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【発明の名称】 追尾処理装置及びその方法並びにプログラム
【発明者】 【氏名】今泉 万寿美

【要約】 【課題】追尾フィルタに入力する追尾信号を有効に活用し、また各センサに対する時刻毎のそれぞれの潮流の影響を考慮して目標状態量の推定を精度良く行う。

【構成】追尾信号として実際には存在しない遅延時刻(t−1)から現在時刻tまでの追尾信号、すなわち周波数情報f3(t−1),f3(t),f2(t)を、予測追尾信号外挿処理6において目標の状態量から予測し、この予測した周波数情報を新たな周波数情報として追尾フィルタ3に供給することにより、現在時刻tにおける周波数情報を得る。また、浮遊するGPS搭載のセンサから時々刻々の各センサ位置を正確に入手し、センサ毎、時刻毎の潮流情報u3(t−1),u3(t),u2(t)を周波数情報に加えて追尾信号として追尾処理を行う。時間遅延に対して追尾信号を予測する際、目標の状態量に加え、得られた各センサの潮流情報を含めて、周波数情報を算出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力間に互いに遅延時間差が生じる複数のセンサによって、目標の運動により発せられる信号を受波して得られる観測追尾信号を追尾フィルタに入力して、目標状態量を出力するようにした追尾処理装置であって、
前記観測追尾信号のうち実際に存在する遅延時刻の信号を利用して、実際には存在しない前記遅延時刻の信号より新しい時刻の信号を予測する予測手段と、
この予測追尾信号を新たな追尾信号として前記追尾フィルタへ入力する入力手段とを含むことを特徴とする追尾処理装置。
【請求項2】
前記観測追尾信号は、前記センサの各出力を周波数分析することにより得られた周波数情報であり、前記センサの各々の時々刻々の位置から得られた潮流情報を前記追尾信号に付与するようにしたことを特徴とする請求項1記載の追尾処理装置。
【請求項3】
前記入力手段は、遅延時刻が同じ前記観測追尾信号及び前記予測追尾信号に対して前記潮流情報を付与して追尾信号セットとして生成して前記追尾フィルタに入力するよう構成されており、
前記予測手段は、前記追尾フィルタから出力された目標状態量を用いて、観測追尾信号として実際には存在しない時刻の追尾信号を予測して前記予測追尾信号として前記第二の手段へ渡すよう構成されており、
前記入力手段及び前記予測手段に対して、一番古い時刻の信号から現在時刻の信号まで順次繰り返し処理するよう制御する制御手段を、更に含むことを特徴とする請求項1または2記載の追尾処理装置。
【請求項4】
前記入力手段は、遅延時刻が同じ前記観測追尾信号及び前記予測追尾信号に対して前記潮流情報を付与して追尾信号セットとして生成して前記追尾フィルタに入力するよう構成されており、
前記予測手段は、前記追尾フィルタから出力された時刻における目標状態量を用いて、観測追尾信号として実際には存在しない時刻の追尾信号を予測して前記予測追尾信号として前記入力手段へ渡すよう構成されており、
前記入力手段及び前記予測手段に対して、一番古い時刻の信号から現在時刻の直前の時刻の信号まで順次繰り返し処理するよう制御する制御手段と、
前記直前の時刻の信号を入力としたときの前記追尾フィルタから出力された前記目標状態量に対して、時間遷移処理を行って現在時刻の状態目標量を算出する時間遷移処理手段とを、更に含むことを特徴とする請求項1または2記載の追尾処理装置。
【請求項5】
前記追尾信号セットが前記観測追尾信号のみからなる場合に、前記追尾フィルタの追尾パラメータを格納する格納手段を更に含み、前記追尾フィルタの前記現在時刻に続く追尾パラメータとして、前記格納手段に格納されたパラメータを用いることを特徴とする請求項3または4記載の追尾処理装置。
【請求項6】
出力間に互いに遅延時間差が生じる複数のセンサによって、目標の運動により発せられる信号を受波して得られる観測追尾信号を追尾フィルタに入力して、目標状態量を出力するようにした追尾処理方法であって、
前記観測追尾信号のうち実際に存在する遅延時刻の信号を利用して、実際には存在しない前記遅延時刻の信号より新しい時刻の信号を予測する予測ステップと、
この予測追尾信号を新たな追尾信号として前記追尾フィルタへ入力する入力ステップとを含むことを特徴とする追尾処理方法。
【請求項7】
前記観測追尾信号は、前記センサの各出力を周波数分析することにより得られた周波数情報であり、前記センサの各々の時々刻々の位置から得られた潮流情報を前記追尾信号に付与するようにしたことを特徴とする請求項6記載の追尾処理方法。
【請求項8】
前記入力ステップは、遅延時刻が同じ前記観測追尾信号及び前記予測追尾信号に対して前記潮流情報を付与して追尾信号セットとして生成して前記追尾フィルタに入力するステップを有し、
前記予測ステップは、前記追尾フィルタから出力された目標状態量を用いて、観測追尾信号として実際には存在しない時刻の追尾信号を予測して前記予測追尾信号として前記入力ステップへ渡すステップを有しており、
前記入力ステップ及び前記予測ステップに対して、一番古い時刻の信号から現在時刻の信号まで順次繰り返し処理するよう制御する制御ステップを、更に含むことを特徴とする請求項6または7記載の追尾処理方法。
【請求項9】
前記入力ステップは、遅延時刻が同じ前記観測追尾信号及び前記予測追尾信号に対して前記潮流情報を付与して追尾信号セットとして生成して前記追尾フィルタに入力するステップを有し、
前記予測ステップは、前記追尾フィルタから出力された時刻における目標状態量を用いて、観測追尾信号として実際には存在しない時刻の追尾信号を予測して前記予測追尾信号として前記入力ステップへ渡すステップを有し
前記入力ステップ及び前記予測ステップに対して、一番古い時刻の信号から現在時刻の直前の時刻の信号まで順次繰り返し処理するよう制御する制御ステップと、
前記直前の時刻の信号を入力としたときの前記追尾フィルタから出力された前記目標状態量に対して、時間遷移処理を行って現在時刻の状態目標量を算出する時間遷移処理ステップとを、更に含むことを特徴とする請求項6または7記載の追尾処理方法。
【請求項10】
前記追尾信号セットが前記観測追尾信号のみからなる場合に、前記追尾フィルタの追尾パラメータを格納する格納手段を設けておき、前記追尾フィルタの前記現在時刻に続く追尾パラメータとして、前記格納手段に格納されたパラメータを用いることを特徴とする請求項8または9記載の追尾処理方法。
【請求項11】
出力間に互いに遅延時間差が生じる複数のセンサによって、目標の運動により発せられる信号を受波して得られる観測追尾信号を追尾フィルタに入力して、目標状態量を出力するようにした追尾処理方法をコンピュータにより実行させるためのプログラムであって、
前記観測追尾信号のうち実際に存在する遅延時刻の信号を利用して、実際には存在しない前記遅延時刻の信号より新しい時刻の信号を予測する処理と、
この予測追尾信号を新たな追尾信号として前記追尾フィルタへ入力する処理とを含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は追尾処理装置及びその方法並びにプログラムに関し、特に出力間に互いに遅延時間差が生じる複数のセンサによって、目標の運動により発せられる信号を受波して得られる観測追尾信号を追尾フィルタに入力して、目標状態量を出力するようにした追尾処理方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
目標のリアルタイムな追尾において、目標の運動により発せられる信号の周波数情報を追尾信号とする場合、そのデータに時間遅延が発生する。周波数情報は従来からFFT(Fast Fourier Transform)処理により算出するのが一般的である。しかしながら、例えば、0.1Hzの周波数分解能を得ようとする場合、必要なデータ時間長は10秒となり、その1/2である5秒の時間遅延が見込まれる。つまり、時刻tに出力された周波数情報は時刻(t−5秒)の情報にもかかわらず、時刻tにおける目標推定位置を出力していることになる。
【0003】
これに関して、複数のセンサの各々から得られた信号が同じ周波数分解能で出力されれば信号の時刻は整合されているので、問題ない。しかし、周波数分解能が異なるものがある場合(例えば、0.1Hzと0.2Hz)、周波数は5秒前と2.5秒前(0.2Hzの時のデータ時間長は5秒)の信号になり、時間整合されないのである。よって、各センサの出力信号である追尾信号をそのまま使用すれば、追尾精度が悪くなる。
【0004】
この問題を回避するために、従来、図9に示すように、各センサから得られた追尾信号のうち、時刻tに対し、時間遅延があれば一番古い時刻の追尾信号に合わせて追尾信号セットとし、追尾フィルタに入力することにより、目標の状態量(位置・速度等)を推定している。そして、時刻(t−2)の状態量から時刻tの状態を算出するために、遅延時間分目標位置を遷移させることにより、現在時刻における目標の状態量を出力している。
【0005】
図9を用いてより詳述する。図9は従来技術を説明するためのイメージ図である。図9を参照すると、複数のセンサ#1〜#3(本例では、3個とする)によるセンサ出力は信号処理部101へ入力されて各センサの観測追尾信号が生成されて出力される。各センサの追尾信号は、図示する如く、目標の運動により発せられる周波数情報fn(t)と、各センサが受ける潮流情報un(t)とからなる。なお、nはセンサの番号を示しており、図9の例では、n=1〜3であり、tは現在時刻を示す。また、潮流情報un(t)は、1時刻前と現在取得したセンサ位置から1時刻分のセンサの移動量である。
【0006】
図9の例では、各センサ#1〜#3の周波数分解能に差があり、時刻tでは、センサ#1による観測追尾信号はf1(t),u1(t)であり、センサ#2による観測追尾信号はf2(t−1),u2(t−1)であり、センサ#3による観測追尾信号はf3(t−2),u3(t−2)である。また、時刻t−1及び時刻t−2における各センサによる観測追尾信号はそれぞれ図示の如くなる。
【0007】
このような状態において、時刻tに対して、一番古い時刻t−2の追尾信号に合わせて、追尾信号セットとして、追尾フィルタ3へ入力するようにし、この追尾フィルタ3において、Fに示す如く、時刻t−2の目標の状態量X(t−2)を推定している。そして、時刻t−2の状態量から時刻tの状態量X(t)を算出するために、Gに示すように、遅延時間分目標位置を遷移させることにより、現在時刻における目標の状態量(位置及び速度など)を出力するようになっている。
【0008】
また、海中等に浮遊するセンサを用いた場合、従来では、各センサ位置は固定として潮流の影響を考慮しないか、または全てのセンサに同一の潮流の影響があるとして追尾処理を行っている(図9において、u1=u2=u3)。しかし、実際には、各センサは独立した潮流の影響が存在するために、各センサに対して、各時刻毎に、それぞれ異なる潮流の影響があって、追尾精度は悪くなる。
【0009】
なお、関連技術としては、特許文献1〜5があげられる。
【特許文献1】特開2000−241522号公報
【特許文献2】特開2002−267745号公報
【特許文献3】特開2004−037262号公報
【特許文献4】特開平8−334298号公報
【特許文献5】特開平10−062511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来技術の第一の問題点は、各追尾信号間に時間遅延差がある場合、一番古い時刻の追尾信号セットを入力とするために、現在時刻に近い情報は使用されず、追尾精度が落ちる点である。その理由は、追尾信号の時刻整合を図るために、一番古い情報のみに頼ることとなり、精度の良い新しい情報が得られている場合でもその信号が有効利用できないからである。
【0011】
また、第二の問題点は、水中目標の追尾において、全てのセンサ・時刻に同一の潮流の影響があるとして追尾処理を行う場合、追尾精度が落ちる点である。その理由は、実際には各センサに対して各時刻毎に、それぞれに独立した潮流の影響があるにもかかわらず、全てのセンサで同一時刻に同一の潮流の影響があるとして追尾処理を行うからである。
【0012】
本発明の目的は、追尾フィルタに入力する追尾信号を有効に活用すること及び各センサに対する時刻毎のそれぞれの潮流の影響を考慮することにより、目標状態量(位置・速度等)の推定を精度良く行うことが可能な追尾処理装置及びその方法並びにプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明による追尾処理装置は、出力間に互いに遅延時間差が生じる複数のセンサによって、目標の運動により発せられる信号を受波して得られる観測追尾信号を追尾フィルタに入力して、目標状態量を出力するようにした追尾処理装置であって、前記観測追尾信号のうち実際に存在する遅延時刻の信号を利用して、実際には存在しない前記遅延時刻の信号より新しい時刻の信号を予測する予測手段と、この予測追尾信号を新たな追尾信号として前記追尾フィルタへ入力する入力手段とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明による追尾処理方法は、出力間に互いに遅延時間差が生じる複数のセンサによって、目標の運動により発せられる信号を受波して得られる観測追尾信号を追尾フィルタに入力して、目標状態量を出力するようにした追尾処理方法であって、前記観測追尾信号のうち実際に存在する遅延時刻の信号を利用して、実際には存在しない前記遅延時刻の信号より新しい時刻の信号を予測する予測ステップと、この予測追尾信号を新たな追尾信号として前記追尾フィルタへ入力する入力ステップとを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明によるプログラムは、出力間に互いに遅延時間差が生じる複数のセンサによって、目標の運動により発せられる信号を受波して得られる観測追尾信号を追尾フィルタに入力して、目標状態量を出力するようにした追尾処理方法をコンピュータにより実行させるためのプログラムであって、前記観測追尾信号のうち実際に存在する遅延時刻の信号を利用して、実際には存在しない前記遅延時刻の信号より新しい時刻の信号を予測する処理と、この予測追尾信号を新たな追尾信号として前記追尾フィルタへ入力する処理とを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の作用を述べる。追尾信号として実際には存在しない遅延時刻(t−1)から現在時刻tまでの追尾信号、すなわち周波数情報f3(t−1),f3(t),f2(t)を、予測追尾信号外挿処理において目標の状態量から予測し、この予測した周波数情報を新たな周波数情報として追尾フィルタに供給することにより、現在時刻tにおける周波数情報を得る。また、浮遊するGPS搭載のセンサから時々刻々の各センサ位置を正確に入手し、センサ毎、時刻毎の潮流情報u3(t−1),u3(t),u2(t)を周波数情報に加えて追尾信号として追尾処理を行う。時間遅延に対して追尾信号を予測する際、目標の状態量に加え、得られた各センサの潮流情報を含めて、周波数情報を算出する。
【発明の効果】
【0017】
本発明による第1の効果は、従来利用されていなかった最新情報(最も古い時刻以降にある情報)を利用し、現在時刻での目標状態量の推定精度を向上できることである。その理由は、時間遅延が大きく、情報として古い追尾信号を利用して、遅延時刻から現在までの追尾信号を予測し、新たな追尾信号を生成して追尾フィルタに入力することにより、より正確な状態量を推定できるためである。
【0018】
本発明による第2の効果は、従来、ブイ位置は固定又はブイ間の相対位置は固定として推定されていた追尾状態を、潮流状態も含めて推定し、現在時刻での目標状態量の推定精度を向上できることである。その理由は、センサ毎の時々刻々の潮流情報を付与して追尾処理を行うこと、及び潮流状態を考慮して遅延時間分の予測追尾信号を生成し、追尾フィルタに入力することにより、より正確な状態量を推定できるためである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、図面を参照して本発明の実施例について説明する。図1は本発明の実施例の機能ブロック図である。図1を参照すると、本発明の実施例は、図示せぬセンサから得られる観測データを信号処理し追尾信号を生成すると同時に、GPSから得られる位置情報から潮流情報を算出する信号入力部1と、生成された各センサの追尾信号を周波数分解能等の違いにより発生する遅延時間に合わせて潮流情報を付与し、追尾信号セットを生成する時間整合処理部2と、入力された追尾信号から追尾結果を算出する追尾フィルタ3と、生成された追尾信号セットが観測データのみから得られたものかどうかを判断する全観測追尾信号判断部4とを含んでいる。
【0020】
更に、本発明の実施例は、追尾フィルタ3から出力された追尾結果に対し、現在時刻から遅延しているかどうかを判断する現在時刻判断部5と、遅延している場合、実際には存在しない遅延時刻から1時刻進めた追尾信号を潮流情報を含めて予測し、予測した追尾信号を新たな追尾信号として入力する予測追尾信号外挿処理部6と、観測データのみから生成された追尾信号セットにより算出された追尾フィルタ出力(追尾パラメータ)を格納する追尾パラメータ格納部7と、追尾結果を出力する追尾結果出力部8と、これら各部を制御する制御部(CPU)9と、この制御部の制御動作をプログラムとして格納したメモリ10とを含んで構成されている。
【0021】
図2は本発明の動作イメージ図であり、図1及び図2を参照すると、信号入力部1は、複数のセンサ#1〜#n(nはセンサ番号)が受波した信号を、それぞれ周波数分析することにより、観測周波数情報f1〜fnを取得する。また、各センサが受ける潮流情報を算出しu1〜unを取得する。潮流情報の算出は、1時刻前と現在取得したセンサ位置から1時刻分のセンサの移動量を求める。もし、短い時間内で潮流情報に大きなばらつきがある場合、積分等を行い平滑化を行う。
【0022】
時間整合処理部2は、取得した各センサの信号(以下、観測追尾信号と呼ぶ)に対して先ず音波伝播時間分の補正を行い、次に周波数分解能の違いにより発生する遅延時間に合わせて潮流情報を付与し、遅延時刻が揃っている信号群を1セットとして追尾フィルタ3に入力する。追尾フィルタ3は、例えば拡張カルマンフィルタや最小二乗フィルタを想定する。
【0023】
追尾フィルタ3から出力された目標の推定状態量をXとする。一般的に、Xは成分x(目標位置のx軸成分)、y(目標位置のy軸成分)、vx(目標速度のx軸成分)、vy(目標速度のy軸成分)、f0(目標の運動により発された真の周波数)を含むものである。また、追尾パラメータとして目標状態量及び入力信号の分散情報も合わせて出力される。以下、この目標状態量Xと追尾パラメータを用いて説明することにする。
【0024】
追尾フィルタ3の出力は全観測追尾信号判断部4に入力される。この判断部4は状態量Xが全て観測追尾信号のみからなる追尾信号セットにより得られたものかどうかを判断し、そうであれば、状態量Xと追尾パラメータとを一時的に追尾パラメータ格納部7に格納して現在時刻判断部5へ処理を渡す。そうでなければ、追尾パラメータは追尾パラメータ格納部7に格納することなく現在時刻判断部5へ処理移行する。
【0025】
現在時刻判断部5は、追尾フィルタ出力が現在時刻であるかどうかを判断する。現在時刻tであれば、追尾フィルタ出力を追尾結果として出力し、次の追尾信号入力(t+1)を待つ。時刻(t+1)の追尾信号が入力された場合、同処理を繰り返す。一方、追尾フィルタ出力が現在時刻tではない場合、追尾フィルタ出力を予測追尾信号外挿処理部6へ入力する。
【0026】
予測追尾信号外挿処理部6は、追尾フィルタ出力から予測追尾信号を算出する。図2の本発明の動作イメージ図に示すように、時刻tで得られた最古の追尾信号の周波数をfn(t−2)とすると、1時刻進めたfn(t−1)を以下の式(1)及び式(2)によって算出する。
【0027】
【数1】


【0028】
【数2】


【0029】
但し、例えばセンサ#1、センサ#2のS/Nが悪く、これに対してセンサ#3のS/Nが非常に良かった場合等全ての信号を用いて追尾信号を予測するよりも、センサ#3の情報のみを用いて予測追尾信号を算出する方が精度が高いと判断される場合は、センサ3の情報のみから予測追尾信号を算出する。これは、例えば最小2乗法等を用いて算出する。ここでこの判断は、各センサが得ている信号の観測誤差分散及び目標の状態量に対する誤差分散等から判断する。
【0030】
次に、算出されたfn(t−1)は新たに追尾信号として時間整合処理部2へ入力される。時間整合処理部2は時刻(t−1)の追尾信号セットを生成し追尾フィルタ部3に入力する。これを現在時刻tまで繰り返す。追尾フィルタ出力が現在時刻tまで達したら、現在時刻tの追尾結果として出力し時刻(t+1)での観測追尾信号入力を待つ。
【0031】
ここで、予測追尾信号外挿処理を行った場合、時刻(t+1)での追尾フィルタに使用する追尾パラメータは、繰り返しで得られた追尾結果に付随したパラメータではなく、追尾パラメータ格納部7に格納された追尾パラメータ(観測追尾信号セット:時刻(t−2))を用いる。これにより、観測追尾信号のみで計算された信頼性の高い追尾パラメータを用いることになるため、もし予測追尾信号外挿処理によって得られた予測追尾信号の精度が悪い場合でも、この結果を引きつぐことがないので、従来の追尾性能を下回ることなく追尾が可能となる。
【0032】
以下に、センサが#1〜#3の3個の場合について、図2を参照して説明する。信号入力部1は図示せぬ複数のセンサから得られた観測データ(観測追尾信号)から周波数情報fn(t)及び潮流情報un(t)を算出する。各センサにはGPSが搭載されているものとし、各時刻毎にセンサ位置を取得できるようになっているものとする。
【0033】
追尾信号情報としては、周波数分析によって得られる周波数情報や、積分のかかった方位情報等を想定する。また潮流情報は1時刻前と現在取得したセンサ位置から1時刻分のセンサの移動量を求めることにより、算出される。もし、短い時間内で潮流情報に大きなバラツキがあれば、積分などを行って平滑化を行う。なお、センサ#1は信号処理による時刻遅延なし、センサ#2は(t−1)の時刻遅延、センサ#3は(t−2)の時刻遅延を有するものとする。
【0034】
時間整合処理部2は、時刻tに3つの観測追尾信号が入力されると、観測追尾信号のうち一番古いデータ時刻(t−2)に合わせた追尾信号セットを図2に示す様に生成し、追尾フィルタ3へ供給する。追尾フィルタ3は、Aに示すように、時刻(t−2)における目標状態量Xと追尾パラメータとを出力する。
【0035】
追尾フィルタ3として、拡張カルマンフィルタ(非線形フィルタ)とすると、その内部パラメータ(追尾パラメータ)としては、状態量を示す行列X(出力である位置情報x,y、速度情報vx,vy、目標の運動により発せられる真の周波数f0で示される)、この状態量の誤差分散を示す行列、及び観測値の誤差分散を示す行列(入力信号分散量)がある。これらの値をフィルタ3が保持しており、通常は、観測値が入力される毎に、これらパラメータ値は更新されるようになっている。
【0036】
全観測追尾信号判断部4は、この追尾フィルタ出力が観測追尾信号のみからなるセット(予測追尾信号外挿処理部6により予測された予測追尾信号を含まないセット)により出力されていると判断した場合、追尾パラメータ格納部7に追尾パラメータを格納する。現在時刻判断部5は、追尾フィルタ出力が現在時刻tのものではないことを判断し、予測追尾信号外挿処理部6に追尾フィルタ出力を供給する。この予測追尾信号外挿処理部6は、1時刻だけ進めたセンサの(t−2)の予測追尾信号を算出し、時間整合処理部2へ供給する。
【0037】
時間整合処理部2はデータ時刻(t−1)に合わせた追尾信号セットを追尾フィルタ3へ供給する。追尾フィルタ3はBに示す時刻(t−1)における目標状態量Xと追尾パラメータを出力する。全観測追尾信号判断部4は、追尾フィルタ出力が予測追尾信号を含んだデータセットにより出力されているものと判断し、当該出力を現在時刻判断部5へ供給する。この判断部5は追尾フィルタ出力が現在時刻tのものではないと判断し、予測追尾信号外挿処理部6に追尾フィルタ出力を供給する。
【0038】
予測追尾信号外挿処理部6は、更に1時刻だけ進めたセンサ#2,#3の時刻tの予測追尾信号を算出し、時間整合処理部2へ供給する。時間整合処理部2はデータ時刻tに合わせた追尾信号セットを追尾フィルタ3へ供給する。追尾フィルタ3はCに示す時刻tにおける目標状態量Xと追尾パラメータを出力する。全観測追尾信号判断部4は、追尾フィルタ出力が予測追尾信号を含んだセットにより出力されているものと判断し、現在時刻判断部5へこの出力を供給する。この判断部5は、追尾フィルタ出力が現在時刻tのものであることを判断し、これを最終的な時刻tにおける追尾結果として、追尾結果出力部8を介して出力する。
【0039】
時刻(t+1)に新たな観測追尾信号が入力されると、追尾パラメータ格納部7に格納されている追尾パラメータを用いて上述の処理を繰返し、時々刻々の追尾結果を出力するようになっている。
【0040】
次に、本発明の実施例の動作の詳細を図3のフローチャートを参照しつつ説明する。時刻tに、信号入力部1は各センサから得た観測データに対して、指定されたモードで周波数分析を行い周波数情報を算出する。また、同時に各センサ位置を取得し、潮流情報を算出する。算出された結果は、時間整合処理部2に入力される(ステップS1)。
【0041】
ここで、各観測値に対して異なる周波数分析モードが設定されていた場合、時間整合処理部2には各センサ間で時間遅延のある観測追尾信号が入力される。この場合、時間整合処理部2は観測追尾信号のうち一番古いデータ時刻(例としてt−2)に合わせた追尾信号セットを生成し、追尾フィルタ3に入力する(ステップS2)。
【0042】
追尾フィルタ3は時刻(t−2)における目標状態量Xと追尾パラメータを出力する(ステップS3)。ここで、判断部4はこの追尾フィルタ出力が観測追尾信号セットにより出力されているものと判断し(ステップS4)、追尾パラメータ格納部7に追尾パラメータを保存する(ステップS5)。次に、判断部5は追尾フィルタ出力が現在時刻tのものではないことを判断し、予測追尾信号外挿処理部6に追尾フィルタ出力を入力する(ステップS6)。予測追尾信号外挿処理部6は1時刻だけ進めたt−1の予測追尾信号(周波数情報)を算出する。算出された予測追尾信号は、時間整合処理部2へ入力される(ステップS7)。
【0043】
時間整合処理部2は、算出された予測追尾信号と時刻tまでに存在する観測追尾信号により、新たに時刻(t−1)の追尾信号セットを生成し、追尾フィルタ3に入力する。ここまでの処理を繰り返し、現在時刻tにおける追尾信号セットを追尾フィルタ部3に入力し、出力された結果が最終的な時刻tにおける追尾結果として出力される(ステップS8)。時刻(t+1)に新たな追尾信号(観測追尾信号)が入力されたら、追尾パラメータ格納部7に保存しておいた追尾パラメータを用いて、ここまでの処理を繰り返し、時々刻々の追尾結果を出力する。
【0044】
ここで、本発明手法を用いてシミュレーションを行った結果を図4及び図5のグラフに示す。図4のグラフは従来手法と本手法との比較を行ったものである。シミュレーション方法としては、センサ3本を用いて目標を追尾する場面を想定し、各センサが得る追尾信号として、模擬信号(方位情報及び周波数情報)を作成し、この信号に対して追尾処理を行った。ここで、センサ#1〜#3の周波数情報はそれぞれ分解能が異なるものとした。また信号のS/Nは比較的良いものと仮定した。
【0045】
追尾処理の手法としては、補正を行わない(時間補正しない)追尾方式、従来の追尾方式及び本発明手法による追尾方式を用いた。この3種類の追尾処理結果(位置情報)と正解位置とのズレ(=距離誤差)を測定することにより、評価を行った。なお、追尾フィルタは拡張カルマンフィルタを用いた。この結果より、補正がないものよりも補正を行っている2手法の結果の方が誤差が小さいことが分かる。また、従来手法と本発明手法を比較した場合、本発明手法による追尾結果は従来手法に比べて全体的に誤差が小さいことが分かる。
【0046】
特徴としては、従来手法では急に誤差が大きくなる箇所があるのに対し、本発明ではこの箇所が平滑化され良好な結果となっている。これは、一時的にセンサに観測誤差が大きい信号が入ってきた場合でも、遅延時間分予測追尾信号を作成し、従来方式よりも多く追尾フィルタを回すことによって目標状態量の誤差分散を小さくし、追尾誤差を小さくしたものと考えられる。
【0047】
図5は、S/Nが悪い状況下でも本発明手法が有効であるかを評価したものである。S/Nが悪い状況の場合、追尾が出来る最低限(2本)のセンサ以外のセンサ信号(3本目以降)を用いて追尾すると、3本目以降のセンサの誤差が起因し、追尾結果が悪くなることが考えられる。特に、本発明では、新たに信号を予測して追尾を行うために、予測追尾信号の誤差が正解値から大きく外れてしまうと、発散してしまうことも考えられる。
【0048】
そこで、S/Nの悪い状況下で、2本のセンサで追尾を行う場合と、3本のセンサにより本発明手法を用いて追尾処理を行う場合を比較した。ここで、3本目のセンサは2本のセンサよりも更にS/Nの悪い信号を与えてシミュレーションを行った。この結果より、S/Nが悪い3本目のセンサを用いた場合でも、2本のセンサで追尾するよりも誤差が小さいことがわかる。
【0049】
これは、たとえ観測誤差分散が大きな値をとったとしても、追尾フィルタにより状態量は収束していくために、比較的良好な予測追尾信号を作成することができ、且つ遅延時間分従来よりも多く追尾フィルタを回すことにより、目標状態量の分散を小さすることが出来るためと考えられる。特に、観測誤差分散値が大きくても適切なカルマンゲインを算出できる拡張カルマンフィルタ等を追尾フィルタに用いる場合に、より効果的であるといえる。以上の結果より、本発明手法の有効性が確認できることになる。
【0050】
図6は本発明の他の実施例の構成を示すブロック図であり、図1と同等部分は同一符号により示している。本例では、図1の構成に、時間遷移処理部11を追加したものであり、他は図1と同一である。
【0051】
図6を参照すると、時間整合処理部2に現在時刻tに得られた観測追尾信号のうち、現在時刻tのデータがない場合(図7のイメージ図に示す関係にある場合)、先の実施例と同様な処理を行い、最新のデータ時刻(t−1)まで予測追尾信号を外挿し、現在時刻判断部5に出力する。この判断部5は、追尾フィルタ出力が最新時刻のものであるかどうかを判断し、最新時刻(t−1)であれば、追尾フィルタ出力結果を時間遷移処理部11に入力する。この時間遷移処理部11は時刻(t−1)から現在時刻tまで時間遷移処理を行うことにより、時刻tにおける追尾結果を出力する。時間遷移は式(1)を用いる。
【0052】
次に、海中に浮遊するセンサ三本で受波があった場合の動作について、図8を用いて説明する。信号入力部1は、先の実施例と同様な処理を行うことにより、観測追尾信号及び潮流情報を算出する(ステップS1)。ここで、センサ#1は信号処理により(t−1)の時刻遅延、センサ#2は(t−2)の時刻遅延、センサ#3は(t−3)の時刻遅延をもつものとする。
【0053】
いま、時刻tに、3本分の信号が観測追尾信号として時間整合処理部2に入力されると、時間整合処理部2は観測追尾信号のうち一番古いデータ時刻(t−3)に合わせた追尾信号セットを生成し、追尾フィルタ3に入力する(ステップS2)。追尾フィルタ3は時刻(t−3)における目標状態量X(図7のE)と追尾パラメータを出力する(ステップS3)。
【0054】
全観測追尾信号判断部4は、この追尾フィルタ出力が観測追尾信号セットにより出力されているものと判断し、追尾パラメータ格納部7に追尾パラメータを保存する(ステップS4,S5)。次に、現在時刻判断部5は、追尾フィルタ出力が最新データ時刻(t−1)のものではないと判断し(ステップS6)、予測追尾信号外挿処理部6に追尾フィルタ出力を入力する。予測追尾信号外挿処理部6は1時刻だけ進めたセンサ3の時刻(t−2)の予測追尾信号を算出し、時間整合処理部2に出力する(ステップS7)。
【0055】
次に、時間整合処理部2はデータ時刻(t−2)に合わせた追尾信号セットを追尾フィルタ3に入力する。追尾フィルタ3は時刻(t−2)における目標状態量X(図7のA)と追尾パラメータを出力する。
【0056】
この後、データ時刻(t−1)まで、先の実施例と同様の繰り返し処理を行う。最新データ時刻(t−1)に達したら、判断部5は追尾フィルタ出力が最新データ時刻(t−1)のものであることを判断し(図7のB)、時間遷移処理部11に入力する。時間遷移処理部11は時間遷移処理により、図7のDに示すように、1刻分進めた時刻tの追尾結果を算出し(ステップS9)、これを最終的な現在時刻tにおける追尾結果として出力する(ステップS8)。
【0057】
時刻(t+1)に新たな観測追尾信号が入力されたら、追尾パラメータ格納部7に保存しておいた追尾パラメータを用いてここまでの処理を繰り返し、時々刻々の追尾結果を出力する。なお、上記の各実施例では、センサは三個としているが、2個以上であれば多数存在しても可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施例の機能ブロック図である。
【図2】本発明の一実施例の動作イメージ図である。
【図3】本発明の一実施例の動作を示すフローチャートである。
【図4】従来手法と本発明手法の距離誤差比較を示す図である。
【図5】S/Nが悪い状況における従来手法と本発明手法の距離誤差比較を示す図である。
【図6】本発明の他の実施例の機能ブロック図である。
【図7】本発明の他の実施例の動作イメージ図である。
【図8】本発明の他の実施例の動作を示すフローチャートである。
【図9】従来技術を説明するためのイメージ図である。
【符号の説明】
【0059】
1 信号入力部
2 時間整合処理部
3 追尾フィルタ
4 全観測追尾信号判定部
5 現在時刻判定部
6 予測追尾信号外挿部
7 追尾パラメータ格納部
8 追尾結果出力部
9 制御部(CPU)
10 メモリ
11 時間遷移処理部
【出願人】 【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
【出願日】 平成18年6月28日(2006.6.28)
【代理人】 【識別番号】100088812
【弁理士】
【氏名又は名称】▲柳▼川 信


【公開番号】 特開2008−8691(P2008−8691A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−177420(P2006−177420)