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【発明の名称】 光学式測距装置およびその製造方法
【発明者】 【氏名】石原 武尚

【氏名】民長 隆之

【要約】 【課題】温度変化の激しい環境下であっても高い測距精度を得る。

【構成】発光素子10と第2受光部13とを直接結ぶ領域に形成された透明樹脂8,8'に第2光路18を形成することによって、温度が上昇すると光路の長さは増加するが屈折率が低下するため、光路長自身は略一定になる。したがって、上記第2光路18の長さを、温度に拠らず略一定に保つことができる。また、第1光路17用の第1受光部12と第2光路18用の第2受光部13とを同一の受光素子11に形成することによって、第1受光部12の特性と第2受光部13の特性との温度ばらつきを減らすことができる。以上のことにより、温度変化の激しい環境下であっても高い測距精度を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
上記発光素子から出射された光を受光する受光素子と、
上記発光素子から出射された光が測距対象物で反射して上記受光素子に至る第1光路を形成するための第1光学系と、
上記発光素子から出射された光が上記測距対象物で反射されずに上記受光素子に至る第2光路を形成するための第2光学系と、
上記第1光路を通過した光を受光した際に上記受光素子から出力された信号と、上記第2光路を通過した光を受光した際に上記受光素子から出力された信号とに基づいて、上記測距対象物までの距離情報を得る距離情報算出手段と
を備え、
上記第2光学系は、上記発光素子の発光部と上記受光素子の受光部とに直接接触して、上記発光部から出射された光の一部を上記受光部に導く透明樹脂を含む
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式測距装置において、
上記受光素子の受光部は複数存在すると共に、上記複数の受光部のうちの一部は上記第1光学系と光学的に結合されており、他の受光部は上記第2光学系と光学的に結合されている
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光学式測距装置において、
上記第2光学系は、遮光性樹脂によって、上記第1光学系と光学的に分離されている
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学式測距装置において、
上記第1光学系を構成すると共に、上記遮光性樹脂の上に透明樹脂によって形成された発光素子用の第1レンズおよび受光素子用の第2レンズと、
上記第1光学系を構成すると共に、上記発光素子に直接接触した第1透明樹脂と、
上記第1光学系を構成すると共に、上記受光素子に直接接触した第2透明樹脂と、
上記遮光性樹脂における上記第1レンズおよび上記第2レンズの直下に設けられた2つの窓と
を備え、
上記第1レンズと第1透明樹脂とは、上記遮光性樹脂に設けられた上記一方の窓を介して直接接触しており、
上記第2レンズと第2透明樹脂とは、上記遮光性樹脂に設けられた上記他方の窓を介して直接接触している
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光学式測距装置において、
上記発光素子は発光ダイオードである
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光学式測距装置において、
上記発光素子は面発光型半導体レーザーであり、
上記第2光学系を構成する上記透明樹脂における上記発光素子の発光部に直接接触している部分は、散乱性透明樹脂である
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項7】
請求項3に記載の光学式測距装置の製造方法であって、
上記第2光学系を構成する上記透明樹脂はポッティングによって形成され、
上記遮光性樹脂は注型あるいはトランスファー成形によって形成される
ことを特徴とする光学式測距装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の光学式測距装置の製造方法において、
上記受光素子の受光部は複数存在すると共に、複数の受光部のうちの一部は上記第1光学系と光学的に結合され、他の受光部は上記第2光学系と光学的に結合されており、
上第1光学系と光学的に結合された受光部と、上記第2光学系と光学的に結合された受光部との間には、上記ポッティングの際に上記透明樹脂が乗り越えることができない壁が設けられている
ことを特徴とする光学式測距装置の製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載の光学式測距装置において、
上記第2光学系を構成する上記透明樹脂は、
その両端部は、上記発光素子の発光部および上記受光素子の受光部に直接接触すると共に、上記発光部および上記受光部と光学的に結合する光学的結合部を構成しており、
上記両光学的結合部の間で成る透明通路の両端部は、上記光学的結合部を介して、上記発光部および上記受光部と対向しており、
上記透明通路は、周囲を上記遮光性樹脂によって取り囲まれている
ことを特徴とする光学式測距装置。
【請求項10】
請求項9に記載の光学式測距装置において、
上記透明樹脂における上記透明通路は、半円形の断面形状を有しており、
上記遮光性樹脂は、光反射性の材料を含んで構成されている
ことを特長とする光学式測距装置。
【請求項11】
請求項9に記載の光学式測距装置の製造方法であって、
上記発光素子の近傍から上記受光素子の近傍に掛けて断面形状が階段状を成す2段構造の段付き溝を表面に有する上記遮光性樹脂を形成し、
上記遮光性樹脂の表面に設けられた上記段付き溝における1段目の溝内に上記透明樹脂をポッティングして硬化した後に、
上記段付き溝における2段目の溝内に上記遮光性樹脂をポッティングして硬化する
ことによって、周囲を上記遮光性樹脂によって取り囲まれた上記透明通路を形成することを特徴とする光学式測距装置の製造方法。
【請求項12】
請求項9に記載の光学式測距装置の製造方法であって、
上記発光素子の近傍から上記受光素子の近傍に掛けて表面に溝を有する上記遮光性樹脂を形成し、
上記遮光性樹脂の表面に設けられた上記溝内における途中の深さまで上記透明樹脂をポッティングして硬化した後に、
上記遮光性樹脂および上記透明樹脂が形成された基板を金型内に設置し、上記溝内における上記透明樹脂の上に上記遮光性樹脂を注入してトランスファー成形する
ことによって、周囲を上記遮光性樹脂によって取り囲まれた上記透明通路を形成することを特徴とする光学式測距装置の製造方法。
【請求項13】
請求項9に記載の光学式測距装置の製造方法であって、
上記発光素子の近傍から上記受光素子の近傍に掛けて表面に溝を有する上記遮光性樹脂を形成し、
上記遮光性樹脂が形成された基板を第1金型内に設置し、上記遮光性樹脂の表面に設けられた上記溝内における途中の深さまで上記透明樹脂を注入してトランスファー成形し、
上記透明樹脂が形成された上記基板を第2金型内に設置し、上記溝内における上記透明樹脂の上に上記遮光性樹脂を注入してトランスファー成形する
ことによって、周囲を上記遮光性樹脂によって取り囲まれた上記透明通路を形成することを特徴とする光学式測距装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子から出射した光が測距対象物で反射されて受光素子に至る第1の光路と発光素子から出射した光が受光素子に至る第2の光路との2つの光路に基づいて上記測距対象物までの距離を測定する光学式測距装置、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光の往復時間を測定して測定対象までの距離を算出する方法である所謂TOF(Time Of Flight)法が、測距方法として広く知られている。この測距方法は、光の速度cが3.0×108m/sと既知であるため、その往復時間t1を測定することによって、次式(1)によって対象物までの距離Lを算出する方法である。
L=(c・t1)/2…(1)
【0003】
上記TOF法における具体的な信号処理方法は種々提案されており、例えば特開平6‐18665号公報(特許文献1)に開示された距離計測装置では、スタートパルス(発光素子と同期)を開始信号とし、ストップパルス(受光信号)が検出されるまで積分器に電荷を蓄積(または放電)し続け、その増加(または減少)量から光の往復時間を検出するようにしている。このように、上記スタートパルスとストップパルスとの間の時間を測定する測定方法としては、例えば、特開平7‐294642号公報(特許文献2)に開示された距離測定装置のように、スタートパルスと同時に基準CLKのパルス数のカウントを開始し、ストップパルスが検出された時のパルス数に基づいて光の往復時間を得るもの等がある。
【0004】
これらの方法は、何れも測距対象物で反射された光を検出する受光素子からの検出信号を処理して距離情報を得る。その際に、上記発光素子における応答速度のばらつきや、上記受光素子における応答速度のばらつきや、環境(主に温度)等の影響による上記両素子の特性変化等によって、距離情報に誤差が生ずる場合がある。
【0005】
そこで、上述のような誤差を減らすため、上記発光素子から出射された光が上記測距対象物によって反射されて受光素子によって検出される第1光路と、上記発光素子から出射された光が上記受光素子によって検出される上記第1光路とは別の第2光路とを用いて、上記第2光路の長さが既知で一定であるならば、上記第2光路を基準にして上記第1光路に基づいて算出された距離情報を補正することが可能である。そのため、特許第3225682号公報(特許文献3)に開示された距離測定装置や、特開2002‐286844号公報(特許文献4)に開示された距離測定装置や、特許第2896782号公報(特許文献5)に開示されたパルス方式の光波距離計等、上記第2光路を用いる種々の測距装置が提案されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献3〜特許文献5に開示された従来の測距装置においては、以下のような問題がある。
【0007】
すなわち、上記第2光路は、上記特許文献3に開示された距離測定装置の場合にはミラーやプリズムによって形成され、上記特許文献4に開示された距離測定装置の場合には導光部材によって形成され、上記特許文献5に開示されたパルス方式の光波距離計の場合には光ファイバーによって形成される。
【0008】
上述したように、上記第1光路に基づいて算出された距離情報を補正するためには、上記第2光路の長さが常に一定であることが重要である。一般に、光路の長さは温度が上昇すれば熱膨張によって長くなる。ところが、上記特許文献3〜特許文献5に開示された従来の測距装置においては、上記第2光路の熱膨張については一切触れられてはいない。さらに、上記第2光路がバルク光学素子から構成されているために距離測定装置が大きくなり、電子機器に用いるには不適な構造になっている。
【特許文献1】特開平6‐18665号公報
【特許文献2】特開平7‐294642号公報
【特許文献3】特許第3225682号公報
【特許文献4】特開2002‐286844号公報
【特許文献5】特許第2896782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明の課題は、温度変化の激しい環境下であっても高い測距精度を得ることができる小型の光学式測距装置、および、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、この発明の光学式測距装置は、
発光素子と、
上記発光素子から出射された光を受光する受光素子と、
上記発光素子から出射された光が測距対象物で反射して上記受光素子に至る第1光路を形成するための第1光学系と、
上記発光素子から出射された光が上記測距対象物で反射されずに上記受光素子に至る第2光路を形成するための第2光学系と、
上記第1光路を通過した光を受光した際に上記受光素子から出力された信号と、上記第2光路を通過した光を受光した際に上記受光素子から出力された信号とに基づいて、上記測距対象物までの距離情報を得る距離情報算出手段と
を備え、
上記第2光学系は、上記発光素子の発光部と上記受光素子の受光部とに直接接触して、上記発光部から出射された光の一部を上記受光部に導く透明樹脂を含む
ことを特徴としている。
【0011】
光路長は光路の長さと屈折率との積であり、光路が透明樹脂である場合には、温度が上昇すると光路の長さは増えるが、光路の屈折率が下がる。そのため、光路長自身は略一定となる。上記構成によれば、第2光路を形成する第2光学系は、発光素子の発光部と受光素子の受光部とに直接接触する透明樹脂を含んで構成されている。したがって、上記透明樹脂に形成されている上記第2光路は温度に拠らず長さが略一定となり、得られる距離情報の温度誤差を減らすことが可能になる。
【0012】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記受光素子の受光部は複数存在すると共に、上記複数の受光部のうちの一部は上記第1光学系と光学的に結合されており、他の受光部は上記第2光学系と光学的に結合されている。
【0013】
この実施の形態によれば、上記第1光学系と光学的に結合された受光部と上記第2光学系と光学的に結合された受光部とは同一の受光素子に設けられている。したがって、上記第1光学系と光学的に結合された受光部と上記第2光学系と光学的に結合された受光部とを異なる受光素子に設けた場合に比して、各受光部の特性における温度ばらつきが低減される。その結果、得られる距離情報の温度誤差を更に減らすことが可能になる。さらに、上記受光素子を複数用いる場合に比して、当該光学式測距装置の小型化を図ることが可能になる。
【0014】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記第2光学系は、遮光性樹脂によって、上記第1光学系と光学的に分離されている。
【0015】
この実施の形態によれば、上記第2光学系によって形成される上記第2光路は、上記第1光学系によって形成される上記第1光路とは光学的に分離されている。したがって、上記第1光路と上記第2光路との間のクロストークは無く、上記第2光路を基準として上記第1光路に基づいて算出された距離情報を補正する場合に、光路切換用のスイッチ等を設ける必要がない。
【0016】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記第1光学系を構成すると共に、上記遮光性樹脂の上に透明樹脂によって形成された発光素子用の第1レンズおよび受光素子用の第2レンズと、
上記第1光学系を構成すると共に、上記発光素子に直接接触した第1透明樹脂と、
上記第1光学系を構成すると共に、上記受光素子に直接接触した第2透明樹脂と、
上記遮光性樹脂における上記第1レンズおよび上記第2レンズの直下に設けられた2つの窓と
を備え、
上記第1レンズと第1透明樹脂とは、上記遮光性樹脂に設けられた上記一方の窓を介して直接接触しており、
上記第2レンズと第2透明樹脂とは、上記遮光性樹脂に設けられた上記他方の窓を介して直接接触している。
【0017】
この実施の形態によれば、上記発光素子用の第1レンズは上記発光素子に直接接触する第1透明樹脂に直接接触しており、受光素子用の第2レンズは上記受光素子に直接接触する第2透明樹脂に直接接触している。したがって、上記第1レンズと上記発光素子との間および上記第2レンズと上記受光素子との間における空気層を無くすことができる。こうして、空気層との境界で生ずる光の反射を減らすことが可能になる。
【0018】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記発光素子は発光ダイオードである。
【0019】
この実施の形態によれば、上記発光ダイオードの指向性は、半値で60度と広い。そのために、上記発光素子の発光部から出射されて上記第1光路を形成する上記第1光学系に入射されない光は、反射を繰り返して、上記第2光路を形成する上記第2光学系に入射され、上記受光素子の受光部に導かれる。
【0020】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記発光素子は面発光型半導体レーザーであり、
上記第2光学系を構成する上記透明樹脂における上記発光素子の発光部に直接接触している部分は、散乱性透明樹脂である。
【0021】
上記面発光型半導体レーザーの指向性は、半値で15度と狭い。そのため、上記発光素子の発光部から出射されて上記第1光路を形成する上記第1光学系に入射されない光は、上記第2光路を形成する上記第2光学系に入射されることがない。この実施の形態によれば、上記透明樹脂における上記発光素子の発光部に直接接触している部分を散乱性透明樹脂にしている。したがって、上記第1光学系に入射されない光は上記散乱性透明樹脂によって拡散され、その一部が上記第2光学系に入射されて、上記受光素子の受光部に導かれる。
【0022】
また、この発明の光学式測距装置の製造方法は、
上記遮光性樹脂を有する光学式測距装置の製造方法であって、
上記第2光学系を構成する上記透明樹脂はポッティングによって形成され、
上記遮光性樹脂は注型あるいはトランスファー成形によって形成される
ことを特徴としている。
【0023】
上記構成によれば、上記第2光路を形成する上記第2光学系は、粘性の高い上記透明樹脂をディスペンサー等の針先から吐き出しながら上記針先を移動させて、上記透明樹脂を線状に引くことによって形成することができる。さらに、上記遮光性樹脂は、上記ポッティング後に、注型あるいはトランスファー成形によって形成することができる。
【0024】
また、1実施の形態の光学式測距装置の製造方法では、
上記受光素子の受光部は複数存在すると共に、複数の受光部のうちの一部は上記第1光学系と光学的に結合され、他の受光部は上記第2光学系と光学的に結合されており、
上第1光学系と光学的に結合された受光部と、上記第2光学系と光学的に結合された受光部との間には、上記ポッティングの際に上記透明樹脂が乗り越えることができない壁が設けられている。
【0025】
この実施の形態によれば、上記第2光学系を構成する上記透明樹脂をポッティングによって形成する際に、上記第2光路用の受光部にポッティングされた上記透明樹脂が、上記壁によって堰き止められて上記第1光路用の受光部に直接接触することが防止される。したがって、小型の光学式測距装置を製造するために小型の受光素子を用いた場合であっても、上記第2光学系を上記第1光学系から確実に光学的に分離することができる。
【0026】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記第2光学系を構成する上記透明樹脂は、
その両端部は、上記発光素子の発光部および上記受光素子の受光部に直接接触すると共に、上記発光部および上記受光部と光学的に結合する光学的結合部を構成しており、
上記両光学的結合部の間で成る透明通路の両端部は、上記光学的結合部を介して、上記発光部および上記受光部と対向しており、
上記透明通路は、周囲を上記遮光性樹脂によって取り囲まれている。
【0027】
この実施の形態によれば、上記発光素子から出射された光が上記受光素子に至る上記第2光路を形成する上記第2光学系を、周囲が上記遮光性樹脂によって取り囲まれた透明通路と、この透明通路の両側に位置して上記発光素子の発光部および上記受光素子の受光部に直接接触して上記発光部および上記受光部と光学的に結合する光学的結合部とで構成している。そして、上記透明通路の両端部は、上記光学的結合部を介して、上記発光部および上記受光部と対向するようになっている。したがって、上記第2光路を通ってきた光が上記受光素子における端面に入射することを防止することができる。さらに、上記透明通路の周囲を上記遮光性樹脂によって取り囲むことによって、上記第2光路における不要な漏れ光を抑制することができる。こうして、光結合効率を高めることができるのである。
【0028】
また、1実施の形態の光学式測距装置では、
上記透明樹脂における上記透明通路は、半円形の断面形状を有しており、
上記遮光性樹脂は、光反射性の材料を含んで構成されている。
【0029】
この実施の形態によれば、上記透明通路の断面形状を半円形にすると共に、上記透明通路の周囲を取り囲む上記遮光性樹脂を、光反射性の材料を含んで構成している。したがって、半円形状の直線部分に鏡を置いた状態になり、光学的に円形断面の透明通路が埋め込まれているのと等価と見なすことができる。したがって、光ファイバーと同様に光の伝送損失を減らすことが可能になる。
【0030】
また、この発明の光学式測距装置の製造方法は、
上記発光素子の近傍から上記受光素子の近傍に掛けて断面形状が階段状を成す2段構造の段付き溝を表面に有する上記遮光性樹脂を形成し、
上記遮光性樹脂の表面に設けられた上記段付き溝における1段目の溝内に上記透明樹脂をポッティングして硬化した後に、
上記段付き溝における2段目の溝内に上記遮光性樹脂をポッティングして硬化する
ことによって、周囲を上記遮光性樹脂によって取り囲まれた上記透明通路を形成することを特徴としている。
【0031】
上記構成によれば、上記遮光性樹脂の表面に設けられた上記段付き溝における1段目の溝内に上記透明樹脂をポッティングによって形成し、2段目の溝内に上記遮光性樹脂をポッティングによって形成するので、上記透明通路をポッティングによって上記遮光性樹脂内に容易に埋め込むことができる。
【0032】
また、この発明の光学式測距装置の製造方法は、
上記発光素子の近傍から上記受光素子の近傍に掛けて表面に溝を有する上記遮光性樹脂を形成し、
上記遮光性樹脂の表面に設けられた上記溝内における途中の深さまで上記透明樹脂をポッティングして硬化した後に、
上記遮光性樹脂および上記透明樹脂が形成された基板を金型内に設置し、上記溝内における上記透明樹脂の上に上記遮光性樹脂を注入してトランスファー成形する
ことによって、周囲を上記遮光性樹脂によって取り囲まれた上記透明通路を形成することを特徴としている。
【0033】
上記構成によれば、上記遮光性樹脂の表面に設けられた溝における途中の深さまで上記透明樹脂をポッティングによって形成し、さらに、その透明樹脂の上に上記遮光性樹脂をトランスファー成形によって形成するので、上記溝内に上記遮光性樹脂をポッティングによって形成する場合に比して、上記透明通路の周囲を全く同じ光学特性を有する上記遮光性樹脂で取り囲むことができ、上記透明通路における光の伝送損失をさらに減らすことが可能になる。
【0034】
また、この発明の光学式測距装置の製造方法は、
上記発光素子の近傍から上記受光素子の近傍に掛けて表面に溝を有する上記遮光性樹脂を形成し、
上記遮光性樹脂が形成された基板を第1金型内に設置し、上記遮光性樹脂の表面に設けられた上記溝内における途中の深さまで上記透明樹脂を注入してトランスファー成形し、
上記透明樹脂が形成された上記基板を第2金型内に設置し、上記溝内における上記透明樹脂の上に上記遮光性樹脂を注入してトランスファー成形する
ことによって、周囲を上記遮光性樹脂によって取り囲まれた上記透明通路を形成することを特徴としている。
【0035】
上記構成によれば、上記遮光性樹脂の表面に設けられた溝における途中の深さまで上記透明樹脂をトランスファー成形によって形成し、さらに、上記透明樹脂の上に上記遮光性樹脂をトランスファー成形によって形成するので、上記透明通路をトランスファーによって上記遮光性樹脂内に迅速に埋め込むことができる。また、上記透明通路の周囲を全く同じ光学特性を有する上記遮光性樹脂で取り囲むことができ、上記透明通路における光の伝送損失をさらに減らすことが可能になる。
【発明の効果】
【0036】
以上より明らかなように、この発明の光学式測距装置は、発光素子から出射された光が測距対象物で反射されずに受光素子に至る第2光路を形成する第2光学系を、上記発光素子の発光部と上記受光素子の受光部とに直接接触する透明樹脂を含んで構成したので、温度が上昇して上記第2光路の長さが増えても上記第2光路の屈折率は下がり、光路の長さと光路の屈折率との積で表される光路長は略一定となる。したがって、上記第2光路の光路長は温度に拠らずに略一定となり、温度変化の激しい環境下であっても高い測距精度を得ることができるのである。
【0037】
さらに、上記受光素子の受光部を複数設けると共に、複数の受光部のうちの一部を上記第1光学系と光学的に結合させ、他の受光部を上記第2光学系と光学的に結合させれば、上記第1光学系と光学的に結合された受光部と上記第2光学系と光学的に結合された受光部とを異なる受光素子に設けた場合に比して、各受光部の特性における温度ばらつきを低減することができる。したがって、得られる距離情報の温度誤差を、さらに減らすことが可能になる。さらに、上記受光素子を複数用いる場合に比して、当該光学式測距装置の小型化を図ることが可能になる。
【0038】
さらに、上記発光素子から出射された光が上記測距対象物で反射されずに上記受光素子に至る上記第2光路を形成する上記第2光学系を、周囲が上記遮光性樹脂によって取り囲まれた透明通路と、この透明通路の両側に位置して上記発光素子の発光部および上記受光素子の受光部と光学的に結合する光学的結合部と、で構成すると共に、上記透明通路の両端部を、上記光学的結合部を介して、上記発光部および上記受光部と対向させれば、上記第2光路を通ってきた光が上記受光素子における端面に入射するのを防止することができる。さらに、上記透明通路の周囲を上記遮光性樹脂によって取り囲むことによって、上記第2光路における不要な漏れ光を抑制することができる。すなわち、光結合効率を高めることができるのである。
【0039】
また、この発明の光学式測距装置の製造方法は、上記第2光学系を構成する上記透明樹脂をポッティングによって形成するので、粘性の高い上記透明樹脂をディスペンサー等の針先から吐き出しながら上記針先を移動させることによって、上記透明樹脂を上記第2光路に沿って線状に形成することができる。さらに、上記遮光性樹脂を注型あるいはトランスファー成形によって形成するので、上記ポッティング後に形成することができる。
【0040】
また、この発明の光学式測距装置の製造方法は、上記遮光性樹脂の表面に設けられた段付き溝における1段目の溝内に上記透明樹脂をポッティングによって形成し、2段目の溝内に上記遮光性樹脂をポッティングによって形成するので、上記透明通路をポッティングによって上記遮光性樹脂内に容易に埋め込むことができる。
【0041】
さらに、上記遮光性樹脂の表面に設けられた溝内における下側に形成された上記透明樹脂の上に形成される上記遮光性樹脂を、トランスファー成形によって形成すれば、上記溝内に上記遮光性樹脂をポッティングによって形成する場合に比して、上記透明通路の周囲を全く同じ光学特性を有する上記遮光性樹脂で取り囲むことができ、上記透明通路における光の伝送損失をさらに減らすことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0043】
・第1実施の形態
図1は、本実施の形態の光学式測距装置1における平面図である。また、図2は、図1に示す光学式測距装置1における側面図である。尚、この光学式測距装置1は、発光素子から出射された光が測距対象物で反射して受光素子で検出される第1光路と、上記発光素子から出射された光が上記測距対象物で反射せずに上記受光素子で検出される第2光路とを用いるものであり、特に、障害物を検出する必要があるパーソナルロボットや機械式接点がない非接触スイッチ、あるいは、非接触制御用デバイス等の電子機器に用いると好適な小型な光学式測距装置である。
【0044】
本光学式測距装置1は、シールドケース2によって、外部からの電気ノイズが内部に入射しないように遮蔽された構成を有している。また、このシールドケース2は、発光部用の第1レンズ3と受光部用の第2レンズ4との間でプリント基板(PWB)5側に折り曲げられて、発光側と受光側との仕切6となっている。そして、この仕切6によって、両レンズ3,4間を直接通過する光が遮光されるように構成されている。
【0045】
図3は、図1からシールドケース2を取り除いた状態を示す図であり、図4は、図2からシールドケース2を取り除いた状態を示す図である。図3および図4においては、例えば黒色の遮光性樹脂7が、第1レンズ3および第2レンズ4等を構成する透明樹脂を通して見えている状態を示している。尚、プリント基板5の側面には複数の電極9が並んで配置されており、この電極9から回路を駆動する電力の供給および距離情報の外部への取り出しが行われる。
【0046】
図5は、図3における上記遮光性樹脂7を、説明の都合上透明にした場合を示す。図6は、図5におけるA‐A'矢視断面図である。本光学式測距装置1は、プリント基板5の上にダイボンドされた発光素子(LED:発光ダイオード)10および受光素子(PD:フォトダイオード)11の上に、シリコーン樹脂等でなる透明樹脂8,8'が覆いかぶさり、さらにその上にエポキシ樹脂等でなる遮光性樹脂7が覆いかぶさり、その上に第1,第2レンズを形成するエポキシ樹脂等の透明樹脂が覆いかぶさった構造を採っている。
【0047】
上記受光素子11には、第1受光部12と第2受光部13でなる2つの受光部が形成されている。そして、プリント基板5上において発光素子10と第2受光部13とが透明樹脂8,8'によって直接接続されている。
【0048】
図7は、測距対象物15と本光学式測距装置1との位置関係を示す。発光素子10から出射された光は、半値半角で60度の指向性を有し、正面に向かって出射され光は、シリコーン樹脂等の透明樹脂8を通過し、遮光性樹脂7の窓14を通り、エポキシ樹脂等の透明樹脂で形成された第1レンズ3を通り、略並行光線となって測距対象物15に入射される。そして、測距対象物15に入射した光は測距対象物15によって四方に反射され、その反射光のうち光学式測距装置1へ向かう一部の光が、エポキシ樹脂等の透明樹脂で形成された第2レンズ4を通り、遮光性樹脂7の窓16を通り、シリコーン樹脂等の透明樹脂8を通過し、受光素子11の第1受光部12に入射する。以下、この光路を第1光路17と呼ぶことにする。
【0049】
一方、上記発光素子10から出射された光のうち、例えば指向角で30度以上の光は、遮光性樹脂7の窓14を通過することができず、遮光性樹脂7で反射される。そして、発光素子10と受光素子11と直接繋ぐシリコーン樹脂等の透明樹脂8,8'を通過して、第1光路17からの光を受光する第1受光部12とは光学的に分離された他の第2受光部13に入射する。以下、この光路を第2光路18と呼ぶことにする。
【0050】
こうして、上記受光素子11における異なる第1受光部12と第2受光部13とに入射した光は電流に変換され、受光素子11にモノリシックに形成された電子回路(図示せず)によって処理されて、測距対象物15までの距離情報が得られる。その際に、発光素子10における応答速度のばらつき、受光素子11における応答速度のばらつき、および、環境(主に温度)等の影響による発光素子10および受光素子11の特性変化は、上記電子回路によって、第2光路18の長さを基準として補正されるのである。
【0051】
すなわち、本実施の形態においては、上記第1光学系を、上記透明樹脂8,遮光性樹脂7の窓14,第1レンズ3,第2レンズ4,遮光性樹脂7の窓16および透明樹脂8で構成する。また、上記第2光学系を、透明樹脂8,遮光性樹脂7および透明樹脂8'で構成するのである。
【0052】
以上のごとく、本光学式測距装置1においては、第2光路18を、プリント基板5上において発光素子10と第2受光部13とを直接結ぶ領域に形成された透明樹脂8,8'に形成している。一般に、光路長は光路の長さと光路の屈折率との積で与えられ、透明樹脂の場合は、温度が上昇すると光路の長さは増加するが屈折率が低下するために、光路長自身は略一定であるという性質がある。したがって、発光素子10と受光素子11の第2受光部13とに直接接触する透明樹脂8,8'に形成されている第2光路18は、温度に拠らず略一定の長さを保つことができるのである。
【0053】
また、上記第1光路17用の第1受光部12と第2光路18用の第2受光部13とを同一の受光素子11に形成している。したがって、第1受光部と第2受光部とを異なる受光素子に形成する場合に比して、第1受光部12の特性と第2受光部13の特性との温度ばらつきを減らすことができる。したがって、第1受光部12の特性と第2受光部13の特性との温度ばらつきに起因する距離情報の誤差を減らすことが可能になる。さらに、複数の受光素子を用いる場合に比して、光学式測距装置1の小型化を図ることが可能になる。
【0054】
また、上記第2光路18は、上記第1光路17とは遮光性樹脂7によって光学的に分離されている。したがって、上記第1光路17と第2光路18との間のクロストークが無くなる。そのため、光路切換用のスイッチ等を設ける必要がない。
【0055】
以下、図8〜図14に従って、本光学式測距装置1の製造方法について説明する。
【0056】
図8(a)は上記プリント基板5の平面図であり、図8(b)は図8(a)におけるB‐B'矢視断面図である。図8に示すように、先ず、プリント基板5の表面に、銀ペースト等の導電性接着剤によって、発光素子10および受光素子11等の半導体チップがダイボンドされる。続いて、金線等によって発光素子10および受光素子11上のパッド部とプリント基板5のパッド部とにワイヤーボンドが行われて電気接続がなされる。
【0057】
次に、図9に示すように、ディスペンサー21によって、シリコーン樹脂等の透明樹脂8,8'が、所定の位置にポッティングされる。その際に、粘性の高い透明樹脂8'をディスペンサー21の針先から吐き出しながら上記針先を移動させることによって、透明樹脂8'を第2光路18に沿って線状に形成することができる。ポッティングされた透明樹脂8,8'が重力や振動によって所定の位置から広がることを防ぐためには、透明樹脂8,8'として紫外線硬化型透明樹脂を用い、ポッティングした後に紫外線を照射して半硬化した後に、オーブンで本硬化すればよい。また、ポッティング樹脂の塗布量はディスペンサー21によって制御され、後工程において遮光性樹脂7の窓14,16になる部分には、高く塗布される。尚、図9(b)は、図9(a)におけるC‐C'矢視断面図である。
【0058】
次に、上記透明樹脂8,8'上に遮光性樹脂7を形成する。図10は、遮光性樹脂7を成形するための金型22,23内に、プリント基板5が配置された状態を示す縦断面図である。この状態において、第1光路17に繋がる透明樹脂8の部分は、金型22で押しつぶされて平面となり、後に窓14,16となる部分が形成される。そして、プリント基板5と金型22とで形成される空間にエポキシ樹脂に吸光性の添付剤を混合した遮光性樹脂を注入してトランスファー成形し、平板状の遮光性樹脂7が得られる。尚、本実施の形態においてはトランスファー成形を用いたが、注型を用いても差し支えない。
【0059】
図11は、上記プリント基板5に平板状の遮光性樹脂7が形成された状態を示す。遮光性樹脂7における発光素子10および受光素子11の上部には、窓14,16が形成されている。尚、図11(b)は、図11(a)におけるD‐D'矢視断面図である。
【0060】
図12は、上記第1,第2レンズ3,4を形成するための金型24,25内にプリント基板5が配置された状態を示す縦断面図である。プリント基板5と金型24とで形成される空間にエポキシ樹脂等の透明樹脂を注入してトランスファー成形し、第1,第2レンズ3,4が形成される。図13は、プリント基板5上に透明樹脂によって第1レンズ3および第2レンズ4が形成された状態を示す。尚、図13(b)は、図13(a)におけるE‐E'矢視断面図である。
【0061】
ところで、上記受光素子11のサイズが小さくなると、必然的に第1受光部12と第2受光部13との距離が短くなる。そして、図9に示すポッティング工程の際に、第1光路17に繋がる第1受光部12と第2光路18に繋がる第2受光部13との両方が、同じ透明樹脂によって覆われる可能性が生ずる。そのような場合には、図14に示すように、受光素子11上における第1受光部12と第2受光部13との間に、ポッティングされた透明樹脂8,8'を堰き止めるための壁26が形成される。この壁26は、プリント基板5がウエハ状態にある際に、スクリーン印刷等によって形成される。このような壁26を形成することによって、ポッティングされた透明樹脂8,8'が堰き止められて、第1受光部12と第2受光部13との両方が同じ透明樹脂8あるいは同じ透明樹脂8'で覆われることが防止されるのである。尚、壁26を形成する技術は、CCD(電荷結合素子)上にガラス板を壁を挟んで取り付ける技術として既に知られているが、本実施の形態においては、第1受光部12と第2受光部13との両方が同じ透明樹脂8あるいは同じ透明樹脂8'で覆われるという課題を解決する方法として用いたことに特徴がある。
【0062】
図13において得られたプリント基板5に、図1におけるシールドケース2を取り付けることによって、本光学式測距装置1が完成する。
【0063】
ここで、図8〜図14に示す光学式測距装置1の製造方法においては、1つのプリント基板5に1つの光学式測距装置1が形成されている図を示したが、これは説明用の図である。実際にはプリント基板5上に格子状に複数の光学式測距装置1が形成され、図13において得られたプリント基板5は、ダイシングによって、個々の光学式測距装置1に切り出されるのである。
【0064】
図15および図16は、上記発光素子としてVCSEL(面発光型半導体レーザー)を用いた場合の光学式測距装置31を示す。尚、図15および図16は、図5および図6の場合と同様に、説明の都合上遮光性樹脂7を透明にした状態を示す。図16は、図15におけるG‐G'矢視断面図である。尚、図15および図16においては、発光素子としてLEDを用いた光学式測距装置1と同じ部材には同じ番号を付している。
【0065】
本光学式測距装置31の製造方法は、図9に示すポッティングの際に、VCSEL32の上に散乱性透明樹脂33をポッティングする点が、LEDを用いた場合と異なる。
【0066】
上記VCSEL32を用いた光学式測距装置31においては、VCSEL32から出射された光は、半値半角で15度の指向性を有し、正面に向かって出射された光は、シリコーン樹脂に散乱体が混入された散乱性透明樹脂33を通過して散乱される。そして、正面に向かって散乱された光は遮光性樹脂7の窓34を通り、エポキシ樹脂等の透明樹脂で形成された第1レンズ3を通り、略並行光線となって測距対象物(図示せず)に入射される。そして、上記測距対象物に入射した光はこの測距対象物によって四方に反射され、その反射光のうち光学式測距装置31へ向かう一部の光が、エポキシ樹脂等の透明樹脂で形成された第2レンズ4を通り、遮光性樹脂7の窓16を通り、シリコーン樹脂等の透明樹脂8を通過し、受光素子11の第1受光部12に入射する。以上が、第1光路の説明である。
【0067】
一方、上記VCSEL32から出射して散乱された光のうち、例えば指向角で30度以上の光は、遮光性樹脂7の窓34を通過することができず、遮光性樹脂7で反射される。そして、VCSEL32と受光素子11とを直接繋いだシリコーン樹脂等の透明樹脂8'を通過して、上記第1光路からの光を受光する第1受光部12とは光学的に繋がってはいない他の第2受光部13に入射する。以上が、第2光路の説明である。
【0068】
以上のごとく、本光学式測距装置1の製造方法においては、上記シリコーン樹脂等の透明樹脂8,8'をポッティングによって形成し、透明樹脂8,8'上に遮光性樹脂7をトランスファー成形によって形成するようにしている。したがって、第2光路18を構成する透明樹脂8'は、粘性の高い透明樹脂8'をディスペンサー21の針先から吐き出しながら上記針先を移動させることによって、第2光路18に沿って線状に形成することができる。さらに、遮光性樹脂7をトランスファー成形によって形成するので、第1光路17に繋がる透明樹脂8の部分を金型22で押しつぶして平面にすることによって、後に窓14,16となる部分を簡単に形成することができる。
【0069】
・第2実施の形態
ところで、上記第1実施の形態における光学式測距装置1においては、図7に示すように、第2光路18が受光素子11の第2受光部13側の端面に繋がっているため、上記端面で反射されて受光素子11に入射される光により発生する光ノイズによってSN比の値が劣化し、測定誤差が増大する場合がある。また、第2光路18を通ってきた光の大部分が受光素子11の上記端面に入射するため、第2光路18の光結合効率が低くなってしまう。そこで、本実施の形態は、特に第2光路の光結合効率がさらに高く、温度変化の激しい環境下でも測距精度の高い測定が可能な光学式測距装置に関する。
【0070】
以下、本実施の形態の光学式測距装置について、上記第1実施の形態と異なる部分を中心に詳細に説明する。
【0071】
図17は、本実施の形態の光学式測距装置41におけるシールドケースを取り除き、遮光性樹脂47を説明の都合上透明にした場合を示す。図18は、図17におけるH‐H'矢視断面図である。本光学式測距装置41は、プリント基板45の上にダイボンドされた発光素子50および受光素子51の上に、シリコーン樹脂等である透明樹脂48が覆いかぶさり、さらにその上にエポキシ樹脂等でなる遮光性樹脂47が覆いかぶさり、その上に第1レンズ43および第2レンズ44を形成するエポキシ樹脂等の透明樹脂が覆いかぶさった構造を採っている。但し、49は、回路を駆動する電力の供給および距離情報の外部への取り出しを行うための電極である。
【0072】
上記受光素子51には、第1受光部52と第2受光部53とでなる2つの受光部が形成されており、夫々透明樹脂48によって覆われている。そして、遮光性樹脂47における発光素子50と受光素子51との間には、シリコーン樹脂等の透明樹脂によって、発光素子50側の透明樹脂48と受光素子51側の第2受光部53を覆う透明樹脂48とを連通させる透明通路58が形成されている。
【0073】
図19は、測距対象物55と本光学式測距装置41との位置関係を示す。発光素子50から出射された光は、半値半角で60度の指向性を有しており、正面に向かって出射された光は、シリコーン樹脂等の透明樹脂48を通過し、遮光性樹脂47の窓54を通り、エポキシ樹脂等の透明樹脂で形成された第1レンズ43を通り、略並行光線となって測距対象物55に入射される。そして、測距対象物55に入射した光は測距対象物55によって四方に反射され、その反射光のうち光学式測距装置41へ向かう一部の光が、エポキシ樹脂等の透明樹脂で形成された第2レンズ44を通り、遮光性樹脂47の窓56を通り、シリコーン樹脂等の透明樹脂48を通過して、受光素子51の第1受光部52に入射する。以下、この光路を第1光路57とする。
【0074】
一方、上記発光素子50から出射された光のうち、例えば指向角で30度以上の光は、遮光性樹脂47の窓54を通過することができないため、遮光性樹脂47で反射される。そして、遮光性樹脂47内にシリコーン樹脂等の透明樹脂で形成されて発光素子50と受光素子51とを直接繋ぐ透明通路58を通過して、第1光路57からの光を受光する第1受光部52とは光学的に分離された他の第2受光部53に入射する。以下、この光路を第2光路59と呼ぶことにする。すなわち、本実施の形態においては、発光素子50側の透明樹脂48と受光素子51側の第2受光部53を覆う透明樹脂48とで上記光学的結合部を構成しているのである。
【0075】
こうして、上記受光素子51における異なる第1受光部52と第2受光部53とに入射した光は電流に変換され、受光素子51にモノリシックに形成された電子回路(図示せず)によって処理されて、測距対象物55までの距離情報が得られる。その際に、発光素子50における応答速度のばらつき、受光素子51における応答速度のばらつき、および、環境(主に温度)等の影響による発光素子50および受光素子51の特性変化は、上記電子回路によって、第2光路59の長さを基準として補正されるのである。
【0076】
以下、図20に従って、本光学式測距装置41の製造方法について説明する。
【0077】
図20における図20(a)は上記プリント基板45の平面図であり、図20(b)は図20(a)におけるI‐I'矢視断面図である。図20に示すように、先ず、プリント基板45の表面に、銀ペースト等の導電性接着剤によって、発光素子50および受光素子51等の半導体チップがダイボンドされる。続いて、金線等によって発光素子50および受光素子51上のパッド部とプリント基板45のパッド部とにワイヤーボンドが行われて電気接続がなされる。
【0078】
次に、図20(b)に示すように、ディスペンサー60によって、シリコーン樹脂等の透明樹脂48が、所定の位置にポッティングされる。ポッティングされた透明樹脂48が重力や振動によって所定の位置から広がることを防ぐためには、透明樹脂48として紫外線硬化型透明樹脂を用い、ポッティングした後に紫外線を照射して半硬化した後に、オーブンで本硬化すればよい。また、ポッティング樹脂の塗布量はディスペンサー60によって制御され、後工程において遮光性樹脂47の窓54,56になる部分には、高く塗布される。
【0079】
次に、上記透明樹脂48上に遮光性樹脂47を形成する。図21は、遮光性樹脂47を成形するための金型61,62内に、プリント基板45が配置された状態を示す縦断面図である。この状態において、第1光路57に繋がる透明樹脂48の部分は、金型61で押しつぶされて平面となり、後に窓54,56となる部分が形成される。また、金型61には、発光素子50側の透明樹脂48の箇所から受光素子51側の第2受光部53上の透明樹脂48の箇所に至る細長い突起63が形成されている。そして、プリント基板45と金型61とで形成される空間にエポキシ樹脂にシリカ等の反射性の添付剤を混合した遮光性樹脂を注入してトランスファー成形し、平板状の遮光性樹脂47が得られる。
【0080】
図22は、上記プリント基板45に平板状の遮光性樹脂47が形成された状態を示す。遮光性樹脂47における発光素子50および受光素子51の上部には、窓54,56が形成されている。さらに、遮光性樹脂47の上面には、金型61の突起63によって、発光素子50側の透明樹脂48と受光素子51側の第2受光部53上の透明樹脂48とを繋ぐ段付き溝66が形成されている。尚、図22(b)は、図22(a)におけるJ‐J'矢視断面図である。
【0081】
図23は、図22(a)におけるK‐K'矢視断面図であり、遮光性樹脂47の上面に形成された段付き溝66の断面形状を示す。図23(a)の場合には、段付き溝66における下段に位置する1段目の溝66aおよび上段に位置する2段目の溝66bが、共に矩形断面を有している。これに対して、図23(b)の場合には、段付き溝66における1段目の溝66cは半円形の断面を有しており、2段目の溝66dは矩形断面を有している。
【0082】
次に、図24および図25に示すように、上記遮光性樹脂47上面の段付き溝66に透明通路58を形成する。尚、図24および図25における図24(b)および図25(b)は、図24(a)のL‐L'矢視断面図および図25(a)のM‐M'矢視断面図である。
【0083】
先ず、図24に示すように、ディスペンサー67によって、シリコーン樹脂等の透明樹脂が、図23(a)における1段目の溝66a内あるいは図23(b)における1段目の溝66c内にポッティングされる。その後、図示しないオーブン内で熱によって上記透明樹脂が硬化されて、透明通路58が形成される。尚、この場合にも、ポッティングされた透明樹脂が広がるのを防ぐために、上記透明樹脂として紫外線硬化型透明樹脂を用いてもよい。その場合には、紫外線の照射によって紫外線硬化型透明樹脂を硬化させる。
【0084】
次に、図25に示すように、ディスペンサー68によって、エポキシ樹脂にシリカ等の反射性の添付剤を混合した遮光性樹脂が、図23(a)における2段目の溝66b内あるいは図23(b)における2段目の溝66d内に、つまり透明通路58上にポッティングされる。その後、図示しないオーブン内で熱によって上記遮光性樹脂が硬化されて、透明通路58が平板状の遮光性樹脂47内に埋め込まれる。尚、この場合にも、ポッティングされた遮光性樹脂が広がるのを防ぐために、紫外線硬化型遮光性樹脂を用いてもよい。その場合には、紫外線の照射によって紫外線硬化型遮光性樹脂を硬化させる。
【0085】
図26は、図25(a)におけるN‐N'矢視断面図であり、上記遮光性樹脂47内に埋め込まれた透明通路58の断面形状を示す。但し、図26(a)は、図23(a)に示す断面形状を有する段付き溝66に透明通路58を形成した場合の断面図であり、透明通路58は矩形の断面を有している。また、図26(b)は、図23(b)に示す断面形状を有する段付き溝66に透明通路58を形成した場合の断面図であり、透明通路58は半円形の断面を有している。何れの場合にも、透明通路58で構成される第2光路59は、遮光性樹脂47によって囲まれている。
【0086】
図27は、上記第1,第2レンズ43,44を形成するための金型64,65内にプリント基板45が配置された状態を示す縦断面図である。プリント基板45と金型64とで形成される空間にエポキシ樹脂等の透明樹脂を注入してトランスファー成形し、第1,第2レンズ43,44が形成される。
【0087】
以上のごとく、本実施の形態においては、上記発光素子50から出射された光が受光素子51における第2受光部53に入射する第2光路59を、遮光性樹脂47内に埋め込まれると共に、発光素子50側の透明樹脂48と受光素子51側の第2受光部53を覆う透明樹脂48とをを直接繋ぐ透明通路58で構成している。したがって、第2光路59を通ってきた光が、受光素子41における第2受光部43側の端面に入射するのを防止することができる。さらに、透明通路58における受光素子41側の出射面を、上記光学的結合部である透明樹脂48を介して受光素子41における第2受光部43に対向させることが可能になる。したがって、第2光路59における不要な漏れ光を抑制し、光結合効率を高めることができる。
【0088】
また、上記透明通路58の断面形状を、図26(b)に示すようにプリント基板45側に凸の半円形にし、透明通路58の上側をシリカ等の反射性の添付剤を混合した遮光性樹脂で埋め込んだ場合には、半円形状の直線部分に鏡を置いた状態になるため、光学的に円形断面の透明通路が埋め込まれているのと等価と見なすことができる。したがって、光ファイバーと同様に光の伝送損失を減らすことが可能になる。尚、この場合、プリント基板45側とは反対側に凸の半円形であっても差し支えない。
【0089】
また、上記透明通路58を形成する際に、遮光性樹脂47の上面に、下段に位置する1段目の溝66a,66cと上段に位置する2段目の溝66b,66dとからなる段付き溝66を形成し、1段目の溝66a,66cに上記透明樹脂をポッティングして透明通路58を形成し、2段目の溝66b,66dに上記遮光性樹脂をポッティングして遮光性樹脂47の上面を形成するようにしている。したがって、透明通路58を遮光性樹脂47内に容易に埋め込むことができる。
【0090】
すなわち、本実施の形態によれば、温度変化の激しい環境下でも精度の高い測距が可能な小型の光学式測距装置を提供することができるのである。
【0091】
以下、本実施の形態における光学式測距装置41の他の製造方法について説明する。先ず、図20〜図24と同様にして、遮光性樹脂47の上面に形成された段付き溝66における1段目の溝66a,66c内に透明通路58を形成する。
【0092】
次に、上記透明樹脂58を平板状の遮光性樹脂47内に埋め込む。図28は、透明樹脂58を平板状の遮光性樹脂47内に埋め込むための金型71,72内に、プリント基板45が配置された状態を示す縦断面図である。この状態において、透明樹脂58と金型71とで形成される空間(つまり、段付き溝66における2段目の溝66b,66dの領域)73にエポキシ樹脂にシリカ等の反射性の添付剤を混合した遮光性樹脂を注入してトランスファー成形し、透明通路58を平板状の遮光性樹脂47内に埋め込む。図29は、トランスファー成形によって透明通路58が平板状の遮光性樹脂47内に埋め込まれた状態のプリント基板45を示す。この場合も、図25に示すプリント基板45と全く同じ構造のプリント基板45が得られる。尚、図29(b)は、図29(a)におけるO‐O'矢視断面図である。
【0093】
以後、図27の場合と同様に、上記第1,第2レンズ43,44を形成するための金型64,65内にプリント基板45が配置され、プリント基板45と金型64とで形成される空間にエポキシ樹脂等の透明樹脂を注入してトランスファー成形し、第1,第2レンズ43,44が形成される。
【0094】
以上のごとく、本製造方法においては、上記金型61,62内にプリント基板45を配置し、エポキシ樹脂にシリカ等の反射性の添付剤を混合した遮光性樹脂を注入してトランスファー成形し、表面に段付き溝66が形成された平板状の遮光性樹脂47を形成する。その後、遮光性樹脂47上の段付き溝66における1段目の溝66a,66c内に、シリコーン樹脂等の透明樹脂をポッティングし硬化して透明通路58を形成する。その後、金型71,72内にプリント基板45を配置し、エポキシ樹脂にシリカ等の反射性の添付剤を混合した遮光性樹脂を注入してトランスファー成形して、透明通路58を平板状の遮光性樹脂47内に埋め込むようにしている。したがって、段付き溝66における2段目の溝66b,66d内に上記遮光性樹脂をポッティングし硬化する場合に比して、透明通路58の周囲を全く同じ光学特性を有する遮光性樹脂で取り囲むことができ、透明通路58における光の伝送損失をさらに減らすことが可能になる。
【0095】
尚、図28に示す光学式測距装置41の製造方法においては、図20〜図27に示す光学式測距装置41の製造方法の場合と同様に、段付き溝66を形成するようにしている。しかしながら、図28に示す製造方法においては、ポッティングを2回行うことが無く、金型内で上記遮光性樹脂をトランスファー成形する。そのため、透明通路58形成用の溝を必ずしも段付き溝にする必要は無い。
【0096】
また、図28に示す光学式測距装置41の製造方法においては、段付き溝66における1段目の溝66a,66c内に上記透明樹脂をポッティングして透明通路58を形成している。しかしながら、プリント基板45を金型内に配置し、上記透明樹脂をトランスファー成形することによって透明通路58を形成可能である事は言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】この発明の光学式測距装置における平面図である。
【図2】図1に示す光学式測距装置における側面図である。
【図3】図1からシールドケースを取り除いた状態を示す図である。
【図4】図2からシールドケースを取り除いた状態を示す図である。
【図5】図3における遮光性樹脂を透明にした状態を示す図である。
【図6】図5におけるA‐A'矢視断面図である。
【図7】測距対象物と光学式測距装置との位置関係を示す図である。
【図8】図1に示す光学式測距装置の製造方法の説明図である。
【図9】図8に続く製造方法の説明図である。
【図10】図9に続く製造方法の説明図である。
【図11】図10に続く製造方法の説明図である。
【図12】図11に続く製造方法の説明図である。
【図13】プリント基板上に第1レンズおよび第2レンズが形成された状態を示す図である。
【図14】受光素子上の第1受光部と第2受光部との間に壁が形成された状態を示す図である。
【図15】図1とは異なる光学式測距装置における平面図である。
【図16】図15におけるG‐G'矢視断面図である。
【図17】図1とは異なる光学式測距装置からシールドケースを取り除くと共に遮光性樹脂を透明にした状態を示す図である。
【図18】図17におけるH‐H'矢視断面図である。
【図19】測距対象物と図17に示す光学式測距装置との位置関係を示す図である。
【図20】図17に示す光学式測距装置の製造方法の説明図である。
【図21】図20に続く製造方法の説明図である。
【図22】プリント基板上に平板状の遮光性樹脂が形成された状態を示す図である。
【図23】図22におけるK‐K'矢視断面図である。
【図24】図21に続く製造方法の説明図である。
【図25】図24に続く製造方法の説明図である。
【図26】図25におけるN‐N'矢視断面図である。
【図27】図25に続く製造方法の説明図である。
【図28】図24に続く図25とは異なる製造方法の説明図である。
【図29】トランスファー成形によって透明通路が平板状の遮光性樹脂内に埋め込まれた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1,31,41…光学式測距装置、
2…シールドケース、
3,4,43,44…レンズ、
5,45…プリント基板、
7,47…遮光性樹脂、
8,8',48…透明樹脂、
9,49…電極、
10,50…発光素子(LED)、
11,51…受光素子(PD)、
12,13,52,53…受光部、
14,16,34,54,56…窓、
15,55…測距対象物、
17,57…第1光路、
18,59…第2光路、
21,60,67,68…ディスペンサー、
22,23,24,25,61,62,64,65,71,72…金型、
26…壁、
32…VCSEL、
33…散乱性透明樹脂、
58…透明通路、
66…段付き溝、
66a,66c…1段目の溝、
66b,66d…2段目の溝。
【出願人】 【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
【出願日】 平成19年3月29日(2007.3.29)
【代理人】 【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏

【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄

【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典


【公開番号】 特開2008−3075(P2008−3075A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2007−88390(P2007−88390)