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【発明の名称】 フレネルレンズシートおよび透過型スクリーン
【発明者】 【氏名】吉田 勉

【氏名】土方 美樹

【氏名】阿部 崇

【要約】 【課題】フレネルレンズシートで発生するゴーストおよびリタデーション(複屈折位相差)を低減させることが容易となる薄いフレネルレンズシートの筐体への取り付けを容易にするとともに、経時変化あるいは高温高湿条件などの過酷な環境下での変形の発生を低減して信頼性を高め、さらに、LCD方式プロジェクションテレビに固有な課題であるシンチレーション発生を抑制する。

【構成】フレネルレンズシートを構成する光拡散基板の表面粗さ,リタデーション,フレネルレンズシートの厚さ(レンチキュラーレンズシートとの比)が、規定された特定範囲にあるフレネルレンズシートを採用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光拡散レンズアレイシートと組み合わせて透過型スクリーンを構成するフレネルレンズシートにおいて、
光拡散性微粒子が分散されてなる光拡散基板の片面に同心円状にレンズ部が形成されており、
投射光の入射側である前記基板の他面には、正反射防止機能および光拡散機能を奏する微細凹凸加工が施されており、
前記微細凹凸加工による前記基板の表面粗さは、JIS B0601に準拠した十点平均粗さ(Rz)が3μm<Rz<10μmであり、かつ凹凸の平均間隔Smが50μm<Sm<200μmである
ことを特徴とするフレネルレンズシート。
【請求項2】
前記光拡散基板の複屈折位相差R(リタデーション)は、
R=Δnd(複屈折率*厚さ=1mm)≦200nmである
ことを特徴とする請求項1記載のフレネルレンズシート。
【請求項3】
光源から投射される投射光を略平行光にするフレネルレンズシートと、該フレネルレンズシートにより略平行光とされた投射光を発散させる光拡散レンズアレイシートとを対向させて組み合わせてなる透過型スクリーンにおいて、
フレネルレンズシートは、請求項1または2に記載のものであり、
光拡散レンズアレイシートは、その厚さ方向に配列された光透過性を有する複数の積層基板と、該複数の積層基板のうち隣接するもの同士を接合する接合層と、前記厚さ方向の最外部に位置する前記積層基板の表面に形成された表面層とを備えており、
フレネルレンズシートの厚さFtと光拡散レンズアレイシートの厚さLtは、
1/4Lt<Ft<3/4の関係を満たす
ことを特徴とする透過型スクリーン。
【請求項4】
光拡散レンズアレイシートを構成する複数の積層基板は、フレネルレンズシート側から順に、
1)フレネルレンズシート側にシリンドリカルレンズ群を有する基材の反レンズ群側の平坦面に、単位シリンドリカル同士の境界部にあたる箇所に遮光ストライプを有するレンチキュラーシート。
2)フレネルレンズシート側に光拡散性微粒子が分散されてなる光拡散層が形成された基材を含む光拡散基板。
であり、
前記光拡散基板2)には、表面層として、ハードコート,帯電防止,反射防止,防眩,光拡散から選択される少なくとも何れかの処理が施されてなる表面処理層を有する
ことを特徴とする請求項3記載の透過型スクリーン。
【請求項5】
レンチキュラーシート1)の遮光ストライプ上には、全面に光拡散性微粒子が分散されてなる光拡散層が形成されてなることを特徴とする請求項4記載の透過型スクリーン。
【請求項6】
少なくとも何れかの接合層は、内部に光拡散性微粒子が分散されてなることを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の透過型スクリーン。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、フレネルレンズシートとそれを用いた透過型スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透過型スクリーンを備えた投射型ディスプレイとして、リアプロジェクションテレビが知られている。近年では、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などの薄型の大型ディスプレイに対抗し、MD方式プロジェクションテレビが台頭してきている。MD方式プロジェクションテレビは、例えばLCDやLCOS(LCD on Silicon;反射型液晶パネルの一種)、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)などの表示デバイスを用いて変調された投射光を透過型スクリーンのリア側から投射するものである。
このMD方式プロジェクションテレビは、40インチ以上の大型化が容易であり、デジタル表示のため画質も良好で、ディスプレイ本体のコストも比較的安価に製造できるため、今後の家庭用の大型ディスプレイとして大変注目されている。
【0003】
このようなMD方式プロジェクションテレビなどの投射型ディスプレイに用いられる透過型スクリーンは、入射光の方向を整えて略平行光として出射するフレネルレンズシートと、適度の視野角を持たせるためにフレネルレンズシートからの出射光を、例えば水平,垂直方向に配置されたシリンドリカルレンズ群などにより拡散させるレンチキュラーレンズシート(シリンドリカルレンズ群が一方向に並列されてなる構成に限らず、シリンドリカルレンズ群が複数方向に並列されてなる構成や、単位レンズが2次元配列されてなる構成など、各種タイプの光拡散レンズアレイシートを含む)とを備えている。
そしてフレネルレンズシートおよびレンチキュラーレンズシート中に、輝度ムラやシンチレーションなどを低減するために透過光を拡散させる拡散層が設けられている。
例えば、特許文献1には、透過型スクリーンに用いるレンチキュラーシートであって、透明支持体の片面に凸シリンドリカルレンズが並列されたレンズ部が放射線硬化性樹脂の硬化物により形成されており、他の面に、フィルム転写またはフィルムラミネートなどにより遮光パターン、拡散層が形成され、さらに拡散層上に帯電防止機能や反射防止機能を有するフィルムが設けられたものが記載されている。
【特許文献1】特開平9−120101号公報(図1参照)
【0004】
しかしながら、上記のような従来の透過型スクリーンおよびそれらを用いた投射型ディスプレイには、以下のような問題があった。
【0005】
MD方式プロジェクションテレビでのプロジェクターは投写レンズの出射瞳が小さく、近似的に点光源とみなすことができる。このような光源を用いて透過型スクリーンに画像を投影すると、レンチキュラーレンズ内部に含有される光拡散材がぎらつく現象(スペックルもしくはシンチレーション)が発生することが知られており、特にコンピューターの出力画像等の静止画像を観察すると非常に見づらい画面となってしまう。
【0006】
このような透過型スクリーン上での画像のギラツキ現象を解決するための方法として、特許文献2(特開昭55-12980号公報)では、スクリーン基体中に分散させる光拡散材の分散密度を基体の厚さ方向に変化させる手法、特許文献3(特開平7-168282号公報)では、光入射側に設けられた入射レンズの焦点距離の3倍以上離れた位置に光拡散層を設置する手法、特許文献4(特開平8-313865号公報)では、例えばレンチキュラーレンズシートとフレネルレンズシートの2つのシートに光拡散材を含有させるなど、光拡散層を二つに分割する手法、等が提案されている。
【0007】
また、光の集光または拡散等の光学的機能を有するレンズシートまたは光学シートを備えた透過型スクリーンにおいて、光の透過方向に分離した少なくとも2つの拡散部を有し、光源側に近い拡散部は第1基材中に第1拡散性微粒子が添加され、観察側に近い拡散部は第2基材中に第2拡散性微粒子が添加され、第1の拡散性微粒子と第1基材との屈折率差が、第2拡散性微粒子と第2基材との屈折率差よりも小さく構成されたものが、特許文献5(特許第3465906号公報)において提案されている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献5に記載される従来の透過型スクリーンでは、拡散層を複数設け、それらを光の透過方向に沿って複数箇所に配置するのでトレードオフの関係にある映像の解像度や明るさの劣化とシンチレーションなどの改善との間のバランスが取りやすくなるものの、拡散層の拡散性微粒子と基材との屈折率差の大小関係の設定が不適切であると、シンチレーションが十分改善されない恐れがあるという問題がある。
すなわち、この技術では、光源側に近い拡散層における拡散性微粒子と基材との屈折率差を、観察側に近い拡散層における拡散性微粒子と基材との屈折率差よりも小さくし、光源側から観察側に向かう方向に屈折率差および拡散度合いが増大する構成としている。
この構成では同一拡散度の場合、観察側の基材と拡散材の屈折率差が大きい場合は屈折率差が小さい場合に較べて観察側に近い拡散層の拡散粒子が少なくなるためシンチレーション低下の効果が少なくなる。これはシンチレーションがぎらつきによる輝度差といわれ、拡散粒子を通らない光線と拡散粒子を通る光線との輝度差が生じるからである。
【0009】
また、シンチレーション現象を解決しても、フレネルレンズシートの厚みが厚い場合には、フレネルレンズシートで発生するゴーストを同時に十分に改良することはできない。
即ち、フレネルレンズシート内に光拡散材を含有させてゴーストの発生原因であるフレネルレンズ面での界面反射光(内面反射光)を拡散させるようにしても、フレネルレンズシートで発生するゴーストの十分な改良にはなり得ないことが判明した。
【0010】
さらに、LCDライトバルブを光源としたプロジェクションディスプレイでは、投影される映像光が、LCDライトバルブの特性として強い偏光性を有するために、従来のCRT光源では発生しなかった偏光に起因する色むらが発生した。
特に、この色むらはディスプレイの薄型化のために生じる投影距離(光源からプロジェクションスクリーンまでの距離)の減少によって顕著になる。この事は、特許文献6(特開2002−90891号公報)に詳しく開示されている。
【0011】
LCDライトバルブの光源では、その構造上、液晶セルのシャッター(ライトバルブ)を通過して出光される光は、強い直線偏光性を有している。また、赤、緑、青の3原色の光からなっている。この光源からの光が複屈折性を有する材料を通過するときに、その通過する光の波長による複屈折量によって、それぞれ偏光性が付与されることになる。
【0012】
【特許文献2】特開昭55-12980号公報
【特許文献3】特開平7-168282号公報
【特許文献4】特開平8-313865号公報
【特許文献5】特許第3465906号公報
【特許文献6】特開2002−90891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、フレネルレンズシートで発生するゴーストおよびリタデーション(複屈折位相差)を低減させることが容易となる薄いフレネルレンズシートの筐体への取り付けを容易にするとともに、経時変化あるいは高温高湿条件などの過酷な環境下での変形の発生を低減して信頼性を高め、さらに、光源としてDMDプロジェクターや液晶プロジェクター等のMD方式プロジェクションテレビにおける出射瞳の小さいプロジェクターを用いてもぎらつき現象の発生しないフレネルレンズシートおよびそれを用いた透過型スクリーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明によるフレネルレンズシートは、
光拡散レンズアレイシートと組み合わせて透過型スクリーンを構成するフレネルレンズシートにおいて、
光拡散性微粒子が分散されてなる光拡散基板の片面に同心円状にレンズ部が形成されており、
投射光の入射側である前記基板の他面には、正反射防止機能および光拡散機能を奏する微細凹凸加工が施されており、
前記微細凹凸加工による前記基板の表面粗さは、JIS B0601に準拠した十点平均粗さ(Rz)が3μm<Rz<10μmであり、かつ凹凸の平均間隔Smが50μm<Sm<200μmである
ことを特徴とする。
【0015】
上記フレネルレンズシートにおいては、前記光拡散基板の複屈折位相差R(リタデーション)は、R=Δnd(複屈折率*厚さ=1mm)≦200nmであることが好ましい。
【0016】
上記フレネルレンズシートを用いた透過型スクリーンとしては、
光源から投射される投射光を略平行光にするフレネルレンズシートと、該フレネルレンズシートにより略平行光とされた投射光を発散させる光拡散レンズアレイシートとを対向させて組み合わせてなる透過型スクリーンにおいて、
光拡散レンズアレイシートは、その厚さ方向に配列された光透過性を有する複数の積層基板と、該複数の積層基板のうち隣接するもの同士を接合する接合層と、前記厚さ方向の最外部に位置する前記積層基板の表面に形成された表面層とを備えており、
フレネルレンズシートの厚さFtと光拡散レンズアレイシートの厚さLtは、
1/4Lt<Ft<3/4の関係を満たす
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のフレネルレンズシートによれば、相対的に薄いフレネルレンズシートであるため、ゴーストやリタデーションの低減には有効であるだけでなく、薄い構成であっても、微細凹凸加工と光拡散性微粒子による相乗効果により、シンチレーションの低減の上でも効果があり、相対的に厚く剛性を有する光拡散レンズアレイシートとの組み合わせにより構成される透過型スクリーンとしては、フレネルレンズシートの筐体への取り付けが容易であるとともに、経時変化あるいは高温高湿条件などの過酷な環境下での変形の発生を低減して信頼性を高めることが出来、MD方式プロジェクションテレビによる映像を好適に視覚することが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
【0019】
<フレネルレンズシート>
フレネルレンズシート30は、図2に示すように、投射光の入射側(同図の左側)から、正反射防止機能および光拡散機能を奏する微細凹凸33,光拡散性微粒子が分散されてなる光拡散基板32,同心円状のフレネルレンズ部31が順次配置されてなる構成であり、光拡散基板32の片面に、放射線硬化型樹脂の硬化物からなるフレネルレンズ部31が重合接着されてなり、光拡散基板32の他面には微細凹凸33が施されてなる。
後述する様に、フレネルレンズシート30は、フレネルレンズ部31がレンチキュラーレンズシート40と対向配置されて透過型スクリーンを構成する。
【0020】
光拡散基板32としては、吸水性の低い(0.2%以下が好ましい)PC(ポリカーボネイト)あるいはPCアロイが主材料として好適であり、厚さは1mm以下が好ましい。
【0021】
本実施形態では、光拡散基板32の厚さは1mm以下とし、微細凹凸33を形成することにより、その拡散度合いは、ヘイズ値で、50%〜70%の値に設定している。
光拡散基板32の内部には、主材料となる樹脂と屈折率の異なる光拡散性微粒子(フィラー)が分散混合され、その分散量,粒径分布,屈折率差,フィラー形状に応じて種々の光拡散機能を奏することになる。
【0022】
本実施形態では、光拡散基板32の主材料として、屈折率1.58のPCアロイ,フィラーとして、平均粒径10μm,屈折率1.525の有機フィラーを採用している。
光拡散基板32の主材料とフィラーとの屈折率差(上記の場合、0.055)は、上記に限るものではないが、相対的にレンチキュラーレンズシート40よりも薄いフレネルレンズシート30で同程度に高い拡散度合いを奏する上では、レンチキュラーレンズシート40側に配置される光拡散層における屈折率差よりも大きいことが好適である。
本発明においては、フレネルレンズシート30の厚さFtは、レンチキュラーレンズシート40の厚さLtに対して、1/4Lt<Ft<3/4の関係を満たすことが好ましい。
【0023】
なお、光拡散には、光拡散層の内部の光拡散性微粒子による起こる内部拡散と、光拡散層の入出射面の凹凸により発生する外部拡散とがある。
入出射面の凹凸は、例えばマット加工などにより意図的に形成する凹凸と、基材から光光拡散性微粒子が露出して形成される凹凸とがある。
シンチレーションを低減するには、内部拡散,外部拡散のいずれも効果があり、本実施形態の拡散層では、薄い光拡散層による内部拡散を補助して、光拡散基板32全体としての光拡散度合いを実現するために、入出射面に適宜の凹凸加工が施される。
【0024】
本発明においては、微細凹凸33による前記基板の表面粗さは、JIS B0601に準拠した十点平均粗さ(Rz)が3μm<Rz<10μmであり、かつ凹凸の平均間隔Smが50μm<Sm<200μmであるたすことが好ましい。
【0025】
<光拡散レンズアレイシート>
上記フレネルレンズシート30と組み合わせて透過型スクリーンを構成する光拡散レンズアレイシートとして、本実施形態では、図3に示す構成のレンチキュラーレンズシート40が採用される。
レンチキュラーレンズシート40は、その厚さ方向に配列された光透過性を有する複数の積層基板と、該複数の積層基板のうち隣接するもの同士を接合する接合層と、前記厚さ方向の最外部に位置する前記積層基板の表面に形成された表面層とを備えている。
レンチキュラーレンズシート40は、同図に示すように、フレネルレンズシート30側から、放射線硬化型樹脂の硬化物からなるレンズ部44,レンズ部支持基材42,ブラックストライプ(BS)層45,粘着層46(接合層),第1光拡散層48,透光性基板60,第2光拡散層49,表面層支持基材61,表面層51が略この順に層状に配置され、組立時に初期変形などを与えて湾曲させることなく、平面を保った状態で取り付けられる平板部材である。光軸方向から見た形状はフレネルレンズシート30の外形と同様な略長方形状とされている。
【0026】
レンチキュラーレンズシート40が上記の様な積層構造を採用する理由は、経時変化あるいは高温高湿条件などの過酷な環境下での変形に対する耐環境特性の向上を目的とする点にある。
図1で示した特許文献1に記載の技術では、透明支持体上に機能を異にするフィルム層などを積層してレンチキュラーシートを構成するため、各層の厚さや、各層の材質の線膨張係数、湿気膨潤係数などの違いのため、温度または湿度が変動すると反りが発生するという問題がある。
【0027】
そのため透過型スクリーンに用いると、高温高湿環境などで、例えば、図4(a)に模式的な断面図で示すように、フレネルレンズシート90とフレネルレンズシート91とが破線のように反って、それぞれスクリーン外側に膨らんでしまう場合がある。
この場合、スクリーンの中央部などでは、フレネルレンズシート90とフレネルレンズシート91とが離間して隙間が生じる。このような、いわゆるスクリーンの浮き現象が発生すると、スクリーンの光路長が変化して解像度不良や画像ボケなどが生じ、画質が劣化するという問題がある。そのため、例えば水平解像度が1080画素のような高精細が求められるフルHDTV(High Definition Television)などには不適となってしまうという問題がある。
例えば、レンチキュラーシートの透明支持体の厚さを増して剛性を高めたり、ガラスなどの高剛性の材質を用いたりして、反りを低減することも考えられるが、近年の透過型スクリーンは大型化,高精細化が求められているため、この方向では対応が難しくなっている。
【0028】
そこで、例えば、図4(b)に示すように、フレネルレンズシート90とレンチキュラーシート91とを、二点鎖線で示すように互いに膨らみ方向が対向する初期的な反りを与えて製作し、これらを一体保持してスクリーンを構成したときに、実線に示すように平面状態に矯正されるような、反り付けを行って、環境変化により反りが発生しても互いに抑制し合うようにすることが考えられる。
この場合には、環境変化による反りを防止できるものの、両方のシートに適切なバランスを持った反りを与えなければならないため、製造の手間がかかり製作コストが増大してしまうという問題がある。
特に、レンチキュラーシートはレンズ部,BS層,拡散層,ハードコート層などにより複雑な多層構造をとるので、平面状態で製作することが好ましい。
【0029】
上記のような問題に鑑みて、レンチキュラーレンズシートを改良した結果、本実施形態に係る構造が好適であることを見出すに至っている。
特に、複数の積層基板が、膨張特性値,曲げ剛性,および配置位置において、厚さ方向に略対称性を有するように配列することが、温度変化,湿度変化により各積層基板が伸縮して応力が発生する際、その対称性によって曲げモーメントが略打ち消し合うような応力分布が形成され、その結果、反り変形を抑制することができるため、一層好適であることが実験により確認されている。
図3の場合、最大板厚に設定され、レンチキュラーレンズシート40全体としての主たる剛性を持つ透光性基板60を中心として、変形に影響の大きいレンズ部支持基材42と表面層支持基材61とが、対照的な配置関係にあることが要求される。
【0030】
ここで、膨張特性値とは、温度や湿度が変化する際に積層基板の伸縮を支配する特性値であり、線膨張係数および湿気膨潤係数の少なくともいずれかを意味する。
温度および湿度がいずれも変動する環境で、反り変形を抑制するためには、線膨張係数および湿気膨潤係数のそれぞれの値が略対称となるように配列とすることが好ましい。
ただし、反り変形を抑制すべき温度、湿度の変化範囲において、実質的に膨張特性値の一方が積層基板の伸縮に支配するような場合、例えば、湿気膨潤係数が線膨張係数に比べて十分小さい場合などでは、膨張特性値の一方のみを略対称に配置するだけでもよい。
また、本明細書における曲げ剛性としては、反り変形をおよそ支配する物性値を採用することができる。すなわち、ポアソン比を含んだ板の曲げ剛性とする必要はなく、光透過部分の上下または左右方向の断面における単位幅のはりの曲げ剛性を考慮すれば十分である。したがって、曲げ剛性を対称に配列することは、縦弾性係数と板厚の3乗との積を対称に配列することを意味している。
【0031】
本発明においては、レンチキュラーレンズシートの積層構造は、上記に限定されるものではなく、耐環境特性の向上による平面性維持のため、レンズ部支持基材42と表面層支持基材61との配置関係を逸脱しない範囲で、以下に例示する種々の変形が可能である。
【0032】
<変形例1>
前記接合層46が、光透過性の粘着剤中に光拡散材を分散して光拡散性を有する拡散粘着層である構成とすることにより、接合層を拡散層と兼用することができるから、簡素な構成とすることができる。
図3の場合、接合層46と第1光拡散層48とが組み合わされた単層の拡散粘着層47となる。
【0033】
<変形例2>
レンズ部44,レンズ部支持基材42,ブラックストライプ(BS)層45,粘着層46,第1光拡散層48(光拡散基板),粘着層46,第2光拡散層49,表面層支持基材61,表面層51からなる構成であり、レンズ基板(44,42,45)/光拡散基板(48)/表面処理基板(49,61,51)からなる3基板を、粘着層を介して積層一体化した構成。(図5参照)
第1光拡散層48と第2光拡散層49の拡散度合いにおいては、「第1<第2」の関係が望ましく、第2光拡散層49の拡散度合いはヘイズ値で70%〜90%の値であることが好適である。
第2光拡散層49は、光拡散性微粒子が分散混合されてなる構成のインキの塗布,あるいは前記インキ層の転写により形成される。
変形例2の場合、最大板厚に設定され、レンチキュラーレンズシート40全体としての主たる剛性を持つ基板は第1光拡散層48(光拡散基板)であり、光拡散性微粒子が分散混合された押出し成形などによる光拡散基板48を中心として、変形に影響の大きいレンズ部支持基材42と表面層支持基材61とが、対照的に配置される。
【0034】
<変形例3>
レンズ部44,レンズ部支持基材42,ブラックストライプ(BS)層45,粘着層46,第1光拡散層48,第2光拡散層49,粘着層46,表面層支持基材61,表面層51からなる構成であり、レンズ基板(44,42,45)/光拡散基板(48,49)/表面処理基板(61,51)からなる3基板を、粘着層を介して積層一体化した構成。(図6参照)
第1光拡散層48と第2光拡散層49は、光拡散性微粒子の分散濃度が異なる樹脂層を共押出し成形して積層一体化された1枚の光拡散基板であり、層内の拡散度合いにおいては、「第1<第2」の関係が望ましく、第2光拡散層49の拡散度合いはヘイズ値で70%〜90%の値であることが好適である。
変形例3の場合、最大板厚に設定され、レンチキュラーレンズシート40全体としての主たる剛性を持つ基板は光拡散基板(48,49)であり、上記基板を中心として、変形に影響の大きいレンズ部支持基材42と表面層支持基材61とが、対照的に配置される。
【0035】
本実施形態および各種変形例においては、表面層51は、透過型スクリーン20の表面性を良好に仕上げるために必要に応じて設けられる種々のコート層である。
例えば、鉛筆硬度3H以上程度の表面の耐擦傷性を付与するためのハードコート(HC)層や、写り込み防止のためのアンチグレア(AG)層、埃付着防止のための帯電防止(AS)層、映像光の出射方向・範囲を制御したり、シンチレーションの低減に寄与するための光拡散層など、各種機能を有するコート層を、単層または複数層により形成したものである。
【0036】
<透過型スクリーンおよび投射型ディスプレイ>
図7は、本実施形態に係る透過型スクリーンおよびそれを搭載してなる投射型ディスプレイについて説明するための投射光学系の光軸を含む断面における模式説明図である。
本実施形態のリアプロジェクションテレビ10(投射型ディスプレイ)は、同図に示すように、筐体11と、前面側(同図右側)を筐体11の外部へ露出させるとともに背面側(同図左側)を筐体11の内部へ露出させた略長方形平板状をなす透過型スクリーン20と、筐体11内に配置され、透過型スクリーン20の背面に対して投射光を投射する光源としてのプロジェクタ12と、同じく筐体11内に配置され、プロジェクタ12から投射される投射光の光路を偏向させる、例えば2枚の反射鏡13,14とを備えている。
【0037】
プロジェクタ12は、適宜のプロジェクタを採用することができるが、例えばLCDやLCOS(LCD on Silicon;反射型液晶パネルの一種)、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)などの表示デバイスを用い、画像信号に応じて変調された投射光を透過型スクリーンのリア側から投射するMD方式のプロジェクタを好適に採用することができる。
ここで、反射鏡13,14による偏向がない場合には、プロジェクタ12の配置位置は、同図における2点鎖線の位置と光学的に等価となっており、以下では、特に断らない限りこのような光学配置に基づいて説明する。
すなわち、後述するフレネルレンズシート30のレンズ光軸に一致する透過型スクリーン20の光軸P1は、透過型スクリーン20の中心P2より下方に平行移動された位置にあり、プロジェクタ12は、光軸P1上において透過型スクリーン20の入射面から背面側(同図左側)に所定距離だけ離して配置されている。
【0038】
透過型スクリーン20は、図3に示すように、入射光の方向を整えて出射光とするフレネルレンズ部31を有するフレネルレンズシート30と、このフレネルレンズシート30からの出射光をスクリーンの左右方向(同図の上下方向)および上下方向(同図の紙面垂直方向)に拡散させるレンズ部44を有する光学部材であるレンチキュラーレンズシート40(光拡散レンズアレイシート)とを備えている。
【0039】
これらフレネルレンズシート30、レンチキュラーレンズシート40は、透過型スクリーン20の背面側(同図左側)から前面側(同図右側)にかけて順次配置されているとともに、互いに略平行に配置されている。
【0040】
以下では、図示左右方向のうち、フレネルレンズシート30側方向を光源側方向、レンチキュラーレンズシート40側方向を観察側方向とそれぞれ称することにする。すなわち、本実施形態では、投射光は光源側から観察側に向けて透過する。
ここで、同図は模式図のため、フレネルレンズ部31とレンズ部44とは互いに離間されているように描かれているが、あまり離間させると画像にボケが生じるので、なるべく近接させ、当接して互いに支持し合うことができる構成とすることが好ましい。
【0041】
次に、本実施形態のリアプロジェクションテレビ10の作用について、透過型スクリーン20の作用を中心に説明する。
まず、透過型スクリーン20が、温度,湿度が変化する環境に置かれた場合の作用について説明する。
図8は、本実施形態に係る透過型スクリーンの温度・湿度変化による反り変形の抑制作用について説明するための模式説明図である。
【0042】
温度,湿度のいずれかが変化すると、図8に矢印で示すように、各積層基板は、それぞれの線膨張係数、湿気膨潤係数に応じて膨張,収縮し、板面に沿う方向に伸縮を起こす。
そして、主基板60と、レンズ基板42および表面基板61との伸縮量の違いにより、レンチキュラーレンズシート40の内部に応力が発生する。
この内部応力は、対称軸Sに対して厚さ方向に対称に発生するため、互いに相殺され、レンチキュラーレンズシート40の平面性が保たれる。一方、このような対称な配置をとらない場合は、内部応力の非相殺部分が内部曲げ応力となって、いわゆるバイメタル効果を起こし、レンチキュラーレンズシート40が反ってしまう。
このため、本実施形態では、温度、湿度のいずれかが変化しても、レンチキュラーレンズシート40の反りが抑制され、平面状態を保つことができる。一方、フレネルレンズシート30は、レンチキュラーレンズシート40側に反り付けするか、高剛性の基板を採用しているので、観察側に配置されるレンチキュラーレンズシート40をフレネルレンズシート30側に反り付けをすることなく、スクリーンの浮き現象を防止することができる。
したがって、レンチキュラーレンズシート40の製造,組立が容易となる。
【0043】
本実施形態では、積層基板間に設けられたコーティング層や拡散粘着層により透過型スクリーン20に複数の拡散層を設けるので、それぞれに拡散度合いを分配することにより、解像度,コントラストや明るさを良好に保ちつつシンチレーションを低減することが可能となっている。
まず、フレネルレンズシート30側に設けられた微細凹凸33は、拡散度合いが大きすぎると、投射光の像のボケが生じて解像度に影響するとともに、拡散によりBS層45で遮光される非集光成分が増えて光効率が悪化し、コントラストや明るさが低下する。
そこで、そのような解像度、コントラストや明るさの低下を防止するため、微細凹凸33による拡散度合いは、レンチキュラーレンズシート40側の第2拡散層49による拡散度合いも小さくしている。
レンチキュラーレンズシート40には第1拡散層48もあるので、これは、フレネルレンズシート30側の拡散層による拡散度合いをレンチキュラーレンズシート40側の拡散層による拡散度合いよりも確実に小さくすることができる設定になっている。
【0044】
一方、同じ拡散度合いでも、一定の拡散角範囲に均等的に拡散される分布(以下、「均等分布タイプ」と称する)より、一定の拡散角範囲の周辺側に拡散される量が少なく、中心値近傍側に集中的に拡散される分布(以下、「集中分布タイプ」と称する)の方が、BS層45で遮光される非集光成分が少なくなるため光量損失が減って光効率を向上することができる。
この原理にしたがって光効率を向上するため、本実施形態では、フレネルレンズシート30側の拡散層による拡散度合いをレンチキュラーレンズシート40側の拡散層による拡散度合いよりも低く設定している。
【0045】
次に、このような構成でのシンチレーション低減作用について説明する。
シンチレーションは、元々の画像にない微小スポット状の高輝度光が観察され画像にちらつき、ぎらつきがあると感じられる現象である。
主な原因は、透過型スクリーン内の光学素子の製作誤差や微小な欠陥などにより正規の光路から外れた光束が視野角の範囲の特定方向に出射されて形成される微小な輝度ムラにあると考えられる。
本実施形態では、上記のように、最も観察側の拡散層である第2拡散層49の拡散度合いを他の拡散層の拡散度合いよりも大きく設定するとともに、第2拡散層49内でのフィラーの分散濃度が高い相対的な密状態としている。
そのため、特定方向に向かう微小スポット状の高輝度光が、第2拡散層49に到達するまでの間に発生しても、第2拡散層49で均等分布タイプの強い拡散が行われるので、観察側の特定方向に高輝度光が出射されにくくなり、微細凹凸33で投射光がある程度拡散されていることと相俟って、シンチレーションが低減される。
【0046】
一方、第2拡散層49は所望の視野角を実現しなければならない。
すなわち、シンチレーションを解消するために拡散度合いを高めすぎると、不要な範囲にまで視野角が拡がり、観察側で光量ゲインが低下して暗い画像となってしまう。
また、微細凹凸33,光拡散基板32と第2拡散層49の間隔を広げるほどシンチレーション低減効果が向上するが、その分、第2拡散層49がシリンドリカルレンズ43の焦点位置から遠ざかり、画像ボケが起こりやすくなる。
そこで、本実施形態では、レンチキュラーレンズシート40において、拡散度合いが、フレネルレンズシート30側の拡散層による拡散度合いよりも低い第1拡散層48を設けて、第2拡散層49の拡散作用の一部を分担できるようにする。
また、第1拡散層48を、BS層45に近接して設けることにより、BS層45に挟まれた光透過部47で集光されたシリンドリカルレンズ43の焦点位置近傍にある投射光を第2拡散層48の入射面で拡散することができる配置としている。
そのため、第2拡散層49の拡散による視野角を必要以上に広げることなく、シンチレーションを抑制することができ、しかも焦点位置から離れた位置でシリンドリカルレンズ43による発散が進んだ状態で第1拡散層49のみにより拡散する場合に比べて画像ボケが少なくなる。
したがって、シンチレーションの抑制と解像度の向上とを両立することができる。
このとき、第1拡散層48の入射面をシリンドリカルレンズ43の焦点位置と一致させれば、画像ボケが最小限に抑えられるのでより好ましい。
【0047】
MD方式プロジェクションテレビのうち、LCD方式の背面投射型ディスプレイでは、光源からの光が偏光板を通過し偏光となることにより、DMD方式では起こらない画面の着色,色ムラが発生するという問題があり、特に背面投射型ディスプレイを薄型化するためにフレネルレンズの焦点距離を短くし、拡大レンズからフレネルレンズ間の投射距離を短くしようとすると、この問題が著しくなるという欠点がある。
【0048】
上記の問題を解消するためには、フレネルレンズシートのリタデーション値を低下することが有効である。
リタデーション値は、基板の復屈折率と厚みとの積であるため、フレネルレンズシート30全体としての主たる厚さ,材料の物性を持つ光拡散基板32の設計を改良することが有効であるが、画面の着色,色ムラの問題以外にも、上述の様にシンチレーション,解像度,ゴースト,耐環境特性についても考慮しなければならない。
【0049】
フレネルレンズシート30の光拡散基板32を薄くすることはリタデーション,ゴーストの低下には有効であるが、極度に薄いフィルム状にすると、レンチキュラーレンズシート40側の光拡散層との離間距離が小さくなり、シンチレーションの抑制に反するだけでなく、フレネルレンズシート30全体の剛性がなくなり、フレネルレンズシートを筐体に固定することが非常に困難となってしまい、取り付け作業が煩雑で、それに伴うコストアップの弊害や、経時変化等により特性が劣化するなど信頼性に問題が生じることになる。
【0050】
フレネルレンズシート30の厚さFtは、レンチキュラーレンズシート40の厚さLtに対して、1/4Lt<Ft<3/4の関係を満たす場合が、シンチレーション,解像度,ゴースト,耐環境特性,リタデーションなどの各種特性のバランスを保つ上で好適な範囲であり、特に厚さの下限である1/4Lt近傍では、フレネルレンズシート30側の光拡散特性を維持するためには、微細凹凸33による光拡散作用が重要な役割を果たすことが、実験により確認された。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】従来技術における透過型スクリーンに用いるレンチキュラーシートの構成を示す説明図。
【図2】本発明によるフレネルレンズシートを示す説明図。
【図3】本発明による透過型スクリーンの構成概略を示す説明図。
【図4】従来技術における透過型スクリーンでの環境変化に伴う反り変形と、その対策を示す説明図。
【図5】本発明による透過型スクリーンでのレンチキュラーシートの構成の変形例を示す説明図。
【図6】本発明による透過型スクリーンでのレンチキュラーシートの構成の変形例を示す説明図。
【図7】本発明における透過型スクリーンおよびそれを搭載してなる投射型ディスプレイについて説明するための投射光学系の光軸を含む断面における模式説明図。
【図8】透過型スクリーンの温度・湿度変化による反り変形の抑制作用について説明するための模式説明図。
【符号の説明】
【0052】
10 リアプロジェクションテレビ10(投射型ディスプレイ)
11 筐体
12 プロジェクタ
13,14 反射鏡
20 透過型スクリーン
30 フレネルレンズシート
31 フレネルレンズ部
32 光拡散基板
33 微細凹凸
40 レンチキュラーレンズシート
42 レンズ部支持基材
44 レンズ部
45 ブラックストライプ(BS)層
46 粘着層
48 第1光拡散層
49 第2光拡散層
51 表面層
61 表面層支持基材
P1 光軸
【出願人】 【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−9119(P2008−9119A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−179242(P2006−179242)