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【発明の名称】 移動物体検出装置
【発明者】 【氏名】笠野 文宏

【氏名】高木 俊昌

【氏名】藤川 英彦

【要約】 【課題】微少振動する物体を移動物体と誤検出することを抑制する。

【構成】ドップラー信号E,E’の振幅値がコンパレータ9C,9Dにおける第2のしきい値Th2(+),Th2(-)未満であれば微少振動する物体に反射した反射波と推測して象限信号発生回路80から象限信号Qを発生させないことで誤検出が抑制できる。さらに、ドップラー信号E,E’の振幅値がコンパレータ9C,9Dにおける第2のしきい値Th2(+),Th2(-)以上である場合、軸符号信号X,Yの位相差φが第1のしきい値Th1(+),Th1(-)と第2のしきい値Th2(+),Th2(-)との差に対応した基準値よりも大きいときにだけ象限信号Qを発生させ、軸符号信号X,Yの位相差φが基準値以下のときは演算回路83が移動物体検知の処理を行わないことにより、微少振動する物体を移動物体と誤検出することがより確実に抑制できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数で発振する発振手段と、発振手段から出力する送波信号により監視空間に超音波を送波する送波手段と、前記超音波が監視空間に存在する物体に反射して生じる反射波を受波する受波手段と、受波手段から出力する受波信号と前記送波信号と同周波数の基準信号との位相差を検波する位相検波手段と、位相検波手段から出力する位相検波信号を所定のしきい値と比較することで2値信号に変換する2値信号変換手段と、2値信号変換手段から出力する2値信号に基づいて監視空間における移動物体の存否を検知する検知手段とを備え、
前記位相検波手段は、送波信号と同周波数で互いに位相の異なる基準信号と受波信号とを混合して互いに位相の異なる正負両極性を有した一対のドップラー信号に変換する一対の位相検波回路を有し、
前記2値信号変換手段は、前記一対の位相検波回路から出力するドップラー信号をそれぞれヒステリシスを有した所定の第1のしきい値と比較することで2値信号に変換する一対の第1の比較器と、一対の前記ドップラー信号をそれぞれヒステリシスを有し且つ第1のしきい値よりも絶対値が大きい所定の第2のしきい値と比較する一対の第2の比較器とを有し、
前記検知手段は、前記第2の比較器の比較結果において一対の前記ドップラー信号の少なくとも何れか一方が前記第2のしきい値を超えていない場合は移動物体の存否を検知せず、前記第2の比較器の比較結果において一対の前記ドップラー信号が何れも前記第2のしきい値を超えており且つ前記2値信号の位相差が第1のしきい値と第2のしきい値との差に対応した基準値よりも大きい場合に各ドップラー信号の信号値を縦横各軸にとったベクトル平面の象限のうち両ドップラー信号の信号値を成分とするベクトルが存在する象限に対応する象限信号を発生し、当該象限信号の時間的な変化に基づいて移動物体の存否を検知することを特徴とする移動物体検出装置。
【請求項2】
前記第2のしきい値を前記第1のしきい値の2倍とし、前記2値信号の位相差の基準値を4分のπとしたことを特徴とする請求項1記載の移動物体検出装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を監視空間に放射し、監視空間内の物体の移動により生じる反射波の周波数偏移を検出することにより、監視空間内において移動する物体の存在を検出する移動物体検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車両盗難並びに車上盗難が増加しているため、駐車中の車両に不審者が侵入した場合に警報音を鳴動する車載用盗難警報装置が普及してきており、かかる車載用盗難警報装置には監視空間(車内)における移動物体(人)の存否を検出するために移動物体検出装置が搭載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の移動物体検出装置は、所定周波数の超音波を監視空間内に放射しておき、監視空間内に存在する物体の移動に伴なってドップラー効果として生じる反射波の周波数偏移を検出するように構成されている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0004】
図5に従来の移動物体検出装置の一例を示す。発振器1が発振する所定周波数の送波信号を受けて送波回路2が送波器3を駆動することにより、発振器1の発振周波数と同周波数の超音波が監視空間に送波され、監視空間内に存在する物体Oに超音波が反射して生じる反射波を受波器4で受波する。受波器4では受波した反射波を受波信号Einに変換し、この受波信号Einを第1及び第2の位相検波回路6A,6Bにそれぞれ入力して発振器1の発振周波数と同周波数の基準信号E0,E0’と混合する。ここで、一方の基準信号E0は移相回路10の出力であって、両基準信号E0,E0’の位相が互いに異なるように設定される。したがって、第1及び第2の位相検波回路6A,6Bの出力にビート信号として得られる一対のドップラー信号E,E’も位相が互いに異なったものとなる。ドップラー信号E,E’はそれぞれローパスフィルタ7A,7Bで高調波成分が除去された後にコンパレータ9A,9Bにおいて信号の正負に対応した2値信号(以下、「軸符号信号」と呼ぶ。)X,Yに変換される。軸符号信号X,Yはそれぞれ2値(ハイレベルとローレベル)を有しているから、両者の組み合わせにより4つの状態を表わすことができるのであり、これら4状態はドップラー信号E,E’を基本軸とするベクトル平面の4つの象限のうちで、受波信号Einに対応するベクトルがどの象限に存在しているかを示すことになる。したがって、ドップラー信号E,E’の極性の組み合わせにより4つの状態(正正、正負、負負、負正)を考えれば、ベクトル平面上の各象限(第1象限乃至第4象限)に対応させることができるのである。要するに正負両極性を有したドップラー信号E,E’の極性を組み合わせることによって4つの状態を分類すれば、両ドップラー信号E,E’の信号値を成分としたベクトルが存在する象限(第1象限乃至第4象限)と上記各状態とが一対一に対応することになる。このベクトルは、受波信号Einの基準信号E,E’に対する周波数偏移に応じてベクトル平面内の象限を移動し、周波数が低くなるか高くなるか、すなわち物体Oが遠ざかるか近付くかに応じて、象限を右回りもしくは左回りに移動するのである。
【0005】
そこで、この従来例では象限信号発生回路80、メモリ81、転移方向検出回路82、演算回路83、閾値回路84で検知回路8を構成し、以下のような処理を行っている。但し、検知回路8をマイコンで構成し、マイコンにおいてプログラムを実行することで象限信号発生回路80、転移方向検出回路82、演算回路83、閾値回路84の機能を実現することも可能である。
【0006】
象限信号発生回路80では、上述した信号処理により、上記ベクトル平面上において受波信号Einが存在する象限を検出して対応する象限信号Qを出力し、同時に受波信号Einが各象限の境界線を超えて転移するときに転移信号Zを発生する。象限信号Qは4状態を表わせばよいから、2ビット以上あればよい。また、象限信号Qは、転移信号Zの発生毎にメモリ81に一時的に記憶されると同時に、転移方向検出回路82にも入力される。ここに、メモリ81に記憶される象限信号Qは転移信号Zの発生毎に更新される。
【0007】
転移方向検出回路82では、受波信号Einに対応するベクトルが隣接する象限(第1象限乃至第4象限)に転移して転移信号Zが発生するのに伴って象限信号発生回路80から入力された現在の象限信号Q(すなわち、転移後の象限信号Q)と、前回の転移信号Zの発生に伴ってメモリ81に記憶されていた前回の象限信号Q(すなわち、転移前の象限信号Q)とが比較され、象限が右回りに転移したか左回りに転移したかが判定される。ここで、転移方向検出回路82の出力としては、受波信号Einに対応するベクトルが原点を中心として反時計回りに象限の境界線(基本軸)を横切る場合に加算、時計回りに象限の境界線を横切る場合に減算を指示する方向信号が出力されるように設定しておく。こうして、転移方向検出回路82の出力である方向信号が得られるとメモリ81の内容は更新される。転移方向検出回路82の出力である方向信号と象限検出回路80の出力である転移信号Zとは演算回路83に入力され、演算回路83では、転移信号Zが発生するたびに転移方向検出回路82の出力信号を読み込み、演算回路83に記憶されている値に対して方向信号が反時計回りなら1を加え、時計回りなら1を引くようにする。したがって、受波信号Einに対応するベクトルが第1象限から第2象限を通過して第3象限に至る軌跡を描いて移動した場合、演算回路83の初期値が0であれば、最終値は3になる。こうして演算回路83の出力値の絶対値が閾値回路84に予め設定されている閾値を超えると、閾値回路84は検出信号を送出する。検出信号は報知器駆動回路11に入力され、移動物体Oの存在が適宜報知器により報知される。
【0008】
上記構成によれば、超音波を送出して反射波の周波数偏移を検出するのであるから、送波信号の周波数をf0、物体の移動速度をv、超音波の伝播速度をcとすれば、ドップラー信号E,E’の周波数Δfは、|Δf|≒2vf0/cとなり(一般に、v≪c)、ドップラー信号E,E’の周波数は物体の移動速度vに比例することになる。また、物体が単位距離だけ移動したときに発生する、ドップラー信号E,E’の波数Nは、N=2f0/cとなるから、超音波の伝播速度cと送波周波数f0とが一定であれば、物体の移動速度vとは無関係に波数Nは一定となる。したがって、受波信号Einに対応するベクトルのベクトル平面での象限転移の回数も一定となる。つまり、上述のように4象限で表わせば、象限転移の回数は4×N回となり、物体の移動距離に比例することになる。また、象限の転移の向きは物体の移動する向きを表わすから、象限の転移が生じたときに転移の向きに応じて転移回数を加減算すれば、物体の移動距離と向きを知ることができるのである。換言すれば、監視空間内での物体Oの移動距離が閾値回路84の判定基準となり、物体Oが監視空間内で移動する時間には関係なく、物体の存在を検出することができるのである。
【特許文献1】特開平9−272402号公報
【特許文献2】特公昭62−43507号公報
【特許文献3】特公平6−16085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述のような移動物体検出装置を車載用盗難警報装置に搭載した場合、他の車両(自動車、電車、オートバイなど)が側を通過することで発生する振動や音が駐車中の車両(自動車)に伝わって当該車両の窓ガラスや送波器3又は受波器4が微少な振幅で振動することがあり、その微少振動に起因して超音波の伝搬経路が時間的に変動して反射波に位相変調がかかることになる。
【0010】
ここで、発振器1が出力する周期信号をsin(ωt+φ)、微少振動をfmsinω0tとしたとき、受波回路5から出力される変調信号fは、f=sin(ωt+φ+fmsinω0t)と表されるので、位相検波回路6A,6Bから出力されるドップラー信号E,E’はそれぞれ下記の式で表される。
【0011】
E=sin(ωt+φ+fmsinω0t)sinωt
≒1/2fmsinφsinω0t
E’=sin(ωt+φ+fmsinω0t)cosωt
≒1/2fmcosφsinω0t
但し、fm≪1
上記式から明らかなように、φが0又はπ/2であればドップラー信号E,E’の何れか一方がゼロとなり、φがπ/4又は3π/4であればドップラー信号E,E’が逆相(即ち、位相差がπ/2)又は同相(位相差がゼロ)となる。
【0012】
例えば、ドップラー信号E,E’が同相となった場合、ドップラー信号E,E’を2値化して得られる軸符号信号X,Yが(1,1)と(−1,−1)を周期的に繰り返すことになり(図6(a)参照)、転移前後の象限信号Qから転移方向を検出することができないために微少振動する物体(窓ガラスなど)を移動物体と誤検出することはないはずである。
【0013】
しかしながら、ドップラー信号E,E’を軸符号信号X,Yに変換するコンパレータ9A,9Bのしきい値にチャタリング防止用のヒステリシスを持たせた場合、図7(a)に示すように同相のドップラー信号E,E’の振幅が異なっているとき(例えば、ドップラー信号E’の振幅が小さいとき)には、図7(b)(c)に示すように軸符号信号X,Yの間に位相差が生じて象限信号Qが(1,1)→(−1,1)→(−1,−1)→(1,−1)→(1,1)という順序で周期的に転移するため、微少振動する物体を近づく向きに移動する物体と誤検出してしまう虞がある(図6(b)参照)。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、その目的は、微少振動する物体を移動物体と誤検出することが抑制できる移動物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、所定の周波数で発振する発振手段と、発振手段から出力する送波信号により監視空間に超音波を送波する送波手段と、前記超音波が監視空間に存在する物体に反射して生じる反射波を受波する受波手段と、受波手段から出力する受波信号と前記送波信号と同周波数の基準信号との位相差を検波する位相検波手段と、位相検波手段から出力する位相検波信号を所定のしきい値と比較することで2値信号に変換する2値信号変換手段と、2値信号変換手段から出力する2値信号に基づいて監視空間における移動物体の存否を検知する検知手段とを備え、前記位相検波手段は、送波信号と同周波数で互いに位相の異なる基準信号と受波信号とを混合して互いに位相の異なる正負両極性を有した一対のドップラー信号に変換する一対の位相検波回路を有し、前記2値信号変換手段は、前記一対の位相検波回路から出力するドップラー信号をそれぞれヒステリシスを有した所定の第1のしきい値と比較することで2値信号に変換する一対の第1の比較器と、一対の前記ドップラー信号をそれぞれヒステリシスを有し且つ第1のしきい値よりも絶対値が大きい所定の第2のしきい値と比較する一対の第2の比較器とを有し、前記検知手段は、前記第2の比較器の比較結果において一対の前記ドップラー信号の少なくとも何れか一方が前記第2のしきい値を超えていない場合は移動物体の存否を検知せず、前記第2の比較器の比較結果において一対の前記ドップラー信号が何れも前記第2のしきい値を超えており且つ前記2値信号の位相差が第1のしきい値と第2のしきい値との差に対応した基準値よりも大きい場合に各ドップラー信号の信号値を縦横各軸にとったベクトル平面の象限のうち両ドップラー信号の信号値を成分とするベクトルが存在する象限に対応する象限信号を発生し、当該象限信号の時間的な変化に基づいて移動物体の存否を検知することを特徴とする。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記第2のしきい値を前記第1のしきい値の2倍とし、前記2値信号の位相差の基準値を4分のπとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
人のような移動物体に反射した反射波あるいは静止している物体に反射した反射波を受波して得られる一対のドップラー信号は、通常、互いの振幅値が同一若しくは僅かな差しか生じないはずであり、微少振動する物体に反射した反射波を受波して得られるドップラー信号のみが互いの振幅値に大きな差が生じると考えられるから、本発明によれば、ドップラー信号の振幅値が第2の比較器における第2のしきい値未満であれば微少振動する物体に反射した反射波と推測して象限信号を発生させないことで誤検出が抑制でき、さらに、ドップラー信号の振幅値が第2の比較器における第2の閾値以上である場合においても、2値信号の位相差が第1のしきい値と第2のしきい値との差に対応した基準値よりも大きいときにだけ象限信号を発生させ、2値信号の位相差が基準値以下のときは移動物体検知の処理を行わないことにより、微少振動する物体を移動物体と誤検出することが抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に本実施形態のブロック図を示す。但し、本実施形態の基本構成並びに基本動作は図5に示した従来例と共通であるから、共通の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0019】
本実施形態においては、ローパスフィルタ7A,7Bの出力端に、コンパレータ9A,9B(第1の比較器)とは別のコンパレータ9C,9D(第2の比較器)を並列に接続するとともに、これらのコンパレータ9C,9Dにおける比較結果(以下、判別信号と呼ぶ。)α,βを、マイコンからなる検知回路8の象限信号発生回路80に取り込んでいる。ここで、コンパレータ9A,9Bにおいてはしきい値にヒステリシスが持たせてあり、ドップラー信号E,E’が大きい方のしきい値Th1(+)を上回ると小さい方のしきい値Th1(-)に切り替わり、ドップラー信号E,E’が小さい方のしきい値Th1(-)を下回ると大きい方のしきい値Th1(+)に切り替わることでチャタリングを防止している。同様に、本実施形態で追加しているコンパレータ9C,9Dにおいてもしきい値にヒステリシスが持たせてあり、ドップラー信号E,E’が大きい方のしきい値Th2(+)を上回ると小さい方のしきい値Th2(-)に切り替わり、ドップラー信号E,E’が小さい方のしきい値Th2(-)を下回ると大きい方のしきい値Th2(+)に切り替わるようになっている。そして、コンパレータ9A,9Bにおけるしきい値(第1のしきい値)Th1(+),Th1(-)に対してコンパレータ9C,9Dにおけるしきい値(第2のしきい値)Th2(+),Th2(-)の方が絶対値が大きく、すなわち、Th1(+)<Th2(+)且つTh1(-)>Th2(-)の関係を満たすように第2のしきい値Th2(+),Th2(-)を設定しており、ドップラー信号E,E’の振幅値が第2のしきい値Th2(+)よりも大きいときに判別信号αがハイレベルとなり、ドップラー信号E,E’の振幅値が第2のしきい値Th2(-)よりも小さい場合に判別信号βがハイレベルとなり、それ以外のときに判別信号α,βが何れもローレベルとなる。
【0020】
一方、象限信号発生回路80においては、少なくとも何れか一方の判別信号α,βがローレベルの場合、コンパレータ9A,9Bで2値化された軸符号信号X,Yから象限信号を発生する処理を行わない。つまり、人のような移動物体に反射した反射波あるいは静止している物体に反射した反射波を受波して得られる一対のドップラー信号E,E’は、通常、互いの振幅値が同一若しくは僅かな差しか生じないはずであり、微少振動する物体(例えば、自動車等の通過に伴って振動する車両の窓ガラスなど)に反射した反射波を受波して得られるドップラー信号E,E’のみが互いの振幅値に大きな差が生じると考えられるから、ドップラー信号E,E’の振幅値が第2の比較器(コンパレータ9C又は9D)における第2のしきい値Th2(+),Th2(-)未満であるときに受波信号Einが微少振動する物体に反射した反射波によるものと推測することができ、その場合に象限信号発生回路80で象限信号を発生させないことによって微少振動する物体を移動物体と誤検出することが抑制できる。
【0021】
ここで、受波信号Einが微少振動する物体に反射した反射波によるものであっても、ドップラー信号E,E’の振幅値が第2の比較器(コンパレータ9C又は9D)における第2のしきい値Th2(+),Th2(-)を超えてしまう場合があるから、第2の比較器(コンパレータ9C又は9D)における第2のしきい値Th2(+),Th2(-)との比較処理のみでは微少振動する物体の誤検出を十分に抑制することができない。
【0022】
そこで、ドップラー信号E,E’の振幅値が第2の比較器(コンパレータ9C又は9D)における第2のしきい値Th2(+),Th2(-)を超えている場合であっても、軸符号信号X,Yの位相差が第1のしきい値Th1(+),Th1(-)と第2のしきい値Th2(+),Th2(-)との差に対応した基準値以下であれば、ドップラー信号E,E’がほぼ同相又は逆相で振幅値の絶対値が異なっていると考えられることから、受波信号Einが微少振動する物体に反射した反射波によるものと推測することができる。つまり、ドップラー信号E,E’の位相差(=軸符号信号X,Yの位相差)が基準値以下であるということは、象限の転移が生じたときに転移前の象限に存在していた時間が極めて短かったことを示しており、移動物体(例えば、人)がそのような短時間の間に移動の向きを変えることは非常に起き難いことであるから、かかる場合は受波信号Einが微少振動する物体に反射した反射波によるものと推測することができる。
【0023】
例えば、第2のしきい値Th2(+),Th2(-)を第1のしきい値Th1(+),Th1(-)の2倍(Th2(+)=Th1(+)×2,Th2(-)=Th1(-)×2)に設定した場合、図2に示すようにドップラー信号E,E’の振幅値が第2のしきい値Th2(+),Th2(-)を超えているときの軸符号信号X,Yの位相差φは最大で30°(=π/6)となる。そして、図3に示すように軸符号信号Xがローレベルからハイレベルに変化した時点t1(象限信号Q=(1,−1))から、軸符号信号Yがローレベルからハイレベルに変化する時点t2(象限信号Q=(1,1))までの時間T1(=t2−t1)と、時点t2から軸符号信号Xがハイレベルからローレベルに変化した時点t3(象限信号Q=(−1,1))までの時間T2(=t3−t2)とを演算回路83において比較し、2つの時間T1,T2の比(T1:T2)が1:3〜3:1の範囲内、言い換えると2つの時間T1,T2の時間差(軸符号信号X,Yの位相差)が45°(=π/4)以上のときにだけ演算回路83が転移方向検出回路82の出力信号を読み込んで記憶している値に対して方向信号が反時計回りなら1を加え、時計回りなら1を引く処理を実行し、2つの時間T1,T2の時間差が45°未満のときは演算回路83は記憶値に対して加算又は減算処理を行わない。つまり、2つの時間T1,T2の比(T1:T2)が1:3〜3:1の範囲外、言い換えると2つの時間T1,T2の時間差(軸符号信号X,Yの位相差)が45°未満である場合、演算回路83では、図4に示すように実際の受波信号Einが第1象限と第3象限の間を移動する(ドップラー信号E,E’が同相のとき)か若しくは第2象限と第4象限の間を移動する(ドップラー信号E,E’が逆相のとき)と推定して移動物体の検出処理を行わないようにしている。
【0024】
ここで、演算回路83が軸符号信号X,Yの位相差と比較している基準値(=45°)は、第1のしきい値Th1(+),Th1(-)と第2のしきい値Th2(+),Th2(-)との差に対応した値、すなわち、軸符号信号X,Yの位相差φの最大値(=30°)に若干の余裕値を見積もって決定される値である。但し、本実施形態で例示した値は一例であって、これに限定する趣旨ではない。
【0025】
而して、本実施形態によれば、ドップラー信号E,E’の振幅値がコンパレータ9C,9D(第2の比較器)における第2のしきい値Th2(+),Th2(-)未満であれば微少振動する物体に反射した反射波と推測して象限信号発生回路80から象限信号Qを発生させないことで誤検出が抑制でき、さらに、ドップラー信号E,E’の振幅値がコンパレータ9C,9Dにおける第2のしきい値Th2(+),Th2(-)以上である場合においても、軸符号信号X,Yの位相差φが第1のしきい値Th1(+),Th1(-)と第2のしきい値Th2(+),Th2(-)との差に対応した基準値よりも大きいときにだけ象限信号Qを発生させ、軸符号信号X,Yの位相差φが基準値以下のときは演算回路83が移動物体検知の処理(記憶値に対して加算又は減算処理)を行わないことにより、微少振動する物体を移動物体と誤検出することがより確実に抑制できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】同上の動作説明用の波形図である。
【図3】同上における軸符号信号の説明図である。
【図4】同上における象限信号の説明図である。
【図5】従来例を示すブロック図である。
【図6】同上の動作説明図である。
【図7】同上の動作説明用の波形図である。
【符号の説明】
【0027】
1 発振器
2 送波回路
3 送波器
4 受波器
5 受波回路
6A,6B 位相検波回路
8 検知回路
9A,9B コンパレータ(第1の比較器)
9C,9D コンパレータ(第2の比較器)
80 象限信号発生回路
83 演算回路
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清

【識別番号】100085604
【弁理士】
【氏名又は名称】森 厚夫


【公開番号】 特開2008−8871(P2008−8871A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−182468(P2006−182468)