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【発明の名称】 信号到来角決定方法及び信号到来角決定装置、並びに信号の到来角を決定するためのシステム
【発明者】 【氏名】クー、ジン

【氏名】マ、ユガンダ

【氏名】サン、シャオビング

【氏名】岡田 勘三

【要約】 【課題】信号到来方向を決定するための方法、装置、システムを提供する。

【構成】信号到来方向の決定するために、信号の第1及び第2のUWB波形をUWB送受信機の1又はそれ以上のアンテナで受信する。信号の先頭部分で規定されるウィンドウを第1及び第2のUWB波形で規定する。当該ウィンドウ内の第1及び第2のUWB波形それぞれについて第1及び第2の振幅値を計算する。第1および第2の振幅値について振幅比を計算し、これをキャリブレーション・データと比較して信号到来方向を決定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
UWB送受信機が持つ1又はそれ以上のアンテナで第1及び第2のUWB波形を受信するステップと、
該第1及び第2のUWB波形における、該信号の先頭部分によってウィンドウを規定するステップと、
該ウィンドウ内の第1及び第2のUWB波形それぞれについての第1及び第2の振幅値を計算するステップと、
該第1及び第2の振幅値の振幅比を計算するステップと、
該振幅比をキャリブレーション・データと比較して、該信号の到来方向を決定するステップと、
を具備することを特徴とする信号到来方向決定方法。
【請求項2】
キャリブレーション処理を通じて得られる該キャリブレーション・データは、キャリブレーション信号の先頭部分を基に設定される、
ことを特徴とする請求項1に記載の信号到来方向決定方法。
【請求項3】
キャリブレーション処理を通じて得られる該キャリブレーション・データは、早見表に格納される、
ことを特徴とする請求項2に記載の信号到来方向決定方法。
【請求項4】
キャリブレーション処理を通じて得られる該キャリブレーション・データは、キャリブレーション・データをプロットして描いたキャリブレーション曲線から導き出された関数として格納される、
ことを特徴とする請求項2に記載の信号到来方向決定方法。
【請求項5】
該キャリブレーション・プロセスは自由空間環境下で実施される、
ことを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の信号到来方向決定方法。
【請求項6】
該UWB送受信機で受信した該第1及び第2のUWB波形を蓄積するステップさらに備える、
ことを特徴とする上記のいずれかの請求項に記載の信号到来方向決定方法。
【請求項7】
該ウィンドウはサンプル・サイズによって規定される、
ことを特徴とする上記のいずれかの請求項に記載の信号到来方向決定方法。
【請求項8】
該第1及び第2の振幅値は、該ウィンドウ内の該第1及び第2のUWB波形それぞれについての1又はそれ以上のピーク間の値とRMS(Root Mean Square:2乗平均の平方根)値である、
ことを特徴とする上記のいずれかの請求項に記載の信号到来方向決定方法。
【請求項9】
該振幅比を計算するステップは、該第1及び第2の振幅値の差分と該第1及び第2の振幅値の合計を計算するステップを備える、
ことを特徴とする上記のいずれかの請求項に記載の信号到来方向決定方法。
【請求項10】
該振幅比を計算するステップは、該第1及び第2の振幅値の合計の差分の比を計算するステップをさらに備える、
ことを特徴とする請求項9に記載の信号到来方向決定方法。
【請求項11】
第1及び第2のUWB波形の各信号を受信するように構成された1又はそれ以上のアンテナと、
キャリブレーション・データを格納するためのメモリと、
該1又はそれ以上のアンテナによって受信した該第1及び第2のUWB波形における該信号の先頭部分によってウィンドウを規定し、該ウィンドウ内の該第1及び第2のUWB波形それぞれについての第1及び第2の振幅値を計算し、該第1及び第2の振幅値の振幅比を計算し、該振幅比を該メモリ内に格納されている信号到来角を決定するためのキャリブレーション・データと比較するように構成された、1又はそれ以上のプロセッサと、
を具備することを特徴とする信号到来方向決定装置。
【請求項12】
キャリブレーション処理を通じて得られる該キャリブレーション・データは、キャリブレーション信号の先頭部分を基に設定される、
ことを特徴とする請求項11に記載の信号到来方向決定装置。
【請求項13】
キャリブレーション処理を通じて得られる該キャリブレーション・データは、早見表に格納される、
ことを特徴とする請求項12に記載の信号到来方向決定装置。
【請求項14】
キャリブレーション処理を通じて得られる該キャリブレーション・データは、キャリブレーション・データをプロットして描いたキャリブレーション曲線から導き出された関数として格納される、
ことを特徴とする請求項12に記載の信号到来方向決定装置。
【請求項15】
該キャリブレーション・プロセスは自由空間環境下で実施される、
ことを特徴とする請求項12乃至14のいずれかに記載の信号到来方向決定装置。
【請求項16】
該1又はそれ以上のプロセッサは、さらに該UWB送受信機で受信した該第1及び第2のUWB波形を蓄積するように構成される、
ことを特徴とする請求項11乃至15のいずれかに記載の信号到来方向決定装置。
【請求項17】
該ウィンドウはサンプル・サイズによって規定される、
ことを特徴とする請求項11乃至16のいずれかに記載の信号到来方向決定装置。
【請求項18】
該第1及び第2の振幅値は、該ウィンドウ内の該第1及び第2のUWB波形それぞれについての1又はそれ以上のピーク間の値とRMS(Root Mean Square:2乗平均の平方根)値である、
ことを特徴とする請求項11乃至17のいずれかに記載の信号到来方向決定装置。
【請求項19】
該プロセッサは、さらに該第1及び第2の振幅値の差分と該第1及び第2の振幅値の合計を計算するように構成される、
ことを特徴とする請求項11乃至18のいずれかに記載の信号到来方向決定装置。
【請求項20】
該プロセッサは、さらに該第1及び第2の振幅値の合計の差分の比を計算するように構成される、
ことを特徴とする請求項19に記載の信号到来方向決定装置。
【請求項21】
UWBパルスを受信したことに応答して信号を生成する応答機と、
請求項11乃至20のいずれかに記載の信号到来方向決定装置として、該応答機によって生成された信号を受信するように構成された送受信機と、
を具備することを特徴とする信号の到来角を決定するためのシステム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、無線位置決めシステムに係り、特に、信号到来方向を決定するための方法、装置、並びにシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
モノパルスは、ローブの同時比較としても知られる、放射電波の到来方向(DOA:Direction of Arrival)を決定するための技術である。ここで言う放射電波は、例えば送受信機、応答機若しくは立標(ビーコン)といった能動源、あるいは受動源、すなわち自分に当てられた電力の一部を放射するターゲット若しくはスキャッタから発される。以下では、信号到来方向を決定するためのモノパルス技術の動作原理について、図1を参照しながら説明する。
【0003】
図1には、従来のモノパルス・システム10の上面図を模式的に示している。図示のモノパルス・システム10は、ビーコン12と受信機14を含んでいる。ビーコン12は、受信機14から距離Rだけ離間し、受信機14の光軸zに対して角度θだけ傾けて配設されている。位置(R,θ)にあるビーコン12は、受信機14において、まったく同じ第1及び第2のアンテナ・パターンによって受信される。図1に示す第1及び第2のアンテナ・パターンは、連続的なローブによって得られる。図1ではただ1つの受信機しか描いていないが、2つの受信機を用いて実際の同時ビームによって第1のアンテナ・パターン16及び第2のアンテナ・パターン18を得ることもできる。ビーコン12からの信号の到来角θは、第1のアンテナ・パターン16及び第2のアンテナ・パターン18の振幅の比較に基づいて推定される。より具体的に言えば、第1のアンテナ・パターン16及び第2のアンテナ・パターン18の振幅の合計の差分の比を表す角度推定量Δ/Σを以下の方程式(1)を用いて計算することによって、ビーコン12からの信号の到来角θが推定される。
【0004】
【数1】


【0005】
上式(1)において、f1(θ)は第1のアンテナ・パターン16であり、f2(θ)は第2のアンテナ・パターン18である。モノパルス技術に関しては、M.Sherman著 “Monopulse Principles and Techniques”(Artech House Inc.(1984))(非特許文献1)や、A.I.Leonov、K.I.Fomichev共著“Monopulse Radar”(Artech House Inc.(1986))(非特許文献2)に、詳細にわたって議論されている。
【0006】
モノパルス技術は、レーダ関連の応用技術に広範に採用されている。特に、視線(Line of Sight:LOS)条件を持つ長いレンジのレーダ分野において、ターゲットの角度位置を決定するために適用される。しかしながら、ごく最近では、合衆国の連邦通信委員会(Federal COmmunication Commission:FCC)が超広帯域(Ultrawide Band:UWB)の商業利用を認可したことに伴い、室内環境での位置決定に利用するためのUWBに基づくモノパルス・システムが提案されている(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0007】
このUWBに基づく位置決定用モノパルス・システムは、UWB送受信機とUWB参照装置で構成される。参照装置は、送受信機からのUWBパルスを受信したことに応答して、UWB応答パルスを生成する。送受信機は、複数のアンテナと、当該送受信機から伝送されたUWBパルスの受信に応答して参照装置からUWBパルスが返された際の、これらのアンテナにおける各受信信号の振幅を計算するための回路を備えている。異なるアンテナでの受信信号振幅を比較することによって、UWB応答パルスの到来方向が決定される。
【0008】
図2には、大きな電波反射物が近接しないオフィス環境下で、従来のUWB位置決めシステムにおける送受信機で受信される第1の波形20及び第2の波形22を示している。第1の波形20及び第2の波形22のサンプル(すなわち、同図中のサンプル・インデックスN1乃至N2のサンプル)が、応答パルスの到来方向を決定するための振幅計算に用いられている。UWBパルスの期間が短いため(典型的には、1乃至2ナノ秒の間)、従来のUWB位置決めシステムに対して時間切り出し(time−gating)を適用することによって、マルチパスの影響を実質的に抑制することができる。したがって、サンプル・インデックスN1乃至N2のサンプルは実質的には直接路信号のみからなる。しかしながら、従来のUWB位置決めシステムが、壁のような相当な電波反射物と例えば1メートル未満となる近距離で動作するような適用例では、応答パルスの反射物からの鏡反射に起因するマルチパスは重大な振幅となり、直接路信号を干渉しがちである。図3には、従来のUWB位置決めシステムにおける送受信機がオフィス環境下で壁から至近距離で動作するときに受信した第1の波形24と第2の波形26を示している。ここでは、従来の送受信機は壁から40センチ・メートルだけ離間した場所で動作し、第1の波形24と第2の波形26は同送受信機が持つ2本のアンテナで集められたもので、これら2本のアンテナは互いの60度だけ傾いているものとする。図3に示した第1の波形24と第2の波形26は、壁から反射するマルチパスからの干渉のために、LOS条件で適用した従来の送受信機で受信された第1の波形20及び第2の波形22(図2を参照のこと)とは本質的に相違する。マルチパスの存在は、図3に示したような第1の波形24と第2の波形26中からサンプル・インデックスN1乃至N2のサンプルを用いた応答パルスの信号到来方向を推定にエラーを誘発する。
【0009】
上述したような観点から、マルチパスの影響が厳しい適用例においても、信号の到来方向を実質的に正確に推定することができる方法が望まれている。
【0010】
【特許文献1】シンガポール国特許出願SG200504866−5
【非特許文献1】M.Sherman著 “Monopulse Principles and Techniques”(Artech House Inc.(1984))
【非特許文献2】A.I.Leonov、K.I.Fomichev共著“Monopulse Radar”(Artech House Inc.(1986))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、マルチパスの影響が厳しい適用例においても信号の到来方向を実質的に正確に推定することができる、信号到来方向を決定するための方法、装置、並びにシステムを提供することにある。本発明は、到来方向に用いる信号の先頭部分を好適に利用することによって、マルチパスの存在により誘発されるエラーを実質的に提言するようにしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の側面は、UWB送受信機が持つ1又はそれ以上のアンテナで第1及び第2のUWB波形を受信するステップと、該第1及び第2のUWB波形における、該信号の先頭部分によってウィンドウを規定するステップと、該ウィンドウ内の第1及び第2のUWB波形それぞれについての第1及び第2の振幅値を計算するステップと、該第1及び第2の振幅値の振幅比を計算するステップと、
該振幅比をキャリブレーション・データと比較して、該信号の到来方向を決定するステップを具備することを特徴とする信号到来方向決定方法である。
【0013】
本発明の第1の側面を実現することによって、上述したように、マルチパスの影響が厳しい適用例においても、信号の到来方向を実質的に正確に推定することができる。
【0014】
より好ましくは、キャリブレーション処理を通じて得られる該キャリブレーション・データは、キャリブレーション信号の先頭部分を基に設定される。キャリブレーション信号の異なるセグメントを用いたときには、キャリブレーション信号の有効なUWBスペクトラムにおける相違があるからであり、これによって、到来方向をより正確に推定することができる。キャリブレーション処理を通じて得られる該キャリブレーション・データは、早見表の形式で格納してもよいし、あるいは、キャリブレーション・データをプロットして描いたキャリブレーション曲線から導き出された関数として格納するようにしてもよい。キャリブレーション処理は、自由空間環境で実施されることが好ましい。
【0015】
好ましい実現形態では、UWB送受信機で受信される第1及び第2のUWB波形は、複数のパルスから得られた結果を合計することによって、蓄積される。信号の先頭部分(信号のピーク部分ではない)しか振幅計算に用いないことで、雑音成分を消去しながら信号成分を加算していくことによって、信号対雑音比(SNR)の低下を補償することができる。
【0016】
ウィンドウは、サンプル・サイズによって規定することができる。この場合、第1及び第2の振幅値は、ウィンドウ内の該第1及び第2のUWB波形それぞれについての1又はそれ以上のピーク間の値とRMS(Root Mean Square:2乗平均の平方根)値である。
【0017】
振幅比を計算するステップは、好ましくは、第1及び第2の振幅値の差分と第1及び第2の振幅値の合計を計算するステップを備えている。この場合、振幅比を計算するステップは、該第1及び第2の振幅値の合計の差分の比を計算するステップをさらに備えることが好ましい。
【0018】
また、本発明の第2の側面は、第1及び第2のUWB波形の各信号を受信するように構成された1又はそれ以上のアンテナと、キャリブレーション・データを格納するためのメモリと、該1又はそれ以上のアンテナによって受信した該第1及び第2のUWB波形における該信号の先頭部分によってウィンドウを規定し、該ウィンドウ内の該第1及び第2のUWB波形それぞれについての第1及び第2の振幅値を計算し、該第1及び第2の振幅値の振幅比を計算し、該振幅比を該メモリ内に格納されている信号到来角を決定するためのキャリブレーション・データと比較するように構成された、1又はそれ以上のプロセッサを具備することを特徴とする信号到来方向決定装置である。
【0019】
また、本発明の第3の側面は、UWBパルスを受信したことに応答して信号を生成する応答機と、上記の信号到来方向決定装置として、該応答機によって生成された信号を受信するように構成された送受信機を具備することを特徴とする信号の到来角を決定するためのシステムである。
【0020】
本発明の第2及び第3の側面によれば、上述したような本発明の第1の側面に対応する効果を得ることができる。さらに、本発明の第1の側面に関する上述した特徴的な構成を、本発明の第2及び第3の側面にも適用することができる。
【0021】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の原理の例示を描いた添付図面を参照した後述の詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
添付の図面と関連した以下の詳細な記載は、本発明の実施形態を説明することを意図したものであって、本発明が実現される唯一の形態を表すことを意図したものではない。同一若しくは等価な機能は、本発明の精神と範囲を逸脱しない範囲で包含される他の実施形態によっても実現することができる、ということを十分理解されたい。各図では、同様の構成要素を示すための同一の参照番号が付されている。
【0023】
図4には、信号の到来方向を決定するためのシステム50が示されている。同システム50は、送受信機52と応答機54で構成される。送受信機52は、複数の指向性アンテナ56と、プロセッサ58と、キャリブレーション・データを格納するためのメモリ60を備えている。応答機54は、全指向性アンテナ62を備えている。応答機54からは、UWBパルスを受信したことに応答して、到来方向を決定するための信号が生成される。隣接する1組の指向性アンテナ56は、この信号の第1及び第2のUWB波形をそれぞれ受信するように構成されている。
【0024】
本明細書で説明する特定の実施形態では、送受信機52は、ある固定された場所に存在するUWB受信機であり、応答機54は移動型のUWBタグである。送受信機52は、応答機54の場所を決定するための基準としての役割を持つ。同実施形態における指向性アンテナ56は、360度を網羅するアンテナ・アレーを形成するように配置され且つ相互接続されている。本実施形態では4本の指向性アンテナ56が示されているが、本発明の要旨は送受信機52の特定のアンテナ本数に限定されるものではなく、送受信機52はそれ以下又はそれ以上の本数のアンテナ56を備えてもよいことを当業者であれば理解できよう。例えば、本実施形態の変形例として、送受信機52は、360度を網羅する単一の回転式アンテナを備えていてもよい。さらに、本発明の要旨は、全指向性アンテナを搭載した応答機に限定されるものではない、ということを十分理解されたい。
【0025】
システム50のさまざまな構成要素について言及してきたが、以下では、図4乃至図8を参照しながら、これらの構成要素の動作についてより詳細に説明する。
【0026】
本実施形態では、応答機54に対して信号の生成を促すためのUWBパルスが送受信機52から伝送される。応答機54は、UWBパルスを受信したことに応じて、応答UWBパルス(すなわち、信号)を生成する。
【0027】
図5には、信号の到来方向を決定するための方法100を図解した模式的なフロー図を示している。第1のステップ102では、UWB送受信機52の第1及び第2のアンテナによってそれぞれ当該信号の第1及び第2のUWB波形が受信される。図6には、送受信機52のアンテナ56によって受信された第1のUWB波形64及び第2のUWB波形66の一例を示している。第1のUWB波形64及び第2のUWB波形66は、送受信機52のアンテナ56で受信された応答UWBパルスのサンプルから再現される。
【0028】
あるいは、アンテナ間の電気的切り替えによって連続的なロービングを実現することができるが、これによって、機械的操作若しくは無線周波数(RF)混合器を実装することが不要となる。
【0029】
図4、図5、並びに図6を参照すると、プロセッサ58は、ステップ104において第1及び第2のUWB波形のウィンドウ68を規定するように構成されている。図6からも分かるように、ウィンドウ68は、当該信号の先頭部分において規定されている。マルチパスはさらに長い距離から到来するため、これらの信号は常に直接路信号の後からある時間間隔を置いて到来する。したがって、信号の先頭部分は実質的にマルチパス成分を含んでいない。このように到来方向の決定にはしんごうのせんとうぶぶんをしようすることによって、推定された到来方向に含まれるマルチパス効果に起因した誤差を実質的に回避される。先頭部分は、信号の少なくとも最初から20%程度で構成することができる。しかしながら、本発明の要旨は信号の先頭部分はかかるサイズに限定されるものではないということを理解されたい。むしろ、信号の先頭部分のサイズは、到来方向決定システム50がかなり大きな反射物に接近していることに依存する。システム50がかなり大きな反射物に近づくにつれ、信号の先頭部分のサイズはより小さくなる。
【0030】
図6から分かるように、ウィンドウ68は、サンプルのサイズs(すなわち、サンプル・インデックスがN1´からN2´まで)によって規定される。プロセッサ58は、直接信号とマルチパスが到来する時間遅延τに基づいて、サンプルのサイズsを決定するように構成されている。さらに、プロセッサ58は、信号が伝搬する直接路と反射路間の位置ずれ差分ΔPに基づいて、時間遅延τを決定するように構成されている。位置ずれ差分ΔPの大きさは、送受信機52と応答機54間の位置ずれに依存する。とりわけ、送受信機52と応答機54がさらに離れているときには、位置ずれ差分Δpはより小さくなる。サンプルのサイズs、すなわちウィンドウ68は、送受信機52と応答機54間の最大の距離間隔(すなわち、想定し得る位置ずれ差分ΔPの最小値)に基づいて、あらかじめ決定される。サンプルのサイズsの決定方法の一例について、図7を参照しながら以下で説明する。
【0031】
図7には、送受信機52と応答機54が、かなり大きな反射物70(図示の例では壁)に近接した場所で動作している様子を示している。送受信機52と応答機54は互いに距離dだけ離間しており、また、各々は壁70からはそれぞれh1並びにh2だけ離間している。応答機54によって発された信号は、直接信号並びに壁70で反射されたマルチパスとして、送受信機52で受信される。直接信号は、直接路72を往来して送受信機52に届き、他方のマルチパスは反射路74を往来する。信号が伝搬する直接路72と反射路74の間の位置ずれ差分ΔPは、以下の方程式によって表される。
【0032】
【数2】


【0033】
ここで述べる特定の例では、送受信機52と応答機54は互いに3メートルだけ離間し、それぞれ壁70からは40センチメートルだけ離れている。この例に上式(2)を適用すると、信号が伝搬する直接路72と反射路74の間の位置ずれ差分ΔPはおおむね10センチメートルと算出される。
【0034】
直接信号とマルチパスが到達する間の時間遅延τは、直接路72と反射路74間の位置ずれ差分ΔPに基づいて以下の方程式(3)を用いて決定される。
【0035】
【数3】


【0036】
但し、上式において、定数cは光の速度(すなわち、毎秒3×108メートル)である。方程式(3)を適用すると、上記の特定の例について時間遅延τは0.3ナノ秒と算出される。したがって、信号の先頭部分のみでウィンドウ68が規定されるが、UWB信号のパルス幅は典型的には1ナノ秒と短いので、時間遅延τはなおも第1のUWB波形64と第2のUWB波形66の重要な部分を構成している。
【0037】
続いて、直接信号とマルチパスが到達する間の時間遅延τに基づいて以下の方程式(4)を用いて、サンプル・サイズsが決定される。
【0038】
【数4】


【0039】
上式において、変数tはサンプル間隔、すなわち第1のUWB波形と第2のUWB波形における連続するサンプル間の時間差分である。サンプル間隔がサンプル当たり3.2ピコ秒とするこの場合の例に方程式(4)を適用すると、ウィンドウ68はおよそ90サンプルからなるサンプル・サイズsによって規定されると算出される。
【0040】
後続の振幅計算には信号の先頭部分(典型的には、信号のピーク部分ではない)しか用いられないことに伴う信号対雑音比(SNR)の低減を補償するために、プロセッサ58は、送受信機52で受信した第1のUWB波形64及び第2のUWB波形66を蓄積するように構成されている。すなわち、プロセッサ58は、送受信機52で複数回にわたり受信した各サンプルを合計する。雑音が典型的には乱雑であるのに対し信号は安定しているので、サンプルを合計して信号を蓄積することによって雑音がキャンセルされる。これによってSNRが向上する。1つの実施形態では、16回だけサンプルが合計される。これは、SNRがおよそ24デシベルだけ向上することに相当する。
【0041】
再び図4、図5、並びに図6を参照しながら説明すると、プロセッサ58は、ステップ106において、ウィンドウ68内の第1のUWB波形64と第2のUWB波形66それぞれについての第1の振幅値A1及び第2の振幅値A2を計算するように構成されるとともに、ステップ108において、第1の振幅値A1及び第2の振幅値A2の振幅比Sを計算するように構成されている。さらに詳しくは、プロセッサ58は、第1の振幅値A1及び第2の振幅値A2の間の差分A1−A2と、第1の振幅値A1及び第2の振幅値A2の合計A1+A2と、第1の振幅値A1及び第2の振幅値A2の差分A1−A2と合計A1+A2との比Sを計算するように構成されている。振幅比Sは以下の方程式(5)で表される。
【0042】
【数5】


【0043】
第1の振幅値A1及び第2の振幅値A2は、ウィンドウ68内の第1のUWB波形64と第2のUWB波形66それぞれの1又はそれ以上のピーク間の値や、RMS(Root Mean Square:2乗平均の平方根)であってもよい。
【0044】
図4、図5、並びに図6を参照しながら説明すると、プロセッサ58は、ステップ110において、振幅比Sをメモリ60に格納されたキャリブレーション・データと比較して、信号の到来方向を決定するようにさらに構成されている。キャリブレーション・データは、別個のキャリブレーション・プロセスから得られる。1つの実施形態では、キャリブレーション・プロセスは、自由空間環境下で実施される。キャリブレーション・プロセスを通じて得られたキャリブレーション・データは、早見表、あるいはキャリブレーション・データをプロットして描いたキャリブレーション曲線から導き出された関数として格納してもよい。
【0045】
図8には、第1のキャリブレーション曲線76と第2のキャリブレーション曲線78を示している。さらに詳しくは、図8には、キャリブレーション・データを直線並びに5次の曲線に当てはめている。第1のキャリブレーション曲線76と第2のキャリブレーション曲線78はともに、同じキャリブレーション信号から導き出されたキャリブレーション・データでプロットしたものである。しかしながら、第1のキャリブレーション曲線76は、キャリブレーション信号の先頭部分から設定されたキャリブレーション・データでプロットしたものであるのに対し(すなわち、88サンプルのウィンドウで規定される)、第2のキャリブレーション曲線78はキャリブレーション信号のスペクトラム全体から設定されたキャリブレーション・データでプロットしたものである(すなわち、408サンプルのウィンドウで規定される)。408サンプルからなる大きい方のウィンドウは、UWBキャリブレーション信号の先頭部分に適用された88サンプルからなる小さい方のウィンドウと比較すると、UWBスペクトラムのより広い範囲をカバーする。指向性アンテナ56のアンテナ・パターンはキャリブレーション信号のUWBスペクトラムに依存するので、キャリブレーション信号の異なるセグメントを使用するときには、送受信機52の指向性アンテナ56の有効なアンテナ・パターンは異なる。したがって、図8を見て分かるように、第1のキャリブレーション曲線76と第2のキャリブレーション曲線78の間には顕著な相違がある。キャリブレーション信号の先頭部分から設定されたキャリブレーション・データを用いることによって、信号の到来方向をより正確に推定することができる。
【0046】
本明細書では、本発明のより好ましい実施形態について図解と記述を目的として説明してきたが、これは本発明を網羅したり開示した形態に限定したりすることを意図したものではない。本発明の広義の概念から逸脱しない範囲で、上述した実施形態に対して修正を成し得ることは当業者であれば理解することができよう。例えば、上述した実施形態では、ただ1つのプロセッサをただ1つしか示していないが、本発明の要旨は送受信機のプロセッサの個数に限定されるものではないということを当業者であれば理解できよう。すなわち、第1及び第2のUWB波形におけるウィンドウを規定し、第1及び第2の振幅値を計算し、振幅比をキャリブレーション・データと比較して信号の到来方向を決定するという各ステップを、送受信機内の1又はそれ以上のプロセッサで実行するようにしてもよい。本明細書では本発明を壁際に配置されたシステムに適用した場合について説明したが、例えば地面に隣接しあるいは机上に設置されたシステムなど、さらにその他の設置環境に本発明を適用することができるということを理解されたい。要するに、本発明は本明細書で開示した特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で規定されているように、本発明の精神及び意図を逸脱しない範囲での変更も本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、従来のモノパルス・システム10の模式的な上面図である。
【図2】図2は、大きな電波反射物が近接しないオフィス環境下で、従来のUWB位置決めシステムにおける送受信機で受信される第1の波形20及び第2の波形を示した図である。
【図3】図3は、従来のUWB位置決めシステムにおける送受信機がオフィス環境下で壁から至近距離で動作するときに受信した第1の波形24と第2の波形26を示した図である。
【図4】図4は、信号の到来方向を決定するためのシステム50を示した図である。
【図5】図5は、信号の到来方向を決定するための方法100を図解した模式的なフロー図である。
【図6】図6は、図4に示した送受信機52のアンテナ56によって受信された第1及び第2のUWB波形の一例を示した図である。
【図7】図7は、送受信機52と応答機54が、かなり大きな反射物70(図示の例では壁)に近接した場所で動作している様子を示した図である。
【図8】図8は、本発明に実施形態に係る第1及び第2のキャリブレーション曲線を示した図である。
【符号の説明】
【0048】
50…信号到来方向決定システム
52…送受信機
54…応答機
56…指向性アンテナ
58…プロセッサ
60…メモリ
62…全指向性アンテナ

【出願人】 【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニー株式会社
【出願日】 平成19年5月16日(2007.5.16)
【代理人】 【識別番号】100093241
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正昭

【識別番号】100101801
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 英治

【識別番号】100095496
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 榮二

【識別番号】100086531
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 俊夫


【公開番号】 特開2008−8887(P2008−8887A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2007−130085(P2007−130085)