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【発明の名称】 台風中心検出装置
【発明者】 【氏名】酒巻 洋

【氏名】若山 俊夫

【要約】 【課題】台風の中心付近に明瞭な円領域又は楕円領域の非降雨帯領域が存在しない場合や、降雨帯の分布に偏りがあって最大/最小のドップラ速度を検出することができない場合でも、精度よく台風の中心位置を求めることができるようにする。

【構成】所定のドップラ速度値を有する1以上の等ドップラ速度領域を連結して等ドップラ速度線を形成する等ドップラ速度線形成部12と、等ドップラ速度線形成部12により形成された等ドップラ速度線の収束度を算出する等ドップラ速度線収束度算出部13とを設け、等ドップラ速度線収束度算出部13により算出された等ドップラ速度線の収束度から台風の中心位置を検出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測領域における降水粒子のドップラ速度分布を計測するドップラ速度分布計測手段と、上記ドップラ速度分布計測手段により計測されたドップラ速度分布から所定のドップラ速度値を有する等ドップラ速度領域を抽出する等ドップラ速度領域抽出手段と、上記等ドップラ速度領域抽出手段により抽出された1以上の等ドップラ速度領域を連結して等ドップラ速度線を形成する等ドップラ速度線形成手段と、上記等ドップラ速度線形成手段により形成された等ドップラ速度線の収束度を算出する収束度算出手段と、上記収束度算出手段により算出された等ドップラ速度線の収束度から台風の中心位置を検出する中心位置検出手段とを備えた台風中心検出装置。
【請求項2】
収束度算出手段は、等ドップラ速度線形成手段により形成された等ドップラ速度線を延長し、延長先の等ドップラ速度線の収束度を算出することを特徴とする請求項1記載の台風中心検出装置。
【請求項3】
等ドップラ速度領域抽出手段は、零のドップラ速度値を有する等ドップラ速度領域を抽出することを特徴とする請求項1または請求項2記載の台風中心検出装置。
【請求項4】
ドップラ速度分布計測手段により計測されたドップラ速度分布から所定のドップラ速度値を有する等ドップラ速度領域を抽出し、1以上の等ドップラ速度領域を連結して1以上の等ドップラ速度線を形成し、1以上の等ドップラ速度線の中から直線とみなせる等ドップラ速度線を検出して、観測領域を上記等ドップラ速度線の周辺領域に限定する観測領域限定手段を設け、等ドップラ速度領域抽出手段が上記ドップラ速度分布計測手段により計測されたドップラ速度分布のうち、上記観測領域限定手段により限定された観測領域のドップラ速度分布から所定のドップラ速度値を有する等ドップラ速度領域を抽出することを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の台風中心検出装置。
【請求項5】
観測領域限定手段は、直線とみなせる等ドップラ速度線を延長し、観測領域を延長先の等ドップラ速度線の周辺領域に限定することを特徴とする請求項4記載の台風中心検出装置。
【請求項6】
観測領域限定手段は、直線とみなせる等ドップラ速度線を検出する際、等ドップラ速度線又は等ドップラ速度線を外挿した直線が、レーダ位置の近傍を通るものに限定して検出することを特徴とする請求項4記載の台風中心検出装置。
【請求項7】
観測領域における降水領域のエコー強度分布を計測して、上記エコー強度分布から台風の降雨帯領域を検出し、ドップラ速度分布計測手段の観測領域を上記降雨帯領域に限定する観測領域限定手段を設けたことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の台風中心検出装置。
【請求項8】
観測領域における降水粒子のドップラ速度分布を計測するドップラ速度分布計測手段と、上記ドップラ速度分布計測手段により計測されたドップラ速度分布から所定のドップラ速度値を有する等ドップラ速度領域を抽出する等ドップラ速度領域抽出手段と、上記等ドップラ速度領域抽出手段により抽出された1以上の等ドップラ速度領域を連結して等ドップラ速度線を形成する等ドップラ速度線形成手段と、上記等ドップラ速度線形成手段により形成された等ドップラ速度線の収束度を算出する収束度算出手段と、上記収束度算出手段により算出された等ドップラ速度線の収束度から収束域を求め、上記収束域の周辺領域のエコー強度分布を計測して、上記エコー強度分布から台風の降雨帯領域を検出する降雨帯領域検出手段と、上記降雨帯領域検出手段により検出された降雨帯領域の中心位置を検出する中心位置検出手段とを備えた台風中心検出装置。
【請求項9】
収束度算出手段は、所定領域における等ドップラ速度領域の割合から等ドップラ速度線の収束度を算出することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の台風中心検出装置。
【請求項10】
収束度算出手段は、所定点における等ドップラ速度領域の連結数から等ドップラ速度線の収束度を算出することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の台風中心検出装置。
【請求項11】
収束度算出手段は、等ドップラ速度線の曲率から等ドップラ速度線の収束度を算出することを特徴とする請求項1から請求項8のうちのいずれか1項記載の台風中心検出装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、台風の中心位置を検出する台風中心検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の台風中心検出装置は、台風の中心には降雨帯が無い閉じた円領域又は楕円領域が存在することを利用する検出方法を使用している。
即ち、従来の台風中心検出装置は、例えば、気象衛星画像やレーダ画像などを台風の降雨帯がある部分と無い部分に分けて、降雨帯が無い閉じた円領域又は楕円領域を探索し、その円領域又は楕円領域の中心を求めることで、台風の中心位置を検出するようにしている(例えば、特許文献1を参照)。
しかし、この検出方法では、台風の中心付近に明瞭な円領域又は楕円領域の非降雨帯領域を有する降雨帯が存在することを前提としているため、台風の中心付近に明瞭な円領域又は楕円領域の非降雨帯領域が存在しない場合には、精度よく台風の中心位置を求めることが困難である。
【0003】
上記の台風中心検出装置の他に、台風領域では、風の場が台風の中心位置に関して軸対称になると仮定し、ドップラレーダの観測値を用いて、ドップラ速度の分布から中心位置を求める検出方法を使用する台風中心検出装置も開発されている(例えば、非特許文献1を参照)。
しかし、この検出方法では、最大/最小のドップラ速度を有する降雨帯が観測されることを前提としているため、降雨帯の分布に偏りがあり、最大/最小のドップラ速度を検出することができない場合には、精度よく台風の中心位置を求めることが困難である。
【0004】
また、一般に台風時のドップラ速度は、平常時のドップラ速度と比べて大きく、通常の降水粒子を観測する波長3cm〜10cmの気象ドップラレーダでは、ドップラ速度の折り返しが生じる。
例えば、送信周波数が5GHz(C帯、波長約6cm)、パルス繰り返し周波数が260Hzのレーダでは、+3.9m/s以上のドップラ速度と−3.9m/s以下のドップラ速度で折り返しが生じる。台風時のドップラ速度は、数十m/sにもなるため、折り返し補正が必要となる。
よって、ドップラ速度の折り返し補正が適切に行われない場合には、台風の中心位置の検出精度が劣化する。
【0005】
【特許文献1】特開2000−98055号公報(段落番号[0018]から[0023]、図1)
【非特許文献1】V.T.Wood「A technique for detecting a tropical cyclone center using a Doppler radar」J.Atmos.Oceanic Technol.,11,1207−1216.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の台風中心検出装置は以上のように構成されているので、台風の中心付近に明瞭な円領域又は楕円領域の非降雨帯領域が存在しない場合や、降雨帯の分布に偏りがあって最大/最小のドップラ速度を検出することができない場合には、精度よく台風の中心位置を求めることが困難である課題があった。
また、ドップラ速度の折り返し補正が適切に行われない場合には、台風の中心位置の検出精度が劣化する課題があった。
【0007】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、台風の中心付近に明瞭な円領域又は楕円領域の非降雨帯領域が存在しない場合や、降雨帯の分布に偏りがあって最大/最小のドップラ速度を検出することができない場合でも、精度よく台風の中心位置を求めることができる台風中心検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る台風中心検出装置は、所定のドップラ速度値を有する1以上の等ドップラ速度領域を連結して等ドップラ速度線を形成する等ドップラ速度線形成手段と、その等ドップラ速度線形成手段により形成された等ドップラ速度線の収束度を算出する収束度算出手段とを設け、その収束度算出手段により算出された等ドップラ速度線の収束度から台風の中心位置を検出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、所定のドップラ速度値を有する1以上の等ドップラ速度領域を連結して等ドップラ速度線を形成する等ドップラ速度線形成手段と、その等ドップラ速度線形成手段により形成された等ドップラ速度線の収束度を算出する収束度算出手段とを設け、その収束度算出手段により算出された等ドップラ速度線の収束度から台風の中心位置を検出するように構成したので、台風の中心付近に明瞭な円領域又は楕円領域の非降雨帯領域が存在しない場合や、降雨帯の分布に偏りがあって最大/最小のドップラ速度を検出することができない場合でも、精度よく台風の中心位置を求めることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による台風中心検出装置を示す構成図であり、図において、ドップラ速度分布計測部1は例えばドップラレーダから構成されており、大気中に電磁波を放射して、観測領域の降水粒子に反射された電磁波を受信することにより、観測領域における降水粒子のドップラ速度分布を計測する処理を実施する。なお、ドップラ速度分布計測部1はドップラ速度分布計測手段を構成している。
【0011】
台風中心検出部2は等ドップラ速度領域抽出部11、等ドップラ速度線形成部12、等ドップラ速度線収束度算出部13及び中心位置検出部14から構成されており、ドップラ速度分布計測部1により計測されたドップラ速度分布から台風の中心位置を検出する処理を実施する。
表示部3は台風中心検出部2により検出された台風の中心位置を表示するディスプレイなどの表示装置である。
【0012】
台風中心検出部2の等ドップラ速度領域抽出部11は抽出対象の等ドップラ速度領域が有するドップラ速度値の設定を受け付けて、ドップラ速度分布計測部1により計測されたドップラ速度分布から当該ドップラ速度値を有する等ドップラ速度領域を抽出する処理を実施する。なお、等ドップラ速度領域抽出部11は等ドップラ速度領域抽出手段を構成している。
台風中心検出部2の等ドップラ速度線形成部12は等ドップラ速度領域抽出部11により抽出された1以上の等ドップラ速度領域のうち、空間的に隣接している等ドップラ速度領域同士を連結、あるいは、所定の距離内にある等ドップラ速度領域同士を連結して、等ドップラ速度線を形成する処理を実施する。なお、等ドップラ速度線形成部12は等ドップラ速度線形成手段を構成している。
【0013】
台風中心検出部2の等ドップラ速度線収束度算出部13は等ドップラ速度線形成部12により形成された等ドップラ速度線の収束度(等ドップラ速度線の空間的な密集度)を算出する処理を実施する。なお、等ドップラ速度線収束度算出部13は収束度算出手段を構成している。
台風中心検出部2の中心位置検出部14は等ドップラ速度線収束度算出部13により算出された等ドップラ速度線の収束度の最も高い位置を探索し、収束度の最も高い位置を台風の中心位置として表示部3に出力する処理を実施する。なお、中心位置検出部14は中心位置検出手段を構成している。
図9はこの発明の実施の形態1による台風中心検出装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0014】
次に動作について説明する。
ドップラ速度分布計測部1は、大気中に電磁波を放射して、観測領域の降水粒子に反射された電磁波を受信することにより(ステップST1)、観測領域における降水粒子のドップラ速度分布を計測する(ステップST2)。
ここで、降水粒子のドップラ速度の算出処理は公知技術であるが、例えば、降水粒子に反射された電磁波を受信すると、その受信信号のドップラ周波数を算出して、そのドップラ周波数をドップラ速度に換算することにより、降水粒子のドップラ速度を求めることができる。
【0015】
具体的には、次のようにして、観測領域における降水粒子のドップラ速度分布を計測する。
ドップラ速度分布計測部1は、空中線を用いて、ビームを指向した方向に電磁波を複数回送信することにより、各距離毎に複数の受信信号サンプルを観測する。
ドップラ速度分布計測部1は、各距離毎に複数の受信信号サンプルを観測すると、これらの受信信号サンプルにフーリエ変換を施して、各周波数点の電力を算出することにより、受信信号のパワースペクトルを求める。
ドップラ速度分布計測部1は、受信信号のパワースペクトルを求めると、下記に示すように、そのパワースペクトルがピークを持つ周波数がドップラ周波数fDであるとして、降水粒子のドップラ速度VDを算出する。
D=fDλ/2
ただし、λはドップラ速度分布計測部1から送信される電磁波の波長である。
【0016】
このように、ドップラ速度分布計測部1は、各距離毎に、降水粒子のドップラ速度VDを算出するため、空中線のビーム指向方向のドップラ速度の距離分布が得られる。
したがって、ドップラ速度分布計測部1が空中線の指向方向を変えて同様の観測を繰り返せば、各方向でドップラ速度の距離分布が得られ、最終的にドップラ速度の空間分布が得られる。
なお、ドップラ速度の算出方法は、例えば、以下の非特許文献に開示されている。
・非特許文献
Doviak and Zrnic,Doppler Radar and Weather Observations,Second Edition,Academic Press,inc.,1993.
【0017】
この実施の形態1では、説明の簡単化のため、上記の非特許文献1と同様に、台風の風速分布が軸対称であるとして説明を行う。
図10は台風を模擬した風速分布を矢印で表している説明図である。
同図において、矢印の方向が風向を、矢印の長さが風速を表している。
図10の例では、台風の中心位置は、横軸が“40”、縦軸が“30”の位置であり、横軸が“0”、縦軸が“0”の位置にある菱形がドップラレーダの位置を表している。
図10の台風風速分布では、中心位置から半径10の円周上(台風のコアと想定)において、最も接線方向の風速値が高く、それよりも、内側及び外側にいくにつれて風速が小さくなっている。
【0018】
図11は図10の台風を観測したときのドップラ速度分布を表している説明図であり、図11はドップラ速度の計測値を濃淡表示したものである。ただし、この計測値は、あるドップラ速度Vrで折り返したものとなっている。白の領域が−Vr、黒の領域が+Vrのドップラ速度が得られている。実際には+Vrよりも大きなドップラ速度、または、−Vrよりも小さなドップラ速度が真値であるが、エイリアシングによってドップラ速度の計測値が折り返し、−Vrから+Vrの範囲のドップラ速度のみが計測値として得られている。
等ドップラ線は、図11に示すように、ドップラレーダの位置と台風の中心位置で収束する。
【0019】
台風中心検出部2の等ドップラ速度領域抽出部11は、予め設定されたドップラ速度値を用いて(ステップST3)、ドップラ速度分布計測部1により計測されたドップラ速度分布から当該ドップラ速度値を有する等ドップラ速度領域を抽出する(ステップST4)。
なお、等ドップラ速度領域を抽出するために設定するドップラ速度値は、複数の値を用いるようにしてもよい。例えば、−5m/s,0m/s,5m/sというように3種類のドップラ速度値を有する等ドップラ速度領域を抽出するようにしてもよい。
以下、等ドップラ速度領域抽出部11における等ドップラ速度領域の抽出処理を具体的に説明する。
ここでは、説明の便宜上、ドップラ速度分布計測部1により計測されたドップラ速度が図12に示すように、4×4の2次元のメッシュで区切られているものとする。
図12の各メッシュにおける数字はドップラ速度を表している。
【0020】
等ドップラ速度領域抽出部11は、例えば、ドップラ速度値が0m/s、もしくは、−0.1〜0.1m/sの範囲のドップラ速度領域を抽出するように設定された場合、そのドップラ速度値の設定値と各メッシュにおけるドップラ速度分布を比較する。
図13の上図における矢印は、メッシュの比較順序を示しており、左上のメッシュから順番に右下のメッシュまで比較する様子を示している。
等ドップラ速度領域抽出部11は、メッシュのドップラ速度分布が0m/s、もしくは、−0.1〜0.1m/sの範囲である場合、図13の下図に示すように、“1”の符号を付し、そうでなければ、“0”の符号を付する。
そして、等ドップラ速度領域抽出部11は、“1”の符号を付しているメッシュの領域が等ドップラ速度領域であるとして抽出する。
【0021】
台風中心検出部2の等ドップラ速度線形成部12は、等ドップラ速度領域抽出部11が等ドップラ速度領域を抽出すると、等ドップラ速度領域抽出部11により抽出された1以上の等ドップラ速度領域のうち、空間的に隣接している等ドップラ速度領域同士を連結、あるいは、所定の距離内にある等ドップラ速度領域同士を連結して、等ドップラ速度線を形成する(ステップT5)。
以下、等ドップラ速度線形成部12における等ドップラ速度線の形成処理を具体的に説明する。
ここでは、説明の便宜上、図14に示すように、注目メッシュの前後左右斜めに8つのメッシュ(以下、「対象メッシュ」と称する)が存在する場合を想定する。
【0022】
等ドップラ速度線形成部12は、8つの対象メッシュの中で、“1”の符号を付しているメッシュを有している対象メッシュを探索する。
例えば、8つの対象メッシュの中で、(1)の対象メッシュと、(5)の注目メッシュと、(9)の対象メッシュが、“1”の符号を付しているメッシュを有していれば、(1)の対象メッシュと、(5)の注目メッシュと、(9)の対象メッシュが有している“1”の符号を付しているメッシュを連結することにより、等ドップラ速度線(連結線)を形成する。
この場合、等ドップラ速度線の太さは1メッシュ分になるが、例えば、等ドップラ速度線を抽出する速度範囲を−5m/s〜+5m/sのように広げれば、複数メッシュ分の太さを持つ等ドップラ速度線が抽出されることになる。
【0023】
台風中心検出部2の等ドップラ速度線収束度算出部13は、等ドップラ速度線形成部12が等ドップラ速度線を形成すると、ある点、もしくは、小領域における等ドップラ速度線の収束度(等ドップラ速度線の空間的な密集度)を算出する(ステップST6)。
即ち、等ドップラ速度線収束度算出部13は、ある範囲内に含まれている等ドップラ速度線の本数を調べることで、収束しているか否かを判定することができるので、例えば、ある対象メッシュに含まれている等ドップラ速度線の本数を調べることにより、当該対象メッシュにおける等ドップラ速度線の収束度を求める。
【0024】
また、等ドップラ速度線の収束度は、例えば、ある所定領域(面積)における等ドップラ速度領域の割合(面積)によって定義することもできる。
台風の中心位置付近では、等ドップラ速度線が密集するため、ある所定領域中の等ドップラ速度領域の割合が高くなるからである。
【0025】
また、等ドップラ速度線の収束度は、例えば、ある点、もしくは、小領域における等ドップラ速度線の連結数によって定義することもできる。
等ドップラ速度線は、ドップラレーダの位置と台風の中心位置において収束するので、その2点では、等ドップラ速度線の連結数が高くなるからである。
一般に、ドップラレーダの位置と台風の中心位置とでは、台風の中心位置付近のドップラ速度値が高くなるため、台風の中心位置での連結数の方が高くなる。
図15は連結数による収束度の定義を模式的に示す説明図である。図において、101〜105は等ドップラ速度線である。
今、小領域を矩形領域106に設定したものとする。このとき、矩形領域106に連結する等ドップラ速度線は5本、即ち、連結数が5となる。
一方、小領域を矩形領域107に設定した場合、矩形領域107に連結する等ドップラ速度線は102のみであり、連結数は2となる。
連結数は等ドップラ速度線が収束する領域で大きくなる。したがって、連結数を収束度を表す値として定義することができる。
【0026】
また、等ドップラ速度線の収束度は、例えば、ある所定領域に含まれる等ドップラ速度線の曲率によって定義することもできる。
等ドップラ速度線が密集する台風の中心位置付近では、図11に示すように、等ドップラ速度線が同心円状に分布するため、他の領域の等ドップラ速度線と比べて、その曲率が高くなるからである。
【0027】
台風中心検出部2の中心位置検出部14は、等ドップラ速度線収束度算出部13が等ドップラ速度線の収束度を算出すると、ドップラレーダの位置以外で、等ドップラ速度線の収束度が最大の位置を探索する(ステップST7)。
中心位置検出部14は、等ドップラ速度線の収束度が最大の位置を探索すると、収束度が最大の位置が台風の中心位置であると認定して、その台風の中心位置を表示部3に出力する。
表示部3は、台風中心検出部2から台風の中心位置を受けると、台風の中心位置をディスプレイに表示する(ステップST8)。
【0028】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、所定のドップラ速度値を有する1以上の等ドップラ速度領域を連結して等ドップラ速度線を形成する等ドップラ速度線形成部12と、その等ドップラ速度線形成部12により形成された等ドップラ速度線の収束度を算出する等ドップラ速度線収束度算出部13とを設け、その等ドップラ速度線収束度算出部13により算出された等ドップラ速度線の収束度から台風の中心位置を検出するように構成したので、台風の中心付近に明瞭な円領域又は楕円領域の非降雨帯領域が存在しない場合や、降雨帯の分布に偏りがあって最大/最小のドップラ速度を検出することができない場合でも、精度よく台風の中心位置を求めることができる効果を奏する。
【0029】
即ち、この実施の形態1によれば、等ドップラ速度線の収束度が最大の位置が台風の中心位置であるとして検出するため、例えば、台風の降水領域が台風の中心位置付近に空間的に一様に分布しており、降雨帯が明瞭ではない場合でも、適切に台風の中心位置を検出することができる。
また、この実施の形態1によれば、等ドップラ速度線の収束度によって台風の中心位置を検出しており、検出性能がドップラ速度値に依存しないため、例えば、台風の風速がレーダの可観測ドップラ速度を上回り、折り返しが生じている場合にも、折り返し補正をせずに、台風の中心位置を検出することができる。
【0030】
実施の形態2.
図2はこの発明の実施の形態2による台風中心検出装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
等ドップラ速度線延長部15は等ドップラ速度線形成部12により形成された等ドップラ速度線を延長する処理を実施する。
等ドップラ速度線収束度算出部16は等ドップラ速度線延長部15により延長された等ドップラ速度線の延長先の収束度を算出する処理を実施する。
なお、等ドップラ速度線延長部15及び等ドップラ速度線収束度算出部16から収束度算出手段が構成されている。
【0031】
上記実施の形態1では、台風中心検出部2の等ドップラ速度線収束度算出部13が等ドップラ速度線形成部12により形成された等ドップラ速度線の収束度を算出するものについて示したが、空間的に降雨領域(降雨帯の面積)が少ない場合には、台風の中心位置の検出精度が若干劣化する可能性がある。
そこで、この実施の形態2では、空間的に降雨領域(降雨帯の面積)が少ない場合には、台風中心検出部2の等ドップラ速度線延長部15が、等ドップラ速度線形成部12により形成された等ドップラ速度線を曲率を保持したまま延長し、等ドップラ速度線収束度算出部16が延長先の等ドップラ速度線の収束度を算出するようにしている。
これにより、空間的に降雨領域(降雨帯の面積)が少ない場合でも、台風の中心位置を通る等ドップラ速度線の収束度を求めることができるため、精度よく台風の中心位置を検出することができる効果を奏する。
【0032】
実施の形態3.
図3はこの発明の実施の形態3による台風中心検出装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
台風中心検出部2の0ドップラ速度領域抽出部11aはドップラ速度分布計測部1により計測されたドップラ速度分布から“0”のドップラ速度値を有する等ドップラ速度領域(以下、「0ドップラ速度領域」と称する)を抽出する処理を実施する。なお、0ドップラ速度領域抽出部11aは等ドップラ速度領域抽出手段を構成している。
台風中心検出部2の0ドップラ速度線形成部12aは0ドップラ速度領域抽出部11aにより抽出された1以上の0ドップラ速度領域のうち、空間的に隣接している0ドップラ速度領域同士を連結、あるいは、所定の距離内にある0ドップラ速度領域同士を連結して、0ドップラ速度線を形成する処理を実施する。なお、0ドップラ速度線形成部12aは等ドップラ速度線形成手段を構成している。
【0033】
台風中心検出部2の0ドップラ速度線収束度算出部13aは0ドップラ速度線形成部12aにより形成された0ドップラ速度線の収束度(0ドップラ速度線の空間的な密集度)を算出する処理を実施する。なお、0ドップラ速度線収束度算出部13aは収束度算出手段を構成している。
台風中心検出部2の中心位置検出部14aは0ドップラ速度線収束度算出部13aにより算出された0ドップラ速度線の収束度の最も高い位置を探索し、収束度の最も高い位置を台風の中心位置として表示部3に出力する処理を実施する。なお、中心位置検出部14aは中心位置検出手段を構成している。
【0034】
次に動作について説明する。
上記実施の形態1では、台風中心検出部2の等ドップラ速度領域抽出部11が抽出対象の等ドップラ速度領域が有するドップラ速度値の設定を受け付けて、ドップラ速度分布計測部1により計測されたドップラ速度分布から当該ドップラ速度値を有する等ドップラ速度領域を抽出するものについて示したが、ドップラ速度の折り返し領域では、ドップラ速度値が“0”となるので、台風中心検出部2の0ドップラ速度領域抽出部11aがドップラ速度分布計測部1により計測されたドップラ速度分布から“0”のドップラ速度値を有する0ドップラ速度領域を抽出するようにしてもよい。
具体的には、以下の通りである。
【0035】
台風中心検出部2の0ドップラ速度領域抽出部11aは、上記実施の形態1と同様にして、ドップラ速度分布計測部1がドップラ速度分布を計測すると、そのドップラ速度分布から“0”のドップラ速度値を有する0ドップラ速度領域を抽出する。
0ドップラ速度領域抽出部11aにおける0ドップラ速度領域の抽出処理は、抽出対象の領域が有するドップラ速度値が異なるだけで、等ドップラ速度領域抽出部11における等ドップラ速度領域の抽出処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0036】
台風中心検出部2の0ドップラ速度線形成部12aは、0ドップラ速度領域抽出部11aが0ドップラ速度領域を抽出すると、0ドップラ速度領域抽出部11aにより抽出された1以上の0ドップラ速度領域のうち、空間的に隣接している0ドップラ速度領域同士を連結、あるいは、所定の距離内にある0ドップラ速度領域同士を連結して、0ドップラ速度線を形成する。
0ドップラ速度線形成部12aにおける0ドップラ速度線の形成処理は、連結対象の領域が有するドップラ速度値が異なるだけで、等ドップラ速度線形成部12における等ドップラ速度線の形成処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0037】
台風中心検出部2の0ドップラ速度線収束度算出部13aは、0ドップラ速度線形成部12aが0ドップラ速度線を形成すると、ある点、もしくは、小領域における0ドップラ速度線の収束度を算出する。
0ドップラ速度線収束度算出部13aにおける収束度の算出処理は、算出対象のドップラ速度線が0ドップラ速度線である点だけが異なり、等ドップラ速度線収束度算出部13における収束度の算出処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0038】
台風中心検出部2の中心位置検出部14aは、0ドップラ速度線収束度算出部13aが0ドップラ速度線の収束度を算出すると、ドップラレーダの位置以外で、0ドップラ速度線の収束度の最も高い位置を探索する。
中心位置検出部14aは、0ドップラ速度線の収束度が最大の位置を探索すると、収束度が最大の位置が台風の中心位置であると認定して、その台風の中心位置を表示部3に出力する。
表示部3は、台風中心検出部2から台風の中心位置を受けると、台風の中心位置をディスプレイに表示する。
【0039】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、ドップラ速度分布計測部1により計測されたドップラ速度分布から“0”のドップラ速度値を有する0ドップラ速度領域を抽出するように構成したので、図1の等ドップラ速度領域抽出部11のように、抽出対象の等ドップラ速度領域が有するドップラ速度値の設定を受け付けることなく、台風の中心位置を検出することができる効果を奏する。
【0040】
実施の形態4.
図4はこの発明の実施の形態4による台風中心検出装置を示す構成図であり、図において、図3と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
0ドップラ速度線延長部15aは0ドップラ速度線形成部12aにより形成された0ドップラ速度線を延長する処理を実施する。
0ドップラ速度線収束度算出部16aは0ドップラ速度線延長部15aにより延長された0ドップラ速度線の延長先の収束度を算出する処理を実施する。
なお、0ドップラ速度線延長部15a及び0ドップラ速度線収束度算出部16aから収束度算出手段が構成されている。
【0041】
上記実施の形態3では、台風中心検出部2の0ドップラ速度線収束度算出部13aが0ドップラ速度線形成部12aにより形成された0ドップラ速度線の収束度を算出するものについて示したが、空間的に降雨領域(降雨帯の面積)が少ない場合には、台風の中心位置の検出精度が若干劣化する可能性がある。
そこで、この実施の形態4では、空間的に降雨領域(降雨帯の面積)が少ない場合には、台風中心検出部2の0ドップラ速度線延長部15aが、0ドップラ速度線形成部12aにより形成された0ドップラ速度線を曲率を保持したまま延長し、0ドップラ速度線収束度算出部16aが延長先の0ドップラ速度線の収束度を算出するようにしている。
これにより、空間的に降雨領域(降雨帯の面積)が少ない場合でも、台風の中心位置を通る0ドップラ速度線の収束度を求めることができるため、精度よく台風の中心位置を検出することができる効果を奏する。
【0042】
実施の形態5.
図5はこの発明の実施の形態5による台風中心検出装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
観測領域限定部4は0ドップラ速度領域抽出部21、0ドップラ速度線形成部22、直線検出部23及びバッファ部25から構成されており、台風の中心位置を検出する際の観測領域を限定する処理を実施する。なお、観測領域限定部4は観測領域限定手段を構成している。
観測領域限定部4の0ドップラ速度領域抽出部21はドップラ速度分布計測部1により計測されたドップラ速度分布から“0”のドップラ速度値を有する0ドップラ速度領域を抽出する処理を実施する。
【0043】
観測領域限定部4の0ドップラ速度線形成部22は0ドップラ速度領域抽出部21により抽出された1以上の0ドップラ速度領域のうち、空間的に隣接している0ドップラ速度領域同士を連結、あるいは、所定の距離内にある0ドップラ速度領域同士を連結して、0ドップラ速度線を形成する処理を実施する。
観測領域限定部4の直線検出部23は0ドップラ速度線形成部22により形成された1以上の0ドップラ速度線の中から直線とみなせる0ドップラ速度線を検出して、台風中心検出処理を行う領域を上記0ドップラ速度線の周辺領域に限定する。
観測領域限定部4のバッファ部25は直線検出部23から出力された等ドップラ速度線(直線)とドップラ速度分布計測部1により計測されたドップラ速度分布を入力して、その等ドップラ速度線(直線)とドップラ速度分布を台風中心検出部2に出力する処理を実施する。
【0044】
次に動作について説明する。
台風の風速は、図10に示すような分布になることから、ドップラレーダにより観測されたドップラ速度分布において、ドップラレーダの位置と台風の中心位置を結ぶ線上のドップラ速度はほぼ0となる。
また、それ以外の0ドップラ速度線は、ある曲率を持った曲線となる。そのため、ドップラレーダの位置から延びるほぼ直線とみなせる0ドップラ速度線は、台風の中心位置を通ることになる。
そこで、この実施の形態5では、ほぼ直線とみなせる0ドップラ速度線の周辺に観測範囲を限定して、演算量の削減を図るとともに、台風の中心位置の誤検出を低減するようにしている。
具体的には、以下の通りである。
【0045】
観測領域限定部4の0ドップラ速度領域抽出部21は、上記実施の形態1と同様にして、ドップラ速度分布計測部1がドップラ速度分布を計測すると、図3の0ドップラ速度線領域抽出部11aと同様にして、そのドップラ速度分布から“0”のドップラ速度値を有する0ドップラ速度領域を抽出する。
観測領域限定部4の0ドップラ速度線形成部22は、0ドップラ速度領域抽出部21が0ドップラ速度領域を抽出すると、図3の0ドップラ速度線形成部12aと同様に、0ドップラ速度領域抽出部21により抽出された1以上の0ドップラ速度領域のうち、空間的に隣接している0ドップラ速度領域同士を連結、あるいは、所定の距離内にある0ドップラ速度領域同士を連結して、0ドップラ速度線を形成する。
【0046】
観測領域限定部4の直線検出部23は、0ドップラ速度線形成部22が0ドップラ速度線を形成すると、0ドップラ速度線形成部22により形成された1以上の0ドップラ速度線のうち、直線とみなせて、かつ、その直線がレーダ位置又はその近傍を通る0ドップラ速度線のみを検出して、観測領域を上記0ドップラ速度線の周辺領域に限定する。
観測領域限定部4のバッファ部25は、直線検出部23から等ドップラ速度線(直線)を受け、ドップラ速度分布計測部1からドップラ速度分布を受けると、その等ドップラ速度線(直線)とドップラ速度分布を台風中心検出部2に出力する。
これにより、台風中心検出部2の等ドップラ速度領域抽出部11(または0ドップラ速度領域抽出部11a)は、ドップラ速度分布計測部1により計測されたドップラ速度分布のうち、観測領域限定部4の直線検出部23により限定された観測領域のドップラ速度分布から等ドップラ速度領域(または0ドップラ速度領域)を抽出するようにする。
その他の台風中心検出部2の処理内容は、上記実施の形態1〜4と同様であるため詳細な説明を省略する。
【0047】
以上の実施の形態の説明では、直線とみなせる0ドップラ速度線を用いて領域を限定するようにしている。しかし、完全な直線に限定しないのであれば、0ドップラ速度線でなくても、他のドップラ速度値を設定して等ドップラ速度線を抽出し、領域を限定するようにしてもよい。なぜなら、図11から分るように、レーダ位置と台風中心を結ぶ直線の近傍にある等ドップラ速度線は、ドップラ速度値が0からずれたとしても、直線に近い形状となっているためである。
【0048】
なお、図5では、観測領域限定部4を台風中心検出部2の前段に配置しているものについて示したが、図16に示すように、観測領域限定部4を台風中心検出部2の途中に配置するようにしてもよい。
この場合、台風中心検出部2の等ドップラ速度領域抽出部11及び等ドップラ速度線形成部12が、観測領域限定部4の0ドップラ速度領域抽出部21及び0ドップラ速度線形成部22を兼ねることができるため、観測領域限定部4の0ドップラ速度領域抽出部21及び0ドップラ速度線形成部22を省略して、構成の簡略化を図ることができる。
ただし、図16において、観測領域限定部4のバッファ部26は直線検出部23から出力された等ドップラ速度線(直線)と等ドップラ速度線形成部12により形成された等ドップラ速度線を入力して、これらを等ドップラ速度収束度算出部13に出力する処理を実施する。
【0049】
実施の形態6.
図6はこの発明の実施の形態6による台風中心検出装置を示す構成図であり、図において、図5と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
観測領域限定部4の直線延長部24は直線検出部23により検出された直線とみなせる等ドップラ速度線を延長し、観測領域を延長先の等ドップラ速度線の周辺領域に限定する処理を実施する。
観測領域限定部4のバッファ部27は直線延長部24から出力された延長先の等ドップラ速度線(直線)とドップラ速度分布計測部1により計測されたドップラ速度分布を入力して、延長先の等ドップラ速度線(直線)とドップラ速度分布を台風中心検出部2に出力する処理を実施する。
【0050】
上記実施の形態5では、0ドップラ速度線形成部22により形成された1以上の0ドップラ速度線の中から直線とみなせる0ドップラ速度線を検出して、観測領域を上記0ドップラ速度線の周辺領域に限定するものについて示したが、観測領域の降水領域の分布が少なく、十分な0ドップラ速度線を確保することができない場合には、観測領域の限定精度が劣化することがある。
そこで、この実施の形態6では、観測領域の降水領域の分布が少なく、十分な0ドップラ速度線を確保することができない場合には、直線延長部24が直線検出部23により検出された直線とみなせる等ドップラ速度線を延長し、観測領域を延長先の等ドップラ速度線の周辺領域に限定するようにする。
これにより、観測領域全体の降水領域の分布が少ない場合、特にドップラレーダの位置から台風の中心位置を通る直線状に降水領域が少ない場合でも、適切に台風の中心位置を検出することができる効果を奏する。
【0051】
実施の形態7.
図7はこの発明の実施の形態7による台風中心検出装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
観測領域限定部5は観測領域における降水領域のエコー強度分布を計測して、そのエコー強度分布から台風の降雨帯領域を検出し、ドップラ速度分布計測部1の観測領域を上記降雨帯領域に限定する処理を実施する。なお、観測領域限定部5は観測領域限定手段を構成している。
観測領域限定部5のエコー強度分布計測部31は例えばドップラレーダから構成されており、大気中に電磁波を放射して、観測領域の降水粒子に反射された電磁波を受信することにより、観測領域における降水領域のエコー強度分布を計測する処理を実施する。
観測領域限定部5の台風降雨帯検出部32はエコー強度分布計測部31により計測されたエコー強度分布から台風の降雨帯領域を検出し、ドップラ速度分布計測部1の観測領域を上記降雨帯領域に限定する処理を実施する。
【0052】
次に動作について説明する。
観測領域限定部5のエコー強度分布計測部31は、例えば、大気中に電磁波を放射して、観測領域の降水粒子に反射された電磁波を受信することにより、観測領域における降水領域のエコー強度分布を計測する。
観測領域限定部5の台風降雨帯検出部32は、エコー強度分布計測部31がエコー強度分布を計測すると、そのエコー強度分布から台風の降雨帯領域を検出する。
台風の降雨帯領域の検出方法としては、例えば、特開2005−164490号公報に開示されている技術のように、台風の降雨帯領域を螺旋とみなして、螺旋曲線の当てはめを行う方法や、台風の降雨帯領域を円とみなして、円の当てはめを行う方法などが考えられる。
【0053】
観測領域限定部5の台風降雨帯検出部32は、台風の降雨帯領域を検出すると、ドップラ速度分布計測部1の観測領域を上記降雨帯領域に限定する。
これにより、ドップラ速度分布計測部1は、観測領域限定部5の台風降雨帯検出部32により限定された観測領域における降水粒子のドップラ速度分布を計測する。
以降の処理は、上記実施の形態1〜4と同様であるため詳細な説明を省略する。
なお、以上の実施の形態の説明では、ドップラ速度分布計測部1とエコー強度分布計測部31のそれぞれがドップラレーダで構成されているようなものであった。しかし、実際には、ドップラ速度分布計測部1とエコー強度分布計測部31は同じドップラレーダを用いて同時に計測するようにしてもよい。
即ち、ドップラ速度分布計測部1とエコー強度分布計測部31は、同一レーダ装置ハードウェアで実現され、受信信号からドップラ速度を算出する信号処理を行う機能をドップラ速度分布計測部1、受信信号からエコー強度を算出する信号処理を行う機能をエコー強度分布計測部31とする構成である。
【0054】
以上で明らかなように、この実施の形態7によれば、観測領域における降水領域のエコー強度分布を計測して、そのエコー強度分布から台風の降雨帯領域を検出し、ドップラ速度分布計測部1の観測領域を上記降雨帯領域に限定するように構成したので、例えば、降水領域が空間的に広い範囲に分布している場合でも、観測領域を限定して、台風の中心位置の検出精度を高めることができるとともに、演算量の削減を図ることができる効果を奏する。
【0055】
実施の形態8.
図8はこの発明の実施の形態8による台風中心検出装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
台風中心検出部2のエコー強度分布計測部41は等ドップラ速度線収束度算出部13により算出された等ドップラ速度線の収束度から収束域を求め、その収束域の周辺領域のエコー強度分布を計測する処理を実施する。
台風中心検出部2の台風降雨帯検出部42はエコー強度分布計測部41により計測されたエコー強度分布から台風の降雨帯領域を検出する処理を実施する。
なお、エコー強度分布計測部41及び台風降雨帯検出部42から降雨帯領域検出手段が構成されている。
台風中心検出部2の中心位置検出部43は台風降雨帯検出部42により検出された降雨帯領域の中心位置を検出する処理を実施する。なお、中心位置検出部43は中心位置検出手段を構成している。
【0056】
次に動作について説明する。
台風中心検出部2のエコー強度分布計測部41は、上記実施の形態1と同様にして、等ドップラ速度線収束度算出部13が等ドップラ速度線の収束度を算出すると、その等ドップラ速度線の収束度から収束域を求める。
即ち、エコー強度分布計測部41は、等ドップラ速度線収束度算出部13により算出された等ドップラ速度線の収束度が高い領域を抽出する。
エコー強度分布計測部41は、収束域を求めると、その収束域の周辺領域のエコー強度分布を計測する。
【0057】
台風中心検出部2の台風降雨帯検出部42は、エコー強度分布計測部41が収束域の周辺領域のエコー強度分布を計測すると、図7の台風降雨帯検出部32と同様にして、そのエコー強度分布から台風の降雨帯領域を検出する。
台風中心検出部2の中心位置検出部43は、台風降雨帯検出部42が台風の降雨帯領域を検出すると、その降雨帯領域の中心位置が台風の中心位置であると認定して、その台風の中心位置を表示部3に出力する。
表示部3は、台風中心検出部2から台風の中心位置を受けると、台風の中心位置をディスプレイに表示する。
【0058】
以上で明らかなように、この実施の形態8によれば、等ドップラ速度線収束度算出部13により算出された等ドップラ速度線の収束度から収束域を求め、その収束域の周辺領域のエコー強度分布を計測して、そのエコー強度分布から台風の降雨帯領域を検出し、その降雨帯領域の中心位置を検出するように構成したので、例えば、降水領域が空間的に広い範囲に分布している場合でも、観測領域を限定して、台風の中心位置の検出精度を高めることができるとともに、台風降雨帯検出部42における降雨帯領域検出の演算量の削減を図ることができる効果を奏する。
【0059】
なお、図8の例では、エコー強度分布計測部41が等ドップラ速度線収束度算出部13と台風降雨帯検出部42の間に配置されているものについて示したが、図17に示すように、エコー強度分布計測部41に相当するエコー強度分布計測部41aをレーダ送受信部1aの後段に配置するとともに、エコー強度分布選択部44を等ドップラ速度線収束度算出部13の後段に配置するようにしてもよい。
エコー強度分布計測部41aは、レーダ送受信部1aの受信信号からエコー強度分布を計測し、エコー強度分布選択部44は、等ドップラ速度線収束度算出部13により算出された等ドップラ速度線の収束度が最大になるとき、エコー強度分布計測部41aにより計測されたエコー強度分布を台風降雨帯検出部42に出力する処理を実施する。
また、レーダ送受信部1a及びドップラ速度分布算出部1bは、図8等のドップラ速度分布計測部1の構成要素である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】この発明の実施の形態1による台風中心検出装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2による台風中心検出装置を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態3による台風中心検出装置を示す構成図である。
【図4】この発明の実施の形態4による台風中心検出装置を示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態5による台風中心検出装置を示す構成図である。
【図6】この発明の実施の形態6による台風中心検出装置を示す構成図である。
【図7】この発明の実施の形態7による台風中心検出装置を示す構成図である。
【図8】この発明の実施の形態8による台風中心検出装置を示す構成図である。
【図9】この発明の実施の形態1による台風中心検出装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図10】台風を模擬した風速分布を矢印で表している説明図である。
【図11】図10の台風を観測したときのドップラ速度分布を表している説明図である。
【図12】4×4の2次元のメッシュで区切られているドップラ速度分布を示す説明図である。
【図13】等ドップラ速度領域の抽出処理を示す説明図である。
【図14】注目メッシュに隣接している8つの対象メッシュを示す説明図である。
【図15】連結数による収束度の定義を模式的に示す説明図である。
【図16】この発明の実施の形態5による他の台風中心検出装置を示す構成図である。
【図17】この発明の実施の形態8による他の台風中心検出装置を示す構成図である。
【符号の説明】
【0061】
1 ドップラ速度分布計測部(ドップラ速度分布計測手段)、1a レーダ送受信部、1b ドップラ速度分布算出部、2 台風中心検出部、3 表示部、4 観測領域限定部(観測領域限定手段)、5 観測領域限定部(観測領域限定手段)、11 等ドップラ速度領域抽出部(等ドップラ速度領域抽出手段)、11a 0ドップラ速度領域抽出部(等ドップラ速度領域抽出手段)、12 等ドップラ速度線形成部(等ドップラ速度線形成手段)、12a 0ドップラ速度線形成部(等ドップラ速度線形成手段)、13 等ドップラ速度線収束度算出部(収束度算出手段)、13a 0ドップラ速度線収束度算出部(収束度算出手段)、14 中心位置検出部(中心位置検出手段)、14a 中心位置検出部(中心位置検出手段)、15 等ドップラ速度線延長部(収束度算出手段)、15a 0ドップラ速度線延長部(収束度算出手段)、16 等ドップラ速度線収束度算出部(収束度算出手段)、16a 0ドップラ速度線収束度算出部(収束度算出手段)、21 0ドップラ速度領域抽出部、22 0ドップラ速度線形成部、23 直線検出部、24 直線延長部、25,26,27 バッファ部、31 エコー強度分布計測部、32 台風降雨帯検出部、41 エコー強度分布計測部(降雨帯領域検出手段)、41a エコー強度分布計測部、42 台風降雨帯検出部(降雨帯領域検出手段)、43 中心位置検出部(中心位置検出手段)、44 エコー強度分布選択部。
【出願人】 【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
【出願日】 平成18年8月22日(2006.8.22)
【代理人】 【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭

【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延

【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音


【公開番号】 特開2008−51541(P2008−51541A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−225494(P2006−225494)