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【発明の名称】 光学記録用材料、及びそれを用いた光学記録媒体
【発明者】 【氏名】尾澤 鉄男

【氏名】今村 悟

【氏名】茂岩 統之

【要約】 【課題】光学記録媒体における記録密度の問題に解決を与え得る光学記録材料、及び、それを用いた光学記録媒体を提供する。

【構成】下記一般式(I)で表される構造を有する化合物からなる光学記録用材料、及び、該光学記録用材料を記録層に含有する光学記録媒体。この光記録用材料を構成する発光性基と光解離性保護基を有する化合物を光解離させることによって記録を行い、光解離前後の発光強度変化を読み取ることによって再生を行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの発光性基と1つの光解離性保護基とが結合している構造を有する化合物からなることを特徴とする光学記録用材料。
【請求項2】
下記一般式(I)で表される構造を有する化合物からなることを特徴とする請求項1に記載の光学記録用材料。
【化1】


〔式(I)中、Aは発光性基を表し、Xは2価の結合基を表し、Bは光解離性保護基を表し、nはuは1〜6の整数である。〕
【請求項3】
発光性基が多光子吸収性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学記録用材料。
【請求項4】
発光性基が蛍光発光性基であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光学記録用材料。
【請求項5】
光照射後に発光強度が増加することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の光学記録用材料。
【請求項6】
一般式(I)で表される構造を有する化合物が、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の光学記録用材料。
【化2】


〔式(II)中、
及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香環基を表し、
Xは2価の結合基を表し、
Bは光解離性保護基を表し、
aは1〜3の整数を表す。
Zは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は−(Ar−(X−B)(ここで、Arは置換基を有していてもよい芳香環基を表し、Xは2価の結合基を表し、Bは光解離性保護基を表し、r及びsは各々独立に、0又は1であり、RとArは結合して6員環を形成していてもよい。)を表す。〕
【請求項7】
一般式(I)で表される構造を有する化合物が、下記一般式(III)で表される化合物である請求項2ないし5のいずれかに記載の光学記録用材料。
【化3】


〔式(III)中、
及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香環基を表し、
Xは2価の結合基を表し、
Bは光解離性保護基を表し、
tは0〜4の整数であり、uは0〜6の整数である。〕
【請求項8】
一般式(I)で表される構造を有する化合物が、下記一般式(IV)で表される化合物である請求項2ないし5のいずれかに記載の光学記録用材料。
【化4】


〔式(IV)中、
Yは−O−、又は−S−を表し、
Ar及びArは各々独立に、置換基を有していてもよい芳香環基を表し、
Xは2価の結合基を表し、
Bは光解離性保護基を表し、
v及びwは各々独立に、0〜4の整数である。〕
【請求項9】
光解離性保護基Bが、下記一般式(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)で表される基からなる群より選択されるいずれかである請求項2ないし8のいずれかに記載の光学記録用材料。
【化5】


〔式(V)〜(VII)の芳香環は更に置換基を有していてもよい。
式(VIII)において、R,R10,R11は各々独立に任意の置換基を表すが、R,R10,R11の少なくとも1つは置換基を有していても良いアルキル基である。〕
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の光学記録用材料を記録層に含有することを特徴とする光学記録媒体。
【請求項11】
前記光記録用材料を構成する発光性基と光解離性保護基を有する化合物を光解離させることによって記録を行い、光解離前後の発光強度変化を読み取ることによって再生を行うことを特徴とする請求項10に記載の光学記録媒体の記録再生方法。
【請求項12】
下記一般式(II)で表されることを特徴とする化合物。
【化6】


〔式(II)中、
及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香環基を表し、
Xは2価の結合基を表し、
Bは下記一般式(V)、(VI)、(VII)、又は(VIII)で表される基を表し、
aは1〜3の整数を表す。
Zは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は−(Ar−(X−B)(ここで、Arは置換基を有していてもよい芳香環基を表し、Xは2価の結合基を表し、Bは下記一般式(V)、(VI)、(VII)、又は(VIII)で表される基を表し、r及びsは各々独立に、0又は1であり、RとArは結合して6員環を形成していてもよい。)を表す。
【化7】


(式(V)〜(VII)の芳香環は更に置換基を有していてもよい。
式(VIII)において、R,R10,R11は各々独立に任意の置換基を表すが、R,R10,R11の少なくとも1つは置換基を有していても良いアルキル基である。)〕
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光発光性基と光解離性保護基とが結合した構造を有する化合物からなる光学記録材料、及び、この光学記録材料を記録層に含有する光学記録媒体に関する。詳しくは、特定の発光性基に光解離性保護基が結合しており、光照射によって発光強度が変化する化合物からなる光学記録材料、及び、この光学記録材料を記録層に含有する光学記録媒体に関する。
本発明はまた、この光学記録媒体の記録再生方法と、この光記録用材料を構成する新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー光を用いた光学記録は、高密度の情報記録の保存及び再生が可能であるため、近年、その開発が進められている。その光学記録媒体の一例としては、光ディスクを挙げることができる。一般に、光ディスクは、円形の基体に設けられた薄い記録層に、集束したレーザー光を照射し、高密度の情報記録を行うものである。その記録は、照射されたレーザー光エネルギーの吸収により、その箇所の記録層に、分解、蒸発、溶解等の熱変形が生じることにより行われている。また、情報の再生は、レーザー光により、変形が起きている部分と起きていない部分の反射率の差を読み取ることにより行われている。しかし、この方法においては、記録密度に限界がある。
【0003】
このような問題点を解決すべく、これまでに発光強度変化を用いた光学記録材料や記録媒体については広く研究が行われてきている(例えば、特許文献1,2、及び非特許文献1,2を参照)。
【0004】
また、さらに記録容量を向上させる目的で、情報の記録再生に多光子吸収を用いることにより、記録媒体中の3次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で記録する、いわゆる「3次元光メモリ」に関する試みも数多く公開されている(例えば、非特許文献3)。その中には、上述した発光強度変化と多光子吸収を組み合わせたものも含まれているが、常温では記録された情報が安定に保存されない;発光強度変化が小さく信号のS/N比が不十分;また構成要素が複雑になる;などの理由から、実用的ではなかった(例えば、特許文献3〜11)。
【0005】
一方、バイオ分野においては、古くから多光子吸収現象の一つである二光子吸収を利用し、生理活性物質に光感受性の保護基(以下、光解離性保護基と称する)を結合させて、その機能を失わせた物質、いわゆる「ケージド化合物」に光を照射することにより、生理活性物質を発生させる研究などが活発に行われている(例えば、非特許文献4〜7)。また、非特許文献8には、蛍光性色素母体に光解離性保護基を結合させた化合物が記載されている。
【特許文献1】特表2001−507137
【特許文献2】特開2005−8781
【特許文献3】米国特許第5,268,862号
【特許文献4】特表2003−529180
【特許文献5】特表2005−517769
【特許文献6】特表2005−520272
【特許文献7】特開2003−27040
【特許文献8】特開2003−29376
【特許文献9】特開2004−352770
【特許文献10】特開2005−29726
【特許文献11】特開2005−100606
【非特許文献1】Science、Vol.245、p843(1989)
【非特許文献2】Opt.Commun.、Vol.212、p45(2002)
【非特許文献3】Opt.Lett.、Vol.16、p1780(1991)
【非特許文献4】Proc.Nat.Act.Sci.USA、Vol.91、p6629(1994)
【非特許文献5】Neuron、Vol.18、p351(1997)
【非特許文献6】Neuron、Vol.19、p465(1997)
【非特許文献7】Proc.Nat.Act.Sci.USA、Vol.96、p11932(1999)
【非特許文献8】J.Am.Chem.Soc.、Vol.128、p3831(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献4〜8に記載の発明は光解離性保護基によって不活化されている生理活性物質を光解離によって活性化する技術に関するものであり、生体内と同じpH7近傍の親水性緩衝液中で機能を確認したものである。非特許文献4〜7に記載の化合物はいずれも発光特性を有するものではない。また、非特許文献8に記載の化合物は、生理活性物質に2光子吸収性の付与を目的として蛍光色素母体を結合させてはいるが、発光特性付与を目的とするものではない。
よって、有機溶媒に対する溶解性に優れ、記録層中に固体状態で含有されることが要求される上述の光学記録材料や3次元光メモリへ、これらの化合物を応用した例はこれまでになかった。
【0007】
本発明は、光学記録媒体における記録密度の問題に着目してなされたものであり、光学記録媒体における記録密度の問題に解決を与え得る光学記録材料、及び、それを用いた光学記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、記録密度の向上につき種々検討を重ねた結果、光照射により、発光強度が変化する化合物を光学記録に応用することを発想し、本発明に到った。
即ち、本発明は以下を要旨とするものである。
【0009】
[1] 少なくとも1つの発光性基と1つの光解離性保護基とが結合している構造を有する化合物からなることを特徴とする光学記録用材料。
【0010】
[2] 下記一般式(I)で表される構造を有する化合物からなることを特徴とする[1]に記載の光学記録用材料。
【化8】


〔式(I)中、Aは発光性基を表し、Xは2価の結合基を表し、Bは光解離性保護基を表し、nはuは1〜6の整数である。〕
【0011】
[3] 発光性基が多光子吸収性を有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の光学記録用材料。
【0012】
[4] 発光性基が蛍光発光性基であることを特徴とする[1]ないし[3]のいずれかに記載の光学記録用材料。
【0013】
[5] 光照射後に発光強度が増加することを特徴とする[1]ないし4のいずれかに記載の光学記録用材料。
【0014】
[6] 一般式(I)で表される構造を有する化合物が、下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする[2]ないし[5]のいずれかに記載の光学記録用材料。
【化9】


〔式(II)中、
及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香環基を表し、
Xは2価の結合基を表し、
Bは光解離性保護基を表し、
aは1〜3の整数を表す。
Zは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は−(Ar−(X−B)(ここで、Arは置換基を有していてもよい芳香環基を表し、Xは2価の結合基を表し、Bは光解離性保護基を表し、r及びsは各々独立に、0又は1であり、RとArは結合して6員環を形成していてもよい。)を表す。〕
【0015】
[7] 一般式(I)で表される構造を有する化合物が、下記一般式(III)で表される化合物である[2]ないし[5]のいずれかに記載の光学記録用材料。
【化10】


〔式(III)中、
及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香環基を表し、
Xは2価の結合基を表し、
Bは光解離性保護基を表し、
tは0〜4の整数であり、uは0〜6の整数である。〕
【0016】
[8] 一般式(I)で表される構造を有する化合物が、下記一般式(IV)で表される化合物である[2]ないし[5]のいずれかに記載の光学記録用材料。
【化11】


〔式(IV)中、
Yは−O−、又は−S−を表し、
Ar及びArは各々独立に、置換基を有していてもよい芳香環基を表し、
Xは2価の結合基を表し、
Bは光解離性保護基を表し、
v及びwは各々独立に、0〜4の整数である。〕
【0017】
[9] 光解離性保護基Bが、下記一般式(V)、(VI)、(VII)及び(VIII)で表される基からなる群より選択されるいずれかである[2]ないし[8]のいずれかに記載の光学記録用材料。
【化12】


〔式(V)〜(VII)の芳香環は更に置換基を有していてもよい。
式(VIII)において、R,R10,R11は各々独立に任意の置換基を表すが、R,R10,R11の少なくとも1つは置換基を有していても良いアルキル基である。〕
【0018】
[10] [1]ないし[9]のいずれかに記載の光学記録用材料を記録層に含有することを特徴とする光学記録媒体。
【0019】
[11] 前記光記録用材料を構成する発光性基と光解離性保護基を有する化合物を光解離させることによって記録を行い、光解離前後の発光強度変化を読み取ることによって再生を行うことを特徴とする[10]に記載の光学記録媒体の記録再生方法。
【0020】
[12] 下記一般式(II)で表されることを特徴とする化合物。
【化13】


〔式(II)中、
及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香環基を表し、
Xは2価の結合基を表し、
Bは下記一般式(V)、(VI)、(VII)、又は(VIII)で表される基を表し、
aは1〜3の整数を表す。
Zは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は−(Ar−(X−B)(ここで、Arは置換基を有していてもよい芳香環基を表し、Xは2価の結合基を表し、Bは下記一般式(V)、(VI)、(VII)、又は(VIII)で表される基を表し、r及びsは各々独立に、0又は1であり、RとArは結合して6員環を形成していてもよい。)を表す。
【化14】


(式(V)〜(VII)の芳香環は更に置換基を有していてもよい。
式(VIII)において、R,R10,R11は各々独立に任意の置換基を表すが、R,R10,R11の少なくとも1つは置換基を有していても良いアルキル基である。)〕
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、記録前の記録材料が吸収することができる波長の光により情報を記録し、記録した情報を記録後の記録材料が吸収することができる波長の光を照射して発光させ、その際の記録部と未記録部の発光強度の違いを検出することにより読み取ることができ、光学記録媒体における記録密度の問題に解決を与え得る光学記録材料、及び、それを用いた光学記録媒体を提供することができる。しかも、高密度の非破壊読み出しが可能である上に、本発明の光記録用材料は、不可逆材料であるため、良好な記録保存安定性を有し、実用的である。また、本発明の光学記録材料が多光子吸収する場合には、3次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で非破壊記録ができ、記録された情報を発光強度の違いで読み出し可能であるため、究極の高密度記録が可能と考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0023】
なお、本発明において芳香環とは、芳香族性を有する環、すなわち(4m+2)π電子系(mは自然数)を有する環を意味する。その骨格構造は、通常、5又は6員環の、単環又は2〜6縮合環からなる芳香環であり、該芳香環には、芳香族炭化水素環、芳香族複素環の他、アントラセン環、カルバゾール環、アズレン環のような縮合環も含まれる。「芳香環基」等の「・・・・環基」とはこのような芳香環等の環から水素原子を1個取った1価の置換基である。
また、本発明において、「置換基を有していてもよい」とは置換基を1以上有していてもよいことを意味する。
【0024】
本発明の光記録用材料は、少なくとも1つの発光性基と1つの光解離性保護基とが結合している構造を有する化合物からなるものである。
この本発明の光記録用材料を構成する少なくとも1つの発光性基と1つの光解離性保護基とが結合している構造を有する化合物は、少なくとも1つの多光子吸収性を有する蛍光発光性基と、1つの光解離性保護基とが結合した構造を有する化合物が好ましく、特に下記一般式(I)で表される構造を有する化合物(以下「化合物(I)と称す場合がある。)であることが好ましい。
【0025】
【化15】


〔式(I)中、Aは発光性基を表し、Xは2価の結合基を表し、Bは光解離性保護基を表し、nはuは1〜6の整数である。〕
【0026】
[化合物(I)]
以下に本発明に好適な化合物(I)について説明する。
<発光性基A>
前記一般式(I)において、発光性基を表すAとしては、1個又は2個以上の光子を同時に吸収することで、吸収した光子とは異なるエネルギーを持つ光子を放出する性質を有するものであればよく、特に限定されないが、具体的には、例えば、クマリン系骨格、フルオレセイン系骨格、又はベンゾオキサジアゾール若しくはベンゾチアジアゾール系骨格を有する基等が挙げられる。
この発光性基Aは好ましくは多光子吸収性を有する蛍光発光性基である。
【0027】
<2価の結合基X>
2価の結合基を表すXとしては、Xを介して2個の共有結合が形成される性質を有するものであればよく、特に限定されないが、具体的には、例えば、−O−、−S−、又は−NR−等が挙げられる。合成の容易さの点で−O−又は−NR−が好ましい。ここでRは、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香環基を表す。具体的には、一般式(II)におけるRとして後述するものが挙げられる。
【0028】
<光解離性保護基B>
光解離性保護基を表すBとしては、光の吸収によって解離する性質を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、J.Chem.Soc., Perkin Trans1、125ページ、2002年;Synthesis,1ページ、1980年;Org.Photochem.,9巻,225ページ、1987年;Trends Biotechnol.,18巻,64ページ、2000年などに記載のものが挙げられる。具体的には、例えば、2−ニトロベンジル基、クマリルメチル基、4−ヒドロキシフェナシル基、又はカルボン酸エステル基等が挙げられる。
【0029】
なお、1つの発光性基Aに対して結合する光解離性保護基Bの数nは、1以上であれば特に制限は無いが、原料入手及び有機合成の容易さから、通常1〜6であり、好ましくは1〜4である。
【0030】
ここで、本発明の光学記録材料を光照射等で励起することで得られる発光は、主に蛍光及び燐光が挙げられるが、その要旨を超えない限り、それらに限定されるものではない。
【0031】
これらの前記一般式(I)で表される化合物としては、発光性基の発光強度が大きく、かつ発光波長が通常用いられるシリコン光検知器で測定感度が高い波長、即ち通常300〜1100nm、特に好ましくは400〜1000nmに発光波長を有することが望ましいことから、具体的には、発光性基を表すAが前記クマリン骨格を有する基である化合物として下記一般式(II)で表される化合物(以下「化合物(II)」と称す場合がある。)が、発光性基を表すAが前記フルオレセイン系骨格を有する基である化合物として下記一般式(III)で表される化合物(以下「化合物(III)」と称す場合がある。)が、発光性基を表すAが前記ベンゾオキサジアゾール若しくはベンゾチアジアゾール系骨格を有する基である化合物として下記一般式(IV)で表される化合物(以下「化合物(IV)」と称す場合がある。)が、それぞれ特に好ましい。
【0032】
【化16】


【0033】
〔式(II)中、
及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香環基を表し、
Xは2価の結合基を表し、
Bは光解離性保護基を表し、
aは1〜3の整数を表す。
Zは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、又は−(Ar−(X−B)(ここで、Arは置換基を有していてもよい芳香環基を表し、Xは2価の結合基を表し、Bは光解離性保護基を表し、r及びsは各々独立に、0又は1であり、RとArは結合して6員環を形成していてもよい。)を表す。〕
【0034】
【化17】


【0035】
〔式(III)中、
及びRは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又は置換基を有していてもよい芳香環基を表し、
Xは2価の結合基を表し、
Bは光解離性保護基を表し、
tは0〜4の整数であり、uは0〜6の整数である。〕
【0036】
【化18】


【0037】
〔式(IV)中、
Yは−O−、又は−S−を表し、
Ar及びArは各々独立に、置換基を有していてもよい芳香環基を表し、
Xは2価の結合基を表し、
Bは光解離性保護基を表し、
v及びwは各々独立に、0〜4の整数である。〕
【0038】
{化合物(II)について}
<R,R,R
ここでRとは、一般式(I)の項で説明した、Xとしての−NR−が有するRを指す。
,R,Rのハロゲン原子としては、具体的には、弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等が挙げられ、また、アルキル基としては、炭素数が1〜8であるのが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられ、また、アルコキシ基としては、炭素数が1〜8であるのが好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso−プロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられ、また、芳香環基としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、キノリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環等由来の基が挙げられる。
【0039】
また、R,R,Rのアルキル基、アルコキシ基、芳香環基は更に置換基を有していてもよい。R,R,Rが更に有していてもよい置換基としては、本発明の機能を満たすものであれば任意の置換基でよいが、具体的には、次のような[置換基群W]に例示した基などが挙げられる。
【0040】
[置換基群W]
ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)
ニトロ基
ヒドロキシ基
シアノ基
カルボキシル基
スルホ基
置換基を有していても良いアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、テトラデカヒドロアントラニル基などの炭素数が通常1〜20、好ましくは1〜10の直鎖又は分岐状のもの、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基などの炭素数が通常3〜20、好ましくは5〜10のシクロアルキル基が挙げられる)
置換基を有していても良いアルケニル基(ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、2−メチル−1−プロペニル基、ヘキセニル基、オクテニル基などの炭素数が通常2〜20、好ましくは2〜10の直鎖又は分岐状のものがあげられる)
置換基を有していても良いアルキニル基(エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2−メチル−1−プロピニル基、ヘキシニル基、オクチニル基などの炭素数が通常2〜20、好ましくは2〜10の直鎖又は分岐状のものが挙げられる)
置換基を有していても良いアリール基(フェニル基、アントラニル基、フェナンスリル基、フェロセニル基などの炭素数が通常6〜18、好ましくは6〜10のアリール基があげられる)
置換基を有していても良い複素環基(5〜6員環の単環又は2〜6縮合環からなるヘテロアリール基、5〜6員環の単環又は2〜6縮合環からなるヘテロシクロアルキル基が挙げられ、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが挙げられる。具体的には、チエニル基などの5員環、ピリジル基、2−ピペリジニル基、2−ピペラジニル基などの6員環、ベンゾチエニル基、カルバゾリル基、キノリニル基、オクタヒドロキノリニル基などの5又は6員環の2〜6縮合環が挙げられる)
置換基を有していても良いアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基などの炭素数が通常1〜9、好ましくは2〜8のものが挙げられる)
置換基を有していても良い(ヘテロ)アリールオキシ基(フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数が通常6〜18、好ましくは6〜10のアリールオキシ基や、2−チエニルオキシ基、2−フリルオキシ基、2−キノリルオキシ基等の炭素数が通常5〜18、好ましくは5〜10で、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子などから選ばれるものを含むヘテロアリールオキシ基などが挙げられる)
置換基を有していても良いアルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基などの炭素数が通常1〜9、好ましくは2〜8のものが挙げられる)
置換基を有していても良いアリールチオ基(フェニルチオ基、ナフチルチオ基等の炭素数が通常6〜18、好ましくは6〜10のアリールチオ基や、2−チエニルチオ基、2−フリルチオ基、2−キノリルチオ基等の炭素数が通常5〜18、好ましくは5〜10で、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子などから選ばれるものを含むヘテロアリールチオ基などが挙げられる)
置換基を有していても良いアルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基などの炭素数が2〜20、好ましくは2〜10のものが挙げられる)
置換基を有していても良い(ヘテロ)アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等の炭素数が通常6〜18、好ましくは6〜10のアリールオキシカルボニル基や、2−チエニルオキシカルボニル基、2−フリルオキシカルボニル基、2−キノリルオキシカルボニル基等の炭素数が通常5〜18、好ましくは5〜10で、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子などから選ばれるものを含むヘテロアリールオキシカルボニル基などが挙げられる)
置換基を有していても良いアミノ基(エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピペリジル基などの炭素数が2〜20、好ましくは3〜10のものが挙げられ、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ナフチルフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の炭素数が6〜30、好ましくは6〜15のアリールアミノ基や、ジ(2−チエニル)アミノ基、ジ(2−フリル)アミノ基などの炭素数が5〜30、好ましくは6〜15で、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子などから選ばれるものを含むヘテロアリールアミノ基、フェニル(2−チエニル)アミノ基等の炭素数が11〜30、好ましくは12〜16のアリールヘテロアリールアミノ基などが挙げられる)
置換基を有していても良いアシル基(アセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などの炭素数が1〜30、好ましくは1〜20のアシル基が挙げられる)
置換基を有していても良いアシルオキシ基(アセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などの炭素数が1〜30、好ましくは1〜20のアシルオキシ基が挙げられる)
置換基を有していても良いアシルアミノ基(アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基など炭素数が1〜30、好ましくは1〜20のアシルアミノ基が挙げられる)
置換基を有していても良いウレイド基(メチルウレイド基、ウレイド基、フェニルウレイド基など炭素数が1〜30、好ましくは1〜20のウレイド基が挙げられる)
置換基を有していても良いスルホンアミド基(メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基など炭素数が1〜30、好ましくは1〜20のスルホンアミド基が挙げられる)
置換基を有していても良いカルバモイル基(カルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基など炭素数が1〜30、好ましくは1〜20のカルバモイル基が挙げられる)
置換基を有していても良いスルファモイル基(スルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基など炭素数が1〜30、好ましくは1〜20のカルバモイル基が挙げられる)
置換基を有していても良いスルファモイルアミノ基(スルファモイルアミノ基、エチルスルファモイルアミノ基、ジメチルスルファモイルアミノ基、トルスルファモイルアミノ基など炭素数が1〜30、好ましくは1〜20のカルバモイルアミノ基が挙げられる)
置換基を有していても良いスルホニル基(メタンスルホニル基、フェニルスルホニル基など炭素数が1〜30、好ましくは1〜20のスルホニル基が挙げられる)
置換基を有していても良いスルフィニル基(エタンスルフィニル基、フェニルスルフィニル基など炭素数が1〜30、好ましくは1〜20のスルフィニル基が挙げられる)
【0041】
特に、Rとしては水素原子が一般的であるが、溶解性や耐湿熱性の観点からは上記アルキル基が好ましい。
【0042】
また、Rとしては、水素原子、アルキル基、又はハロゲン原子が好ましい。
【0043】
また、Rとしては、水素原子、アルキル基、又はハロゲン原子が好ましい。
【0044】
<Z>
Zのハロゲン原子、及びアルキル基としても、R,R,Rにおけると同様のものが挙げられ、また、Zが−(Ar−(X−B)であるときのArの芳香環基としては、具体的には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、キノリン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環等由来の基が挙げられ、その置換基としては、例えば、弗素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の炭素数1〜8のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、iso−プロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基等が挙げられる。
【0045】
光解離性保護基Bについては後述する。
【0046】
aとしては1〜3、中でも1が好ましい。aが2以上の場合、2以上のX−B基はそれぞれ同一であっても異なるものであっても良い。なお、有機合成の容易さおよび原料の入手のしやすさの観点から、aが1である場合、−X−Bの置換位置としては6位または7位が好ましく、aが2以上の場合、少なくとも6位と7位に−X−Bが置換されていることが好ましい。
【0047】
また、RとArが結合して形成していてもよい6員環としては、具体的には、ベンゼン環、α−ピロン環等が挙げられる。
【0048】
Zとしては特に、Arとしてのベンゼン環に、Xとしての−O−、又は−NR−(Rについては前述の通りである。)を介して後述の一般式(V)で表される光解離性保護基Bが結合したものが好ましい。
【0049】
{化合物(III)について}
,Rのハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、芳香環基及びそれらが有していてもよい置換基としては、前記一般式(II)のR,R,Rにおけると同様のものが挙げられ、Xについても一般式(II)におけるものと同様のものが挙げられる。光解離性保護基Bについては後述する。なお、式(III)中、2個のB−X基、また、t,uが2以上の場合、2個以上のR,Rはそれぞれ同一であっても異なるものであっても良い。
【0050】
合成の容易さ、塗布溶媒への溶解性の観点から、R,Rとしては各々独立に、水素原子、アルキル基又はハロゲン原子が好ましく、Xとしては−NR−(Rについては前述の通りである。)が好ましく、t,uは各々独立に0〜2が好ましい。
【0051】
{化合物(IV)について}
Ar,Arの芳香環基及びその置換基としては、前記一般式(II)のArにおけると同様のもの(ただし、2価の基)が挙げられる。Xについても一般式(II)におけるものと同様のものが挙げられる。光解離性保護基Bについては後述する。なお、式(IV)中、2個のB−X基は互いに同一であっても異なるものであっても良い。
【0052】
Ar,Arとしては各々独立に、フェニレン基、ナフチレン基、アントラニレン基、フェナンスリレン基、ピレニレン基、およびチオフェン、ピリジン、フラン、ガルバゾール、キノリン環由来の2価の複素環基が好ましく、Xとしては−NR−(Rについては前述の通りである。)が好ましく、v+wは2〜6であることが好ましい。
【0053】
{化合物(II)、(III)、及び(IV)における光解離性保護基Bについて}
光解離性保護基Bとしては、前記2−ニトロベンジル基として下記一般式(V)(以下「2−ニトロベンジル基(V)」と称す場合がある。)で表される基が、また、前記クマリルメチル基として下記一般式(VI)で表される基(以下「クマリルメチル基(VI)」と称す場合がある。)が、また、前記4−ヒドロキシフェナシル基として下記一般式(VII)で表される基(以下「4−ヒドロキシフェナシル基(VII)」と称す場合がある。)が、また、前記カルボン酸エステル基として下記一般式(VIII)で表される基(以下「カルボン酸エステル基(VIII)」と称す場合がある。)が、それぞれ特に好ましい。
【0054】
【化19】


【0055】
〔式(V)〜(VII)の芳香環は更に置換基を有していてもよい。
式(VIII)において、R,R10,R11は各々独立に任意の置換基を表すが、R,R10,R11の少なくとも1つは置換基を有していても良いアルキル基である。〕
【0056】
式(V)〜(VII)の芳香環が更に有していてもよい置換基及び式(VIII)のR〜R11の具体例としては、前述の[置換基群W]に例示したものが挙げられる。
【0057】
なお、式(V)〜(VII)の芳香環が更に有していてもよい置換基及び式(VIII)のR〜R11の基が、更に置換基を有する場合、その置換基としては、前述の[置換基群W]に例示したものが挙げられる。
【0058】
<2−ニトロベンジル基(V)の好適例>
2−ニトロベンジル基(V)は置換基を有していないか、置換基としてアルキル基又はアルコキシ基を有することが好ましく、置換基を有する場合、置換基の数としては1又は2が好ましく、置換位置としては4位及び5位が好ましい。なお、置換基が2以上の場合、2個以上の置換基は同一であっても異なるものであっても良い。
【0059】
2−ニトロベンジル基(V)としては、具体的には、2−ニトロベンジル基、2−ニトロ−6−フルオロベンジル基、2−ニトロ−4−クロルベンジル基、2−ニトロ−5−クロルベンジル基、2−ニトロ−6−クロルベンジル基、2−ニトロ−4−ブロムベンジル基、2,4−ジニトロベンジル基、2−ニトロ−5−ヒドロキシベンジル基、2−ニトロ−4−カルボキシベンジル基、2−ニトロ−3−メチルベンジル基、2−ニトロ−4−メチルベンジル基、2−ニトロ−6−メチルベンジル基、2−ニトロ−4,5−ジメトキシベンジル基、2−ニトロ−3,4,5−トリメトキシベンジル基、2−ニトロ−4−ドデシルオキシ−5−メトキシベンジル基、2−ニトロ−4−エトキシカルボニルベンジル基、2−ニトロ−4−tert−ブトキシカルボニルベンジル基、2−ニトロ−4−メチルアミノカルボニルベンジル基、2−ニトロ−4−フェニルベンジル基、2−ニトロ−5−ベンジルオキシベンジル基等が挙げられる。
【0060】
<クマリルメチル基(VI)の好適例>
クマリルメチル基(VI)は置換基を有していないか、置換基としてハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、又はアルコキシ基を有することが好ましく、置換基の数としては1又は2が好ましく、置換位置としては6位及び7位が好ましい。なお、置換基が2以上の場合、2個以上の置換基は同一であっても異なるものであっても良い。
【0061】
クマリルメチル基(VI)としては、具体的には、7−ヒドロキシクマリン−4−イルメチル基、7−メトキシクマリン−4−イルメチル基、7−メトキシメトキシクマリン−4−イルメチル基、7−ヒドロキシカルボニルメトキシクマリン−4−イルメチル基、7−n−プロポキシカルボニルメトキシクマリン−4−イルメチル基、7−tert−ブトキシカルボニルメトキシクマリン−4−イルメチル基、7−ジメチルアミノクマリン−4−イルメチル基、7−ジエチルアミノクマリン−4−イルメチル基、7−エトキシカルボニルアミノクマリン−4−イルメチル基、7−tert−ブトキシカルボニルメチルアミノクマリン−4−イルメチル基、6−ブロモ−7−ヒドロキシクマリン−4−イルメチル基、6−ブロモ−7−アセチルオキシクマリン−4−イルメチル基、6−エチル−7−ヒドロキシクマリン−4−イルメチル基、6,7−ジメトキシクマリン−4−イルメチル基等が挙げられる。
【0062】
<4−ヒドロキシフェナシル基(VII)の好適例>
4−ヒドロキシフェナシル基(VII)は置換基を有していないか、置換基としてアルキル基又はアルコキシ基を有することが好ましく、置換基を有する場合、置換基の数としては1又は2が好ましい。なお、置換基が2以上の場合、2個以上の置換基は同一であっても異なるものであっても良い。
【0063】
4−ヒドロキシフェナシル基(VII)としては、具体的には、4−ヒドロキシフェナシル基、2,4−ジヒドロキシフェナシル基、2,3,4−トリヒドロキシフェナシル基、2,4,6−トリヒドロキシフェナシル基、2,4−ジヒドロキシ−3−メチルフェナシル基、2,4−ジヒドロキシ−5−メチルフェナシル基、2,4−ジヒドロキシ−5−エチルフェナシル基、2,4−ジヒドロキシ−5−n−ヘキシルフェナシル基、3,4−ジヒドロキシ−5−ニトロフェナシル基、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェナシル基、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェナシル基、3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェナシル基等が挙げられる。
【0064】
<カルボン酸エステル基(VIII)の好適例>
一般式(VIII)中のR,R10,R11のアルキル基としては、炭素数が1〜8であることが好ましく、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が挙げられる。
【0065】
カルボン酸エステル基(VIII)としては、具体的には、iso−プロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニル基等が挙げられる。
【0066】
{光酸発生剤}
本発明における化合物(I)〜(IV)の光解離性保護基Bがカルボン酸エステル基(VIII)である場合、本発明の光記録用材料には、光照射により酸を発生する光酸発生剤を併用するのが好ましい。
その際の光酸発生剤としては、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルフォニウム塩、ヨードニウム塩等のBF、SbF、PF、ClO等の塩やジアゾメタン誘導体等が挙げられる。好ましい光酸発生剤としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルフォネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、トリフェニルスルフォニウムトリフルオロメタンスルフォネート、トリフェニルスルフォニウムテトラフルオロボレート、ビス(シクロヘキシルスルフォニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルフォニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
{化合物(I),(II),(III),(IV)の分子量}
化合物(I)、好ましくは化合物(II),(III),(IV)の分子量は、合成の容易さ、化合物の安定性、溶媒への溶解性、ポリマーへの相溶性等の観点から通常10000以下であり、好ましくは6000以下である。
なお、化合物(I)、好ましくは化合物(II),(III),(IV)は、記録媒体の保存安定性を向上させる理由から、通常水不溶性であることが好ましい。ここで「水不溶性」とは、25℃、1気圧の条件下における水に対する溶解度が、通常0.1重量%以下、好ましくは0.01重量%以下であることを言う。
また、化合物(I)、好ましくは化合物(II),(III),(IV)は、記録媒体を作成する工程において取り扱いの容易さ、濃度コントロールによる記録再生特性の高性能化が可能などの理由から塗布溶媒に対する溶解性が高いことが好ましい。ここで塗布溶媒に対する溶解性が高いとは、室温条件下における塗布溶媒に対する溶解度が、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上であることを言う。
【0068】
{化合物(II),(III),(IV)の具体例}
化合物(II)、(III)、及び(IV)の具体例を以下に示すが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の具体例に限定されるものではない。
【0069】
【化20】


【0070】
【化21】


【0071】
【化22】


【0072】
【化23】


【0073】
【化24】


【0074】
【化25】


【0075】
なお、以上の具体例における「B」、「B」、「B」、及び「B」は、それぞれ、以下に示す光解離性保護基である。
【0076】
【化26】


【0077】
{化合物(II),(III),(IV)の合成方法}
発光性基Aと光解離性保護基Bとを連結する反応としては、例えば、Greene著、Protective Gruops In Organic Synthesis 3rd Ed. Wiley刊、Larock著、Comprehensive Organic Transformations 2nd Ed. Wiley刊などに記載の公知の方法を用いることができる。
【0078】
(a)2価の結合基Xが−O−である場合
例えば、発光性基Aの水酸化物と光解離性保護基Bのハロゲン化物(特に好ましくは、ブロマイド、クロライド、反応部位1点に対し、1当量〜5当量程度)とを、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中、塩基(具体的には、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、ナトリムメトキシド、水素化ナトリウム、tert-ブトキシカリウム、tert-ブトキシナトリウムなどの無機塩基、リチウムジ(イソプロピル)アミド、リチウムジ(トリメチルシリル)アミド、n-BuLi、sec-BuLi、tert-BuLiなどのリチウム試薬、トリエチルアミンなどの有機塩基)存在下、室温〜溶媒のリフラックス温度程度で撹拌する。反応時間は基質により異なるが、1時間〜10時間程度が好ましく、反応終点は薄層クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィーなどで確認し、終点を判断する。反応終了後、反応溶液を室温まで冷やし、氷水に注ぐ。酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、ジエチルエーテルなどで抽出し、粗生成物を得る。これをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物を得ることができる。反応と精製は、光を遮断して行うことがより好ましい。
【0079】
(b)2価の結合基が−NR-である場合
例えば、発光性基Aのアミン化合物(アミンはモノ置換体、無置換体どちらでもよい)と光解離性保護基Bのハロゲン化物(特に好ましくは、ブロマイド、クロライド、反応部位1点に対し、1当量〜1.5当量程度)とを、アセトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒中、塩基(具体的には、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリムメトキシド、水素化ナトリウム、tert-ブトキシカリウム、tert-ブトキシナトリウムなどの無機塩基、リチウムジ(イソプロピル)アミド、リチウムジ(トリメチルシリル)アミド、n-BuLi、sec-BuLi、tert-BuLiなどのリチウム試薬、トリエチルアミンなどの有機塩基)存在下(相関移動触媒の添加が好ましい場合がある)、室温〜溶媒のリフラックス温度程度で撹拌する。反応時間は基質により異なるが、1時間〜10時間程度が好ましく、反応終点は薄層クロマトグラフィー、高性能液体クロマトグラフィーなどで確認し、終点を判断する。反応終了後、反応溶液を室温まで冷やし、氷水に注ぐ。酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、ジエチルエーテルなどで抽出し、粗生成物を得る。これをカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物を得ることができる。反応と精製は、光を遮断して行うことがより好ましい。
【0080】
また、別法として、発光性基Aのアミン化合物と光解離性保護基B前駆体のアルデヒド化合物を無触媒、あるいは、酸(例えば、酢酸、硫酸、硝酸、塩酸などの無機酸、p−TsOH、PPTSなどの有機酸)存在下、無溶媒又は溶媒を用いる場合にはメタノール、エタノールを加えて加熱し、イミン中間体を作る。イミン中間体を、還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウムなど弱い還元剤)でイミン結合を還元し、目的化合物を得る。この方法は、無置換アミン体のとき、特に有用である。還元反応と精製は、光を遮断して行うことがより好ましい。
【0081】
{化合物(I)の情報記録・再生機構}
一般式(II)、(III)、又は(IV)で具体的に例示される本発明に係る化合物(I)は、光学記録用材料として、光照射前では、発光性基Aが光解離保護基Bで保護されており、発光はないか、発光しても僅かであるが、光照射によって光解離保護基Bが解離し、それにより情報を記録し、一方、光照射によって発光性基Aを有する発光母体が強い光を発し、その光を読み取ることにより、記録された情報の再生を行うことができることから、このような化合物(I)よりなる本発明の前記光学記録用材料は、それを光学記録媒体の記録層に用いるのに好適である。
また、発光性基Aの性質によっては光解離保護基Bが結合しても発光があり、光照射によって情報を記録し、一方、光照射によって発光性基Aを有する発光母体が蛍光の発光はないか、発光しても僅かになり、その発光強度の違いを読み取ることにより、記録された情報の再生を行うことができる場合もある。
【0082】
[光学記録媒体]
本発明の光学記録媒体は、上述のような本発明の光記録用材料を記録層に含有するものである。
本発明において、前記光学記録用材料を光学記録媒体の記録層に用いるには、例えば前記光学記録用材料を含有する塗工液を、透明基板上に塗布して乾燥させることによりなされる。また、前記光学記録用材料を所定量含有する樹脂ペレットなどを予め作成しておき、それらの樹脂ペレットを用いてプレスや射出成型などの方法により記録層を作成し、記録層のみで機械強度を確保することにより基板としての機能を併せて付与してもよい。
なお、その際の光学記録用材料としては、1種に限定されず2種以上が併用して用いられてもよい。
即ち、本発明の光学記録媒体は、本発明の光記録用材料である前記化合物(I)、好ましくは化合物(I),(II),(III)を記録層中に1種のみ含有してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合して用いてもよい。
【0083】
本発明に係る記録層を形成する際の塗工液又は樹脂ペレットとしては、記録層としての安定性や耐光性等の付与のために、前記光学記録用材料と共に、一重項酸素クエンチャーや記録感度向上剤等が含有されていてもよい。
【0084】
その一重項酸素クエンチャーとしては、アセチルアセトナート、ビスフェニルジチオール、サリチルアルデヒドオキシム、ビスジチオ−α−ジケトン等と遷移金属とのキレート化合物等が挙げられ、これらの1種或いは2種以上が併用して用いられる。
【0085】
また、その記録感度向上剤としては、遷移金属等の金属が原子、イオン、クラスター等の形態で化合物に含まれる金属系化合物等が挙げられ、例えば、エチレンジアミン系錯体、アゾメチン系錯体、フェニルヒドロキシアミン系錯体、フェナントロリン系錯体、ジヒドロキシアゾベンゼン系錯体、ジオキシム系錯体、ニトロソアミノフェノール系錯体、ピリジルトリアジン系錯体、アセチルアセトナート系錯体、メタロセン系錯体のような有機金属化合物等が挙げられ、これらの1種或いは2種以上が併用して用いられる。
【0086】
また、塗工液としては、その成膜性を向上させるためにバインダーを含有させるのが好ましい。そのバインダーとしては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ケトン樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリビニルブチラール、ポリカーボネート等既知のものが挙げられ、これらの1種或いは2種以上が併用して用いられる。
【0087】
また、塗工液は、本発明の前記光学記録用材料、前記バインダー、必要に応じて前記一重項酸素クエンチャー、前記記録感度向上剤等を溶媒に溶解させて調製される。
【0088】
その溶媒としては、後述する透明基板を侵さない溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ジアセトンアルコール、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン等のケトンアルコール系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、n−ヘキサン、n−オクタン等の鎖状炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒、乳酸メチル、乳酸エチル、イソ酪酸メチル等のヒドロキシエステル系溶媒等が挙げられ、これらの1種或いは2種以上が混合して用いられる。これらの中で、テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロペンタノール、ヘキサフルオロブタノール等のパーフルオロアルキルアルコール系溶媒が工業面から好ましく、テトラフルオロプロパノールが特に好ましい。
【0089】
なお、塗工液における本発明の光学記録用材料の濃度としては、塗工液中の全固形分に対して、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上であり、通常50重量%以下、好ましくは5重量%以下とされる。
【0090】
また、前記塗工液を塗布し、記録層が形成される透明基板としては、ガラスや種々のプラスチック等、使用するレーザー光に対して透明なものが好ましく用いられる。プラスチックとしては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが、生産性、コスト、耐吸湿性等の点からポリカーボネート樹脂が好ましく、その射出成形板が更に好ましい。また、樹脂ペレットを用いてプレスや射出成型などの方法により記録層を作成し、記録層のみで機械強度を確保することにより基板としての機能を併せて付与する場合にも、上記樹脂材料が好ましく用いられる。
【0091】
前記塗工液を前記透明基板上に塗布する方法としては、ドクターブレード法、キャスト法、スピンコート法、浸漬法等が挙げられるが、これらの中で、量産性、コスト等の面からスピンコート法が好ましい。
【0092】
透明基板上に形成される記録層の膜厚は、特に限定されないが、通常5nm〜50μm、好ましくは10nm〜10μm、更に好ましくは50nm〜5μmである。
【0093】
また、樹脂ペレットを用いてプレスや射出成型などの方法により記録層を作成し、記録層のみで機械強度を確保するなどして基板としての機能を併せて付与する場合には、記録層の厚さは通常100μm〜20mm、好ましくは200μm〜10mmである。
【0094】
なお、本発明における光学記録媒体としては、前記透明基板上に下引き層を設け、その上に前記塗工液を塗布し乾燥させて、記録層を形成してもよく、また、形成した記録層上に、金、銀、アルミニウム、又はそれらの合金等による金属反射層及び保護層を設けて高反射率の媒体としてもよく、その場合の金属としては銀が好ましい。
【0095】
また、その場合、金属反射層は、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によって形成され、更に、記録層と該金属反射層との間の密着力を向上させたり、反射率を高めたりする目的で、両層間に中間層が設けられてもよい。また、保護層の形成には、例えば、紫外線硬化型樹脂等が用いられる。
【0096】
なお、本発明の光記録用材料を含有する記録層中の本発明の光記録用材料(即ち、化合物(I)、好ましくは化合物(I),(II),(III))の濃度は、前記塗工液を塗布、乾燥することにより形成された記録層の場合は、0.01〜100重量%、特に0.1〜50重量%であることが好ましく、樹脂ペレットによる記録層の場合は、0.01〜95重量%、特に1〜25重量%であることが好ましい。この範囲よりも光記録用材料濃度が少ないと十分な記録再生特性が得られず、多いと樹脂ペレットによる記録層の場合、相対的にバインダーとしての樹脂濃度が低く、十分な強度が得られない。
【0097】
[本発明の光学記録媒体の記録再生方法]
本発明の光学記録媒体の記録再生方法は、記録光を照射し本発明の光学記録材料、即ち、化合物(I)、好ましくは化合物(I),(II),(III)を光解離させることによって記録を行い、光解離前後の発光強度変化を読み取ることによって再生を行うことを特徴とする。
【0098】
本発明の光学記録媒体に使用される記録光は、光解離基の解離反応が励起される波長であればよいが、高密度記録のため、波長は短いほど好ましく、特に波長350〜530nmのレーザー光が好ましい。かかるレーザー光の代表例としては、例えば、中心波長405nm、410nm等の青色レーザー光、中心波長515nmの青緑色の高出力半導体レーザー光等が挙げられる。また、500〜900nm程度の波長の長波長レーザー光を使用して、光学記録用材料の二光子吸収を利用して3次元記録することにより、より高密度の記録が可能となる。
【0099】
本発明の光学記録媒体に使用される再生光は、発光性基を励起することができる波長であればよいが、高密度に記録された情報を再生するためには波長は短いほど好ましく、特に波長350〜530nmのレーザー光が好ましい。かかるレーザー光の代表例としては、上記記録光に用いられるレーザー光等が挙げられる。また、500〜900nm程度の波長のレーザー光を使用して、光学記録用材料の多光子吸収特性を利用して3次元再生することにより、より高密度の再生が可能となる。
なお、記録光と再生光に同一のレーザー光を用いることでシステムが簡略化されるので好ましい。
また、本発明の光学記録材料の再生光による劣化(分解)および、記録光と再生光の波長が近い場合には特に未記録部分の劣化(光解離)を避けるためには、本発明の光学記録媒体に使用される再生光の照射強度は記録光に比べて十分に小さいことが好ましく、再生光の照射強度は記録光の照射強度の5分の1以下、好ましくは50分の1以下とすることが好ましい。
【0100】
本発明の光学記録媒体は、光照射による本発明の光学記録材料の光解離によって得られる発光強度変化が大きく、少ない構成要素で十分なS/N比が得られるものであり、また記録された情報は常温で安定に保存される。
ここで発光強度変化とは、蛍光光度分光計などを用いて(例えば日立製作所製「F−4500」)、記録媒体に250〜400nm程度の波長の光を照射し、記録媒体から発せられる発光スペクトルを測定し、光照射前後における発光ピーク付近の発光強度変化率を言い、通常5以上、好ましくは10以上、特に好ましくは20以上である。
また、常温で安定に保存されるとは、80℃85%RHの高温高湿環境下に100時間放置した場合、光照射した記録部分の発光強度の変化が通常50%以内、好ましくは25%以内であることを言う。
【実施例】
【0101】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0102】
実施例1
(具体例化合物II−1の合成)
【化27】


【0103】
3−(p−アミノフェニル)−7−アミノクマリン0.8gと炭酸カリウム1.38gをN−メチルピロリドン30mlに溶解し、攪拌しながら110℃に加熱し、110℃で、o−ニトロベンジルクロライド2.28gを添加し、5時間、加熱攪拌した後、25℃まで冷却し、この反応液を100mlの水中に排出し、酢酸エチルで抽出後、酢酸溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮、シリカによるカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル/トルエン=1/4)で精製して、目的物の具体例化合物II−1を0.29g得た。
【0104】
・可視部吸収(λmax):384nm(トルエン)
・蛍光発光ピーク波長(励起波長:325nm):473nm(トルエン)
・マススペクトルDEI(positiveionmode)法:m/z=522(M),520,387,339,311
【0105】
〈二光子吸収断面積の評価〉
二光子吸収断面積評価は、Kato,S.;Matsumoto,T.;Ishi-I,T.;Thiemann,T.;Shigeiwa,M.;Gorohmaru,H.;Maeda,S.;Yamashita,Y.;Mataka,S.Chem.Commun.2004,2342-2343のSupporting Informationに記載の方法と同様の方法で行った。測定光源には、フェムト秒チタンサファイアレーザ(波長:800nm、パルス幅:120fs、繰り返し:1kHz、出力:2mJ/パルス)を用い、レーザからの出力を適当に減衰させて二光子吸収断面積を測定した。レーザー波長を変える場合には、レーザー光を波長変換器(TOPAS)を用いて所定の波長のレーザー光を得た。測定にはZ−scan法を用いて励起光密度1〜40GW/cmの範囲で変化させた。測定試料には、化合物を濃度5mmol/lでDMSOに溶かした溶液を用い、この溶液を4面透明の1cm角石英セルに入れて測定に供した。
具体例化合物II−1の波長800nmにおける二光子吸収断面積は、2[GM]、波長650nmにおける二光子吸収断面積は、88[GM]であった。
【0106】
実施例2
(光学記録媒体の作製及び蛍光強度変化)
実施例1で合成した具体例化合物II−1を0.5mg秤量し、アクリル系樹脂(三菱レーヨン製「アクリペットVH−5」)の5重量%溶液(溶媒:3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン)1gに溶解させて塗布液を作製した。この塗布液を厚さ0.6mmのポリカーボネート基板上に滴下し、1昼夜放置して風乾させた後、さらに温度100℃で30分間乾燥させて膜厚10μmの記録層を有する光学記録媒体を作製した。
【0107】
得られた光学記録媒体の蛍光発光を分光蛍光光度計(日立製作所製「F−4500」)で測定し、その蛍光発光スペクトルを図1(曲線a)に示す。次いで、該光学記録媒体にスポット式紫外線照射装置(ウシオ電機製「スポットキュアUIS−50101AA」、超高圧水銀ランプ(ウシオ電機製「USH−500BY1」、主波長:365nm、照射強度:300mW/cm))を用いて紫外線を1秒間、及び20秒間照射した後、前記分光蛍光光度計で、励起波長325nm(図1には、励起波長325nm、その倍数波長650nm、及びポリカーボネート基板からの波長350nmをピークとする蛍光発光もスペクトルに混入する。)で蛍光発光を測定し、その1秒間照射後の蛍光発光スペクトルを曲線bとして、20秒間照射後の蛍光発光スペクトルを曲線cとして、それぞれ図1に示す。
曲線aではほとんど蛍光発光は観測されなかったが、曲線b、cで、記録媒体の波長470nm付近をピークとする蛍光発光強度が大幅に増加した。
紫外線照射前後における波長520nmでの蛍光強度変化率(コントラスト)は約70倍であった。
また、具体例化合物II−1のアクリル系樹脂に対する重量%と、20秒間の紫外線照射前後における蛍光ピーク強度及び蛍光強度変化率(コントラスト)の関係を図2に示す。
【0108】
また、アクリル系樹脂をアクリル系樹脂「オプトレッツOZ1100(日立化成製)」に変えた他は同様にして作成した光学記録媒体に紫外線を20秒間照射した後、80℃85%RHの高温高湿下に保存したときのピーク強度変化を図5に示す。
これらの結果から明らかなように、本発明の光記録用材料を用いた光学記録媒体は、発光強度変化(コントラスト)の大きさと、記録された情報の保存安定性に極めて優れている。
【0109】
さらに、前記二光子吸収断面積評価に用いたものと同じレーザーと光学系を使用し、平均出力45mW/cmのレーザービームを直径約1mmに集光し、光学記録媒体(アクリル系樹脂「アクリペットVH−5」使用)の記録層に100秒間照射した。その後、光記録媒体を暗箱中に置き、ハンデUVランプ(アズワン製「SLUV−6」、照射光主波長:365nm、照射面強度:0.05mW/cm)を用いて紫外線を照射して肉眼で観察したところ、レーザービームを照射した部分からビーム径とほぼ同じ大きさの明瞭な蛍光スポットを確認できた。
【0110】
実施例3
(具体例化合物II−21)
【化28】


【0111】
・可視部吸収(λmax):319nm(トルエン)
・蛍光発光ピーク波長(励起波長:325nm):380nm(トルエン)
【0112】
光記録用材料として具体例化合物II−21を用いて、実施例2と同様の方法(アクリル系樹脂「アクリペットVH−5」使用)で光学記録媒体を作製し、同様に紫外線照射前後における蛍光スペクトルを図3に示す。
なお、具体例化合物II−21の波長650nmにおける二光子吸収断面積は、3[GM]であった。
この光学記録媒体では、実施例2と同様に、紫外線照射前はほとんど蛍光発光は観測されなかったが、紫外線照射後には波長380nm付近をピークとする蛍光発光強度が大幅に増加した。紫外線照射前後における波長380nmでの蛍光強度変化率(コントラスト)は約12倍であった。
【0113】
実施例4
(具体例化合物III−1)
【化29】


【0114】
・可視部吸収(λmax):457nm(トルエン)
・蛍光発光ピーク波長(励起波長:325nm):550nm(トルエン)
【0115】
光記録用材料として具体例化合物III−1を用いて、実施例2と同様の方法(アクリル系樹脂「アクリペットVH−5」使用)で、膜厚10μmの記録層を有する光学記録媒体を作製し、同様に紫外線照射前後における蛍光スペクトルを図4に示す。
なお、具体例化合物III−1の波長650nmにおける二光子吸収断面積は、5[GM]であった。
この光学記録媒体では紫外線照射前は蛍光発光が観測されていたが、紫外線照射後には波長550nm付近をピークとする蛍光発光強度が大幅に減少した。紫外線照射前後における波長550nmでの蛍光強度変化率(コントラスト)は約8倍であった。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】実施例2で作製した光学記録媒体に紫外光で記録した前後の蛍光発光スペクトルを示すチャートである。
【図2】実施例2で作製した光学記録媒体のアクリル系樹脂に対する具体例化合物の重量%と、20秒間の紫外線照射前後における蛍光ピーク強度及び蛍光強度変化率(コントラスト)の関係を示すグラフである。
【図3】実施例3で作製した光学記録媒体に紫外光で記録した前後の蛍光発光スペクトルを示すチャートである。
【図4】実施例4で作製した光学記録媒体に紫外光で記録した前後の蛍光発光スペクトルを示すチャートである。
【図5】実施例2において、アクリル系樹脂「オプトレッツOZ1100」を用いて作製した光学記録媒体に紫外線を20秒間照射した後、80℃85%RHの高温高湿下に保存したときのピーク強度変化を示すチャートである。
【出願人】 【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【出願日】 平成19年5月22日(2007.5.22)
【代理人】 【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛


【公開番号】 特開2008−3583(P2008−3583A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2007−135638(P2007−135638)