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【発明の名称】 光分岐素子、レーザモジュール、及びレーザ光出力安定化光源
【発明者】 【氏名】下津 臣一

【要約】 【課題】レーザ出力安定化光源において、レーザ光の分岐損失をほとんど生じることなくフロントモニタ光を取り出す。

【構成】レーザ光を入射させる第1の光ファイバ10のクラッド部の一部に、クラッド部を進行する光を分離して取り出す第2の光ファイバ11を融着して光分岐素子1を構成する。第2の光ファイバ11からクラッド部を進行する光の少なくとも一部を取り出してモニタする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と、コア部の外周を覆うクラッド部とを含み、レーザ光を少なくとも前記コア部に入射する入射端と、前記コア部から前記レーザ光を出射する出射端とを有する第1の光ファイバと、該第1の光ファイバの前記クラッド部の一部から分岐して、該クラッド部を進行する前記レーザ光の少なくとも一部を分離して取り出す、第2の光ファイバとからなることを特徴とする光分岐素子。
【請求項2】
前記第1の光ファイバが、クラッド部に導波構造を有する光ファイバであることを特徴とする請求項1に記載の光分岐素子。
【請求項3】
前記光ファイバが、ダブルクラッドファイバであることを特徴とする請求項2に記載の光分岐素子。
【請求項4】
前記第1の光ファイバ及び/又は第2の光ファイバのクラッド部が、該クラッド部の屈折率よりも高い屈折率を有する材料により被覆されていないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光分岐素子。
【請求項5】
レーザ光源と、請求項1〜4のいずれかに記載の光分岐素子と、前記レーザ光源から出射された光を前記光分岐素子の前記第1の光ファイバの入射端に集光するレンズとからなることを特徴とするレーザモジュール。
【請求項6】
前記レーザ光源が、出力光の波長が450nm以下であることを特徴とする請求項5に記載のレーザモジュール。
【請求項7】
前記第1の光ファイバ及び/又は前記第2の光ファイバの出射端に、出力用光ファイバが接続されており、該出力用光ファイバと、該出力用光ファイバが接続されている前記第1の光ファイバ及び/又は前記第2の光ファイバとが、下記式を充足していることを特徴とする請求項5又は6に記載のレーザモジュール。
Dout×NAout ≧ Din×NAin
(式中NAinは前記第1の光ファイバ又は前記第2の光ファイバの前記出射端における開口数、NA outは前記出力用光ファイバの開口数、Dinは前記第1の光ファイバ又は前記第2の光ファイバの前記出射端におけるコア径、Doutは出力用光ファイバのコア径である。)
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載のレーザモジュールと、
該レーザモジュールの前記光分岐素子の前記第2の光ファイバの出射端より出射された光を検出する光検出器と、
該光検出器からの出力に応じて、前記レーザ光源からの出力が一定光量になるように、前記レーザ光源の出力を制御する制御手段とからなることを特徴とするレーザ出力安定化光源。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を分岐する光分岐素子、この光分岐素子を用いて構成されたレーザモジュール、及びこのレーザモジュールを用いて構成されたレーザ光出力安定化光源に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザの出力安定化のために、レーザ光をモニタにより監視し、そのモニタ出力を用いてAPC回路で駆動電流にフィードバックをかける方法が一般的に使われている。レーザ光のモニタ方式は、リアモニタ、フロントモニタの2方式に大別される。
【0003】
リアモニタは、レーザ発振の際に生じる後方への漏れ光をモニタ光とする方式で、モニタによるレーザ出力光の分岐損失がないという利点を有している一方、前方からの反射光により影響を受けやすく、またレーザ出力を直接測定していないため、長期的安定性を欠く恐れがある。
【0004】
一方、フロントモニタ方式は、前方からのレーザ出力の一部を取り出してモニタ光とする方式であり、反射戻り光などの影響を受けにくく、長期的な安定性に優れ、また出力を直接モニタしていることから信頼性が高い。しかし、レーザ出力の一部を利用するため分岐損失が避けられず、また分岐に使用する素子の特性やその構成に起因する誤差を生じる恐れがある。
【0005】
特許文献1には、フロントモニタ及びリアモニタの両方を採用してレーザ出力制御を行う方法が開示されている。特許文献1においては、波長により透過率が異なる光学ミラーにより分離したレーザ出力の一部をフロントモニタ光に利用しており、レーザの波長変動に応じた光学ミラーの透過率の変化により生じる検出誤差を、リアモニタにより補正している。
【0006】
特許文献2には、レーザ出力のモニタ光を検出するレーザモジュールにおいて、レーザ光の分離にファイバカプラを用いたレーザモジュールが開示されている。ここには、ファイバカプラを用いることにより、光学系の位置ずれによる分岐比変動を抑え、分岐損失も10%程度に抑えられることが記載されている。
【0007】
レーザ出力のモニタ光の分離に用いるファイバカプラとしては、シングルモード用ファイバに対応するタッピングカプラ(住友電気工業株式会社製光ファイバカプラ 分岐比10/90等)が市販されている。
【特許文献1】特開2004−164681号公報
【特許文献2】実開平5−21465
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術によれば、フロントモニタに使用している光学ミラーの特性に起因する誤差をリアモニタにより補正し、精度を改善することができるが、そのためにはフロントモニタとリアモニタの両方を配備する必要があり、装置構成が複雑である。
【0009】
特許文献2の技術によれば、光学ミラーを用いた場合の分岐損失(10〜20%)に比べて低減しているものの、10%の損失が存在している。
【0010】
また市販のタッピングカプラは、ファイバを延伸加工してファイバコア径を元のコア径の1/5〜1/10程度にまで細径化することによりファイバをテーパ状にし、クラッドの外までモード径を広げてコアを伝搬する光を漏れ出させ、その漏れ出した光を近接チャンネルにカップリングさせて取り出す構成としているためレーザ光の損失を生じる。例えば、10%分岐のタッピングカプラにおける損失は約17%、1%分岐においては約7%の損失を生じる。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、レーザ光の分岐損失をほとんど生じることなくフロントモニタ光を取り出す光分岐素子と、その光分岐素子を用いてレーザ光からモニタ光を検出するレーザモジュールと、そのレーザモジュールを含む制御手段により、容易な構成で、高効率な、安定性の高いレーザ出力安定化光源を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光分岐素子は、コア部とコア部の外周を覆うクラッド部とを含み、レーザ光を少なくともコア部にレーザを入射する入射端と、コア部からレーザ光を出射する出射端とを有する第1の光ファイバと、第1の光ファイバのクラッド部の一部から分岐して、クラッド部を進行するレーザ光の少なくとも一部を分離して取り出す、第2の光ファイバとからなることを特徴とするものである。
【0013】
前記第1の光ファイバは、クラッド部に導波構造を有する光ファイバであることが好ましい。
本明細書において、「光が伝搬する」とは、導波路内を光が進行することをいい、減衰しながらも導波する光も含む。しかし、コア部を伝搬するレーザ出力光がクラッド部にしみ出したエバネッセント波のように、局在する微弱な電磁波がレーザの指向性に従ってクラッド中を進行する場合等は含まれないこととする。
【0014】
クラッド部に導波構造を有する光ファイバとしては、ダブルクラッドファイバが挙げられる。本明細書において、「ダブルクラッドファイバ」とは、クラッド部に二重構造を有し、二重構造によりクラッド部に導波構造を形成している光ファイバの総称として定義することとする。
【0015】
ダブルクラッドファイバには、ピュアシリカのコアの外周にフッ素をドープしたシリカにより形成された第1クラッド部、更にその周りにピュアシリカの第2クラッド部を有する、紫外光用光ファイバ(以下、紫外用フッ素ドープクラッドファイバとする。)、及びコアの外周に形成される第1クラッド部の屈折率より、最外クラッドである第2クラッド部の屈折率が低くなっているファイバレーザ用光ファイバ(以下、ファイバレーザ用ダブルクラッドファイバとする。)等が挙げられる。
【0016】
前記第1の光ファイバ及び/又は前記第2の光ファイバは、クラッド部の屈折率より高い屈折率を有する材料により被覆されていないことが好ましい。これは、クラッド部の屈折率より高い屈折率を有する材料により光ファイバが被覆されていると、第1の光ファイバのクラッド光が第2の光ファイバに結合しにくくなるためである。
【0017】
本発明のレーザモジュールは、レーザ光源と、上記本発明の光分岐素子と、レーザ光源から出射された光を光分岐素子の入射端に集光するレンズとからなることを特徴としている。
前記レーザ光源のから出射される出力光の波長は、450nm以下であることが好ましい。
【0018】
前記第1の光ファイバ及び/又は前記第2の光ファイバの出射端に、出力用光ファイバが接続されており、出力用光ファイバと、接続されているそれぞれの光ファイバとが下記式を充足していることが好ましい。
【0019】
Dout×NAout ≧ Din×NAin
(式中NAinは第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの出射端における開口数、NA outは出力用光ファイバの開口数、Dinは第1の光ファイバ又は第2の光ファイバの出射端におけるコア径、Doutは出力用光ファイバのコア径である。)
本発明のレーザ出力安定化光源は、上記本発明のレーザモジュールと、レーザモジュールを構成する光分岐素子の第2の光ファイバの出射端より出射された光を検出する光検出器と、光検出器からの出力に応じて、レーザからの出力が一定光量になるようにレーザ光源の出力を制御する制御手段とからなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光分岐素子は、コア−クラッド構造を有する第1の光ファイバのクラッド部の一部に、クラッド部を進行する光を分離して取り出す第2の光ファイバを設けた構成としている。かかる構成では、コア部を伝搬する主要光に直接影響を与えることなく、クラッド部を進行する光の少なくとも一部を分離して、第2の光ファイバの出射端より取り出すことができる。
【0021】
また本発明のレーザモジュールは、レーザ光をレンズにより集光して上記の光分岐素子に入射させて、光分岐素子の第1の光ファイバの出射端からレーザ光の主要光を出射し、第2の光ファイバの出射端から、分離されたクラッド光を出力する構成としている。かかる構成では、コア部を伝搬する主要光の分岐損失をほとんど生じることなく、レーザ光の一部を取り出すことができる。
【0022】
本発明のレーザモジュールにより分離された光は、その大部分がクラッドを進行する非結合光やエバネッセント波等、所謂放射損と言われる光からなり、放射損は、モジュールのビーム品位低下要因のひとつとされている。本発明のレーザモジュールによれば、放射損光が取り出されることになり、モジュールのビーム品位低下要因が除去され、モジュールの安定性及び長期信頼性の低下を抑えることができる。
【0023】
一般的に、出力光の波長が450nm以下の短波長レーザは、発信閾値レベルのパワーが大きいので、出力光のモード径が大きく、ビーム品位も良くない。このため、クラッド部に入射する結合損失が多くなってしまう。主要光のパワーは少しでも多く維持されることが望ましく、またモジュールのビーム品位低下要因となるクラッドを進行する光のパワーが大きいため、少しでも多くクラッド光が除去されることが好ましい。本発明のレーザモジュールは、主要光パワー維持効果とモジュール劣化抑制効果の両方を得ることができるので、上記短波長レーザに用いた場合は効果的である。
【0024】
また本発明のレーザ出力安定化光源は、上記レーザモジュールと、レーザモジュールを構成する光分岐素子の第2の光ファイバからの出射光を検出する光検出器と、光検出器からの出力に応じて、レーザ光源からの出力が一定光量になるように、レーザ光源の出力を制御する制御手段とを設けた構成としている。かかる構成では、主要光の分岐損失をほとんど生じることなくフロントモニタ方式のレーザ出力制御を行うことができ、またクラッド光が効果的に除去されるため、安定性及び長期信頼性の低下を抑えたレーザ出力安定化光源を提供することができる。
【0025】
本発明では、特許文献1に記載の技術とは異なり、光ファイバにより構成された分岐素子を利用しているため、ミラー特性に起因する誤差や光学系の位置変動もほとんどなく、フロントモニタのみの簡単な構成で、しかも安定したレーザ出力制御を行うことができる。また、本発明は、特許文献2に記載の技術とは異なり、主要光の損失を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に、本発明について詳述する。
【0027】
「光分岐素子」
図1〜図3を参照して本発明にかかる一実施形態の光分岐素子について説明する。本明細書において、図面は、視認しやすくするため、構成要素の縮尺は実際のものとは適宜異ならせてある。図1は光分岐素子の斜視図である。
【0028】
本実施形態の光分岐素子1は、第1の光ファイバ10のクラッド部の一部に、クラッド部を進行する光(以下、クラッド光Lとする)を分離して取り出す第2の光ファイバ11が融着されて形成されている。なお、図面上は、便宜上、融着部における第1の光ファイバ10と第2の光ファイバ11との境界を明確に図示してあるが、第1の光ファイバ10と第2の光ファイバ11との境界は明確なものではない。また、融着部において、実際には第1の光ファイバ及び第2の光ファイバはテーパ状に変形しているため、ファイバの外径やコア径等も同様に変形しているが、その形状や大きさの変化については省略してある。
【0029】
本実施形態の第1の光ファイバ10としては特に制限なく、クラッド部に導波構造を有する光ファイバであることが好ましい。クラッド部に導波構造を有する光ファイバとしては、紫外用フッ素ドープクラッドファイバやファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ等のダブルクラッドファイバが挙げられる。紫外用フッ素ドープファイバ、ファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ及び通常の光通信で使用される赤外用ファイバの径方向断面図と、径方向の屈折率分布を表す模式図を、図2(a)〜(c)に示す。図2において、屈折率分布を表す模式図の横軸は光ファイバ径に対応しており、縦軸は屈折率を示している。横軸と、断面図における位置は、波線を用いて対応を表示している。
【0030】
図2(a)、(b)に示されるように、紫外用フッ素ドープクラッドファイバ及びファイバレーザ用ダブルクラッドファイバは、クラッド部に屈折率の差を有する構造を持っており、屈折率の高い方のクラッド部は導波路となるため、光を伝搬させることができる。(c)の赤外用ファイバはクラッド部に導波路構造がないため、クラッド部に光を伝搬させることはできないが、結合損失でクラッド部に入射された光等の、所謂クラッドモードは数十センチ程度クラッド部を進行しながら徐々に放射されるため、クラッドモードが進行している長さの範囲であれば、導波路構造を持たないファイバであっても、第1の光ファイバ10として用いることができる。また、第1の光ファイバ10は、クラッド部の屈折率より高い屈折率を有する材料により被覆されていないことが好ましい。
【0031】
第2の光ファイバ11としては特に制限なく、コア径の大きなマルチモードファイバである場合は、簡易に効率よくクラッド光を分離することができる。また、第2の光ファイバ11は、クラッド部の屈折率より高い屈折率を有する材料により被覆されていないことが好ましい。
【0032】
第1の光ファイバ10と第2の光ファイバ11との融着方法としては特に制限なく、例えば、加熱延伸が挙げられる。加熱延伸時には、加熱延伸部分において、第2の光ファイバ11が第1の光ファイバ10のコアに接触しないように加熱温度、延伸条件をファイバの種類に応じて適宜調整する必要がある。例えば、1500℃±200℃で1〜10mmファイバを延伸することで構成できる。
【0033】
加熱延伸により、第1の光ファイバ10及び第2の光ファイバ11はファイバ径が細径化してテーパ状に形状が変形し、モード径が広がるが、本実施形態の光分岐素子1の構成においては、細径化の程度が小さくてよく、第1の光ファイバ10のモード径がクラッドの外にまで広がる程度まで細径化する必要はない。
【0034】
図3(a)〜(c)は、図1のAの位置(分岐部)及びBの位置(融着部)における断面図であり、(a)は、紫外用フッ素ドープクラッドファイバ、(b)は、ファイバレーザ用ダブルクラッドファイバ(c)は赤外用光ファイバ、を、第1の光ファイバ10としてそれぞれ用いた場合の断面図である。図3(a)〜(c)において第2光ファイバ11は、マルチモードファイバであり、クラッド部の外周に被覆層のないものを例に示している。
【0035】
図3のいずれの場合にも示されるように、本実施形態の光分岐素子1においては、第2の光ファイバ11は、第1の光ファイバ10のクラッド部にのみ融着された構成となっており、また、タッピングカプラと異なり、融着時の細径化によるモード径の広がりも小さいため、コア部を伝搬する主要光パワーにほとんど影響を及ぼすことなくクラッド光Lの少なくとも一部を分離して取り出すことができる。しかしながら、モード径の広がりは、若干クラッド部に及んでいるため、主要光が僅かにクラッド部に漏れだしてクラッド光の一部となって進行していることも考えられる。そのため、僅かにクラッド部に広がったモード径に起因する、若干の分岐損失を生じる可能性があるが、タッピングカプラに比してその影響は小さく、図3に記載のいずれの構成においても、タッピングによりコア部を伝搬する主要光を取り出す光分岐素子において限界とされている7%を下回る損失値で光を分離することができる。
【0036】
「レーザモジュール及びレーザ出力安定化光源の第1実施形態」
図4を参照して、本発明にかかるレーザモジュール及びレーザ出力安定化光源の第1実施形態について説明する。図4は、本実施形態によるレーザ出力安定化光源3の概略図である。
【0037】
本実施形態のレーザモジュール2は、レーザ光源20と、レーザ光源20から出射された光を光分岐素子1の入射端1aに集光するレンズ21と、光分岐素子1の第1の光ファイバの出射端10aに接続され、レーザ主要光Lを出力させる出力用光ファイバFと、光分岐素子1の第2の光ファイバの出射端11aに接続され、第2の光ファイバの出射端11aより出射されたクラッド光Lを出射端F2aから出力させる、出力用ファイバFにより構成されている。
【0038】
本実施形態のレーザ光源20は特に制限なく、出力波長が450nm以下であることが好ましい。
【0039】
本実施形態の出力用光ファイバF及びFは、光ファイバの導波路構造(構造不整や不純物、表面付着物等の影響を除く)に起因する接続損失を最小化するために、下記式を充足していることが好ましい。
【0040】
Dout×NAout ≧ Din×NAin
(式中NAinは第1の光ファイバ10又は第2の光ファイバ11の各出射端(10a、11a)における開口数、NA outは出力用光ファイバF又はFの開口数、Dinは第1の光ファイバ10又は第2の光ファイバ11の各出射端(10a、11a)におけるコア径、Doutは出力用光ファイバF又はFのコア径である。)
本実施形態のレーザモジュール2は、コア部を伝搬する主要光Lのパワーにほとんど影響を及ぼすことなくクラッド光Lの少なくとも一部を分離して取り出すことができる本発明の光分岐素子1を構成要素としており、光分岐素子1と同様の効果をもってモニタ光を取り出すことができる。本実施形態のレーザモジュール2により検出されるモニタ光は、大部分がクラッドを進行する非結合光やエバネッセント波等、所謂結合損と言われる光からなり、結合損は、モジュールのビーム品位劣化要因のひとつとされている。本発明のレーザモジュール2によれば、ビーム品位劣化要因が取り出されるので、モジュールのビーム品位が向上し、モジュールの安定性及び長期信頼性の低下を抑えることができる。
【0041】
特に、GaN等の出力波長が450nm以下の短波長レーザの場合は、発信閾値レベルのパワーが高く、出力光のモード径が大きく、クラッド部に入射する結合損失が多くなる傾向がある。そのため主要光Lのパワーが少しでも多く維持されることが望ましく、またモジュールのビーム品位劣化の要因となるクラッド伝搬光のパワーが大きいため、少しでも多くクラッド光Lが除去されることが好ましい。本発明のレーザモジュール2は、主要光パワー維持効果と良好なビーム品位の両方を得ることができるため、上記短波長レーザにおいては特に効果的であり、好ましい。
【0042】
本実施形態のレーザ出力安定化光源3は、図4に示されるように、上記レーザモジュール2と、出力用ファイバFの出射端F2aから出力されるクラッド光Lをモニタ光としてレーザ光源20の出力を制御するAPC回路30とにより構成されている。APC回路30は、出力用ファイバFの出射端F2aから出力されるクラッド光Lを検出する光検出器31と、光検出器31からの出力に応じてレーザ光源20を制御する制御手段32とにより構成されており、制御手段32は、検出器31からの出力電圧と基準電圧Vrefとの電圧差を検出する差動増幅器32aと、差動増幅器32aの出力によりレーザ光源20の駆動電流を制御するレーザ駆動回路32bとにより構成されている。
【0043】
かかる構成では、レーザモジュール2からの出力電圧に応じて、APC回路30によりレーザ光源20の駆動電流を制御し、レーザ光源20の出力を安定化させることができる。レーザ出力安定化光源3において、APC回路30への入力信号は、上記レーザモジュール2からの出力であることから、レーザモジュール2と同様の理由で、光分岐素子1と同様の効果をもって高効率にレーザ出力を制御することができる。
【0044】
「背景技術」の項において、従来のレーザ出力安定化光源において、APC回路によるレーザ光のモニタ方式は、リアモニタ、フロントモニタの2方式に大別され、リアモニタは、前方からの反射光により影響を受けやすく、長期的安定性を欠く恐れがあること、一方、フロントモニタ方式は、分岐損失が避けられず、また分岐方法に起因する誤差を生じる恐れがあることを述べた。
【0045】
本実施形態のレーザ出力安定化光源3では、光分岐素子1により主要光Lの分岐損失をほとんど生じずにフロントモニタ方式のAPC回路を構成することができる。従って反射光の影響を受けにくく安定性、信頼性に優れ、しかも分岐損失をほとんど生じない、つまり、リア、フロントそれぞれのモニタ方式の利点を併せ持つモニタ方式によるAPC回路により、レーザ出力を制御することができる。
【0046】
また、光出力端面の汚染物付着や、フォトダイオードの経時劣化を防ぐことを目的として、モニタ光強度を弱くしたい場合等は、レーザ光源20と光分岐素子1との距離を調節することにより任意のモニタ光強度を得ることができる。
【0047】
「レーザ出力安定化光源の第2実施形態」
図5を参照して、本発明にかかるレーザ出力安定化光源の第2実施形態について説明する。図5は、本実施形態による温度制御を制御手段としたレーザ出力安定化光源4の概略図であり、第1実施形態と同じ構成要素については同じ参照符号を付して説明は省略する。
【0048】
本実施形態のレーザ出力安定化光源4は、上記レーザモジュール2と、出力用ファイバFの出射端F2aから出射されるクラッド光Lをモニタ光として検出する光検出器31と、この光検出器31からの出力によりレーザ光源20の温度変化による出力の変動を補償する温度制御手段40とにより構成されている。かかる構成では、レーザモジュール2の出力に応じてレーザ光源20の温度補償を行うことによりレーザ出力を一定に保つことができる。
【実施例】
【0049】
本発明にかかる実施例について説明する。
【0050】
(実施例1)
第1の光ファイバ10として、コア径60μm、第1クラッド径72μm、第2クラッド径125μm、開口数0.22の紫外用フッ素ドープクラッドファイバを用意し、第2の光ファイバ11としてコア径105μm、クラッド径125μm、開口数0.22のマルチモードファイバを用意した。第1の光ファイバ10と第2の光ファイバ11の一部を約1500℃にて加熱し、60μm/sの速度で5〜20秒間熱延伸した後、2本の光ファイバを接触させて融着し、光分岐素子1を作製した。
【0051】
この光分岐素子1を用いて、図4に示したレーザ出力安定化光源3を作製した。レーザ光源20にはGaN半導体レーザ(出力200mW)を使用した。このとき、レーザ光Lの光分岐素子1への結合効率は70〜80%程度であった。光分岐素子1の第1の光ファイバの出射端10a及び第2の光ファイバの出射端11aにはそれぞれ出力用光ファイバF及びFを融着にて接続した。出力用光ファイバF1としては、第1の光ファイバ10と同様の光ファイバ、出力用光ファイバFとしては、第2の光ファイバ11と同様の光ファイバを使用し、Fの出力をフォトダイオード31にて検出した。
【0052】
光分岐素子通過後の主要光Lのパワーは140〜160mWが得られ、分岐損失はほとんど無く、数mWのモニタ光を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の光分岐素子は、レーザ出力安定化装置に用いられるAPC回路等に好ましく適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明にかかる一実施形態の光分岐素子の斜視図
【図2】(a)〜(c)は、第1の光ファイバの構成例を示す径方向断面図及び径方向の屈折率分布模式図
【図3】(a)〜(c)は、図1の光分岐素子の融着部及び分岐部の構成例を示す径方向断面図
【図4】本発明にかかるレーザ出力安定化光源の第1実施形態の概略図
【図5】本発明にかかるレーザ出力安定化光源の第2実施形態の概略図
【符号の説明】
【0055】
1 光分岐素子
1a 光分岐素子1入射端
10 第1の光ファイバ
10a 第1の光ファイバ出射端
100 第1光ファイバのコア部
101 第1光ファイバの第1クラッド部
102 第1光ファイバの第2クラッド部
11 第2の光ファイバ
11a 第2の光ファイバ出射端
110 第2の光ファイバのコア部
111 第2の光ファイバのクラッド部
2 レーザモジュール
20 レーザ光源
21 レンズ
3 APC制御によるレーザ出力安定化光源
30 APC回路
31 光検出器
32 制御手段
4 温度制御によるレーザ出力安定化光源
40 温度制御手段
L レーザ光
レーザ主要光
クラッド光
、F 出力用ファイバ
2a 出力用ファイバFの出射端
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史

【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛


【公開番号】 特開2008−3116(P2008−3116A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−169629(P2006−169629)