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【発明の名称】 小口径用多電極電気検層法および装置
【発明者】 【氏名】井上 誠

【要約】 【課題】本発明は、地盤に小口径の孔を容易にあけることができるスウェーデン式サウンディング試験機などの地盤調査用試験機であけた孔を利用して電気検層ができる測定法と装置を提供して、ボーリングの掘削費用と掘削に要する時間を短縮できる低コストで高能率な調査法を提供するものである。

【構成】本発明は、地盤試験用に掘削された小口径の孔に複数の電極を配置した測定用電極ゾンデを挿入し、比抵抗測定装置を用い、コンピュータの指示により電極を選択して複数の電極間隔で見掛け比抵抗の測定を行い、異なる電極間隔で中心点が同じ深度の測定データを用いてコンピュータの演算により電極中心点深度における地盤の電気抵抗を求めて表示することを特徴とする低コスト、高能率な調査法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤調査用試験機により掘削された小口径の孔に複数の電極を配置した測定用電極ゾンデを挿入し、比抵抗測定装置により測定に必要とする電極を選択して、複数の電極間隔で見掛け比抵抗の測定を行い、異なる電極間隔で中心点が同じ深度の測定データを用いて演算により中心点深度における地盤の電気抵抗を求めて表示することを特徴とする電気検層法。
【請求項2】
小口径の孔に挿入できる非金属製パイプに複数の電極が配置され、電極を孔壁に密着できる機能を持つ測定用電極ゾンデと測定用電極ゾンデに設置された電極を事前に指示されたファイルの内容にしたがってコンピュータで電極を任意選択し、見掛け比抵抗を測定できる機能持つ電気探査装置と記録された測定データからコンピュータによる演算により電極中心深度における地盤の電気抵抗を計算し、表示できる機能を持つコンピュータから構成される電気検層装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
大地に電流を流す電極とその電流により発生する電位を測定し、地盤の電気抵抗を深度方向に連続的に測定する電気検層において、小口径の地盤調査用試験機の孔を利用して複数の電極間隔で見掛け比抵抗を測定し、演算により正確に地盤の電気抵抗を測定できる技術を提供する電気検層法及び装置。
【背景技術】
【0002】
電気検層は、一般的にボーリング孔を利用して測定されるため、測定用のゾンデは形状が大きく、ケーブルで吊りながら測定する形状のものが市販されている。このため、地盤調査用試験機等で削孔された小口径の孔で測定することは形状的に困難であった。また、ボーリング孔掘削に要する時間と費用が発生し、1地点当たりの測定に要する期間が長くなり、掘削費などでコストが高くなることからその利用用途に制限があった。スウェーデン式サウンディング試験機、静的貫入試験器、三成分コーンなどの地盤調査試験機で短時間に削孔した孔を利用して測定ができる高能率・低コストの電気検層法の開発が望まれていた。
【特許文献1】特許公開2005−3657
【特許文献2】特許公開2001−21662
【非特許文献1】物理探鉱技術協会:物理探鉱十周年特別号,p222
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、地盤に小口径の孔を容易にあけることができるスウェーデン式サウンディング試験機などの地盤調査用試験機であけた孔を利用して電気検層ができる測定法と装置を提供して、ボーリングの掘削費用と掘削に要する時間を短縮できる低コストで高能率な調査法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、地盤調査用試験機により掘削された小口径の孔に挿入できる非金属製パイプに複数の電極を配置し、電極を孔壁に密着できる機能を持つ測定用電極ゾンデを挿入し、測定用電極ゾンデに設置された電極を事前に指示されたファイルの内容にしたがってコンピュータで電極を任意選択し、見掛け比抵抗を測定できる機能持つ電気探査装置用いて複数の電極間隔で見掛け比抵抗を測定し、記録された測定データから異なる電極間隔で電極中心深度が同じ深度の測定データを用い、演算により電極中心点深度における正確な地盤の電気抵抗を求めて表示する調査法である。
【発明の効果】
【0005】
これまでは調査孔の準備にボーリングの仮設・掘削・撤去などで要する時間が数日から1週間程度必要であった。このため、電気検層だけを目的とした調査は、時間とコストの面から実施されることはなかった。本発明により短時間で効率的な電気検層が可能になったことで、敷地を調査で占有する時間が短くなり、掘削コストも低減できたことから容易に地盤の鉛直方向の電気抵抗分布を調査することが可能になった。
【0006】
地盤調査用試験機での削孔は、ボーリングに比べて孔曲がりしやすく、ある特定範囲の特定深度に分布する調査対象物と平行に掘削することは難しい。電極間隔に比べて調査孔と調査対象物との離れが大きくなった場合にはその影響を電気抵抗変化から読みとることが困難であった。本発明は、小さい電極間隔から大きい電極間隔までを電極間隔を変えて複数の測定で調査を行うことにより、調査孔と調査対象物との距離が多少変化した場合でも調査対象物の電気的な変化を測定することを可能にした。その結果、従来では利用されることがなかった電気検層の技術で鉄塔、橋梁、高架橋などの埋設基礎形状調査も安価に正確に調査することが可能になり、公共工事費を大幅に低減することが可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の装置の構成を図1に示す。電気探査測定装置1、測定用電極ゾンデ2、電気探査測定装置1の測定時の制御、測定データの収録、測定データの演算及び表示を行うパソコン6及び装置を駆動するための電源8から構成される。
【0008】
本発明の測定用電極ゾンデ2は、外径を26mmの非金属製パイプの表面に2cm間隔でステンレス製電極6を直線的に複数個取り付けた形状である。パイプの長さは1.5mとし、外径26mmのパイプに内接する少し細いパイプにより延長用パイプを接続し、ネジ等で固定して目的深度まで到達する構造である。30mm前後の小口径の孔に押し込むことが可能である。非金属製パイプに、電極と反対側に圧着用非金属製弾性体7を複数箇に所取り付けて測定用電極ゾンデのステンレス製電極6を孔壁に圧着する。
【0009】
電気探査測定装置1は、大地に電流を供給する低電流電源部、供給した電流により大地に発生した電位を測定する電位計測部、制御・演算用パソコン3からの指示で測定に必要な電極を任意の組合せに選んで切り替える電極切替部、制御・演算用パソコン3からの作業指示を実行する制御部からなる。
【0010】
制御・演算用パソコン3は、RS−232CやUSBの通信機能により電気探査測定装置1と通信ケーブル8により接続し、事前に設定された測定すべき電極組合せを電気検層装置1に命令して測定を行い、得られた測定値を記憶装置に保存し、測定データの演算をした後に画面に結果を表示する。
【0011】
測定は、スウェーデン式サウンディング装置により目的の深度まで削孔を行い、用意された孔11に、電線5で接続した電極ゾンデ2を目的深度まで押し込んで木製電極固定金具13で孔の口元で測定用電極ゾンデ2を固定する。
【0012】
各装置を通信用ケーブル8と電源用ケーブル9で接続後、制御・演算用パソコン3で計測用ソフトを実行して自動測定を行う。測定に使用する電極を事前に設定された電極組合せを記録したファイルの内容に従い、指定された電極に切り替えて複数の電極間隔で見掛け比抵抗を測定し、記録する。制御・演算用パソコン3により中心点深度が同じ測定データごとに演算を行い、中心点深度ごとに地盤の電気抵抗値を決定し、表示する。
【0013】
図2に埋設されたコンクリート基礎形状調査時の説明図を示す。スウェーデン式サウンディング試験機により、コンクリート基礎の上面深度及び形状を確認し、埋設基礎端から約10cmの位置に調査用の孔11を削孔した。コンクリート基礎底面深度が予測される深度まで測定用電極ゾンデ2を挿入して測定を行う。測定の結果、ステンレス製電極3が設置されている範囲内に対象物がない場合には測定用電極ゾンデ3を上下に移動して対象となる基礎の上面または底面深度境界がステンレス製電極6の設定範囲内に入るように移動して測定を行う。
【0014】
測定用電極用ゾンデの拡大説明図を図3示す。測定用電極ゾンデ2に取り付けたステンレス製電極6は、直径10mmの頭を持つステンレス製ビスを2cm間隔に50個配置した。パイプはエスロン製の外径26mmパイプ(内径22mm)を使用した。パイプ長は、電極部パイプ長は1,700mm、接続用パイプは1,500mmとし、パイプの内側に外径22mm、長さ100mmのエスロン製パイプを使用して接続用パイプを接続した。圧着用非金属製弾性体7は、ウレタン製スポンジ14とプラスチック製板15を用いて多重構造にして適度に電極ゾンデ2をスウェーデン式サウンディング試験機による孔11の孔壁に圧着できる構造とした。
【実施例】
【0015】
図4に測定実験場の説明図を示す。実験場には300mm×300mm×40mmのコンクリート板4枚を600mm×300mm×80mmの大きさに配置して深度55cmの深さに埋設し、コンクリート板から100mm離れた位置にスウェーデン式サウンディング試験機により直径32mmの孔を深さ1.5mまで削孔して実験孔とした。この孔11に電極用ゾンデ2を挿入し、パイプ固定金具13で電極ゾンデ2を固定して測定実験を実施した。
【0016】
測定は、2極法、3極法、ウェンナー法の電極配置を使用した。図5は2極法の測定を示す。電極間隔が最も小さい電極配置から測定を行い、最小電極間隔の2cmで電極を深度方向に移動して測定した。次に電極間隔を4cm、6cm、8cm、10cm、12cmと変えて同様に測定を行った。
【0017】
図6に示すように測定データの中で電極配置の中心線18が同じ電極組合せのデータを演算して、中心線位置の地盤の電気抵抗値とした。図7は、電極中心深度1.1mの位置の電極間隔の異なる測定データを示した図である。電極間隔2cmから12cmまでの6種類の電極間隔で測定した見掛け比抵抗値を示している。コンクリートなどの異常物が電極ゾンデ2近傍にない場合には、図7に示すようにほぼ同じ値または電極間隔が大きくなるにつれて少し小さくなる直線的な図になる。
【0018】
図8は、電極中心深度40cmの測定データを電極間隔2cmから12cmまでの見掛け比抵抗を示した図である。約10cmの位置にコンクリート板がある影響で上に凸になる曲線が得られる。
【0019】
演算は、電極中心点が同じ見掛け比抵抗値を単純平均して表示する方法、測定値の中から最大値・最小値を取り除いて平均化する方法、最大値のみを選択して表示する方法、電極間隔と見掛け比抵抗値から一次元解析により比抵抗を求める方法などがある。
【0020】
比抵抗境界と測定される見掛け比抵抗には図9に示すように低比抵抗部から高比抵抗部への立ち上がり位置が電極配置のより異なることが知られている。これらの電極配置の内で平均3極法は、比抵抗境界部と見掛け比抵抗立ち上がり部が一致する特性がある。
【0021】
図10は、平均3極法により測定された見掛け比抵抗値から重み付き平均の演算により得られた地盤の電気抵抗値22と地質状況19,20、21と対比して表示した図である。図10に示すようにコンクリート板19−埋め土20及び埋め土20−関東ローム21との境界部で見掛け比抵抗の変化が見られる。特にコンクリート境界部では大きな変化が確認でき、解析誤差は2cm程度で精度よく地盤を評価できていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、安い費用で効率的に高精度に地盤を評価できる地盤調査法である。構造物基礎の再評価のための調査や構造物の管理・保全分野において調査時間の短縮及び調査法の簡略化により、大幅なコスト低減が可能になり公共事業費の削減に大きく貢献できる技術である。また、調査に占有する場所が小さく、占有時間が短いことから、これまで交通事情などにより調査できなかった場所での調査が可能になり、公共工事への社会的貢献は大きいものと考えられる。また、環境問題においては産業廃棄物不法投棄場所の地盤調査や環境汚染地区における正確な地盤調査にも適用が可能である。その他、埋蔵遺跡の調査、河川堤防の調査などにも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】小口径用電気検層装置の構成図
【図2】基礎構造物調査時の測定法説明図
【図3】電極用ゾンデ部の拡大説明図
【図4】測定実験場の説明図
【図5】電極の移動法説明図
【図6】測定中心深度が同じデータの説明図
【図7】周辺に異物がない状態の時の測定中心深度が同じ電極間隔−見掛け比抵抗曲線
【図8】近傍にコンクリート板がある状態の時の測定中心深度が同じ電極間隔−見掛け比抵抗曲線
【図9】電極配置による比抵抗境界と見掛け比抵抗値の立ち上がり点のずれを説明する図
【図10】平均3極法により測定・演算された解析結果
【符号の説明】
【0024】
1 電気探査測定装置
2 測定用電極ゾンデ
3 制御・演算用パソコン
4 駆動用電源発電機またはカーバッテリー
5 電線
6 ステンレス製電極
7 圧着用非金属弾性体
8 通信用ケーブル
9 電源ケーブル
10 地表面
11 スウェーデン式サウンディング試験機により削孔された孔
12 埋設された構造物基礎
13 木製電極固定用金具
14 ウレタンスポンジ
15 プラスチック板
16 電流電極
17 電位電極
18 電極中心線
19 コンクリート板
20 埋土
21 関東ローム
22 演算により求められた地盤の深度ごとの電気抵抗
23 境界位置を示す矢印
【出願人】 【識別番号】305041186
【氏名又は名称】井上 誠
【出願日】 平成18年8月22日(2006.8.22)
【代理人】
【公開番号】 特開2008−51502(P2008−51502A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−224815(P2006−224815)