実際の体積記録材料としての性能指数を(光誘起複屈折値:Δn)/(薄膜の吸光度:α)によって定義し、比較した値を図14に示す。
このことから、透明な複屈折性部位(トラン側鎖)の導入率が増えるにしたがって、相対的に性能指数が向上することが分かった。1:2共重合体では0.3程度の性能指数が得られており、従来材料(0.25程度)に比較しても20%以上大きな値を示している。これにより、透明性が高く(励起光の吸収が少なく)、厚膜形成が可能なリライタブル記録材料が提供できる。
【実施例6】
【0085】
実施例2のコポリマーの光誘起複屈折値の重合比依存性を実施例5の測定条件に従って、測定した。測定結果を図15に示す。図中(a)〜(c)はそれぞれ、共重合比が2:1、1:2および1:4のコポリマーの薄膜(厚さ1μm)における光応答ダイナミクス(複屈折値Δnと励起光照射時間の関係)である。実施例5のコポリマーと同様に、光励起を停止した後の光誘起複屈折値がいずれの材料においても全く緩和(低減)していない点が優れた特徴である。また、いずれの場合も光照射開始後、約100秒程で光誘起複屈折値は飽和していることが分かり、その値をプロットすると、図16のようになる。
【0086】
実施例5のコポリマーにおける結果と同様に、光異性化特性を持たないトラン側鎖の分率が増大するにつれて次第に光誘起複屈折値の絶対値は減少することが分かった。性能指数の比較を図17に示す。その結果、やはり透明な複屈折性部位(トラン側鎖)の導入率が増えるにしたがって、性能指数が向上することが分かった。1:2共重合体では0.35程度の性能指数が得られており、従来材料(0.25程度)に比較して40%以上大きな値を示している。これにより、透明性が高く(励起光の吸収が少なく)、厚膜形成が可能なリライタブル記録材料が提供できることが示されたと言える。
【実施例7】
【0087】
実施例4のコポリマーの光誘起複屈折値を実施例5の測定条件に従って、測定した。
図18に実施例4の共重合比が1:1:2の3元コポリマーの薄膜(厚さ1μm)における光応答ダイナミクス(複屈折値Δnと励起光照射時間の関係)を示した。励起波長は488nm、励起光強度は0.37−2.0W/cm2での結果である。励起光照射時間は180秒とした。光誘起複屈折値の最大値は0.053であった。
【0088】
更に、実施例4のコポリマーにおける光誘起複屈折値を実施例5の測定条件に準じて、532nmの励起光を用いて光応答ダイナミクス(複屈折値Δnと励起光照射時間の関係)を測定した結果を図19に示す。励起波長は532nm、励起光強度は0.30−1.5W/cm2での結果である。励起光照射時間は同じく180秒とした。光誘起複屈折値の最大値は0.045であった。
図18、図19の結果共に、励起光強度にほぼ比例して光誘起複屈折値の絶対値が増大してゆく様子が観測された。実施例4のコポリマーにおける光誘起複屈折値の測定結果は、いずれの励起波長においても、光励起を停止した後に若干の光誘起複屈折値減少がみられるものの、その緩和率は10%以内であった。また、既に定義したとおり、(光誘起複屈折値:Δn)/(薄膜の吸光度:α)という値で体積記録材料としての性能指数を比較すると、その最大値は0.75(@532nm)にも及び、光誘起複屈折特性と可視光領域での透明性を併せ持つ優れた特性を確認することができた。
【0089】
図20は、励起光強度を1W/cm2に固定して、励起光波長を変化させたときに得られる性能指数を比較したものである。励起光の波長が長波長になるにしたがって性能指数が向上していることが確認された。近年ホログラムメモリ材料の評価においてよく利用されている532nmにおいて性能指数が最大となっていることは、実用的な記録材料としての優れた性能を示している。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】合成例1の重合性アゾベンゼンモノマーの紫外可視吸収スペクトル
【図2】合成例2の重合性アゾベンゼンモノマーの紫外可視吸収スペクトル
【図3】合成例3の中間体のH1-NMRデータ
【図4】合成例3の重合性アゾベンゼンモノマーのH1-NMRデータ
【図5】合成例3の重合性アゾベンゼンモノマーの紫外可視吸収スペクトル
【図6】合成例6の中間体のH1-NMRデータ
【図7】実施例1の共重合体の吸収スペクトル
【図8】実施例2の共重合体の吸収スペクトル
【図9】実施例3の共重合体の吸収スペクトル
【図10】実施例4の共重合体の吸収スペクトル
【図11】光誘起複屈折特性を評価するための光学系の模式図
【図12】各共重合体の複屈折値と励起光照射時間の関係を示す図
【図13】コポリマーの光誘起複屈折値の重合比依存性を示す図
【図14】コポリマーの性能指数の重合比依存性を示す図
【図15】各共重合体の複屈折値と励起光照射時間の関係を示す図
【図16】コポリマーの光誘起複屈折値の重合比依存性を示す図
【図17】コポリマーの性能指数の重合比依存性を示す図
【図18】共重合体の複屈折値と励起光照射時間の関係を示す図
【図19】共重合体の複屈折値と励起光照射時間の関係を示す図
【図20】共重合体の複屈折値の励起光波長依存性を示す図
【出願人】 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鐵化学株式会社
【出願日】 平成18年7月4日(2006.7.4)
【代理人】 【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫

【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣

【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一


【公開番号】 特開2008−3526(P2008−3526A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−184883(P2006−184883)