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【発明の名称】 電子写真用トナー
【発明者】 【氏名】中川 靖子

【要約】 【課題】耐オフセット性(特に耐ホットオフセット性)および画像の発色性に優れる電子写真用トナーを提供する。

【構成】結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶分中に顔料が存在する電子写真用トナー。該トナーは、モノビニル単量体、マクロモノマーを含む架橋性化合物および顔料を含有する単量体組成物(MA)を懸濁重合法等にて重合して得られたトナー(TA)であり、下記測定によるピーク面積(SB)に対するピーク面積(SA)が50〜95%であることが好ましい。トナー(TA)をTHFに溶かし、特定のフィルタでろ過した後、GPC測定を行い結着樹脂に由来するピーク面積(SA)を求める。同様にして架橋性化合物を含まない単量体組成物(MB)を重合して得られた基準トナー(TB)の結着樹脂に由来するピーク面積(SB)を求める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂および顔料を含有するトナーであり、
結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶分中に顔料が存在する、電子写真用トナー。
【請求項2】
モノビニル単量体、マクロモノマーを含む架橋性化合物および顔料を含有する単量体組成物(MA )を懸濁重合法または乳化重合法にて重合して得られたトナー(TA )であり、
下記GPC測定にて求めた基準トナー(TB )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SB )(100%)に対する、トナー(TA )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SA )が、50〜95%である、請求項1に記載の電子写真用トナー。
〔GPC測定〕
(i)トナー(TA )15mgをテトラヒドロフラン5mLに加え、可溶分を完全に溶解させ、サンプル液Aを調製する。
(ii)面積4.0cm2 、ポアサイズ0.45μmのフィルタを用い、加圧力0.15kgf/cm2 にてサンプル液Aをろ過し、フィルタを通過しないテトラヒドロフラン不溶分を取り除く。
(iii)フィルタを通過したサンプル液Aについてゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、得られたGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピークとベースラインとの間の領域のピーク面積(SA )を求める。
(iv)架橋性化合物を含まない以外は単量体組成物(MA )と同じ組成を有する単量体組成物(MB )を、単量体組成物(MA )の重合と同じ条件にて重合して得られた基準トナー(TB )を用意する。
(v)上記(i)〜(iii)と同じ操作を行い、基準トナー(TB )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SB )を求める。
【請求項3】
前記フィルタを通過したサンプル液AについてGPC測定を行って得られる結着樹脂の数平均分子量が、8000〜30000である、請求項2に記載の電子写真用トナー。
【請求項4】
前記単量体組成物(MA )に含まれるマクロモノマーの量が、モノビニル単量体100質量部に対して、0.5〜3質量部である、請求項2または3に記載の電子写真用トナー。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置における記録媒体へのトナーの定着方式としては、熱ロール等による接触加熱方式が主に採用されている。該接触加熱方式においては、フルカラー印刷において記録媒体へ複数のトナー層を定着する場合、充分な定着性および発色性が得られるように、緻密な線速制御および温度制御を行う。そして、これらの制御を行うシステムの簡略化、信頼性向上のためには、トナーの熱特性が重要となる。そして、トナーの熱特性の調整のためには、離型剤、結着樹脂の分子量、粘度の調整等が行われている。
【0003】
例えば、耐オフセット性が向上したトナーとして、ゲル分(トルエン不溶分)を有する結着樹脂を用いたトナーが提案されている(特許文献1)。たしかに、ゲル分を多く含ませることによってトナーの耐オフセット性は向上する。しかし、ゲル分はトナー中に分散しにくく、塊となって存在している。そして、ゲル分は架橋密度が高く、ゲル分の中には顔料が分散できないため、顔料は結着樹脂の非ゲル分(トルエン可溶分)のみに分散し、その結果、トナー中での顔料の分散性が悪くなり、画像の発色性が低下する問題が生ずる。該問題は、複数のトナー層を定着するフルカラー印刷において顕著に現れる。
【特許文献1】特許第2512442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
よって、本発明の目的は、耐オフセット性(特に耐ホットオフセット性)および画像の発色性に優れる電子写真用トナーを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、複数のトナー層を定着する場合でも、定着性を損なうことなく、耐オフセット性(特に耐ホットオフセット性)に優れ、しかも定着可能温度範囲の広い電子写真用トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂および顔料を含有するトナーであり、結着樹脂のテトラヒドロフラン不溶分中に顔料が存在することを特徴とする。
本発明の電子写真用トナーは、モノビニル単量体、マクロモノマーを含む架橋性化合物および顔料を含有する単量体組成物(MA )を懸濁重合法または乳化重合法にて重合して得られたトナー(TA )であり、下記GPC測定にて求めた基準トナー(TB )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SB )(100%)に対する、トナー(TA )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SA )が、50〜95%であることが好ましい。
【0006】
〔GPC測定〕
(i)トナー(TA )15mgをテトラヒドロフラン5mLに加え、可溶分を完全に溶解させ、サンプル液Aを調製する。
(ii)面積4.0cm2 、ポアサイズ0.45μmのフィルタを用い、加圧力0.15kgf/cm2 にてサンプル液Aをろ過し、フィルタを通過しないテトラヒドロフラン不溶分を取り除く。
(iii)フィルタを通過したサンプル液Aについてゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、得られたGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピークとベースラインとの間の領域のピーク面積(SA )を求める。
(iv)架橋性化合物を含まない以外は単量体組成物(MA )と同じ組成を有する単量体組成物(MB )を、単量体組成物(MA )の重合と同じ条件にて重合して得られた基準トナー(TB )を用意する。
(v)上記(i)〜(iii)と同じ操作を行い、基準トナー(TB )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SB )を求める。
【0007】
前記フィルタを通過したサンプル液AについてGPC測定を行って得られる結着樹脂の数平均分子量は、8000〜30000であることが好ましい。
前記単量体組成物(MA )に含まれるマクロモノマーの量は、モノビニル単量体100質量部に対して、0.5〜3質量部であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子写真用トナーは、耐オフセット性(特に耐ホットオフセット性)および画像の発色性に優れる。
また、本発明の電子写真用トナーが、モノビニル単量体、マクロモノマーを含む架橋性化合物および顔料を含有する単量体組成物(MA )を懸濁重合法または乳化重合法にて重合して得られたトナー(TA )であり、前記GPC測定にて求めた基準トナー(TB )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SB )(100%)に対する、トナー(TA )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SA )が、50〜95%であれば、複数のトナー層を定着する場合でも、定着性を損なうことなく、耐オフセット性(特に耐ホットオフセット性)に優れ、しかも定着可能温度範囲が広くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂および顔料を含有するトナーであり、結着樹脂のテトラヒドロフラン(以下、THFと記す。)不溶分、すなわちゲル分中に顔料が存在するトナーである。
THF不溶分中に顔料が存在することは、以下のようにして確認する。
(i)トナー0.01gをTHF20mLに加え、可溶分を完全に溶解させ、サンプル液を調製する。
(ii)面積4.0cm2 、ポアサイズ0.45μmのフィルタを用いてサンプル液をろ過し、フィルタを通過しないTHF不溶分を分離する。
(iii)フィルタ上に残留したTHF不溶分を目視で観察し、THF不溶分中の顔料の有無を確認する。
【0010】
本発明の電子写真用トナーとしては、例えば、モノビニル単量体、マクロモノマーを含む架橋性化合物および顔料を含有する単量体組成物(MA )を懸濁重合法または乳化重合法にて重合して得られるトナー(TA )が挙げられる。
単量体組成物(MA )は、必要に応じて、帯電制御剤、離型剤、重合開始剤、分子量調整剤、滑剤、分散安定剤等の各種添加剤を含有していてもよい。
【0011】
(モノビニル単量体)
モノビニル単量体は、重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を1つ有する単量体である。重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
【0012】
モノビニル単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸の誘導体;エチレン、プロピレン、ブチレン等のモノオレフィン単量体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0013】
モノビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらモノビニル単量体のうち、芳香族ビニル単量体単独、または、芳香族ビニル単量体と(メタ)アクリル酸の誘導体との組み合わせが好ましい。
【0014】
(マクロモノマー)
マクロモノマーを架橋性化合物として用いることにより、結着樹脂のTHF不溶分中への顔料の分散性が良好となる。マクロモノマーの代わりに、後述の他の架橋性化合物のみを用いた場合、THF不溶分の架橋密度が高くなりすぎ、THF不溶分中に顔料が分散できない。
【0015】
マクロモノマーは、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を1つ以上有する巨大分子であり、通常、数平均分子量が1000〜30000のオリゴマーまたはポリマーである。数平均分子量が上記範囲内にあると、マクロモノマーの溶融性を損なうことなく、トナーの定着性および保存性を維持できる。
【0016】
マクロモノマーの分子鎖末端にある重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられ、共重合のしやすさの点から、メタクリロイル基が好ましい。
マクロモノマーとしては、モノビニル単量体を重合して得られる重合体のガラス転移温度よりも高いガラス転移温度を有する重合体を与えるものが好ましい。
【0017】
マクロモノマーとしては、スチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を単独で、またはこれらの2種以上を重合して得られる重合体;ポリシロキサン骨格を有するマクロモノマー等が挙げられる。これらのうち、親水性のものが好ましく、メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを単独で、またはこれらを組み合わせて重合して得られる重合体が特に好ましい。また、分子鎖の末端に重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を2つ以上有する、数平均分子量500〜2000のマクロモノマーを架橋性化合物として用いることにより、トナーの分子量をそれほど大きくせずとも、架橋構造を容易に形成できる。また、数平均分子量500〜2000のマクロモノマーを用いることにより、THF不溶分に顔料が侵入しやすく、かつ侵入した顔料がすり抜けることがない、適度な空隙を有する架橋構造を形成できる。
【0018】
マクロモノマーの量は、モノビニル単量体100質量部に対して、0.5〜3質量部が好ましく、0.5〜2.5質量部がより好ましい。マクロモノマーを0.5質量部以上とすることにより、トナー中にTHF不溶分を充分に導入でき、トナーの耐オフセット性が良好となる。マクロモノマーを3質量部以下とすることにより、結着樹脂のTHF不溶分中への顔料の分散性が良好となる。
【0019】
(他の架橋性化合物)
他の架橋性化合物は、マクロモノマーを除く架橋性化合物であり、重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合を2つ以上有する化合物である。重合可能な炭素−炭素不飽和二重結合としては、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。架橋性化合物を用いることにより、トナーの耐ホットオフセット性を改善できる。ただし、架橋性化合物が多くなりすぎると、THF不溶分の架橋密度が高くなりすぎ、THF不溶分中に顔料が分散できない。
【0020】
他の架橋性化合物としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、これらの誘導体等の芳香族ジビニル単量体;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル等のジビニル単量体;ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアクリレート等の多官能単量体等が挙げられる。
【0021】
他の架橋性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
他の架橋性化合物の量は、モノビニル単量体100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、0質量部が最も好ましい。
【0022】
(顔料)
顔料としては、トナーに用いられる公知の顔料が挙げられる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、ニグロシンベースの顔料類;コバルト、ニッケル、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子等が挙げられる。カーボンブラックとしては、良好な画質が得られる点、トナーの環境への安全性が高まる点から、平均一次粒子径が20〜40nmのものが好ましい。
【0023】
カラートナー用顔料としては、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料等が挙げられる。
イエロー顔料としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物等が挙げられ、具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー3、12、13、14、15、17、62、65、73、74、83、90、93、95、96、97、109、110、111、120、128、129、138、147、155、168、180、181;ネフトールイエローS、ハンザイエローG、C.I.バットイエロー等が挙げられる。
【0024】
マゼンタ顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物等が挙げられ、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48、48:2、48:3、48:4、57、57:1、58、60、63、64、68、81、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、144、146、149、163、166、169、170、177、184、185、187、202、206、207、209、220、251、254等;C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
【0025】
シアン顔料としては、銅フタロシアニン化合物、その誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が挙げられ、具体的には、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、6、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、16、17、60、62、66等;フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、C.I.アシッドブルー等が挙げられる。
【0026】
これら顔料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
顔料の量は、モノビニル単量体100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。
【0027】
(帯電制御剤)
トナーの帯電性を向上させるために、各種の正帯電性または負帯電性の帯電制御剤を単量体組成物(MA )に含有させてもよい。
帯電制御剤としては、例えば、カルボキシル基または含窒素基を有する有機化合物の金属錯体、含金属染料、ニグロシン、帯電制御樹脂等が挙げられる。
【0028】
具体的には、ボントロンN−01(オリエント化学工業社製)、ニグロシンベースEX(オリエント化学工業社製)、スピロンブラックTRH(保土ケ谷化学工業社製)、T−77(保土ケ谷化学工業社製)、ボントロンS−34(オリエント化学工業社製)、ボントロンE−81(オリエント化学工業社製)、ボントロンE−84(オリエント化学工業社製)、ボントロンE−89(オリエント化学工業社製)、ボントロンF−21(オリエント化学工業社製)、COPY CHARGE NX VP434(クラリアント社製)、COPY CHARGENEG VP2036(クラリアント社製)、TNS−4−1(保土ケ谷化学工業社製)、TNS−4−2(保土ケ谷化学工業社製)、LR−147(日本カーリット社製)、コピーブルーPR(クラリアント社製)等の帯電制御剤;4級アンモニウム(塩)基含有共重合体、スルホン酸(塩)基含有共重合体等の帯電制御樹脂等が挙げられる。
【0029】
帯電制御剤の量は、モノビニル単量体100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。
【0030】
(離型剤)
耐オフセット性または熱ロール定着時の離型性を向上させるために、離型剤を単量体組成物(MA )に含有させてもよい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリブチレン等のポリオレフィンワックス類;キャンデリラ、カルナウバ、ライス、木ロウ、ホホバ等の植物系天然ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、ペトロラクタム等の石油系ワックス、その変性ワックス;フィッシャートロプシュワックス等の合成ワックス;ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスリトールテトラパルミテート、ジペンタエリスリトールヘキサミリステート等の多官能エステル化合物等が挙げられる。
【0031】
これらの離型剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの離型剤のうち、合成ワックス、末端変性ポリオレフィンワックス類、石油系ワックス、多官能エステル化合物が好ましい。
離型剤の量は、モノビニル単量体100質量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、0.5〜20質量部がより好ましく、1〜10質量部が特に好ましい。
【0032】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物;ジ−t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、1,1’,3,3’−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の過酸化物類;これら重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤等が挙げられる。
【0033】
これらの開始剤のうち、モノビニル単量体に可溶な油溶性の重合開始剤が好ましく、必要に応じて、水溶性の重合開始剤を併用してもよい。
重合開始剤の量は、モノビニル単量体100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましく、0.3〜15質量部がより好ましく、0.5〜10質量部が特に好ましい。
重合開始剤は、単量体組成物(MA )にあらかじめ添加してもよく、早期重合を抑制するために、重合前または重合途中の、単量体組成物(MA )の懸濁液または乳化液に添加してもよい。
【0034】
(分子量調整剤)
単量体組成物(MA )の重合に際して、分子量調整剤を用いてもよい。
分子量調整剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン−4−チオール等のメルカプタン類;四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。
【0035】
分子量調整剤の量は、モノビニル単量体100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
分子量調整剤は、単量体組成物(MA )にあらかじめ添加してもよく、重合前または重合途中の、単量体組成物(MA )の懸濁液または乳化液に添加してもよい。
【0036】
(分散安定剤)
分散安定剤としては、難水溶性金属化合物のコロイドが好ましい。
難水溶性金属化合物としては、硫酸バリウム、硫酸カルシウム等の硫酸塩;炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩;りん酸カルシウム等のりん酸塩;酸化アルミニウム、酸化チタン等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化第二鉄の金属水酸化物等が挙げられる。これらのうち、重合体粒子の粒度分布を狭くすることができ、画像の鮮明性が向上する点から、難水溶性金属水酸化物のコロイドが好ましい。
【0037】
難水溶性金属化合物のコロイドとしては、水溶性多価金属化合物の水溶液のpHを7以上に調整することによって得られる難水溶性金属水酸化物のコロイドが好ましく、水溶性多価金属化合物と水酸化アルカリ金属塩との水相中の反応により生成する難水溶性金属水酸化物のコロイドが特に好ましい。
難水溶性金属化合物のコロイドは、個数粒度分布において小粒子径側から起算した個数累計が50%である粒子径(D50)が0.5μm以下のものが好ましく、個数粒度分布において小粒子径側から起算した個数累計が90%である粒子径(D90)が1μm以下ものがより好ましい。
【0038】
必要に応じて、水溶性高分子を分散安定剤として用いてもよい。水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ゼラチン等が挙げられる。
本発明においては、界面活性剤を用いる必要はないが、帯電特性の環境依存性が大きくならない範囲で、懸濁重合を安定に行うために用いてもよい。
【0039】
分散安定剤の量は、モノビニル単量体100質量部に対して、0.1〜20質量部が好ましい。分散安定剤の量が少なすぎると、充分な重合安定性を得ることが困難となり、重合凝集物が生成しやすくなる。分散安定剤の量が多すぎると、水溶液粘度が大きくなって重合安定性が低くなる。
【0040】
(トナーの製造方法)
トナー(TA )は、単量体組成物(MA )を懸濁重合法または乳化重合法にて重合することによって得られ、モノビニル単量体およびマクロモノマーを含む架橋性化合物の重合により得られた重合体が結着樹脂となり、その中に顔料、必要に応じて帯電制御剤、離型剤等の他の添加剤が分散した着色重合体粒子である。
【0041】
トナー(TA )は、具体的には、水系分散媒体中にて、単量体組成物(MA )を微細な液滴とする工程(液滴形成工程)、液滴となった単量体組成物(MA )を重合する工程(重合工程)、得られた着色重合体粒子を洗浄し、乾燥する工程(回収工程)を経て製造される。
【0042】
液滴形成工程:
モノビニル単量体、マクロモノマーを含む架橋性化合物および顔料、必要に応じて他の添加剤を混合機を用いて混合し、必要に応じて、メディヤ型湿式粉砕機(例えば、ビーズミル)等を用いて湿式粉砕し、単量体組成物(MA )を調製する。
ついで、単量体組成物(MA )を水系分散媒体中に加え、撹拌により分散させて単量体組成物(MA )の均一な液滴(体積平均粒子径が50〜1000μm程度の一次液滴)を予備的に形成し、分散液を得る。
ついで、高速回転剪断型撹拌機等を用いて、液滴の粒子径が目的とするトナーに近い粒子径になるまで撹拌し、懸濁液(または乳化液)を得る。
【0043】
顔料としてカラートナー用顔料を用い、帯電制御剤として帯電制御樹脂を使用する場合、あらかじめ顔料と帯電制御樹脂とを混練し、顔料マスターバッチを調製しておき、これを単量体組成物(MA )に含有させてもよい。
水系分散媒体としては、イオン交換水等の水が用いられる。所望によりアルコール等の親水性溶媒を加えてもよい。
重合開始剤は、早期重合を避けるため、高速回転剪断型撹拌機を用いて撹拌する直前の分散液に添加することが好ましい。
分散安定剤は、単量体組成物(MA )を加える前の水系分散媒体に添加することが好ましい。
【0044】
懸濁液中の単量体組成物(MA )の液滴の体積平均粒子径および粒度分布は、トナーの体積平均粒子径および粒度分布に影響する。液滴の粒子径が大きすぎると、トナーの粒子径が大きくなりすぎて、画像の解像度が低下する。液滴の粒度分布が広いと、トナーの粒度分布が広くなり、定着温度のばらつきが生じ、カブリ、トナーフィルミングの発生等の不具合が生じる。したがって、単量体組成物(MA )の液滴は、トナーとほぼ同じ大きさになるように形成することが好ましい。
【0045】
単量体組成物(MA )の液滴の体積平均粒子径としては、粒度分布において小粒子径側から起算した体積累計が50%である粒子径Dv50(μm)を用いる。液滴の粒子径Dv50(以下、液滴粒子径Dvと記す。)は、例えば、SALD粒子径分布測定器(島津製作所社製)を用いて測定できる。
単量体組成物(MA )の液滴粒子径Dvは、3〜10μmが好ましく、4〜9μmがより好ましく、4〜8μmが特に好ましい。高精細な画像を得るためには、小粒子径のトナーが有効であり、そのためには、液滴粒子径Dvを小さくすることが好ましい。
単量体組成物(MA )の液滴の粒子径分布(体積平均粒子径/数平均粒子径)は、1〜2が好ましく、1〜1.5がより好ましい。
【0046】
単量体組成物(MA )の液滴粒子径Dvを制御する方法としては、難水溶性金属水酸化物のコロイド等の分散安定剤の量を調整する方法が挙げられる。ただし、液滴粒子径Dvは、分散液の撹拌条件等によっても変動する。したがって、ほぼ所望の液滴粒子径Dvを得るためには、まず、分散安定剤の量を調整し、そして、撹拌条件等を制御することが好ましい。
【0047】
撹拌機としては、例えば、(1)ドイツ国のIKA社製の多段階インライン分散機、荏原製作所製のエバラマイルダー等に代表される分散機、すなわち、櫛歯型同心リングである回転子と固定子との組み合わせを有し、回転子を高速で回転させて、回転子の内側から固定子の外側に分散液を流通させ、回転子と固定子との間隙で分散液を撹拌する分散機、(2)エム・テクニック社製のクレアミックスCLM−0.8Sに代表される、高速で回転するロータとそれを取り囲むスクリーンに生じる剪断力、衝突力、圧力変動、キャビテーション、およびポテンシャルコアの作用によって液滴を形成する撹拌機、(3)特殊機化鉱業社製のTKホモミキサーに代表される、分散液を遠心力によって槽内壁に押し付けて、液膜を形成し、該液膜に超高速で回転する撹拌具の先端が振れることによって液滴を形成する撹拌機等が挙げられる。
【0048】
重合工程:
以下、懸濁重合法を中心に説明する。
単量体組成物(MA )の液滴を含有する懸濁液を重合反応器に仕込み、加熱することによって懸濁重合を行う。
重合温度は、5〜120℃が好ましく、35〜95℃がより好ましい。重合温度が低すぎると、活性の高い重合開始剤を用いなければならないため、重合反応の管理が困難になる。重合温度が高すぎると、低温で溶融する添加剤を含む場合、これがトナー表面にブリードし、保存性が悪くなることがある。
【0049】
単量体組成物(MA )に含まれるモノビニル単量体としては、トナーの定着温度を下げる点から、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは80℃以下、より好ましくは40〜80℃、特に好ましくは50〜70℃の重合体が得られるモノビニル単量体またはそれらの組み合わせを選択する。重合体のTgは、モノビニル単量体の種類および割合に応じて算出される計算値である。
【0050】
以上の懸濁重合によりにより、重合体中に顔料等が分散した着色重合体粒子が得られる。該着色重合体粒子をトナーとして用いてもよく、トナーの保存性(耐ブロッキング性)、低温定着性、定着時の溶融性等を改善する目的で、着色重合体粒子の上に、さらに重合体層を形成して、コア・シェル型重合体粒子としてもよい。コア・シェル型重合体粒子とすることにより、印字(複写、印刷等)の高速化、フルカラー化、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)透過性等に対応できるトナーが得られる。
【0051】
コア・シェル型重合体粒子の製造方法としては、前記着色重合体粒子をコア粒子とし、該コア粒子の存在下にシェル用単量体をさらに重合して、コア粒子の表面に重合体層(シェル)を形成する方法が挙げられる。
シェル用単量体としては、上述のモノビニル系単量体と同様のものを用いることができる。
シェル用単量体としては、トナーの保存性を改善する点から、コア粒子を構成する重合体のTgよりも高いTgを有する重合体を形成するものが好ましい。そして、コア粒子を構成する重合体のTgを低く設定できることにより、トナーの定着温度を下げたり、溶融特性を改善したりすることができる。
【0052】
コア用単量体としては、定着温度と保存性とのバランスの点から、Tgが好ましくは60℃以下、より好ましくは40〜60℃の重合体を形成しうる単量体を選択することが好ましい。
シェル用単量体としては、スチレン、メタクリル酸メチル等のTgが80℃を超える重合体を形成しうる単量体を選択することが好ましい。
【0053】
シェル用単量体により形成される重合体のTgは、50℃超過120℃以下が好ましく、60℃超過110℃以下がより好ましく、80℃超過105℃以下が特に好ましい。
コア用単量体から形成される重合体とシェル用単量体から形成される重合体とのTgの差は、10℃以上が好ましく、20℃以上が好ましく、30℃以上が特に好ましい。
【0054】
コア用単量体とシェル用単量体との質量比(コア用単量体/シェル用単量体)は、40/60〜99.9/0.1が好ましく、60/40〜99.7/0.3がより好ましく、80/20〜99.5/0.5が特に好ましい。シェル用単量体の割合が過小であると、トナーの保存性の改善効果が小さく、過大であると、定着温度の低減効果が小さくなる。
【0055】
シェル用単量体には、帯電制御剤を加えてもよい。帯電制御剤としては、上述の帯電制御剤が挙げられる。
帯電制御剤の量は、シェル用単量体100質量部に対して、0.01〜10質量部が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。
【0056】
シェルを効率良く形成する点から、シェル用単量体を添加する際に、水溶性重合開始剤を添加することが好ましい。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2’−アゾビス−[2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル〕プロピオンアミド]等のアゾ化合物等が挙げられる。
水溶性重合開始剤の量は、シェル用単量体100質量量部に対して、0.1〜50質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。
【0057】
シェルの平均厚さは、0.001〜1.0μmが好ましく、0.003〜0.5μmがより好ましく、0.005〜0.2μmが特に好ましい。シェルが厚すぎると、トナーの定着性が低下し、シェルが薄すぎると、トナーの保存性が低下する。コア粒子径およびシェルの厚さは、電子顕微鏡により観察できる場合は、その観察写真から無作意に選択したコア粒子の大きさおよびシェルの厚さを直接測ることにより測定でき、電子顕微鏡でコアとシェルとを観察することが困難な場合は、コア粒子の粒子径と、シェル用単量体の量から算定する。
【0058】
回収工程:
重合工程により、着色重合体粒子(コア・シェル型重合体粒子を含む)を含有する分散液が得られる。回収工程では、濾過・洗浄工程、乾燥工程等が順次行われる。
濾過・洗浄工程では、重合工程で得られた分散液をそのまま用いてもよく、着色重合体粒子の濃度を調節するためにイオン交換水等を追加してもよい。
【0059】
濾過・洗浄工程では、分散安定剤を可溶化して除去するために、分散安定剤の種類に応じて、例えば、酸洗浄、アルカリ洗浄等を行ってもよい。例えば、分散安定剤として、水酸化マグネシウム等の難水溶性金属水酸化物のコロイドを用いた場合には、希硫酸等の酸を添加し、分散液のpHを酸性にして、該コロイドを水系分散媒体に溶解させる。
また、分散液の状態で、ストリッピング処理等により、脱モノマー処理を行ってもよい。また、着色重合体粒子の粒子径を調整するために、着色重合体粒子を凝集または会合させてもよい。
【0060】
濾過・洗浄の方法としては、例えば、真空式ベルトフィルタを用いて、濾過と着色重合体粒子の洗浄とを同時に行う方法等が挙げられる。
洗浄工程の後、湿潤状態の着色重合体粒子(ウエットケーキ)が回収される。
回収された着色重合体粒子は、常法に従って、乾燥される。これにより、乾燥した着色重合体粒子、すなわちトナー(TA )が得られる。
【0061】
(GPC測定)
トナー(TA )は、THF不溶分の大きさおよび量が、適度に調整されていることが好ましい。すなわち、下記(i)〜(v)の手順で求めた基準トナー(TB )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SB )(100%)に対する、トナー(TA )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SA )が50〜95%とされている。
THF不溶分の大きさおよび量を適度に調整することにより、定着性を損なうことなく、耐オフセット性(特に耐ホットオフセット性)に優れ、しかも定着可能温度範囲の広いトナーとなる。
【0062】
(i)トナー(TA )15mgをテトラヒドロフラン5mLに加え、可溶分を完全に溶解させ、サンプル液Aを調製する。
(ii)面積4.0cm2 、ポアサイズ0.45μmのフィルタを用い、加圧力0.15kgf/cm2 にてサンプル液Aをろ過し、フィルタを通過しないTHF不溶分を取り除く。
(iii)フィルタを通過したサンプル液Aについてゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、得られたGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピークとベースラインとの間の領域のピーク面積(SA )を求める。
(iv)架橋性化合物を含まない以外は単量体組成物(MA )と同じ組成を有する単量体組成物(MB )を、単量体組成物(MA )の重合と同じ条件にて重合して得られた基準トナー(TB )を用意する。
(v)上記(i)〜(iii)と同じ操作を行い、基準トナー(TB )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SB )を求める。
【0063】
以下、各手順を詳細に説明する。
【0064】
手順(i):
THFの量およびトナー(TA )の量は正確に秤量する。
トナー(TA )に含まれる可溶分のTHFへの溶解は、ボールミルまたは撹拌機を用い、1〜5時間かけて充分に行う。この際、室温〜50℃に加熱してもよい。
【0065】
手順(ii):
フィルタとしては、市販のHPLCサンプル前処理用フィルタを用いればよい。
ポアサイズは、市販品の公称値とする。
ろ過の際の加圧力は、ろ過する際に用いるシリンジのピストン部を加圧するために取り付けられる重りによって調整する。
【0066】
手順(iii):
GPC測定に用いるGPC装置としては、市販のGPC装置を用いればよい。カラム等も市販のカラムを用いればよい。
溶媒としては、THFを用いる。流量は、1.0mL/分とする。
GPC測定によって、例えば、図1に示すGPCチャートが得られる。横軸は溶出時間(分)、縦軸は強度(mV)である。
【0067】
図1のGPCチャートは、モノビニル単量体(100質量部)、架橋性化合物(3質量部)、顔料等を含有する単量体組成物(MA )を懸濁重合法にて重合して得られたトナー(TA )のGPCチャートである。
GPCチャートにおける結着樹脂に由来するピークとベースラインとにの間の領域のピーク面積(SA )を求める。図1のGPCチャートの場合、結着樹脂に由来するピークは、溶出時間が12.5分〜18.5分付近のピークであり、ピーク面積(SA )は、8000(mV・秒)である。
【0068】
手順(iv):
基準トナー(TB )は、架橋性化合物を含まない以外は単量体組成物(MA )と同じ組成を有する単量体組成物(MB )を、単量体組成物(MA )の重合と同じ条件にて重合して得られたものとする。単量体組成物(MB )の組成が、架橋性化合物を除く単量体組成物(MA )の組成と一致しない場合(例えば、モノビニル単量体の種類、2種以上用いた場合はそれらの割合、顔料の量等が異なる場合)、サンプル液Bに含まれる結着樹脂の濃度、結着樹脂の吸光係数等が変わってしまい、トナー(TA )のGPCチャートとの比較ができなくなる。
【0069】
手順(v):
上記(i)〜(iii)と同じ操作を行い、基準トナー(TB )のGPCチャートの面積(SB )を求める。
トナー(TB )のGPCチャートとトナー(TA )のGPCチャートとの比較を行うためには、THFの量およびトナー(TB )の量は正確に秤量し、サンプル液Bにおける基準トナー(TB )の濃度とサンプル液Aのトナー(TA )の濃度とを完全に一致させる必要がある。
ろ過は、上記(ii)と同じフィルタを用い、同じ条件にて行う必要がある。
GPC測定もまた、上記(iii)と同じGPC装置を用い、同じ条件にて行う必要がある。
【0070】
図2のGPCチャートは、架橋性化合物を含まない以外は、単量体組成物(MA )と同じ組成を有する単量体組成物(MB )を、単量体組成物(MA )の重合と同じ条件にて重合して得られた基準トナー(TB )のGPCチャートである。
GPCチャートにおける結着樹脂に由来するピークとベースラインとの間の領域のピーク面積(SB )を求める。図2のGPCチャートの場合、結着樹脂に由来するピークは、溶出時間が12分〜18.5分付近のピークであり、ピーク面積(SB )は、11000(mV・秒)である。
以上の測定から、基準トナー(TB )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SB )(100%)に対する、トナー(TA )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SA )の割合を求める。図1および図2の場合、トナー(TA )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SA )の割合は、73%となる。
【0071】
(数平均分子量)
前記フィルタを通過したサンプル液AについてGPC測定を行って得られる結着樹脂の数平均分子量(ポリスチレン換算)は、8000〜30000であることが好ましい。該数平均分子量が8000未満であれば、溶融粘度が下がりホットオフセットが発生する場合がある。該数平均分子量が30000を超えると、溶融粘度が上がり低温定着性が悪くなる場合がある。
【0072】
(体積平均粒子径)
本発明の電子写真用トナーの体積平均粒子径(Dv)は、3〜10μmが好ましく、4〜9μmがより好ましく、4〜8μmが特に好ましい。解像度を高めて高精細な画像を得るためには、トナーの体積平均粒子径を小粒子径とすることが好ましい。
【0073】
体積平均粒子径(Dv)は、以下のように測定する。
測定装置としてコールター社製マルチサイザーII型またはIII型を用い、これに、個数平均分布、体積平均分布を出力するインターフェースおよびパーソナルコンピュータを接続する。電解液として、塩化ナトリウム(試薬1級)を用いて1%NaCl水溶液を調製する。該電解液100〜150ml中に、分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、さらに測定試料のトナーを0.5〜50mg加えて懸濁する。試料を懸濁した電解液を超音波分散器で約1〜3分、分散処理した後、上記測定装置により、100μmのアパチャーを用いて、トナーの粒度分布を測定し、トナーの体積分布を求める。
【0074】
(現像剤)
本発明の電子写真用トナーは、各種現像剤のトナー成分として用いることができ、非磁性一成分現像剤として用いることが好ましい。
本発明の電子写真用トナーを非磁性一成分現像剤のトナー成分として用いる場合、必要に応じて外添剤を添加してもよい。
外添剤としては、流動化剤、研磨剤等として作用する無機粒子、有機樹脂粒子等が挙げられる。
【0075】
無機粒子としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム等が挙げられる。
有機樹脂粒子としては、メタクリル酸エステル重合体粒子、アクリル酸エステル重合体粒子、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体粒子、スチレン−アクリル酸エステル共重合体粒子、コアがスチレン重合体でシェルがメタクリル酸エステル共重合体で形成されたコア・シェル型粒子等が挙げられる。
これらのうち、無機酸化物粒子が好ましく、二酸化ケイ素が特に好ましい。
無機粒子としては、表面を疎水化処理したものであってもよく、疎水化処理された二酸化ケイ素が特に好ましい。
【0076】
外添剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。外添剤を組み合わせて用いる場合には、平均粒子径の異なる無機粒子の組み合わせ、または無機粒子と有機樹脂粒子との組み合わせが好ましい。
外添剤の量は、トナー100質量部に対して、0.1〜6質量部が好ましい。
外添剤をトナーに付着させる方法としては、トナーと外添剤とをヘンシェルミキサー等の混合機に入れて攪拌する方法が挙げられる。
【0077】
(作用、効果)
以上説明した本発明の電子写真トナーにあっては、結着樹脂がTHF不溶分、すなわちゲル分を含んでいるため、耐オフセット性(特に耐ホットオフセット性)に優れる。また、THF不溶分を含む場合、従来のトナーでは、トナー中での顔料の分散性が悪くなり、画像の発色性が低下するが、本発明の電子写真トナーにあっては、THF不溶分中に顔料が存在するため、画像の発色性に優れる。
【0078】
また、モノビニル単量体、マクロモノマーを含む架橋性化合物および顔料を含有する単量体組成物(MA )を懸濁重合法または乳化重合法にて重合して得られた、結着樹脂および顔料を含有するトナー(TA )であり、上記GPC測定にて求めた基準トナー(TB )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SB )(100%)に対する、トナー(TA )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SA )が、50〜95%であれば、複数のトナー層を定着する場合でも、定着性を損なうことなく、耐オフセット性(特に耐ホットオフセット性)に優れ、しかも定着可能温度範囲が広い。この理由を以下に説明する。
【0079】
記録媒体に対する溶融トナーの定着性を上げるためには、溶融粘度を下げる必要がある。ところが、トナーの溶融粘度を下げると、耐オフセット性が低下してしまうため、トナー内部に自己凝集力を持つ高分子成分を加えて耐オフセット性を向上させなければならない。例えば、特許文献1においては、トナーにゲル分を含ませている。しかし、単にゲル分の量を増やしただけでは、溶融粘度が高くなり、定着性が低下してしまう。また、ゲル分が増えると、定着可能温度範囲の下限が上昇し、低温定着性が低下し、コールドオフセットが発生しやすくなる。
【0080】
この課題を解決するため、本発明は、従来のようなゲル分の量だけに着目するのではなく、ゲル分の大きさおよび量の両方に着目している。すなわち、トナー(TA )をTHFに溶解させた液を、ポアサイズ0.45μmのフィルタを用い、加圧力0.15kgf/cm2 にてろ過した後、GPC測定を行うことで、フィルタを通過しない所定の大きさのゲル分が除かれたトナー(TA )のGPCチャートが得られる。一方、架橋性化合物を含まずに単量体組成物(MB )を重合して得られた基準トナー(TB )に含まれる結着樹脂は、架橋性化合物による架橋構造を有していないため、THFにほぼ100%溶解する。このような基準トナー(TB )のGPCチャートの面積(SB )とトナー(TA )のGPCチャートの面積(SA )とを比較することによって、ポアサイズ0.45μmのフィルタを通過しないゲル分の量を見積もることができる。
このようにしてトナー(TA )に最適な大きさのTHF不溶分を所定量導入することにより、定着性を損なわず、耐オフセット性(特に耐ホットオフセット性)に優れ、しかも定着可能温度範囲が広いトナーを提供できる。
【実施例】
【0081】
〔実施例1〕
スチレン80質量部、メタクリル酸2−エチルヘキシル20質量部、カーボンブラック(三菱化学社製、MA−100)5質量部、離型剤である低分子量ポリプロピレン(三洋化成社製、ビスコール660P)3質量部、帯電制御剤(オリエント化学工業社製、N−07)5.0質量部、架橋性化合物である、分子末端の官能基を架橋性官能基であるメタクリロイル基で置換したマクロモノマー(数平均分子量1500)1.0質量部の混合溶液をボールミルにて充分に分散させた後、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)2.0質量部、分子量調整剤であるt−ドデシルメルカプタン3.0質量部を加え、単量体組成物を調製した。該単量体組成物をイオン交換水400質量部に加え、さらに分散安定剤として第三リン酸カルシウム5質量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.1質量部を加え、TKホモミキサ(特殊機化工業社製)を用いて、回転数5000rpmで45分間攪拌し、懸濁液を得た。該懸濁液を、100rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下、70℃で10時間加熱し、単量体組成物を重合させた。着色重合体粒子の分散液を酸洗浄して第三リン酸カルシウムを除去した。該分散液をろ過し、回収された着色重合体粒子を洗浄、乾燥してトナーを得た。トナーの体積平均粒子径(Dv)は7.5μmであった。
【0082】
トナー100質量部と、外添剤(日本アエロジル社製、シリカRA200HS)0.8質量部とを、ヘンシェルミキサーで周速3500mm/秒にて10分間混合し、非磁性一成分現像剤を得た。
【0083】
〔実施例2、3〕
マクロモノマーの量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーおよび非磁性一成分現像剤を得た。
【0084】
〔実施例4〕
マクロモノマーを表1に示す数平均分子量のものに変更し、マクロモノマーの量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーおよび非磁性一成分現像剤を得た。
【0085】
〔比較例1〕
マクロモノマーをジビニルベンゼンに変更し、かつジビニルベンゼンの量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーおよび非磁性一成分現像剤を得た。
【0086】
〔比較例2〕
数平均分子量が1500のマクロモノマーを、数平均分子量が10000のマクロモノマーに変更し、かつマクロモノマーの量を表1に示す量に変更した以外は、実施例1と同様にしてトナーおよび非磁性一成分現像剤を得た。
【0087】
〔比較例3〕
マクロモノマーを用いない以外は、実施例1と同様にしてトナー(基準トナー(TB ))および非磁性一成分現像剤を得た。
【0088】
〔評価〕
実施例1〜4、比較例1〜3のトナーおよび非磁性一成分現像剤について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(GPC測定)
(i)密栓できる容器に、実施例1〜3、比較例1、2のトナー(TA )を正確に15mg秤量し、ホールピペットで正確に秤量したTHF5mLを加えた。該容器をボールミルにて24時間撹拌し、可溶分を完全に溶解させ、サンプル液Aを調製した。
【0090】
(ii)面積4.0cm2 、ポアサイズ0.45μmのフィルタ(十慈フィールド社製、クロマトディスク 25N)を用い、加圧力0.15kgf/cm2 にてサンプル液Aをろ過し、フィルタを通過しないTHF不溶分を取り除いた。
【0091】
(iii)フィルタを通過したサンプル液AについてGPC測定を以下の装置を用い、以下の条件にて行った。
GPC装置:東ソー社製、HLC−8220GPC、溶媒:THF、流量:1.0ml/分、サンプルカラム:TSK−GEL GMHXL×2、リファレンスカラム:TSK−GEL GRCXLH
得られたGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピークとベースラインとの間の領域のピーク面積(SA )を求めた。
【0092】
(iv)基準トナー(TB )として比較例3のトナーを用意した。
(v)上記(i)〜(iii)と同じ操作を行い、基準トナー(TB )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SB )を求めた。
以上の測定から、基準トナー(TB )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SB )(100%)に対する、トナー(TA )のGPCチャートにおける結着樹脂に由来するピーク面積(SA )の割合(表中、面積割合と記す。)を求めた。結果を表1に示す。
【0093】
(THF不溶分中の顔料)
(i)トナー0.01gをTHF20mLに加え、可溶分を完全に溶解させ、サンプル液を調製した。
(ii)面積4.0cm2 、ポアサイズ0.45μmのフィルタを用いてサンプル液をろ過し、フィルタを通過しないTHF不溶分を分離した。
(iii)フィルタ上に残留したTHF不溶分を目視で観察し、THF不溶分中に顔料が存在するものを○、THF不溶分中に顔料が存在しないものを×と評価した。
【0094】
(定着特性評価)
非磁性一成分現像剤を装填したプリンタ(三田工業社製、DP560)を用いて未定着画像を出力した。記録媒体としては評価紙(ノイシドラー社製、Colorcopy90)を用い、トナー量:1.5mg/cm2 にて画像出力した。
定着ユニット(京セラミタ社製、FS−1800)を改造した定着冶具を用いて、以下の条件にて未定着画像を定着させ、耐オフセット性およびテープ剥離性を評価した。結果を表1に示す。
評価線速:150mm/秒、評価温度:任意(150〜210℃/10℃step)。
【0095】
(耐オフセット性)
加熱ローラ周期で画像パターンがオフセットとして発生する場合を×、発生しない場合を○と評価した。表中、「Hot」は、ホットオフセット(画像のトナーが溶融し、再び加熱ローラに付着する現象)が発生したことを示し、「Cold」は、コールドオフセット(記録媒体との界面付近の画像のトナーが充分溶かされないために、画像が充分に定着せず、加熱ローラによって画像の一部が取り去られる現象)が発生したことを示す。
【0096】
(テープ剥離性)
市販のセロハンテープを画像定着面上に貼り付け、垂直方法に剥がし取ったとき、剥がれ状態を限度見本と比較して判定した。
○:剥れなし、
△:わずかに剥れ、
×:剥れ。
【0097】
(発色性評価)
定着特性評価において出力された画像について、以下の評価を行った。
【0098】
(濃淡ムラおよび画像濃度)
濃度計を用いて10点濃度測定を行い、得られた濃度差が0.1以下であるものを◎、濃度計を用いて10点濃度測定を行い、得られた濃度差が0.1を超えるが目視では濃淡差がないものを○、目視で明らかに濃淡ムラがあるものを×と評価した。
画像濃度の測定および濃淡ムラの評価は、グレタグマクベス濃度計:RD−19型(サカタインクス社製)を用いて、画像の黒ベタ部の濃度を測定することによって行った。
【0099】
【表1】


【0100】
比較例1、2のトナーは、THF不溶分中に顔料が存在しないため、発色性に劣っていた。また、比較例1、2のトナーは、THF不溶分の量が多いため、定着性に劣っていた。比較例3のトナーは、THF不溶分が含まれていないため、耐ホットオフセット性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の電子写真用トナーは、耐オフセット性(特に耐ホットオフセット性)および画像の発色性に優れるため、記録媒体へ複数のトナー層を定着する必要のあるフルカラー印刷に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】モノビニル単量体、架橋性単量体、顔料等を含有する単量体組成物(MA )を懸濁重合法にて重合して得られたトナー(TA )のGPCチャートである。
【図2】架橋性単量体を含まない単量体組成物(MB )を懸濁重合法にて重合して得られた基準トナー(TB )のGPCチャートである。
【出願人】 【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラミタ株式会社
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦


【公開番号】 特開2008−3224(P2008−3224A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171456(P2006−171456)