トップ :: G 物理学 :: G03 写真;映画;光波以外の波を使用する類似技術;電子写真;ホログラフイ

【発明の名称】 ホログラム記録方法及びホログラム記録装置
【発明者】 【氏名】安田 晋

【氏名】河野 克典

【氏名】三鍋 治郎

【氏名】羽賀 浩一

【氏名】小笠原 康裕

【氏名】林 和廣

【氏名】吉沢 久江

【氏名】古木 真

【要約】 【課題】光記録媒体に複数のホログラムを記録することができる新規な二光波系の多重記録方法を提供し、これにより多重度(記録密度)の大幅な向上を図る。

【構成】縦長の参照光を照射して、信号光との交差領域66で第1のホログラムH1を記録する。続いて、遮光板52をガイドである保持部材に沿って矢印C方向に所定間隔だけ移動させ、縦長の参照光を照射して、信号光との交差領域で第2のホログラムH2を記録する。同様にして、第3のホログラムH3、第4のホログラムH4を順次記録する。最後に、遮光板52をガイドである保持部材に沿って矢印C方向に所定間隔だけ移動させ、縦長の参照光を照射して、信号光との交差領域68で第5のホログラムH5を記録する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光と参照光とを光記録媒体に同時に照射して、前記信号光と参照光とで形成される干渉縞により、前記信号光の情報をホログラムとして前記光記録媒体に記録するホログラム記録方法であって、
前記参照光の照射位置を前記信号光の光軸に沿って変化させながら前記信号光と前記参照光とを同時に前記光記録媒体に照射することにより、前記信号光と前記参照光とが前記光記録媒体内で交差する領域を変化させて、前記光記録媒体に複数のホログラムを記録することを特徴とするホログラム記録方法。
【請求項2】
前記信号光と前記参照光とが前記光記録媒体内で交差する領域において、前記領域の前記信号光の光軸に沿った方向の長さが、該方向に直交する方向の長さよりも短い参照光を用いることを特徴とする請求項1に記載のホログラム記録方法。
【請求項3】
既に記録されたホログラムの記録領域とは異なる領域で、前記信号光と前記参照光とを交差させて、前記光記録媒体に他のホログラムを記録することを特徴とする請求項1又は2に記載のホログラム記録方法。
【請求項4】
前記信号光と前記参照光との成す角度を一定にし且つ前記参照光の照射位置を前記信号光の光軸に沿って平行移動させながら前記信号光と参照光とを同時に光記録媒体に照射することにより、前記信号光と前記参照光とが前記光記録媒体内で交差する領域を変化させて、前記光記録媒体に複数のホログラムを記録することを特徴とする請求項1又は2に記載のホログラム記録方法。
【請求項5】
前記参照光の照射位置を前記信号光の光軸に沿って所定間隔で平行移動させることを特徴とする請求項4に記載のホログラム記録方法。
【請求項6】
光記録媒体に信号光を照射する信号光照射手段と、
前記信号光と同時に前記光記録媒体に参照光を照射する参照光照射手段と、
前記信号光の光軸に沿って前記参照光の照射位置が変化するように、前記参照光照射手段を移動させる移動手段と、
を備えたホログラム記録装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラム記録方法及びホログラム記録装置に係り、特に、光記録媒体に複数のホログラムを記録するホログラム記録方法及びホログラム記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホログラムの体積記録において高密度化を実現するために、参照光の入射角度を変化させながら記録する角度多重記録方法、記録メディアを僅かに移動させながら記録するシフト多重記録方法、信号光と参照光の波長を変化させながら記録する波長多重記録方法など、記録メディアの同じ場所に複数のホログラムを多重記録する方法が提案されている。近時では、クロストークを生じないように記録するのではなく、再生時に不要な回折光をフィルタで除去して、必要な回折光だけを得るポリトピック(Polytopic)多重と称される多重記録方法なども提案されている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−272268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の多重記録方法では、システムの制御が非常に困難であり、多重度を大幅に向上させることができない、という問題がある。例えば、参照光の入射角度を変化させながら記録する角度多重記録方法では、多重度を大きくしようとすると、参照光の全角度振れ幅が非常に大きくなり、多重度の大幅な向上は機械的、幾何学的に非常に困難である。
【0005】
また、信号光と参照光とが異なる方向から照射される二光波系の多重記録方法では、信号光の照射領域より大きな領域に参照光が照射されるため、参照光による不要露光(信号光との干渉に関係しない露光)が大きく、光記録媒体のダイナミックレンジの損失が大きい、という問題もある。更に、この二光波系の多重記録方法において、参照光による不要露光を低減するために光記録媒体の傾きを大きくすると、光軸ずれにより再生像が歪んでしまう、という問題もある。
【0006】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたものであり、本発明の目的は、光記録媒体に複数のホログラムを記録することができる新規な二光波系の多重記録方法及び装置を提供し、これにより多重度(記録密度)の大幅な向上を図ることにある。また、本発明の他の目的は、参照光による不要露光の低減を図ることにある。また、本発明のさらに他の目的は、光記録媒体を移動させずに多重記録を行うことができる簡易な多重記録方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、信号光と参照光とを光記録媒体に同時に照射して、前記信号光と参照光とで形成される干渉縞(強度分布又は偏光分布)により、前記信号光の情報をホログラムとして前記光記録媒体に記録するホログラム記録方法であって、前記参照光の照射位置を前記信号光の光軸に沿って変化させながら前記信号光と前記参照光とを同時に前記光記録媒体に照射することにより、前記信号光と前記参照光とが前記光記録媒体内で交差する領域を変化させて、前記光記録媒体に複数のホログラムを記録することを特徴としている。前記信号光と前記参照光とが前記光記録媒体内で交差する領域において、前記領域の前記信号光の光軸に沿った方向の長さが、該方向に直交する方向の長さよりも短い参照光を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、信号光の照射領域を分割して信号光と参照光とを交差させることができるので、光記録媒体に複数のホログラムを記録することができ、不要露光が低減されると共に記録密度が向上する、という効果がある。また、本発明は、参照光の角度を変化させて記録する従来の角度多重記録方法よりも制御が容易で、多重度を向上させることが容易である。また、本発明には、光記録媒体を移動させずに多重記録を行うことができるという利点もある。
また、信号光と参照光とが光記録媒体内で交差する領域において、この領域の信号光の光軸に沿った方向の長さが、該方向に直交する方向の長さよりも短い参照光を用いることで、信号光の照射領域をスライスするように信号光と参照光とを交差させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態のホログラム記録再生装置について詳細に説明する。本実施の形態のホログラム記録再生装置は、本発明の多重記録方法を適用したものである。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、本実施の形態のホログラム記録再生装置には、例えばNd:YVO結晶を用いたレーザ発振器10が設けられている。レーザ発振器10からは、コヒーレント光である波長532nmのレーザ光が発振され、照射される。レーザ発振器10のレーザ光照射側には、入射光の一部を透過し且つ一部を反射することで、レーザ光を参照光用の光と信号光用の光との2つの光に分離するハーフミラー16が配置されている。
【0011】
ハーフミラー16の光反射側には、参照光用のレーザ光を反射して光路をホログラム記録媒体方向に変更する反射ミラー18、参照光用のレーザ光をコリメートする一対のレンズ20、及びスリット54が形成された遮光板52がこの順に配置されている。遮光板52は、後述するように、参照光の光軸と直交する方向(矢印A方向)に移動可能に構成されている。この遮光板52のレーザ光透過側には、ホログラム記録媒体24を所定位置に保持するステージ22が設けられている。遮光板52のスリット54を透過した参照光は、ホログラム記録媒体24に照射される。
【0012】
ハーフミラー16の光透過側には、ハーフミラー16を透過したレーザ光を遮断するためのシャッター12が、光路中に挿入及び光路から退避可能に配置されている。シャッター12の光透過側には、信号光用のレーザ光を45°の反射角で反射して光路をホログラム記録媒体方向に変更する反射ミラー28、及びレンズ30、レンズ32、レンズ34で構成されたレンズ系がこの順に配置されている。レンズ32とレンズ34との間には、液晶表示素子等で構成され、供給されたページ毎の記録信号に応じて信号光用のレーザ光を変調し、ホログラムの各ページを記録するための信号光を生成する透過型の空間光変調器36が配置されている。
【0013】
レンズ30、32は、レーザ光を大径のビームにコリメートして空間光変調器36に照射し、レンズ34は空間光変調器36で変調されて透過したレーザ光を信号光としてホログラム記録媒体24上に集光させる。これにより、信号光と参照光とが同時にホログラム記録媒体24に照射され、ホログラムが記録される。記録されたホログラムに参照光が照射されると、ホログラムによる回折で信号光が再生される。
【0014】
ホログラム記録媒体24の再生光透過側には、レンズ38、及びCCD等の撮像素子で構成され、受光した再生光を電気信号に変換して出力する検出器40が配置されている。検出器40は、パーソナルコンピュータ42に接続されている。パーソナルコンピュータ42は、図示はしないが、CPU、ROM、RAM、外部メモリ、入力装置、及び表示装置などを備えている。
【0015】
パーソナルコンピュータ42は、パーソナルコンピュータから所定のタイミングで供給された記録信号に応じてパターンを発生するパターン発生器46を介して空間光変調器36に接続されている。また、パーソナルコンピュータ42には、シャッター12を光路中に挿入するように駆動すると共に、光路中に挿入されているシャッター12を光路から退避させるように駆動する駆動装置48が接続されている。また、パーソナルコンピュータ42には、遮光板52を駆動する駆動装置56が接続されている。
【0016】
図2に遮光板52の構成を示す。遮光板52には、矢印A方向を長手方向とするスリット54が設けられている。遮光板52は、ガイドとしての保持部材58によって矢印A方向に移動可能に保持されている。例えば、図2に示すように、ラック・ピニオン式の移動機構を設けることができる。具体的には、この移動機構は、軸64に連結され軸64と一体回転する歯車(ピニオン)62、遮光板52の下部に設けられピニオン62に噛合い可能な凹凸(ラック)60、及びモータ等の駆動装置56を備えている。これらの構成により、駆動装置56によって軸64を中心にピニオン62を矢印B方向に回転させ、ピニオン62の回転に伴ってラック60がピニオン62に噛合い、遮光板52を矢印A方向に移動させる。
【0017】
次に、上記のホログラム記録再生装置の動作について説明する。
まず、ホログラムの記録時には、駆動装置48を駆動してシャッター12を光路から退避させ、パーソナルコンピュータ42からデジタルデータを所定のタイミングでパターン発生器46に出力する。
【0018】
光源10から発振されたレーザ光は、ハーフミラー16により参照光用の光と信号光用の光とに分離される。ハーフミラー16を透過した信号光用の光は、反射ミラー28で反射され、レンズ30、レンズ32により大径のビームにコリメートされて、空間光変調器36に照射される。パーソナルコンピュータ42からデジタルデータが入力されると、パターン発生器46において、供給されたデジタルデータに応じて表示パターンが生成される。空間光変調器36では、表示されたパターンに応じてレーザ光が変調され、信号光が生成される。
【0019】
一方、ハーフミラー16で反射された参照光用の光は、反射ミラー18で反射され、一対のレンズ20によりコリメートされて、遮光板52に照射される。遮光板52では、一部の光だけが開口であるスリット54を通過し、参照光が生成される。他のレーザ光は遮光板52により遮断される。
【0020】
図5に示すように、遮光板52とホログラム記録媒体24(正確にはフーリエ変換面PF)との距離Rが、R>(a2+b2)/(2λ)(λは波長)を満足すると、レンズでフーリエ変換した場合と同様にフラウンフォーファ回折が生じ、フーリエ変換像を得ることができる。矢印A方向を長手方向とするスリット54を通過した横長の光は、フーリエ変換面PFでは、信号光の光軸に沿った方向(信号光の光軸に射影可能な方向;x方向)の長さ(b')が光軸に直交する方向(y方向)の長さ(a')よりも短い光となる。即ち、フーリエ変換面PFでは、縦長の参照光となるのである。なお、フラウンフォーファ回折像(フーリエ変換像)は模式的に描いたものである。実際のフーリエ変換像では、黒色で表した部分が輝点に相当する。また、距離Rが増加するに従って、フーリエ変換像の大きさは大きくなるが、形状は変わらない。通常、回折の効果のために、a'>a、b'>bとなる。
【0021】
なお、参考までに、図6にデジタル画像(信号光)のフーリエ変換像の一例を示す。図6に示すように、デジタル画像のフーリエ変換像はデジタル画像の周期性に起因した回折パターンとなり、0次〜n次の成分を有している。なお、ここでいう次数とは、フーリエ変換面で0次(中心)からζ=fsλ/dの距離ごとに現れる輝点の順位のことであり、フーリエ変換レンズの焦点距離fs、記録波長λ、デジタル画像を生成した空間光変調器の画素ピッチd/2により決まる値である。なお、フーリエ変換面において、記録面積が少なくともナイキスト領域(2fsλ/d)2に含まれる回折成分を記録すれば、デジタル画像の情報を欠落なく記録できる。
【0022】
生成された信号光はレンズ34によりフーリエ変換されて、ホログラム記録媒体24に照射される。参照光はフーリエ変換された場合と同様にフラウンフォーファ回折されて、ホログラム記録媒体24に信号光と同時に照射される。これによって、ホログラム記録媒体24中で信号光と参照光とが干渉して、干渉パターンがホログラムとして記録される。
【0023】
ホログラム記録媒体24としては、例えば、フォトポリマー、アゾポリマー、フォトニック結晶等の記録材料を用いたホログラム記録用の光記録媒体を用いることができる。
【0024】
記録されたホログラムを再生する場合には、駆動装置48を駆動してシャッター12を光路に挿入する。光源10から発振されたレーザ光は、ハーフミラー16で反射され、反射ミラー18により光路がホログラム記録媒体24の方向に変更され、一対のレンズ20によりコリメートされて遮光板52に照射される。遮光板52のスリット54を透過した参照光は、ホログラム記録媒体24のホログラムが記録された領域に照射される。
【0025】
照射された参照光は、ホログラムによって回折され、回折光はホログラム記録媒体24を透過して射出される。射出された回折光はレンズ38により逆フーリエ変換され、光検出器40に入射する。これにより、結像された再生像が光検出器40によって検出される。検出されたアナログデータは光検出器40によってA/D変換され、再生像の画像データがパーソナルコンピュータ42に入力される。
【0026】
本実施の形態では、まず、図3(A)に示すように、縦長の参照光を照射して、信号光との交差領域66で第1のホログラムH1を記録する。続いて、図3(B)に示すように、遮光板52をガイドである保持部材58に沿って矢印C方向に所定間隔Δn(b'以上の任意の値)だけ移動させ、縦長の参照光を照射して、信号光との交差領域で第2のホログラムH2を記録する。同様にして、第3のホログラムH3、第4のホログラムH4を順次記録する。最後に、遮光板52をガイドである保持部材58に沿って矢印C方向に所定間隔だけ移動させ、縦長の参照光を照射して、信号光との交差領域68で第5のホログラムH5を記録する。こうして、ホログラム記録媒体24の記録光入射面24aと対向する出射面24b側から、ホログラムH1,H2,H3,H4,H5がこの順に記録される。
【0027】
図4に示すように、信号光がホログラム記録媒体24の出射面24b(図3参照)で焦点Pを結ぶとすると、光軸LSを軸とするほぼ円錐状の信号光の照射領域を縦長の参照光でスライスするように、信号光と参照光とを順次交差させることができる。以下、この多重方法を「スライス多重」という。これにより、ホログラム記録媒体24内に複数のホログラムを記録することができるのである。本実施の形態では、5個のホログラム(ホログラムH1,H2,H3,H4,H5)をb'以上の所定間隔Δnで記録する例について説明したが、参照光のx方向のビーム径を小さくすることで、記録するホログラムの個数を増やすことができる。
【0028】
図5に示すように、フーリエ変換面PFでの参照光のy方向のビーム径a'及びx方向のビーム径b'は、上記の距離R、記録波長λ、及びスリット54の開口径a、bに応じて定められる。なお、スリット54は矩形状の開口であり、aが短手方向の開口径、bは長手方向の開口径である。図7はy方向の参照光のフーリエ変換スペクトルを示す図である。参照光は、信号光のナイキスト領域の回折成分と交差すればよいので、2λR/a≧2fsλ/dの条件が成り立つ場合には、2λR/aの参照光と信号光とを交差させればよい。即ち、a'=2λR/aの領域にある光を信号光と交差させればよい。(図5ではこの領域をナイキスト領域Nとして図示した。)また、x方向のビーム径は狭いほど多重度を大きくできるので、b'=2(λR/b)の光を光記録媒体に照射すればよい。
【0029】
フーリエ変換面PFでの参照光のy方向のビーム径a'は、信号光の全周波数成分(少なくともナイキスト成分以上)と干渉するようにする。フーリエ変換面PFでの参照光のx方向のビーム径b'は、多重度を増加させるには、なるべく小さいことが望ましい。例えば、参照光のx方向のビーム径b'を100μmとした場合、厚さ1mmの記録層には、スライス多重により10個のホログラムを記録することができる。なお、互いに隣り合うホログラム間の間隔は、参照光のx方向のビーム径b'により定めることができる。
【0030】
以上説明した通り、第1の実施の形態では、スライス多重によりホログラム記録媒体内に複数のホログラムを記録することができ、多重度の向上(高密度記録)が可能である。また、スライス多重と他の多重方法(角度多重、シフト多重、波長多重、ポリトピック多重)とを組み合わせることで、更に多重度を向上させることができる。
【0031】
例えば、角度多重記録方法のみにより、ホログラム記録媒体の或る領域に100ページのホログラムを多重記録できるシステムがあるとする。このとき、信号光の照射領域をスライスできる参照光が5つあるとすると、多重度を5倍(500ページのホログラム記録)にすることが可能となる。別の言い方をすると、角度多重記録方法で500ページのホログラムを多重記録したくても、機械的制限のために100ページのホログラムしか多重記録できない場合がある。その場合であっても、本発明の方法により、500ページのホログラム記録を実現できる。
【0032】
また、スライス多重では、個々のホログラムを記録するときの参照光の照射領域が狭いため、参照光による不要露光が低減される。更に、スライス多重では、参照光の照射位置を変化させて多重記録を行うので、ホログラム記録媒体を移動させる必要がなく簡便である。
【0033】
なお、第1の実施の形態では、スリットが形成された遮光板を平行移動させる例について説明したが、遮光板の平行移動は一例に過ぎない。参照光の照射位置を変化させる構成としてはこの他にも種々の構成が考えられる。
【0034】
例えば、図8に示すように、スリット54を設けた遮光板52を固定配置すると共に、遮光板52とホログラム記録媒体24との間に、平行ガラス基板等、対向する2面が平行な透明板70を配置してもよい。この透明板70は、所定の軸周り(矢印D方向)に回転可能に支持されている。透明板70が回転することによって、参照光の透明板70への入射角が変化する。その結果、屈折によって、出射光である参照光の光軸が平行移動する。透明板70を用いた構成では、遮光板52を移動させる必要がないため、遮光板52に照射する光のビーム径を小さくすることができる。従って、遮光板52に照射する光の強度を大きくすることができる。
【0035】
例えば、図9に示すように、透明板70の下部に孔80aを設け、透明板70の上部に孔80bを設けて、軸72を嵌め込む。この移動機構は、軸72に連結され軸72と一体回転する歯車74、この歯車74に噛合い可能な歯車76、及び歯車76を軸78を中心に回転させるモータ等の駆動装置(図示せず)を備えている。これらの構成により、駆動装置によって軸78を中心に歯車76を矢印L方向に回転させ、歯車76の回転に伴って歯車74が歯車76に噛合い、軸72を中心に透明板70を矢印D方向に回転させる。スリット54を通過した横長の光は、フーリエ変換されて縦長の参照光となる。この縦長の参照光は、透明板70が回転することで信号光の光軸に沿った方向に平行移動される。
【0036】
また、図10に示すように、回転可能に支持された透明板70の光入射側の面に、スリットを設けた遮光板82を取り付けて、遮光板付き透明板83を構成してもよい。この場合にも同様に、縦長の参照光は、透明板70が回転することで信号光の光軸に沿った方向に平行移動される。
【0037】
また、図11に示すように、スリット54を設けた遮光板52とホログラム記録媒体24との間にレンズ84を配置すると共に、これら遮光板52とレンズ84とを基板86上に固定配置して、基板86ごと参照光の光軸と直交する方向(矢印E方向)に平行移動させることもできる。レンズ84を挿入することで、遮光板52とホログラム記録媒体24との間の距離Rを小さくすることができる。スリット54の長辺が100μmのとき、レンズ84を挿入しない場合には、フラウンフォーファ回折像を得るために、遮光板52とホログラム記録媒体24との間の距離Rは約40mmである。レンズ84を挿入した場合には、遮光板52とホログラム記録媒体24との間の距離は、レンズ84の焦点距離の2倍に等しく、その焦点距離が5mmであれば、10mmにすることができる。フーリエ変換面PFでの参照光のy方向のビーム径a'を短い距離で大きくするために、レンズ84は、シリンドリカルレンズで構成することが好ましい。
【0038】
例えば、図12に示すように、基板86の一端面をガイド88に突き当てると共に、ラック・ピニオン式の移動機構を設けることができる。具体的には、この移動機構は、軸94に連結され軸94と一体回転する歯車(ピニオン)92、基板86の突き当て面に対向する面に設けられピニオン92に噛合い可能な凹凸(ラック)90、及びモータ等の駆動装置(図示せず)を備えている。これらの構成により、駆動装置によって軸94を中心にピニオン92を矢印F方向に回転させ、ピニオン92の回転に伴ってラック90がピニオン92に噛合い、基板86を矢印E方向に移動させる。
【0039】
また、図17に示すように、遮光板付き透明板83(図10参照)とホログラム記録媒体24との間に、矢印J方向に回転可能に支持されたガルバノミラー114、矢印K方向に回転可能に支持されたガルバノミラー116を配置してもよい。この構成では、遮光板付き透明板83を固定し、2つのガルバノミラーを回転させることで、角度多重記録を実施できる。また、2つのガルバノミラーを固定し、遮光板付き透明板83を参照光の光軸に対して垂直(矢印I方向)に移動させることで、縦長の参照光を信号光の光軸に沿った方向に平行移動させることができる。即ち、スライス多重記録を実施することができる。このように、スライス多重と角度多重とを併用することによって、多重度(記録密度)を増加させることができる。なお、この例では、遮光板付き透明板83を用いているが、遮光板付き透明板83に代えて、透明板を備えていない遮光板52(図1参照)を用いてもよい。
【0040】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、横長のスリットを通過した光をフーリエ変換して縦長の参照光を生成する例について説明したが、第2の実施の形態では、縦長のスリットを通過した光を結像光学系を用いてホログラム記録媒体内で結像させ、縦長の参照光を生成して、スライス多重を実施する。また、第2の実施の形態では、スライス多重と角度多重を併用している。
【0041】
図13に示すように、本実施の形態のホログラム記録再生装置は、参照光の生成系が第1の実施の形態とは異なっている。信号光の生成系は第1の実施の形態と同じ構成であるため、相違点について説明し、同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。
【0042】
ハーフミラー16の光反射側には、参照光用のレーザ光を反射して光路をホログラム記録媒体方向に変更する反射ミラー18a、18b、参照光用のレーザ光をコリメートする一対のレンズ20、及び反射部材100がこの順に配置されている。反射部材100は、図18に示すように、反射板96と反射板96の反射面96a上に形成された遮光マスク98とを備えている。遮光マスク98には、矢印G方向を短手方向とするスリット50が設けられている。即ち、スリット50が形成された部分だけで、反射板96の反射面96aが露出されている。
【0043】
反射部材100は、ガイドとしての保持部材(図示せず)によって矢印G方向に移動可能に保持されると共に、軸26を中心に矢印H方向に回転するように回転可能に保持されている。この反射部材100のレーザ光反射側には、レンズ104とホログラム記録媒体24を所定位置に保持するステージ22とが設けられている。遮光マスク98のスリット50を透過した参照光は、反射板96の反射面96aで反射され、レンズ104により集光されて参照光が生成される。生成された参照光は、信号光と同時にホログラム記録媒体24に照射され、ホログラム記録媒体24中で信号光と参照光とが干渉して、干渉パターンがホログラムとして記録される。
【0044】
本実施の形態では、まず、図14、図15に示すように、縦長の参照光を照射して、信号光との交差領域106で第1のホログラムを記録する(点線で示す)。続いて、反射部材100を矢印G方向(図では向かって左方向)に所定間隔(例えば、結像されたスリットの短辺の長さ)だけ移動させ、縦長の参照光を照射して、信号光との交差領域108で第2のホログラムを記録する(実線で示す)。こうして、ホログラム記録媒体24の記録光入射面24aと対向する出射面24b側から、ホログラムが順に記録される。これにより、ホログラム記録媒体24内に複数のホログラムを記録することができるのである。本実施の形態では、2個のホログラムを所定間隔で記録する例について説明したが、参照光のx方向のビーム径、すなわち、結像されたスリットの短辺の長さを小さくすることで、記録するホログラムの個数を増やすことができる。例えば、スリットの短辺の長さを小さくしたり、以下に述べるように結像の倍率を小さくすることで、記録媒体内で結像されるスリットの短辺の長さを小さくできる。
【0045】
また、この例で分かるように、スライス多重では、信号光の照射領域を縦長の参照光でスライスするように、信号光と参照光とを順次交差させることができればよく、縦長の参照光は互いに平行である必要はない。フーリエ変換面PFでの参照光のx方向のビーム径bi及びy方向のビーム径aiは、レンズの焦点距離f、レンズ104からスリット50までの距離s、レンズ104から光記録媒体までの距離s'、及びスリット50の開口径a、bに応じて定められる。例えば、1/f=1/s+1/s'のとき、像のサイズとスリットのサイズとの比率m(倍率)は、m=s'/sになる。よって、ai=ma、bi=mbとなる。なお、第2の実施の形態では、スリット50は矩形状の開口であり、aが長手方向の開口径、bは 短手方向の開口径である。上述した通り、参照光のy方向のビーム径aiが、信号光のフーリエ変換パターンのうち、ナイキスト領域以上の回折成分と交差すれば、信号光の必要な情報をホログラムとして記録することができる。
【0046】
フーリエ変換面PFでの参照光のy方向のビーム径aiは、信号光の全周波数成分(少なくともナイキスト成分以上)と干渉するようにする。フーリエ変換面PFでの参照光のx方向のビーム径biは、多重度を増加させるには、なるべく小さいことが望ましい。例えば、参照光のx方向のビーム径biを100μmとした場合、厚さ1mmの記録層には、スライス多重により10個のホログラムを記録することができる。なお、互いに隣り合うホログラム間の間隔は、参照光のx方向のビーム径biにより定めることができる。
【0047】
更に、本実施の形態では、反射部材100を軸26を中心に矢印H方向に回転させて参照光の入射角度を変化させることで、角度多重により複数のホログラムを多重記録することができる。スライス多重と角度多重とを併用することで多重度が更に向上する。スライス多重は、記録原理から光記録媒体の厚さが大きいほど、参照光で信号光をスライスできる数を増加できる。また、スライス多重では、参照光の幅が小さいため、記録されるホログラムサイズは小さい。しかしながら、光記録媒体の膜厚が大きいため、それによる角度選択性の劣化は小さい。そのため、角度多重における多重度を減らすことはない。よって、スライス多重と角度多重とを併用することによって、多重度(記録密度)を更に向上させることができる。
【0048】
以上説明した通り、第2の実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、スライス多重によりホログラム記録媒体内に複数のホログラムを記録することができ、多重度の向上(高密度記録)が可能である。また、スライス多重と他の多重方法(角度多重、シフト多重、波長多重、ポリトピック多重)とを組み合わせることで、更に多重度を向上させることができる。
【0049】
また、スライス多重では、個々のホログラムを記録するときの参照光の照射領域が狭いため、参照光による不要露光が低減される。更に、スライス多重では、参照光の照射位置を変化させて多重記録を行うので、ホログラム記録媒体を移動させる必要がなく簡便である。
【0050】
なお、第2の実施の形態では、単一のレンズで結像光学系を構成する例について説明したが、2枚のレンズで4f光学系を形成してもよい。例えば、図16に示すように、反射部材100とホログラム記録媒体24との間に、レンズ110とレンズ112とを配置して、反射部材100から記録媒体24までの距離が、レンズ110、レンズ112の焦点距離fの4倍となる4f光学系を構成してもよい。また、レンズ110とレンズ112の焦点距離を異ならせることによって、結像サイズの拡大や縮小が可能となる。
【0051】
上記の第1、第2の実施の形態では、縦長の参照光を得るためにスリットを用いたが、スリット以外に、光ファイバー、導波路、面発光型半導体レーザアレイ(VCSEL array)を用いて幅の狭い参照光を生成することができる。これらをホログラム記録媒体に近接させて参照光を照射する。特に、回折による拡がりを小さくできるものが望ましい。1方向のみに拡散する拡散板も利用することが可能である。また、スリットの代わりに空間光変調器(SLM)を利用して、参照光を移動させることもできる。例えば、透過(又は反射)させる画素を変更することで、スリットを移動させたのと同等の効果を得ることができる。
【0052】
また、上記の第1、第2の実施の形態では、ホログラム記録媒体の出射面側から順に記録する例について説明したが、入射面側から順に記録してもよい。但し、定着処理が必要なホログラム記録媒体を用いる場合には、記録されたホログラムによる不要な散乱光の影響を小さくするために、ホログラム記録媒体の出射面側から順に記録する。
【0053】
なお、以上の説明では、ホログラム記録媒体に照射される参照光の形状は長方形としたが、その形状はこれに限定されない。例えば、正方形でも楕円形でも良い。また、以上の説明では、参照光のフラウンフォーファ回折像と信号光とをホログラム記録媒体内で交差させてホログラムを記録する例について説明したが、参照光の回折像はこれに限定されない。例えば、フレネル回折像を用いてもよい。要は、信号光のナイキスト領域以上の回折成分と参照光とがホログラム記録媒体内で交差して、ホログラムを記録すればよい。
【0054】
また、以上の説明では、信号光と参照光との交差領域を変化させる際、参照光の光路を変化させる例としたが、これのみに限定されるわけではない。ホログラム記録媒体を信号光の光軸方向に移動させることによっても、スライス多重記録方法を実施することができる。
【0055】
更に、本発明で記録されるホログラムは、強度変調ホログラムでも偏光変調ホログラムでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施の形態のホログラム記録再生装置の概略図である。
【図2】スリットが形成された遮光板の構成を示す斜視図である。
【図3】(A)及び(B)はスライス多重記録の方法を説明する説明図である。
【図4】スライス多重で記録された記録領域を示す概念図である。
【図5】スリット形状とフラウンフォーファ回折像の形状との関係を示す模式図である。
【図6】デジタル画像(信号光)のフーリエ変換像の一例を示す図である。
【図7】x方向のフーリエ変換スペクトルを示す図である。
【図8】参照光の照射位置を変化させる構成の他の例を示す概略図である。
【図9】参照光の照射位置を変化させる構成の他の例を示す斜視図である。
【図10】参照光の照射位置を変化させる構成の他の例を示す概略図である。
【図11】参照光の照射位置を変化させる構成の他の例を示す概略図である。
【図12】参照光の照射位置を変化させる構成の他の例を示す斜視図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態のホログラム記録再生装置の概略図である。
【図14】スライス多重記録の方法を説明する説明図である。
【図15】スライス多重で記録された記録領域を示す概念図である。
【図16】参照光の照射位置を変化させる構成の他の例を示す概略図である。
【図17】参照光の照射位置を変化させる構成の他の例を示す概略図である。
【図18】スリットを有するマスクが形成された反射部材の構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
10 光源(レーザ発振器)
12 シャッター
16 ハーフミラー
18 反射ミラー
20 レンズ
22 ステージ
24 ホログラム記録媒体
24a 入射面
24b 出射面
26 軸
28 反射ミラー
30 レンズ
32 レンズ
34 レンズ
36 空間光変調器
38 レンズ
40 光検出器
42 パーソナルコンピュータ
46 パターン発生器
48 駆動装置
50 スリット
52 遮光板
54 スリット
56 駆動装置
58 保持部材
60 凹凸(ラック)
62 歯車(ピニオン)
64 軸
66 交差領域
68 交差領域
70 透明板
72 軸
74 歯車
76 歯車
78 軸
80a 孔
80b 孔
83 透明板
84 レンズ
86 基板
88 ガイド
90 ラック
92 ピニオン
94 軸
96 反射板
96a 反射面
98 遮光マスク
100 反射部材
104 レンズ
106 交差領域
108 交差領域
110 レンズ
112 レンズ
114 ガルバノミラー
116 ガルバノミラー
1,H2,H3,H4,H5 ホログラム
F フーリエ変換面
【出願人】 【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳

【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一

【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志


【公開番号】 特開2008−3167(P2008−3167A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−170602(P2006−170602)