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【発明の名称】 眼鏡用レンズの染色方法、染色濃度測定方法、染色濃度測定装置および製造方法
【発明者】 【氏名】加藤 聡

【氏名】柊山 徹也

【氏名】山田 健

【要約】 【課題】左右でレンズのレイアウトが異なる場合であっても左右対称に縦染色することができる染色方法を提供する。

【構成】眼鏡用レンズ10に対して、そのレンズ上に想定される加工後のレンズ形状30における垂直中心線33vを算出する工程と、垂直中心線33vを基準に染色濃度変化終了位置を決定する工程と、染色開始位置32iを下に、染色濃度変化終了位置32oを上にして眼鏡用レンズ10を染料液中に浸漬し、前記染色開始位置32iから前記染色濃度変化終了位置32oに向かって染色濃度が連続的に低下するように染色する工程とを備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡用レンズの表面に染色濃度が一定方向に連続的に変化する染色を施す眼鏡用レンズの染色方法において、
玉形加工前の前記眼鏡用レンズに対して、そのレンズ上に想定される玉形形状におけるボクシング中心または垂直中心線の位置を特定する工程と、
前記ボクシング中心または垂直中心線の位置を基準に染色濃度変化終了位置を決定する工程と、
前記染色濃度変化終了位置から眼鏡フレームにおける水平方向に染色濃度が連続的に増加するように染色する工程と、
を備えたことを特徴とする眼鏡用レンズの染色方法。
【請求項2】
玉形加工前の眼鏡用レンズをレンズ保持具に保持させた状態で染料液に浸漬して前記眼鏡用レンズの表面に染色濃度が一定方向に連続的に変化する染色を施す眼鏡用レンズの染色方法において、
前記レンズ保持具は、所定の基準高さを示す表示部と、眼鏡用レンズを垂直方向に移動可能に保持するレンズ保持部とを有し、
前記玉形加工前の眼鏡用レンズに対して、そのレンズ上に想定される玉形形状における垂直中心線の位置を特定する印を表示する工程と、
前記垂直中心線の位置を基準に染色濃度変化終了位置を決定する工程と、
前記印から特定される前記垂直中心線が水平になるように、かつ染色濃度を増加させたい方が下になるように前記眼鏡用レンズを前記レンズ保持具に保持させる工程と、
前記眼鏡用レンズ上に表示された前記印を基に前記垂直中心線を前記レンズ保持具の前記基準高さに合わせるように前記レンズ保持部の位置を調節する工程と、
前記レンズ保持具とともに前記眼鏡用レンズを染料液に浸漬して眼鏡用レンズの表面に前記染色濃度変化終了位置から眼鏡フレームにおける水平方向に連続的に染色濃度が増加するように染色する工程と、
を備えたことを特徴とする眼鏡用レンズの染色方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の染色方法によって染色された眼鏡用レンズの前記垂直中心線上または前記垂直中心線から所定の距離の染色濃度を測定することを特徴とする眼鏡用レンズの染色濃度測定方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の染色方法によって染色された眼鏡用レンズの前記垂直中心線上または前記垂直中心線から所定の距離に測定光を照射して、その透過率により染色濃度を測定する眼鏡用レンズ染色濃度測定装置であって、
前記眼鏡用レンズを濃度測定位置に搬送する搬送機構を備え、この搬送機構は、前記濃度測定位置に搬送された状態で前記測定光が通過する位置を特定できる印である測定位置基準マークを有する第1のステージと、この第1のステージに移動自在に搭載され前記眼鏡用レンズを保持する第2のステージとを有していることを特徴とする眼鏡用レンズ染色濃度測定装置。
【請求項5】
請求項1または2記載の染色方法によって眼鏡用レンズを染色した後、前記玉形形状になるように前記眼鏡用レンズを玉形加工することを特徴とする眼鏡用レンズの製造方法。
【請求項6】
請求項5記載の眼鏡用レンズの製造方法において、
前記染色された玉形加工前の眼鏡用レンズの垂直中心線上または前記垂直中心線から所定の距離の位置における染色濃度を測定しその合否を判定し、合格と判定されたレンズに対して前記玉形加工を行うことを特徴とする眼鏡用レンズの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡用レンズのグラディエント染色の方法および装置に関し、特に、眼鏡フレームにおける水平方向に染色濃度が連続的に変化する眼鏡用レンズの染色に適した方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡用プラスチックレンズを染色する方法としては、レンズ表面に染料被膜を形成した後、加熱処理して染料をレンズ内に拡散させて染色する技術や、眼鏡用レンズを染料液に浸漬して染色する技術が知られている。また、レンズのファッション性を高めるために、染色に連続的な濃度変化を与える染色方法(以下、単にグラディエント染色という)によりグラディエントカラーレンズ(ぼかし色レンズ)を形成する手法も知られている(例えば特許文献1,2参照)。そして、染料液に浸漬して染色する際は、眼鏡用レンズを染色用のレンズ保持具(例えば、特許文献3,4参照)によって保持し、眼鏡用レンズをレンズ保持具とともに染料液に浸漬して染色するようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開平3−72978号公報
【特許文献2】特開2004−85587号公報
【特許文献3】実用新案登録第2527098号公報
【特許文献4】実開昭58−115718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1〜4に記載されている従来のグラディエント染色方法は、眼鏡フレームにおける上下方向であって、下方から上方に向かって連続的に濃くなるように濃度変化を持つ染色(以下、単に横染色ともいう)が一般的であった。このような横染色におけるグラディエント染色の染色濃度変化終了位置(染色濃度が変化している部分において最も染色濃度が薄くなる位置)は、玉形加工前(縁摺り加工前)の眼鏡用レンズ(以下、単に未加工レンズともいう)の幾何学中心位置(通常、単焦点レンズにおいては光学中心位置、累進屈折力レンズにおいてはプリズム測定基準点位置、多焦点レンズにおいては遠用部光学中心位置と同じ。以下、これらの位置を総称して従来の染色基準位置という)を基準に所定の高さに定めていた。そして、染色された未加工レンズは、眼鏡フレームのレンズ枠形状(玉形形状)と眼鏡装用者の処方値(瞳孔間距離、左右片眼瞳孔間距離等)とに合わせて、レンズのアイポイント(単焦点レンズにおける光学中心、累進屈折力レンズにおけるフィッティングポイント、多焦点レンズにおける遠用部光学中心)が眼鏡フレームに適切に配置されるように眼鏡用レンズを玉形加工(縁摺り加工)していた。通常、前記レンズのアイポイントは眼鏡フレームにおいて左右で同じ高さとなるようにレンズの玉形加工を行っているので、横染色の場合は従来の染色基準位置を基準に染色濃度変化終了位置を決めておくと、左右のレンズの染色濃度変化終了位置を同じ高さにすることができる。
【0005】
しかしながら、グラディエントの濃度変化方向を眼鏡フレームにおける水平方向にする染色(以下、縦染色という)の場合は、従来の染色基準位置を基準に染色位置を決めると、左右の片眼瞳孔間距離が異なる場合、眼鏡の左右で染色濃度変化終了位置が異なり、またこの結果レンズ縁側での染色濃度も異なるため、左右のレンズが異なったレンズのように見えてしまい、横染色の場合に比べて眼鏡の見栄えが悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、左右でレンズのレイアウトが異なる場合であっても左右対称に縦染色することができるようにした染色方法を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明により染色されたグラディエント染色の濃度を測定する測定方法、染色濃度を測定する装置および染色された眼鏡用レンズの製造方法を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために第1の発明に係る眼鏡用レンズの染色方法は、眼鏡用レンズの表面に染色濃度が一定方向に連続的に変化する染色を施す眼鏡用レンズの染色方法において、玉形加工前の前記眼鏡用レンズに対して、そのレンズ上に想定される玉形形状におけるボクシング中心または垂直中心線の位置を特定する工程と、前記ボクシング中心または垂直中心線の位置を基準に染色濃度変化終了位置を決定する工程と、前記染色濃度変化終了位置から眼鏡フレームにおける水平方向に染色濃度が連続的に増加するように染色する工程とを備えていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明に係る眼鏡用レンズの染色方法は、玉形加工前の眼鏡用レンズをレンズ保持具に保持させた状態で染料液に浸漬して前記眼鏡用レンズの表面に染色濃度が一定方向に連続的に変化する染色を施す眼鏡用レンズの染色方法において、前記レンズ保持具は、所定の基準高さを示す表示部と、眼鏡用レンズを垂直方向に移動可能に保持するレンズ保持部とを有し、前記玉形加工前の眼鏡用レンズに対して、そのレンズ上に想定される玉形形状における垂直中心線の位置を特定する印を表示する工程と、前記垂直中心線の位置を基準に染色濃度変化終了位置を決定する工程と、前記印から特定される前記垂直中心線が水平になるように、かつ染色濃度を増加させたい方が下になるように前記眼鏡用レンズを前記レンズ保持具に保持させる工程と、前記眼鏡用レンズ上に表示された前記印を基に前記垂直中心線を前記レンズ保持具の前記基準高さに合わせるように前記レンズ保持部の位置を調節する工程と、前記レンズ保持具とともに前記眼鏡用レンズを染料液に浸漬して眼鏡用レンズの表面に前記染色濃度変化終了位置から眼鏡フレームにおける水平方向に連続的に染色濃度が増加するように染色する工程とを備えていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明に係る眼鏡用レンズ染色濃度測定方法は、前記第1または第2の発明によって染色された眼鏡用レンズの前記垂直中心線上または前記垂直中心線から所定の距離の染色濃度を測定することを特徴とする。
【0011】
第4の発明に係る眼鏡用レンズ染色濃度測定装置は、前記第1または第2の発明によって染色された眼鏡用レンズの前記垂直中心線上または前記垂直中心線から所定の距離に測定光を照射して、その透過率により染色濃度を測定する眼鏡用レンズ染色濃度測定装置であって、前記眼鏡用レンズを濃度測定位置に搬送する搬送機構を備え、この搬送機構は、前記濃度測定位置に搬送された状態で前記測定光が通過する位置を特定できる印である測定位置基準マークを有する第1のステージと、この第1のステージに移動自在に搭載され前記眼鏡用レンズを保持する第2のステージとを有していることを特徴とする。
【0012】
第5の発明に係る眼鏡用レンズの製造方法は、前記第1または第2の発明によって眼鏡用レンズを染色した後、前記玉形形状になるように前記眼鏡用レンズを玉形加工することを特徴とする。
【0013】
第6の発明に係る眼鏡用レンズの製造方法は、前記第5の発明による製造方法において、前記染色された玉形加工前の眼鏡用レンズの垂直中心線上または前記垂直中心線から所定の距離の位置における染色濃度を測定しその合否を判定し、合格と判定されたレンズに対して前記玉形加工を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明による染色方法によれば、玉形加工前の眼鏡用レンズに対して、そのレンズ上に想定される玉形加工後のレンズ形状(玉形形状)における垂直中心線またはボクシング中心を基準に染色濃度変化終了位置を決定しているので、縦染色であっても、左右のレンズにおいて染色濃度変化終了位置を左右対称な位置とすることができる。このため、左右のレンズが異なったレンズのようにみえてしまうおそれがなく、見栄えの良好な眼鏡用レンズを提供することができる。
【0015】
また、本発明による染色濃度測定方法および装置によれば、染色された眼鏡用レンズの玉形形状における垂直中心線上または前記垂直中心線から所定の距離の染色濃度を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明による染色方法を実施するための染色装置を含む染色システムと発注システムの構成の一例を示す図である。同図において、参照符号1で示すものは眼鏡あるいは眼鏡用レンズを発注する眼鏡店であり、この眼鏡店1には眼鏡フレームの枠形状測定装置2とオンライン注文用端末としての端末コンピュータ3が設置されている。
【0017】
前記端末コンピュータ3は、入力手段や画面表示手段を備えているとともに通信手段を有し、通信媒体4を介してレンズ工場5と接続可能になっている。また、端末コンピュータ3は、眼鏡用レンズ10や眼鏡を注文するために必要な情報を送受信するための端末であり、専用の端末でもよく、また汎用のパソコンに注文用のソフトウェアがインストールされたものでもよい。また、レンズ工場5側のネットワークや中継局にWWWサーバを設け、そこに注文用のドキュメントやプログラムを登録し、端末コンピュータ3のWWWブラウザーで注文画面を表示させるようにしてもよい。なお、以下、レンズ工場5への発注者を眼鏡店1として説明するが、これに限定されるものではなく、例えば、眼科医、個人、レンズ・眼鏡メーカの営業所等であってもよい。また、オフラインで注文を受け付ける場合でもよい。また、図1では発注者として一つの眼鏡店1しか示していないが実際には通信媒体4を介して多数の発注者がレンズ工場5に接続可能である。
【0018】
前記通信媒体4としては特に限定せず、例えば、公衆通信回線、専用回線、インターネットなどを利用することができる。また、通信媒体4の途中に中継局を設けてもよい。
【0019】
前記レンズ工場5は、前記端末コンピュータ3からの注文データを受け付けて記憶・処理するとともに、受注内容に基づいて製造する眼鏡用レンズの設計データを作成し、また、この設計データに基づいて染色装置9を含む各種製造装置の制御に必要な加工データを作成するサーバ7と、このサーバ7により記憶・作成された受注データ、設計データ、加工データに基づいて、染色装置9を制御する制御コンピュータ8と、この制御コンピュータ8の指令に基づいて、未加工の眼鏡用レンズ10に染色を施す前記染色装置9を備えている。なお、レンズ工場5は、染色以外の眼鏡製造に必要な各種装置を備えているが、それらについては記載を省略している。また、前記各種コンピュータやネットワーク機器やプログラムが有する機能は、適宜統合、分散させてもよい。
【0020】
眼鏡店1において、端末コンピュータ3により眼鏡あるいは眼鏡用レンズの注文データが入力され、通信媒体4を介してサーバ7に送られると、それら情報およびそれら情報により決定された情報は、図示しない記憶手段に受注データとして記憶される。受注データとしては、眼鏡用レンズの情報、眼鏡フレームの情報、処方値およびレイアウト情報などがある。
【0021】
眼鏡用レンズ10の情報としては、レンズ種に関する情報(レンズ材質、屈折率、レンズ表裏面の光学設計、レンズ外径、これらを識別できる識別コードなど)や、レンズ加工指示に関する情報(レンズ厚さ、コバ厚、偏心、縁面の仕上げ方法、フレーム取付部の加工種類や方法、レンズ染色情報、レンズコーティング情報、これらを識別できる識別コードなど)がある。
【0022】
レンズ染色情報としては、色情報と染色濃度情報が含まれる。染色濃度情報としては、染色濃度変化方向(染色濃度が低下する方向。縦染色の場合は、例えば水平内側方向、水平外側方向のように指定)、染色濃度変化パターン(例えば濃度勾配一定あるいはあらかじめ設定されている濃度変化パターンから選択。濃度勾配一定の場合はその濃度勾配を指定)、染色濃度変化開始指定位置(染色濃度の低下を開始する位置、例えば玉形の染色濃度が高い側の端からの距離で指定。玉形の端から染色濃度変化を開始する場合は0と指定)、染色濃度変化終了指定位置(染色濃度の低下を終了する位置、例えば玉形の染色濃度が低い側の端からの距離で指定。玉形の端で染色濃度変化が終了する場合は0と指定)、最高指定染色濃度(前記染色濃度変化開始指定位置の指定染色濃度)、最低指定染色濃度(前記染色濃度変化終了指定位置の指定染色濃度)などがある。
なお、前記染色濃度変化終了指定位置から段差無く染色を施す場合は前記最低指定染色濃度を0(透過率最大)と指定する。
【0023】
また、上記染色濃度情報は予め上記各情報が設定された複数のパターンを登録しておき、そこから発注者が選択するようにしてもよい。
なお、本実施の形態においては、染色濃度は次の通り定義する。
染色濃度(%)=100−染色後の透過率×100
ただし、透過率測定波長は染色カラーにより適宜設定された波長の光とする。
また、前記最高指定染色濃度と最低指定染色濃度は、レンズの透過率を1と仮定した場合の染色濃度指定値であり、後述するように染色加工データ作成プログラムにより、レンズの透過率を考慮した値に補正され、最高染色濃度と最低染色濃度として登録される。
【0024】
眼鏡フレームの情報としては、フレームサイズ、フレーム素材、色、玉形形状(枠形状測定装置により測定された眼鏡枠のレンズ枠の形状や、予め設定されている玉形形状)、これらを識別できる識別コード等がある。
【0025】
眼鏡用レンズ10の処方値としては、S度数、C度数、プリズム、加入度などがある。レイアウト情報としては、瞳孔間距離、左右片眼瞳孔間距離、近用瞳孔間距離、セグメント小玉位置、アイポイント位置等がある。
【0026】
前記サーバ7は、設計データを作成するプログラムを備えており、受注データと予め記憶されている設計に必要なデータ(光学面形状、玉形形状など)に基づいて所望のレンズ形状を計算する。ここで染色に必要な情報(玉形形状におけるボクシング中心、垂直中心線、水平中心線、アイポイント位置など)も設計データとして計算される。
【0027】
また、サーバ7は、前記受注データや設計データに基づいて各種製造工程における加工設計値を計算し、加工条件を決定する加工データ作成プログラムも備えており、各種加工装置の設定値や制御データや使用治具なども決定する。このプログラムには、染色条件を決定する染色加工データ作成プログラムも備えられており、この染色加工データ作成プログラムは、前記染色濃度情報で指定された染色濃度変化開始指定位置および染色濃度変化終了指定位置を、ボクシング中心あるいは垂直中心線からの距離として演算し、それぞれ染色濃度変化開始位置、染色濃度変化終了位置として記憶する。
【0028】
また、前記染色濃度情報で指定された最高指定染色濃度と最低指定染色濃度を、レンズの透過率を考慮した値に補正し、それぞれ最高染色濃度および最低染色濃度として記憶する。また、使用する染色装置、レンズ保持具、染料液、染料液温度、染色装置に対する液面高さなどの染色条件も決定する。また、浸漬動作もプログラムにより計算して決定し、この決定された漬浸動作を駆動モータ17の駆動パターンへ変換し染色装置9の制御データとして設定する。染色濃度は、染色するレンズの材質、染料液、および染料液温度に応じて、レンズが染料液に浸漬している時間で決まるので、前記レンズ染色情報、玉形形状、玉形形状におけるボクシング中心または垂直中心線、染色濃度変化開始位置、染色濃度変化終了位置、最高染色濃度、最低染色濃度によって決定されるレンズ位置における染色濃度に応じて、レンズ位置における浸漬時間が決まり、これを満たすように浸漬動作(昇降位置の時間変化)が決定される。浸漬動作としては、漬浸動作開始高さから最大浸漬深さまで前記浸漬動作にしたがって降下させてもよいし、最大浸漬深さから浸漬動作開始高さまで前記浸漬動作に従って上昇させてもよい。また、前記浸漬動作に従って浸漬動作開始高さから最大浸漬深さまでを往復させてもよい。なお、浸漬動作はこれらに限定せず、例えば特許文献1に記載されているように小振幅小周期の上下動と大振幅大周期の上下動を組み合わせた動作にしてもよい。
【0029】
また、この染色加工データ作成プログラムは、染色が正しく行なわれているかどうかを染色濃度測定装置で検査するときの染色濃度検査測定位置、その位置における染色濃度、その染色濃度の許容範囲も算出する。この染色濃度検査測定位置は、染色濃度変化領域が玉形形状における垂直中心線をまたがっている場合は、垂直中心線の位置にすることが好ましい。なお、染色濃度変化領域に垂直中心線が位置しない場合は、垂直中心線から所定の距離を染色濃度検査測定位置とするとよい。
【0030】
上記受注データ、設計データ、および加工データは、サーバ7の記憶装置にオーダナンバーなどの識別情報に対応させて格納されている。前記制御コンピュータ8は、オペレータ等が指定した識別情報に基づき染色工程に必要な情報をサーバ7から読み込み、前記染色装置制御データを染色装置9の制御装置21に送り染色装置9の動作を制御する。
なお、上記説明では前記染色加工データ作成プログラムはサーバ7上においているが、制御コンピュータ8上においてもよいし、サーバ7と制御コンピュータ8上に分散させてもよい。
【0031】
前記染色装置9は、レンズ保持具13によって保持された未加工の眼鏡用レンズ10を染色槽11内の染料液12に浸漬させて染色する装置であり、前記制御装置21は前記制御コンピュータ8から送られてきた染色制御データにしたがって駆動モータ17を駆動してレンズ保持具13を昇降させて染色を行う。なお、染色装置9は、複数の染色槽11を設け、各染色槽11内の染色液12を異なるものとすることで制御コンピュータ8が選択した染色槽11で前記色情報に応じた染色を行うようにしてもよい。
【0032】
前記レンズ保持具13は、眼鏡フレームに装着される2つの眼鏡用レンズ10を垂直な状態で保持するように構成されており、上部に設けた取手15がロッド14の支持部14Aに保持されて懸吊される。ロッド14は、昇降部材16のアーム部16Aの先端側に高さ調整可能に固定されており、昇降部材16の原点位置において取手15が染色液の界面から所定の高さになるように調節されて固定され、染色槽11の上方に位置している。昇降部材16は、正逆回転自在な駆動モータ17によって回転駆動されるねじ棒18に螺合している。また、昇降部材16は、ねじ棒18と平行に立設されたガイドバー19に上下動自在に支持されることにより、水平面内での回転が防止されている。前記ねじ棒18は、前記駆動モータ17の回転がギアボックス20内のギアを介して伝達されることにより回転し、これにより前記昇降部材16をガイドバー19に沿って上昇または下降させる。前記駆動モータ17は、例えばステッピングモータが用いられ、制御装置21からの駆動信号によって駆動される。なお、レンズ保持具13の詳細についは、さらに後述する。
【0033】
ここで、未加工レンズ10と眼鏡フレームの玉形形状データ(以下、単に玉形形状ともいう)30について図2を参照しながら説明する。図2は、レンズ径が2rの未加工レンズ10に、破線で示す玉形形状データ30を重ねて表示したものである。玉形形状データ30は未加工レンズ10に玉形加工(玉摺り加工)を施した後のレンズ形状を示すものであり、この形状に加工されたレンズを未加工レンズ10と区別するために、以下の説明では加工レンズと呼ぶ。以下の説明ではレンズが単焦点レンズの場合で説明する。
【0034】
未加工レンズ10は、一般に円形であり、その幾何学中心32gcは鉛直方向と水平方向の径方向でそれぞれrの位置となる。そして、図中幾何学中心32gcを通る鉛直方向の軸線を鉛直線32v、幾何学中心32gcを通る水平方向の軸線を水平線32hとする。そして、未加工レンズ10の外周の上部で、鉛直線32vと交差する点を最上点32uとし、未加工レンズ10の外周下部で鉛直線32vと交差する点を最下点32dとする。また、未加工レンズ10の外周のうち装用者の顔における内側に位置する部分であって、水平線32hと交差する点を最内点32iとし、未加工レンズ10の外周のうち装用者の顔における外側に位置する部分であって、水平線32hと交差する点を最外点32oとする。
【0035】
未加工レンズ10に玉形形状データ30を重ねたときに、鉛直線32v方向の最大の寸法をBサイズ(縦サイズ)とし、水平線32h方向の最大の寸法をAサイズ(横サイズ)とする。この玉形形状データ30のBサイズは装用者の目の上下方向であり、Aサイズは装用者の目の水平方向である。
【0036】
玉形形状データ30に外接する二つの垂直接線Q1 ,Q2 から等距離にある線を垂直中心線33vとし、玉形形状データ30に外接する二つの水平接線R1 ,R2 から等距離にある線を水平中心線33hとする。そして、これらの垂直中心線33vと水平中心線33hの交点をボクシング中心33bcとする。ボクシング中心33bcは、玉形形状データ30、言い換えれば加工レンズの略幾何学中心である。なお、垂直中心線33vあるいはボクシング中心33bcは、染色濃度変化終了位置を決定するための基準となる位置である。
【0037】
また、この未加工レンズ10の光学中心位置を33ocとする。
【0038】
未加工レンズ10に重ね合わせる玉形形状データ30は、未加工レンズ10の光学中心33ocに玉形形状データ30におけるアイポイント(瞳孔中心位置)を一致させるとともに、未加工レンズ10と玉形形状の垂直方向、水平方向を合わせる。
なお、累進屈折力レンズの場合は未加工レンズの遠用アイポイント(フィッティングポイント)に、また、多焦点屈折力レンズの場合は未加工レンズの遠用部光学中心に、玉形形状データ30におけるアイポイントを一致させる。
【0039】
玉形形状におけるアイポイントは、玉形形状データ30と装用者の処方値やレイアウト情報(瞳孔間距離、左右片眼瞳孔間距離など)によって決定される。
【0040】
未加工レンズ10に縦染色を施す場合には、染色の濃度を増大させたい側の端部(レンズの内側から外側に向かって染色濃度を増大させたい場合は最外点32o、内側に向かって増大させたい場合は最内点32i)を下側にしてレンズ保持具13に保持させる。
なお、未加工レンズ10の染色濃度変化終了位置、染色濃度変化開始位置は、ボクシング中心または垂直中心線から所定の距離に設定され、玉形形状内を通る位置に設定すると染色を効率よく行なうことができるが、玉形形状外あるいは未加工レンズ外に設定することも可能である。
【0041】
図3は内側から外側に行くほど染色濃度が増大する縦染色を施した眼鏡40を示す正面図、図4は未加工レンズに縦染色を施した図である。これらの図において、眼鏡40は、眼鏡フレーム41と、この眼鏡フレーム41に組み付けられる左右一対の加工レンズ42とからなる。
【0042】
眼鏡フレーム41は、左右の加工レンズ42を保持する水平方向の中間の位置を眼鏡フレーム中心43cとする。なお、左右の加工レンズ42を区別して示すときには、左目用の加工レンズ42に対しては添え字「L」を付し、右目用の加工レンズ42に対しては添え字「R」を付して示す。同様に、未加工レンズ10についても、左右のレンズを区別するときには添え字「L」と「R」を付して示す。
【0043】
左目用の加工レンズ42Lは、染色が施されていない非染色部(明部)46と染色が施されている部分を有し、この染色が施されている部分は、内側から外側に向けて(眼鏡フレーム中心43cから水平方向に遠ざかるにつれて)染色濃度が連続的に高くなるように染色されている。つまり、左目用の加工レンズ42Lの染色が施されている部分の染色濃度勾配は眼鏡フレーム中心43c側から外側に向けて徐々に高くなるように染色される。これにより染色が施されている部分の内側に比較的染色濃度が低い(透過率が高い)薄染色部45が形成され、外側に比較的染色濃度が高い(透過率が低い)暗部47が形成されている。
【0044】
右目用加工レンズ42Rは、左目用の加工レンズ42Lとは逆の染色濃度変化で染色が施されており、説明を省略する。
【0045】
なお、図3に示した眼鏡40においては、染色濃度変化終了位置El,Erが加工レンズ42上に存在し、最低指定染色濃度(染色濃度変化終了位置の指定染色濃度)が0の場合の例を示しているが、未加工レンズ10上の玉形形状データ30の内側の端Q2 やそれよりさらに内側に染色濃度変化終了位置が位置している場合や、最低指定染色濃度が0より大きい値に設定され染色濃度変化終了位置から内側に向かって最低指定染色濃度と同じ染色濃度で染色されている場合は、加工レンズ42上に非染色部46が存在しなくなる。
【0046】
左右の加工レンズ42L,42Rは水平方向にグラディエント染色が施されたものであり、眼鏡フレーム中心43c側で染色濃度を低くすることで装用者の視界の明るさを確保し、眼鏡フレーム41の外側の染色濃度を高くすることで、装用者の目尻近傍の皺や弛みを視認しにくくしている。これにより、装用者の美意識を高めることができる。
【0047】
特に、加工レンズ42がプラスレンズの場合には装用者の目の周囲が拡大されるため、目尻近傍の皺などが拡大されてしまうのを嫌う傾向がある。また、加工レンズ42全体に染色を施すことも可能ではあるが、視野の明度が低下することから全体的な染色を嫌う傾向がある。このような問題を解決するために、眼鏡フレーム中心43c側で染色濃度を低くし、眼鏡フレーム41の外側の染色濃度を高くする染色を施すことで、装用者に好適な眼鏡用レンズを提供できるのである。
【0048】
本願発明により加工レンズ42に縦染色が施された眼鏡40は、上記した通り玉形形状の垂直中心線33v(図3)を基準に染色濃度変化終了位置を決定しているため、左右一対のレンズに対して左右対称に染色することができる。このため、未加工レンズ10の縁摺り加工によって製作された左右の加工レンズ42L,42Rにおいても、眼鏡フレーム中心43cからの距離に対する染色濃度を同じにすることができる。また、染色濃度変化終了位置E(El,Er)が加工レンズ42L,42R上に存在する場合においても、眼鏡フレーム中心43cから染色濃度変化終了位置El,Erまでの距離D1 ,D2 は略同じに設定することができる(D1 ≒D2 )。このように、左右対称な縦染色が可能になるため、異なった染色が施されているものと思われるおそれがなく、違和感を感じさせることがない。
なお、図2および図4において、玉形形状、レンズの幾何学中心、ボクシング中心、光学中心はレンズ上に表示されているわけではない。
【0049】
図5は本発明に係る染色方法に用いられるプラスチックレンズ染色用レンズ保持具の第1の実施の形態を示すレンズを保持した状態の斜視図、図6は同保持具の正面図である。
これらの図において、レンズ保持具13は、保持具本体51と、この保持具本体51に取付けられ未加工レンズ10をそれぞれ保持する第1、第2のレンズ保持部52A,52Bとを備えている。
【0050】
保持具本体51は、略垂直で上下方向に長い主板53を備え、この主板53の上端には取手取付部材54が止めねじ55によって固定されている。この取手取付部材54の上面中央には、T字状の取手15が取付けられている。取手15は、図1に示すロッド14の支持部14Aによって支持される部分である。前記取手取付部材54はフッ素樹脂等の耐薬品性に富む材料によって形成されている。
【0051】
前記主板53の両側面の下部には、レンズ保持具13における基準高さを示す表示線(表示部)80が表示されている。この表示線80は、第1、第2のレンズ保持部52A,52Bの高さを調整し、未加工レンズ10に設けられた、垂直中心線33v(図2)の位置を示す後述する印M1 ,M2 (図11)をレンズ保持具13の基準高さと一致させる、つまり縦染色のために眼鏡レンズ10を横向きにした状態における垂直中心線33vの高さを一定にするために表示されるもので、この表示線80から前記取手15までの高さ方向の距離Lは所定の値に設定されている。
【0052】
前記したとおり前記昇降部材16が原点位置にある状態において、前記取手15を指示する支持部14Aを染色槽11の液面に対して所定の高さに設定されているので、染色液12の液面高さと前記表示線80との高さ位置の関係は、予め所定の値になるように設定される。このため、垂直中心線33vを基準として未加工レンズ10の定められた所定の位置に縦染色を施すことができる。
【0053】
前記主板53の上下2カ所には、第1および第2のレンズ保持部52A,52Bを固定するための止めねじ56,57が挿通されるねじ取付孔が形成されている。
【0054】
第1および第2のレンズ保持部52A,52Bは、前記主板53の両側面に前記止めねじ56,57によって高さ調整可能に共締め固定されている。これらのレンズ保持部52A,52Bは、左右対称な形状に形成されているため、第1のレンズ保持部52A(図5における向かって左側)の構成等についてのみ説明し、第2のレンズ保持部52Bについては第1のレンズ保持部52Aと同一の構成部品、部分について同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
前記第1のレンズ保持部52Aは、前記主板53の左側面に前記2本の止めねじ56,57によって高さ調整可能に固定された略垂直な側板58と、この側板58の表面(主板53側とは反対側の面)の上方寄りにリベットやスポット溶接等によって固定された水平板59と、この水平板59の下面側に左右方向に移動自在に配設された可動板60と、側板58の表面下端部に固定されたブラケット61と、未加工レンズ10の外周を3点保持する3つのレンズ保持片62(62A〜62C)と、前記可動板60をレンズ保持具13の中央側に付勢する付勢手段としての引張りコイルばね68等で構成されている。
【0056】
前記側板58は、前記主板53の表面に前記止めねじ56,57によって高さ調整可能に固定されている。このため、側板58の上端部には、前記止めねじ56が挿通される縦長のガイド溝71が形成されている。上方側の止めねじ56は、第2のレンズ保持部52B側の側板58に同様に形成されているガイド溝と、主板53の上端部に形成されているねじ取付用孔および第1のレンズ保持部52A側の側板58のガイド溝71を通って取手取付部材54のねじ孔にねじ込まれており、この止めねじ56を緩めると、第1、第2のレンズ保持部52A,52Bの側板58をそれぞれ個々独立に高さ調整することができる。なお、第1のレンズ保持部52A側の側板58の上端部は、主板53と取手取付部材54の下端部によって挾持されている。一方、第2のレンズ保持部52Bの側板58の上端部は、止めねじ56の頭部と主板53によって挾持されている。なお、前記側板58の下端部は、前記ブラケット61とともに前記止めねじ57が貫通する縦長の取付孔が形成されており、前記ブラケット61とともに主板53の下端部に高さ調整可能に固定されている。
【0057】
前記水平板59は、基端部に下方に略直角に折り曲げ形成された固定部59aを有し、この固定部59aが前記側板58の表面に固定されている。水平板59の自由端側で幅方向中央には前記可動板60を案内するガイド孔65が水平板59の長手方向に形成されている。
【0058】
前記可動板60は、前記水平板59の下面に摺動可能に密接する水平片60Aと、この水平片60Aの外端より下方に略垂直に折り曲げられた垂直片60Bと、この垂直片60Bの下端より水平方向内側に略直角に折り曲げられた折曲片60Cとを備え、また水平片60Aの一側縁にはガイド片60Dが上方に向かって折り曲げ形成されている。このガイド片60Dは、水平板59の一側縁に近接して対向または接触することにより、可動板60が水平板59に対して水平面内で回転するのを防止している。また、水平片60Aの上面には、前記ガイド孔65を貫通して水平板59の上方に突出する鍔付きのスライドピン66が突設されている。このスライドピン66の鍔66Aは、水平板59の上面でガイド孔65の両側縁部に接触することにより、可動板60の水平板59からの離脱、落下を防止している。
【0059】
可動板60の折曲片60Cの下面には、前記レンズ保持片62Aが固定されている。このレンズ保持片62Aは、弗素樹脂等によって適宜な板厚を有する平板状に形成され、未加工レンズ10の外周を保持するレンズ保持面には平面視V字状のレンズ受け溝62Aが形成されている。
【0060】
前記ブラケット61は、正面視コ字状に形成されることにより、垂直片61Aと、この垂直片61Aの上下端に外側に向かって略直角に折り曲げ形成された上下一対の水平片61B,61Cとで構成されている。垂直片61Aは、前記止めねじ57が摺動自在に貫通する縦長のガイド孔73を有し、前記側板58に設けられた縦長の取付孔と開口部を一致させた状態で前記側板58の表面下端部にスポット溶接やリベット等により固定されている。
【0061】
ブラケット61の上下に対向する一対の水平片61B,61Cには、前記レンズ保持片62B,62Cが、前記可動板60側のレンズ保持片62Aに対応してそれぞれ固定されている。これらのレンズ保持片62B,62Cは、レンズ保持片62Aと同一形状に形成されおり、V字状のレンズ受け溝62aを外側に向けてそれぞれ固定されている。可動板60側のレンズ保持片62Aの取付け高さは、ブラケット61側のレンズ保持片62B,62C間でその略中央に対応した高さ位置、換言すれば一対のレンズ保持片62B,62Cを結ぶ垂直な線分と直交し、その線分の中点を通る水平線と同一高さ位置となっている。
【0062】
前記側板58と前記ガイドピン66とは、引張りコイルばね68によって連結されている。この引張りコイルばね68は、前記可動板60をレンズ保持方向、すなわちレンズ保持具13の中央側に付勢しており、この付勢力によって可動板58側のレンズ保持片62Aを未加工レンズ10の外側外周面に押し付け、3つのレンズ保持片62A〜62Cによって未加工レンズ10を挟持させるようにしている。
【0063】
図7はレンズ保持具の第2の実施の形態を示す正面図である。同図において、図5および図6に示した第1の実施の形態のレンズ保持具13と同様の構成部材、部分については、同一符号をもって示すことでその説明を省略し、相違点を中心に説明する。この第2の実施の形態のレンズ保持具90は、第1、第2のレンズ保持部52A,52Bの高さを高さ調節機構91によってそれぞれ調節するようにしている。高さ調節機構91としては、ねじ(以下、高さ調節ねじという)91が用いられる。
【0064】
レンズ保持具90は、保持具本体51と、第1のレンズ保持部52Aと、第2のレンズ保持部52Bとを備えている。保持具本体51の上端部は、2本の止めねじ55によって取手取付部材54に固定されている。保持具本体51の両面には、左右一対の側板58が2本の止めねじ56,57によってそれぞれ個々独立に高さ調整可能に固定されている。
【0065】
さらに、保持具本体51の上端部で前記取手取付部材54と側板58との間の部分の両面には、左右一対の支持板92が左右対称に固定されている。支持板92は、L字状に形成されることにより、垂直片92Aと水平片92Bとからなり、垂直片92Aが保持具本体51に固定され、水平片92Bに前記高さ調節ねじ91が取付けられている。高さ調節ねじ91は、水平片92Bに設けたねじ取付孔を通って水平板59のねじ孔に螺合されることにより、水平板59と支持板92とを連結している。そして、第1のレンズ保持部52Aと第2のレンズ保持部52Bの高さ調節に際しては、止めねじ56,57を緩めた後、高さ調節ねじ91を手で回転させると、第1および第2のレンズ保持部52A,52Bが保持具本体51に沿って上昇または下降して高さが調節される。高さが調整されたら止めねじ56,57を締めて第1と第2のレンズ保持部52A、52Bの高さを固定する。なお、止めねじ56,57をレンズ保持部52A,52Bがぐらつかずに摺動可能に保持するようにして、高さ調整時に止めねじ56,57を緩めるたり締め付けたりしなくてもよいようにしてもよい。この場合は、高さ調節ねじ91に緩み止め機構を設け、第1、第2のレンズ保持部52A,52Bの位置ずれを防止するようにするとよい。
【0066】
可動板60の垂直片60Bの下端部には、ブラケット95が側板58側に取付けられているブラケット61と対向して固定されている。このブラケット95は、前記ブラケット61と同一形状に形成されており、上下の水平折曲部にレンズ保持片62が前記ブラケット61のレンズ保持片62と対向するようにそれぞれ固定されている。このため、このレンズ保持具90は、4つのレンズ保持片62によって未加工レンズ10の外周を3点もしくは4点で挾持することができ、これによりレンズを安定に保持しレンズ保持性能を高めている。
なお、上記以外の構成は、図5および図6に示したレンズ保持具13と同様の構成であるので説明を省略する。
【0067】
このようなレンズ保持具90においては、高さ調節ねじ91を備えているので、第1、第2のレンズ保持部52A,52Bの高さを容易に調節することができる。
なお、上記した第1および第2の実施の形態のレンズ保持具では、レンズ保持部が左右二つある場合について説明したが、片方でもよい。
【0068】
次に、未加工レンズを染色するまでの手順について説明する。
ここでは、眼鏡店1から発注した内容に基づいて単焦点レンズを眼鏡フレームにおける内側から外側に向かって染色濃度が濃くなるように縦染色する場合について説明する。
【0069】
[ステップS1]
まずはじめに、発注者である眼鏡店1は、端末コンピュータ3に注文データ(レンズ染色情報を含む眼鏡用レンズ情報、玉形形状情報を含む眼鏡フレーム情報、処方値、レイアウト情報など)を入力し、通信媒体4を介してサーバ7に送信する。玉形形状30については、眼鏡フレームがリム枠を有する場合は、枠形状測定装置2により測定した枠形状データが送られる。また、リムレス眼鏡や溝掘り枠のようにリム枠を有さない場合は、選択したフレームと選択した玉形形状を識別できるデータが送られる。
【0070】
[ステップS2]
サーバ7に送られてきた注文データは、受注プログラムにより必要な処理が加えられ、サーバ7上の記憶装置に受注データとして記憶される。
【0071】
[ステップS3]
サーバ7は、設計データ作成プログラムにより、前記受注データとサーバ7に予め記憶されているレンズ設計データ作成に必要なデータを基に所望のレンズのレンズ設計データを作成しサーバ上の記憶装置に記憶する。ここで玉形形状も計算され、染色に必要な情報であるボクシング中心、垂直中心線、水平中心線、アイポイント位置なども計算される。
【0072】
[ステップS4]
サーバ7は、加工データ作成プログラムにより、前記受注データとレンズ設計データとサーバ7に予め記憶されているレンズ加工データ作成に必要なデータとを基にレンズ加工データを作成する。ここで染色加工データ作成プログラムにより、ボクシング中心あるいは垂直中心線を基準とした染色濃度変化開始位置、染色濃度変化終了位置が算出される。また各種染色条件(使用する染色装置、レンズ保持具、染料液、染料液温度、染色装置に対する液面高さなど)も決定される。さらに浸漬動作や染色装置制御データも計算され設定される。
【0073】
[ステップS5]
染色する未加工レンズ10が用意されたら、作業者は制御コンピュータ8に識別情報を入力し、サーバ7から染色工程に必要な情報を制御コンピュータに読み込む。そしてこの注文の眼鏡レンズのレイアウトが記載されたチャート98(図8)を出力する。未加工レンズ10にはレンズメータなどを用いて、光学中心と水平方向100(図9)を示す印点99が付される。また、チャート98には玉形形状30と、この玉形形状30における垂直中心線33vや水平中心線33hと、アイポイント101などを含むレイアウト情報が実寸で印刷されている(図8)。なお、102は垂直対称軸である。
【0074】
[ステップS6]
未加工レンズ10を前記チャート98上に載せ、チャート98上のアイポイント101と、未加工レンズ10上の光学中心100とを一致させるとともに、未加工レンズ10の水平方向とチャート98における水平方向を一致させる(図10)。
【0075】
[ステップS7]
次に、未加工レンズ10L,10R上に、玉形形状30における垂直中心線33vを特定できる印を付与する。この例では、チャート98の垂直中心線33vと玉形形状30とが交わる上下の2カ所に仮マークN1 ,N2 を施し、これらの仮マークN1 ,N2 を含む垂直な直線と未加工レンズ10L,10Rの外周との交点に垂直中心位置マーク(表示部)M1 ,M2 ,m1 ,m2 を施す。(図11)。このようなマークM1 ,M2 ,m1 ,m2 を施した後の未加工レンズ10を図12に示す。
【0076】
未加工レンズ10Rにおいては、垂直中心線の上側に2本線からなる垂直中心位置マークm1 、下側に1本線からなる垂直中心位置マークm2 が付されている。また、未加工レンズ10Lにおいては、垂直中心線の上側に1本線からなる垂直中心位置マークM1 、下側に2本線からなる垂直中心位置マークM2 が付されている。このように未加工レンズ10L,10Rのそれぞれの上下で異なるマークを付し、かつ左右のレンズで上下逆にマークを付ける理由は、未加工レンズ10L,10Rをレンズ保持具13(または90)に取付ける際、上下逆に取付けないようにするためである。すなわち、染色濃度変化方向を垂直上向きになるように配置したときに、右側と左側とで印を変えている。これにより、左右の未加工レンズ10L,10Rに関わらず、向かって右側を示すマークM1 ,m2 が右側に、向かって左側を示すマークM2 ,m1 が左側に位置するようにレンズ保持具13に配置することで正しい染色位置に配置できる。
【0077】
[ステップS8]
このような垂直中心位置マークM1 ,M2 ,m1 ,m2 が付された未加工レンズ10L,10Rを図13に示すようにレンズ保持具13に保持させる。すなわち、レンズ保持具13の左右の可動板60を引張りコイルばね68に抗してそれぞれ広げ、この引張りコイルばね68の力により外側のレンズ保持片62を未加工レンズ10L,10Rの外側外周面にそれぞれ押し付けることにより、3つのレンズ保持片62によって未加工レンズ10L,10Rをそれぞれ3点保持させる。
【0078】
このとき、未加工レンズ10L,10Rは染色濃度変化方向(染色濃度が低下する方向)が垂直方向上向きになるように垂直面内において90°回転された状態で保持される。このとき、左右の未加工レンズ10L,10Rの回転方向は反対方向で、各レンズ10L,10RのマークM2 ,m1 が向かって左側で、マークM1 ,m2 が向かって右側になるように回転させて保持させる。
【0079】
[ステップS9]
次に、このレンズ保持具13における基準高さを示す表示部80と前記垂直中心位置マークM1 ,M2 ,m1 ,m2 の高さが一致するように左右のレンズ保持部52A,52Bの高さを調節する。すなわち、止めねじ56,57を緩めて左右のレンズ保持部52A,52Bを上下移動させ、垂直中心位置マークM1 ,M2 ,m1 ,m2 がレンズ保持具13の基準高さを示す表示部80の高さと一致するように高さ調整する。垂直中心位置マークM1 ,M2 ,m1 ,m2 を表示部80の高さと一致させた後、止めねじ56,57を締め付けてレンズ保持部52A,52Bの位置を固定する(図14)。
【0080】
[ステップS10]
次に、未加工レンズ10L,10Rが取付けられたレンズ保持具13を染色装置9に取り付ける。このときレンズ保持具13の取手15をロッド14の支持部14A(図1)に引っ掛ける。なお、昇降部材16の原点位置における支持部14Aと染色槽11の液面高さ位置は予め所定の値になるように設定されている。
【0081】
[ステップS11]
レンズ保持具13の装着が終了すると、制御コンピュータ8はサーバ7より取り出した染色装置制御データにしたがって、染色装置9の制御装置21に制御データを送り、これにしたがって制御装置21が駆動モータ17を駆動してロッド14を下降させ、未加工レンズ10L,10Rとレンズ保持具13を洗浄液12に浸漬して染色する。浸漬最大深さに達したらロッド14を上昇させ未加工レンズ10L,10Rを染色液から取り出す。
【0082】
[ステップS12]
未加工レンズ10L,10Rへの染色が終了すると、レンズ保持具13は支持部14Aから外され、未加工レンズ10L,10Rがレンズ保持具13から取り外される。レンズ保持具13から取り外された未加工レンズ10L,10Rは、染色濃度測定装置(透過率測定装置)に搬送される。染色濃度測定装置は、各未加工レンズ10L,10Rの
玉形形状における染色濃度検査位置(垂直中心線33v上または垂直中心線から所定の距離の位置)の染色濃度を測定し、染色が正しく行われているか否かを検査する。詳細な手順は後述する。
【0083】
[ステップS13]
染色濃度検査測定位置での染色濃度が染色濃度許容範囲内にあるときは合格と判定され、合格と判定された未加工レンズ10については、未加工レンズ上に想定される玉形形状30の通り玉形加工し、加工レンズ42を製作する。
【0084】
[ステップS14]
玉形加工によって製作された加工レンズ42は、レンズだけがオーダされている場合はそのまま発注元に送られ、眼鏡フレームもオーダされている場合や取付ける眼鏡フレームも送られてきている場合は、その眼鏡フレームに取付けて眼鏡を完成し発注元に送られる。
【0085】
図15は染色濃度測定装置の概略構成図、図16は同装置の被検レンズ装着部の斜視図である。
図15において、未加工レンズ10に染色された染色濃度を測定し、正しく染色されているか否かを検査する染色濃度測定装置110は、未加工レンズ(以下、被検レンズという)10を透過する測定光111の透過率を測定することにより染色濃度を測定するものである。そして、この染色濃度測定装置110は、光源112と、この光源112から発せられた測定光111を被検レンズ10に照射する測定光照射部113と、所定の測定位置に未加工レンズ10を保持する被検レンズ保持部114と、被検レンズ10を透過した測定光111の透過率を測定する透過率測定部115とを備えている。
【0086】
前記光源112としては、測定目的の波長の光を多く含む光を出射できる発光体、例えば、冷陰極管、蛍光灯、白熱ランプ、ハロゲン電球、HIDランプなどが用いられる。
【0087】
測定光照射部113は、光源112から出射された光から不要な光束をカットし光束を絞るピンホール板116と、このピンホール板116により絞られた測定光111を測定位置に収束させる光学系(レンズ)117とを備えている。
【0088】
被検レンズ保持部114は、被検レンズ10を着脱自在に保持し、被検レンズ上に想定される玉形形状30の垂直中心線33vまたは垂直中心線から所定の距離の位置を測定位置に合わせた状態で保持する機能を有する。詳細については、後述する。
【0089】
透過率測定部115は、測定目的の波長付近の光のみを透過させる干渉フィルター120と、この干渉フィルター120を通過した光を収束させるレンズ121と、このレンズ121によって収束された光を受光する受光センサ122と、この受光センサ122からの検出信号に基づいて被検レンズ0の透過率を算出する演算処理部123とを備えている。
【0090】
前記干渉フィルター120は、測定波長に応じて適宜選択されるもので、異なる干渉フィルターを適宜切り替えられるようにしてもよい。
【0091】
前記受光センサ122としては、測定光111を検出し、その光量に対応する電圧を出力する光電センサが用いられる。例えば、フォトダイオード、フォトトランジスタ、Cdsセル等が使用される。
【0092】
前記演算処理部123は、被検レンズ10が被検レンズ保持部114に装着されたときにおける受光センサ122の出力電圧もしくは電力と、被検レンズが被検レンズ保持部114に装着されていないときにおける受光センサ122の出力電圧もしくは電力とを求め、両者の比を求めることによって透過率を算出する。なお、この例では受光センサ122によって簡易に測定する装置の例を示したが、光検出系はこれに限定せず、例えば積分球を用いるものであってもよい。
【0093】
図16において、染色濃度測定装置110の被検レンズ保持部114は、被検レンズ10を保持し濃度測定位置Pに搬送するための機構部分であって、ケース130と、このケース130に出没自在に設けられ被検レンズ10を濃度測定位置Pに搬送する搬送機構131とを備えている。
【0094】
前記ケース130は、一端開放の箱型に形成されており、その開放部分が前記搬送機構131を出し入れする開口部135を形成している。また、ケース130の上下面には前記測定光111が通過する測定光通過孔136,137が軸線を一致させてそれぞれ形成されている。ケース130の内部で透孔136,137の間の空間部分は、被検レンズ10の染色濃度を測定する際の濃度測定位置Pを形成している。
【0095】
前記搬送機構131は、左右一対の引き出しレール138と、これらのレール138の前端に設けられた前面蓋140と、前記一対の引き出しレール138間に横架された第1のステージ141と、この第1のステージ141に前後移動自在に搭載された第2のステージ142とを備えている。
【0096】
一対の引き出しレール138は、ケース130の内側面に設けたローラ(図示せず)に沿って移動することによりケース130に引き出し自在に支持されている。ケース130の開口部135は、搬送機構131がケース130内に収納されると前記前面蓋140によって閉じられる。
【0097】
前記第1のステージ141は、上面の幅方向中央に形成されたスライド溝143と、上下面に貫通して形成され前記測定光111が透過する透孔144とを有している。スライド溝143は、第1のステージ141の前後方向全長にわたって形成されている。透孔144は、スライド溝143の底面後端部寄りに形成され、スライド溝143の溝幅より小さい孔幅を有している。この透孔144の中心は、搬送機構131がケース130に収納されると、前記濃度測定位置Pの直下に位置する。
【0098】
また、第1のステージ141の上面後端部寄りには、測定時に測定光111の前後方向位置を示す測定位置基準マーク146が表示されている。このマーク146は、前記透孔144の中心を通る左右方向の直線からなり、前記スライド溝143の両側に表示されている。また、この測定位置基準マーク146の前後には、所定間隔に目盛り線160a,160b,160c,160dが表示されている(ただし、図17では図示を省略)。この目盛り線160a,160b,160c,160dは、玉形形状における垂直中心線上に染色濃度変化領域が存在しない場合のように、染色濃度検査位置として垂直中心線が適切ではない場合に、染色濃度検査位置を垂直中心線から所定距離ずらすために使用する目盛りである。この測定位置基準マーク146と目盛り線160a,160b,160c,160dの使い方は後述する。
【0099】
さらに、第1のステージ141には、第2のステージ142を第1のステージ141に固定する手段としての固定ねじ148が設けられている。
【0100】
前記第2のステージ142は、前記スライド溝143に摺動自在に配設されており、前端側には前後方向に長い左右一対のガイド穴156が形成され、後端側には同じく前後方向に長穴157が形成されている。長穴157は、第2のステージ142の幅方向中央に形成されて後端が第2のステージ142の後端面に開放しており、前記第1のステージ141の透孔144に連通している。また、第2のステージ142は、被検レンズ10を所定の位置に位置決めする位置決め機構147を備えている。
【0101】
前記位置決め機構147は、第2のステージ142の上面前端部側に前後方向に移動自在に配設された押圧部材150と、この押圧部材150に対向するように第2のステージ142の上面後端部に一体に突設された受け部151と、押圧部材150を受け部151側に付勢する付勢手段としての圧縮コイルばね152と、押圧部材150に設けられた2本のガイドピン153とを備えている。ガイドピン153の下端部は、前記押圧部材150の下方に突出し、前記ガイド穴156に摺動自在に挿入されている。前記被検レンズ10は、第2のステージ142の上面で押圧部材150と受け部151との間の部分に載置される。押圧部材150は、被検レンズ10が第2のステージ142上に設置されると、圧縮コイルばね152のばね力によって被検レンズ10を押圧し受け部151に押し付けるように構成されている。押圧部材150と受け部151の互いに対向し被検レンズ10を挟持する面は、被検レンズ10を安定した状態で挾持し得るように、レンズの曲率半径より大きい曲率半径の凹面に形成されている。
【0102】
次に、被検レンズを染色濃度測定装置に設置するときの位置合わせについて説明する。
はじめに被検レンズ10をその玉形形状における垂直中心線が測定位置基準マーク146と平行になるように第2ステージ上に取付ける。この被検レンズ10の染色濃度検査位置が垂直中心線上である場合は、垂直中心線が測定位置基準マーク146上にくるように第2ステージの位置を調整する。また、染色濃度検査位置が垂直中心線から所定距離離れた位置である場合は、前記目盛り線を用いて、その染色濃度検査位置を測定位置基準マークの位置に合わせる。例えば前記染色加工データプログラムにより染色濃度検査位置が+1と決定された場合は、未加工レンズ上の垂直中心線を+1の目盛り線160bに合わせるように第2ステージの位置を調節する。これにより、一目盛り分だけ垂直中心線から離れた位置を濃度測定位置Pに配置することができる。
【0103】
次に、染色濃度測定装置110を用いて被検レンズ10の染色濃度を測定する手順を説明する。以下の手順は、染色濃度検査位置が垂直中心線上の場合である。
[ステップS100]
まず、染色が完了した被検レンズ10を第2のステージ142に載せる。次に、押圧部材150を圧縮コイルばね152のばね力によって被検レンズ10に押し付け、押圧部材150と受け部151とで被検レンズ10を挟持する。このとき、被検レンズの垂直中心線方向が、第1のステージ141に設けられた測定位置基準マーク146によって特定される方向と平行になるように被検レンズ10を第2のステージ142に設置する。すなわち、被検レンズ10を第2のステージ142に設置する際には、被検レンズ10に想定される玉形形状における垂直中心線33vを特定する印である垂直中心位置マークM1 とM2 (またはm1 とm2 )を結ぶ線が測定位置基準マーク146によって特定される方向と平行になるように設置する(図17(a))。
【0104】
[ステップS101]
次に、被検レンズ10に施された前記垂直中心位置マークM1 とM2 によって特定される垂直中心線33vが、第1のステージ141に表示されている測定位置基準マーク146と一致するように第2のステージ142をスライド溝143に沿って移動させる(図17(b))。
なお、第2のステージ142の幅は被検レンズの幅より狭く設定することにより、前記垂直中心位置マークを前記測定位置基準マーク146に重ね合わせるのを容易にしている。
【0105】
[ステップS102]
垂直中心位置マークM1 とM2 を結ぶ仮想線である垂直中心線33vが第1のステージ141の測定位置基準マーク146と一致したら、止めねじ148を締め付けて第2のステージ142を第1のステージ141に固定する。
【0106】
[ステップS103]
次に、搬送機構131をケース130内に押し込み、前面蓋140でケース開口部135を閉じる。搬送機構131をケース130内に所定量挿入すると、測定位置基準マーク146が濃度測定位置Pと一致し、被検レンズ10の被検レンズ保持部114への装着を終了する(図17(c))。
【0107】
[ステップS104]
被検レンズ10が濃度測定位置Pに設置されると、染色濃度測定装置110を動作させて光源112を点灯し、その測定光11を被検レンズ10に照射することにより染色濃度が測定される。染色濃度測定装置110は、測定光11を被検レンズ10の玉形形状垂直中心線33v上に照射し、染色濃度を測定する。
【0108】
[ステップS105]
染色濃度測定装置110によって測定された染色濃度が予め定められた許容範囲内であれば、被検レンズ10を合格品と判定して次工程に搬送し、玉形形状に玉形加工することにより加工レンズ42を製作する。一方、染色濃度が許容範囲外であれば不良品として判定し、再度染色をやりなおす。
【0109】
なお、本発明は縦染色の場合に適用した例について説明したが、斜め染色にも適用可能である。この場合は、染色濃度変化方向に垂直な染色濃度変化終了位置を未加工レンズ10上の玉形形状データにおけるボクシング中心位置33bc(図2)を基準に決定し、染色濃度が前記染色濃度変化終了位置まで連続的に低下するように染色するとよい。
【0110】
以上のように、本発明によれば、レンズのレイアウトが左右で異なる場合であっても、左右対称に染色することができ、ファッション性の高い縦染色の眼鏡用レンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明による染色方法を実施するための染色装置を含む染色システムと発注システムの構成の一例を示す図である。
【図2】未加工レンズと玉形形状データの関係を示す説明図である。
【図3】本発明により縦染色を施した加工レンズを組み付けた眼鏡の正面図である。
【図4】未加工レンズに縦染色を施した図である。
【図5】レンズ保持具の第1の実施の形態を示す斜視図である。
【図6】同レンズ保持具の正面図である。
【図7】レンズ保持具の第2の実施の形態を示す正面図である。
【図8】玉形形状を表示したチャートを示す図である。
【図9】未加工レンズに表示される光学中心と印点を示す図である。
【図10】未加工レンズと玉形形状およびチャートを示す図である。
【図11】未加工レンズと玉形形状およびチャートを示す図である。
【図12】未加工レンズに表示される垂直中心位置マークを示す図である。
【図13】レンズ保持具への未加工レンズの取付けを説明するための図である。
【図14】レンズ保持具に未加工レンズを取付けた状態を示す図である。
【図15】染色濃度測定装置の概略構成図である。
【図16】同測定装置の被検レンズ保持部の概略斜視図である。
【図17】被検レンズを濃度測定位置に装着する手順を説明するための図である。
【符号の説明】
【0112】
9…染色装置、10…眼鏡用レンズ、11…染色槽、12…染色液、13…レンズ保持具、30…玉形形状データ、33v…垂直中心線、52A,52Bレンズ保持部、80…表示部、110…染色濃度測定装置、141…第1のステージ、142…第2のステージ、146…測定位置基準マーク、El,Er…染色濃度変化終了位置、M1 ,M2 ,m1 ,m2 …垂直中心位置マーク(印)、P…濃度測定位置。
【出願人】 【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹

【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹


【公開番号】 特開2008−9327(P2008−9327A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−182401(P2006−182401)