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レーダ装置 - 特開2008−14722 | j-tokkyo
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【発明の名称】 レーダ装置
【発明者】 【氏名】中村 三津男

【要約】 【課題】反射物のピーク波形を適切に抽出することができるレーダ装置を提供する。

【構成】ステートマシン部89では、積算処理部88から出力される積算信号の一定時間毎の信号成分を示す各ポイントについて、積算信号の波形の形状においてどの状態にあるかを判定し、その判定したポイントのうち、特定の状態遷移をたどる複数のポイントからなるポイント系列を、反射物からの反射波を受信したことを示すピーク波形を形成するグループであると判定する。距離算出部94では、このピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の積算信号を抽出して、反射物までの距離を算出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の角度範囲に渡って複数の送信波を照射し、各送信波に対する反射波を受信した際に、その反射波の強度に応じた受信信号を出力するレーダ手段と、
前記受信信号の一定時間毎の信号成分を示す各ポイントが、当該受信信号の波形の形状においてどの状態にあるかを判定する状態判定手段と、
前記状態判定手段の判定したポイントのうち、特定の状態遷移をたどる複数のポイントからなるポイント系列を、反射物からの反射波を受信したことを示すピーク波形を形成するグループであると判定するグループ判定手段と、
前記レーダ手段の出力する受信信号から、前記グループ判定手段の判定したピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の受信信号を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段の抽出したポイント系列の受信信号に基づいて反射物を検出する検出手段と、を備えることを特徴とするレーダ装置。
【請求項2】
前記状態判定手段は、判定対象の1個のポイントと、その1個のポイントに対して時間的に前後する少なくとも2個のポイントとの信号成分の差分値の符号及びその差分値の大きさから、前記判定対象の1個のポイントが、ピーク探索中、立上り開始、立上り中、立下り中、及び立上りチェックのうち、どの状態にあるかを判定することを特徴とする請求項1記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記ピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の受信信号を記録するとともに、前記グループに属さないポイントの信号成分の大きさをゼロに変更する処理を実行する処理手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記ピーク波形を形成するグループに属するポイント系列のうち、前記状態判定手段が立上り開始状態にあると判定したポイントの信号成分をオフセット分として記録するオフセット記録手段と、
前記ピーク波形を形成するグループに属する各ポイントの信号成分から、前記オフセット分を除去するオフセット除去手段と、を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記ピーク波形を形成するグループが複数存在する場合、その各々のグループに属する全てのポイントに対して、各々のグループを区別するためのグループ情報を付与し、前記各々のグループに属するポイント系列の受信信号と前記グループ情報とを関連付けて記録するグループ情報記録手段を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記抽出手段は、
抽出対象のグループに付与されたグループ情報を指定するグループ指定手段を備え、
前記グループ指定手段の指定したグループ情報と一致するグループ情報が付与されたポイント系列の受信信号を抽出することを特徴とする請求項5記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記レーダ手段から隣接して照射される所定個数の送信波に基づいて出力される所定個数の受信信号を積算して、積算信号を出力する積算手段を備え、
前記状態判定手段は、前記積算信号の一定時間毎の信号成分を示す各ポイントが、当該積算信号の波形の形状においてどの状態にあるかを判定し、
前記抽出手段は、前記積算手段の出力する積算信号から、前記グループ判定手段の判定したピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の積算信号を抽出し、
前記検出手段は、前記抽出手段の抽出したポイント系列の積算信号に基づいて反射物を検出することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記レーダ手段から一定角度に照射される送信波に基づいて出力される、一定時間内の所定個数の受信信号を積算して、積算信号を出力する積算手段を備え、
前記状態判定手段は、前記積算信号の一定時間毎の信号成分を示す各ポイントが、当該積算信号の波形の形状においてどの状態にあるかを判定し、
前記抽出手段は、前記積算手段の出力する積算信号から、前記グループ判定手段の判定したピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の積算信号を抽出し、
前記検出手段は、前記抽出手段の抽出したポイント系列の積算信号に基づいて反射物を検出することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の角度範囲内に渡り複数の送信波を照射し、各送信波に対する反射波を受信した際に、その反射波の受信信号波形に基づいて、反射物を検出するレーダ装置に関する。本発明によるレーダ装置は、例えば、車両に搭載され、反射物として先行車両や障害物を検出するために好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
従来より、細かい角度分解能を持つレーダ装置において、受信信号を一定の積算範囲に渡って積算(加算)する処理を各受信信号ごとに実施することにより、SN比を向上させ、かつ細かい角度分解能を保ちつつ、検出距離を伸ばすことを可能にしたレーダ装置が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0003】
これらの特許文献に記載されたレーダ装置によれば、レーザビームをスキャンし、隣り合う角度の受信信号を一定角度の範囲にわたって積算する積算処理により検出距離を伸ばしている。ここで、積算処理は受信信号をサンプリング周波数に対応する離散的なポイントでAD変換した結果を、加算することにより実現される。
【0004】
この積算処理において積算の対象となる受信信号は、対象物体からの反射信号(反射ピーク)にノイズ成分が重畳されたものである。このノイズ成分は、基本的にはランダムに発生するが、なかにはレーダ装置のCPUのクロックパルスやレーザ光の発光による電磁波ノイズの影響によって規則性を有しているノイズ成分も含まれている。
【0005】
このような規則性を有するノイズ成分は、平均化処理(=積算処理)を繰り返すほど強調され、一方、ランダムなノイズ成分は消えていく。そしてこの規則性のあるノイズ成分は、必ず積算信号に含まれている。この規則性あるノイズ成分を、以後、適宜、バックグラウンドノイズと呼ぶことにする。
【0006】
バックグラウンドノイズは、レーザ光照射範囲の中に反射物が何も存在しない状態での受信信号を積算することにより得ることができる。反射物が何も存在しない状態で積算処理を行うことにより、規則性あるノイズが強調されたノイズ成分が求まり、この積算処理によって得られたバックグラウンドノイズを反射物が存在する状態での受信信号を積算処理した結果から除去(差分処理)することにより、規則性のあるノイズ成分を積算信号から確実に除去して反射信号(反射物のピーク波形)を取り出すことが可能になる。この規則性を有するバックグラウンドノイズの波形は、レーダ装置の回路構成固有であり、回路構成が異なれば変わるものである。
【0007】
特許文献2の図12には、反射物が存在する状態での受信信号を積算した結果(積算信号)と、反射物が存在しない状態での受信信号を積算した結果(ノイズ基準値、すなわち、ここでいうバックグラウンドノイズ)との差分を取ることで得られるピーク波形が示されている。
【0008】
この図12に示す積算信号とノイズ基準値のグラフ上の点は、AD変換がサンプリングしたポイントと一致するものであり、このAD変換結果を使って差分処理が実行される。同図に示す積算信号からノイズ基準値を差し引くことにより、丸で囲った領域に示す反射物のピーク波形(反射信号)が得られる。
【0009】
特許文献2のレーダ装置では、上記差分処理を行って反射物のピーク波形を抽出した後、特許文献2の図16に示すように、発光開始からピーク波形のピーク値の発生時間までの時間を計測する。この計測した時間に光速を乗じ、その結果を2で除したものが、レーダ装置が計測する反射物までの距離となる。
【0010】
このピーク値の発生時間までの時間を計測する際、特許文献2のレーダ装置では、立上り時間T1及び立下り時間T2の平均時間からピーク波形のピーク中心を推定する。
【特許文献1】特開2004−177350号公報
【特許文献2】特開2005−257405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献のレーダ装置のように、積算信号からバックグラウンドノイズを差し引いてピーク波形を抽出する方法を採用した場合、以下の問題が生じる。
[問題1]
図23(a)は、積算信号(以下、受信信号積算結果)に含まれる規則性あるノイズ成分とバックグラウンドノイズとのレベルが一致している場合を示している。この図23(a)の場合には、上記差分処理により、ピーク波形が適切に抽出できる。一方、図23(b)は、受信信号積算結果に含まれる規則性あるノイズ成分とバックグラウンドノイズとのレベルにずれが生じている場合を示しているが、この図23(b)の場合には、差分処理によりピーク波形を適切に抽出することができない。
【0012】
バックグラウンドノイズは、反射物が何も存在しない状態での受信信号の積算結果である。従って、通常、レーダ装置を使用する前に反射物が何も存在しない状態における受信信号の積算結果をとって記録したものをバックグラウンドノイズとして使用している。バックグラウンドノイズは、固定値としてROMに記録しておくことも可能であるし、レーダ計測を開始する前に計測して、その結果をRAMに記録して使用することも可能である。
【0013】
図23(b)は、このバックグラウンドノイズを計測した状態に対して、熱等によりレーダ装置内の回路の動作条件が変動し、受信信号積算結果のレベルにずれが生じたものである。このレベルのずれを避けるには、例えば、通常レーダ計測を行っているときにも常時バックグラウンドノイズを計測し直して、随時更新すればよい。しかし、バックグラウンドノイズは、反射物が何も存在しない状態での受信信号積算結果であるゆえ、車両に取り付けて使用する車両用レーダ装置に対してこのような状況は確率的にしか発生せず、常時バックグラウンドノイズを計測することはできない。
【0014】
例えば、渋滞時においては、レーダ装置の前に常に先行車両が存在してバックグラウンノイズを計測する状態にはならない。また、通常走行時にも自車両の前には先行車両が存在したり、道路上に車両以外の反射物が存在したりして、反射物が全く存在しない状況にならないことが多い。
[問題2]
図24は、2個のピークが引っ付いた受信信号積算結果とバックグラウンドノイズを示している。このような受信信号積算結果は、レーザビームが照射される範囲に2つの反射物が照射方向に並んで存在する場合に得られることがある。このような受信信号積算結果からバックグラウンドノイズを差し引いた場合、図25に示すように、2個のピークが引っ付いた、元の形状のままのピーク波形となる。なお、図25は、差分処理において、受信信号積算結果がバックグラウンドノイズより小さくなっている箇所は負の値でなくゼロにしたものである。
【0015】
このような2個のピークが引っ付いたピーク波形からピーク中心位置を推定する場合、特許文献のレーダ装置では、先ず、ノイズカットラインを超えている範囲を1個のピークのかたまりであるピーク範囲と判定する。このノイズカットラインとは、ピーク波形の強度が小さくなった場合、ランダムノイズと本当のピーク波形とを区別するためのラインであり、このラインを超える強度の信号はノイズでない本当の反射信号と判定するための閾値である。
【0016】
このランダムノイズは、受信信号積算結果からバックグラウンドノイズを差し引いた後にも残っている。なぜならば、ランダムノイズはバックグラウンドノイズと関係なく受信信号にはいっているからである。
【0017】
図25に示すような2個のピークがひっついたピーク波形の場合、ノイズカットラインでピーク波形の境界(両端)を検出する上記特許文献のレーダ装置においては、図25に示すピーク範囲にわたる波形全体を一塊の(1個)のピーク波形とみなしてしまう。
【0018】
また、上記特許文献のレーダ装置は、この一塊とみなされたピーク波形の最大強度を検出し、最大強度に係数k(0<k<1)を乗じることで算出される検出閾値をピーク波形上に設定する。ここで、検出閾値とピーク波形とが交わる時間T1と時間T2を算出し、時間T1及び立下り時間T2の平均時間をピーク中心の推定値とする。
【0019】
この場合、2個のピークが引っ付いているため、推定したピーク中心は2個のピークの平均となり、図25に示す位置をピーク中心位置とする。それゆえ、2つの反射物が並んで、このようなピーク波形が得られている場合に、レーザ装置が算出する距離は2つの物体の平均距離となってしまう。従って、例えば、それぞれの反射物が10m離れていても、それぞれの反射物に対して約5mずれた中心の距離が算出されることになる。数十cm程度の分解能持つレーダ装置が約5mのずれを出すことは、精度上不十分であり、この問題の解決が望まれる。
[問題3]
一般的なレーダ装置では、受光素子とAD変換回路との間はコンデンサでACカップリングされ、受信信号の変動量(交流成分)がAD変換回路に入力される構成になっている。これは、受光素子の出力レベルのままAD変換回路に入力すると、AD変換の入力範囲を超える場合があるため、直流成分をカットしてピーク信号がAD変換範囲に収まるようにするためである。
【0020】
このような構成の場合、高い強度の反射信号を受信すると、図26に示すように、ピークが終了した後のレベルがコンデンサの影響で大きく落ち込み、バックグラウンドノイズより小さいレベルになる現象が発生する。そして、この高いピーク強度を持つ第1の反射信号を受信した直後に、別の物体からの第2の反射信号を受信した場合、図26に示すように、バックグラウンドノイズよりピーク頂点のレベルが低くなる場合がある。
【0021】
この場合、上述した差分処理において、バックグラウンドノイズより低いレベルはゼロにするため、図26の第2の反射信号はゼロになってしまう。つまり、第2の反射信号のピーク波形は存在しないことになるため、反射物が存在するにもかかわらず、そのピーク波形が検出できなくなる。
【0022】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、反射物のピーク波形を適切に抽出することができるレーダ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のレーダ装置は、
所定の角度範囲に渡って複数の送信波を照射し、各送信波に対する反射波を受信した際に、その反射波の強度に応じた受信信号を出力するレーダ手段と、
受信信号の一定時間毎の信号成分を示す各ポイントが、当該受信信号の波形の形状においてどの状態にあるかを判定する状態判定手段と、
状態判定手段の判定したポイントのうち、特定の状態遷移をたどる複数のポイントからなるポイント系列を、反射物からの反射波を受信したことを示すピーク波形を形成するグループであると判定するグループ判定手段と、
レーダ手段の出力する受信信号から、グループ判定手段の判定したピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の受信信号を抽出する抽出手段と、
抽出手段の抽出したポイント系列の受信信号に基づいて反射物を検出する検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
このように、本発明は、従来技術のようにバックグラウンドノイズを差し引いてピーク波形を抽出するのではなく、レーダ手段の出力する受信信号の波形の形状を判定して直接的にピーク波形を抽出する。これにより、従来技術における3つの問題([問題1]バックグラウンドノイズのレベルが変動すること、[問題2]、複数個のピークが引っ付いたピーク波形を一塊のピーク波形とみなしてしまうこと、[問題3]高いピーク強度を持つ第1の反射信号を受信した直後に、別の物体からの第2の反射信号を受信した場合、第2の反射信号のピーク波形が検出できなくなること)は発生しないため、反射物のピーク波形を適切に抽出することができるようになる。
【0025】
ところで、図9に示すような一般的な形状のピーク波形の場合、そのピーク波形を形成する一定時間毎の信号成分を示す各ポイント(受信信号を一定のサンプリング周波数でAD変換したときのサンプリングポイント)は、”立上り開始ST2”→”立上り中ST3”→”立下り中ST4”→”ピーク探索中ST1”というように、特定の状態遷移をたどることがわかる。
【0026】
請求項2に記載のレーダ装置では、ピーク波形を形成する時間的に連続した複数のポイントは特定の状態遷移をたどる点に着目し、状態判定手段は、判定対象の1個のポイントと、その1個のポイントに対して時間的に前後する少なくとも2個のポイントとの信号成分の差分値の符号及びその差分値の大きさから、判定対象の1個のポイントが、ピーク探索中、立上り開始、立上り中、立下り中、及び立上りチェックのうち、どの状態にあるかを判定する。
【0027】
これにより、グループ判定手段は、状態判定手段の判定したポイントのうち、時間的に連続する複数のポイントが、例えば、”立上り開始ST2”→”立上り中ST3”→”立下り中ST4”→”ピーク探索中ST1”というような特定の状態遷移をたどる場合に、その時間的に連続する複数のポイントからなるポイント系列をピーク波形を形成するグループであると判定することができるのである。
【0028】
ここで、図11に示す状態遷移図において、以下に示す5つの特定の状態遷移をたどる場合、その状態遷移をたどる複数のポイントからなるポイント系列は、ピーク波形を形成するグループであると判定することができる。なお、以下の(ア)〜(オ)のそれぞれの状態遷移は、遷移過程の全ての状態を示すものではなく、”最初の状態”→”最後の状態”→”最後の次の状態”の3つの状態のみ記述したものであり、途中の状態の記述は省略している。
(ア)”立上り開始”→”立下り中_1”→”ピーク探索”
(イ)”立上り開始”→”立下り中_4”→”ピーク探索”
(ウ)”立上り開始”→”立上りチェック”→”ピーク探索”
(エ)”立上り開始”→”立上りチェック”→”立上り開始”
(オ)”立上り開始”→”立上り中_3”→”立上り開始”
請求項3に記載のレーダ装置は、ピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の受信信号を記録するとともに、グループに属さないポイントの信号成分の大きさをゼロに変更する処理を実行する処理手段を備えることを特徴とする。これにより、抽出手段は、レーダ手段の出力する受信信号から、ピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の受信信号のみを抽出することができる。
【0029】
請求項4に記載のレーダ装置は、
ピーク波形を形成するグループに属するポイント系列のうち、状態判定手段が立上り開始状態にあると判定したポイントの信号成分をオフセット分として記録するオフセット記録手段と、
ピーク波形を形成するグループに属する各ポイントの信号成分から、オフセット分を除去するオフセット除去手段と、を備えることを特徴とする。
【0030】
このオフセット分は、従来技術におけるバックグラウンドノイズに近い大きさを示すため、オフセット除去手段によって、ピーク波形を形成するグループに属する各ポイントの信号成分からオフセット分を除去することで、従来技術のようにバックグラウンドノイズを計測することなく、ピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の受信信号に重畳されるノイズ成分を除去することができる。
【0031】
請求項5に記載のレーダ装置は、ピーク波形を形成するグループが複数存在する場合、その各々のグループに属する全てのポイントに対して、各々のグループを区別するためのグループ情報を付与し、各々のグループに属するポイント系列の受信信号とグループ情報とを関連付けて記録するグループ情報記録手段を備えることを特徴とする。
【0032】
ピーク波形を形成するグループが複数存在する場合(特に2個のピークが引っ付いている場合)、その各々のグループに属するポイント系列の受信信号からは、ピーク波形の境界が不明確となる。例えば、図20に示すように2個のピークが合成された波形の場合、ピーク分離点(=ピークの境界)を明確にするための情報が必要となる。
【0033】
そこで、図20に示すように、各々のグループに属する全てのポイントに対して、各々のグループを区別するためのグループ情報(図20ではグループ番号)を、1つのグループ内で同じグループ番号となるように付与する。これによって、複数個のピークが引っ付いている場合であっても、各々のピーク波形の境界が明確になり、ピーク波形の区別が可能になる。
【0034】
なお、図20に示すように、各々のグループと、その各々のグループに属する各ポイントに付与されたグループ番号とは一対一で対応している。また、図20において、グループ番号が”0”(ゼロ)のポイントは、ピーク波形を形成するグループとして抽出されなかったポイントであり、これらのポイントの信号成分は、常にゼロになっている。
【0035】
また、グループ番号が”0”(ゼロ)以外のポイントは、ピーク波形を形成するグループとして抽出されたポイントである。例えば、グループ番号が”1”になっている4個のポイントは、同じピーク波形を形成するグループである。そのグループ番号”1”の後には、グループ番号”0”を挟むことなく、グループ番号が”2”になっているポイントが3個連続している。これは、グループ番号”1”とグループ番号”2”の2個のピークは、元々引っ付いていたものであり、ピーク分離点を境界にして、2個のピークに分離されたものであることを示している。
【0036】
請求項6に記載のレーダ装置のように、抽出手段は、
抽出対象のグループに付与されたグループ情報を指定するグループ指定手段を備え、
グループ指定手段の指定したグループ情報と一致するグループ情報が付与されたポイント系列の受信信号を抽出するとよい。
【0037】
これにより、例えばグループ番号”1”のグループに属するポイント系列の受信信号だけを抽出した場合には、グループ指定手段でグループ番号”1”の付与されたポイント系列の受信信号のみ抽出することが可能となる。また、残り全てのグループ番号に対して、同じように単独でピークを抽出することで、それぞれピークからそれぞれの距離を算出することができるようになる。
【0038】
請求項7に記載のレーダ装置は、
レーダ手段から隣接して照射される所定個数の送信波に基づいて出力される所定個数の受信信号を積算して、積算信号を出力する積算手段を備え、
状態判定手段は、積算信号の一定時間毎の信号成分を示す各ポイントが、当該積算信号の波形の形状においてどの状態にあるかを判定し、
抽出手段は、積算手段の出力する積算信号から、グループ判定手段の判定したピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の積算信号を抽出し、
検出手段は、抽出手段の抽出したポイント系列の積算信号に基づいて反射物を検出することを特徴とする。
【0039】
このように、請求項7に記載のレーダ装置は、隣接して照射される所定個数の送信波に基づいて出力される所定個数の受信信号を積算して、積算信号を出力する。従って、反射波の強度に対応する個々の信号成分が小さくとも、所定個数の受信信号を積算することによって、反射物からの反射波に対応する信号成分が増幅される。一方、種々の要因で、受信信号に重畳されるノイズ成分は、ランダムであるため、所定個数の受信信号を積算しても、そのノイズ成分の増幅の程度は小さい。このため、積算信号においては、反射物からの反射波に対する信号成分のS/N比が向上する。従って、この積算信号に基づいて反射物を検出することにより、反射物の検知可能距離を伸長させることができる。さらに、その反射物の反射強度が低下している場合であっても、検知可能距離の低下を抑制することができる。
【0040】
なお、請求項8に記載のレーダ装置のように、レーダ手段から一定角度に照射される送信波に基づいて出力される、一定時間内の所定個数の受信信号を積算して、積算信号を出力する積算手段を備え、
状態判定手段は、積算信号の一定時間毎の信号成分を示す各ポイントが、当該積算信号の波形の形状においてどの状態にあるかを判定し、
抽出手段は、積算手段の出力する積算信号から、グループ判定手段の判定したピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の積算信号を抽出し、
検出手段は、抽出手段の抽出したポイント系列の積算信号に基づいて反射物を検出するようにしてもよい。
【0041】
この積算手段によっても、反射物からの反射波に対応する信号成分が増幅されるようになり、その一方で、種々の要因で、受信信号に重畳されるランダムなノイズ成分の増幅の程度は小さいため、積算信号においては、反射物からの反射波に対する受信信号成分のS/N比が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下に、本発明の実施形態によるレーダ装置について説明する。なお、本実施形態においては、レーダ装置が車両用レーダ装置として用いられる例について説明するが、本発明によるレーダ装置は車両用に限らず、例えば所定のエリアに対する侵入者検出のために用いることも可能である。
【0043】
本実施形態による車両用レーダ装置は、車両制御装置1に適用されており、車両用制御装置1は、車両用レーダ装置の検出結果に基づいて、所定距離以下の領域に障害物が存在する場合に警報を出したり、先行車両との車間距離を所定の車間距離に維持するため、車速を制御する機能を備えるものである。
【0044】
図1は、車両制御装置1のシステムブロック図である。車両制御装置1は認識・車間制御ECU3を中心に構成されている。認識・車間制御ECU3はマイクロコンピュータを主な構成として、入出力インターフェース(I/O)および各種の駆動回路や検出回路を備えている。これらのハード構成は一般的なものであるので詳細な説明は省略する。
【0045】
認識・車間制御ECU3は、車両用レーダ装置としてのレーザレーダセンサ5、車速センサ7、ブレーキスイッチ9、スロットル開度センサ11から各々検出信号を入力しており、警報音発生器13、距離表示器15、センサ異常表示器17、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21および自動変速機制御器23に駆動信号を出力する。
【0046】
また認識・車間制御ECU3には、警報音量を設定する警報音量設定器24、警報判定処理における感度を設定する警報感度設定器25、クルーズコントロールスイッチ26、図示しないステアリングホイールの操作量を検出するステアリングセンサ27、及び自動車に発生したヨーレートを検出するヨーレートセンサ28が接続されている。また認識・車間制御ECU3は、電源スイッチ29を備え、電源スイッチ29がオンされることにより、所定の処理を開始する。
【0047】
レーザレーダセンサ5は、図2に示すように、発光部、受光部及びレーザレーダCPU70などを主要部として構成されている。発光部は、パルス状のレーザ光を、発光レンズ71及びスキャナ72を介して放射する半導体レーザダイオード(以下、単にレーザダイオードと記載)75を備えている。そして、レーザダイオード75は、レーザダイオード駆動回路76を介してレーザレーダCPU70に接続され、レーザレーダCPU70からの駆動信号によりレーザ光を放射(発光)する。また、スキャナ72にはポリゴンミラー73が鉛直軸を中心に回転可能に設けられ、レーザレーダCPU70からの駆動信号がモータ駆動部74に入力されると、このポリゴンミラー73は図示しないモータの駆動力により回転する。なお、このモータの回転位置は、モータ回転位置センサ78によって検出され、レーザレーダCPU70に出力される。
【0048】
本実施形態のポリゴンミラー73は、面倒れ角が異なる6つのミラーを備えているため、車幅方向及び車高方向それぞれの所定角度の範囲で不連続にレーザ光が走査するように、レーザ光を出力することができる。このようにレーザ光を2次元的に走査させるのであるが、その走査パターンを図4を参照して説明する。なお、図4において、出射されたレーザビームのパターン122は、反射物の検知領域121内の右端と左端に出射された場合のみを示しており、途中は省略している。また、出射レーザビームパターン122は、図4では一例として略楕円形のものを示しているが、この形に限られるものではなく長方形等でもよい。さらに、レーザ光を用いるものの他に、ミリ波等の電波や超音波等を用いるものであってもよい。また、スキャン方式にこだわる必要はなく、距離以外に2方位を測定できる方式であればよい。
【0049】
図4に示すように、レーザ光は、その照射方向をZ軸としたとき、これに垂直なXY平面内を順次走査するように照射される。本実施形態では、高さ方向であるY軸を基準方向、車幅方向であるX軸を走査方向とする。レーザ光は、例えば、X軸方向に所定角度ごとずらしながら327点分照射され、このX軸方向の327点分の照射がY軸方向に6走査ライン分繰り返される。従って、第1走査ラインから第6走査ラインまで、各走査ラインごとに、複数のレーザ光が照射されることになる。
【0050】
上述した検知領域121にレーザ光を照射することで、このレーザ光による反射光が受光された場合、レーザレーダCPU70は、レーザ光の照射角度を示すスキャン角度θx,θyと測距された距離Lとを算出して、認識・車間制御ECU3へ出力する。なお、2つのスキャン角度θx,θyは、それぞれ出射されたレーザ光をYZ平面に投影した線とZ軸との角度を縦スキャン角θy、出射されたレーザビームをXZ平面に投影した線とZ軸との角度を横スキャン角θxと定義する。
【0051】
レーザレーダセンサ5の受光部には、図示しない反射物に反射されたレーザ光を集光する集光レンズ81と、集光された反射光の強度に対応する電圧信号(受光信号)を出力する受光素子(フォトダイオード)83とが設けられている。この受光素子83が出力する受光信号は、増幅器85にて増幅された後に、所定個数の受光信号を積算してその積算信号に基づいて反射物を検出する検出回路86に入力される。以下、検出回路86の構成及び作動について説明する。
【0052】
図3に示すように、検出回路86は、アナログ/デジタル(AD)変換部87を備えている。増幅器85から出力された受光信号は、このAD変換部87に入力され、一定のサンプリング周波数でデジタル信号に変換される。そして、デジタル信号に変換された受光信号は、積算処理部88に入力され、一時的に保持される。なお、デジタル変換される受光信号は、レーザ光発光時間から所定時間(例えば2000ns)経過するまでの間に、増幅回路85から出力された信号である。そして、AD変換部87においては、図5に示すように、この受光信号を一定時間間隔(例えば25nsec)でN個の区間に分割し、それぞれの区間の受光信号の平均値をデジタル値に変換する。
【0053】
積算処理部88は、一時的に保持した受光信号の中から、X軸方向において隣接して照射された所定個数のレーザ光に対応する所定個数の受光信号を、積算すべき受光信号範囲として指定する。積算処理部88では、指定範囲に属する受光信号の積算信号(積算受光信号)を算出する。この積算処理部88が指定する積算すべき受光信号の範囲及び積算信号の算出について、図6及び図7を用いて説明する。
【0054】
図6は、検知領域121において所定角度範囲ずつずらして照射されるレーザ光にビーズ番号(受信信号に対してはスキャン番号)を付与しつつ、積算受光信号範囲を4とした場合の積算対象となる受信信号の範囲を模式的に示した図である。なお、図6においては、説明の簡略化のため、1走査ライン分のレーザ光のみを示している。
【0055】
本実施形態による車両用レーダ装置によって先行車両を検知しようとした場合、その先行車両の後面にはレーザ光に対して反射強度の高いリフレクタが設けられており、また車体もリフレクタほどではないが比較的高い反射強度を備えている。従って、通常は、先行車両によって反射される反射光の強度は十分に高くなり、単一の反射光の受光信号から、先行車両を検出することが可能である。しかしながら、例えば、先行車両の後面に泥や雪等が付着している場合、その先行車両によって反射される反射光の強度が低下する。この場合、先行車両によって反射された反射光に対応する個々の受光信号からでは、先行車両を検出することができない可能性が生じる。
【0056】
そのため、複数の受光信号を積算して、先行車両の反射波による受光信号を増幅し、強度の弱い反射波も検出可能としている。積算処理部88では、先ず、その積算すべき受光信号を指定する。つまり、図6に示すように、同一の走査ライン(同一面)において隣接する所定個数のレーザ光に対応する所定個数の受光信号を積算すべき受光信号として指定する。具体的には、まずライン1として、スキャン番号1〜4までの受光信号を指定し、次に、受光信号を1個分だけずらして、スキャン番号2〜5までの受信信号をライン2として指定する。以下、同様にして、隣接する4本のレーザ光の受光信号をライン324まで順番に指定していく。
【0057】
このようにして、順次、積算受光信号範囲が指定されるのと同期して、指定された範囲に属する受光信号を積算した積算信号を出力する。この積算とは、図7に示すように、4個の受光信号の同一時間におけるAD変換されたデジタル値を全て加算(積算)する処理をいう。このように、所定個数の受光信号を積算することにより、受光信号におけるS/N比を向上することができる。その理由は以下のとおりである。
【0058】
例えば、図8に示すように、4個の受光信号の全てが同じ反射物からの反射波に応じた受光信号成分Sを含んでいる場合、その受光信号成分Sは、レーザ光の発光時刻から同じ時間だけ経過した時刻に現れる。従って、積算信号における受光信号成分S0は、各受光信号における受光信号成分Sが4倍に増幅されたものとなる。一方、各受光信号に含まれるノイズ成分Nは、基本的に外来光等によってランダムに発生するため、4個の受光信号を積算した場合であっても、そのノイズ成分N0の増幅の程度は受光信号成分Sに比較して低い。
【0059】
従って、積算処理部88によって積算信号を算出することにより、受光信号成分S0とノイズ成分N0との比(S/N比)を向上することができる。この結果、個々の受光信号に含まれる受光信号成分Sが小さくて、ノイズ成分Nと区別することが困難な場合でも、上述した積算信号を用いることによって、増幅された受光信号成分S0に基づき反射物を検出することが可能になる。
【0060】
また、上述したように、積算処理部88は、受光信号を1個分ずつずらしながら、積算する受光信号の範囲を移動させる。このようにすれば、4個の受光信号を積算しながら、その積算信号による検知分解能の低下を最小限に抑制することができる。すなわち、単に、受光素子83から出力された受光信号を4個ごとに分けて、それぞれ積算信号を求めた場合、反射光の検出感度を向上することはできるが、一方で、積算信号による検知分解能が、大幅に低下してしまう。それに対して、積算する受光信号の範囲を、受光信号1個分ずつずらすようにすれば、検知分解能の低下を抑制できるのである。
【0061】
なお、図6及び図7を用いた説明では、積算受光信号範囲を4としたが、これは説明を簡単にするために便宜的に定めたものであり、積算受光信号範囲、すなわち積算すべき受光信号の個数は、検知すべき対象物の大きさ、隣接するレーザ光間の角度、さらには最大検知距離に応じて任意の値に設定され得る。
【0062】
積算処理部88は、積算受光信号範囲をずらしつつ、各積算受光信号範囲に属する受光信号を積算した積算信号、すなわちライン1〜ライン(327−積算受光信号範囲+1)までの各ラインの積算信号を順番に出力する。
【0063】
ステートマシン部89は、図9に示すように、積算信号の一定時間毎の信号成分を示す各ポイント(受光信号を一定のサンプリング周波数でAD変換したときのサンプリングポイントのことであり、積算処理部88による積算結果が存在するポイントでもある。以下、ポイントと記す。)について、積算信号の波形の形状においてどの状態にあるか、すなわち、ピーク探索中ST1、立上り開始ST2、立上り中ST3、立下り中ST4、及び立上りチェックST5のうち、どの状態にあるかを判定する。
【0064】
図10(a)、(b)に示すように、判定対象の1個のポイント(以下、検証ポイント)に対して、時間的に前後する2個のポイント、すなわち、検証ポイントの1個前のポイントと、検証ポイントの1個後のポイントを使用して判定する。図10(a)、(b)中の”a”,”b”,”c”は、それぞれのポイントにおける受光信号の積算結果の値(積算信号成分の大きさ)を表しており、検証ポイントと、その1個前及び1個後のポイントとの差分値(”b−a”及び”c−b”)を求め、その差分値の符号及び差分値の大きさ(傾き)との関係から、図9に示す各状態のいずれかにあるかを判定する。
【0065】
ステートマシン部89では、図11に示す状態遷移図に沿って、検証ポイントの状態を判定する。検証ポイントの状態判定は、図11の“開始”から始まり、“開始”の状態に入ったら、無条件で“ピーク探索“状態に移行する。この“ピーク探索“状態に移行した場合に、検証ポイントとその前後のポイントとの符号と傾きの関係から、図12に示す判定1又は図17に示す判定6の条件が成立するかどうかを判定する。この判定1及び判定6は、ピーク波形の立上りの判定を行う条件である。この判定1又は判定6の条件が成立した検証ポイントを“立上り開始“状態のポイントと判定する(これを”場合1”とする。)。
【0066】
判定1又は判定6の条件が成立しない場合は、その検証ポイントは”ピーク探索“状態であると判定し、次の検証ポイントに移行して、同じ判定を繰り返す。この“立上り開始”状態は、文字通り、反射物からの反射波を受信したことを示すピーク波形の立上りが開始する時点のポイントを表している。なお、図12に示す判定1は、積算信号成分の大きいピークを示す場合の判定であり、以下に示す2つの条件のうち何れかが成立する場合に”立上り開始”と判定する。
(判定1)
条件1:(c>b) AND (c−b)>閾値 AND (a>b)
条件2:(c>b) AND (c−b)>閾値 AND (c−b)>(|b−a|×2)
また、図17に示す判定6は、積算信号成分が小さいピークを示す場合の判定であり、判定1と同様に、以下に示す2つの条件のうち何れかが成立する場合に”立上り開始”と判定する。
(判定6)
条件1:(c>b) AND (c−b)>閾値/4 AND (c−b)>(|b−a|×3)
条件2:(c>b) AND (b>a) AND (c−b)+(b−a)>(閾値×0.625)
ここで、図11に示す状態遷移図において、“立上り開始“状態と判定されてから、以下に示す5つの特定の状態遷移の経路をたどる場合、その状態遷移をたどる複数のポイントからなるポイント系列は、反射物からの反射波を受信したことを示すピーク波形を形成するグループであると判定する。なお、以下の(ア)〜(オ)のそれぞれの状態遷移は、遷移過程の全ての状態を示すものではなく、”最初の状態”→”最後の状態”→”最後の次の状態”の3つの状態のみ記述したものであり、途中の状態の遷移過程の記述は省略している。また、2個のピークが引っ付いた波形の例のように、ピーク波形を形成するグループは1個とは限らない。
(ア)”立上り開始”→”立下り中_1”→”ピーク探索”
(イ)”立上り開始”→”立下り中_4”→”ピーク探索”
(ウ)”立上り開始”→”立上りチェック”→”ピーク探索”
(エ)”立上り開始”→”立上りチェック”→”立上り開始”
(オ)”立上り開始”→”立上り中_3”→”立上り開始”
図9に示すような一般的な形状のピーク波形の場合、そのピーク波形を形成する各ポイントは、”立上り開始ST2”→”立上り中ST3”→”立下り中ST4”→”ピーク探索中ST1”というように、特定の状態遷移をたどることがわかる。
【0067】
そこで、ピーク波形を形成する時間的に連続した複数のポイントは特定の状態遷移をたどる点に着目し、ステートマシン部89では、検証ポイントと、検証ポイントに対して時間的に前後する少なくとも2個のポイントとの信号成分の差分値の符号及びその差分値の大きさから、検証ポイントが、”ピーク探索中”、”立上り開始”、”立上り中”、”立下り中”、及び”立上りチェック”のうち、どの状態にあるかを判定する。
【0068】
これにより、時間的に連続する複数のポイントが、例えば、”立上り開始ST2”→”立上り中ST3”→”立下り中ST4”→”ピーク探索中ST1”というような特定の状態遷移をたどる場合に、その複数のポイントからなるポイント系列をピーク波形を形成するグループであると判定することができる。
【0069】
ステートマシン部89において、全てのポイントに対して状態遷移の判定が終了すると、受信信号積算変換部90では、上記(ア)〜(オ)の5つのうちの何れかの状態遷移をたどる、ピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の積算信号を記録するとともに、ピーク波形を形成するグループに属さないポイントについては、その信号成分の大きさを”0”(ゼロ)に変更(変換)する処理を実行する。これにより、積算処理部88から出力される積算信号から、ピーク波形を形成するグループに属するポイント系列の積算信号のみを抽出することができる。
【0070】
続いて、ステートマシン部89において”立上り開始”状態であると判定された以降(場合1以降)のポイントの状態判定について説明する。図11において、”立上り開始”状態に移行したポイントの次のポイント(1個後のポイント)に対して、図13に示す判定2を実行する。図13に示す判定2は、積算信号成分の大きいピークを示す場合の判定であり、以下に示す条件が成立する場合に、その検証ポイントを”立上り中”状態のポイントと判定する(これを”場合2”とする。)。
(判定2)
条件:(c>b) AND (a<b)
この判定2の条件が成立しない場合、つまり、”立上り中”の状態でない場合には、その検証ポイントは”立下り中_1”の状態に移行する。この”立下り中_1”状態へ移行した場合には、同じ検証ポイントに対して、図15に示す判定4を実行する。図15に示す判定4は、積算信号成分の大きいピークを示す場合の判定であり、以下に示す2つの条件のうち何れかが成立する場合に、その検証ポイントを”ピーク探索中”状態のポイントと判定し、”ピーク探索中”状態に戻す。つまり、これは、1個のポイントだけがピーク頂点になった状態(三角形状態)の場合である(これを”場合3”とする。)。
(判定4)
条件1:(c>b) AND (b<a) AND (a−b)>閾値 AND (a−b)>(b−c)×4
条件2:|b−c|<閾値 AND b<a AND (a−b)>閾値 AND (a−b)>(b−c)×4
以上説明した状態遷移が(ア)”立上り開始”→”立下り中_1”→”ピーク探索”の状態遷移である。
【0071】
次に、“立下り中_1”状態へ移行した後に判定4の条件が成立しない場合、その検証ポイントは“立下り中_2”状態へ移行する。この検証ポイントに対しては、さらに図18に示す判定7を実施して、立下りが続くか、或いは立ち上がってくるかどうかを判定する(これを”場合4”とする。)。
【0072】
図18に示す判定7は、積算信号成分の小さいピークを示す場合の判定であり、以下に示す条件が成立する場合に、”立下り状態”から緩やかな”立上り状態”に移行していると判定し、その次のポイントを”立上りチェック”状態のポイントと判定する。
(判定7)
条件:|b−c|<閾値 AND (b<a) AND not{(a−b)>閾値 AND (a−b)>(b−c)×4} AND c>b AND (c−b)<閾値
この“立上りチェック”状態と判定された検証ポイントの次のポイントに対して、図17に示した判定6を実行する。そして、判定6の条件が成立する場合は、“立上り開始“状態に移行するが、成立しない場合は”ピーク探索“状態に戻る。以上説明した状態遷移が(ウ)”立上り開始”→”立上りチェック”→”ピーク探索”の状態遷移である。
【0073】
ここで、“立上りチェック”状態から “立上り開始”状態への状態遷移は、図25に示すように2個のピークが合成されている波形において、前のピークが終わって谷間ができている状態から、次のピークの“立上り開始”状態に遷移したことを示す。つまり、この状態遷移は、2個のピークが引っ付いたピーク波形の分離を判定する遷移であり、(エ)”立上り開始”→”立上りチェック”→”立上り開始”の状態遷移である。
【0074】
次に、上述した”場合2”の“立上り中”状態と判定されたときの説明に戻るが、その次のポイントに対して、図14に示す判定3を実行して、”立上り”状態から”立下り”状態への移行を判定する。図14に示す判定3は、積算信号成分の大きいピークを示す場合の判定であり、以下に示す条件が成立する場合に、その検証ポイントを”立下り中”状態のポイントと判定する。この判定3の条件が成立しない場合は、このポイントも“立上り中”となり、さらにその次のポイントに対しても同様に判定3による立下り判定を繰り返す。
(判定3)
条件:(c<b) AND (a<b)
”場合2”の“立上り中”状態において、判定3の条件が成立する場合、次のポイントは“立下り中_1”状態に移行する。この“立下り中-1”状態に移行したポイントは、”場合3”及び”場合4”での説明と同じ状態遷移になる。
【0075】
次に、”場合4”で判定7が成立しない場合、この検証ポイントはそのまま“立下り中_3”状態に移行する。この移行後、同一の検証ポイントに対して判定1を実施し、判定1の条件が成立した場合は、このポイントの次のポイントを“立上り開始”状態とする。ここにおいても、図25に示すように、複数個のピークが合成されているピークで前のピークが終わって谷間ができている状態から、次のピークの“立上り開始”状態に遷移したことを示す。
【0076】
この場合、(エ)の状態遷移と同様にピークの分離判定を行っているが、(エ)の状態遷移の場合は、1個前にあるピークの立下り状態が緩やかに止まって次のピークが立上る状態になるのに対して、この場合は、1個前のピークが立下がっている途中、突然急に次のピークが立上り始める状態になる点が異なる。以上の状態遷移が(オ)”立上り開始”→”立上り中_3”→”立上り開始”である。
【0077】
“立下り中_3”状態のポイントにおいて、判定1が成立しない場合は、このポイントはそのまま即座に“立下り中_4”状態に移行する。その後、このポイントに対して立下りの終了点の探索である図16に示す判定5を実施する。図16に示す判定5は、積算信号成分の大きいピークを示す場合の判定であり、以下に示す条件が成立する場合に、そのポイントを”ピーク探索中”状態のポイントと判定する。なお、判定5の条件のaは、立上り開始ポイントの積分結果である。
(判定5)
条件:(b<a)
この判定5の条件が成立した場合、このポイントの一つ前のポイントでピークは終了し、このポイントを“ピーク探索“状態に戻して、次の新しいピーク抽出のための状態判定に移る。以上の状態遷移が(イ)”立上り開始”→”立下り中_4”→”ピーク探索”である。この判定5が成立しない場合は、次のポイントは“立下り中_1”に移行し、状態遷移の移行を繰り返す。
【0078】
以上がステートマシン部89による状態判定の処理であるが、図11に示した状態遷移図は、ピーク波形を抽出する際の一例であり、この状態遷移図だけに従うピーク波形の抽出方法に限定されるものではない。また、図12〜図18に示した各判定の条件式も一例であり、この条件式に限定されるものではない。
【0079】
さらに、この図12〜図18に示した各判定の条件式は、判定対象のポイントである検証ポイントとその1個前と1個後のポイントとの関係で判定しているが、1個前、1個後に限らず、もっと広範囲にわたるポイントとの関係を判定の対象にしてもよい。
【0080】
図3に示すオフセット記録部91は、ステートマシン部89にて判定された、上記(ア)〜(オ)の何れかの状態遷移をたどるポイント系列(ピーク波形を形成するグループに属するポイント系列)の”立上り開始”状態にあると判定されたポイントの信号成分をオフセット分として記録する。
【0081】
例えば、図19(a)に示すようなピーク波形を形成するグループ(以下、ピークグループPK)の場合、このピークグループPKの”立上り開始”状態にあるポイントの信号成分(受信信号の積算結果)Hsをオフセット分として記録する。なお、複数のピークグループPKがある場合には、そのピークグループPK毎のオフセット分を記録する。このオフセット分は、従来技術におけるバックグラウンドノイズに近い大きさを示すものである。
【0082】
差分処理記録部93は、受信信号積算変換部90に記録されたピークグループPKに属するポイント系列の積算信号成分からオフセット記録部91に記録されたオフセット分を除去する。すなわち、図19(a)、(b)に示すように、ピークグループPKに属する各ポイントの積算信号成分PKiからオフセット分Hsを減じて、ノイズ除去後のピーク値(ノイズ除去ピーク値i)を求める。なお、図19(b)に示すように、ノイズ除去ピーク値iが負の値(i<0)を示す場合、そのノイズ除去ピーク値iを”0”(ゼロ)にする。
【0083】
このように、ピークグループPKに属する各ポイントの積算信号成分PKiからオフセット分を除去することで、従来技術のようにバックグラウンドノイズを計測することなく、ピークグループPKに属するポイント系列の積算信号成分に重畳されるノイズ成分を除去することができる。
【0084】
グループ番号記録部92は、ステートマシン部89による判定の結果、ピークグループPKが複数存在する場合、その各々のピークグループPKに属する全てのポイントに対して、各々のピークグループPKを区別するためのグループ番号を付与し、各々のピークグループPKに属するポイント系列の積算信号とグループ番号とを関連付けて記録する。
【0085】
これは、ピークグループPKが1個だけ存在する場合、差分処理記録部93によってオフセット分が除去された積算信号から、その信号成分がゼロでないポイントがピークグループPKに属するポイントであることは容易に把握できるが、ピークグループPKが複数存在する場合で、特に2個のピークが引っ付いている場合には、差分処理記録部93によってオフセット分が除去された積算信号は、ピーク波形の境界が不明確となる。
【0086】
例えば、図20に示すように2個のピークが合成された波形形状の場合、ピーク分離点(=ピークの境界)を明確にするための情報が必要となる。そこで、グループ番号記録部92では、図20に示すように、各々のピークグループPKに属する全てのポイントに対して、各々のピークグループPKを区別するためのグループ番号を、1つのピークグループPK内で同じグループ番号となるように付与する。これによって、複数個のピークが引っ付いている場合であっても、各々のピーク波形の境界が明確になり、ピーク波形の区別が可能になる。
【0087】
なお、図20に示すように、各々のピークグループPKと、その各々のピークグループPKに属する各ポイントに付与されたグループ番号とは一対一で対応している。また、図20において、グループ番号が”0”(ゼロ)のポイントは、ピークグループPKとして抽出されなかったポイントであり、これらのポイントの信号成分は、受信信号積算変換部90によって常にゼロになっている。
【0088】
また、グループ番号が”0”(ゼロ)以外のポイントは、ピークグループPKとして抽出されたポイントである。例えば、グループ番号が”1”になっている4個のポイントは、同じピークグループPKに属するポイントである。そのグループ番号”1”の後には、グループ番号”0”を挟むことなく、グループ番号が”2”になっているポイントが3個連続している。これは、グループ番号”1”とグループ番号”2”の2個のピークは、元々引っ付いていたものであり、ピーク分離点を境界にして、2個のピークに分離されたものであることを示している。
【0089】
差分処理記録部93は、受信信号積算変換部90に記録されたピークグループPKに属するポイント系列の積算信号成分からオフセット記録部91に記録されたオフセット分を除去し、そのオフセット除去後の積算信号に対し、ピークグループPK毎のグループ番号を付与して記録する。
【0090】
これにより、図21(a)に示すように、積算処理部88から出力される積算信号から、ピーク波形を抽出することができるようになる。また、図21(b)に示すように、2つのピークが引っ付いた積算信号であっても、ピークグループPK毎に付与されたグループ番号を参照することで、2つのピークから各々のピーク波形を抽出することが可能となる。
【0091】
距離算出部94は、抽出すべきピークグループのグループ番号を指定し、差分処理記録部93に記録されているグループ番号の付与されたオフセット除去後の積算信号から、指定されたグループ番号と一致するオフセット除去後の積算信号を抽出する。そして、発光開始から、その抽出した積算信号のピーク波形の中心推定値までの時間から、反射物までの距離を算出する。この算出した反射物体までの距離はレーザレーダCPU70に出力される。
【0092】
これにより、例えばグループ番号”1”の付与されたオフセット除去後の積算信号だけを抽出したい場合には、グループ番号”1”を指定することで、グループ番号”1”の付与されたオフセット除去後の積算信号のみ抽出することが可能となる。また、残り全てのグループ番号に対して、同じように単独でピークを抽出することで、それぞれピークからそれぞれの距離を算出することができるようになる。
【0093】
レーザレーダCPU70は、距離算出部94から入力された反射物までの距離及び対応するレーザ光のスキャン角度θx,θyを基にして位置データを作成する。具体的には、距離及びスキャン角度θx,θyから、レーザレーダ中心を原点(0,0,0)とし、車幅方向をX軸、車高方向をY軸、車両前方方向をZ軸とするXYZ直交座標系における反射物の位置データを求める。そして、このXYZ直交座標系における位置データを測距データとして認識・車間制御ECU3へ出力する。
【0094】
なお、積算信号に基づいて反射物までの距離を算出する場合、その積算信号に対応するレーザ光のスキャン角度θxは、積算した複数個の受光信号に対応する複数のレーザ光の中心位置のレーザ光のスキャン角度θxとする。
【0095】
認識・車間制御ECU3は、レーザレーダセンサ5からの測距データを基にして物体を認識し、その認識物体から得た先行車の状況に合わせて、ブレーキ駆動器19、スロットル駆動器21および自動変速機制御器23に駆動信号を出力することにより車速を制御する、いわゆる車間制御を実施する。また、認識物体が所定の警報領域に所定時間存在した場合等に警報する警報判定処理も同時に実施する。この場合の物体としては、自車の前方を走行する前車やまたは停止している前車等が該当する。
【0096】
認識・車間制御ECU3の内部構成について、制御ブロックとして簡単に説明する。レーザレーダセンサ5から出力された測距データは物体認識ブロック43に送られる。物体認識ブロック43では、測距データとして得た3次元位置データに基づいて、物体の中心位置(X,Y,Z)、及び横幅W、奥行きD、高さH等の物体の大きさ(W,D,H)を求める。さらに、中心位置(X,Y,Z)の時間的変化に基づいて、自車位置を基準とするその物体の相対速度(Vx,Vy,Vz)を求める。さらに物体認識ブロック43では、車速センサ7の検出値に基づいて車速演算ブロック47から出力される車速(自車速)と上記求められた相対速度(Vx,Vy,Vz)とから物体が停止物体であるか移動物体であるかの識別が行なわれる。この識別結果と物体の中心位置とに基づいて自車両の走行に影響する物体が選択され、その距離が距離表示器15により表示される。
【0097】
また、ステアリングセンサ27からの信号に基づいて操舵角演算ブロック49にて操舵角が求められ、ヨーレートセンサ28からの信号に基づいてヨーレート演算ブロック51にてヨーレートが演算される。そしてカーブ半径(曲率半径)算出ブロック57では、車速演算ブロック47からの車速と操舵角演算ブロック49からの操舵角とヨーレート演算ブロック51からのヨーレートとに基づいて、カーブ半径(曲率半径)Rを算出する。そして物体認識ブロック43では、このカーブ半径Rおよび中心位置座標(X,Z)などに基づいて、物体が車両である確率、及び自車と同一車線を走行している確率等を判定する。この物体認識ブロック43にて求めたデータが異常な範囲の値かどうかがセンサ異常検出ブロック44にて検出され、異常な範囲の値である場合には、センサ異常表示器17にその旨の表示がなされる。
【0098】
一方、先行車判定ブロック53では、物体認識ブロック43から得た各種データに基づいて先行車を選択し、その先行車に対するZ軸方向の距離Zおよび相対速度Vzを求める。そして、車間制御部及び警報判定部ブロック55が、この先行車との距離Z、相対速度Vz、クルーズコントロールスイッチ26の設定状態およびブレーキスイッチ9の踏み込み状態、スロットル開度センサ11からの開度および警報感度設定器25による感度設定値に基づいて、警報判定ならば警報するか否かを判定し、クルーズ判定ならば車速制御の内容を決定する。その結果を、警報が必要ならば、警報発生信号を警報音発生器13に出力する。また、クルーズ判定ならば、自動変速機制御器23、ブレーキ駆動器19およびスロットル駆動器21に制御信号を出力して、必要な制御を実施する。そして、これらの制御実行時には、距離表示器15に対して必要な表示信号を出力して、状況をドライバーに告知する。
【0099】
このように、本実施形態のレーダ装置は、従来技術のようにバックグラウンドノイズを差し引いてピーク波形を抽出するのではなく、積算信号の波形の形状を判定して直接的にピーク波形を抽出する。これにより、従来技術における3つの問題([問題1]バックグラウンドノイズのレベルが変動すること、[問題2]、複数個のピークが引っ付いたピーク波形を一塊のピーク波形とみなしてしまうこと、[問題3]高いピーク強度を持つ第1の反射信号を受信した直後に、別の物体からの第2の反射信号を受信した場合、第2の反射信号のピーク波形が検出できなくなること)は発生しないため、反射物のピーク波形を適切に抽出することができるようになる。
【0100】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何等制限されるものではなく、以下の変形例のように、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得る。
【0101】
(変形例1)
上記実施形態によるピーク波形の抽出方法と、特開2005−257405号公報に記載のバックグラウンドノイズを用いたピーク波形の抽出方法とを併用する構成にしてもよい。その場合の検出回路85の構成を図22に示す。
【0102】
図22のバックグラウンド書き込み判定部96は、反射物が存在しないことを判定するもので、この判定結果をバックグラウンドノイズ記録部97及び処理切換部99に出力する。処理切換部99は、バックグラウンド書き込み判定部96から、反射物が存在しないとする判定結果が出力された場合には、図の上側に接続を切り換える。これにより、積算処理部88から出力される積算信号がバックグラウンドノイズ記録部97及び差分処理部98に出力されるようになる。
【0103】
バックグラウンドノイズ記録部97は、バックグラウンドノイズに相当する、反射物が存在しない場合の積算信号を記録する。そして、差分処理部98では、反射物の存在するときの積算信号からバックグラウンドノイズ記録部97の記録するバックグラウンドノイズを除去する処理を行い、そのノイズ除去後の積算信号を距離算出部94に出力する。
【0104】
一方、処理切換部99は、バックグラウンド書き込み判定部96から、一定時間に渡って反射物が存在するとの判定結果が出力された場合、又はユーザのスイッチ入力(図22には図示せず)等による本実施形態への切換え指定時には、図の下側に接続を切り換える。これにより、本実施形態で説明した処理が実行される。
【0105】
このように、実施形態によるピーク波形の抽出方法と、バックグラウンドノイズを用いたピーク波形の抽出方法とを併用する構成を採用することにより、バックグラウンドノイズを計測できない状況(渋滞等)において、一時的な手段として、本実施形態によるピーク波形の抽出方法を使用することも可能となる。
【0106】
(変形例2)
上述した実施形態においては、X軸方向に走査される各走査ラインにおいて、隣接して照射される複数本のレーザ光に基づく受光信号を積算する例について説明した。しかしながら、一定角度に照射される送信波に基づいて出力される、一定時間内の所定個数の受光信号を積算するようにしてもよい。このようにした場合であっても、反射物からの反射波に対応する信号成分が増幅されるようになり、その一方で、種々の要因で、受光信号に重畳されるランダムなノイズ成分の増幅の程度は小さいため、積算信号においては、反射物からの反射波に対する受信信号成分のS/N比が向上する。
【0107】
(変形例3)
上記実施形態では、積算処理部88は、受光信号を1個分ずつずらしながら、積算する受光信号の範囲を移動させた。しかしながら、積算する受光信号の個数よりも少ない範囲で、複数個の受信信号分だけずらしながら、積算する受光信号の範囲を移動させても良い。このようにした場合であっても、少なくとも、受信信号を所定個数ごとに分けて、それぞれ積算信号を求めた場合に比較して、積算信号の検知分解能を向上することができる。
【0108】
(変形例4)
上述した実施形態においては、X軸方向に走査される各走査ラインにおいて、隣接して照射される複数本のレーザ光に基づく受光信号を積算する例について説明した。しかしながら、積算する受光信号は、X軸方向に隣接して照射されるレーザ光に限らず、Y軸方向に隣接して照射されるレーザ光によるものであっても良い。さらに、隣接して照射されるレーザ光の範囲は、X軸及びY軸の複数の走査ラインに及ぶものであっても良い。
【0109】
(変形例5)
上記実施形態では、レーザ光の2次元スキャンを行うために面倒れ角が異なるポリゴンミラー73を用いたが、例えば車幅方向にスキャン可能なガルバノミラーを用い、そのミラー面の倒れ角を変更可能な機構を用いても同様に実現できる。但し、ポリゴンミラー73の場合には、回転駆動だけで2次元スキャンが実現できるという利点がある。
【0110】
(変形例6)
上記実施形態では、レーザレーダセンサ5内部において、距離及び対応するスキャン角度θx,θyを極座標系からXYZ直交座標系に変換していたが、その処理を物体認識ブロック43において行っても良い。
【0111】
(変形例7)
上記実施形態では、レーザ光を用いたレーザレーダセンサ5を採用したが、ミリ波等の電波や超音波等を用いるものであってもよい。また、スキャン方式にこだわる必要はなく、距離以外に方位を測定できる方式であればよい。そして、例えばミリ波でFMCWレーダ又はドップラーレーダなどを用いた場合には、反射波(受信波)から先行車までの距離情報と先行車の相対速度情報が一度に得られるため、レーザ光を用いた場合のように、距離情報に基づいて相対速度を算出するという過程は不要となる。
【0112】
(変形例8)
上記実施形態では、レーザ光に対する反射強度が不十分な反射物も検知できるようにするために、複数の受光信号を積算した積算信号を算出した。しかしながら、反射物の検出は、個々の受光信号に基づいて行なうようにしても良い。
【0113】
(変形例9)
上述した実施形態においては、本発明によるレーダ装置を車両用レーダ装置として用いた場合について説明した。しかしながら、本発明によるレーダ装置は車両用に限らず、例えば所定のエリアに対する侵入者検出のために用いることも可能である。
【0114】
(変形例10)
上述した実施形態においては、図2に示すスキャン方式を使用した例について説明しているが、指定方向(一定角度)にレーザビームを固定して、一定時間内の反射信号を積分する方式に対しても同じように利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明によるレーダ装置が適用された車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】レーザレーダセンサ5の構成を示す構成図である。
【図3】レーザレーダセンサ5における検出回路86の構成を示す構成図である。
【図4】レーザレーダセンサ5の照射領域を示す斜視図である。
【図5】検出回路86において、AD変換部87による受光信号に対するデジタル変換処理を説明するための波形図である。
【図6】積算受光信号範囲を4とした場合の積算対象となる受信信号の範囲を模式的に示した説明図である。
【図7】複数の受光信号を積算する処理を説明するための説明図である。
【図8】複数の受光信号を積算した場合、反射光の強度に対応した受光信号成分の増幅の程度が、ノイズ信号成分の増幅の程度よりも大きいことを説明するための説明図である。
【図9】積算信号の波形の形状における各状態(ピーク探索中ST1、立上り開始ST2、立上り中ST3、立下り中ST4、及び立上りチェックST5)を示した図である。
【図10】判定対象の1個のポイント(検証ポイント)と、時間的に前後する2個のポイントを示した図である。
【図11】検証ポイントを判定する際の状態遷移図である。
【図12】状態遷移図における判定1の条件を示す図である。
【図13】状態遷移図における判定2の条件を示す図である。
【図14】状態遷移図における判定3の条件を示す図である。
【図15】状態遷移図における判定4の条件を示す図である。
【図16】状態遷移図における判定5の条件を示す図である。
【図17】状態遷移図における判定6の条件を示す図である。
【図18】状態遷移図における判定7の条件を示す図である。
【図19】(a)、(b)は、ピークグループPKに属する各ポイントの信号成分PKiからオフセット分Hsを除去することを説明するための図である。
【図20】オフセット除去後の積算信号とグループ番号を示す図である。
【図21】(a)は、引っ付いていない2個のピークを含む積算信号から各々のピーク波形を抽出することを説明するための図であり、(b)は、引っ付いている2個のピークを含む積算信号から各々のピーク波形を抽出することを説明するための図である。
【図22】変形例1における検出回路86の構成を示す構成図である。
【図23】(a)は、受信信号積算結果とバックグラウンドノイズとのレベルが一致している場合を示した図であり、(b)は、受信信号積算結果とバックグラウンドノイズとのレベルにずれが生じている場合を示した図である。
【図24】2つのピークが引っ付いた受信信号積算結果とバックグラウンドノイズを示した図である。
【図25】2つのピークが引っ付いたピーク波形を示す図である。
【図26】強いピーク強度を持つ第1の反射信号を受信した直後に、別の物体からの強いピーク強度を持つ第2の反射信号を受信した場合を示した図である。
【符号の説明】
【0116】
1…車両制御装置、3…認識・車間制御ECU、5…レーザレーダセンサ、7…車速センサ、9…ブレーキスイッチ、11…スロットル開度センサ、13…警報音発生器、15…距離表示器、17…センサ異常表示器、19…ブレーキ駆動器、21…スロットル駆動器、23…自動変速機制御器、24…警報音量設定器、25…警報感度設定器、26…クルーズコントロールスイッチ、27…ステアリングセンサ、28…ヨーレートセンサ、29…電源スイッチ、43…物体認識ブロック、44…センサ異常検出ブロック、47…車速演算ブロック、49…操舵角演算ブロック、51…ヨーレート演算ブロック、53…先行車判定ブロック、55…車間制御部及び警報判定部ブロック、57…カーブ半径算出ブロック、70…レーザレーダCPU、71…発光レンズ、72…スキャナ、73…ミラー、74…モータ駆動回路、75…半導体レーザダイオード、76…レーザダイオード駆動回路、81…受光レンズ、83…受光素子、85…増幅器、86…検出回路、87…AD変換部、88…積算処理部、89…ステートマシン部、90…受信信号積算変換部、91…オフセット記録部、92…グループ番号記録部、93…差分処理記録部、94…距離算出部、96…バックグラウンド書き込み判定部、97…バックグラウンドノイズ記録部、98…差分処理部、99…処理切換部
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成18年7月4日(2006.7.4)
【代理人】 【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行

【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平


【公開番号】 特開2008−14722(P2008−14722A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−184806(P2006−184806)