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【発明の名称】 到来波数検出装置
【発明者】 【氏名】竹田 浩章

【氏名】秋山 鎮男

【要約】 【課題】アレイアンテナでの受信信号数を正確に検出する。

【構成】方位検出回路4における、アダプティブアレーによる到来方位検出の位ベクトルに基づく式(4)による計算を評価式計算回路5で行い、その計算された方位方向を予備知識としたDCMPのアルゴリズムにより最適ウェイトを算出し、乗算回路7で干渉波抑圧信号を出力するとき、式(4)においては、到来波数を正確に設定してはじめて、乗算回路7における干渉波抑圧が適正に行なわれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アレイ状に配列され、高周波信号を受信する複数のアンテナと、
これら複数のアンテナにそれぞれ接続され、受信された前記高周波信号をA/D変換する複数のA/D変換器と、
これら複数のA/D変換器に共通接続され、アダプティブアレーにより前記受信された高周波信号の到来方位を検出する方位検出手段と、
この方位検出手段により到来方位が検出された受信高周波信号の方向ベクトルに基づく、コレクトステアリングベクトルを複数回計算する計算手段と、
この計算手段により計算された前記コレクトステアリングベクトルの方位方向を予備知識とした方向拘束付出力電力最小化法(DCMP)のアルゴリズムにより、前記複数のアンテナのアンテナパターンに対する最適ウェイトを算出するウェイト算出手段と、
このウェイト算出手段で算出した最適ウェイトと前記複数のA/D変換器から出力された受信高周波信信号とを乗算して干渉波抑圧信号を出力する乗算手段と、
この乗算手段から出力された前記干渉波抑圧信号の特徴量を算出する特徴量算出手段と、
この特徴量算出手段で算出された前記特徴量を評価する評価手段と
を具備することを特徴とする到来波数検出装置。
【請求項2】
前記方位検出手段は、アダプティブヌルステアリングにより、前記受信された高周波信号の到来方位を検出することを特徴とする請求項1に記載の到来波数検出装置。
【請求項3】
前記計算手段は、前記コレクトステアリングベクトルは下記式に基づいて算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の到来波数検出装置。
a(θd)=(I-V)b(θd)
但し、
I : 単位行列
N : 雑音空間部分の固有ベクトル
H : VN の複素共役転置
a(θd): 補正前のステアリングベクトル
【請求項4】
前記計算手段は、前記方位検出手段で検出される受信高周波信号の受信数を変化させて前記コレクトステアリングベクトルを計算することを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の到来波数検出装置。
【請求項5】
前記特徴量算出手段は、前記干渉波抑圧信号の電力、または周波数スペクトル、あるいは信号対雑音比(S/N)を特徴量として算出することを特徴とする請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の到来波数検出装置。
【請求項6】
前記特徴量算出手段は、高速フーリエ変換(FFT)回路で構成され、前記干渉波抑圧信号の波形全体の特徴量を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1項に記載の到来波数検出装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイアンテナを介した高周波信号の受信において、受信方位の検出に採用して好適な高周波信号の到来波数検出装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
アレイアンテナを備えた3次元レーダ等では、移相制御によるビーム走査を行い、送信パルスを一定周期で送信し、移動目標の運動に対応したドップラ周波数の目標反射信号を受信して目標位置の検出が行われる。
【0003】
その3次元レーダでは、目標反射信号から、目標の位置する方位を検出するために、図2に示す方位検出装置が組み込まれ、受信信号の到来方位の角度測定、すなわち測角が行われる。
【0004】
図2に示したように、従来の方位検出装置は、アレイ状に配列されたn(複数)個のアンテナ1(11〜1n)で目標反射信号を受信し、その受信高周波信号は、各アンテナ1(11〜1n)に対応して接続された受信回路のA/D変換器2(21〜2n)にそれぞれ供給される。
【0005】
A/D変換され、ディジタル化された受信高周波信号は、相関行列演算器31に供給される。
【0006】
相関行列演算器31は、各アンテナ1(11〜1n)における受信高周波信号に関する相関行列の演算から固有ベクトルと固有値とを算出し、算出された固有ベクトルは測角演算器32に供給され、また同じく算出された固有値は到来波数検出器33に供給される(例えば、非特許文献3参照。)。
【0007】
測角演算器32では、下記(1)式で示されるMUSIC( MUltiple SIgnal Classification )法のアルゴリズムによる測角演算により、受信された受信高周波信号毎にその到来方位を検出することができる。(例えば、同じく非特許文献3参照。)。
【数1】


【0008】
但し、
MU MUSICスペクトルの評価関数
α(θ) 方向ベクトル
固有ベクトルと到来信号数から決定される雑音部分空間
複素共役転置
α(θ) α(θ)の複素共役転置
すなわち、測角演算器32は、相関行列演算器31から供給された固有ベクトルと各アンテナ1(11〜1n)の配置位置により定まる方向ベクトルとで定義されるMUSICスペクトルの評価関数PMU の値が、各アンテナ1(11〜1n)の配置位置により定まる方向ベクトルα(θ)と実際に受信された高周波信号の到来方向とが一致したときに、評価関数のスペクトラム(信号強度)が到来(角度)方向に鋭い極値(ピーク)を示すことを利用して到来方向の検出、すなわち測角が行われる。
【0009】
測角演算器32における、MUSIC法のアルゴリズムによる受信高周波信号(到来波)の方位検出では、上記(1)式から分かるように、固有ベクトルと受信信号数(到来波数)から決定される雑音部分空間E を信号部分空間から分離する必要がある。
【0010】
そこで、雑音部分空間Eを信号部分空間から分離するために、到来波数検出器33において検出された受信高周波信号数(すなわち、到来波数)が測角演算器32に供給される。
【0011】
到来波数検出器33では、相関行列演算器31で算出された固有値と、下記(2)及び(3)式で示される因子分析という手法が用いられたMDL(Minimum Description Length)規範やAIC(Akaike Information Criterion)規範の評価関数を用いて、ほぼ同時に受信される到来波数の推定または検出が行われる。
【数2】


【数3】


【0012】
但し、
MDL(k) MDL規範の評価関数
AIC(k) AIC規範の評価関数
N 相関行列計算に使用したサンプル数
相関行列の固有値を大きさの大きい方から順に並べたときのi番目の固有値
p 相関行列の固有値の個数
【非特許文献1】福江, 畝田, 外園, 「レーダ信号処理におけるフーリエ係数を用いたMUSIC法による分離・測角性能の改善」 信学論 Vol.J85-B, no.12, pp.2380-2388 Dec. 2002.
【非特許文献2】M. Wax and T. Kailath,「 Detection of signals by information theoretic criteria」 IEEE Trans. Acoustics, Speech and Signal Processing, Vol. ASSP-33, no.2, pp.387-392, Apr. 1985.
【非特許文献3】R. O. Schmidt, 「Multiple Emitter Location and Signal Parameter Estimation」 IEEE Trans. Antennas and Propagation, Vol. AP-34, no3, pp276-280, Mar. 1986.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
MUSIC法のアルゴリズムを採用して受信高周波信号の到来方位を検出する従来の測角演算回路では、到来波数検出器33からの到来波数の検出を得て、信号部分空間と雑音部分空間とを分離して測角操作が行われる。
【0014】
そこで到来波数検出器33では、上記のように、因子分析という手法が用いられたMDL規範等の評価関数は、アレイ状のアンテナ間の相関に基づくので、ホワイトノイズ(白色雑音)のように、複数のアンテナ間において無相関な雑音環境のもとではともかく、空電雑音や干渉波等のように複数のアンテナ間で相関を有したノイズが受信される環境のもとでは、目的とする到来波数を正確に検出できないという欠点があった。
【0015】
そこで本発明は、干渉波等の雑音がアレイアンテナ間で相関を有して受信される環境下においても、到来数をより正確に検出可能な到来波数検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の到来波数検出装置は、アレイ状に配列され、高周波信号を受信する複数のアンテナと、これら複数のアンテナにそれぞれ接続され、受信された前記高周波信号をA/D変換する複数のA/D変換器と、これら複数のA/D変換器に共通接続され、アダプティブアレーにより前記受信された高周波信号の到来方位を検出する方位検出手段と、この方位検出手段により到来方位が検出された受信高周波信号の方向ベクトルに基づき、求まるコレクトステアリングベクトルを信号数に応じて計算する計算手段と、この計算手段により計算された前記コレクトステアリングベクトルの方位方向を予備知識とした方向拘束付出力電力最小化法(DCMP)のアルゴリズムにより、前記複数のアンテナのアンテナパターンに対する最適ウェイトを算出するウェイト算出手段と、このウェイト算出手段で算出した最適ウェイトWoptと前記複数のA/D変換器から出力された受信高周波信信号とを乗算して干渉波抑圧信号を出力する乗算手段と、この乗算手段から出力された前記干渉波抑圧信号の特徴量を算出する特徴量算出手段と、この特徴量算出手段で算出された前記特徴量を評価する評価手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
アレイ状に配置されたアンテナにより高周波信号を受信し、アダプティブヌルステアリングにより干渉波抑圧信号を出力するとき、実形成される受信アンテナパターンと理想とされる設計上の受信アンテナパターンとの間に誤差を生ずるのは避けられず、その両者間の誤差に起因して、干渉波抑圧に誤差が発生する。
【0018】
そこで、現実の受信アンテナパターンと設計上の受信アンテナパターンとの間の誤差を補正し、正しい測角を行なうべく、到来方向を決めるコレクトステアリングベクトルa(θd)を表した下記(4)式の評価式を用いる手法が知られている。(例えば、[非特許文献4]「IEEE TRANSACTIONS ON SIGNAL PROCESSING 」VOL.42.NO.6.JUNE 1994 pp1543-1547 参照。)。
【0019】
a(θd)=(I-V)b(θd) ・・・(4)
但し、
I : 単位行列
: 雑音空間部分の固有ベクトル
H : Vの複素共役転置
b(θd): 補正前のステアリングベクトル
上記(4)式において、仮の到来波数を設定し、アンテナ1の数nを(例えば、n=10)とし、到来波数Sを3とすると、雑音空間の固有ベクトルV における行列の次元(N)は (n−S)=7となるから、雑音空間の固有ベクトルV における行列の次元(N)は、(10−3=)7次元の行列式となる。
【0020】
また、方向拘束付出力電力最小化法(DCMP:Directionally Constrained Minimization of Power、以下DCMPと称する)によるアレイ信号処理アルゴリズムにより、最適ウェイト(ベクトル)Woptを得るアダプティブビームフォーミングでは、受信電波の到来方向を予備知識として持つ必要があることが知られている。(例えば、[非特許文献5]菊間 信良著 「アレイアンテナによる適応信号処理」科学技術出版 1999 、参照)。
【0021】
そこで本発明は、DCMPのアルゴリズムにより最適ウェイトWoptを算出して、干渉波抑圧信号を出力するとき、上記(4)式の共分散行列を指針として、現実の受信アンテナパターンと理想上の受信アンテナパターンとの間の誤差が正しく補正されたときにはじめて干渉波の除去ないしは抑圧が適正に行なわれ、かつコレクトステアリングa(θd)は、設定した到来波数、すなわち行列の次元を規定する受信信号数に応じて求められることに着目してなされたもので、その行列の次元を規定した設定受信信号数が正しいか否かを干渉波抑圧信号の特徴点から判定するものである。
【0022】
すなわち、上記(4)式で表されたコレクトステアリングベクトルa(θd)では、到来方位のアンテナパターン、すなわち方向ベクトルCに当て嵌め補正され、到来波数が正しいか否かによって特徴量に差が生ずる(例えば、上記
【非特許文献4】p90.参照。)。
【0023】
そこで、本発明の到来波数検出装置は、アダプティブアレーにより到来方位を検出する方位検出手段と、検出された受信高周波信号の方位ベクトルに基づくコレクトステアリングベクトルを計算する計算手段と、計算されたコレクトステアリングベクトルの方位方向を予備知識としたDCMPのアルゴリズムにより最適ウェイトを算出するウェイト算出手段と、算出した最適ウェイトと受信高周波信信号とを乗算して干渉波抑圧信号を出力する乗算手段と、出力された干渉波抑圧信号の特徴量を算出する特徴量算出手段とを具備し、干渉波抑圧信号の評価手段における特徴量の評価から、受信信号数、すなわち到来波数を正確に判定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明による到来波数検出装置の一実施例を、図1を参照して詳細に説明する。なお、到来波数検出装置は方位測定装置への組み込みに適したものであるから、図2に示した従来の方位測定装置と同一構成には同一符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0025】
すなわち、この実施例の到来波数検出装置は、目標反射信号等の高周波信号を受信するアレイ状に配列されたn(複数)個のアンテナ1(11〜1n)と、各アンテナ1(11〜1n)に対応して接続されたアナログ/ディジタル(A/D)変換回路2(21〜2n)と、各A/D変換回路2(21〜2n)においてディジタル化された受信高周波信号を導入し、アダプティブヌルステアリングにより、受信高周波信号の到来方位を検出する方位検出回路4と、この方位検出回路4により検出される受信信号の到来方位に基づき、アンテナパターンにおける到来方向のコレクトステアリングベクトルを上記(4)式により示される評価式を指針として計算する計算回路5と、この計算回路5により計算された固有ベクトルを有するアンテナパターンに関し、DCMPのアルゴリズムにより最適ウェイトWoptを算出するウェイト算出回路6と、このウェイトベクトル算出回路6で算出した最適ウェイトWoptと複数のA/D変換器2(21〜2n)からのディジタル化された受信高周波信号とを乗算して干渉波抑圧信号を出力する乗算回路7と、この乗算回路7から出力された干渉波抑圧信号の波形全体の特徴量、すなわち例えば前記干渉波抑圧信号の電力、または周波数スペクトル、あるいは信号対雑音比(S/N)を算出すべく高速フーリエ変換(FFT)回路で構成された特徴量算出回路8と、この特徴量算出回路8で算出された特徴量を評価する評価回路9とを備え、仮信号数設定回路10で適宜設定された受信信号数に基づいて出力される特徴量算出回路8からの出力を評価回路9が評価するように構成されている。
【0026】
上記構成により、方位検出回路4において形成された方位アンテナパターンにより、例えばひとつの受信高周波信号(到来波)を受信したときに、乗算回路7は最適ウェイトWoptと受信高周波信号との乗算により、コレクトステアリングa(θ)で表される所望方向以外の信号(干渉波)が抑圧された信号波形を出力し、FFTからなる特徴量算出回路8は、出力信号波形全体の特徴量を算出する。
【0027】
そこで、評価式計算回路5における(4)式の計算を順次、到来波数Sを変えて行い、特徴量算出回路8は、その到来波数の変化に基づき乗算回路7から出力されたコレクトステアリングa(θd)で表される干渉波抑圧信号波形全体の特徴量を算出して、評価回路9に供給する。
【0028】
すなわち、評価式計算回路5での上記(4)式で表されたコレクトステアリングベクトルa(θd)では、到来方位のアンテナパターン、すなわち方向ベクトルCに当て嵌め補正されるから、到来波(受信信号)数設定回路10で設定された到来波数が正しいか否かによって、特徴量算出回路8から出力の特徴量に差が生ずる。
【0029】
従って、本実施例において、到来波数設定回路10で設定された到来波数Sにおける特徴量算出回路8の出力特徴量を評価回路9で評価し、特徴量が到来波数Sが正しく設定された場合の特徴量と、正しい到来波数Sとは異なって設定された場合の特徴量とを相対評価することで正しい到来波数を検知できる。
【0030】
上記説明のように、本実施例に係る到来波数検出装置によれば、到来波数が正しく設定されてはじめて、上記(4)式における補正が正しく行なわれ、それに伴い、評価回路9における特徴量の評価では、例えば特徴量を表す出力電力が最も大であるときの設定到来波数、あるいは周波数スペクトラムの信号強度のピークが最も大となったときの設定到来波数、あるいはS/Nが最も良好なときの設定到来波数を検出することで、到来波数を正確に判定し検出できる。
【0031】
従って、本実施例に係る到来波数検出装置を方位検出に採用したとき、方位検出装置における到来波の方位を分解能良く高精度に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による到来波数検出装置の一実施例を示した構成図である。
【図2】従来の到来波数検出器を組み込んだ方位測定装置の構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1(11〜1n) アンテナ
2 A/D変換器
4 方位検出回路(DBF)
5 評価式計算回路(計算手段)
6 ウェイト算出回路(ウェイト算出手段)
7 乗算回路(乗算手段)
8 特徴量算出回路(特徴量算出手段)
9 評価回路(評価手段)
10 到来波数(受信信号数)設定回路(設定手段)
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和

【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦

【識別番号】100100929
【弁理士】
【氏名又は名称】川又 澄雄

【識別番号】100108707
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 友之

【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和

【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一

【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄


【公開番号】 特開2008−8781(P2008−8781A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−180142(P2006−180142)