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【発明の名称】 防眩フィルム及び画像表示装置
【発明者】 【氏名】古谷 勉

【氏名】岡村 麻利

【氏名】桑原 真人

【要約】 【課題】防眩性能に優れ、低ヘイズの防眩フィルムを提供し、それを画像表示装置に適用する。

【構成】表面に凹凸を有し、30゜入射光に対し、反射角30゜の反射率R(30)が0.04〜0.2%、反射角40゜の反射率が0.005〜0.02%、反射角50゜の反射率が0.0015%以下で、かつ以下の(1)〜(7)のいずれかを満たす防眩フィルム。(1)反射角35°の反射率をR(35)として、R(35)/R(30)が0.4〜0.8;(2)凹凸面の算術平均高さPaが0.09〜0.21μm;(3)凹凸面の最大断面高さPtが0.5〜1.2μm;(4)凹凸面の平均長さPSmが12〜20μm;(5)凹凸面各点の標高ヒストグラムにおけるピークが高さ50%を中心に±10%以内の範囲に存在;(6)200×200μmの領域に150〜350個の凸部を保有;(7)凸部頂点を母点とするボロノイ分割多角形の平均面積が100〜300μm2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に微細な凹凸が形成されてなる防眩フィルムであって、
入射角30゜で入射した光に対し、反射角30゜の反射率R(30)が 0.04%以上0.2%以下で、反射角40゜の反射率R(40)が 0.005%以上0.02%以下で、反射角50゜の反射率R(50)が 0.0015%以下であり、かつ
入射角30゜で入射した光に対し、反射角35°の方向における反射率をR(35)として、R(35)/R(30)の値が0.4以上0.8以下であることを特徴とする防眩フィルム。
【請求項2】
表面に微細な凹凸が形成されてなる防眩フィルムであって、
入射角30゜で入射した光に対し、反射角30゜の反射率R(30)が 0.04%以上0.2%以下で、反射角40゜の反射率R(40)が 0.005%以上0.02%以下で、反射角50゜の反射率R(50)が 0.0015%以下であり、かつ
フィルム凹凸表面の任意の断面曲線における算術平均高さPaが0.09μm以上0.21μm 以下であることを特徴とする防眩フィルム。
【請求項3】
表面に微細な凹凸が形成されてなる防眩フィルムであって、
入射角30゜で入射した光に対し、反射角30゜の反射率R(30)が 0.04%以上0.2%以下で、反射角40゜の反射率R(40)が 0.005%以上0.02%以下で、反射角50゜の反射率R(50)が 0.0015%以下であり、かつ
フィルム凹凸表面の任意の断面曲線における最大断面高さPt が0.5μm以上1.2μm以下であることを特徴とする防眩フィルム。
【請求項4】
表面に微細な凹凸が形成されてなる防眩フィルムであって、
入射角30゜で入射した光に対し、反射角30゜の反射率R(30)が 0.04%以上0.2%以下で、反射角40゜の反射率R(40)が 0.005%以上0.02%以下で、反射角50゜の反射率R(50)が 0.0015%以下であり、かつ
フィルム凹凸表面の任意の断面曲線における平均長さPSm が12μm以上20μm以下であることを特徴とする防眩フィルム。
【請求項5】
表面に微細な凹凸が形成されてなる防眩フィルムであって、
入射角30゜で入射した光に対し、反射角30゜の反射率R(30)が 0.04%以上0.2%以下で、反射角40゜の反射率R(40)が 0.005%以上0.02%以下で、反射角50゜の反射率R(50)が 0.0015%以下であり、かつ
フィルム凹凸表面における各点の標高をヒストグラムで表したときに、ヒストグラムのピークが、最高点(高さ100%)と最低点(高さ0%)の中間点(高さ50%)を中心に±10%以内の範囲に存在することを特徴とする防眩フィルム。
【請求項6】
表面に微細な凹凸が形成されてなる防眩フィルムであって、
入射角30゜で入射した光に対し、反射角30゜の反射率R(30)が 0.04%以上0.2%以下で、反射角40゜の反射率R(40)が 0.005%以上0.02%以下で、反射角50゜の反射率R(50)が 0.0015%以下であり、かつ
200μm ×200μm の領域内に150個以上350個以下の凸部を有することを特徴とする防眩フィルム。
【請求項7】
表面に微細な凹凸が形成されてなる防眩フィルムであって、
入射角30゜で入射した光に対し、反射角30゜の反射率R(30)が 0.04%以上0.2%以下で、反射角40゜の反射率R(40)が 0.005%以上0.02%以下で、反射角50゜の反射率R(50)が 0.0015%以下であり、かつ
フィルム表面凹凸の凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の平均面積が100μm2以上300μm2以下であることを特徴とする防眩フィルム。
【請求項8】
垂直入射光に対するヘイズが3%以上20%以下である請求項1〜7のいずれかに記載の防眩フィルム。
【請求項9】
暗部と明部の幅が0.5mm、1.0mm及び2.0mm である3種類の光学くしを用いて光の入射角45°で測定される反射鮮明度の和が30%以下である請求項1〜8のいずれかに記載の防眩フィルム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の防眩フィルムと、画像表示素子とを備え、該防眩フィルムが画像表示素子の視認側に配置されていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた防眩性能を示しながらヘイズの低い防眩(アンチグレア)フィルム、及びその防眩フィルムを備えた画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイパネル、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の画像表示装置は、その表示面に外光が写り込むと視認性が著しく損なわれてしまう。このような外光の映り込みを防止するために、画質を重視するテレビやパーソナルコンピュータ、外光の強い屋外で使用されるビデオカメラやデジタルカメラ、反射光を利用して表示を行う携帯電話等においては、従来から画像表示装置の表面に外光の映り込みを防止するフィルム層が設けられていた。このフィルム層は、光学多層膜による干渉を利用した無反射処理が施されたフィルムからなるものと、表面に微細な凹凸を形成することにより入射光を散乱させて映り込み像をぼかす防眩処理が施されたフィルムからなるものとに大別される。このうち、前者の無反射フィルムは、均一な光学膜厚の多層膜を形成する必要があるため、コスト高になる。これに対して後者の防眩フィルムは、比較的安価に製造することができるため、大型のパーソナルコンピュータやモニタ等の用途に広く用いられている。
【0003】
このような防眩フィルムは従来から、例えば、フィラーを分散させた樹脂溶液を基材シート上に塗布し、塗布膜厚を調整してフィラーを塗布膜表面に露出させることでランダムな凹凸をシート上に形成する方法などにより製造されている。しかしながら、このようなフィラーを分散させることにより製造された防眩フィルムは、樹脂溶液中のフィラーの分散状態や塗布状態等によって凹凸の配置や形状が左右されてしまうため、意図したとおりの凹凸を得ることが困難であり、ヘイズが低いものでは十分な防眩性能が得られないという問題があった。さらに、このような従来の防眩フィルムを画像表示装置の表面に配置した場合、散乱光によって表示面全体が白っぽくなり、表示が濁った色になる、いわゆる白ちゃけが発生しやすいという問題があった。また、最近の画像表示装置の高精細化に伴って、画像表示装置の画素と防眩フィルムの表面凹凸形状が干渉し、結果として輝度分布が発生して見にくくなる、いわゆるギラツキ現象が発生しやすいという問題もあった。
【0004】
一方、フィラーを含有させずに、透明樹脂層の表面に形成された微細な凹凸だけで防眩性を発現させる試みもある。例えば、特開 2002-189106号公報(特許文献1)には、エンボス鋳型と透明樹脂フィルムとの間に電離放射線硬化性樹脂を挟んだ状態で当該電離放射線硬化性樹脂を硬化させることにより、三次元10点平均粗さ及び、三次元粗さ基準面上における隣接する凸部どうしの平均距離が、それぞれ所定値を満足する微細な凹凸を形成させ、その凹凸が形成された電離放射線硬化性樹脂層を前記透明樹脂フィルム上に設けた形の防眩フィルムが開示されている。
【0005】
また、表示装置の表示面に配置される防眩フィルムではなく、液晶表示装置の背面側に配置される光拡散層として、表面に微細な凹凸が形成されたフィルムを用いることも、例えば、特開平 6-34961号公報(特許文献2)、特開 2004-45471 号公報(特許文献3)、特開 2004-45472 号公報(特許文献4)などに開示されている。
【0006】
フィルムの表面に凹凸を形成する手法として、上記特許文献3や特許文献4には、凹凸を反転させた形状を有するエンボスロールに電離放射線硬化性樹脂液を充填し、充填された樹脂にロール凹版の回転方向に同期して走行する透明基材を接触させ、透明基材がロール凹版に接触しているときに、ロール凹版と透明基材との間にある樹脂を硬化させ、硬化と同時に硬化樹脂と透明基材とを密着させた後、硬化後の樹脂と透明基材との積層体をロール凹版から剥離する方法が開示されている。
【0007】
このような手法では、用いることのできる電離放射線硬化性樹脂液の組成が限られ、また溶媒で希釈して塗布したときのようなレベリングが期待できないことから、膜厚の均一性に課題があることが予想される。さらに、エンボスロール凹版に直接樹脂液を充填する必要があることから、凹凸面の均一性を確保するためには、エンボスロール凹版に高い機械精度が要求され、エンボスロールの作製が難しいという課題があった。
【0008】
次に、表面に凹凸を有するフィルムの作製に用いられるロールの作製方法として、例えば、前記特許文献2には、金属等を用いて円筒体を作り、その表面に、電子彫刻、エッチング、サンドブラストなどの手法により凹凸を形成する方法が開示されている。また、特開 2004-29240 号公報(特許文献5)には、ビーズショット法によってエンボスロールを作製する方法が開示されており、特開 2004-90187 号公報(特許文献6)には、エンボスロールの表面に金属めっき層を形成する工程、金属めっき層の表面を鏡面研磨する工程、鏡面研磨した金属めっき層面に、セラミックビーズを用いてブラスト処理を施す工程、さらに必要に応じてピーニング処理をする工程を経て、エンボスロールを作製する方法が開示されている。
【0009】
このようにエンボスロールの表面にブラスト処理を施したままの状態では、ブラスト粒子の粒径分布に起因する凹凸径の分布が生じるとともに、ブラストにより得られるくぼみの深さを制御することが困難であり、防眩機能に優れた凹凸の形状を再現性良く得ることに課題があった。
【0010】
また、前記特許文献1には、好ましくは鉄の表面にクロムめっきしたローラーを用い、サンドブラスト法やビーズショット法により凹凸型面を形成することが記載されている。さらに、このように凹凸が形成された型面には、使用時の耐久性を向上させる目的で、クロムめっきなどを施してから使用することが好ましく、それにより硬膜化及び腐食防止を図ることができる旨の記載もある。一方、前記特許文献3や特許文献4のそれぞれ実施例には、鉄芯表面にクロムめっきし、#250の液体サンドブラスト処理をした後に、再度クロムめっき処理して、表面に微細な凹凸形状を形成することが記載されている。
【0011】
このようなエンボスロールの作製法では、硬度の高いクロムめっき上にブラストやショットを行うため、凹凸が形成されにくく、しかも形成された凹凸の形状を精密に制御することが困難であった。また、特開 2004-29672 号公報(特許文献7)にも記載されるとおり、クロムめっきは、下地となる材質及びその形状に依存して表面が荒れることが多く、ブラストにより形成された凹凸上にクロムめっきで生じた細かいクラックが形成されるため、どのような凹凸ができるのか設計が難しいという課題があった。さらに、クロムめっきで生じる細かいクラックがあるため、最終的に得られる防眩フィルムの散乱特性が好ましくない方向に変化するという課題もあった。さらには、エンボスロール母材表面の金属種とめっき種の組合せにより、仕上がりのロール表面が多種多様に変化するため、必要とする表面凹凸形状を精度良く得るためには、適切なロール表面の金属種と適切なめっき種を選択しなければならないという課題もあった。さらにまた、望む表面凹凸形状が得られたとしても、めっき種によっては使用時の耐久性が不十分となることもあった。
【0012】
特開 2000-284106号公報(特許文献8)には、基材にサンドブラスト加工を施した後、エッチング工程及び/又は薄膜の積層工程を施すことが記載されている。また特開 2006-53371 号公報(特許文献9)には、研磨された金属の表面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、そこに無電界ニッケルメッキを施して金型とし、その金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写することにより、低ヘイズでありながら防眩性能に優れた防眩フィルムとすることが記載されている。
【0013】
【特許文献1】特開2002−189106号公報(請求項1〜6、段落0043〜0046)
【特許文献2】特開平6−34961号公報(請求項1〜3、段落0024)
【特許文献3】特開2004−45471号公報(請求項4、実施例1)
【特許文献4】特開2004−45472号公報(請求項4、実施例1)
【特許文献5】特開2004−29240号公報(請求項2)
【特許文献6】特開2004−90187号公報(請求項1及び2)
【特許文献7】特開2004−29672号公報(段落0030)
【特許文献8】特開2000−284106号公報(請求項7、段落0006)
【特許文献9】特開2006−53371号公報(請求項1及び2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、優れた防眩性能を示しながら、低ヘイズであり、白ちゃけによる視認性の低下が防止され、高精細の画像表示装置の表面に配置したときにギラツキの発生しない防眩フィルムを提供し、さらには、その防眩フィルムを適用した画像表示装置を提供することを課題とする。
【0015】
本出願人による2005年12月6日出願の特願 2005-351617号において、研磨された金属の表面に平均粒径が15〜35μm の範囲にある微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸面に無電解ニッケルめっきを施して金型とし、その金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写する方法により、優れた防眩性能を示す防眩フィルムが得られることを提案している。同じく2006年3月8日出願の特願 2006-62440 号において、基材表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき面を研磨し、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸形状を鈍らせる加工を施した後、その凹凸面にクロムめっきを施す方法により、低ヘイズで防眩性能に優れた防眩フィルムを製造するのに有効な金型が得られることを提案している。これらの方法、特に後者の方法をベースに、さらに研究を重ねた結果、例えば、微粒子をぶつける際の条件などを適切に選択すれば、正反射率が比較的小さく、反射プロファイルに広がりを持つ防眩フィルムが得られ、この防眩フィルムは、より一層優れた防眩性能を示し、特に視角を変化させていっても表示画像の変化が少ないものとなることを見出した。そして、その防眩性能を好適に評価できる指標も見出した。本発明は、かかる知見に基づき、さらに種々の検討を加えて完成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
すなわち、本発明による防眩フィルムは、表面に凹凸が形成されてなり、入射角30゜で入射した光に対し、反射角30゜の反射率R(30)が0.04%以上0.2%以下で、反射角40゜の反射率R(40)が 0.005%以上 0.02%以下で、反射角50゜の反射率R(50)が 0.0015%以下であり、かつ、次の(1)〜(7)のいずれかの要件を満たすものである。
【0017】
(1)入射角30゜で入射した光に対する反射角35°の方向の反射率をR(35)として、R(35)/R(30)の値が0.4以上0.8以下であること、
(2)フィルム凹凸表面の任意の断面曲線における算術平均高さPa が 0.09μm 以上0.21μm以下であること、
(3)フィルム凹凸表面の任意の断面曲線における最大断面高さPtが0.5μm以上1.2μm以下であること、
(4)フィルム凹凸表面の任意の断面曲線における平均長さPSm が12μm以上20μm以下であること、
(5)フィルムの凹凸表面における各点の標高をヒストグラムで表したときに、ヒストグラムのピークが、最高点(高さ100%)と最低点(高さ0%)の中間点(高さ50%)を中心に±10%以内の範囲に存在すること、
(6)200μm×200μmの領域内に150個以上350個以下の凸部を有すること、
(7)フィルム表面凹凸の凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の平均面積が100μm2以上300μm2以下であること。
【0018】
これらのうち、二つ又はそれ以上を満たすことは一層有効であり、さらには、これらの要件全てを満たすことも有効である。これらの中でも、(1)のR(35)/R(30)の値が0.4以上0.8以下であるという要件は、重要である。
【0019】
この防眩フィルムは、垂直入射光に対するヘイズを3%以上20%以下にすることができる。またこの防眩フィルムは、暗部と明部の幅が0.5mm、1.0mm及び2.0mm である3種類の光学くしを用いて光の入射角45°で測定される反射鮮明度の和を30%以下とすることができる。
【0020】
この防眩フィルムは、金属の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨した後、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸形状を鈍らせる加工を施した後、その凹凸面にクロムめっきを施して金型とし、その金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写し、次いでその凹凸が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がす方法により、有利に製造される。
【0021】
この金型の作製にあたり、研磨された銅又はニッケルめっき表面にぶつける微粒子は、平均粒径が10〜50μm のもの、特に球形のものが好ましく、微粒子をぶつける際の圧力は、ゲージ圧で0.1〜0.4MPa 程度とするのが好ましい。また、微粒子をぶつけることにより形成された凹凸形状を鈍らせる加工には、エッチング処理又は銅めっきを採用するのが有利である。エッチング処理を採用する場合、エッチング量は1μm 以上20μm 以下、さらには2μm 以上10μm 以下であることが好ましい。一方、銅めっきを採用する場合、その厚みは1μm 以上20μm 以下、さらには4μm 以上10μm 以下であることが好ましい。
【0022】
この方法において、クロムめっき後に表面を研磨せず、そのままクロムめっき面を金型の凹凸面として用いるのが有利である。クロムめっきの厚みは、1μm以上10μm以下、さらには2μm以上8μm以下であることが好ましい。金型の凹凸面を転写する透明樹脂フィルムは、透明基材フィルムの表面に光硬化性樹脂層が形成されたもので構成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることにより、金型の凹凸面を光硬化性樹脂層に転写することができる。
【0023】
本発明の防眩フィルムは、液晶表示素子、プラズマディスプレイパネルなどの画像表示手段と組み合わせて、画像表示装置とすることができる。そこで本発明による画像表示装置は、前記の防眩フィルムと画像表示手段とを備え、その防眩フィルムが画像表示手段の視認側に配置されているものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明の防眩フィルムは、十分な映り込み防止や反射防止性能を示しながらも、ヘイズが低く、表示画像の明るさを保ちながら、白ちゃけ及びギラツキの抑制など、防眩性能に優れたものとなる。そして、本発明の防眩フィルムを配置した画像表示装置は、明るさや防眩性能、視認性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について、詳細に説明する。本発明の防眩フィルムは、表面に微細な凹凸が形成されてなり、入射角30゜で入射した光に対して、反射角30゜の反射率R(30)が0.04%以上0.2%以下で、反射角40゜の反射率R(40)が0.005%以上0.02%以下で、反射角50゜の反射率R(50)が 0.0015%以下であり、かつ次の(1)〜(7)のうち少なくとも一つの要件を満たすものである。
【0026】
(1)入射角30゜で入射した光に対する反射角35°の方向の反射率をR(35)として、R(35)/R(30)の値が0.4以上0.8以下であること、
(2)フィルム凹凸表面の任意の断面曲線における算術平均高さPa が 0.09μm 以上0.21μm以下であること、
(3)フィルム凹凸表面の任意の断面曲線における最大断面高さPtが0.5μm以上1.2μm 以下であること、
(4)フィルム凹凸表面の任意の断面曲線における平均長さPSm が12μm以上20μm以下であること、
(5)フィルムの凹凸表面における各点の標高をヒストグラムで表したときに、ヒストグラムのピークが、最高点(高さ100%)と最低点(高さ0%)の中間点(高さ50%)を中心に±10%以内の範囲に存在すること、
(6)200μm×200μmの領域内に150個以上350個以下の凸部を有すること、
(7)フィルム表面凹凸の凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の平均面積が100μm2以上300μm2 以下であること。
【0027】
これらのうち、(1)は、反射率特性に関する第四の因子であり、また(2)〜(7)は、表面凹凸の形状に関する因子である。
【0028】
まず、防眩性能を好適に評価できる指標について説明する。図1は、防眩フィルムに対する光の入射方向と反射方向とを模式的に示した斜視図である。本発明では、防眩フィルム11の法線12から30°の角度で入射した入射光13に対し、反射角30°の方向、すなわち正反射方向15における反射率(つまり正反射率)をR(30)、反射角35゜の方向における反射率をR(35)、反射角40゜の方向における反射率をR(40)、反射角50゜の方向における反射率をR(50)としたときに、R(30)が 0.04%以上 0.2%以下で、R(40)が 0.005%以上 0.02%以下で、R(50)が
0.0015%以下となるようにし、かつ一つの形態では、R(35)/R(30)の値が0.4以上0.8以下となるようにする。これらの要件を満たすことによって、十分な防眩性を示しながら低ヘイズであり、白ちゃけ及びギラツキの抑えられた防眩フィルムが得られることがわかった。図1では、任意の反射角θでの反射光を符号16で表しており、反射率を測定するときの反射光の方向15,16は、入射光の方向13と法線12とを含む面18内とする。
【0029】
図2は、図1における防眩フィルム11の法線12から30゜の角度で入射した入射光13に対する反射光16の、反射角と反射率(反射率は対数目盛)をプロットしたグラフの一例である。このような反射角と反射率の関係を表すグラフ、又はそれから読み取られる反射角毎の反射率を、反射プロファイルと呼ぶことがある。このグラフに示した如く、正反射率R(30)は30゜で入射した入射光13に対する反射率のピークであり、正反射方向から角度がずれるほど反射率は低下する傾向にある。
【0030】
正反射率R(30)が0.04%以上0.2%以下で、反射角40゜の反射率R(40)が 0.005%以上 0.02%以下で、反射角50゜の反射率R(50)が 0.0015%以下で、かつR(35)/R(30)の値が0.4以上0.8以下であるという点について説明すると、これらの要件を満たす反射プロファイルの形状は、正反射率R(30)が低く、正反射角近傍での傾きが小さく、正反射率に対して1/10程度の反射率となる角度が正反射方向から±10°程度の広がりを持ちながらも、広角側での反射率が低く抑えられたものとなる。反射プロファイルをこのような形状にすることによって、低ヘイズでありながら優れた防眩性を示す防眩フィルムとなる。反射プロファイルがこのような形状を示さない場合、すなわち、正反射角近傍での傾きが大きく、正反射率に対して1/10程度の反射率となる角度が正反射方向から±10°程度の広がりを持たない場合には、正反射方向からわずかに角度が変化することにより急激に反射率が低下することを意味し、結果として反射像が映り込むことになりやすい。
【0031】
具体的には、本発明の防眩フィルムに対して任意の光源を反射させた場合に、正反射角±10°程度の範囲において正反射光に近い反射光量が得られ、結果として光源の像を十分に散乱させ、ぼかすことができる。一方、正反射角近傍での傾きが大きく、広がった反射プロファイルを示さない防眩フィルムに任意の光源を反射させた場合には、正反射方向からわずかに角度を変化させることによって、急激に光源からの反射光が減少する。これは正反射光と周辺の区別が明確に行えること、すなわち、反射光が結像して映り込むことを意味する。
【0032】
正反射率R(30)については、それが 0.2%を超えると、十分な防眩機能が得られず、視認性が低下してしまう。一方、正反射率R(30)が小さすぎると白ちゃけが発生する傾向を示すことから、 0.04%以上とする。R(40)については、それが大きすぎると白ちゃけが起こりやすくなるので、 0.02%以下とする。一方、R(40)が小さすぎると十分な防眩性を示さなくなることから、 0.005%以上とする。R(50)については、それが大きすぎると白ちゃけが起こりやすくなるため、 0.0015%以下とする。白ちゃけの観点からは、R(50)は小さければ小さいほど好ましいが、現実的には下限は 0.00001%程度となる。R(35)/R(30)の値は、図1における30°付近の傾き、すなわち正反射角近傍での傾きに対応している。なぜなら、図1において、反射率は対数目盛で示されているためである。反射プロファイルの正反射角近傍での傾きが急峻である場合、すなわち、R(35)/R(30)の値が0.4 を下回る場合には、光源の反射が正反射角近傍で急激に低下することを意味し、結果として反射像が映り込んで、防眩性が低下することになる。映り込み防止効果のみに着目すれば、正反射角近傍での傾きが略0であること、すなわちR(35)/R(30)の値が略1であることが好ましいが、R(35)/R(30)の値が 0.8を上回ると白ちゃけが発生しやすくなるため、この値は 0.8以下とするのが好ましい。
【0033】
図2に示す反射プロファイルの例においては、正反射率R(30)が約 0.074%、R(40)が約 0.013%、R(50)が約 0.0004%となっている。そして、R(35)/R(30)の値は約 0.6である。
【0034】
本発明者らの調査によれば、現在市中に出回っている防眩フィルムの大部分は、フィラーを分散させたタイプであり、そのようなタイプでは、正反射率R(30)が 0.04%以上 0.2%以下、反射角40゜の反射率R(40)が0.005%以上0.02%以下、反射角50゜の反射率R(50)が 0.0015%以下で、かつR(35)/R(30)の値が0.4以上0.8以下であるものは存在せず、結果として十分な防眩性能と低いヘイズを兼備する防眩フィルムはなかった。これに対し、本発明で規定する防眩フィルムは、十分な防眩性能を示しながらも、ヘイズが低く、白ちゃけ及びギラツキの抑制という性能を兼ね備えるものであることがわかった。
【0035】
防眩フィルムの反射率を測定するにあたっては、 0.001%以下の反射率を精度良く測定することが必要である。そこで、ダイナミックレンジの広い検出器の使用が有効である。このような検出器としては、例えば、市販の光パワーメーターなどを用いることができ、この光パワーメーターの検出器前にアパーチャーを設け、防眩フィルムを見込む角度が2°になるようにした変角光度計を用いて測定を行うことができる。入射光としては、380〜780nmの可視光線を用いることができ、測定用光源としては、ハロゲンランプ等の光源から出た光をコリメートしたものを用いてもよいし、レーザーなどの単色光源で平行度の高いものを用いてもよい。裏面が平滑で透明な防眩フィルムの場合は、防眩フィルム裏面からの反射が測定値に影響を及ぼすことがあるため、例えば、黒色のアクリル樹脂板に防眩フィルムの平滑面を粘着剤又は水やグリセリン等の液体を用いて光学密着させることにより、防眩フィルム最表面の反射率のみが測定できるようにするのが好ましい。
【0036】
また、本発明の防眩フィルムは、正反射率R(30)が0.04%以上0.2%以下で、R(40)が0.005%以上0.02%以下で、R(50)が 0.0015%以下であることに加えて、先の(2)〜(7)に示した形状因子のうち少なくとも一つを満たすようにすることによっても達成することが可能である。
【0037】
まず、(2)のフィルム凹凸表面の任意の断面曲線における算術平均高さPaが0.09μm 以上0.21μm以下であるという要件、(3)の同じく任意の断面曲線における最大断面高さPt が0.5μm以上1.2μm以下であるという要件、及び(4)の同じく任意の断面曲線における平均長さPSm が12μm以上20μm以下であるという要件について説明する。これらの算術平均高さPa、最大断面高さPt及び平均長さPSm は、JIS B 0601(=ISO 4287)に規定されるものであり、算術平均高さPa は、中心線平均粗さと呼称されていた値と同じである。
【0038】
凹凸表面の断面曲線における算術平均高さPa が0.09μm未満である場合には、防眩フィルム表面がほぼ平坦となり、十分な防眩性能を示さなくなるので、好ましくない。また、算術平均高さPa が0.21μmより大きい場合には、表面形状が粗くなり、白ちゃけやギラツキなどの問題が発生するので、やはり好ましくない。凹凸表面の断面曲線における最大断面高さPt が0.5μm未満である場合には、やはり防眩フィルム表面がほぼ平坦となり、十分な防眩性能を示さなくなるので、好ましくない。また、最大断面高さPt が1.2μmより大きい場合には、やはり表面形状が粗くなり、白ちゃけやギラツキなどの問題が発生するので、好ましくない。凹凸表面の断面曲線における平均長さPSmが12μm未満である場合には、表面形状が粗くなり、白ちゃけやギラツキなどの問題が発生するので、好ましくない。また、平均長さPSmが20μmより大きい場合には、やはり防眩フィルム表面がほぼ平坦となり、十分な防眩性能を示さなくなるので、好ましくない。
【0039】
凹凸表面の断面曲線における算術平均高さPa 、平均長さPSm 及び最大断面高さPt は、 JIS B 0601 に準拠し、市販の一般的な接触式表面粗さ計を用いて測定することができる。また、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope :AFM)などの装置により表面形状を測定し、その表面形状の三次元情報から計算により求めることも可能である。なお、三次元情報から計算する場合には、十分な基準長さを確保するために、200μm ×200μm 以上の領域を3点以上測定し、その平均値をもって測定値とすることが好ましい。
【0040】
次に、(5)のフィルム凹凸表面における各点の標高をヒストグラムで表したときに、ヒストグラムのピークが、最高点(高さ100%)と最低点(高さ0%)の中間点(高さ50%)を中心に±10%以内の範囲に存在するという要件について説明する。この要件は、ヒストグラムのピークが、最高点の標高と最低点の標高との差(最大標高)に対して40%から60%の範囲にあることを意味する。中間点から±10%以内にピークが存在しない場合、換言すれば、ピークが、最大標高に対して60%より大きい位置又は40%より小さい位置に現れる場合には、結果として表面形状が粗くなり、ギラツキが発生しやすくなるので、好ましくない。また、外観の質感も低下する傾向にある。
【0041】
標高のヒストグラムを求めるにあたっては、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により表面形状を測定し、防眩フィルム表面の各点の三次元的な座標値を求めてから、以下に示すアルゴリズムにより決定する。すなわち、防眩フィルム表面の標高の最高点と最低点を求めた後、測定点の標高と最低点の標高との差(その点の高さ)を、最高点と最低点の差(最大標高)で除することによって、各点の相対的な高さを求める。求められた相対的な高さを、最高点を100%、最低点を0%としたヒストグラムで表すことによって、ヒストグラムのピーク位置を求める。ヒストグラムは、ピーク位置がデータの誤差の影響を受けない程度に分割する必要があり、10〜30程度に分割して表示することが好ましい。なお測定に際しては、誤差を少なくするため、200μm ×200μm 以上の領域を3点以上測定し、その平均値をもって測定値とすることが好ましい。
【0042】
図3に標高のヒストグラムの例を示す。この図において、横軸は、上述した最高点の標高と最低点の標高との差(最大標高)に対する測定点の高さの割合(単位%)であって、5%刻みで分割してある。例えば、一番左の縦棒は、高さの割合が0〜5%の範囲にある集合の分布を示し、以下、右へ行くにつれて高さの割合が5%ずつ大きくなっている。図では、横軸の3区切り毎に目盛を表示している。縦軸は、高さの分布を表し、積分すれば1になる値である。この例では、ピーク位置は最大標高に対して45%〜50%の位置に現れている。なお、後述する実施例及び比較例のヒストグラムを示す図11、図13、図15、図17及び図19も、表示のし方は図3と同様である。
【0043】
次に、(6)の200μm ×200μm の領域内に150個以上350個以下の凸部を有するという要件について説明する。凹凸表面における凸部の数が少ないと、高精細の画像表示装置と組み合わせて使用した場合に、画素との干渉によるギラツキが発生し、画像が見えにくくなるので、好ましくない。また、凸部の数が多くなりすぎると、結果として表面凹凸形状の傾斜角度が急峻なものとなり、白ちゃけが発生しやすくなる。
【0044】
防眩フィルムの凹凸面における凸部の数を求めるにあたっては、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により表面形状を測定し、防眩フィルム表面の各点の三次元的な座標値を求めてから、以下に示すアルゴリズムにより凸部を判定し、その個数をカウントする。すなわち、防眩フィルム表面の任意の点に着目したときに、その点の周囲において、着目した点よりも標高の高い点が存在せず、かつ、その点の凹凸面における標高が凹凸面の最高点の標高と最低点の標高との中間より高い場合に、その点が凸部の頂点であるとし、そのようにして求めた凸部の頂点の数をカウントし、凸部の数とする。より具体的には、図4に示すように、防眩フィルム表面の任意の点21に着目し、その点21を中心として、防眩フィルム基準面23に平行な半径2μm〜5μmの円を描いたとき、その円の投影面24内に含まれる防眩フィルム表面22上の点の中に、着目した点21よりも標高の高い点が存在せず、かつ、その点の凹凸面における標高が凹凸面の最高点の標高と最低点の標高との中間より高い場合に、その点21が凸部の頂点であると判定し、凸部の数を求める。その際、上記円24の半径は、サンプル表面の細かい凹凸をカウントせず、また、複数の凸部を含まない程度の大きさであることが求められ、3μm 程度が好ましい。測定に際しては、誤差を少なくするために、200μm ×200μm の領域を3点以上測定し、その平均値をもって測定値とすることが好ましい。
【0045】
共焦点顕微鏡を用いる場合、対物レンズの倍率は50倍程度とし、解像度を落として測定するのが好ましい。高解像度で測定すると、サンプル表面の細かい凹凸を測定してしまい、凸部のカウントに支障をきたすためである。なお、対物レンズを低倍率にすると、高さ方向の解像度も低下するため、凹凸の少ないサンプルの場合は表面形状が測定しにくくなることもある。このような場合には、高倍率の対物レンズで測定を行った後、得られたデータにローパスフィルターをかけて空間周波数の高い成分を落とし、凹凸表面に観察される細かいざらつきが見えなくなるようにしてから、凸部の個数をカウントしてもよい。
【0046】
最後に、(7)のフィルム表面凹凸の凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割したときに形成される多角形の平均面積が100μm2 以上300μm2 以下であるという要件について説明する。まず、ボロノイ分割について説明すると、平面上にいくつかの点(母点という)が配置されているとき、その平面内の任意の点がどの母点に最も近いかによってその平面を分割してできる図をボロノイ図といい、その分割のことをボロノイ分割という。図5に、防眩フィルムの表面における凸部の頂点を母点としてその表面をボロノイ分割した例を示すが、四角の点26,26が母点であり、一つの母点を含む個々の多角形27,27が、ボロノイ分割により形成される領域であって、ボロノイ領域とかボロノイ多角形とか呼ばれるものであるが、以下ではボロノイ多角形と呼ぶ。この図において、周囲の薄く塗りつぶしてある部分28,28については、後で説明する。ボロノイ図においては、母点の数とボロノイ領域の数は一致する。
【0047】
凸部の頂点を母点としてボロノイ分割したときに形成されるボロノイ多角形の平均面積が100μm2を下回る場合には、防眩フィルム表面の傾斜角度が急峻なものとなり、結果として白ちゃけが発生しやすくなるので、好ましくない。また、ボロノイ多角形の平均面積が300μm2より大きい場合には、凹凸表面形状が粗くなり、ギラツキが発生しやすくなるので、好ましくない。
【0048】
防眩フィルム表面の凸部の頂点を母点としたボロノイ分割を行うことにより得られるボロノイ多角形の平均面積を求めるにあたっては、共焦点顕微鏡、干渉顕微鏡、原子間力顕微鏡(AFM)などの装置により表面形状を測定し、防眩フィルム表面の各点の三次元的な座標値を求めてから、以下に示すアルゴリズムによりボロノイ分割を行い、ボロノイ多角形の平均面積を求める。すなわち、先に図4を参照して説明したアルゴリズムに従ってまず防眩フィルム表面上の凸部の頂点を求め、次に、防眩フィルム基準面にその凸部の頂点を投影する。その後、表面形状の測定によって得られた三次元座標全てをその基準面に投影し、それら投影された全ての点を最近接の母点に帰属させることによってボロノイ分割を行い、分割されて得られる多角形の面積を求めることにより、ボロノイ多角形の平均面積を求める。測定に際しては、誤差を少なくするために、測定視野の境界に接するボロノイ多角形については、先の凸部の数としては数えるが、平均面積を求めるときには算入しない。また、測定誤差を少なくするために、200μm ×200μm 以上の領域を3点以上測定し、その平均値をもって測定値とすることが好ましい。
【0049】
先に一部説明したとおり、図5は、防眩フィルムの凸部頂点を母点としてボロノイ分割したときの例を示すボロノイ図である。多数ある母点26,26は、防眩フィルムの凸部頂点であり、ボロノイ分割により、一つの母点26に対して一つのボロノイ多角形27が割り当てられている。この図において、視野の境界に接し、薄く塗りつぶされているボロノイ多角形28,28は、前述のとおり、平均面積の算出にはカウントしない。なお、この図においては、一部の母点及びボロノイ多角形に対してのみ引き出し線と符号を付しているが、母点とボロノイ多角形が多数存在することは、以上の説明とこの図から容易に理解されるであろう。
【0050】
さて、本発明の防眩フィルムは、垂直入射光に対するヘイズが3%以上20%以下であることが好ましい。ヘイズが高いと、その防眩フィルムを液晶パネルに適用したときの正面コントラストが低下することから、ヘイズは20%以下であるのが好ましい。一方、ヘイズが3%を下回ると、防眩性が不十分となり、視認性が低下する傾向にある。防眩フィルムのヘイズは、 JIS K 7136 に示される方法に準拠して測定することができる。
【0051】
また本発明の防眩フィルムは、暗部と明部の幅が0.5mm、1.0mm及び2.0mm である3種類の光学くしを用いて光の入射角45°で測定される反射鮮明度の和が30%以下であることが好ましい。反射鮮明度は、 JIS K 7105 に規定される方法で測定される。この規格では、像鮮明度の測定に用いる光学くしとして、暗部と明部の幅の比が1:1で、その幅が0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mmである4種類が規定されている。このうち、幅0.125mm の光学くしを用いた場合、本発明で規定する防眩フィルムにおいては、その測定値の誤差が大きくなることから、幅0.125mm の光学くしを用いた場合の測定値は和に加えないこととし、幅が0.5mm、1.0mm及び2.0mm である3種類の光学くしを用いて測定された像鮮明度の和をもって反射鮮明度と呼ぶことにする。この定義による場合の反射鮮明度の最大値は300%である。この定義による反射鮮明度が30%を超えると、光源などの像が鮮明に映り込むことになり、防眩性に劣るため好ましくない。
【0052】
ただし、反射鮮明度が30%以下になると、反射鮮明度だけからでは防眩性の優劣を比較することが難しくなる。なぜならば、上記定義による反射鮮明度が30%以下の場合、幅0.5mm、1.0mm及び2.0mm の光学くしを用いたそれぞれの反射鮮明度が、たかだか10%程度になり、測定誤差等による反射鮮明度の振れが無視できなくなるからである。そこで本発明者らは、後述するような製造方法により得られた反射鮮明度が30%以下の防眩フィルムにつき、目視により防眩性の優劣比較を行った。目視による防眩性の評価結果と先に説明した反射プロファイルを比較検討することにより、防眩フィルムの防眩性能を好適に評価できる指標を見出した。
【0053】
本発明の防眩フィルムでは、組み合わせて使用する高精細の画像表示素子の画素密度で100ppi(pixel per inch) までぎらつかないほうが好ましい。これ以下の画素密度でギラツキが見える場合には、高精細の画像表示素子と組み合わせて使用することが難しくなるので、好ましくない。
【0054】
ギラツキは、以下の方法で評価することができる。まず、図6に平面図で示すようなユニットセルのパターンを有するフォトマスクを用意する。この図において、ユニットセル30は、透明な基板上に、線幅10μm でカギ形のクロム遮光パターン31が形成され、そのクロム遮光パターン31の形成されていない部分が開口部32となっている。後述する実施例では、ユニットセルの寸法が254μm ×84μm (図の縦×横)、したがって開口部の寸法が244μm ×74μm (図の縦×横)のものを用いた。図示するユニットセルが縦横に多数並んで、フォトマスクを形成する。
【0055】
そして、図7に模式的な断面図で示すように、フォトマスク33のクロム遮光パターン31を上にしてライトボックス35に置き、ガラス板37に粘着剤で防眩フィルム11を貼合したサンプルをフォトマスク33上に置く。ライトボックス35の中には、光源36が配置されている。この状態で、サンプルから約30cm離れた位置39から目視観察することにより、ギラツキの官能評価を行う。
【0056】
次に、本発明に係る防眩フィルムを好適に製造しうる方法、及びその防眩フィルムを得るための表面に凹凸が形成された金属金型の製造方法について説明する。本発明の防眩フィルムは、所定形状で凹凸が形成された金属金型を用い、その金型の凹凸面を透明樹脂フィルムに転写し、次いで凹凸面が転写された透明樹脂フィルムを金型から剥がす方法により、有利に製造される。この方法においては、凹凸を有する金属金型を得るために、金属基材の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、そのめっき表面を研磨した後、その研磨面に微粒子をぶつけて凹凸を形成し、その凹凸形状を鈍らせる加工を施した後、その凹凸面にクロムめっきを施して、金型とする。
【0057】
まず、微粒子をぶつけて凹凸を形成し、さらにクロムめっき層を形成する金属基材の表面には、銅めっき又はニッケルめっきが施される。このように、金型を構成する金属の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施すことにより、後工程におけるクロムめっきの密着性や光沢性を上げることができる。鉄などの表面にクロムめっきを施した場合、あるいはクロムめっき表面にサンドブラスト法やビーズショット法などで凹凸を形成してから再度クロムめっきを施した場合は、先に背景技術の項で述べた如く、表面が荒れやすく、細かいクラックが生じて、防眩フィルムの形状に好ましくない影響を与えることがある。これに対して、表面に銅めっき又はニッケルめっきを施すことにより、このような不都合がなくなることが見出された。これは、銅めっきやニッケルめっきは、被覆性が高く、また平滑化作用が強いために、金属基材の微小な凹凸や巣などを埋めて平坦で光沢のある表面を形成するためである。これらの銅めっき及びニッケルめっきの特性によって、金属基材に存在していた微小な凹凸や巣に起因すると思われるクロムめっき表面の荒れが解消され、また、銅めっきやニッケルめっきの被覆性の高さから、細かいクラックの発生が低減されるものと考えられる。
【0058】
ここでいう銅又はニッケルは、それぞれの純金属であることができるほか、銅を主体とする合金、又はニッケルを主体とする合金であってもよい。したがって、本明細書でいう銅は、銅及び銅合金を含む意味であり、またニッケルは、ニッケル及びニッケル合金を含む意味である。銅めっき及びニッケルめっきは、それぞれ電解めっきで行っても無電解めっきで行ってもよいが、通常は電解めっきが採用される。
【0059】
金型を構成するのに好適な金属として、コストの観点からアルミニウムや鉄などが挙げられる。さらに取扱いの利便性から、軽量なアルミニウムがより好ましい。ここでいうアルミニウムや鉄も、それぞれ純金属であることができるほか、アルミニウム又は鉄を主体とする合金であってもよい。このような金属基材の表面に銅めっき又はニッケルめっきを施し、さらにその表面を研磨して、より平滑で光沢のある表面を得た後、その表面に微粒子をぶつけて微細な凹凸を形成し、その凹凸形状を鈍らせる加工を施した後、さらにそこにクロムめっきを施して、金型を構成する。
【0060】
銅めっき又はニッケルめっきを施す際には、めっき層があまり薄いと、下地金属の影響が排除しきれないことから、その厚みは10μm 以上であるのが好ましい。めっき層厚みの上限は臨界的でないが、コスト等とのからみから、一般には500μm 程度までで十分である。
【0061】
金属金型の形状は、平らな金属板であってもよいし、円柱状又は円筒状の金属ロールであってもよい。金属ロールを用いて金型を作製すれば、防眩フィルムを連続的なロール状で製造することができる。
【0062】
図8は、平板を用いた場合を例に、金属金型を得るまでの工程を模式的に示した断面図である。図8の(A)は、銅めっき又はニッケルめっきと鏡面研磨を施した後の基板の断面を示すものであって、基板41の表面にはめっき層42が形成され、その表面が研磨面43となっている。このような鏡面研磨後のめっき層42の表面に微粒子をぶつけることにより、凹凸を形成する。図8の(B)は、微粒子をぶつけた後の基板41の断面模式図であり、微粒子がぶつけられることで、部分球面状の微細な凹面44が形成されている。図8の(C)は、こうして微粒子による凹凸が形成された面に、凹凸形状を鈍らせる加工を施した後の基板41の断面模式図であり、(C1)はエッチング処理により鈍らされた状態を、そして(C2)は銅めっきにより鈍らせた状態を、それぞれ表している。なお、(C1)では、エッチングにより鈍らされる前の(B)に相当する部分球面状凹面の状態を破線で示している。(C1)のエッチング処理を採用する例では、(B)に示した凹面44と鋭角的な突起が、エッチングにより削られて、部分球面上の鋭角的な突起が鈍らされた形状46aが形成されている。一方、(C2)の銅めっきを採用する例では、(B)に示した凹面44上に銅めっき層45が形成され、これによって、部分球面上の鋭角的な突起が鈍らされた形状46bが形成されている。
【0063】
その後、クロムめっきを施すことによって、表面の凹凸形状をさらに鈍らせる。図8の(D)は、クロムめっきを施した後の断面模式図であって、(D1)は、(C1)に示したエッチングによって鈍らされた凹凸面46a上にクロムめっきが施されたもの、そして(D2)は、(C2)に示した銅めっき層45上にクロムめっきが施されたものである。(C1)から(D1)に至るエッチング処理を採用する例では、(C1)に示したエッチングにより鈍らされた状態の面46aの上にクロムめっき層47が形成されており、その表面48は、(C1)の凹凸面46aに比べて、クロムめっきによりさらに鈍った状態、換言すれば凹凸形状が緩和された状態になっている。また、(C2)から(D2)に至る銅めっきを採用する例では、基板41上の銅又はニッケルめっき層42に形成された微細な凹面上に、銅めっき層45が形成され、さらにその上にクロムめっき層47が形成されており、その表面48は、クロムめっきにより、(C2)の凹凸面46bに比べてさらに鈍った状態、換言すれば凹凸形状が緩和された状態になっている。このように、銅又はニッケルめっき層42の表面に微粒子をぶつけて凹凸を形成した後、その凹凸形状を鈍らせる加工を施した表面46(46a又は46b)に、クロムめっきを施すことにより、実質的に平坦部がない金属金型を得ることができる。また、そのような金型が、好ましい光学特性を示す防眩フィルムを得るのに好適である。
【0064】
基材上の銅又はニッケルからなるめっき層には、表面が研磨された状態で、微粒子がぶつけられるのであるが、特に、鏡面に近い状態に研磨されていることが好ましい。なぜなら、基材となる金属板や金属ロールは、所望の精度にするために、切削や研削などの機械加工が施されていることが多く、それにより基材表面に加工目が残っているためである。銅めっき又はニッケルめっきが施された状態でも、それらの加工目が残ることがあるし、また、めっきした状態で、表面が完全に平滑になるとは限らない。深い加工目などが残った状態では、微粒子をぶつけて基材表面を変形させても、微粒子により形成される凹凸よりも加工目などの凹凸のほうが深いことがあり、加工目などの影響が残る可能性がある。そのような金型を用いて防眩フィルムを製造した場合には、光学特性に予期できない影響を及ぼすことがある。
【0065】
めっきが施された基材表面を研磨する方法に特別な制限はなく、機械研磨法、電解研磨法、化学研磨法のいずれも使用できる。機械研磨法としては、超仕上げ法、ラッピング、流体研磨法、バフ研磨法などが例示される。研磨後の表面粗度は、中心線平均粗さRa で表して、Ra が0.5μm 以下であることが好ましく、より好ましくはRa が0.1μm 以下である。Ra があまり大きくなると、微粒子をぶつけて金属の表面を変形させても、変形前の表面粗度の影響が残る可能性があるので好ましくない。また、Ra の下限については特に制限されず、加工時間や加工コストの観点から、おのずと限界があるので、特に指定する必要性はない。
【0066】
基材のめっきが施された表面に微粒子をぶつける方法としては、噴射加工法が好適に用いられる。噴射加工法には、サンドブラスト法、ショットブラスト法、液体ホーニング法などがある。これらの加工に用いられる粒子としては、鋭い角があるような形状よりは、球形に近い形状であるほうが好ましく、また加工中に破砕されて鋭い角が出ないような、硬い材質の粒子が好ましい。これらの条件を満たす粒子として、セラミックス系の粒子では、球形ジルコニアのビーズや、アルミナのビーズが好ましく用いられる。また金属系の粒子では、スチールやステンレススチール製のビーズが好ましい。さらには、樹脂バインダーにセラミックスや金属の粒子を担持させた粒子を用いてもよい。
【0067】
基材のめっきが施された表面にぶつける微粒子として、平均粒径が10〜50μm のもの、特に球形の微粒子を用いることにより、優れた防眩性能を示す防眩フィルムを作製することができる。微粒子の平均粒径が10μm より小さいと、めっきが施された表面に十分な凹凸を形成することが困難となり、十分な防眩性能が得られにくくなる。一方、微粒子の平均粒径が50μm より大きいと、表面凹凸が粗くなり、ギラツキが発生したり質感が低下したりしやすい。ここで、平均粒径が15μm 以下の微粒子を用いて加工する際には、粒子が静電気等で凝集しないよう、適当な分散媒に分散させて加工する湿式ブラスト法を採用することが好ましい。
【0068】
また、微粒子をぶつける際の圧力、微粒子の使用量、微粒子を噴射するノズルから金属表面までの距離も、加工後の凹凸形状、延いては防眩フィルムの表面形状に影響するが、一般には、ゲージ圧で0.1〜0.4MPa 程度の圧力、また処理される金属の表面積1cm2 あたり4〜12g程度の微粒子量、微粒子を噴射するノズルから金属表面まで200mm〜600mm程度の距離から、用いる微粒子の種類や粒径、金属の種類、微粒子を噴射するノズルの形状、所望の凹凸形状などに応じて、適宜選択すればよい。
【0069】
基材のめっきが施された表面に微粒子をぶつけることによって形成された凹凸形状は、任意の断面曲線の算術平均高さPa が0.1μm以上1μm 以下であり、その断面曲線における算術平均高さPa と平均長さPSmの比Pa/PSm が0.02以上0.1以下であることが好ましい。算術平均高さPa が0.1μmより小さいか、又は比Pa/PSm が0.02より小さい場合には、クロムめっき加工前に凹凸形状を鈍らせる加工を施した際に、凹凸表面がほぼ平坦面となってしまい、望む表面形状の金型が得られにくい。また、算術平均高さPaが1μm より大きいか、又は比Pa/PSmが0.1より大きい場合には、クロムめっき加工前の凹凸形状を鈍らせる加工を強い条件で行わなければならず、表面形状の制御が困難なものとなりやすい。
【0070】
このようにして銅めっき又はニッケルめっき表面に凹凸が形成された基材に、凹凸形状を鈍らせる加工を施す。凹凸形状を鈍らせる加工としては、先に図8の(C)及び(D)を参照して説明したように、エッチング処理又は銅めっきが好ましい。エッチング処理を行うことによって、微粒子をぶつけて作製した凹凸形状の鋭利な部分がなくなる。それにより、金型として使用した際に作製される防眩フィルムの光学特性が好ましい方向へと変化する。また、銅めっきは平滑化作用が強いため、クロムめっきより凹凸形状を鈍らせる効果が強い。それにより、金型として使用した際に作製される防眩フィルムの光学特性が好ましい方向へと変化する。
【0071】
エッチング処理は通常、塩化第二鉄(FeCl3)水溶液、塩化第二銅(CuCl2)水溶液、アルカリエッチング液(Cu(NH3)4Cl2) などを用い、表面を腐食させることによって行われるが、塩酸や硫酸などの強酸を用いることもできるし、電解めっき時と逆の電位をかけることによる逆電解エッチングを用いることもできる。エッチング処理を施した後の凹凸のなまり具合は、下地金属の種類、ブラストなどの手法により得られた凹凸のサイズと深さなどによって異なるため、一概には言えないが、なまり具合を制御するうえで最も大きな因子は、エッチング量である。ここでいうエッチング量とは、エッチングにより削られる基材(めっき層)の厚さである。エッチング量が小さいと、ブラストなどの手法により得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルムに転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、エッチング量が大きすぎると、凹凸形状がほとんどなくなってしまい、ほぼ平坦な金型となってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。そこで、エッチング量は1μm 以上20μm 以下となるようにするのが好ましく、さらには2μm 以上10μm 以下であるのがより好ましい。
【0072】
鈍らせる加工として銅めっきを採用する場合、凹凸のなまり具合は、下地金属の種類、ブラストなどの手法により得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚みなどによって異なるため、一概には言えないが、なまり具合を制御するうえで最も大きな因子はめっき厚みである。銅めっき層の厚みが薄いと、ブラストなどの手法により得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルムに転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方でめっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなるうえ、凹凸形状がほとんどなくなってしまうので、防眩性を示さなくなってしまう。そこで、銅めっきの厚みは1μm 以上20μm 以下となるようにするのが好ましく、さらには4μm 以上10μm 以下であるのがより好ましい。
【0073】
このようにして銅めっき又はニッケルめっき表面に凹凸が形成された基材の表面形状を鈍らせた後、さらにクロムめっきを施すことにより、凹凸の表面をより一層鈍らせるとともに、その表面硬度を高めた金属版を作る。この際の凹凸のなまり具合も、下地金属の種類、ブラストなどの手法により得られた凹凸のサイズと深さ、まためっきの種類や厚みなどによって異なるため、一概には言えないが、なまり具合を制御するうえで最も大きな因子は、やはりめっき厚みである。クロムめっき層の厚みが薄いと、クロムめっき加工前に得られた凹凸の表面形状を鈍らせる効果が不十分であり、その凹凸形状を透明フィルムに転写して得られる防眩フィルムの光学特性があまり良くならない。一方で、めっき厚みが厚すぎると、生産性が悪くなるうえに、ノジュールと呼ばれる突起状のめっき欠陥が発生してしまう。そこで、クロムめっきの厚みは1μm 以上10μm 以下となるようにするのが好ましく、さらには2μm 以上6μm 以下であるのがより好ましい。
【0074】
本発明では、平板やロールなどの表面に、光沢があって、硬度が高く、摩擦係数が小さく、良好な離型性を与えうるクロムめっきを採用する。クロムめっきの種類は特に制限されないが、いわゆる光沢クロムめっきや装飾用クロムめっきなどと呼ばれる、良好な光沢を発現するクロムめっきを用いることが好ましい。クロムめっきは通常、電解によって行われ、そのめっき浴としては、無水クロム酸(CrO3 )と少量の硫酸を含む水溶液が用いられる。電流密度と電解時間を調節することにより、クロムめっきの厚みを制御することができる。
【0075】
クロムめっきが施された金型表面は、そのビッカース硬度が800以上であることが好ましく、より好ましくは1000以上である。ビッカース硬度が低いと、金型使用時の耐久性が低下するうえに、クロムめっきで硬度が低下することは、めっき処理時にめっき浴組成や電解条件等に異常が発生している可能性が高く、欠陥の発生状況についても好ましくない影響を与える可能性が高い。
【0076】
背景技術の項で掲げた特許文献1、特許文献4、特許文献6などには、クロムめっきを採用することが開示されているが、金型のめっき前の下地とクロムめっきの種類によっては、めっき後に表面が荒れたり、クロムめっきによる微小なクラックが多数発生したりすることが多く、その結果、作製される防眩フィルムの光学特性が好ましくない方向へと進む。めっき表面が荒れた状態のものは、防眩フィルム用の金属金型に向いていない。なぜならば、一般的にざらつきを消すためにクロムめっき後にめっき表面を研磨することが行われているが、後述するように、本発明ではめっき後の表面の研磨が好ましくないからである。本発明では、下地金属に銅めっき又はニッケルめっきを施すことにより、クロムめっきで生じやすいこのような不都合を解消している。
【0077】
クロムめっきを施す前に凹凸形状を鈍らせる加工を施さない場合には、微粒子をぶつけて作製した凹凸形状の鋭利な部分を十分に鈍らせるために、クロムめっきを厚くしなくてはならない。しかしながら、クロムめっきの厚みを厚くしすぎると、ノジュールが発生しやすくなるので、好ましくない。また、クロムめっきの厚みを薄くした場合には、微粒子をぶつけて作製した凹凸形状を十分に鈍らせることができず、望む表面形状の金型が得られないことから、その金型を用いて作製した防眩フィルムも優れた防眩性能を示さない。
【0078】
特許文献1には、鉄の表面にクロムめっきしたローラーにサンドブラスト法やビーズショット法により凹凸型面を形成した後、クロムめっきを施すことが記載され、特許文献2には、金属表面にエッチングやサンドブラストなどの手法によって凹凸を形成することが記載され、また特許文献5及び特許文献6には、ロール表面にビーズショット法やブラスト処理を施すことが記載されている。しかし、本発明に示した方法のように、微粒子をぶつけて凹凸形状を形成した後に表面形状を積極的に鈍らせる加工を施したうえで、クロムめっき加工を施して表面凹凸形状を鈍らせる方法について言及したものはなく、本発明者らの検討によれば、本発明に示した方法のように積極的に表面形状を鈍らせる加工を施さなければ、優れた防眩性能を示す防眩フィルムを製造することはできなかった。
【0079】
なお、凹凸をつけた金属表面にクロムめっき以外のめっきを施すことは好ましくない。なぜなら、クロム以外のめっきでは、硬度や耐摩耗性が低くなるため、金型としての耐久性が低下し、使用中に凹凸が磨り減ったり、金型が損傷したりする。そのような金型から得られた防眩フィルムでは、十分な防眩機能が得られにくい可能性が高く、また、フィルム上に欠陥が発生する可能性も高くなる。
【0080】
前記特許文献6などに開示されているような、めっき後の表面を研磨することも、やはり本発明では好ましくない。研磨することにより、最表面に平坦な部分が生じるため、光学特性の悪化を招く可能性があること、形状の制御因子が増えるため、再現性の良い形状制御が困難になることなどの理由からである。図9は、微粒子をぶつけて得られた凹凸形状を鈍らせる加工、ここでは、図8の(C1)に示したエッチング処理を施した後、同じく(D1)に示したクロムめっきを施した面を研磨した場合に、平坦面が生じた金属板の断面模式図である。研磨により、銅又はニッケルめっき層42の表面に形成されたクロムめっき層47の表面凹凸48のうち、一部の凸が削られて、平坦面49が生じている。図9には、図8の(D1)に示したエッチング後クロムめっきした表面を研磨した場合の例を示したが、図8の(D2)に示した銅めっき後クロムめっきした場合も、その表面を研磨すれば、同様に平坦面が生じることになる。
【0081】
次に、このようにして得られる金属金型を用いて、防眩フィルムを製造する工程について説明する。上で説明したような方法で得られる金属金型の形状を透明樹脂フィルムに転写することにより、防眩フィルムが得られる。金型形状のフィルムへの転写は、エンボスにより行うことが好ましい。エンボスとしては、光硬化性樹脂を用いるUVエンボス法、熱可塑性樹脂を用いるホットエンボス法が例示される。
【0082】
UVエンボス法では、透明基材フィルムの表面に光硬化性樹脂層を形成し、その光硬化性樹脂層を金型の凹凸面に押し付けながら硬化させることで、金型の凹凸面が光硬化性樹脂層に転写される。具体的には、透明な基材フィルム上に紫外線硬化型樹脂を塗工し、塗工した紫外線硬化型樹脂を金属金型に密着させた状態で、透明基材フィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させ、その後金属金型から、硬化後の紫外線硬化型樹脂層が形成された透明基材フィルムを剥離することにより、金属金型の形状を紫外線硬化型樹脂に転写する。紫外線硬化型樹脂の種類は特に制限されない。また、紫外線硬化型樹脂という表現をしているが、光開始剤を適宜選定することにより、紫外線より波長の長い可視光でも硬化が可能な樹脂とすることもできる。すなわち、ここでいう紫外線硬化型樹脂とは、このような可視光硬化型の樹脂も含めた総称である。一方、ホットエンボス法では、透明な熱可塑性樹脂フィルムを加熱状態で金属金型に押し付け、金型の表面形状を熱可塑性樹脂フィルムに転写する。これらのエンボス法の中でも、生産性の観点から、UVエンボス法が好ましい。
【0083】
防眩フィルムの作製に用いることのできる透明基材フィルムは、実質的に光学的に透明であればよく、例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの樹脂フィルムが挙げられる。
【0084】
紫外線硬化型樹脂としては、市販されているものを用いることができる。例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリレートをそれぞれ単独で、あるいはそれら2種以上を混合して用い、それと、“イルガキュアー 907”、“イルガキュアー 184”(以上、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製)、“ルシリン TPO”(BASF社製)等の光重合開始剤とを混合したものを、紫外線硬化型樹脂とすることができる。
【0085】
ホットエンボス法に用いる熱可塑性の透明樹脂フィルムとしては、実質的に透明なものであればいかなるものであってもよく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系化合物をモノマーとする非晶性環状ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂の溶剤キャストフィルムや押出フィルムなどを用いることができる。これらの透明樹脂フィルムはまた、上で説明したUVエンボス法を採用する場合の透明基材フィルムともなりうる。
【0086】
以上のように構成される本発明の防眩フィルムは、防眩効果に優れ、白ちゃけも有効に防止されるため、画像表示装置に装着したときに視認性に優れたものとなる。画像表示装置が液晶ディスプレイである場合には、この防眩フィルムを偏光フィルムに積層することができる。すなわち、偏光フィルムは一般に、ヨウ素又は二色性染料が吸着配向されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムからなる偏光子の少なくとも片面に保護フィルムが積層された形のものが多いが、このような偏光フィルムの一方の面に、上記のような凹凸が付与された防眩フィルムを貼合すれば、防眩性の偏光フィルムとなる。また、上記のような防眩性の凹凸が付与されたフィルムを、保護フィルム兼防眩層として用い、その凹凸面が外側となるように偏光子の片面に貼合することによっても、防眩性の偏光フィルムとすることができる。さらには、保護フィルムが積層された偏光フィルムにおいて、その片面保護フィルムの表面に上記のような防眩性の凹凸を付与することにより、防眩性の偏光フィルムとすることもできる。
【0087】
本発明の画像表示装置は、以上説明したような特定の表面形状を有する防眩フィルムを画像表示手段と組み合わせたものである。ここで画像表示手段は、上下基板間に液晶が封入された液晶セルを備え、電圧印加により液晶の配向状態を変化させて画像の表示を行う液晶パネルが代表的であるが、その他、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイなど、公知の各種ディスプレイに対しても、本発明の防眩フィルムを適用することができる。そして、上記した防眩フィルムを画像表示手段よりも視認側に配置することで、画像表示装置が構成される。この際、防眩フィルムの凹凸面が外側(視認側)となるように配置される。防眩フィルムは、画像表示手段の表面に直接貼合してもよいし、液晶パネルを画像表示手段とする場合は、例えば先述のように、偏光フィルムを介して液晶パネルの表面に貼合することもできる。このように本発明の防眩フィルムを備えた画像表示装置は、防眩フィルムの有する表面の凹凸により入射光を散乱して映り込み像をぼかすことができ、優れた視認性を与えるものとなる。
【0088】
また、本発明の防眩フィルムを高精細の画像表示装置に適用した場合でも、従来の防眩フィルムに見られたようなギラツキが発生することもなく、低ヘイズでありながら、十分な映り込み防止、白ちゃけの防止、ギラツキの抑制という性能を兼備したものとなる。
【実施例】
【0089】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。以下の例における金型又は防眩フィルムの評価方法は、次のとおりである。
【0090】
1.金型のビッカース硬度の測定
Krautkramer 社製の超音波硬度計“MIC10”を用いて、 JIS Z 2244 に準拠した方法でビッカース硬度を測定した。測定は、金型自体の表面にて行った。
【0091】
2.防眩フィルムの光学特性の測定
(反射率)
防眩フィルムの凹凸面に、フィルム法線に対して30゜傾斜した方向から、He−Neレーザーからの平行光を照射し、フィルム法線と照射方向を含む平面内における反射率の角度変化の測定を行った。反射率の測定には、いずれも横河電機(株)製の“3292 03 オプティカルパワーセンサー”と“3292 オプティカルパワーメーター”を用いた。
【0092】
(ヘイズ)
JIS K 7136 に準拠した(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター“HM-150”型を用いて防眩フィルムのヘイズを測定した。測定にあたっては、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合し、その状態で測定に供した。
【0093】
(透過鮮明度)
JIS K 7105 に準拠したスガ試験機(株)製の写像性測定器“ICM-1DP” を用いて、防眩フィルムの透過鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。この状態でガラス側から光を入射させ、測定を行った。ここでの測定値は、暗部と明部の幅がそれぞれ 0.125mm、0.5mm、1.0mm及び2.0mm である4種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。この場合の透過鮮明度の最大値は400%となる。
【0094】
(反射鮮明度)
上と同じ写像性測定器“ICM-1DP” を用いて、防眩フィルムの反射鮮明度を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。また、裏面ガラス面からの反射を防止するために、防眩フィルムを貼ったガラス板のガラス面に2mm厚みの黒色アクリル樹脂板を水で密着させて貼り付け、この状態でサンプル(防眩フィルム)側から光を入射させ、測定を行った。ここでの測定値は、前述したとおり、暗部と明部の幅がそれぞれ0.5mm、1.0mm及び2.0mm である3種類の光学くしを用いて測定された値の合計値である。
【0095】
3.防眩フィルムの表面形状の測定
Sensofar 社製の共焦点顕微鏡“PLμ2300”を用いて、防眩フィルムの表面形状を測定した。この場合も、サンプルの反りを防止するため、光学的に透明な粘着剤を用いて凹凸面が表面となるようにガラス基板に貼合してから、測定に供した。測定の際、対物レンズの倍率は50倍とし、解像度を落として測定を行った。高解像度で測定すると、サンプル表面の細かい凹凸を測定してしまい、凸部のカウントに支障をきたすためである。
【0096】
(断面曲線における算術平均高さPa、最大断面高さPt及び平均長さPSm)
上で得られた測定データをもとに、 JIS B 0601 に準拠した計算により、算術平均高さPa、最大断面高さPt、及び平均長さPSm を求めた。
【0097】
(標高ヒストグラム)
上の測定で得られた防眩フィルム表面各点の三次元的な座標値をもとに、先述のアルゴリズムに従って最高点(高さ100%)と最低点(高さ0%)の間を5%刻みで分割し、ヒストグラムを作成して、そのピーク位置を求めた。
【0098】
(凸部個数)
上の測定で得られた防眩フィルム表面各点の三次元的な座標値をもとに、先に図4を参照して説明したアルゴリズムに従って、200μm×200μmの領域内に存在する凸部の数を求めた。
【0099】
(ボロノイ分割したときのボロノイ多角形平均面積)
上の測定で得られた防眩フィルム表面各点の三次元的な座標値をもとに、先に図5を参照して説明したアルゴリズムに基づいて計算し、ボロノイ多角形の平均面積を求めた。
【0100】
4.防眩フィルムの防眩性能の評価
(映り込み、白ちゃけ及び質感の目視評価)
防眩フィルムの裏面からの反射を防止するために、凹凸面が表面となるように黒色アクリル樹脂板に防眩フィルムを貼合し、蛍光灯のついた明るい室内で凹凸面側から目視で観察し、蛍光灯の映り込みの有無、白ちゃけの程度及び質感を目視で評価した。映り込み、白ちゃけ及び質感は、それぞれ1から3の3段階で次の基準により評価した。
【0101】
映り込み 1:映り込みが観察されない、
2:映り込みが少し観察される、
3:映り込みが明瞭に観察される。
【0102】
白ちゃけ 1:白ちゃけが観察されない、
2:白ちゃけが少し観察される、
3:白ちゃけが明瞭に観察される。
【0103】
質感 1:目が細かく、質感が良い、
2:目がやや粗く、質感が少し悪い、
3:目が明らかに粗く、質感が悪い。
【0104】
(ギラツキの評価)
ギラツキは、先に図6及び図7を参照して説明した方法により評価した。すなわち、図6に示すユニットセルのパターンを有するフォトマスクを作製し、これを図7に示すように、フォトマスク33のクロム遮光パターン31を上にしてライトボックス35に置き、1.1mm厚のガラス板37に20μm厚みの粘着剤で防眩フィルム21を貼合したサンプルをフォトマスク33上に置き、サンプルから約30cm離れた位置39から目視観察することにより、ギラツキの程度を7段階で官能評価した。レベル1はギラツキが全く認められない状態、レベル7はひどくギラツキが観察される状態に該当し、レベル3はごくわずかにギラツキが観察される状態である。なお、フォトマスクのユニットセルは、図6におけるユニットセル縦×ユニットセル横が254μm×84μm、したがって同図における開口部縦×開口部横が244μm×74μmのものを用いた。
【0105】
[実施例1]
直径200mmの鉄ロール(JIS による STKM13A)の表面に銅バラードめっきが施されたものを用意した。銅バラードめっきは、銅めっき層/薄い銀めっき層/表面銅めっき層からなるものであり、めっき層全体の厚さは約200μm であった。その銅めっき表面を鏡面研磨し、さらにその研磨面に、ブラスト装置((株)不二製作所製)を用いて、東ソー(株)製のジルコニアビーズ“TZ-SX-17”(商品名、平均粒径20μm )を、ビーズ使用量8g/cm2(ロールの表面積1cm2あたりの使用量、以下「ブラスト量」とする)、ブラスト圧力0.25MPa(ゲージ圧、以下同じ)、微粒子を噴射するノズルから金属表面までの距離300mm(以下「ブラスト距離」とする)でブラストし、表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つき銅めっき鉄ロールに対し、塩化第二銅水溶液でエッチングを行った。その際のエッチング量は4μm となるように設定した。その後、クロムめっき加工を行い、金属金型を作製した。このとき、クロムめっき厚みが4μm となるように設定した。得られた金型は、表面のビッカース硬度が1,000であった。
【0106】
別途、大日本インキ化学工業(株)製の光硬化性樹脂組成物“GRANDIC 806T”(商品名)を酢酸エチルに溶解して、50重量%濃度の溶液とし、さらに、光重合開始剤である“ルシリン TPO”(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)を、硬化性樹脂成分100重量部あたり5重量部添加して塗布液を調製した。厚さ80μm のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム上に、この塗布液を乾燥後の塗布厚みが5μm となるように塗布し、60℃に設定した乾燥機中で3分間乾燥させた。乾燥後のフィルムを、上で作製した金属金型の凹凸面に、光硬化性樹脂組成物層が金型側となるようにゴムロールで押し付けて密着させた。この状態でTACフィルム側より、強度20mW/cm2 の高圧水銀灯からの光をh線換算光量で200mJ/cm2 となるように照射して、光硬化性樹脂組成物層を硬化させた。この後、TACフィルムを硬化樹脂ごと金型から剥離して、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを得た。
【0107】
得られた防眩フィルムについて、光学特性、凹凸表面形状、及び防眩性能を上記した手法により評価し、その結果を、金型の作製条件とともに表1に示した。また、反射率測定の際に得られた反射光の散乱特性(反射プロファイルのグラフ)を図10に、標高のヒストグラムを図11にそれぞれ示した。なお、表1(A)中の反射鮮明度及び透過鮮明度の内訳は、次のとおりである。
【0108】
反射鮮明度 透過鮮明度
0.125mm 光学くし: − 22.7%
0.5mm 光学くし : 3.0% 19.7%
1.0mm 光学くし : 6.3% 20.8%
2.0mm 光学くし : 9.4% 28.6%
合計 18.7% 91.8%
【0109】
[実施例2〜3及び比較例1〜2]
金型作製の際のブラスト圧力を表1のように変更し、その他は実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する金属金型を作製した。いずれの例でも、得られた金型は、表面のビッカース硬度が 1,000であった。それぞれの金型を用い、実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムの光学特性、表面形状及び防眩性能を、金型の作製条件とともに表1に示した。表1において、(A)は金型作製条件と防眩フィルムの光学特性をまとめたもの、そして(B)は防眩フィルムの表面形状と防眩性能をまとめたものである。
【0110】
また、実施例2及び3については、防眩フィルムの反射プロファイルのグラフを実施例1の結果とともに図10に、そして標高のヒストグラムを実施例1の結果とともに図11にそれぞれ示した。比較例1及び2については、防眩フィルムの反射プロファイルのグラフを図12に、そして標高のヒストグラムを図13にそれぞれ示した。
【0111】
[実施例4]
金型作製の際のブラスト圧力を0.3MPa、ブラスト距離を450mmに変更する以外は、実施例1と同様にしてロール表面のブラスト加工を行い、その後、凹凸形状を鈍らせる加工として銅めっきを採用し、その際のめっき厚みを8μm に設定し、その他は実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する金属金型を作製した。得られた金型は、表面のビッカース硬度が 1,000であった。その金型を用い、実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムの光学特性、表面形状及び防眩性能を、金型の作製条件とともに表1に示した。また、防眩フィルムの反射プロファイルのグラフを比較例1及び2の結果とともに図12に、標高のヒストグラムを比較例1及び2の結果とともに図13にそれぞれ示した。
【0112】
【表1】


【0113】
表1に示すように、比較例1は、正反射率R(30)が 0.2%を上回っており、またR(40)が 0.005%を下回っているために、十分な防眩性が発現されなかった。比較例2は、正反射率R(30)が 0.04%を下回っているために、白ちゃけが激しかった。また比較例1及び2は、その他の本発明で規定する要件も一部満たしておらず、結果として、十分な防眩性を示しながら低ヘイズであるという性能を兼備していなかった。
【0114】
これに対し、反射プロファイル及び表面形状が本発明の規定を満たす実施例1〜4のサンプルは、映り込みが観察されず、白ちゃけも少なく、ギラツキもほとんど観察されず、優れた防眩性能を示すものであった。
【0115】
[比較例3及び4]
ブラスト加工に用いる微粒子を、東ソー(株)製のジルコニアビーズ“TZ-B125” (商品名、平均粒径125μm )に変更し、ブラスト量、ブラスト圧力、ブラスト距離、及び表面形状を鈍らせる加工を表2に示すとおりとし、その他は実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する金属金型を作製した。得られた金型は、いずれも表面のビッカース硬度が1,000 であった。それぞれの金型を用い、実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムの光学特性、表面形状及び防眩性能を、金型の作製条件とともに表2に示した。表2において、(A)は金型作製条件と防眩フィルムの光学特性をまとめたもの、そして(B)は防眩フィルムの表面形状と防眩性能をまとめたものである。また、防眩フィルムの反射プロファイルのグラフを図14に、そして、標高のヒストグラムを図15にそれぞれ示した。
【0116】
【表2】


【0117】
比較例3及び4は本発明で規定する要件を満たしておらず、比較例3においては映り込みが観察され、比較例4においては高いレベルのギラツキ及び質感の低下が観察された。ブラスト加工において、平均粒経の大きい微粒子を用いた場合には、ブラスト圧力が弱いか、ブラスト距離が遠いときに、低ヘイズではあるが、映り込みが発生しやすくなる傾向が認められた。一方、ブラスト圧力が強いか、ブラスト距離が近いときには、十分な映り込み防止性能を備えているが、ギラツキが著しく高いレベルになり、また質感が悪くなる傾向が認められた。本発明で規定する優れた防眩性を示しながらヘイズの低い防眩フィルムを得るには、適切な金型作製条件を採用する必要がある。
【0118】
[比較例5及び6]
直径300mmのアルミニウムロール(JIS による A5056)の表面を鏡面研磨した。得られた鏡面研磨アルミニウムロールの表面に、実施例1で用いたのと同じジルコニアビーズ“TZ-SX-17”を、ブラスト量8g/cm2 、ブラスト圧力0.1MPa、ブラスト距離450mmでブラストし、表面に凹凸をつけた。得られた凹凸つきアルミニウムロールに2種類の条件で無電解光沢ニッケルめっき加工を行い、金属金型を作製した。めっき厚みは、めっき終了後にβ線膜厚測定器(商品名“フィッシャースコープ MMS”、(株)フィッシャー・インストルメンツから入手)を用いて実測した。これらの金型を用い、実施例1と同様にして、表面に凹凸を有する硬化樹脂とTACフィルムとの積層体からなる透明な防眩フィルムを作製した。得られた防眩フィルムの光学特性、表面形状及び防眩性能を、金型作製の際の無電解ニッケルめっき厚とともに、表3に示した。この表において、(A)は金型作製条件と防眩フィルムの光学特性をまとめたもの、そして(B)は防眩フィルムの表面形状と防眩性能をまとめたものである。また、この防眩フィルムの反射プロファイルを図16に、そして標高のヒストグラムを図17に、それぞれ示した。
【0119】
【表3】


【0120】
表3に示すように、比較例5及び6のサンプルは、正反射率R(30)がともに 0.2%を上回り、また、R(40)が 0.005%を下回っているために、十分な映り込み防止性能を発現しなかった。また、ギラツキも発生した。
【0121】
[比較例7〜12]
住友化学(株)が販売する偏光板“スミカラン”に防眩層として使用されており、紫外線硬化樹脂中にフィラーが分散されてなる防眩フィルム “AG1”、 “AG3”、 “AG5”、“AG6”、“AG8”、“SL6” (それぞれ比較例7から比較例12とする)について、それぞれの光学特性、表面形状及び防眩性能を前述した手法により評価し、その結果を表4に示した。表4において、(A)は防眩フィルムの光学特性をまとめたもの、そして(B)は防眩フィルムの表面形状と防眩性能をまとめたものである。また、反射プロファイルのグラフを図18に、標高のヒストグラムを図19にそれぞれ示した。図18及び図19において、それぞれ(A)は比較例7〜9の結果であり、(B)は比較例10〜12の結果である。
【0122】
【表4】


【0123】
表4に示すように、比較例7〜12の中に本発明で規定する要件を満たすものはなく、結果として、十分な映り込み防止、低ヘイズ、白ちゃけ防止、及びギラツキ防止の全てを兼ね備えた防眩フィルムは存在しなかった。比較例7及び8の防眩フィルムは、正反射率R(30)が0.2%を上回り、またR(40)が0.005%を下回るために、十分な映り込み防止性能を示さなかった。また、ギラツキも顕著であった。比較例9及び11の防眩フィルムは、R(40)が 0.005%を下回るために、映り込み防止性能が十分ではなかった。比較例10の防眩フィルムは、R(50)が 0.0015%を上回るために、白ちゃけが発生していた。比較例12の防眩フィルムは、R(30)、R(40)及びR(50)においては本発明の規定を満たしていたが、その他の要件を満たさないために、結果として、十分な映り込み防止、低ヘイズ、白ちゃけ防止、及びギラツキ防止の全てを兼ね備えてはいなかった。
【0124】
以上の結果より、本発明で規定する要件をバランスよく備えていることが、本発明の目的とする光学特性を達成するのに必要であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の防眩フィルムを、液晶パネル、プラズマディスプレイパネル、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイなどの各種ディスプレイに対し、その防眩フィルムが画像表示素子よりも視認側となるように配置することで、白ちゃけ及びギラツキを発生させることなく、映り込み像をぼかすことができ、優れた視認性を与えるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】防眩フィルムへの光の入射方向と反射方向とを模式的に示す斜視図である。
【図2】防眩フィルムの法線から30°の角度で入射した光に対する反射光の反射角と反射率(反射率は対数目盛)をプロットしたグラフの一例である。
【図3】防眩フィルムの標高ヒストグラムをグラフに表した一例である。
【図4】防眩フィルムの凸部判定のアルゴリズムを模式的に示した斜視図である。
【図5】防眩フィルムの凸部頂点を母点としてボロノイ分割したときの例を示すボロノイ図である。
【図6】ギラツキ評価用パターンのユニットセルを示す平面図である。
【図7】ギラツキ評価の状態を示す断面模式図である。
【図8】本発明に係る防眩フィルムを作製するための金型の製造方法を工程毎に示す断面模式図である。
【図9】クロムめっき後に表面を研磨した状態を示す断面模式図である。
【図10】実施例1〜3で得られた防眩フィルムの反射プロファイルを表すグラフである。
【図11】実施例1〜3で得られた防眩フィルムの標高のヒストグラムを表すグラフである。
【図12】比較例1〜2及び実施例4で得られた防眩フィルムの反射プロファイルを表すグラフである。
【図13】比較例1〜2及び実施例4で得られた防眩フィルムの標高のヒストグラムを表すグラフである。
【図14】比較例3及び4で得られた防眩フィルムの反射プロファイルを表すグラフである。
【図15】比較例3及び4で得られた防眩フィルムの標高のヒストグラムを表すグラフである。
【図16】比較例5及び6で得られた防眩フィルムの反射プロファイルを表すグラフである。
【図17】比較例5及び6で得られた防眩フィルムの標高のヒストグラムを表すグラフである。
【図18】比較例7〜12の防眩フィルムについて、標高のヒストグラムを表すグラフである。
【図19】比較例7〜12の防眩フィルムについて、反射プロファイルを表すグラフである。
【符号の説明】
【0127】
11……防眩フィルム、
12……フィルム法線、
13……入射光線方向、
15……正反射方向、
16……任意の反射方向、
18……入射光線方向とフィルム法線を含む面、
θ……反射角、
21……防眩フィルム上の任意の点、
22……防眩フィルム表面、
23……フィルム基準面、
24……防眩フィルム上の任意の点を中心とする円のフィルム基準面への投影円、
26……凸部頂点の投影点(ボロノイ分割の母点)、
27……ボロノイ多角形、
28……平均値にカウントしない測定視野境界に接するボロノイ多角形、
30……フォトマスクのユニットセル、
31……フォトマスクのクロム遮光パターン、
32……フォトマスクの開口部、
33……フォトマスク、
35……ライトボックス、
36……光源、
37……ガラス板、
39……ギラツキの観察位置、
41……金属基材、
42……銅又はニッケルめっき層、
43……研磨面、
44……微粒子をぶつけて形成される凹面、
45……銅めっき層、
46a……微粒子をぶつけて形成される凹凸面をエッチングによって鈍らせた面、
46b……微粒子をぶつけて形成される凹凸面を銅めっきによって鈍らせた面、
47……クロムめっき層、
48……クロムめっき後に残る凹凸面、
49……クロムめっき後の表面を研磨したときに発生する平坦面。
【出願人】 【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆

【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨

【識別番号】100119471
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 雅之


【公開番号】 特開2008−3121(P2008−3121A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−169711(P2006−169711)