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【発明の名称】 物体検知システム
【発明者】 【氏名】小林 裕

【氏名】中島 英実

【氏名】原田 隆宏

【要約】 【課題】製造コストの上昇を抑え、施工が容易であり、接続部の断線や破損等の発生をなくし、信頼性を向上できる物体検知システムを提供すること。

【構成】フィルム基材1の片面に導電層2を形成し、フィルム基材1のもう一方の片面は接着層を介して保持部5に固定する。さらに導電層2に対し一定の間隙を有して結合用電極部4が別の保持部5’に固定されている。そして、結合用電極部4は電線6により検出回路部8と接続され、導電層2が前記検出回路部8からみて検出電極として機能する。検出回路部8での基準電極と検出電極間の静電容量変化をみる電気信号として交流信号を用いる。検出回路部8から電線6を介して結合用電極部4に加えられた交流信号は、結合用電極部4と導電層2とにより形成されるキャパシタを介して導電層2に供給され、導電層2全体が基準電極に対しての検出電極として動作する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の一方の面に形成され検出電極部として機能する導電層と、前記検出電極部との間でキャパシタを形成する基準電極とを備え、前記検出電極部と前記基準電極との間における静電容量変化を検出する物体検知システムにおいて、
前記基板に対し一定の間隙を有して配置された第1の結合用電極部と、
前記第1の結合用電極部と前記基板の一方の面に形成された導電層との間に形成される信号供給用キャパシタを介し、前記検出電極部と前記基準電極へ交流信号を供給し、前記検出電極部と前記基準電極との間における静電容量変化を検出する検出回路部と、
を備えた物体検知システム。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検知システムにおいて、前記基準電極は、前記基板の周囲に配置された導電性を有した枠体であり、前記枠体と前記検出回路部との間を交流的に接続する、前記枠体に対し絶縁層を介して配置された第2の結合用電極部を備え、前記検出回路部は、前記第1の結合用電極部と前記基板の一方の面に形成された導電層との間に形成される信号供給用キャパシタ、および前記第2の結合用電極部と前記枠体との間に形成される信号供給用キャパシタを介し、前記検出電極部と前記基準電極へ交流信号を供給し、前記検出電極部と前記基準電極との間における静電容量変化を検出することを特徴とする物体検知システム。
【請求項3】
請求項1に記載の物体検知システムにおいて、前記基準電極および前記検出電極部は前記基板の一方の面に形成された導電層により構成されており、前記基準電極または前記検出電極部は、前記基板の周縁部分に配置された導電性パターン形状であり、前記検出電極部または前記基準電極は、前記基板の周縁部分に配置された導電性パターン形状の前記基準電極または前記検出電極部に囲まれた導電性パターン形状であり、前記第1の結合用電極部は、前記基準電極に対し一定の間隙を有して配置され前記基準電極と前記検出回路部との間を交流的に接続する基準電極結合用電極部と、前記検出電極部に対し一定の間隙を有して配置され前記検出電極部と前記検出回路部との間を交流的に接続する検出電極結合用電極部とからなることを特徴とする物体検知システム。
【請求項4】
請求項1に記載の物体検知システムにおいて、前記基準電極および前記検出電極部は前記基板の一方の面に形成された導電層により構成されており、前記基準電極および前記検出電極部は櫛型状の導電性パターン形状であり、前記基準電極と前記検出電極部は互いに絶縁された状態で櫛歯が咬みあっている形態であり、前記第1の結合用電極部は、前記基準電極に対し一定の間隙を有して配置され前記基準電極と前記検出回路部との間を交流的に接続する基準電極結合用電極部と、前記検出電極部に対し一定の間隙を有して配置され前記検出電極部と前記検出回路部との間を交流的に接続する検出電極結合用電極部とからなることを特徴とする物体検知システム。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の物体検知システムにおいて、基板および導電層が透明性を有していることを特徴とする物体検知システム。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の物体検知システムにおいて、導電層がプラスチックフィルム上に形成され、粘着あるいは接着剤を介して、該基板に貼り付けられていることを特徴とする物体検知システム。
【請求項7】
請求項1から6の何れかに記載の物体検知システムにおいて、前記導電層がキャリア密度2×1021cm-3以上である物質を含むことを特徴とする物体検知システム。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載の物体検知システムにおいて、前記導電層上に保護層が形成されていることを特徴とする物体検知システム。
【請求項9】
請求項1から8の何れかに記載の物体検知システムにおいて、該基板部は基板面の水平方向へ直線的に動作することを特徴とする物体検知システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、物体検知システムに関し、詳しくは導電層を有した基材に接近し、或いは接触する物体、人体の存在を検出する静電容量センサとして用いて好適な物体検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
窓ガラスの静電容量を検出する技術としては、窓ガラスに直接透明電極を形成し、雨や結露を検出する静電容量センサが知られている。更に特開WO01/004857では、導電性フィルムとアースされている窓の枠体との静電容量変化を検出する検出回路を備えたガラスセンサが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方、最近の防犯に関しては、多層ラミネートや多層押し出しした積層フィルムが用いられてきている。この背景として窓からの侵入が大幅に増加していることがある。警察庁の発表による「平成17年上半期の犯罪情勢」では、侵入窃盗の犯罪の手段に関して、「ガラス破り」の比率が最も高く、この傾向は数年続いている。
さらに、屋外に置かれている自動車については、自動車自体を盗まれる事件が年間64000件以上、いわゆる車上荒しは年間40万件以上発生している(2003年)。これらの内、多くの割合で「ガラス破り」が行われていることが推測される。
【特許文献1】特開WO01/004857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、従来のガラスセンサとして提案されている物体検知システムでは、検出電極となる導電性フィルムの対極がアースされたガラス窓の枠体と決まっているので検出安定性に優れている一方、検出電極となる導電性フィルム側の電気的な接続構造は、フィルム上の導電性部分より検出回路へ電線等によって電気的に引き出す必要がある。このためフィルム基材上に電気信号引き出し用の電極部を別に形成する必要があり、導電性フィルム製作上で導電性膜の形成工程以外に、電気信号の接続用電極部の形成工程が必要になりコストアップに繋がる。さらに、電気信号の引き出し電線があるので、フィルム上での接続点における強度や固定方法、引き廻し方法等、接続不具合を発生する要因が多々存在し、施工ミスによる接続点破損やガラス窓清掃時の不注意な動作による接続点破損等も発生するという課題があった。特に自動車の可動式の窓ガラスに適用する場合、構造上、接続部を枠体の中に収めなければならず、接続不良が発生した場合の対処が困難であるという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、製造コストの上昇を抑え、施工が容易であり、接続部の断線や破損等の発生をなくし、信頼性を向上できる物体検知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、基板の一方の面に形成され検出電極部として機能する導電層と、前記検出電極部との間でキャパシタを形成する基準電極とを備え、前記検出電極部と前記基準電極との間における静電容量変化を検出する物体検知システムにおいて、前記基板に対し一定の間隙を有して配置された第1の結合用電極部と、前記第1の結合用電極部と前記基板の一方の面に形成された導電層との間に形成される信号供給用キャパシタを介し、前記検出電極部と前記基準電極へ交流信号を供給し、前記検出電極部と前記基準電極との間における静電容量変化を検出する検出回路部と
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板上の導電層へ直接、接続を行う必要がないので、導電層を有した基板の製造工程において、導電層のコーティング作業だけで済み、電極部形成作業が不要であり、全体の工程が簡素化され安価なコストで製造できる。
また、検出回路部と基板の導電層とが直接接続されていないので、導電層における接続部の断線や破損等がなくなり、信頼性が飛躍的に向上する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(実施の形態1)
以下、本発明の物体検知システムにおける実施の形態1について図を用いて説明する。図1は、実施の形態1の物体検知システムの基本的な構成を示す断面図である。フィルム基材1の片面にドライコーティング法もしくはウェットコーティング法などの成膜技術を活用して導電層2を形成する。なお、この実施の形態1では、図1に示すように導電層2を保護する目的で導電層2の表面に保護層3が施されている。フィルム基材1のもう一方の片面は図示していないが接着層を介して保持部5に固定されている。この保持部5は例えばガラスなどである。なお、フィルム基材1と保持部5とにより基板11が構成される。さらに導電層2から一定の間隙を有して結合用電極部4が別の保持部5’に固定されている。なお、結合用電極部4および別の保持部5’は保持部5の導電層2に対し反対側に設置されていてもかまわない。
そして、結合用電極部4は電線6により後述する検出回路部と接続され、導電層2が前記検出回路部からみて検出電極として機能する。前記検出回路部での基準電極と検出電極間の静電容量変化をみる電気信号として交流信号を用いる。ここで結合用電極部4と導電層2の間には空隙があり、結合用電極部4と導電層2で構成される平行平板型のコンデンサとして動作する。よって、前記検出回路部から電線6を介して結合用電極部4に加えられた交流信号はこのコンデンサを介して導電層2に結合され、導電層2全体が基準電極に対しての検出電極として動作する。
このように、導電層2へ直接的に電気信号用の引き出し線を取り付け、導電層2から電気信号用の引き出し線を引き出す構成にすることなく、簡単に導電層2全体を検出回路部の検出電極として動作させることが出来る。
【0009】
図2は、導電層2を有したフィルム基材1を窓ガラスに貼り付け、本発明を人等の接触または接近を検出するセンサに応用したときの実施の形態1の物体検知システムを示す概要図である。図1で説明した導電層2を有したフィルム基材1がガラスなどの保持部5に貼り付けられ、その保持部5は導電性のある枠体7の内側に配置されている。そして、検出回路部8は電線6を介して結合用電極部4と接続されており、結合用電極部4は接着剤等によって別の保持部5’の導電層2と対向する位置に貼り付け処理され、結合用電極部4と導電層2とからなる平行平板型コンデンサを介して、導電層2全体が検出電極として機能する。
一方、検出回路部8の基準電極としては導電性を有した枠体7が用いられ、検出回路部8から引き出されたもうひとつの電線6が前記導電性を有した枠体7に直接接続されている。従って、導電層2と枠体7の間で静電容量が存在することになる。この導電層2と枠体7の周囲に人物などの誘電物質や金属などの導電体が接近もしくは接触すると、この静電容量に微弱な変化が生じる。実際の検出方法としては、検出電極である導電層2と基準電極である枠体7との間に交流信号を印加しておき、人物などの接近もしくは接触があるとこの交流信号に変化が生じる。この微弱な変化分を増幅/判定処理することで検出が可能となる。
【0010】
なお、結合用電極部4と保持部5とは非接触状態であるから、動力機構を保持部5に接続することにより保持部5のみを例えば図の下方向に動作させることができる。この場合、導電層2および保持部5が枠体7の内側にあるときにのみ、物体検知システムとして機能する。このシステムは、例えば、枠体7と保持部5であるガラスが一体化していない、ガラスだけが可動な自動車用の窓ガラスに適用が可能となる。
【0011】
以上のように、本実施の形態1によれば、検出回路部8へ電線等を直接的に引き出すための電極部を基板11上の導電層2に設ける必要がないので、導電層2を有したガラスやフィルムの基板11の製造工程において、導電層2のコーティング作業だけで済み、電極部形成作業が不要であり、全体の工程が簡素化され、従来技術よりも安価なコストで製造することが出来る。また、電線が直接、基材11の導電層2に接続されていないので、導電層2に電極部を構成し前記電極部へ電線を直接接続する場合に発生しがちな施工ミスや保守時のトラブルによる前記電極部での断線・破損等がなくなり、信頼性を飛躍的に向上させた物体検知システムを提供できる効果がある。
【0012】
また、導電層2を有したフィルム基材1をガラス等の保持部5に貼り付け、基板11とすることも可能であり、この場合も、検出回路部8からの電線が直接的に接続用の電極部を介して導電層2に接続されていないので、施工ミスや保守時のトラブルによる前記電極部における断線・破損等が発生せず、信頼性を飛躍的に向上させた物体検知システムを提供できる効果がある。
【0013】
(実施の形態2)
図3は、導電層2を有したフィルム基材1を窓ガラスに貼り付け、本発明を人等の接触または接近を検出するセンサに応用したときの実施の形態2の物体検知システムを示す概要図である。本実施の形態2の物体検知システムでは、検出電極側である導電層2を有するフィルム基材1の構成は図2と同じであるが、検出回路部8の基準電極側である導電性を有した枠体7との接続方法に特徴がある。図2においては検出回路部8から電線6を引き出し、電線6を枠体7に電気的に直接接続したが、本実施の形態2においては、枠体7の一部に比較的薄い絶縁部9を配置し、その絶縁部9の上に基準電極側での結合用電極部10を構成し、この結合用電極部10から電線6を介して検出回路部8に接続する構造とした。図4は、この実施の形態2の物体検知システムにおける絶縁部9および結合用電極部10の断面構造図である。つまり、基準電極側において絶縁部9を誘電体として形成した平行平板型コンデンサ構造とすることによって、枠体7と結合用電極部10を交流的に結合させ、枠体7を検出回路部8における基準電極側として動作させるものである。
この実施の形態2では、検出回路部8の接続方法はそれぞれの結合用電極部(検出電極側の結合用電極部4および基準電極側の結合用電極部10)を導電層2と一定の間隙を有して位置する保持部5’上および枠体7の絶縁部9上に貼り付けるだけで済み、施工が簡単となる。特に、施工時または保守時における枠体7と検出回路部8との間の電気的な接続箇所に発生することのある断線/破損トラブルがなくなり、信頼性が向上する物体検知システムを提供できる効果がある。
【0014】
(実施の形態3)
図5は、本発明を人等の接触または接近等を検出するセンサに応用したときの実施の形態3の物体検知システムを示す概要図である。本実施の形態3の物体検知システムは、導電層を有するフィルム基材1の周囲に基準電極となる導電性の枠体7を配置しなくてもすむ方式であり、フィルム基材1だけでセンシング機能を有するように構成したものである。フィルム基材1には二つの導電性部分が存在する。一方の導電性部分は、フィルム基材1の外周に近い部分に環状に配置された導電層パターン2bである。また、他方の導電性部分は、環状型の導電層パターン2bの内側に位置し、大面積の導電層パターン2aとして構成されている。導電層パターン2aと導電層パターン2b間は導通していない。
【0015】
そして、各導電層パターン2a、2bの一部のそれぞれ最も近接した位置であって、保持部5に対し一定の間隙を有した導電層パターン2a、2bと対向する位置に、結合用電極部4a、4bがそれぞれ設けられている。この結合用電極部4a、4bが検出回路部8と一体構造となっており、図2および図3での電線6を不要とした構成になっている。図6は、結合用電極部4a、4bにおけるA−A´方向の断面構造を示す断面図である。ここで導電層パターン2aと結合される結合用電極部4a側は検出回路部8における検出電極側であり、導電層パターン2bと結合用電極部4bとが結合される側が検出回路部8における基準電極側である。つまり、導電層パターン2bは図3における枠体7と同じ働きをする。
【0016】
よって、この導電層パターン2aと導電層パターン2bの周囲に人物などの誘電物質や金属などの導電体が接近もしくは接触すると、この静電容量に微弱な変化が生じ、検出電極側である導電層パターン2aと基準電極側である導電層パターン2bの間に交流信号を印加した状態で人物などの接近もしくは接触があると、この交流信号に変化を生じる。この微弱な変化分を増幅/判定処理することで周囲の状況変化を検出することが可能となる。この方式を採用することにより、窓枠での放熱を防ぎ保温性向上と結露防止、さらに軽量化のために最近登場した樹脂製の窓枠に対しても、センシング可能な導電層を有するフィルム基材として使用可能である。
【0017】
なお、図5で、導電層パターン2a、2bと接合用電極部4a、4bが常に対向するように保持部5を上下方向に動作させる機構を設けた場合、導電層パターン2aに対し、枠体7よりも基準電極側の導電層2bの距離が短いため、保持部5全体が枠体7の内側にある必要はない。
【0018】
さらに、導電層を有した基板において、導電性の部分をふたつ設け、各導電性部分の間に発生する静電容量の変化を検出する構成とし、該基板と一定の距離の位置に、検出回路部と接続された結合用電極部を固定し、各導電性部分の一部分と結合用電極を交流的に間接接続させる構成にしたので、周囲の基準電極用の導電性枠体が不要になり基板面だけでセンシング機能を持たせることができ、例え、枠体が樹脂製であっても動作可能である。さらには、枠体に対し、相対的に導電部の保持部が移動するような場合であってもセンシング可能である。
【0019】
(実施の形態4)
図7は、本発明を人等の接触または接近を検出するセンサに応用したときの実施の形態4の物体検知システムを示す概要図である。本実施の形態4の物体検知システムは、前記実施の形態3と基本的には同じ考え方であり、フィルム基材上に導電性部分の領域を二つ配置し、その間の静電容量変化を検出する方法であるが、導電性部分の形状を櫛型にした点に特徴を有している。
【0020】
本実施の形態4の物体検知システムでは、第一の導電性部分である導電層パターン2aがフィルム基材1上で櫛型状に形成され、さらに第2の導電性部分である導電層パターン2bもフィルム基材1上で櫛型に形成されている。しかし、その配置する位置は第一の導電性部分である導電層パターン2aにおける櫛の隙間に、第二の導電性部分である導電層パターン2bの櫛が存在する位置関係であり、さらに、第一および第二の導電層パターン2a、2b間が導通しないように配置されている。そして図5と同様に、各導電層パターン2a、2bがそれぞれ最も近接し、保持部5とは一定の間隙を有し、導電層パターン2a、2bと対向する位置に結合用電極部4a、4bが設けられている。この結合用電極部4a、4bが検出回路部8と一体構造となっており、図2および図3での電線6を不要とした構成になっている。
【0021】
検出原理については図5に示す実施の形態3と同様であるが、この実施の形態4の方式のほうが検出電極側である導電層パターン2aと基準電極側である導電層パターン2bとの対向する辺が多いので、フィルム基材1全面において比較的均一に検出することができる。また、図7において、導電層パターン2a、2bと接合用電極部4a、4bが常に対向するように支持体5を上下方向に動作させる機構を設けた場合、導電層パターン2aに対し、枠体7よりも基準電極側の導電層パターン2bの距離を常に短くするような配置パターンにすることにより、支持部5の大部分が枠体7の外側にあっても機能させることができる。
【0022】
尚、図5および図7はフィルム基材1上に二つの導電層領域を設ける方式の一例を示すものであり、他の配置パターンであっても本発明の意図するところに含まれる。
また、フィルム基材1、導電層2、結合用電極4、さらにはその他必要に応じて形成される保護層3等の薄膜層において、透明性を高めた構成とすることで、施工後における内部の視認性を劣化させることがない。よって、一般住宅用の窓や自動車用の窓に貼り付けてガラスを破って内部に侵入する「ガラス破り」犯罪に対応した防犯フィルム分野においては、本発明による導電性を有したフィルムを用いることで、従来の進入防止機能にさらにプラスして、警報機能を有することが可能である。
また、検出回路部8は枠体に固定するだけの構成も可能であり、施工を非常に簡単にすることもできる。
さらに、本発明による導電性を有したフィルムを用いることで、窓用の防犯フィルム以外にも、透明窓を有した展示棚やショーケースなどに適用し、触ると検出するタッチセンサとして機能しアナウンス等のガイドや警報等を行うためのスイッチ的な機能としての活用も可能である。
【0023】
(実施の形態5)
次に、検出電極側と基準電極側の間に生じる静電容量の変化を捉える方法について説明する。実際の方式においては各種検出方法が用いられる。例えば、静電容量の変化に伴う発振器の発振周波数の変化を検出するものや電極部でのインピーダンス変化を捉えることも考えられるが特に限定されるものではない。
【0024】
本実施の形態5では、検出方式として最も簡単で一般的な方法であるブリッジ回路81を適用している。図8は、本実施の形態5における検出電極側と基準電極側の間に生じる静電容量の変化を捉えるための検出回路部8の電気回路図である。図8に示す検出回路部8の構成は、抵抗ブリッジ回路において抵抗素子をコンデンサに置換え、印加する信号源を交流信号発振部82にした回路である。ここで、通常の状態(侵入者が接近していない、もしくは接触していない場合)でのブリッジ回路から検出電極側であるフィルム基材1側をみた総合的な容量をCsとし、ブリッジ回路の各辺に配置してある容量値をそれぞれ図8のようにC1、C2、C4とする。また、これらの容量のインピーダンスは下記のように表される。
静電容量 : C1 インピーダンス Z1=1/ωC1
静電容量 : C2 インピーダンス Z2=1/ωC2
静電容量 : C4 インピーダンス Z4=1/ωC4
静電容量 : Cs インピーダンス Zs=1/ωCs
ωは交流信号の振動の角周波数とする。
通常の状態(侵入者が接近していない、もしくは接触していない場合)でのCsにおいて、ブリッジ回路のA点およびB点での信号レベルが等しいとき、つまりブリッジ回路が平衡状態であるとき、各インピーダンスの関係は Z1・Zs=Z2・Z4 となる。これは C1・Cs=C2・C4 でもある。従って、通常状態でのCsにおいて、コンデンサC1、C2、C4が上記の関係が成立するように値を選定すればよい。
【0025】
侵入者が検出電極側であるフィルム基材1に接近、もしくは接触すると、通常状態での検出−基準電極間の容量Cs0に、侵入者の浮遊容量が加わり、全体の静電容量Csが変化するため、ブリッジ回路の平衡状態が崩れ、ブリッジ回路のA点およびB点の信号レベルに差異を生じる。この差異レベルを次段の差動増幅器83によって増幅され、図示していないが後段によって直流化およびレベル判定処理等を行って、侵入者の接近、もしくは接触の判断をしている。そして、この判断結果を基にしてコントローラや警報器と組み合わせることにより警報システム(図示せず)が構成でき、防犯システムとして機能させることが可能となる。
【0026】
図9は、本実施の形態5における導電層を有するフィルム基材1による検出電極側と、導電性を有する枠体7による基準電極側における容量成分を考慮した等価回路図である。
ここで、ブリッジ回路から検出電極側であるフィルム基材1側をみた総合的な容量をCsとした。また、図3での検出電極側における導電層2と結合用電極部4によって構成される検出電極側結合容量をCs1とし、基準電極側における枠体7と絶縁体部9を介して配置される結合用電極部10によって構成される基準電極側結合容量をCs2とし、導電層2による検出電極側と枠体7による基準電極側の間に生じる、検出電極−基準電極間容量をCs0とする。この3つの容量は等価的に直列接続されているものであり、(1/Cs)=(1/Cs1)+(1/Cs2)+(1/Cs0)の関係である。本実施の形態では、ブリッジ回路81に印加する信号源である交流信号発振部82の周波数を約100KHzとし、ブリッジ回路での各コンデンサの値を、C1=C2=180pF、C4=30pFとした。また、検出電極側の結合用電極部4は25mm×500mmの銅板を用いて、導電層2と結合用電極部4との間隙を5mm、比誘電率を約1とし、基準電極側の結合用電極部10は、50mm×50mmの銅板を用いて、絶縁体の厚みを0.2mmとし、比誘電率を約2とした。このとき、これらの条件より、検出電極側結合容量:Cs1と基準電極側結合容量:Cs2について静電容量算出式を用いて計算すると、Cs1≒111pF、Cs2≒220pFとなる。従って、通常の状態(侵入者が接近していない、もしくは接触していない場合)ではブリッジ回路81は平衡状態であるので、Cs=C4=30pFである。これらの数値を前記した式に代入して、通常状態での、検出電極−基準電極間容量:Cs0を求めると、約74pFになる。
このことより、検出電極側結合容量:Cs1と基準電極側結合容量:Cs2を大きくすればするほど検出電極−基準電極間容量:Cs0がコンデンサC4の値に近づくことがわかる。
【0027】
(実施の形態6)
次に、本発明の物体検知システムに用いられる各種材料について説明する。
<透明フィルム基材>
ベースとなるフィルム基材には、透明性を有するフィルム状の無機化合物成形物または有機化合物成形物が挙げられるが、そのフレキシビリティーと軽量性、それに何よりも加工性の点から有機化合物が好適であり、成形物の形状は表面が平滑であれば特に限定されない。また透明基材は、透明性を有すれば単一有機化合物成形物の均質構造(例えば光学的に異方性のない)が可能である。一方、フィルムの強度を強化するために同一、又は異なる有機化合物成形物を粘着・接着剤により積層構造体化した積層フィルムや、フィルムの成型時に多層構造化としたフィルムも使用可能である。
【0028】
透明性を有する有機化合物としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリプロピレン、ポリエチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリウレタン、ポリエチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース等のプラスチックが挙げられる。特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート等のプラスチックフィルムが透明性、強度、価格等から好適である。前記プラスチックフィルムの厚さは、目的の用途に応じて25〜300μmの範囲から適宜選択され、更に目的の用途に応じて、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等が添加さてれていても特に構わないし制約を加えるものではない。
【0029】
<透明導電層>
物体検知システムを構成する透明導電層は、電気伝導性があれば特に制限されないが、インジウム、錫、亜鉛、チタン、ニオブ、セリウム、アンチモン等の酸化物、及び2種類以上の元素から成る複合酸化物が好適である。また、チタン窒化物も適用可能である。さらには、銀及び銀合金を透明酸化物で狭支した多層膜も使用可能である。形成方法も特に制限されるものではないが、ドライ法として真空蒸着法、イオンプレーティング法、プラズマ活性化蒸着法、スパッタリング法、CVD法などがあり、Wet法としてゾルゲルや導電性を有する粒子を分散させ塗液を塗布乾燥する方法などがある。
【0030】
導電層は、検出電極として機能するだけでなく、熱線遮蔽性を発現する。熱線遮蔽性は赤外線を反射することにより達成される。具体的には赤外線(波長約800nm以上)の光線透過率を抑制することが必要である。
このような光学的な振る舞いは、透明導電層を構成する物質内部の自由電子(キャリア)と光の相互作用であり、電気的特性のキャリア密度と光学的特性の反射の関係を用いることが出来る。前記相互作用は、プラズマ共鳴振動と呼ばれ、振動周波数をプラズマ振動周波数ωpと言う。プラズマ振動周波数ωpより小さい周波数の光は、物質内部の自由電子(キャリア)と共鳴し反射される。プラズマ振動周波数ωpは、

ωp=nq/ε
(n:キャリア密度、q:キャリアの電荷、ε:誘電率、m:キャリアの有効質量)

で表される。プラズマ振動周波数ωpにおける光の波長λpは、光速cとの関係式c=ωp・λpから、λp=c/ωpで求められる。関係式から近赤外領域である約800nm以上の赤外線を効率よく反射するために、λp=800nmについてキャリア密度を求めると約2×1021cm−3と求められる。本発明に赤外線遮蔽機能を付与する場合、キャリア密度が上記の値以上の物質を導電層に少なくとも一層入れる必要がある。
【0031】
<粘着層・接着層>
図示していないが粘着層または接着層は、基板の貼り合わせとガラスへの貼り合わせに用いられる。使用に際して明確に区別することはないが、ガラスに貼り合わせる面を粘着剤とするのが良い。その理由は、粘着剤とガラスが接すると、ガラスが割れた時に粘着剤がガラスの飛散を防止するために「ガラス破り」に対して有効となり、防犯性能が高くなるからである。多層数も要求特性に合わせて適宜決めることが可能である。粘着剤としては、ポリアクリル酸エステルを主成分したアクリル系粘着剤、シリコーン樹脂を主成分としたシリコーン系粘着剤、また天然ゴム、合成ゴムの弾性体と粘着付与剤が主成分のゴム系粘着剤等がある。使用可能な粘着剤に制限は無いが、本発明における粘着剤としては、アクリル系あるいはシリコーン系の粘着剤が好ましい。接着剤としては、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等が使用可能である。
【0032】
<絶縁保護層>
図1で示している保護層は、フィルム基材の表面に形成した導電層を保護する目的で施され、フィルム基材全面での表面の高硬度化が目的である。その効果は、鉛筆等による引っ掻き傷、スチールウールによる擦り傷等が起こらない耐禍性処理である。絶縁処理層を形成する材料としては、透明性、適度な硬度および機械的強度を有するものであれば良く、アクリル系樹脂、有機シリコーン系樹脂、ポリシロキサン等の樹脂材料が挙げられる。また絶縁処理層を塗工する際に、塗工液に樹脂フィラーや無機のフィラーを混合させることにより高硬度化することや、フィルム自体を不透明化しプライバシー保護機能の付与も可能であり、各々適宜使用しても構わない。
【0033】
<紫外線吸収層・赤外線吸収層>
さらに付加機能を設ける方法として図示していないが、粘着層・接着層や絶縁処理層に紫外線吸収層、及び赤外線吸収層を設けることも出来る。紫外線吸収層、及び赤外線吸収層は、太陽光線中の紫外線及び赤外線が室内に入射するのを低減させる機能である。方法として、紫外線、又は赤外線吸収剤を含む皮膜を形成したり、粘着層及び接着層、または絶縁処理層に混ぜて、各層を形成すればよい。形成方法は特に制限されない。紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系などの有機系と、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム等の無機微粒子系があり、要求特性に合わせて単独、または混合して使用して構わない。
【0034】
赤外線吸収剤としては、赤外線吸収色素等の有機系と導電性の無機微粒子の様な無機系があり、各々要求に応じて使用できる。有機系としては、フタロシアニン系やシアニン系の有機色素がある。無機系としては、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化クロム、酸化モリブデン、アンチモン含有酸化スズ、インジウム含有酸化スズ微粒子がある。このうち、可視光領域に光吸収性のない材料が好適である。紫外線、又は赤外線吸収剤を固定する樹脂として、主にアクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂が一般に使用される。またフィルムセンサの透明導電層で用いた透明酸化物材料は、赤外線領域に電気伝導性に起因した反射性能、紫外線領域にバンドギャップに起因した吸収性能を有しているため、実質的に被膜を形成して紫外線、赤外線吸収層の両方の効果を付与することが可能である。
また透明基材として、上記の様な紫外線吸収剤、赤外線吸収剤を含有させた可視域で透明なプラスチックフィルムを用いることも可能である。
【0035】
<ガラス窓>
本発明の保持部5として、ガラス構造物、窓ガラス、及びガラス状建物構造物を挙げたが、これに限らず、透明で強度があり窓やショーウィンドウとして使用可能であれば特に制限されず、合成樹脂板等でも可能である。また形成した物体検知システムの誤動作を防ぐために、動作許可信号を用意し動作を制限することも可能である。例として、窓ガラスなどにマイクロスイッチを設置する等が好適である。
【0036】
以上のように、基板・導電層さらには結合用電極部等の透明性を高めた構成とすることで、施工後における内部の視認性を劣化させることがない。よって、一般住宅や自動車の窓に貼り付けてガラスを破って内部に侵入する「ガラス破り」犯罪に対応した防犯フィルム分野においては、本発明による導電性を有したフィルムを用いることで、従来の進入防止機能にさらにプラスして、警報機能を有することが可能である。また、地震災害時に発生するガラス飛散に対しても高い防止機能を併せ持つこともできる。
【0037】
また、導電層がキャリア密度2×1021cm-3以上である物質を含むことにより、プラズマ共鳴振動の作用で、近赤外線である約800nm以上の波長の光は、物質内部の自由電子(キャリア)と共鳴し反射されることから、熱線遮蔽機能を付与することができる。
【0038】
また、近年普及してきたlow-eガラスには、熱線遮蔽機能を持たせるため、導電層を含んでいる。この導電層が基準電位と同電位になっていなければ(浮遊電位ならば)、あらためて導電層を形成することなく、ガラス面に検出回路部に接続された結合用電極部を基板から一定の位置に貼り付けるだけで、センシング機能を持たせることができる。
【0039】
また、本発明による導電性を有したフィルムを用いることで、住宅窓用の防犯フィルム以外にも、透明窓を有した展示棚やショーケースなどにも同様に設置し、触ると検出するタッチセンサとして機能しアナウンス等のガイドや警報等の防犯を行ったり、または住宅の壁紙などの一部に内蔵し、人間の手の接触を検出し各種制御を開始させるスイッチ機能としての活用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明における実施の形態1の物体検知システムの基本的な構成を示す断面図である。
【図2】本発明を人等の接触または接近を検出するセンサに応用したときの実施の形態1の物体検知システムを示す概要図である。
【図3】本発明を人等の接触または接近を検出するセンサに応用したときの実施の形態2の物体検知システムを示す概要図である。
【図4】実施の形態2の物体検知システムにおける絶縁部および結合用電極部の断面構造図である。
【図5】本発明を人等の接触または接近等を検出するセンサに応用したときの実施の形態3の物体検知システムを示す概要図である。
【図6】実施の形態3の物体検知システムの結合用電極部におけるA−A´方向の断面構造を示す断面図である。
【図7】本発明を人等の接触または接近を検出するセンサに応用したときの実施の形態4の物体検知システムを示す概要図である。
【図8】本実施の形態5における検出電極側と基準電極側の間に生じる静電容量の変化を捉えるための検出回路部の電気回路図である。
【図9】本実施の形態5における導電層を有するフィルム基材による検出電極側と、導電性を有する枠体による基準電極側における容量成分を考慮した等価回路図である。
【符号の説明】
【0041】
1……フィルム基材、2……導電層、2a、2b……導電層パターン、3……保護層、4a、4b……結合用電極部、5、5’……保持部、6……電線、7……枠体、8……検出回路部、9……絶縁部、10……結合用電極部、11……基板。
【出願人】 【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
【出願日】 平成18年8月21日(2006.8.21)
【代理人】 【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂


【公開番号】 特開2008−46081(P2008−46081A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−224363(P2006−224363)