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【発明の名称】 走査光学装置
【発明者】 【氏名】室谷 拓

【要約】 【課題】熱衝撃対策に有効である「ロータ周りのみで固定したモータ基板」において、初期の組み付けによって発生する軸倒れ量を低減する。

【構成】光学箱に工具を挿入するための貫通穴が設け、モータ基板端部を挿入された工具で支持する構成とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光ビームを偏向走査する回転多面鏡と、該回転多面鏡と共に回転する回転部材と、前記回転部材を駆動させるための回路基板を有した偏向装置と、該偏向装置を取り付けるための固定部を前記回転部材近傍に2箇所設けた光学箱とを有する走査光学装置において、
前記光学箱は前記回転部材から離れた位置にあって、前記回路基板と対向する面に貫通穴を設けており、該貫通穴の上部に位置する前記回路基板には、電気部品や回路を実装しない非回路実装部を設けたことを特徴とする走査光学装置。
【請求項2】
前記偏向装置を一時的に支持するための受け部材を前記貫通穴から挿入し、前記偏向装置を前記受け部材と前記固定部とによって支持した後に、前記固定部へビスで締結することを特徴とする請求項1に記載の走査光学装置。
【請求項3】
前記偏向装置は、前記非回路実装部を押圧する押圧手段と前記受け部材とによって挟み込んだ後に、前期固定部へビスで締結することを特徴とする請求項1又は、請求項2に記載の走査光学装置。
【請求項4】
前記受け部材は、前記固定部との相対高さを調整することが可能であり、前記回転部材の傾き量を検知しつつ、前記偏向装置を前記固定部へ取り付けたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の走査光学装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザビームプリンタやデジタル複写機、デジタルFAX等に使用される走査光学装置に関するものであって、更に詳しくは光源からの光ビームを偏向して被照射体上を走査する走査光学装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年光学系として用いられる走査光学装置は、より小型で低価格な構成が要求されている。この種の小型で低価格な走査光学装置として、図6に示すように偏向装置112の回路基板101を略長方形の板状にして短手方向の基板長さを回転部材であるロータ102の直径と略同等の長さまで小さくする構成が知られている。これらの走査光学装置は、光源である半導体レーザ103から発生されたレーザ光がコリメータレンズ104によって平行化され、シリンドリカルレンズ105によって偏向走査手段である回転多面鏡106の反射面に線状に集光され、結像レンズ107、108を経て、光学箱109の窓から図示しない回転ドラムに向かって取り出される。回転多面鏡106や結像レンズ107、108は筐体である光学箱109に収容され、回転多面鏡106を回転させる偏向装置112は光学箱109の底面にネジ110a,110bで止められる。
【0003】
回転多面鏡106を備えた偏向装置112は、光学箱109に軸受を介して支承された回転軸111と、回転軸111と一体である座金に結合されたヨークおよびロータマグネットからなる回転部材であるロータ102と、軸受ハウジングと一体である回路基板101に固定されたステータコイル等を有する。回路基板101上の駆動回路から供給された駆動電流によってステータコイルが励磁されると、回転多面鏡106と共に高速度で回転し、前述のように回転多面鏡106に照射された光ビームを偏向走査する。
【0004】
また、走査光学装置における偏向装置の光学箱への取り付け方法は、走査光学装置の保管環境や動作時の画像形成装置内の機内昇温、特にヒートサイクルや熱衝撃によって発生する偏向装置の回転軸の傾きを低減して、画像品質の劣化を防ぐことを目的として、偏向装置の光学箱へ取り付ける固定部を回転部材であるロータ近傍に配置し、固定部を2箇所のみ設けた構成がある。
【0005】
又、別の従来例としては、特許文献1をあげることが出来る。
【特許文献1】特開2003-295099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述した従来の技術によれば、走査光学装置を小型化するために、偏向装置の回路基板を略長方形にして、短手方向の基板長さを回転部材であるロータの直径と略同等の長さまで小さくしているが、回路基板の大きさが小さくなると偏向装置を光学箱へ取り付ける際の姿勢が不安定になる恐れがある。更に、偏向装置の固定部を回転部材であるロータ近傍に2箇所設けた構成は、固定部間の距離が短く、偏向装置を光学箱へ取り付ける際の姿勢が不安定な状態になることが懸念される。偏向装置の姿勢が不安定になり、回路基板が傾いた状態でビスを締結することになると、ビス締結終了後も偏向装置に傾きが残り、偏向装置の回転軸および回転多面鏡の反射面に傾きを発生させて、所望のビーム形状に歪を生じさせたり、被照射体上で走査線の曲がりを発生させたりして、画像品質を悪化させることになる。
【0007】
そこで本発明は、上記従来技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、略長方形の小型な偏向装置の回転基板を光学箱へ2箇所で固定する場合でも、偏向装置を光学箱へ取り付ける際の姿勢を一定にさせて、偏向装置の回転軸が傾いたまま光学箱へビスで固定されることを防止し、安定した光学特性が得られ、良好な印字精度である走査光学装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本出題に係る発明は、
光源から出射された光ビームを偏向走査する回転多面鏡と、該回転多面鏡と共に回転する回転部材と、前記回転部材を駆動させるための回路基板を有した偏向装置と、該偏向装置を取り付けるための固定部を前記回転部材近傍に2箇所設けた光学箱とを有する走査光学装置において、前記光学箱は前記回転部材から離れた位置にあって、前記回路基板と対向する面に貫通穴を設けており、該貫通穴の上部に位置する前記回路基板には、電気部品や回路を実装しない非回路実装部を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、前記偏向装置を一時的に支持するための受け部材を前記貫通穴から挿入し、前記偏向装置を前記受け部材と前記固定部とによって支持した後に、前記固定部へビスで締結するとよい。
【0010】
また、前記偏向装置は、前記非回路実装部を押圧する押圧手段と前記受け部材とによって挟み込んだ後に、前期固定部へビスで締結するとよい。
【0011】
更には、前記受け部材は、前記固定部との相対高さを調整することが可能であり、前記回転部材の傾き量を検知しつつ、前記偏向装置を前記固定部へ取り付けるとよい。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、光学箱に設けた2箇所の固定部へ偏向装置を取り付ける際に、光学箱に設けた貫通穴を通して偏向装置の受け部材を挿入することが容易にでき、2箇所で支持された偏向装置に3箇所目の支持部を新たに設けることが簡単な構成で可能となる。これによって、偏向装置の姿勢を安定させて偏向装置の回転軸が傾くことを防止することができ、被照射体上で所望のビーム形状を形成して、安定した光学特性が得られ、高精度な印字品質を得ることができる走査光学装置を提供することができるという効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の詳細を実施例の記述に従って説明する。
【0014】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、その相対配置などは特に特定的な記載が無い限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。また各図の符号において、同一の符号は同一の部材を表している。
【0015】
(本発明の実施形態)
図1a,図1bは、本発明の実施形態における走査光学装置について説明したものである。
【0016】
光源である図示しない半導体レーザから発生された光ビームは、コリメータレンズ6によって平行化され、シリンドリカルレンズ7によって回転多面鏡1の反射面に線状に集光され、結像レンズ2、3を経て、光学箱4の窓から回転ドラムに向かって取り出される。回転ドラム上の感光体に結像する走査光は、回転多面鏡1による主走査と回転ドラムの回転による副走査に伴って静電潜像を形成する。回転多面鏡1や結像レンズ2、3は筐体である光学箱4に収容され、半導体レーザを保持した光源ユニット5は、光学箱4の側壁等に組み付けられる。回転多面鏡1を回転駆動させる偏向装置8は、図示しない液体の軸受等を介して支承された回転軸9と、回転軸9と一体である座金に結合された回転部材であるロータ10と、軸受ハウジングと一体である回路基板11等を有する。回路基板11は、回転を制御するための駆動用IC12やコネクタ13等を実装する制御部を有する略長方形の板状であり、光学箱4の底部に設けた固定部15a、15bにビス16a、16bで止められる。また固定部15a、15bは、回転部材であるロータ10近傍に有しており、それぞれが光学箱4に円形の座面として設けられている。一方、光学箱4の底部の前記ロータ10近傍から離れた位置には、貫通穴14を有していて、偏向装置8の回路基板11の前記貫通穴14に相当する位置には、電気部品や回路部等を配置しない非回路実装部21が設けられている。偏向装置8を光学箱4へ取り付ける際に、まず偏向装置8を支持する受け部材17が貫通穴14を通して挿入される。偏向装置8の回路基板11は、固定部15a、15bと受け部材17との3箇所で支持して、ビス16a,16bで固定部15a、15bに固定され、その後受け部材17は貫通穴14から退避する。
【0017】
偏向装置8を回転部材であるロータ10近傍の2箇所15a、15bのみで固定した場合は、偏向装置8に傾きが発生する。傾き発生の現象について、図2a,図2bで説明する。
【0018】
略長方形である回路基板11を備えた偏向装置8を光学箱4に設けた固定部15a、15bの2箇所に取り付けた場合、偏向装置8は、固定部15a,15b間の距離Lが短く、また回路基板11が略長方形の板状であるため、偏向装置8の自重によって回路基板11の下に受け部を設けていない15c部において矢印A方向への倒れが発生する。矢印A方向の倒れは、偏向装置8の回転軸9に傾きを発生させて、回転軸9に傾きが残った状態でビス16a、16bが締結されることになり、ビス16a、16b締結後の回転軸9の傾きにばらつきを生じさせる。また、ビス16a、16bが締結される最後に、回路基板11がビス16a、16bの連れ回りにより、軸受保持部18と光学箱の勘合部19とが干渉することにより、軸受保持部18にラジアル方向の力Fが発生し、これに伴って偏向装置8の回転軸9が傾くことになる。発生した回転軸9の傾きは、レーザ光のスポット形状を崩し、走査線に曲がりを発生させる原因となり、回転軸9の傾きのばらつきは、走査光学装置の品質を不安定にさせる要因となる。
【0019】
そこで、上述した図1a,図1bの形態を用いると以下の効果が得られる。
【0020】
図1a,図1bの構成では、偏向装置を光学箱へ取り付ける際、偏向装置の回路基板を3箇所で一時的に支持することが容易に可能となり、図3aに示すように、偏向装置8を支持する支持点間の距離Lが長くなると同時に、各支持点を結んでできる面Mで回路基板11を受けることになり、偏向装置8の姿勢が安定して、偏向装置8の回転軸9に発生する傾きを低減することができる。図3bは、偏向装置を光学箱へ取り付けたときに発生する偏向装置の回転軸の傾き量をオートコリメータにて測定した結果である。本実施形態の構成図1a,図1bを用いたときと従来例図6の構成を用いたときでは、偏向装置の回転軸の傾き量とそのばらつきに差があることが分かる。よって本発明の実施形態を用いると、偏向装置の回転軸の傾きを低減し、安定させることができると確認することができた。
【0021】
次に、本発明における実施形態の変形例について図4で説明する。
【0022】
本変形例では、実施形態図1a、図1bの構成に加えて、押圧棒20を回路基板11上面側に設けている。押圧棒20は、偏向装置を支える受け部材17に同軸上で対向して配置し、回路基板11に対して垂直方向に駆動降下させ、回路基板11を回路基板下部の受け部材17とで挟み込む構成となっている。また、押圧棒20は、回路基板11の回路を実装していない非回路実装部21を加圧することで、回路基板11を付勢している。押圧棒20と受け部材17の個数は1つに限定するものではなく、複数設けていてもよい。
【0023】
本変形例を用いると、押圧棒20と受け部材17とで回路基板11を挟持した状態で保持してビス16a,16bの締結を行うことにより、ビス締結時の連れ回りを防ぎ、ラジアル方向の力Fが軸受保持部材18に掛かることを防止することができ、より一層回転軸9の傾きを防止することが可能となり、所望のスポット形状と走査線を得ることができ、画像品質を向上させることができる。
【0024】
更に、本発明における実施形態の第2の変形例について説明する。
【0025】
偏向装置8を光学箱4へ取り付ける際、図1a,図1bで説明したように、まず貫通穴14を通して偏向装置8を支持する受け部材17が挿入され、偏向装置8の回路基板11を固定部15a,15bと受け部材17との3箇所で支持する。そして、図5に示すように、ビス16a,16b締結前に、偏向装置8の回転中である回転軸9の傾き変化量を、回転多面鏡1、ロータユニット10、回転軸9の少なくともいずれかの上面の鏡面となっている部分をオートコリメータ22で定量的に測定する。測定によって、回転軸9の傾き量および傾き方向を判定し、受け部材が上下駆動して固定部15a,15bとの相対高さを調整する。ビス16a,16b締結前に、回転軸9の傾き量を低減させて偏向装置8の姿勢を安定させた状態を作り、その後ビス16a,16bを締結する。これによって、回転軸9の傾きを低減すると共に、回転軸9の傾き方向のばらつきを安定させることができる。特に回転軸9の傾きの影響が大きく出る、回転多面鏡1へのレーザ入射方向と結像レンズ2,3の光軸との2等分線方向Tと略一致する方向に回転軸9の傾きが発生しないように、受け部材を用いて偏向装置の姿勢を一定にすることで、その効果を十分に発揮することができる。また、偏向装置8取り付け後には、受け部材17を貫通穴14から退避させ、回転軸9の傾き量をオートコリメータ22で測定し、傾き方向の自動判定を行ことで、不良品の抽出を防ぐことも可能となり、かつ原因対処が迅速に行え、品質を維持および安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】a,bは本発明の実施形態を説明した図。
【図2】a,bは本発明との比較で、従来の偏向装置固定方法で発生する回転軸の傾きを説明した図。
【図3a】本発明の実施形態を説明した図。
【図3b】筆者らの回転軸の傾き量を検討した結果を示した図。
【図4】a,bは本発明の実施形態における第1の変形例を説明した図。
【図5】本発明の実施形態における第2の変形例を示した図。
【図6】従来例を説明した図。
【符号の説明】
【0027】
4 光学箱
8 偏向装置
9 回転軸
10 回転部材(ロータ)
11 回路基板
14 貫通穴
15a、15b 固定部
17 受け部材
20 押圧部材
21 回路費実装部
22 オートコリメータ
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100090538
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 恵三

【識別番号】100096965
【弁理士】
【氏名又は名称】内尾 裕一


【公開番号】 特開2008−3231(P2008−3231A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171491(P2006−171491)