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【発明の名称】 複合型廃棄体確認システム
【発明者】 【氏名】高峰 潤

【要約】 【課題】1つの装置体系で、廃棄体が処分基準を満たしているか否かの確認に必要な情報を得るための様々な測定を選択実行でき、多くの構成機器を無駄なく利用することで、廃棄体品質保証を、合理的に且つ経済的に行なえるようにする。

【解決手段】測定に必要なX線エネルギーに応じた電子線を発生させるエネルギー可変型電子線加速器10と、その電子線を透過させることで所要特性の放射線を発生させる放射線コンバータ12と、被測定物である廃棄体14を載せる試料台16と、放射線が廃棄体を透過あるいは反射することで発生する放射線の線種および強度を測定する放射線検出装置18を具備し、バックグラウンド測定、パッシブ中性子・γ線測定、X線CTスキャン測定、光核反応による難測定核種の測定、光中性子混合線による核分裂性物質・非核分裂性物質の弁別測定及び中性子放射化分析が選択測定可能になっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を発生させる電子線加速器と、該電子線加速器から出力する電子線を透過させることで所要特性の放射線を発生させる放射線コンバータと、被測定物である廃棄体を載せる試料台と、前記放射線コンバータから出力される放射線が廃棄体を透過あるいは反射することで発生する放射線の線種および強度を測定する放射線検出装置を具備している廃棄体確認システムにおいて、
前記電子線加速器は、測定に必要なX線エネルギーに応じた電子線を発生させるエネルギー可変型電子線加速器であり、前記放射線コンバータは、低エネルギーX線発生用ターゲットとスライス撮影用コリメータ、高エネルギーX線発生用ターゲットと中性子遮蔽体、高エネルギーX線発生用ターゲットと中性子コンバータの3種類の組み合わせが形成可能で、それらが測定区分に応じて交換可能であって、前記放射線検出装置は、少なくともX線CT用検出器、中性子検出器、γ線検出器を備えており、それらの機器の組み合わせにより複数の検出機能をもつ単一の装置体系を構成し、
それによってバックグラウンド測定、パッシブ中性子・γ線測定、X線CTスキャン測定、光核反応による難測定核種の測定、光中性子混合線による核分裂性物質・非核分裂性物質の弁別測定及び中性子放射化分析が選択測定可能になっていることを特徴とする複合型廃棄体確認システム。
【請求項2】
前記放射線コンバータは、低エネルギーX線発生用ターゲットと高エネルギーX線発生用ターゲットのいずれか、及びスライス撮影用コリメータと中性子遮蔽体と中性子コンバータのいずれかの組が測定区分に合わせて選択され、各機器の自動着脱が可能になっている請求項1記載の複合型廃棄体確認システム。
【請求項3】
前記放射線コンバータは、測定区分に応じて、厚さ1mm〜2mm程度の低エネルギーX線発生用タングステンターゲットとスライス撮影用コリメータの組み合わせにより数MeVの最大エネルギーを持つ制動X線を出力する第1のコンバータと、厚さ5mm程度の高エネルギーX線発生用タングステンターゲットとBr入りポリエチレン中性子遮蔽体の組み合わせにより10MeV程度の最大エネルギーを持つ制動X線を出力する第2のコンバータと、厚さ5mm程度の高エネルギーX線発生用タングステンターゲットと中性子コンバータの組み合わせにより光中性子混合線を出力する第3のコンバータが形成可能となっている請求項2記載の複合型廃棄体確認システム。
【請求項4】
被測定物である廃棄体を載せる試料台は、ターンテーブルと昇降機構からなり、測定に際して、廃棄体の回転及び上下移動を可能とした請求項1乃至3のいずれかに記載の複合型廃棄体確認システム。
【請求項5】
測定を行う領域を、パッシブ測定室とアクティブ測定室との隣接する2つの測定室に遮蔽区画した構成とし、それら2測定室間にわたって移動用レールを敷設すると共に2測定室間に遮蔽扉を設置し、該移動用レールに試料台を載せ2測定室間で移動可能にすると共に、パッシブ測定室に複数のγ線検出器を配置し、アクティブ測定室にX線CT用検出器と複数の中性子検出器及び放射線コンバータを配置し、電子線加速器を収容した照射室を前記アクティブ測定室に付設し、2個の廃棄体に対してパッシブ測定とアクティブ測定を同時に実施可能にした請求項1乃至4のいずれかに記載の複合型廃棄体確認システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄体が処分基準を満たしているか否かを、該廃棄体に様々な放射線を照射して相互作用を誘起させ、あるいは廃棄体からの自発的な放射線を計測することにより、合理的に且つ経済的に検証できるようにした複合型廃棄体確認システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超ウラン核種を含む放射性廃棄体が処分場に受け入れられる条件として、多岐に渡る条件を満たすことが必要である。これから製造される廃棄体については作成記録や廃棄体作成前の履歴を元に、いくつかの基準を満たしているかどうかを判定することが可能なものも存在するが、製作時期が非常に古い固化体の中には処分基準に即した作成記録や履歴が無いものも存在する。また、これから製造する廃棄体についても、既に実施されている原子力発電所の低レベル放射性廃棄物の処分を踏まえた確認手法にするのであれば、発生時や処理時の履歴はもちろんのこと廃棄体の搬出時に放射能や固化体の健全性を検認する必要がある。
【0003】
近年これらの問題を解消すべく、廃棄体確認法として既に実用化しているパッシブγ法以外に、アクティブ中性子法、CTスキャンの廃棄体確認への応用、光核反応を利用した難測定核種の測定など、様々な非破壊測定法が精力的に研究されている。例えば、光核反応を利用した難測定核種の測定装置につては、特許文献1に開示されている。しかし、これら従来の測定技術が持つ共通の問題は、放射線発生装置や遮蔽構造物に莫大な費用が掛かることである。
【特許文献1】特開2004−37106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、1つの装置体系で、様々な放射線相互作用を誘起させ、または自発的な放射線を計測することにより、廃棄体が処分基準を満たしているか否かの確認に必要な情報を得るための様々な測定を選択実行でき、多くの構成機器を無駄なく利用することで、廃棄体品質保証を、合理的に且つ経済的に行なえるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、電子線を発生させる電子線加速器と、該電子線加速器から出力する電子線を透過させることで所要特性の放射線を発生させる放射線コンバータと、被測定物である廃棄体を載せる試料台と、前記放射線コンバータから出力される放射線が廃棄体を透過あるいは反射することで発生する放射線の線種および強度を測定する放射線検出装置を具備している廃棄体確認システムにおいて、前記電子線加速器は、測定に必要なX線エネルギーに応じた電子線を発生させるエネルギー可変型電子線加速器であり、前記放射線コンバータは、低エネルギーX線発生用ターゲットとスライス撮影用コリメータ、高エネルギーX線発生用ターゲットと中性子遮蔽体、高エネルギーX線発生用ターゲットと中性子コンバータの3種類の組み合わせが形成可能で、それらが測定区分に応じて交換可能であって、前記放射線検出装置は、少なくともX線CT用検出器、中性子検出器、γ線検出器を備えており、それらの機器の組み合わせにより複数の検出機能をもつ単一の装置体系を構成し、それによってバックグラウンド測定、パッシブ中性子・γ線測定、X線CTスキャン測定、光核反応による難測定核種の測定、光中性子混合線による核分裂性物質・非核分裂性物質の弁別測定及び中性子放射化分析が選択測定可能になっていることを特徴とする複合型廃棄体確認システムである。
【0006】
ここで放射線コンバータは、ターゲット、コリメータ、中性子遮蔽体、及び中性子コンバータからなり、それらが測定区分に合わせて選択され、各機器を自動着脱できる構成とするのが好ましい。例えば、測定区分に応じて、厚さ1mm〜2mm程度の低エネルギーX線発生用タングステンターゲットとスライス撮影用コリメータの組み合わせにより数MeVの最大エネルギーを持つ制動X線を出力する第1のコンバータと、厚さ5mm程度の高エネルギーX線発生用タングステンターゲットとBr入りポリエチレン中性子遮蔽体の組み合わせにより10MeV程度の最大エネルギーを持つ制動X線を出力する第2のコンバータと、厚さ5mm程度の高エネルギーX線発生用タングステンターゲットと中性子コンバータの組み合わせにより光中性子混合線(X線と中性子線の混合線)を出力する第3のコンバータを形成可能とする。
【0007】
被測定物である廃棄体を載せる試料台は、ターンテーブルと昇降機構からなり、測定に際して、廃棄体の回転及び上下移動を可能とするのが好ましい。
【0008】
また、測定を行う領域を、パッシブ測定室とアクティブ測定室との隣接する2つの測定室に遮蔽区画した構成とし、それら2測定室間にわたって移動用レールを敷設すると共に2測定室間に遮蔽扉を設置し、該移動用レールに試料台を載せ2測定室間で移動可能にすると共に、パッシブ測定室に複数のγ線検出器を配置し、アクティブ測定室にX線CT用検出器と複数の中性子検出器及び放射線コンバータを配置し、電子線加速器を収容した照射室を前記アクティブ測定室に付設し、2個の廃棄体に対してパッシブ測定とアクティブ測定を同時に実施可能にするのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る複合型廃棄体確認システムは、1つの装置体系で様々な放射線相互作用を誘起させ、あるいは自発的な放射線を計測できるため、廃棄体の確認に必要な情報を得るための様々な測定を選択実行でき、多くの構成機器を無駄なく利用し、各々の測定情報を相互に結びつけることにより、廃棄体品質保証において必要とされる情報を一括で、合理的に且つ経済的に得ることができる。
【0010】
特に測定を行う領域を、パッシブ測定室とアクティブ測定室との隣接する2つの測定室に区画し、試料台が測定室間で移動自在となるように構成すると、2測定室で廃棄体の同時測定が可能なため測定時間の短縮を図ることができ、またバックグラウンドの低減が可能になる。
【0011】
本発明に係る複合型廃棄体確認システムは、上記のように複数種類の測定を1つ又は2つの測定室で実施できるため、専用の装置で測定していた従来技術と比較すると大幅な省スペース化が達成できる。同時に、複合一体化した装置システムであり、放射線源(電子線加速器)等の共用化を図ることができ、大きなコストメリットを得ることができる。また、測定手順を測定制御装置で制御することにより、所要の測定区分を複数選択でき、選択に合わせた測定を行うことで、測定の効率向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明に係る複合型廃棄体確認システムの構成を示すブロック図である。この複合型廃棄体確認システムは、測定に必要なX線エネルギーに応じた電子線を発生させるエネルギー可変型電子線加速器10と、該電子線加速器10から出力される電子線を透過させることで所要特性の放射線を発生させる放射線コンバータ12と、被測定物である廃棄体14を載せる試料台16と、前記放射線コンバータ12から出力される放射線が廃棄体14を透過あるいは反射することで発生する放射線種および強度を測定する放射線検出装置18と、それらの各機器を制御する測定制御装置20を具備している。
【0013】
前記放射線コンバータ12は、低エネルギーX線発生用ターゲット22と高エネルギーX線発生用ターゲット24、及びスライス撮影用コリメータ26と中性子遮蔽体28と中性子コンバータ30を具備している。これらによって、低エネルギーX線発生用ターゲット22とスライス撮影用コリメータ26、高エネルギーX線発生用ターゲット24と中性子遮蔽体28、高エネルギーX線発生用ターゲット24と中性子コンバータ30の3種類の組み合わせが形成可能で、それらが測定区分に応じて交換可能な構成である。図示していないが、昇降機構あるいは回転機構等を利用して交換できるような構造とする。また、前記放射線検出装置18は、X線CT用検出器32、中性子検出器34、γ線検出器36を備えている。
【0014】
ここで、低エネルギーX線発生用ターゲット22は、厚さ1mm〜2mm程度のタングステン板、高エネルギーX線発生用ターゲット24は、厚さ5mm程度のタングステン板である。また中性子遮蔽体28はBr入りポリエチレン遮蔽板であり、中性子コンバータ30はBe等の光核反応を起こし易い材料で製作する。
【0015】
X線CT用検出器32はシリコン半導体検出器等とCCDカメラの組み合わせ、中性子検出器34はポリエチレンで梱包されたHe3 検出器とカドミウムカットオフフィルタの組み合わせ、γ線検出器36はNaI検出器やGe検出器からなる。
【0016】
更に試料台16は、被測定物である廃棄体14を回転させるターンテーブルとそれを昇降させる昇降装置を具備し、放射線検出装置18によって、廃棄体から放出される、または廃棄体を透過した放射線を検出する際、放射性物質または、廃棄体構成物質の偏在の情報を得るために、回転、昇降させる機能を果たすものである。
【0017】
測定制御装置20はPC(パーソナルコンピュータ)からなり、前記5種類の測定に対応した処理手順の制御と、電子線加速器10の制御と、放射性コンバータ12の機能や機器の選択制御、被測定物である廃棄体14の位置制御、放射線検出装置18の機能や機器の選択制御などを行い、放射線検出装置18で収集した各種データを利用して、モンテカルロ法等のシミュレーション計算によるマトリクス補正(CT−モンテカルロ補正法)、更には各測定で得た測定結果の相互リンク等を行うものである。
【0018】
これによって、放射性廃棄体に関する(1)バックグラウンド測定、(2)X線CTスキャン測定、(3)パッシブ中性子・γ線測定、(4)光核反応による難測定核種の測定、(5)光中性子混合線(X線と中性子線との混合線)による核分裂性物質(Pu−239、U−235等)と非核分裂性物質(U−238,Pu240等)との弁別測定及び中性子放射化分析が実現できる。
【0019】
表1に複合型廃棄物確認システムの各構成要素の一覧を示す。
【表1】


【0020】
図2に、この複合型廃棄体確認システムの具体的な処理手順の例を示す。
・ステップS1:測定に先立ち廃棄体を試料台に載置する前に、測定環境のγ線・中性子線のバックグラウンドを測定する。
・ステップS2:電子線加速器を利用して比較的エネルギーの低い電子線により最大エネルギー1MeV程度のX線を発生させ、X線CTスキャン測定を行う。
・ステップS3:2種類の検出器を用いて放射性核種から発生する放射線を受動的に検出するパッシブγ線、中性子を測定する。
・ステップS4:同じ電子線加速器で、比較的エネルギーの高い電子線により、最大エネルギー10MeV程度の強力X線や中性子線を発生させ廃棄体に照射し、これにより誘起される能動的な核反応による放射線を検出する。
・ステップS5:光中性子混合線を用いた核分裂性物質、非核分裂性物質の弁別測定及び中性子放射化分析を行う。
【0021】
ステップS1の情報から、廃棄体の有害な空隙、密度を調べ圧縮強度などの物理的な健全性を検証する。ステップS1とステップS6の情報から、有害物質(鉛、アルミニウムなど)を定量し、有害物等の化学的な健全性を評価する。ステップS2〜S5の各測定の結果から補正計算を行なうためのマトリクス情報を得る。廃棄体のマトリクス・インベントリ情報をできるだけ多く得るための、CTスキャンによるマトリクスの3Dデータと、計測された放射線量から実際の放射性核種量を評価するマトリクス補正計算を行う。また本確認システムは、廃棄体の種類に合わせて必要の無いステップを省いたり、実行したいステップを選択して実行できる。
【実施例】
【0022】
〔第1の実施例〕
第1の実施例では、1つの測定室で表1に記載した全ての測定を行なうことができるように、図1に示した各機器(放射線コンバータ、試料台、放射線検出装置)を配置する。エネルギー可変型電子線加速器は、測定室の放射線コンバータに向けて電子線を照射できるように、該測定室に付設する。ここで、放射線コンバータを構成する低エネルギーX線発生用ターゲットと高エネルギーX線発生用ターゲットは回転あるいは移動により交換可能とし、スライス撮影用コリメータと中性子遮蔽体と中性子コンバータも回転あるいは移動により交換可能とする。中性子検出器及びγ線検出器は、それぞれ複数、廃棄体を取り囲むように周囲及び上下に均等に配設する。X線CT用検出器は、廃棄体を介して放射線コンバータに対向する位置に設置可能とする。X線CT用検出器は、使用しないときには退避できるように移動可能とする。この構成は、1つの測定室でよいため、省スペース化を図ることができる利点がある。
【0023】
次に、表1に記載した各測定を行う場合の各機器の組み合わせと配置、及び機能について、個別に図示して説明する。
【0024】
図3は、パッシブ中性子・γ線測定の概念を示す説明図である。この測定は、電子線加速器(放射線源)を利用せずに、廃棄体14からの放射線を検出するものである。廃棄体14の周囲、上下(上下は図示せず)に中性子検出器34とγ線検出器36を均等に配設し、廃棄体14からの放射線量を測定する。この測定では、Cs−137、Co−60等のγ線放出核種やPu−240、Cm−244等の自発核分裂性物質から放出される中性子やγ線を測定する。更に、マトリクスによる中性子線の減速・吸収、γ線の減衰により過小評価される傾向にあるため、X線CTスキャン測定によるマトリクス情報を用いて補正する。
【0025】
図4は、X線CTスキャン測定の概念を示す説明図である。エネルギー可変電子線加速器10で必要なX線エネルギーに応じたエネルギーの電子線を発生させ、数MeVの電子線を放射する。この数MeVの電子線を厚さ数mmのタングステンからなる低エネルギーX線発生用ターゲット26を透過させ、更に、スライス撮影用コリメータ26を通して所望の制動X線を発生させる。これによって、X線CTスキャン測定に必要な平面状に放射するスライス撮影用X線が発生する。このとき、タングステン製の低エネルギーX線発生用ターゲット26は、入射電子線エネルギーに応じて最適な厚さに変化させることができる構造とする。廃棄体14を透過したスライス撮影用X線は、X線CT用検出器32で検出される。
【0026】
このように、X線CTスキャン測定では、電子線加速器10によって誘起される最大エネルギー1MeV程度の比較的低いエネルギーのX線を用いて、廃棄体内部の密度分布を3D情報化する。この密度分布から、廃棄体の空隙・圧縮強度等の物理的健全性が確認でき、重金属元素(鉛等)やアルミニウムなどの有害物質の有無を判断する化学的健全性を確認できる。また、この密度分布から各非破壊測定の補正計算に利用するマトリクスデータを得る。
【0027】
図5は、光核反応による難測定核種の測定の概念を示す説明図である。エネルギー可変電子線加速器10で必要なX線エネルギーに応じたエネルギーの電子線を発生させる。この電子線を厚さ5mm程度のタングステンからなる高エネルギーX線発生用ターゲット24を透過させ、数10MeVをピークエネルギーとするX線に変換し、更に、中性子遮蔽材28を通して所望のX線を発生させる。これによって数10MeVの高エネルギーX線を発生させることができる。このとき、タングステン製の高エネルギーX線発生用ターゲット24は、厚さ5mm程度が基本であるが、入射電子線エネルギーに応じて最適な厚さに変化させることができる構造とする。
【0028】
この測定では、電子線加速器10のエネルギーを30MeV程度にし、高エネルギーX線発生用ターゲット24を透過させることで10Mev程度の最大エネルギーを持つX線を発生させる。この時、中性子も発生するが、測定の妨げになるので極力遮蔽するように工夫する必要がある。そこで、Br入りポリエチレンなどからなる中性子遮蔽体28を設けている。ところで、ある原子核に、その結合エネルギーを超す高エネルギーX線を照射すると、光核反応(γ、n)反応が起こる。この反応によって中性子を剥ぎ取られた原子核は、特有の高エネルギーγ線を放出する場合がある。例えばI−129は、パッシブγ線測定が可能な高エネルギーγ線を放出しないが、(γ、n)反応によってI−128に変換し、I−128から発生する443keV程度のγ線を検出することにより間接的にI−129が測定できる。
【0029】
このシステムには中性子検出器34も装備されているので、中性子数を測定することにより、(γ、n)反応の反応数を知ることが可能である。また、難測定核種(I−129等)が(γ、n)反応によって生成された核種(I−128等)から放出されるγ線の検出は、パッシブγ線測定で使用したγ線検出器36を利用することができる。核種から放出されるγ線の減衰のためのマトリクス補正以外に、光核反応を誘起させる入射X線の減衰補正が必要であり、これをX線CTスキャン測定によるマトリクス情報によって補正する。
【0030】
図6は、光中性子混合線による核分裂性物質(Pu−239、U−235等)、非核分裂性物質(U−238,Pu240等)の弁別測定、及び中性子放射化分析の測定の概念を示す説明図である。エネルギー可変電子線加速器10により必要なX線エネルギーに応じた電子線を発生させ、発生した数10MeVの電子線を厚さ5mm程度のタングステンからなる高エネルギーX線発生用ターゲット24を透過させ、数10MeVをピークエネルギーとするX線に変換する。このX線を中性子コンバータ(Be,Li等からなる光核反応ターゲット)30に入射し、高速中性子(数MeVをピークエネルギーとする中性子線)を発生させる。これにより、光中性子混合線(数10MeVをピークエネルギーとするX線と数MeVをピークエネルギーとする中性子線との混合線)が発生する。なお、高エネルギーX線発生用ターゲット24及び中性子コンバータ30は、入射電子線エネルギーによって最適な厚さに変化させることができる構造とする。
【0031】
光中性子混合線を廃棄体14に照射すると、光子(X線)や中性子は、廃棄体内のTRU核種の核分裂を誘起するが、核分裂中性子(2MeV程度をピークとする高速中性子)の時間変化を測定すると、図7に示すように、大きく4段階に分けることができる。
(a)の時間帯(0〜630μ秒)では、入射光子・高速中性子による核分裂性物質、非核分裂性物質両方の核分裂による即発中性子が検出される。入射高速中性子は、グラファイト等の減速材・反射体によって熱中性子に減速される。
(b)の時間帯(630〜1350μ秒)においては、Pu−239、U−235等の核分裂性物質によって捕獲され、熱核分裂反応が起こり、即発中性子が発生する。ここで非核分裂性物質による核分裂はほとんど起きない。
(c)の時間帯(1350〜3200μ秒)では、即発中性子、遅発中性子両方が検出される。
(d)の時間帯(>3200μ秒)では全核分裂における遅発中性子が検出される。
ところで、(d)における計数は、核分裂性物質による遅発中性子よりも非核分裂性物質によるものの方が数十倍多い。従って、(b)と(d)の計数の比から、核分裂性物質、非核分裂性物質を弁別して測定することができる。この弁別測定において、マトリクスの中性子吸収、減速能によって核分裂性物質、非核分裂性物質の量が過小評価される。これをX線CTスキャン測定のマトリクス情報を用いて補正する。
【0032】
また、中性子を照射した後、核分裂以外に中性子を捕獲した核種が、特有のγ線を放出する。この(n、γ)反応によるγ線を測定することで、有害物質を構成する塩素や鉛等の核種が特定できる。
【0033】
〔第2の実施例〕
第1の実施例では、省スペースの観点から、1つの測定室で、表1に記載した全ての測定を行なうように構成している。しかし、スペースに余裕があるのであれば、2つの測定室に分離する方が、測定時間を短縮することができ、更にはバックグラウンドの低減が可能になる。2つの測定室を並設する場合の装置全体の構成を図9に示す。
【0034】
測定を行う領域を、パッシブ測定室50とアクティブ測定室52との隣接する2つの測定室に遮蔽壁54で区画した構成とする。そして、それら2測定室間にわたって移動用レール56を敷設すると共に2測定室間に遮蔽扉58を設置し、該移動用レール56に試料台16を載せ2測定室間で移動可能にする。試料台16はターンテーブルと昇降装置を備え、ターンテーブル上に被測定物である廃棄体14が載置可能となっている。更に、パッシブ測定室50の側壁とアクティブ測定室52の側壁にもそれぞれ遮蔽扉58を設置し、試料台16に載った廃棄体14を運び込めるようにする。パッシブ測定室50には、複数のγ線検出器36を、廃棄体14を取り囲むように配置する。また、アクティブ測定室52には、複数の中性子検出器34を、廃棄体14を取り囲むように配置すると共に、放射線コンバータ12とX線CT用検出器32とを配置する。また、電子線加速器10を収容した照射室60を前記アクティブ測定室52に付設する。
【0035】
アクティブ測定室52では、光中性子混合線を照射することにより、光核反応による難測定核種の測定における(γ,n)反応、及び中性子放射化分析における(n,γ)反応を起こさせる工程、照射しながら測定する必要のある光中性子混合線による核分裂性物質(Pu−239、U−235等)と非核分裂性物質(U−238,Pu240等)の弁別測定、X線CTスキャン測定を行う。パッシブ測定室50では、放射線照射前にパッシブγ測定を行ない、また、アクティブ測定室52で(γ,n)反応、(n,γ)反応した後の廃棄体のγ線を測定する。このようにパッシブ測定室50とアクティブ測定室52の2つの測定室に分離すれば、ある廃棄体をアクティブ測定室52で照射している間に、他の廃棄体のパッシブ測定を行なうことができ、測定時間を短縮することができる。また、高エネルギー放射線照射後の測定室はバックグラウンドが大きくなるので、測定室を2つに分離することによりこの弊害を避けることができる。
【0036】
次に、分割測定の概念について図9により説明する。検出器にコリメータを付設して指向性を高めると、被測定領域を細かく分割した測定ができ、線源位置の特定を行うことができる。図9において、Aはx−y方向(水平方向)の断面を表し、Bはx−z方向(垂直方向)の断面を表している。廃棄体14の外周に複数のコリメータ付き検出器62を配置し、あるいは円周方向に移動して、各位置で測定し、それぞれを比較することにより、x−y方向の線源64の位置を特定することができる。また、z方向にコリメータ付き検出器62を複数配置し、あるいは上下方向に移動して、各スライス毎に測定し、それぞれを比較することにより、z方向の線源位置を特定することができる。
【0037】
ところで、廃棄体構成物質自体は減速・吸収能を持つ場合が多い。中性子が特に相互作用を起こすのは水素等の軽元素であるのに対して、X線CTスキャン測定は、軽元素を特定することには不向きである。X線CTスキャン測定で、軽元素の定量が困難であれば、中性子CTスキャン測定を利用することもできる。その場合は、放射線検出装置として、6LiF・ZnS(Ag)混合物等からなる中性子シンチーレーターとCCDカメラの組み合わせを用いればよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る複合型廃棄体確認システムのブロック図。
【図2】その測定手順を示す説明図。
【図3】パッシブ中性子、γ線測定の説明図。
【図4】X線CTスキャン測定の説明図。
【図5】光核反応による測定の説明図。
【図6】光中性子混合線を用いた核分裂性物質、非核分裂性物質の弁別測定の説明図。
【図7】光中性子混合線を廃棄体に照射したときの核分裂中性子の時間変化を示すグラフ。
【図8】2測定室構成の例を示す説明図。
【図9】分割測定の例を示す説明図。
【符号の説明】
【0039】
10 電子線加速器
12 放射線コンバータ
14 廃棄体
16 試料台
18 放射線検出装置
20 測定制御装置
【出願人】 【識別番号】505374783
【氏名又は名称】独立行政法人 日本原子力研究開発機構
【出願日】 平成18年9月26日(2006.9.26)
【代理人】 【識別番号】100078961
【弁理士】
【氏名又は名称】茂見 穰


【公開番号】 特開2008−82779(P2008−82779A)
【公開日】 平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願番号】 特願2006−261155(P2006−261155)