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【発明の名称】 ポラリメトリSARの画像処理方法及び装置
【発明者】 【氏名】小野 清伸

【要約】 【課題】ターゲットに応じて鮮明な画像を再生可能なポラリメトリSARの画像処理装置を提供する。

【構成】ポラリメトリSARにおいては、送信波をアンテナ5,6及び受信機7,8で受信し、データ処理部9,10でSARデータを記録し、分離処理部11,12でHHデータとVHデータとに分離するとともに、HVデータとVVデータとに分離する。ポラリメトリSARで取得したフルポラリメトリデータは記憶装置13に記憶され、このフルポラリメトリデータを用いて偏波回転処理部14によって偏波回転処理が行われ、送信波の偏波面の角度A、受信波の偏波面の角度Bのデータ(複素データ)を得る。この偏波回転処理で得られたデータに対しては画像再生処理部15によって画像再生処理が行われ、送信波の偏波面の角度A、受信波の偏波面の角度Bのデータ(画像データ)が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波面が水平及び垂直の2種類のマイクロ波を交互に切替えて送信し、それぞれの反射波の水平成分及び垂直成分を受信することでフルポラリメトリデータを取得するポラリメトリSAR(Synthetic Aperture Radar)に用いる画像処理方法であって、
前記フルポラリメトリデータを得た後にターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度で画像を再生することを特徴とする画像処理方法。
【請求項2】
前記フルポラリメトリデータの複素データを用いて計算することで、角度A(Aは任意の角度)の偏波面であるマイクロ波を送信しかつ角度B(Bは任意の角度)の偏波面である反射波を受信した際の複素データと等価のデータを得る処理と、そのデータを用いて前記画像を再生する処理とを行うことを特徴とする請求項1記載の画像処理方法。
【請求項3】
前記角度A及び前記角度Bを変化させて前記ターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度で画像を再生することを特徴とする請求項2記載の画像処理方法。
【請求項4】
偏波面が水平及び垂直の2種類のマイクロ波を交互に切替えて送信し、それぞれの反射波の水平成分及び垂直成分を受信することでフルポラリメトリデータを取得するポラリメトリSAR(Synthetic Aperture Radar)の画像を処理する画像処理装置であって、
前記フルポラリメトリデータを得た後にターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度で画像を再生する手段を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
前記画像を再生する手段は、前記フルポラリメトリデータの複素データを用いて計算することで、角度A(Aは任意の角度)の偏波面であるマイクロ波を送信しかつ角度B(Bは任意の角度)の偏波面である反射波を受信した際の複素データと等価のデータを得る手段と、そのデータを用いて前記画像を再生する手段とを含むことを特徴とする請求項4記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記角度A及び前記角度Bを変化させて前記ターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度で画像を再生することを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はポラリメトリSARの画像処理方法及び装置に関し、特にポラリメトリSAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダ)によってフルポラリメトリデータを取得した場合、鮮明度を高めた画像を得ることができるポラリメトリSARの画像処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星や航空機等の飛翔体を利用したリモートセンシングの分野では、地表の状態を撮像するためのセンサとして、マイクロ波帯を用いたSARが使用されている。
【0003】
SARを使用した地表状態の判読方法は、SARによって得られた受信波の振幅及び位相のデータ(複素データ)から画像データを再生し、地表の状態を判読するものである。
【0004】
ポラリメトリSARでは、偏波面がH(水平)、V(垂直)の2種類のマイクロ波を交互に切替えて送信し、それぞれの反射波のH成分、V成分を受信することによって、フルポラリメトリデータ[合計4つの偏波(HH,HV,VH,VV)に対応するデータ]を取得することができる(例えば、特許文献1,2参照)。フルポラリメトリデータを使用した従来の判読方法は、これら4種類の複素データから画像をそれぞれ再生し、地表の状態を判読している。
【0005】
【特許文献1】特開平07−270529号公報
【特許文献2】特開平05−087919号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、送信波及び受信波の偏波面の角度と、ターゲットの形状との組合せによっては、SAR画像にターゲットが映り難い場合がある。図4を参照すると、金属格子に垂直偏波と水平偏波を当てた場合、垂直偏波では大きな反射波が得られるが、水平偏波では金属格子を通り抜けてしまい、反射波が得られない。また、図5を参照すると、斜めの線状物体に入射した電界に対しては垂直成分と水平成分の反射波が発生するが、一方の成分の反射波しか受信できない場合、受信波の大きさがターゲットの傾きによって大きく変わってしまうことになる。
【0007】
すなわち、従来の技術では、送信波及び受信波の偏波面の傾きが固定されているため、ターゲットが鮮明に映る送信波及び受信波の偏波面の角度によるSAR画像を必ずしも得ることができないという問題点がある。これは、送信波及び受信波の偏波面の角度がSAR装置の送信側及び受信側のアンテナ装置に依存して固定されるからである。
【0008】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、ターゲットに応じて鮮明な画像を再生することができるポラリメトリSARの画像処理方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるポラリメトリSARの画像処理方法は、偏波面が水平及び垂直の2種類のマイクロ波を交互に切替えて送信し、それぞれの反射波の水平成分及び垂直成分を受信することでフルポラリメトリデータを取得するポラリメトリSAR(Synthetic Aperture Radar)に用いる画像処理方法であって、
前記フルポラリメトリデータを得た後にターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度で画像を再生している。
【0010】
本発明によるポラリメトリSARの画像処理装置は、偏波面が水平及び垂直の2種類のマイクロ波を交互に切替えて送信し、それぞれの反射波の水平成分及び垂直成分を受信することでフルポラリメトリデータを取得するポラリメトリSAR(Synthetic Aperture Radar)の画像を処理する画像処理装置であって、
前記フルポラリメトリデータを得た後にターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度で画像を再生する手段を備えている。
【0011】
すなわち、本発明のポラリメトリSARの画像処理方法は、ポラリメトリSAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダ)によってフルポラリメトリデータを得た後に、ターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度で画像を再生し、鮮明な画像でターゲットを判読する機能を提供する。
【0012】
本発明のポラリメトリSARの画像処理方法では、ポラリメトリSARによって取得されるフルポラリメトリデータの複素データを用いて計算することによって、センサでは4偏波(HH,HV,VH,VV)のみを観測しているにもかかわらず、角度Aの偏波面であるマイクロ波を送信し、かつ角度Bの偏波面である反射波を受信した際の複素データと等価のデータを得て、そのデータを用いて画像の再生処理をする。ここで、偏波面の角度A,Bは任意の角度である。A,Bを変化させることによって、ターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度で画像を再生して、ターゲットを判読する。
【0013】
これによって、本発明のポラリメトリSARの画像処理方法では、送信波及び受信波の偏波面の角度を任意に指定可能であるので、ターゲットを最も鮮明に映す角度を指定することが可能となるため、ターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度で、ターゲットを判読可能となる。図2を参照すると、HV偏波では認識できないターゲットに対して、送信波及び受信波の偏波面の角度を変えることによって、認識できるようになる。
【0014】
本発明のポラリメトリSARの画像処理方法では、送信波及び受信波の偏波面の角度の変化によるターゲットの映り方の変化の仕方がターゲットの形状に依存しており、送信波及び受信波の偏波面の角度の変化によるターゲットの映り方の変化の仕方と、ターゲットの形状との対応が既知であるから、送信波及び受信波の偏波面の角度の変化によるターゲットの映り方の変化によって、ターゲットの形状を推測可能となる。図3には送信波及び受信波の偏波面の角度を一致させ、0度から80度まで10度間隔で回転させた場合の画像を示しており、この時、左下のターゲットの映り方が変化していることから、このターゲットは線状物体であると推測される。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、ターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度で、ターゲットを判読できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例によるポラリメトリSAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダ)及び画像処理装置の構成を示すブロック図である。図1において、本発明の一実施例によるポラリメトリSARはフルポラリメトリデータ(複素データ)を取得する装置であり、送信機1と、送信波切替スイッチ2と、サーキュレータ3,4と、アンテナ5,6と、受信機7,8と、データ処理部9,10と、分離処理部11,12とから構成されている。また、本発明の一実施例による画像処理装置は、記憶装置13と、偏波回転処理部14と、画像再生処理部15とから構成されている。
【0017】
ポラリメトリSARにおいては、1台の送信機1からの2つの送信波を送信波切替スイッチ2によってパルス繰り返し周波数毎に切替えて、2台のアンテナ5,6から交互に送信する(H偏波送信、V偏波送信)。
【0018】
また、ポラリメトリSARにおいては、その送信波を2つずつのアンテナ5,6及び受信機7,8で受信し、2つのデータ処理部9,10でSARデータを記録し、2つの分離処理部11,12でそれぞれHHデータとVHデータとに分離するとともに、HVデータとVVデータとに分離する。送信波及び受信波はサーキュレータ3,4によって振り分けられる。
【0019】
ポラリメトリSARが上記の処理によって取得したフルポラリメトリデータは記憶装置13に記憶され、このフルポラリメトリデータを用いて偏波回転処理部14によって偏波回転処理を行う。
【0020】
この偏波回転処理では、
送信波の偏波面の角度A、受信波の偏波面の角度Bの複素データ
=SHHcosAcosB+SVVsinAsinB
−SVHcosAsinB−SHVsinAcosB
という式によって、送信波の偏波面の角度A、受信波の偏波面の角度Bのデータ(複素データ)を得る。ここで、SHH,SVV,SVH,SHVはそれぞれHH,VV,HV,VHに対応する受信データ(複素数)である。
【0021】
上記の偏波回転処理で得られたデータに対しては画像再生処理部15によって画像再生処理が行われ、送信波の偏波面の角度A、受信波の偏波面の角度Bのデータ(画像データ)が得られる。
【0022】
すなわち、本実施例によるポラリメトリSARの画像処理方法では、ポラリメトリSARによってフルポラリメトリデータを得た後に、ターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度で画像を再生し、鮮明な画像でターゲットを判読するようにしている。
【0023】
本実施例では、ポラリメトリSARによって取得されるフルポラリメトリデータの複素データを用いて計算することによって、センサでは4偏波(HH,HV,VH,VV)のみを観測しているにもかかわらず、角度Aの偏波面であるマイクロ波を送信し、かつ角度Bの偏波面である反射波を受信した際の複素データと等価のデータを得る。
【0024】
本実施例では、そのデータを用いて画像の再生処理を行う。ここで、偏波面の角度A,Bは任意の角度である。本実施例では、偏波面の角度A,Bを変化させることによって、ターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度で画像を再生し、ターゲットを判読する。
【0025】
このように、本実施例では、送信波及び受信波の偏波面の角度を任意に指定することができるので、ターゲットを最も鮮明に映す角度を指定することが可能となり、ターゲットを最も鮮明に映す送信波及び受信波の偏波面の角度でターゲットを判読することができる。
【0026】
図2を参照すると、HV偏波ではターゲットを認識できないのに対して、送信波及び受信波の偏波面の角度を変えることによって、ターゲット(建物状の物体)を認識することができるようになる。
【0027】
また、本実施例では、送信波及び受信波の偏波面の角度の変化によるターゲットの映り方の変化の仕方が、ターゲットの形状に依存しており、送信波及び受信波の偏波面の角度の変化によるターゲットの映り方の変化の仕方と、ターゲットの形状との対応が既知であるので、送信波及び受信波の偏波面の角度の変化によるターゲットの映り方の変化によって、ターゲットの形状を推測することができる。
【0028】
図3には送信波及び受信波の偏波面の角度を一致させ、0度から80度まで(0deg〜80deg)、10度間隔で回転させた画像を示している。この時、左下のターゲットの映り方が変化していることから、このターゲットは線状物体であると推測される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例によるポラリメトリSAR及び画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例によるターゲットを最も鮮明に映す偏波面の角度を指定した効果を示す図である。
【図3】本発明の一実施例による偏波面の回転に伴いターゲットの映り方が変化することを示す図である。
【図4】送信波の偏波面の傾きによる反射波の違いを説明するための図である。
【図5】線状ターゲットの傾きによって、反射波の成分が複数存在することを説明するための図である。
【符号の説明】
【0030】
1 送信機
2 送信波切替スイッチ
3,4 サーキュレータ
5,6 アンテナ
7,8 受信機
9,10 データ処理部
11,12 分離処理部
13 記憶装置
14 偏波回転処理部
15 画像再生処理部
【出願人】 【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【出願日】 平成18年7月5日(2006.7.5)
【代理人】 【識別番号】100088812
【弁理士】
【氏名又は名称】▲柳▼川 信


【公開番号】 特開2008−14735(P2008−14735A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−185050(P2006−185050)