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【発明の名称】 眼鏡レンズ、眼鏡レンズ加工装置および眼鏡レンズの加工方法
【発明者】 【氏名】和田 豊治

【要約】 【課題】眼鏡レンズを眼鏡フレームに枠入れする際の装着が的確かつ容易に行なるとともに、レンズの歪みが低減でき、眼鏡フレームに対して安定した状態で枠入れすることができる眼鏡レンズを提供する。

【構成】眼鏡レンズ30のコバ面30cを、眼鏡フレーム3のリム4の内周面4aと略平行に対向するように、レンズ光軸10に対して角度γだけ傾斜した斜面に形成する。コバ面30の傾斜角度γは、リム4のリム溝5のレンズ光軸10に直交する方向(B方向)に対する傾斜角度βと等しい。これにより、ヤゲン33をリム4のリム溝5に正対させてはめ込むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズのコバ面を、眼鏡フレームのリムの内周面と略平行に対向するようにレンズ光軸に対して傾斜させ、このコバ面に前記リムのリム溝に正対するヤゲンを形成したことを特徴とする眼鏡レンズ。
【請求項2】
被加工レンズを縁摺り加工して眼鏡フレームの枠形状に対応する玉型レンズを加工する眼鏡レンズ加工装置において、
前記被加工レンズを保持するレンズ回転軸と、
前記レンズ回転軸を回転させるレンズ回転軸駆動用モータと、
前記レンズ回転軸に対応して設けられた加工具回転軸と、
前記加工具回転軸に取り付けられ外周面にヤゲン用溝が形成されたヤゲン用砥石と、
前記加工具回転軸を前記レンズ回転軸を含む面内において回動可能に保持する回動アームと、
前記回動アームをその軸線周りに回動させて前記加工具回転軸のレンズ光軸に対する回旋角を前記眼鏡フレームのフレーム形状に応じて変化させる回旋用モータとを備えたことを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項3】
被加工レンズのコバ面をヤゲン用溝を有するヤゲン用砥石によって研削しヤゲンを形成する眼鏡レンズの加工方法において、
眼鏡フレームのフレームカーブを測定する工程と、
前記ヤゲン用砥石が取付けられている加工具回転軸を回転駆動するとともに、被加工レンズを保持するレンズ回転軸を含む面内において前記工程で測定されたフレームカーブにヤゲンの方向が接するように前記加工具回転軸を回旋させることにより、前記ヤゲン用砥石によって前記被加工レンズのコバ面をレンズ光軸と傾斜し前記眼鏡フレームのリムの内周面と略平行に対向する面に形成するとともに前記リムのリム溝に正対するヤゲンを形成する工程と、
を備えたことを特徴とする眼鏡レンズの加工方法。
【請求項4】
請求項3記載の眼鏡レンズの加工方法において、
前記被加工レンズのコバ面のレンズ光軸に対する傾斜角γは、次式
γ=arcsin(A/FBC)
ただし、Aはフレームセンターからレンズ端面までの直線距離、FBCはフレームカーブ
によって得られ、
前記コバ面に形成されるヤゲンの方向はコバ面に対して直交する方向と一致していることを特徴とする眼鏡レンズの加工方法。
【請求項5】
被加工レンズのコバ面をヤゲン用溝を有するヤゲン用砥石によって研削しヤゲンを形成する眼鏡レンズの加工方法において、
眼鏡フレームのフレームカーブおよびフレームセンターからリムまでの距離をそれぞれ測定する工程と、
眼鏡フレームのリムの内周面の各位置のレンズ光軸に対するリム溝の傾斜角度をそれぞれ算出する工程と、
前記リム溝の傾斜角度群よりリム溝の傾斜角度の平均値を算出する工程と、
前記ヤゲン用砥石の研削面が前記リム溝の傾斜角の平均値となるように前記ヤゲン用砥石の加工具回転軸の角度を設定する工程と、
前記加工具回転軸を回転駆動することにより、前記ヤゲン用砥石によって前記被加工レンズのコバ面をレンズ光軸に対して一定角度で傾斜し前記眼鏡フレームのリムの内周面と略平行に対向する面に形成するとともに前記リムのリム溝に略正対するヤゲンを形成する工程と、
を備えたことを特徴とする眼鏡レンズの加工方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズ、眼鏡レンズ加工装置および眼鏡レンズの加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リム付き眼鏡フレームに対する眼鏡レンズの装着は、図13に示すように眼鏡レンズ1の外周面(以下、コバ面という)1cに形成した断面形状がV字状(三角形)の突状体(以下、ヤゲンという)2を眼鏡フレーム3のリム4の内周面4aに形成したV字状の溝(以下、リム溝という)5にはめ込むことによって行なっている。眼鏡レンズ1のヤゲン加工は、通常外周面にV字状の溝(以下、ヤゲン用溝という)が形成された円筒状のヤゲン用砥石によって行なっている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている発明は、ヤゲンカーブの周長と眼鏡フレームのフレームカーブとが異なることによる枠入れの的確性を改善するために、眼鏡フレームのフレームカーブ値とヤゲンカーブ値のカーブ差を求め、このカーブ差からレンズ回転軸と砥石軸との軸間距離を補正し、この補正された軸間距離を基にして被加工レンズを研削加工するようにしている。
【0004】
特許文献2に記載されている発明は、ヤゲン用砥石によるヤゲン痩せ(ヤゲンの幅および高さが小さくなる)を解決するために大小2つの砥石を用いている。すなわち、図14に示すように、外径が大きい円筒状のヤゲン用砥石20によって被加工レンズ21のコバ面21cを研削し、ヤゲン用溝22によってヤゲン2を形成する場合、フレームカーブがきつい(曲率半径が小さい)と、ヤゲン用砥石20と形成されたヤゲン2とが互いに干渉するため、ヤゲン用砥石20によるヤゲン2のけられ量dが大きくなりヤゲン痩せが生じる。
【0005】
そこで、特許文献2に記載されている発明では、大径の円筒状に形成した第1のヤゲン用砥石と、小径の円錐状に形成した第2のヤゲン用砥石とを備え、第2のヤゲン用砥石を第1のヤゲン用砥石の半分以下の径とし、これらの砥石をフレームカーブ値によって選択的に使用することにより、砥石と形成されたヤゲンとの干渉を防止してヤゲン痩せを抑えるようにしている。
【0006】
【特許文献1】特開平8−174397号公報
【特許文献2】特開2005−74560号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図13(a)、(b)において説明したように、従来は、眼鏡レンズ1のコバ面1cを眼鏡レンズ1のレンズ光軸10と平行な面に形成し、このコバ面1cに断面形状が左右対称なV字状のヤゲン2を形成していた。同じく、眼鏡フレーム3のリム4の内周面4aにも左右対称なV字状のリム溝5を形成し、このリム溝5にヤゲン2をはめ込むようにしていた。しかしながら、リム4自体はフレームカーブ(リムカーブ)Rに一致するように装用者の前方側に凸状に湾曲しているため、リム4の内周面4aがレンズ光軸10に対して角度γだけ傾斜している。このため、リム溝5もレンズ光軸10と直交する方向に対して角度β(=γ)だけ傾斜してしまい、リム溝5とヤゲン2とが相対的に傾いて正対せず、ヤゲン2の頂部2aがリム溝5の最深部5aより前方にずれてしまう。このリム溝5とヤゲン2の相対的な傾きは、フレームカーブRが小さくなればなるほど大きくなる。このため、ヤゲン2をリム溝5にはめ込むと、ヤゲン2とリム溝5との接触点P1 ,P2 がヤゲン2の頂点2aに対して前後非対称な位置となり、眼鏡レンズ1をリム4に対して的確かつ容易に枠入れすることができないという問題があった。
【0008】
その場合、眼鏡フレーム3がプラスチック製の柔軟な材質で製作されているときには、眼鏡フレーム3が変形することによりヤゲン2のカーブになじみ、的確な装着を行なうことができるが、眼鏡フレーム3が金属製の場合はヤゲンカーブがフレームカーブRになじまないために、眼鏡レンズ1が歪んでしまい的確な装着がなされず、眼鏡レンズ1を眼鏡フレーム3に対して安定した状態で枠入れすることができないという問題があった。
【0009】
本発明は上記した従来の問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、眼鏡レンズを眼鏡フレームに枠入れする際の装着が的確かつ容易に行えるとともにレンズの歪みが低減でき、眼鏡フレームに対して安定した状態で枠入れすることができる眼鏡レンズを提供することにある。
【0010】
また、本発明は上記眼鏡レンズの製作を可能にした眼鏡レンズ加工装置および眼鏡レンズの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明に係る眼鏡レンズは、眼鏡レンズのコバ面を、眼鏡フレームのリムの内周面と略平行に対向するようにレンズ光軸に対して傾斜させ、このコバ面に前記リムのリム溝に正対するヤゲンを形成したものである。
【0012】
また、本発明に係る眼鏡レンズ加工装置は、被加工レンズを縁摺り加工して眼鏡フレームの枠形状に対応する玉型レンズを加工する眼鏡レンズ加工装置において、前記被加工レンズを保持するレンズ回転軸と、前記レンズ回転軸を回転させるレンズ回転軸駆動用モータと、前記レンズ回転軸に対応して設けられた加工具回転軸と、前記加工具回転軸に取り付けられ外周面にヤゲン用溝が形成されたヤゲン用砥石と、前記加工具回転軸を前記レンズ回転軸を含む面内において回動可能に保持する回動アームと、前記回動アームをその軸線周りに回動させて前記加工具回転軸のレンズ光軸に対する回旋角を前記眼鏡フレームのフレーム形状に応じて変化させる回旋用モータとを備えたものである。
【0013】
また、本発明に係る眼鏡レンズの加工装置方法は、被加工レンズのコバ面をヤゲン用溝を有するヤゲン用砥石によって研削しヤゲンを形成する眼鏡レンズの加工方法において、眼鏡フレームのフレームカーブを測定する工程と、前記ヤゲン用砥石が取付けられている加工具回転軸を回転駆動するとともに、被加工レンズを保持するレンズ回転軸を含む面内において前記工程で測定されたフレームカーブにヤゲンの方向が接するように前記加工具回転軸を回旋させることにより、前記ヤゲン用砥石によって前記被加工レンズのコバ面をレンズ光軸と傾斜し前記眼鏡フレームのリムの内周面と略平行に対向する面に形成するとともに前記リムのリム溝に正対するヤゲンを形成する工程とを備えたものである。
【0014】
また、本発明に係る眼鏡レンズの加工方法は、前記被加工レンズのコバ面のレンズ光軸に対する傾斜角γが、次式
γ=arcsin(A/FBC)
ただし、Aはフレームセンターからレンズ端面までの直線距離、FBCはフレームカーブ
によって得られ、前記コバ面に形成されるヤゲンの方向はコバ面に対して直交する方向と一致しているものである。
【0015】
さらに、本発明に係る眼鏡レンズの加工方法は、被加工レンズのコバ面をヤゲン用溝を有するヤゲン用砥石によって研削しヤゲンを形成する眼鏡レンズの加工方法において、
眼鏡フレームのフレームカーブおよびフレームセンターからリムまでの距離をそれぞれ測定する工程と、眼鏡フレームのリムの内周面の各位置のレンズ光軸に対するリム溝の傾斜角度をそれぞれ算出する工程と、前記リム溝の傾斜角度群よりリム溝の傾斜角度の平均値を算出する工程と、前記ヤゲン用砥石の研削面が前記リム溝の傾斜角の平均値となるように前記ヤゲン用砥石の加工具回転軸の角度を設定する工程と、前記加工具回転軸を回転駆動することにより、前記ヤゲン用砥石によって前記被加工レンズのコバ面をレンズ光軸に対して一定角度で傾斜し前記眼鏡フレームのリムの内周面と略平行に対向する面に形成するとともに前記リムのリム溝に略正対するヤゲンを形成する工程とを備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、眼鏡レンズのコバ面がレンズ光軸に対して傾斜しリムの内周面と平行に対向することにより、ヤゲンをリムのリム溝に対して正対させることができるので、的確な装着がなされてレンズの歪みを低減でき、眼鏡レンズを眼鏡フレームに対して安定した状態で枠入れすることができる。
【0017】
また、ヤゲン用砥石の研削面のレンズ光軸に対する傾斜角を、リム溝の傾斜角度の平均値に設定する発明においては、加工具回転軸をフレーム形状に応じて回旋させる必要がなく、加工具回転軸の制御を簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1(a)は本発明に係る眼鏡レンズを備えた眼鏡の要部の平面図、(b)はリム部の拡大図である。同図において、本発明に係る眼鏡レンズ30は、眼鏡フレーム3のリム4の枠形状と略一致する形状(玉型形状)に形成されており、3つの面、すなわち凸状の光学面30aと、凹状の光学面30bと、これらの光学面30a,30bの外周を接続するコバ面30cとを有し、マイナスのプラスチックレンズを形成している。また、この眼鏡レンズ30は、コバ面30cがレンズ光軸10に対して角度γだけ傾斜し、眼鏡フレーム3のリム4の内周面4aと略平行に対向している点で、図13(b)に示した従来の眼鏡レンズ、すなわちコバ面1cがレンズ光軸10と略平行な眼鏡レンズ1と異なっている。このため、本発明における眼鏡レンズ30のコバ面30cは、凹状の光学面30b側に傾斜した斜面に形成されており、凸状の光学面30aが凹状の光学面30bより大きな直径を有している。また、コバ面30cの傾斜角γは、リム4の各部の角度と一致するため、コバ面30cの全周にわって変化している。
【0019】
このように、コバ面30cをレンズ光軸10に対して傾斜した斜面に形成すると、コバ面30cに突設されているヤゲン33を、リム4の内周面4aに形成されているリム溝5に対して正対、言い換えれば左右にずれたり相対的に傾いたりせず正しく対向させることができるため、ヤゲン33をリム溝5にはめ込んだ際、ヤゲン33の頂点とリム溝5の最深部とが互いに対向し、ヤゲン33とリム溝5との接触点P1 ,P2 が略左右対称となる。これにより、眼鏡レンズ30をリム付きの眼鏡フレーム3に装着するとき、的確に装着でき、眼鏡レンズ30に歪みが生じたりするおそれがなく、安定した状態で枠入れすることができる。なお、眼鏡レンズ30のヤゲン33は、従来と同様に断面形状が左右対称なV字状ではあるが、コバ面30cがレンズ光軸10に対して角度γだけ傾斜していることから、ヤゲン33の方向(図1の矢印A方向)も、図13(b)に示した従来のヤゲン2の方向(図1の矢印B方向:レンズ光軸10と直交する方向)と角度βだけ異なっている。この角度βは、コバ面30cの傾斜角γと等しく(γ=β)、レンズ光軸10に対しては角度γより90°大きな角度で傾斜している。なお、眼鏡フレーム3自体は従来品であり、本発明に係る眼鏡レンズ30のために格別に加工されたり変更された部分はない。
【0020】
次に、本発明に係る眼鏡レンズ加工装置および加工方法を図2〜図12に基づいて説明する。図2は同加工装置の内部構造を示す斜視図、図3は同加工装置の加工具回転機構の横断面図、図4は同加工具回転機構の縦断面図、図5はレンズ回転軸の断面図、図6は一次ヤゲン加工している状態を示す図、図7(a)〜(d)は被加工レンズの各加工ポイントにおける加工具回転軸の回旋とを示す図、図8は一次凸面面取り加工している状態を示す図、図9は一次凹面面取り加工している状態を示す図、図10は二次ヤゲン加工している状態を示す図、図11は二次凸面面取り加工している状態を示す図、図12は二次凹面面取り加工している状態を示す図である。
【0021】
図2において、全体を参照符号40で示す眼鏡レンズ加工装置40は、被加工レンズ50を縁摺り加工することにより、図1に示した眼鏡レンズ30を加工形成するための装置であって、床面に設置された箱型の筐体41と、この筐体41内に組み込まれたレンズ回転軸42と、このレンズ回転軸42をX方向に移動させる第1のレンズ回転軸移動機構43と、同じくレンズ回転軸42をY方向に移動させる第2のレンズ回転軸移動機構44と、被加工レンズ50を縁摺り加工する加工具回転機構45と、装置全体を制御する制御部(図示せず)等を備えている。レンズ回転軸42と加工具回転機構45の動作方向は、それぞれ3方向と4方向で、これらの動作方向が前記制御部によって数値制御される。レンズ回転軸42の3方向の動作は、回転、左右方向の移動、および上下方向の移動である。加工具回転機構45の4方向の動作は、加工具回転軸93の回転、前後方向の移動、垂直面内での回転および回旋(揺動)である。なお、ここでは説明の便宜上眼鏡レンズ加工装置40の左右方向をX方向、上下方向をY方向、前後方向をZ方向として示す。
【0022】
前記被加工レンズ50は、注型重合法によって成形されたプラスチックレンズからなり、予め円形のレンズから眼鏡フレーム3(図1)の枠形状と相似形で加工代分だけ大きい玉型形状に形成されており、前記レンズ回転軸42に装着されている。そして、この被加工レンズ50のコバ面50cを後述するヤゲン用砥石105,106によって所定の面形状に形成するとともに、ヤゲン33を形成することにより、図1に示した眼鏡レンズ30が製作される。加工前の被加工レンズ50のコバ面50aは、レンズ光軸10(図1)と平行な面を形成している。なお、本眼鏡レンズ加工装置40においては、必要に応じてレンズ回転軸42に円形の被加工レンズを装着し、加工具回転軸93(図3)に荒削り用の砥石またはエンドミルを装着することにより、円形のレンズから玉型形状の被加工レンズ50を加工形成することが可能である。また、縁摺り加工前の被加工レンズ50としては、予めコバ面50cがレンズ光軸10に対して角度γだけ傾斜するように加工されているものであってもよい。
【0023】
前記レンズ回転軸42は、図5に示すように軸線を一致させてX方向に水平に配置された左右一対の回転軸42A,42Bとで構成されている。一方の回転軸42Aは、一端に被加工レンズ50の凸面50aを保持するレンズホルダー51が着脱可能に設けられ、他端側がY方向スライダー52(図2)の一腕52aによって回転自在に軸支され、レンズ回転軸駆動用モータ54からの回転がプーリ、歯付きベルト等の回転伝達手段55を介して伝達されるように構成されている。
【0024】
他方の回転軸42Bは、一端に前記被加工レンズ50をレンズホルダー51に押し付けるレンズ押え56が設けられ、他端側が前記Y方向スライダー52の他腕52bによって回転自在に軸支され、前記レンズ回転軸駆動用モータ54からの回転が同じくプーリ、歯付きベルト等の回転伝達手段56を介して伝達されるように構成されている。したがって、回転軸42Aと42Bはレンズホルダー51とレンズ押え56とで被加工レンズ50を挾持した状態で同期して回転駆動される。レンズ回転軸駆動用モータ54としては、回転速度が可変でしかも正逆回転可能なパルスモータが用いられる。
【0025】
前記第1のレンズ回転軸移動機構43は、筐体41の底板60上に平行に設置されたX方向に長い前後一対のリニアガイド61と、これらのリニアガイド61に沿ってX方向に移動するX方向テーブル62と、このX方向テーブル62をリニアガイド61に沿って移動させる図示を省略したX方向テーブル用駆動モータ等で構成されている。
【0026】
前記第2のレンズ回転軸移動機構44は、前記X方向テーブル62に立設されたガイドプレート63と、このガイドプレート63の前面に平行に設置されたY方向に延在する左右一対のリニアガイド64と、これらのリニアガイド64に上下動自在に設けられた前記Y方向スライダー52と、このY方向スライダー52をリニアガイド64に沿って移動させるY方向スライダー用駆動モータ65等で構成されている。前記Y方向スライダー52は、平面視コ字状に形成されていることにより、前方に延在する左右一対の腕部52a,52bを一体に有し、これらによって前記レンズ回転軸42の各端部を軸支している。このため、レンズ回転軸42は、被加工レンズ50の加工時にX方向テーブル62とY方向スライダー52の移動によってX方向とY方向の2方向に移動調整され、レンズ回転軸駆動用モータ54によって駆動される。なお、図2において、右側の腕部52bには、被加工レンズ50の着脱を可能にするために前記回転軸42BをX方向に移動させる図示を省略したモーターが組み込まれている。
【0027】
前記底板60の上方で前記ガイドプレート63の後方には、水平な載置台70が左右前後それぞれ一対からなる合計4本の支柱71によって設置されており、その上に前記加工具回転機構45が搭載されている。加工具回転機構45は、載置台70上に平行に設置されたZ方向に延在する左右一対のガイドレール72に移動自在に設けられたZ方向テーブル73と、このZ方向テーブル73をガイドレール72に沿ってZ方向に駆動するZ方向テーブル駆動用モータ74とを備えている。Z方向テーブル73の下面中央には、図4に示すようにナット取付部材75が垂設されている。このナット取付部材75の下端には、前記モータ74の回転を前記ナット取付部材75を介してZ方向テーブル73に伝達する
筒状のナット部材77が設けられている。前記Z方向テーブル駆動用モータ74の出力軸79には、ねじ体78がカプリング80を介して連結されており、このねじ体78に前記ナット部材77が螺合している。ねじ体78の両端部は、軸受81によってそれぞれ回転自在に軸支されている。
【0028】
前記Z方向テーブル73の上には、回動アーム83を回転自在に保持するホルダー84が設置されている。ホルダー84は、両端開放の角筒体からなり、軸線をZ方向と一致させて水平に設置されており、内部に前記回動アーム83を軸支する複数個の軸受85が組み込まれている。また、ホルダー84の後端面にはモータ取付部材86が固定されており、その上端部前面側に前記回動アーム83を、レンズ用砥石105,106の切替時に半回転させ、ヤゲン33の加工時に回旋(揺動)させる加工具群切替兼回旋用モータ87が固定されている。この加工具群切替兼回旋用モータ87の回転は、その出力軸88に設けた駆動ギア89、モータ取付部材86に設けた中間ギア90および回動アーム83の後端に取付けた従動ギア91を介して同回動アーム83に伝達されるように構成されている。
【0029】
前記回動アーム83は、筒体からなり前記ホルダー84を回動自在に貫通している。回動アーム83の前端側には、加工具回転軸93(図3)を回転自在に保持するホルダー94が取付部材95を介して取付けられている。取付部材95は、上下に2分割形成されボルト96によって一体的に結合された2つの分割片95a,95b(図4)で構成されており、左右両側面に開口する貫通孔97(図3)と、背面側に開口する嵌合穴98(図4)とを有し、この嵌合穴98に前記回動アーム83の前端側小径部が嵌合され、止めねじ99(図3)によって固定されている。
【0030】
前記ホルダー94は、両端開放の筒体からなり前記取付部材95の貫通孔97を貫通して取付けられることにより軸線が前記回動アーム83の軸線と直交しており、長手方向中央部が前記取付部材95によって挟持されている。この挾持力は、前記ボルト96の締付け力によって付与されている。ホルダー94の背面中央には、前記回動アーム83の貫通穴100に連通する開口101が形成されている。
【0031】
前記加工具回転軸93は、前記ホルダー94内に複数個の軸受104によって回転自在に軸支されて配設されており、両端部がホルダー94からそれぞれ外部に突出し、その突出端部が第1、第2の加工具取付部102,103をそれぞれ構成している。第1の加工具取付部102には仕上げ用のヤゲン用砥石(以下、第1のヤゲン用砥石という)105が取付けられ、第2の加工具取付部103には研磨用のヤゲン用砥石(以下、第2のヤゲン用砥石という)106が取付けられている。
【0032】
前記第1のヤゲン用砥石105は、略円錐形に形成されており、その外周面に大径側から小径側に向かって設けられた一次ヤゲン加工部105A、一次平摺り加工部105B、一次凸面面取り加工部105Cおよび一次凹面面取り加工部105Dを一体に備え、大径部側が回動アーム83側となるように加工具回転軸93に取付けられている。
【0033】
一次ヤゲン加工部105Aは、第1のヤゲン用砥石105の大径部側周面に設けられており、左右対称なV字状の環状溝からなるヤゲン用溝110が形成されている。一次平摺り加工部105Bは、一次ヤゲン加工部105Aに隣接して設けられ、これと同一斜面を形成している。一次凸面面取り加工部105Cは、一次平摺り加工部105Bに隣接して設けられ、これより大きな傾斜角度を有している。一次凹面面取り加工部105Dは、第1のヤゲン用砥石105の先端側周面に前記一次凸面面取り加工部105Cと対向するように設けられている。このため、一次凸面面取り加工部105Cとは傾斜方向が逆の斜面に形成されている。一次凸面面取り加工部105Cと一次凹面面取り加工部105Dとの間には、テーパ状の環状溝111が形成されている。この環状溝111の溝幅は、加工対象となる各種被加工レンズ50の最大コバ厚よりも大きく設定されている。一次ヤゲン加工部105Aと一次平摺り加工部105Bの砥石105の軸線に対する傾斜角度τ(図3)は10°程度である。一次凹面面取り加工部105Dは、一次凸面面取り加工部105Cより大きな傾斜角度を有している。なお、一次平摺り加工部105Bおよび後述する二次平摺り加工部106Bは、縁無し眼鏡フレームおよびナイロールフレーム用の眼鏡レンズの縁摺り加工時に用いられるものであり、リム付き眼鏡フレーム用の眼鏡レンズには用いられないため、その説明を省略する。
【0034】
前記第2のヤゲン用砥石106は、前記第1のヤゲン用砥石105によって加工された各部を二次(鏡面)仕上げするために用いられる砥石であって、前記第1のヤゲン用砥石105と略同一形状の円錐形に形成され、外周面に大径部側から小径部側に向かって設けられた二次ヤゲン加工部106A、二次平摺り加工部106B、二次凸面面取り加工部106Cおよび二次凹面面取り加工部106Dを一体に備えている。また、この第2のヤゲン用砥石106は、前記第1のヤゲン用砥石105と向きが反対になるように加工具回転軸93の第2の加工具取付部103に取付けられている。二次ヤゲン加工部106Aには、左右対称なV字状の環状溝からなるヤゲン用溝113が形成されている。二次ヤゲン加工部106Aと二次平摺り加工部106Bの砥石106の軸線に対する傾斜角度(τ)は等しい。二次凸面面取り加工部106Cと二次凹面面取り加工部106Dは環状溝114を挟んで互いに対向しており、傾斜方向が互いに逆の斜面に形成されている。
【0035】
また、前記第1のヤゲン用砥石105と第2のヤゲン用砥石106は、加工具回転軸93の回動中心Oに対して対称的に取付けられている。加工具回転軸93の回動中心Oは、回動アーム83によって回動されるときの中心であり、回動アーム83の軸線上に位置している。ここで、第1のヤゲン用砥石105と第2のヤゲン用砥石106が対称的であるということは、加工具回転軸93の回動中心Oから第1、第2のヤゲン用砥石105,106の先端までの距離が略等しいということを意味する。このように対称的に設けておくと、2つの砥石105,106を切り替えて使用するとき、回動アーム83をその軸線回りに180°回動させれば、第1のヤゲン用砥石105と第2のヤゲン用砥石106の位置が入れ替わるため、回動アーム83をその都度X方向に移動調整する必要がなく、加工具回転機構45の構成および制御を容易にすることができる。
【0036】
図3および図4において、前記Z方向テーブル73の後端面には、前記加工具回転軸93を駆動する回転軸駆動用モータ120が取付板121を介して取付けられている。この駆動用モータ120の出力軸122には、回転伝達軸123の後端がカプリング124を介して接続されている。回転伝達軸123は、前記回動アーム83を貫通して先端部が前記開口101からホルダー94内に挿入されている。また、回転伝達軸123は、回動アーム83に組み込まれた複数個の軸受125によって回転自在に軸支されており、先端には駆動側傘歯車126が固定されている。一方、前記加工具回転軸93には、前記駆動側傘歯車126に噛合する従動側傘歯車127が固定されている。したがって、駆動用モータ120を駆動すると、その出力軸122の回転は、カプリング124−回転伝達軸123−駆動側傘歯車126−従動側傘歯車127を介して加工具回転軸93に伝達される。駆動用モータ120としては、スピードコントローラ付きの正逆回転可能なDCモータまたはサーボモータが用いられる。その回転速度は、第1のヤゲン用砥石105による一次ヤゲン加工および面取り加工(凸面、凹面)、および第2のヤゲン用砥石106による二次ヤゲン加工および面取り加工(凸面、凹面)時において、8,000〜10,000rpm(ウエット加工)程度である。
【0037】
次に、上記構造からなる眼鏡レンズ加工装置40による被加工レンズ50の縁摺り加工について説明する。
【0038】
先ず、制御部に眼鏡フレーム3の枠形状データ(フレームカーブ、リム溝等)、加工情報等を入力する。
枠形状データの入力に際しては、眼鏡フレーム3のフレーム形状(フレームカーブ)を公知のフレーム形状測定器(例えば、特開平6−66553号公報)によって測定する。フレーム形状測定器は、眼鏡フレーム3の左右のリム4のリム溝5に測定子を接触させ、その測定子を所定点を中心に回転させてリム溝5の形状の極座標値を三次元的に測定してデータを得る。次に、それらのデータのスムージングを行い、リム溝5の三次元形状、フレームカーブFBC、リム溝5の周長、フレームPD(瞳孔間距離)、左右のリム4のなす角度である傾斜角(TILT)を算出する。そして、フレーム形状測定器は、これらの算出されたデータを眼鏡レンズ加工装置40の制御部に枠形状データとして入力する。制御部への入力は、例えば、通信ネットワーク回線によるデータ送信によるものや、タッチ式パネル等の直接入力手段によるもの等でも容易に行うことができる。
【0039】
制御部では、得られたフレームベースカーブとリム溝5の三次元座標値からヤゲン33の設計を行なう。ヤゲン設定方法は、一部を公知の技術によって行なう(例えば、特開平06−74756号公報、特開平06−74757号公報等)。以下、ヤゲン33の傾斜角設計方法の概要について説明する。
【0040】
フレーム枠上の各位置におけるリム溝5の勾配を算出する。設計の簡略化のためフレームセンターを頂点とする仮想の球体上にフレームが配置されていると仮定する。したがって、眼鏡フレーム3のリム溝5の方向は、仮想球面に接する勾配となるため等しくなる。よって、フレームセンターを通る仮想球面の法線方向、またはレンズ光軸10に対するヤゲン33の傾斜角度βは、次式(1)により算出される。
sinβ=A/FBC ・・・(1)
ただし、FBCはフレームカーブ、Aはフレームセンターからリム溝までの水平方向の距離である。
【0041】
したがって、リム4のリム溝5がなす角度βは、上記したように被加工レンズ50のコバ面50cのレンズ光軸10に対する傾斜角度γと等しく、次式(2)によって与えられる。
β=arcsin(A/FBC) ・・・(2)
【0042】
次に、レンズ回転軸42に被加工レンズ50を装着する。装着に際しては、予めレンズホルダー51によって被加工レンズ50の凸面50aを保持し、このレンズホルダー51を一方の回転軸42Aに取付ける。そして、他方の回転軸42Bをレンズ側に移動させてレンズ押え56を被加工レンズ50の凹面50bに所定圧で押し付け、レンズホルダー51とレンズ押え56とで被加工レンズ50の中央を挟持する。このようにして加工の準備が完了すると、スタートボタンを操作して第1のヤゲン用砥石105により被加工レンズ50の縁摺り加工を開始する。
【0043】
図6は第1のヤゲン用砥石105によって被加工レンズ50のコバ面50cを一次ヤゲン加工している状態を示す図である。
加工に際しては、第1のヤゲン用砥石105を被加工レンズ50の上方に位置させる。また、加工具回転軸93をレンズ回転軸42に対して所要角度傾斜させ(傾斜角度τ+β)させ、加工形成されるヤゲン33の方向が測定されたフレームカーブに接するように第1のヤゲン用砥石105のヤゲン用研削面である一次ヤゲン加工部105Aをレンズ光軸10に対して前記角度γ(=β)だけ傾斜させる。
【0044】
この状態でモータ120を駆動して第1のヤゲン用砥石105を所定の回転速度で回転させる。一方、レンズ回転軸42を被加工レンズ50が一次ヤゲン加工部105Aに対応するようにX方向に移動調整して被加工レンズ50を回転させるとともに、入力した枠形状データに応じてX,Y方向に移動させてコバ面50cを一次ヤゲン加工部105Aに押しつける。これによりコバ面50cが一次ヤゲン加工部105Aによって仕上げ加工されるとともに、一次ヤゲン加工部105Aのヤゲン用溝110がコバ面50cに転写され、V字状の突起からなるヤゲン33が形成される。コバ面50cは、一次ヤゲン加工部105Aによって仕上げ加工されると、被加工レンズ50のレンズ光軸10に対して前記傾斜角γだけ傾斜した斜面に形成される。コバ面50cに形成されるヤゲン33は、左右対称なV字状(三角形)で、その方向はコバ面50cに直交する方向A(図1参照)と一致している。このため、ヤゲン33は、レンズ光軸10に対して90°+βだけ傾斜しており、リム4のリム溝5と正対する。
【0045】
ここで、フレーム枠の形状は、一般にフレームセンターから等距離ではないので、リム溝5のなす角度βはリム溝5の位置によって異なる値となる。したがって、各加工ポイントに対して傾斜角β1,β2,β3,・・・βnを算出し、加工座標(Xn,Yn,Zn,βn)(ただし、nは1〜360の整数)にしたがって順次加工する。つまり、前記傾斜角βは、図7(a)〜(d)に示すようにフレームセンターQから被加工レンズ5の各端縁A,B,Cまでの直線距離a,b,c(a>c>b)によって変化し、直線距離が大きい箇所ほど大きくなる。このため、ヤゲン加工に際しては、被加工レンズ50が1回転する間、モータ87によって上記式(2)を満たすように回動アーム83、言い換えれば加工具回転軸93を回旋(揺動)させる。加工具回転軸93の各加工点A,B,Cにおける回旋角α1 ,α2 ,α3 は、α1 >α3 >α2 である。
【0046】
第1のヤゲン用砥石105によって被加工レンズ50を一次ヤゲン加工すると、コバ面50cはレンズ光軸10に対して傾斜角γ(=β)だけ傾斜した斜面となり、この傾斜したコバ面50cにヤゲン33が形成される。このヤゲン33の方向は、コバ面50cに垂直な方向(図1の矢印A方向)であるため、この被加工レンズ50をリム4(図1)に枠入れすると、コバ面50cがリム4の内周面4aに対して略平行に対向する。また、このコバ面50cに形成されたヤゲン33は、左右対称なV字状の突状体であり、リム4のリム溝5に対して正対してはめ込まれる。
【0047】
第1のヤゲン用砥石105は外径が小さく、しかも円錐形状に形成されているので、レンズカーブが大きい、例えば8カーブ程度のレンズであっても、第1のヤゲン用砥石105とヤゲン33との干渉によるヤゲン痩せが発生するおそれがなく、ヤゲン33を良好に加工形成することができる。そして、一次ヤゲン加工が終了すると、第1のヤゲン用砥石105によって面取り加工を行なう。
【0048】
図8は第1のヤゲン用砥石105によって被加工レンズ50を一次凸面面取り加工している状態を示す図である。
加工に際しては、加工具回転軸93を一定高さに保持する。また、加工具回転軸93をレンズ回転軸42に対して角度τ(一次ヤゲン加工部105Aの下面側が略水平になる角度)だけ傾斜させて高速回転させる。一方、レンズ回転軸42を被加工レンズ50が一次凸面面取り加工部105Cに対応するようにX方向に移動調整して被加工レンズ50を回転させるとともに、入力した枠形状データに応じてX,Y方向に移動させて凸面外周縁部50eを一次凸面面取り加工部105Cに押しつける。これにより一次凸面面取り加工部105Cが被加工レンズ50の凸面外周部50eを面取り加工する。凸面外周部50eの面取り加工が終了すると、次に一次凹面面取り加工を行なう。
【0049】
図9は第1のヤゲン用砥石105の一次凹面面取り加工部105Dによって被加工レンズ50を一次凹面面取り加工している状態を示す図である。
一次凹面面取り加工部105Dによる凹面面取り加工は、レンズ回転軸42をX方向に移動調整して被加工レンズ50の凹面外周部50fを一次凹面面取り加工部105Dに押しつけることにより前記一次凸面面取り加工と同様に行なわれる。
【0050】
第1のヤゲン用砥石105による一次ヤゲン加工および一次面取り加工が終了すると、第2のヤゲン用砥石106による二次ヤゲン加工および二次面取り加工を、第1のヤゲン用砥石105と同じ要領で行なう。
【0051】
図10は第2のヤゲン用砥石106によって被加工レンズ50を二次ヤゲン加工している状態を示す図である。
加工に際しては、回動アーム83を180°回転させて加工具回転軸93を反転させ、第1のヤゲン用砥石105と第2のヤゲン用砥石106の位置を入れ替える。反転させる際には、予めレンズ回転軸42を下方に待避させておき、その場で加工具回転軸93を反転させた後、レンズ回転軸42を再び上昇復帰させる。そして、加工具回転軸93を回転駆動させる。また、レンズ回転軸42を被加工レンズ50が第2のヤゲン用砥石106の二次ヤゲン加工部106Aに対応するようにX方向に移動調整してレンズ回転軸42を回転させるとともに、入力した枠形状データに応じてX,Y方向に移動させて被加工レンズ50の一次ヤゲン加工によって形成されたヤゲン部を二次ヤゲン加工部106Aに押しつける。さらに、被加工レンズ50が1回転する間、モータ87の駆動によって回動アーム83を上記式(2)を満たすように回旋(揺動)させる。これにより二次ヤゲン加工部106Aが被加工レンズ50のコバ面50cとヤゲン33を二次ヤゲン加工する。ヤゲン加工が終了すると、凸面面取り加工と凹面面取り加工を順次行なう。
【0052】
図11は第2のヤゲン用砥石106によって被加工レンズ50を二次凸面面取り加工している状態を示す図である。
加工に際しては、加工具回転軸93を一定高さに保持する。また、加工具回転軸93をレンズ回転軸42に対して所要角度(τ+β)傾斜させ、加工具回転軸93を回転させる。一方、レンズ回転軸42を被加工レンズ50が第2のヤゲン用砥石106の二次凸面面取り加工部106Cに対応するようにX方向に移動調整して回転させるとともに、入力した枠形状データに応じてX,Y方向に移動させて被加工レンズ50の凸面外周部50eを二次凸面面取り加工部106Cに押しつける。これにより二次凸面面取り加工部106Cが被加工レンズ50の凸面外周部50eを面取り加工する。
【0053】
図12は第2のヤゲン用砥石106の二次凹面面取り加工部106Dによって被加工レンズ50を二次凹面面取り加工している状態を示す図である。
二次凹面面取り加工部106Dによる二次凹面面取り加工は、レンズ回転軸42をX方向に移動調整して被加工レンズ50の凹面外周部50fを二次凹面面取り加工部106Dに押しつけることにより前記一次凹面面取り加工と同様に行なわれる。
【0054】
このように、本発明に係る眼鏡レンズ加工装置40は、予め眼鏡フレーム3のフレームカーブを測定して制御部に入力しておき、一次および二次ヤゲン加工時に前記フレームカーブにヤゲン33の方向が一致するように第1のヤゲン用砥石105、第2のヤゲン用砥石106のヤゲン用研削面105A,106Aを被加工レンズ50のレンズ光軸10に対して所定角度(τ+β)傾斜させてコバ面50cを研削することにより、図1に示した眼鏡レンズ30を製作するようにしたものである。このようにして製作された眼鏡レンズ30は、上記した通り、眼鏡フレーム3に枠入れされると、コバ面30cがリム4の内周面4aに対して略平行に対向し、ヤゲン33がリム溝5に対して正対した状態ではめ込まれるので、ヤゲン33とリム溝5の接触点P1 ,P2 が略左右対称で、眼鏡レンズ30や眼鏡フレーム3に歪みを発生させることがなく、安定した状態で枠入れすることができ、特にフレームカーブがきつい眼鏡フレームの眼鏡レンズに適用して好適である。
【0055】
ここで、上記した第1の実施の形態においては、上記式(2)を満たすように加工具回転軸103を回旋させてコバ面50cを縁摺り加工する例を示したが、第2の実施の形態としてリム溝5の傾斜角度の平均値を用いてもよい。すなわち、眼鏡フレーム3のフレームカーブFBCおよびフレームセンターからリム4までの距離A1,A2,A3・・・Anをそれぞれ測定する。また、眼鏡フレーム3のリム4の内周面4aの各位置のレンズ光軸10に対するリム溝5の傾斜角度θ1,θ2,θ3,・・・θnをそれぞれ算出する。さらに、次式(3)によりリム溝5の傾斜角度θ1 ,θ2 ,θ3 ,・・・θn の平均値θ平均を算出する。そして、第1、第2のヤゲン用砥石105,106のヤゲン用研削面105A,106Aの傾きが前記平均値θ平均と一致するように加工具回転軸93のレンズ光軸10に対する傾斜角度αを調整し、この状態で第1、第2のヤゲン用砥石105,106によるコバ面50aの一次、二次ヤゲン加工を順次行なうようにしてもよい。
【0056】
【数1】


ただし:添え字nは整数であり、360≦n≦1500
【0057】
このようなリム溝5の傾斜角θ1 ,θ2 ,θ3 ,・・・θn の平均値θ平均を用いると、加工具回転軸93のレンズ光軸10に対する傾斜角度αを上記した実施の形態とは異なり一定角度とすることができるので、第1、第2のヤゲン用砥石105,106によるヤゲン加工時に加工具回転軸93を回旋(揺動)させる必要がなく、装置の制御が容易である。ただし、この場合は、平均値を用いているため、リム4とコバ面30cとの平行度およびヤゲン溝5とヤゲン33との対向精度が条規実施の形態に比べて若干低下するが、図13(b)に示した従来の眼鏡レンズ1に比べれば依然として優れているので、眼鏡フレーム3に対して安定した状態で枠入れすることができることは明らかであろう。
【0058】
なお、上記した実施の形態においては、直交座標系で表示したが、極座標系で表示することも可能である。また、加工を360ポイントとしたが、360〜1500程度が加工精度と制御の容易さから好適である。また、β平均をフレーム枠上の全ポイントの平均値(β平均==Σθ1〜θn、 360<n<1500)とし、各眼鏡フレームに固有な固定値で加工を行なうことも制御が容易になり、加工が容易になるため好適である。
【0059】
さらに、上記した実施の形態においては、加工具回転機構45を一定高さに保持し、レンズ回転軸42をX方向、Y方向およびZ方向に駆動制御してレンズ加工を行なうようにした例について説明したが、本発明はこれに限らず、加工具とレンズの動きは相対的なものであるため、レンズ回転軸42を一定高さに保持し、加工具回転機構45をX方向、Y方向およびZ方向に駆動制御してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】(a)は本発明に係る眼鏡レンズを備えた眼鏡の要部の平面図、(b)はリム部の拡大図である。
【図2】本発明に係る眼鏡レンズ加工装置の一実施の形態を示す内部構造の斜視図である。
【図3】同加工装置の加工具回転機構の横断面図である。
【図4】同加工具回転機構の縦断面図である。
【図5】レンズ回転軸の断面図である。
【図6】一次ヤゲン加工している状態を示す図である。
【図7】(a)〜(d)は被加工レンズの各加工ポイントにおける加工具回転軸の回旋を示す図である。
【図8】一次凸面面取り加工している状態を示す図である。
【図9】一次凹面面取り加工している状態を示す図である。
【図10】二次ヤゲン加工している状態を示す図である。
【図11】二次凸面面取り加工している状態を示す図である。
【図12】二次凹面面取り加工している状態を示す図である。
【図13】(a)は従来の眼鏡レンズを備えた眼鏡の要部の平面図、(b)はリム部の拡大図である。
【図14】(a)は砥石による眼鏡レンズの縁摺り加工状態を示す図、(b)はヤゲン痩せを示す平面図である。
【符号の説明】
【0061】
3…眼鏡フレーム、4…リム、5…リム溝、10…レンズ光軸、30…眼鏡レンズ、30c…コバ面、33…ヤゲン、40…眼鏡レンズ加工装置、42…レンズ回転軸、45…加工具回転機構、50…被加工レンズ、54…モータ、83…回動アーム、87…モータ、93…加工具回転軸、105…第1のヤゲン用砥石、106…第2のヤゲン用砥石、110,113…ヤゲン用溝

【出願人】 【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
【出願日】 平成18年9月11日(2006.9.11)
【代理人】 【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹

【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹


【公開番号】 特開2008−65262(P2008−65262A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−245870(P2006−245870)