Warning: copy(htaccessbak): failed to open stream: No such file or directory in /home/jtokkyo/public_html/header.php on line 10
液晶表示素子 - 特開2008−3512 | j-tokkyo
トップ :: G 物理学 :: G02 光学

【発明の名称】 液晶表示素子
【発明者】 【氏名】白茂 和章

【要約】 【課題】高デューティ駆動時における表示画像のコントラスト比の低下が抑制された液晶表示素子を提供する。

【構成】液晶表示素子1は、負の誘電異方性を有する液晶を含む液晶層を、所定角度のプレチルト角を持って垂直配向するように表面がそれぞれ配向処理された一対の基板で挟持して構成される液晶セル2と、液晶セル2を挟持し、一方の吸収軸と他方の吸収軸との交差角が90°±5°になるように配置された一対の偏光板3,4とを備える。液晶層は、カイラル剤を含有しており、基板のそれぞれの表面における液晶の配向方向は、互いに同一または20度以下のずれを持った略同一の方向である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負の誘電異方性を有する液晶を含む液晶層を、所定角度のプレチルト角を持って垂直配向するように表面がそれぞれ配向処理された一対の基板で挟持して構成される液晶セルと、
前記液晶セルを挟持し、一方の吸収軸と他方の吸収軸との交差角が90°±5°になるように配置された一対の偏光板とを備えた液晶表示素子において、
前記液晶層は、カイラル剤を含有しており、
前記基板のそれぞれの表面における前記液晶の配向方向は、互いに同一または20度以下のずれを持った略同一の方向であることを特徴とする液晶表示素子。
【請求項2】
前記液晶と前記カイラル剤によって形成されるカイラル構造のピッチpと、前記液晶層の厚みdとの間に、
0<d/p≦0.25
の関係が成立することを特徴とする請求項1に記載の液晶表示素子。
【請求項3】
前記プレチルト角は、前記基板の表面のそれぞれで0度より大きく5度以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示素子。
【請求項4】
前記液晶層のリタデーション値は、250nm以上で1200nm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【請求項5】
前記一対の偏光板のうちの一方の吸収軸と、前記一対の基板のうちの一方の基板の表面における前記液晶の配向方向とのなす角は、40度以上で50度以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【請求項6】
前記基板の上には、それぞれ電極が互いに対向するように設けられており、
前記液晶層は、初期配向状態がベント配向であって、前記電極に電圧を印加することによりツイスト配向に変化することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子に関し、特に、車載用途にも使用可能な新規な垂直配向型液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、透過型の液晶表示素子は、所定の方向に配向した数μm程度の極薄い液晶層と、この液晶層を挟持する透明な一対の薄い基板と、さらに、この基板を挟持して偏光子および検光子を構成する一対の偏光板とを有する。ここで、液晶層が設けられる側の基板面には、所定の形状にパターニングされた電極が形成されている。そして、この電極を介して液晶層に電圧を印加すると、液晶の配向が変化して、液晶表示素子を透過する光の量または波長が変わる。液晶表示素子では、これを利用して所望の表示を行っている。
【0003】
このように、液晶表示素子は、比較的単純な構造からなっている。また、構成部材の選択によって薄型化および軽量化が容易であり、また、低電圧での駆動も可能であることから、近年では、民生用のみならず車載用の表示素子としても盛んに利用されている。
【0004】
ところで、液晶表示素子は、液晶層の初期配向状態並びに電圧印加時の動作状態および配向状態などから、いくつかのモードに分類される。例えば、液晶テレビや、自動車などの車両のインストルメントパネルなどいわゆる車載用に利用される液晶表示素子には、VA(Vertical Alignment)モードが用いられる(例えば、特許文献1および2参照。)。VAモードは、正面から見たときのコントラスト比が高く、また、視野角が広いことから、視認性に優れたモードである。
【0005】
VAモードは、一対の基板間に、初期配向状態が基板と概ね垂直(垂直配向)な負の誘電率異方性(Δε)を有する液晶層を挟持し、さらに、この基板を、通常はクロスニコルを構成するように配置した一対の偏光板で挟持することによって構成される。そして、基板面に形成された電極を介して液晶層に電圧を印加すると、液晶の配向が変化して、液晶層が電界に対して垂直、すなわち、液晶の分子が基板と平行になる。これにより、電圧を印加した部分と印加していない部分とで、液晶の屈折率異方性(Δn)と液晶層厚(d)との積(Δn・d)によって定まる光の透過特性、特に、色味に違いが生じる。この違いを利用することによって、所望の表示を行うことができる。
【0006】
ところで、液晶の初期配向状態は、電圧を印加することによる液晶の配向変化に密接に関連している。上述したように、VAモードでは、この初期配向状態は概ね垂直となる。すなわち完全な垂直配向状態とはならない場合が多い。完全な垂直配向とすると、電圧を印加したときに、液晶分子が変化する方向が定まらない。このため、液晶表示素子内において、液晶が均一な配向変化を行うことが困難となるからである。
【0007】
そこで、液晶の均一な配向変化を実現するために、電圧印加時の配向変化の方向が定まるような処理が基板に対して行われる。VAモードの場合、所望とする配向変化の方向と一致するような若干の水平配向性が、基板表面の垂直配向性に加味される。
【0008】
例えば、まず、液晶層を挟持する一対の基板の表面に、それぞれ垂直配向性の配向層が設けられる。これにより、基板上での液晶層の垂直配向性が確保される。次いで、所望の方向に適当な強度でラビングを行うと、垂直配向性の基板表面に水平配向性を加味することができる。
【0009】
このように、垂直配向性を確保しながら、若干の水平配向性を加味することにより、液晶層の動作方向を定めることができる。このとき、液晶層の初期配向状態は、液晶層の厚み方向から若干傾斜して、すなわち、プレチルト角を持って垂直配向することになる。その結果、電圧を印加すると、液晶は、初期の概ね垂直な状態から、ラビング方向であるプレチルト角の形成方向に傾斜を強め、さらには水平状態に至るまで配向変化する。
【0010】
VAモードにおいては、液晶は、垂直配向から基板と平行になる方向に動作するのみである。すなわち、液晶層に旋光性は不要であり、従来の他の液晶モードであるツイストネマティック(TN)モードや、スーパーツイステッドネマティック(STN)モードのように、コレステリック液晶や、カイラル剤とネマティック液晶とからなるツイストネマティック液晶は使用しない。したがって、従来のVAモード液晶表示素子の構造は、配向処理の施された基板によって、負の誘電異方性を有したネマティック液晶を挟持するものであった。
【0011】
【特許文献1】特開平11−133413号公報
【特許文献2】特開2000−19518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述したように、VAモードでは、電圧が印加されていないと、液晶層はそれを挟持する一対の基板に対して略垂直な配向をしている。このため、液晶セルの法線方向と平行な視角方向については、良好な黒表示が得られ、高いコントラスト比での画像表示が可能となる。
【0013】
しかし、液晶の配向変化、特に、電圧の印加によって引き起こされる液晶の配向変化に起因する液晶表示素子の透過率の変化に関しては、次のような問題があった。
【0014】
すなわち、VAモードの場合、電圧の印加に対する液晶表示素子の透過率変化が緩慢である。特に、電圧印加により液晶が配向変化を開始し、それによって液晶表示素子の透過率が急速に変化し始める、いわゆる立ち上がり特性が緩やかであって、液晶表示素子の電圧―透過率特性における立ち上がりの急峻性が十分ではない。
【0015】
このようなVAモードを単純マトリックス駆動の液晶表示素子に適用すると、その問題はより明確になる。
【0016】
近年の液晶表示素子には、表示情報量の増大とともに、より高精細の表示が求められようになっている。かかる要求に応えるためには、高密度の表示が必要であり、マトリックス駆動の液晶表示素子においては、より高デューティでの駆動が必要となる。マトリックス駆動の液晶表示素子で高デューティ駆動を行おうとすると、ON表示を行うためのON電圧と、OFF表示を行うためのOFF電圧との差は小さくなる。このため、高デューティ駆動になるほど、ON電圧とOFF電圧の差を十分に確保することが困難となる。
【0017】
一方、マトリックス駆動の液晶表示素子にVAモードを適用した場合、電圧―透過率特性における立ち上がりの急峻性が十分ではないために、ON電圧とOFF電圧の差が不十分となって、十分に高いON透過率がとれなかったり、十分に低いOFF透過率が実現できなかったりする。こうしたことは、液晶表示素子におけるコントラスト比の低下を招く。特に、高デューティ駆動では、コントラスト比の低下が顕著となり、コントラスト比は激減してしまう。その結果、VAモードでは、一定以上のデューティ駆動時に表示画像のコントラスト比が低下することによって、表示性能が低下するという問題があった。
【0018】
本発明は、こうした問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、高デューティ駆動時における表示画像のコントラスト比の低下が抑制された液晶表示素子を提供することにある。
【0019】
本発明の他の目的および利点は以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、負の誘電異方性を有する液晶を含む液晶層を、所定角度のプレチルト角を持って垂直配向するように表面がそれぞれ配向処理された一対の基板で挟持して構成される液晶セルと、
前記液晶セルを挟持し、一方の吸収軸と他方の吸収軸との交差角が90°±5°になるように配置された一対の偏光板とを備えた液晶表示素子において、
前記液晶層は、カイラル剤を含有しており、
前記基板のそれぞれの表面における前記液晶の配向方向は、互いに同一または20度以下のずれを持った略同一の方向であることを特徴とするものである。
【0021】
本発明において、前記液晶と前記カイラル剤によって形成されるカイラル構造のピッチpと、前記液晶層の厚みdとの間に、
0<d/p≦0.25
の関係が成立することが好ましい。
【0022】
本発明において、前記プレチルト角は、前記基板の表面のそれぞれで0度より大きく5度以下であることが好ましい。
【0023】
本発明において、前記液晶層のリタデーション値は、250nm以上で1200nm以下であることが好ましい。
【0024】
本発明において、前記一対の偏光板のうちの一方の吸収軸と、前記一対の基板のうちの一方の基板の表面における前記液晶の配向方向とのなす角は、40度以上で50度以下であることが好ましい。
【0025】
本発明において、前記基板の上には、それぞれ電極が互いに対向するように設けられており、
前記液晶層は、初期配向状態がベント配向であって、前記電極に電圧を印加することによりツイスト配向に変化することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高デューティ駆動時における表示画像のコントラスト比の低下が抑制された液晶表示素子を提供するできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1(a)は、本実施の形態における液晶表示素子を構成する特徴的な部分の模式的な分解斜視図である。また、図1(b)〜(d)は、(a)に示す液晶表示素子の光学仕様を説明する図である。
【0028】
図1(a)に示すように、液晶表示素子1は、液晶セル2と、液晶セル2を挟持し、一方の偏光板の吸収軸と他方の偏光板の吸収軸との交差角が90°±5°になるように配置された一対の偏光板3,4とからなる。
【0029】
偏光板3,4の配置を、図1(b)および(d)に示す。尚、これらの図において、矢印は、偏光板の吸収軸の方位を示す。また、付記される数字は、偏光板3,4の吸収軸の設置角度である。尚、この場合、図の水平方向は、液晶表示素子1を正面から見たときの左右方向に対応し、この方向を基準として反時計回りを正方向としている。
【0030】
液晶セル2は、負の誘電異方性を有する液晶とカイラル剤とからなる液晶層を、所定角度のプレチルト角を有して垂直配向するよう表面がそれぞれ配向処理された一対の基板で挟持して構成される。
【0031】
図1(c)は、液晶セル2における液晶層のプレチルト角の形成方向、すなわち、基板のそれぞれの表面における液晶の配向方向を示している。実線の矢印は、視認者側であるF側基板表面での液晶層の垂直配向のプレチルト角の形成方向、すなわち、F側基板の表面における液晶の配向方向を示す。また、点線の矢印は、視認者側とは反対の側であるR側基板表面での液晶層の垂直配向のプレチルト角の形成方向、すなわち、R側基板の表面における液晶の配向方向を示している。
【0032】
図1(c)に示すように、F,R両基板表面の垂直配向におけるプレチルト角の形成方向は、概ね同一な方向であり、いわゆる平行配向の状態となっている。このような液晶の配向状態は、垂直配向処理されたF,R両基板に対して、適当な強度のパララビング処理を施すことによって達成できる。尚、垂直配向処理は、具体的には、F,R両基板に、垂直配向性の配向層を設けることによって行われる。
【0033】
次に、液晶セル2の構造の詳細、特に、液晶層の初期配向構造と電圧印加による配向変化の後の構造について説明する。
【0034】
図2は、本実施の形態における液晶表示素子の液晶セルの内部における液晶の配向状態を、従来のVAモードのそれと比較して説明する模式図である。図2(a)は、本実施の形態の液晶表示素子において、液晶セルの内部における液晶の初期配向状態を示す模式図である。図2(b)は、(a)の液晶に電圧を印加した後の配向状態を示す模式図である。図2(c)は、従来のVAモード液晶表示素子において、液晶セルの内部における液晶の初期配向状態を示す模式図である。図2(d)は、(c)の液晶に電圧を印加した後の配向状態を示す模式図である。
【0035】
図2(a)に示すように、本実施の形態の液晶表示素子においては、液晶層を構成する液晶11は、いわゆるベント配向をしている。すなわち、液晶層を挟持するF基板12とR基板13の表面近傍にある液晶11は、プレチルト角を有して垂直配向をしている。プレチルト角の形成方向は、概ね同一である。また、液晶層の厚み方向(図の上下方向)で中央部分にある液晶11は、F基板12とR基板13に対して略垂直に配向している。尚、F基板12とR基板13の上には、それぞれ電極層と配向膜が設けられているが、図2(a)および(b)では省略している。
【0036】
図2(a)で液晶層に電圧を印加すると、図2(b)に示すように、液晶14は、F基板12とR基板13に対して、垂直に近い状態から平行な方向に倒れて、平行配向に近い状態となる。また、含有するカイラル剤の効果によって、液晶11はツイスト配向する。
【0037】
一方、図2(c)に示すように、比較例である従来のVAモード液晶表示素子では、液晶層を構成する液晶14は、概ね垂直配向をしている。すなわち、液晶層を挟持するF基板15とR基板16の表面近傍にある液晶14は、プレチルト角を有して垂直配向をしている。プレチルト角の形成方向は、概ね反平行(アンチパラレル配向)である。また、液晶層の厚み方向(図の上下方向)で中央部分にある液晶は、F基板15とR基板16の表面近傍における液晶層のプレチルト角の形成方向に若干傾斜しながら配向している。尚、F基板15とR基板16の上には、それぞれ電極層と配向膜が設けられているが、図2(c)および(d)では省略している。
【0038】
図2(c)で液晶層に電圧を印加すると、図2(d)に示すように、液晶14は、F基板15とR基板16に対して垂直に近い状態から、初期配向におけるプレチルト角を大きくする方向であって、F基板15とR基板16に対して平行となる方向に倒れる。これにより、液晶14は、平行配向に近い状態となる。
【0039】
このように、本実施の形態における液晶表示素子と、比較例である従来のVAモードとでは、初期配向の状態、電圧印加による動作、さらには、配向変化後の状態の全てにおいて大きく異なっている。こうした動作および到達する配向状態の違いは、液晶表示素子としての特性に影響を与えて、異なる性質を示すようになる。
【0040】
そこで、本実施の形態における液晶表示素子の特性を評価し、対応する従来のVAモード液晶表示素子と比較した。
【0041】
まず、評価した、本実施の形態における液晶表示素子について、その製造方法の一例を説明する。
【0042】
本実施の形態における液晶表示素子の構造は、図1で既に説明したのと同様である。そこで、図1(a)〜(d)を参照しながら、液晶表示素子の製造方法について説明する。
【0043】
図1(b)で、F偏光板に示された矢印は、F偏光板の吸収軸の方向を示す。また、同様に、図1(d)でR偏光板に示された矢印は、R偏光板の吸収軸の方向を示している。さらに、図1(c)で、液晶セル2に示された実線の矢印は、液晶層を挟持する視認者側のF基板における液晶配向処理の方向であり、具体的には、この基板上に設けられた垂直配向膜に対するラビングの方向を示す。同様に、液晶セル2に示された点線の矢印は、液晶層を挟持する反視認者側のR基板における液晶配向処理の方向であり、具体的には、この基板上に設けられた垂直配向膜に対するラビングの方向を示す。電圧を印加すると、液晶は、垂直配向の状態から、図1(c)の矢印と平行な方向に配向を変化させる。
【0044】
液晶表示素子1の製造は、次のようにして行われる。
【0045】
まず、一対のガラス基板(図示せず)の上に、所望の画像表示ができるようにパターニングされた電極層(図示せず)を設ける。電極層は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)電極とすることができる。
【0046】
次いで、ガラス基板の上に、電極層を被覆するようにして絶縁膜(図示せず)を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル−ゲル法によって形成されたSiO−TiOからなる膜とすることができる。
【0047】
次に、液晶層において、液晶が初期配向状態として垂直に配向するように配向膜(図示せず)を形成する。例えば、JSR株式会社製の配向膜材料(商品名:JALS−2021)をフレキソ印刷法にて成膜した後、180℃で焼成することによって、厚さ600Å程度の配向膜を形成することができる。次いで、配向膜の表面にラビング処理を施して、プレチルト角を形成し、電界印加時の液晶の動作方向を定める。本実施の形態では、液晶層の厚み方向、すなわち、液晶表示素子の法線方向を0度として、プレチルト角を1度とした。尚、プレチルト角は、0度より大きくて5度以下の値とすることが、OFF透過率を低く維持する点から好ましい。
【0048】
基板に対して配向膜の形成工程までを終えた後は、これらの基板の間に液晶層を挟み込む。液晶層は、微量のカイラル剤と、ネマティック液晶との混合物であるカイラルネマティック液晶からなる。カイラルピッチpは、十分に大きいものとし、液晶層の厚み、すなわち、基板間の距離をdとすると、(d/p)の値が略ゼロであるが若干ゼロより大きい値となるようにした。尚、液晶層は左旋性であっても、右旋性であってもよい。
【0049】
基板間の距離(d)は、例えば、樹脂スペーサ(図示せず)を用いることによって、一定に保つことができる。また、液晶層としては、例えば、屈折率異方性(Δn)が0.08918であるものを用いることができる。この場合、d=11.55μmとすると、液晶表示素子1のリタデーション(Δn・d)は1,030nmとなる。
【0050】
次に、偏光板3,4の設置を行う。具体的には、液晶セル2を挟持して、偏光板3,4がクロスニコル配置となるように貼り付ける。液晶表示素子の構造と光学仕様は、図1に示すように、最上層のF偏光板の吸収軸を、図1(b)の矢印が示す方向、すなわち、水平方向から反時計回りに45度となる方向に設定する。
【0051】
液晶セル2は、上記の垂直配向型である。したがって、電圧の印加により液晶が傾斜動作する方向は、図1(c)の矢印で示されるラビング方向(実線の矢印はF側基板のラビング方向、点線矢印はR側基板のラビング方向)で決められる液晶の配向方向、すなわち、水平の方向である。
【0052】
尚、詳細は図示されないが、本実施の形態における液晶表示素子1は、パッシブマトリクス構造である。すなわち、画像表示を構成する各画素部分には、TFT等のスイッチング素子は設けられておらず、電極層を用いたパッシブ駆動によって目的の画像が表示される。
【0053】
次に、本実施の形態の比較例である、従来のVAモード液晶表示素子について述べる。
【0054】
比較例であるVAモードの構造は、液晶層にカイラル剤が含有されず、基板の配向処理がアンチパララビング処理によってなされており、基板表面の液晶の配向方向(プレチルト角の形成方向)が反平行となっていることを除けば、本実施の形態の液晶表示素子1と同様の構造である。
【0055】
すなわち、液晶層としては、屈折率異方性(Δn)が0.08918であるものを用いることができる。液晶層の厚み、すなわち、基板間の距離(d)をd=11.55μmとすれば、比較例である液晶表示素子のリタデーションも(Δn・d)、本実施の形態の液晶表示素子と同様に1030nmとなる。
【0056】
液晶層の厚み方向、すなわち、液晶表示素子の法線方向を0度とすると、プレチルト角は0.5度である。
【0057】
次に、本実施の形態における液晶表示素子の特性を評価し、対応する従来のVAモード液晶表示素子の特性との比較を行った。
【0058】
液晶表示素子の駆動条件は、本実施の形態における液晶表示素子および比較例であるVAモードのいずれにおいても同様とし、1/64デューティで1/9バイアス駆動とした。
【0059】
まず、はじめに、本実施の形態における液晶表示素子と比較例の電圧―透過率特性における立ち上がりの急峻性を比較するため、上記駆動条件にて、電圧と透過率との関係について評価した。図3(a)および(b)に、その結果を示す。
【0060】
図3(a)は、本実施の形態における液晶表示素子と比較例の電圧―透過率曲線である。また、図3(b)は、(a)の電圧―透過率曲線で、点線で囲んだ立ち上がり部分を拡大して示したものである。
【0061】
これらの図、特に、図3(b)から明らかであるように、本実施の形態における液晶表示素子によれば、比較例であるVAモードに比べて、電圧―透過率曲線における立ち上がりの急峻性が格段に向上する。この場合、本実施の形態における液晶表示素子の最大コントラスト比は5765であるのに対し、比較例であるVAモードのそれは234であった。したがって、本実施の形態によれば、比較例であるVAモードに比べて、コントラスト比も格段に向上する。
【0062】
このように、本実施の形態によれば、電圧―透過率特性における立ち上がりの急峻性が改善されるとともに、高コントラスト比も実現された、新規な垂直配向型の液晶表示素子を提供することができる。
【0063】
次に、仕様条件が液晶表示素子の性能に与える影響を評価し、本実施の形態の液晶表示素子における最適な仕様範囲を明らかにすることにした。
【0064】
まず、カイラル剤を含有することによって、液晶とカイラル剤の混合物に形成される螺旋構造のピッチ(p)が、液晶表示素子の性能に与える影響を評価した。より具体的には、ピッチ(p)と、液晶層の厚み、すなわち、基板間の距離(d)との関係(d/p)が、液晶表示素子の最大コントラスト比に与える影響を評価した。
【0065】
液晶とカイラル剤との混合物のカイラルピッチが異なる以外は、上記した本実施の形態における液晶表示素子と同じ基板間距離(d)で同じ構造の液晶表示素子を複数作製し、上記と同様に、1/64デューティ、1/9バイアス駆動の条件で駆動して、最大コントラスト比を評価した。
【0066】
作製した複数の液晶表示素子は、ピッチ(p)と基板間距離(d)の関係、すなわち、(d/p)の値が、0.09、0.3、0.5および0.7となる4種である。これらを上記条件で駆動し、最大コントラスト比の値を(d/p)に対しプロットしたグラフを図4に示す。
【0067】
図4から分かるように、0<d/p≦0.25の範囲で、最大コントラスト比の向上が見られ、0<d/p≦0.15の範囲で、特に優れたコントラスト比が達成される。
【0068】
以上の結果より、本実施の形態の液晶表示素子において、ピッチ(p)と、液晶層の厚み、すなわち、基板間の距離(d)との関係(d/p)は、優れたコントラスト比実現のためには、
0<d/p≦0.25
となることが好ましく、さらに高いコントラスト比を実現するためには、
0<d/p≦0.15
となることがより好ましいことが分かった。
【0069】
次に、液晶層のプレチルト角の大きさが、液晶表示素子の性能に与える影響を評価した。より具体的には、プレチルト角が、液晶表示素子の最大コントラスト比に与える影響を評価した。
【0070】
構成する液晶層のプレチルト角が異なる以外は、上記した本実施の形態における液晶表示素子と同じ基板間距離(d)で同じ構造の液晶表示素子を複数作製し、上記と同様に、1/64デューティ、1/9バイアス駆動の条件で駆動して、最大コントラスト比を評価した。
【0071】
作製した複数の液晶表示素子は、プレチルト角の値が、ゼロより大きいがとても小さく略0度であるもの、並びに、2度、5度、7度および10度の5種である。これらを上記条件で駆動し、最大コントラスト比の値をプレチルト角に対しプロットしたグラフを図5に示す。
【0072】
図5から分かるように、プレチルト角が5度以下の範囲で、最大コントラスト比の顕著な向上が見られ、2度以下の範囲で、特に優れたコントラスト比が達成される。
【0073】
以上の結果より、本実施の形態における液晶表示素子において、プレチルト角は、優れたコントラスト比実現のためには、0度以上で5度以下とすることが好ましく、さらに高いコントラスト比を実現するためには、0度以上で2度以下とすることがより好ましいことが分かった。
【0074】
次に、液晶層を挟持するF,R一対の基板表面で、液晶層がプレチルト角を形成する場合に、F側基板表面上での液晶の配向方向と、R側基板表面上での液晶の配向方向とのずれの大きさが、液晶表示素子の性能に与える影響を評価した。より具体的には、上記ずれの角度が、液晶表示素子の最大コントラスト比に与える影響を評価した。
【0075】
構成する液晶層のプレチルト角の形成状況が異なる以外は、上記した本実施の形態における液晶表示素子と同じ構造の液晶表示素子を複数作製し、上記と同様に、1/64デューティ、1/9バイアス駆動の条件で駆動して、最大コントラスト比を評価した。
【0076】
作製した複数の液晶表示素子は、R側基板表面における液晶の配向方向を基準として、F側基板表面の液晶の配向方向を評価した場合、反時計回りを正とすると、−20度ずれているもの、−10度ずれているもの、+10度ずれているもの、および、+20度すれているものの4種である。これらを上記条件で駆動し、最大コントラスト比の値を各ずれ角度に対しプロットしたグラフを図6に示す。
【0077】
図6から分かるように、ずれ角度が、−20度から+20度の範囲で、最大コントラスト比の顕著な向上が見られ、−5度から+5度の範囲で、特に優れたコントラスト比が達成される。
【0078】
以上の結果より、本実施の形態における液晶表示素子において、R側基板表面の液晶の配向方向を基準として、F側基板表面の液晶の配向方向を評価した場合、それらのずれ角度は、優れたコントラスト比を実現するためには、−20度から+20度の範囲内であることが好ましく、さらに高いコントラスト比を実現するためには、−5度から+5度の範囲内であることがより好ましいことが分かった。
【0079】
次に、液晶セルのリタデーション値(Δn・d)の大きさが、液晶表示素子の性能に与える影響を評価した。より具体的には、リタデーション値(Δn・d)が、液晶表示素子の最大コントラスト比や見栄えに与える影響を評価した。
【0080】
リタデーション値(Δn・d)が異なる以外は、上記した本実施の形態における液晶表示素子と同じ構造の液晶表示素子を複数作製し、上記と同様に、1/64デューティ、1/9バイアス駆動の条件で駆動して、最大コントラスト比を評価した。
【0081】
作製した複数の液晶表示素子は、リタデーション値(Δn・d)が、350nm、700nmおよび1350nmの3種である。尚、リタデーション値は、液晶層の厚み、すなわち、液晶層を挟持する基板間距離と、液晶の屈折率異方性とを適宜制御することによって制御した。これらを上記条件で駆動し、最大コントラスト比の値を各リタデーション値(Δn・d)に対してプロットしたグラフを図7に示す。
【0082】
図7より、リタデーション値が250nm以上の範囲で、最大コントラスト比の向上が見られる。また、リタデーション値を大きくするほど、高いコントラスト比が得られる。しかし、リタデーション値が1200nm以上となる高Δn・d条件では、液晶表示素子に望まない色付きが発生し、また、液晶動作にかかる応答速度の低下が激しくなる。したがって、リタデーション値は、1200nm以下とすることが好ましい。さらに、最大コントラスト比と、液晶の応答速度および液晶表示素子の色味との両立を考慮すると、リタデーション値は、400nm以上で800nm以下であることがより好ましい。
【0083】
以上の結果より、本実施の形態における液晶表示素子において、リタデーション値(Δn・d)は、優れたコントラスト比や、他の表示素子特性を実現するためには、250nm以上で1200nm以下であることが好ましく、さらに優れた表示素子特性を実現するためには、400nm以上で800nm以下であることがより好ましいことが分かった。
【0084】
このように、本発明によれば、高デューティ駆動時における表示画像のコントラスト比の低下が抑制された液晶表示素子を提供するできる。より詳しくは、垂直配向型の液晶表示素子において、電圧―透過率特性における立ち上がりの急峻性が改善され、高デューティ駆動時においても高コントラスト比を実現することが可能となる。
【0085】
尚、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】(a)は、本実施の形態の液晶表示素子の模式的な分解斜視図であり、(b)〜(d)は、(a)に示す液晶表示素子の光学仕様を説明する図である。
【図2】(a)〜(d)は、本実施の形態における液晶の配向状態を、従来のVAモードと比較して説明する模式図である。
【図3】(a)は、本実施の形態における液晶表示素子と比較例の電圧―透過率曲線であり、(b)は、(a)の電圧―透過率曲線で立ち上がり部分を拡大した図である。
【図4】本実施の形態の液晶表示素子において、(d/p)と最大コントラスト比の関係を示す図である。
【図5】本実施の形態の液晶表示素子において、プレチルト角と最大コントラスト比の関係を示す図である。
【図6】本実施の形態の液晶表示素子において、ずれ角と最大コントラスト比の関係を示す図である。
【図7】本実施の形態の液晶表示素子において、リタデーション値と最大コントラスト比の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0087】
1 液晶表示素子
2 液晶セル
3,4 偏光板
11,14 液晶
12,15 F基板
13,16 R基板
【出願人】 【識別番号】000103747
【氏名又は名称】オプトレックス株式会社
【出願日】 平成18年6月26日(2006.6.26)
【代理人】 【識別番号】100120569
【弁理士】
【氏名又は名称】大阿久 敦子


【公開番号】 特開2008−3512(P2008−3512A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−175779(P2006−175779)