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【発明の名称】 GPS測位データの誤認識判別方法および誤認識判別装置
【発明者】 【氏名】清水 勝義

【氏名】永井 紀彦

【氏名】藤田 孝

【氏名】三宅 寿英

【要約】 【課題】測位データに跳躍現象が発生した場合でも、跳躍による誤認識を判別し得るGPS測位データの誤認識判別方法を提供する。

【構成】RTK方式によるGPS受信機1で得られた測位精度データを順次入力してフィックス解よりも精度が低いか否かを判断し、フィックス解よりも精度が低いと判断された場合に、GPS受信機で得られた測位データが誤認識データである可能性を示す誤認識フラグを立て、そして引き続き入力される測位精度データがフィックス解であると判断された場合で且つ誤認識フラグが立っている場合に、当該誤認識フラグが立つ以前におけるフィックス解状態の測位データを用いて、現在の測位データが誤認識データであるか否かの判別を行うようにした方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リアルタイム・キネマティック方式により得られたGPS測位データが誤認識データであるか否かを判別する方法であって、
リアルタイム・キネマティック方式を用いたGPS受信機にて得られた測位精度データを順次入力して整数値バイアスの確定状態(以下、整数値確定状態という)よりも精度が低いか否かを判断する測位精度判断ステップと、
この測位精度判断ステップにて整数値確定状態よりも精度が低いと判断された場合に、誤認識データである可能性を示す誤認識フラグを立てる警告ステップと、
上記測位精度判断ステップにおいて引き続き入力される測位精度データが整数値確定状態であると判断された場合で且つ誤認識フラグが立っている場合に、当該誤認識フラグが立つ以前における整数値確定状態での測位データを用いて、現在の測位データが誤認識データであるか否かの判別を行う誤認識判別ステップと
を具備したことを特徴とするGPS測位データの誤認識判別方法。
【請求項2】
リアルタイム・キネマティック方式により得られたGPS測位データが誤認識データであるか否かを判別する方法であって、
リアルタイム・キネマティック方式を用いたGPS受信機にて得られた測位精度データを順次入力して整数値バイアスの確定状態(以下、整数値確定状態という)よりも精度が低いか否かを判断する測位精度判断ステップと、
この測位精度判断ステップにて整数値確定状態よりも精度が低いと判断された場合に、誤認識データである可能性を示す誤認識フラグを立てる誤認識フラグ保持ステップと、
上記測位精度判断ステップにて整数値確定状態よりも精度が低いと判断された場合に、当該誤認識フラグが立つ以前における整数値確定状態で且つ所定時間範囲での測位データの平均値を求める基準データ演算ステップと、
上記測位精度判断ステップにて引き続き入力される測位精度データが整数値確定状態であると判断された場合に、上記誤認識フラグ保持ステップにおいて誤認識フラグが立っているか否かを判定する誤認識フラグ判定ステップと、
この誤認識フラグ判定ステップにて誤認識フラグが立っていると判定された場合に、上記基準データ演算ステップにて求められた測位データの平均値と現在の測位データとの差分値を求める差分値演算ステップと、
この差分値演算ステップにて求められた差分値と所定の閾値とを比較して誤認識データであるか否かを判別する誤認識判別ステップと
を具備したことを特徴とするGPS測位データの誤認識判別方法。
【請求項3】
リアルタイム・キネマティック方式により得られたGPS測位データが誤認識データであるか否かを判別する装置であって、
リアルタイム・キネマティック方式を用いたGPS受信機にて得られた測位精度データを入力して整数値バイアスの確定状態(以下、整数値確定状態という)よりも精度が低いか否かを判断する測位精度判断部と、
この測位精度判断部で整数値確定状態よりも精度が低いと判断された場合に、誤認識データである可能性を示す誤認識フラグを立てる誤認識フラグ保持部と、
上記測位精度判断部で整数値確定状態よりも精度が低いと判断された場合に、当該誤認識フラグが立つ以前における整数値確定状態で且つ所定時間範囲での測位データの平均値を求める基準データ演算部と、
上記測位精度判断部で引き続き入力される測位精度データが整数値確定状態であると判断された場合に、上記誤認識フラグ保持部において誤認識フラグが立っているか否かを判定する誤認識フラグ判定部と、
この誤認識フラグ判定部で誤認識フラグが立っていると判定された場合に、上記基準データ演算部で求められた測位データの平均値と現在の測位データとの差分値を求める差分値演算部と、
この差分値演算部で求められた差分値と所定の閾値とを比較して誤認識データであるか否かを判別する誤認識判別部と
を具備したことを特徴とするGPS測位データの誤認識判別装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、GPS測位データの誤認識判別方法および誤認識判別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、汎地球測位システム(以下、GPSという)を用いて種々の計測、例えば地球上における三次元位置、地殻の変動、海面の変位量などが計測されており、このGPSを用いたものとしては、一般的に、カーナビゲーションが知られている。
【0003】
ところで、GPS受信機で得られる測位データについては、単独測位、設置座標が既知の固定局からの計測位置の誤差データを移動局に送信して共通誤差をキャンセルするディファレンシャアルGPS(DGPS)などの測位方式により、その測位精度が大きく異なり、カーナビゲーションの場合、測位精度が低い場合には、本来の道路からかなり外れた位置を示す場合が多々ある。
【0004】
このような測位精度が低い場合には、それぞれ使用目的に応じた補正方法が採用されており、例えばカーナビゲーションの場合には、GPS受信機の他に、自立型センサが設けられてGPS測位データを修正するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、GPSを利用するものとしては、上述したような地上での位置を検出する以外に、海面変位すなわち波高を測定するものが既に提案されている(特許文献2参照)。
そして、この波高の測定方法には、リアルタイム性を確保しつつセンチメートルオーダ−の精度で計測し得るリアルタイム・キネマティック方式(以下、RTK方式という)が用いられている。
【0006】
このRTK方式は、GPS衛星から発信される測位用電波の搬送波位相を用いて計測するもので、より具体的には、緯度、経度、高さが既知である基準局からのデータを用いて計測対象点である海面位置(具体的には、海面に浮遊されたブイの位置)の変位を求めるものである。
【特許文献1】特開平05−18768号公報
【特許文献2】特開平10−185564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、搬送波位相により、計測対象点に設けられたGPS受信機とGPS衛星との距離を求める際に、整数値バイアス(整数値アンビギュイティともいう)を確定する必要がある。
【0008】
しかし、RTK方式により、連続して海面の変位を計測する場合、時々、整数値バイアスを確定することができず測位データが急激に変化する跳躍現象が発生するが、カーナビゲーションなどのように自立型センサにより補正することができない。したがって、跳躍現象が発生した場合、誤ったデータが計測値として採用されてしまうという問題がある。つまり、測位データの信頼性が失われることになる。
【0009】
そこで、上記課題を解決するため、本発明は、測位データに跳躍現象が発生した場合でも、跳躍による誤認識を判別し得るGPS測位データの誤認識判別方法および誤認識判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のGPS測位データの誤認識判別方法は、リアルタイム・キネマティック方式により得られたGPS測位データが誤認識データであるか否かを判別する方法であって、
リアルタイム・キネマティック方式を用いたGPS受信機にて得られた測位精度データを順次入力して整数値バイアスの確定状態(以下、整数値確定状態という)よりも精度が低いか否かを判断する測位精度判断ステップと、
この測位精度判断ステップにて整数値確定状態よりも精度が低いと判断された場合に、誤認識データである可能性を示す誤認識フラグを立てる警告ステップと、
上記測位精度判断ステップにおいて引き続き入力される測位精度データが整数値確定状態であると判断された場合で且つ誤認識フラグが立っている場合に、当該誤認識フラグが立つ以前における整数値確定状態での測位データを用いて、現在の測位データが誤認識データであるか否かの判別を行う誤認識判別ステップとを具備した方法である。
【0011】
また、本発明の他のGPS測位データの誤認識判別方法は、リアルタイム・キネマティック方式により得られたGPS測位データが誤認識データであるか否かを判別する方法であって、
リアルタイム・キネマティック方式を用いたGPS受信機にて得られた測位精度データを順次入力して整数値バイアスの確定状態(以下、整数値確定状態という)よりも精度が低いか否かを判断する測位精度判断ステップと、
この測位精度判断ステップにて整数値確定状態よりも精度が低いと判断された場合に、誤認識データである可能性を示す誤認識フラグを立てる誤認識フラグ保持ステップと、
上記測位精度判断ステップにて整数値確定状態よりも精度が低いと判断された場合に、当該誤認識フラグが立つ以前における整数値確定状態で且つ所定時間範囲での測位データの平均値を求める基準データ演算ステップと、
上記測位精度判断ステップにて引き続き入力される測位精度データが整数値確定状態であると判断された場合に、上記誤認識フラグ保持ステップにおいて誤認識フラグが立っているか否かを判定する誤認識フラグ判定ステップと、
この誤認識フラグ判定ステップにて誤認識フラグが立っていると判定された場合に、上記基準データ演算ステップにて求められた測位データの平均値と現在の測位データとの差分値を求める差分値演算ステップと、
この差分値演算ステップにて求められた差分値と所定の閾値とを比較して誤認識データであるか否かを判別する誤認識判別ステップとを具備した方法である。
【0012】
さらに、本発明のGPS測位データの誤認識判別装置は、リアルタイム・キネマティック方式により得られたGPS測位データが誤認識データであるか否かを判別する装置であって、
リアルタイム・キネマティック方式により得られたGPS測位データが誤認識データであるか否かを判別する装置であって、
リアルタイム・キネマティック方式を用いたGPS受信機にて得られた測位精度データを入力して整数値バイアスの確定状態(以下、整数値確定状態という)よりも精度が低いか否かを判断する測位精度判断部と、
この測位精度判断部で整数値確定状態よりも精度が低いと判断された場合に、誤認識データである可能性を示す誤認識フラグを立てる誤認識フラグ保持部と、
上記測位精度判断部で整数値確定状態よりも精度が低いと判断された場合に、当該誤認識フラグが立つ以前における整数値確定状態で且つ所定時間範囲での測位データの平均値を求める基準データ演算部と、
上記測位精度判断部で引き続き入力される測位精度データが整数値確定状態であると判断された場合に、上記誤認識フラグ保持部において誤認識フラグが立っているか否かを判定する誤認識フラグ判定部と、
この誤認識フラグ判定部で誤認識フラグが立っていると判定された場合に、上記基準データ演算部で求められた測位データの平均値と現在の測位データとの差分値を求める差分値演算部と、
この差分値演算部で求められた差分値と所定の閾値とを比較して誤認識データであるか否かを判別する誤認識判別部とを具備したものである。
【発明の効果】
【0013】
上記GPS測位データの誤認識判別方法および誤認識判別装置の構成によると、RTK方式によるGPS受信機から得られた測位データに対して、当該GPS受信機から出力される測位精度データを用いて、測位精度レベルを判断するとともに、この測位精度レベルが整数値確定状態よりも低くなったことをきっかけとして、その後の整数値確定状態における測位データについて、データの跳躍の有無を誤認識判別部にて判別するようにしたので、当該データの跳躍によるデータの誤認識、すなわち誤認識データを採用するのを防止することができ、したがって正確な観測データを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態に係るGPS測位データの誤認識判別方法および誤認識判別装置を、図1〜図3に基づき説明する。
【0015】
なお、本実施の形態においては、GPS測位データを用いて海面の変位を計測する海面観測システムに、本発明に係るGPS測位データの誤認識判別方法および誤認識判別装置を適用した場合について説明する。
【0016】
本実施の形態に係る海面観測システムにおいては、リアルタイム・キネマティック方式(以下、RTK方式という)を用いて海面の変位が計測され、この海面変位に基づき海洋上での種々の観測データを得ることになる。
【0017】
このRTK方式を簡単に説明すると、位置が既知である基準局からのデータを用いる相対測位方式で、詳しくは動的干渉測位方式である。
このRTK方式は、GPS衛星からの搬送波の位相を計測することで、高精度な計測を行うことができるが、干渉測位における整数波長分である整数値バイアスを確定する必要があり、例えば5個以上のGPS衛星からの測位データに最小二乗法を適用して決定される。
【0018】
このように、整数値バイアスが決定された場合の計測位置をフィックス解(整数値バイアスが確定した整数値確定状態ともいう)といい、整数値バイアスを決定することができない場合の計測位置をフロート解(整数値バイアスが確定しない整数値非確定状態ともいう)という。すなわち、このRTK方式においては、測位精度として、フィックス解(数センチ程度の精度)によるもの、フロート解(数センチ〜数十センチ程度の精度)によるもの、基準局からのデータを用いて補正が行われたDGPS解(数メートル程度の精度で、正確にはコードDGPS解という)によるもの、単独測位による単独測位解(数十メートル程度の精度)によるもの、および解が得られない測位演算不能状態があり、通常、RTK方式のGPS受信機には、現時点での測位精度を知らせるための測位精度データ(精度ステータスともいう)の出力機能が具備されている。
【0019】
そして、本実施の形態に係る海面観測システムでは、上述した各測位精度の状態に基づき測位データに跳躍現象が生じているか否か、すなわち誤認識データが発生しているか否かが判別される。
【0020】
まず、誤認識データの発生しているか否かを判別する誤認識判別方法を実行する誤認識判別装置を具備した海面観測システムの概略構成を、図1に基づき説明する。
この海面観測システムは、例えば海面に浮遊されたブイに搭載されるとともに陸上に設けられた基準局(図示せず)からの参照データ(測位データ、補正データなど)を入力して少なくとも測位データおよび測位精度データを出力するGPS受信機1と、このGPS受信機1からの測位データおよび測位精度データ(具体的には、少なくとも、フィックス解を示すデータ)を蓄積する測位データ蓄積部2と、この測位データ蓄積部2に蓄積された測位データを入力して所定のフィルター処理を行い所定の観測データを抽出するデータ抽出部3と、上記GPS受信機1から出力される測位精度データを入力して、現在の測位精度がフィックス解であるか否か、すなわちフィックス解かそれともフロート解以下であるかを判断する第1測位精度判断部(測位信頼度判断部ともいえる)11と、フロート解以下である場合には、上記測位精度データを入力して、さらにDGPS解以下であるか否かを判断する第2測位精度判断部12と、この第2測位精度判断部12でDGPS解以下であると判断された場合に、当該第2測位精度判断部12から測位データに跳躍現象が生じている誤認識データ[フィックス解として蓄積されてはいるが、実際にはずれているデータ(ミスフィックスともいう)]の可能性があることを示すオン指令を入力して誤認識フラグ「1」を立てて(フラグをオンにする)保持する誤認識フラグ保持部13と、同じく上記第2測位精度判断部12でDGPS解以下であると判断された場合に、測位データ蓄積部2から、フロート解になる直前から前に遡る(つまり、誤認識フラグが立つ以前における)所定時間範囲αでの測位データ、具体的には、15分間〜25分間の測位データ(つまり、フィックス解の状態で15分〜25分間に亘って遡ったデータ群である)を入力して、所定時間範囲αにおける平均値すなわち平均海面位置(以下、平均水位という)η′およびその標準偏差σを求める基準データ演算部14と、上記第1測位精度検出部11で引き続き入力される測位精度データがフィックス解であると判断された場合に、上記誤認識フラグ保持部13で保持された誤認識フラグがオン(「1」)になっているか否かを判定する誤認識フラグ判定部15と、この誤認識フラグ判定部15で誤認識フラグがオンであると判定された場合に当該誤認識フラグ判定部15からの指令により、上記測位データ蓄積部2からの測位データ(具体的には海面位置)ηおよび基準データ演算部14で求められた平均水位η′を入力してこれらの差分値Δη(=η−η′)を求める差分値演算部16と、この差分値演算部16で求められた差分値Δηを入力して所定の閾値Aと比較して誤認識データ(ミスフィックス)であるか否かを判別するとともに誤認識データであると判別された場合には当該フィックス解のデータを無効とする無効処理指令をデータ抽出部3に出力する誤認識判別部17とが具備されている。
【0021】
ところで、測位データ蓄積部2では、GPS受信機1からの測位データが蓄積されるが、第1測位精度判断部11でフィックス解であると判断された場合だけ、第1測位精度判断部11からの蓄積指令(フィックス解である旨、またはこれに相当する指令である)により測位データそのものが蓄積するようにされており、フィックス解でない場合、つまりフロート解以下の場合には、測位データとして扱われないダミーデータに置き換えて蓄積する機能が備えられている。
【0022】
さらに、この測位データ蓄積部2では、蓄積されたデータがフィックス解である旨の測位精度データも併せて蓄積される。この測位精度データは、GPS受信機1から直接に蓄積するようにしてもよく、または第1測位精度判断部11からの蓄積指令としての測位精度データを蓄積するようにしてもよい。そして、基準データ演算部14で平均水位および標準偏差を求める際に、上記併せて蓄積された測位精度データに基づき、上記フロート解になる以前のフィックス解としての測位データが取り出されることになる(なお、ダミーデータであるか否かを判断することで、測位精度データの蓄積を省略することもできる)。
【0023】
また、データ抽出部3についても、誤認識判別部17から無効処理指令があった場合に、そのフィックス解をダミーデータに置き換える機能が備えられている。
なお、上記誤認識判別部17で誤認識データでないと判別された場合に、オフ指令が誤認識フラグ保持部13に出力されて誤認識フラグがオフ(「0」)にされる。つまり、フラグのリセットが行われる。
【0024】
また、上記データ抽出部3では、フィルター処理により観測データとして海面変位データが抽出される。例えば、フィルターを適宜選択することにより、津波成分を含んだ海面変位データ、天文潮汐による海面変位データ、波浪による海面変位データなどを抽出することができる。
【0025】
さらに、誤認識判別部17で判別の基準となる閾値Aとしては、標準偏差σに所定係数βを掛けた値が用いられる。なお、この標準偏差σおよび平均水位η′を求めるデータについては、上述したように所定時間範囲αにおける測位データとされるが、フロート解以下のデータ(ダミーデータである)は除外される。このαおよびβは観測している物理現象によって定められる係数であり、αは、常時、計測されている測位データの変動周期の100〜200倍程度の値が用いられ、またβについては、測位データの変動のばらつき程度、例えば平均水位η′のばらつき程度によって定められる。
【0026】
例えば、海洋などで観測される海面変動の殆どは周期が数秒から十数秒で、ばらつきがレーリー分布に従う風波であり、αが15〜25分間、βが3〜6程度にされる。最終的には、対象とする観測データの過去事例を分析して具体的が数値が定められるが、沖合の津波・波浪などを観測する場合には、概ね、αを20分間、βを5程度とするのが好ましい。なお、α,β,ηおよびσを用いた誤認識判別(ミスフィックス判別)の概念を図2に示しておく。
【0027】
なお、βについては、振幅に大小差がある地震波などの場合には、8〜10程度の値が用いられ、規則的な機械振動などの場合には、3〜5程度の値が用いられる。
なお、上記GPS受信機1、測位データ蓄積部2、第1測位精度判断部11、第2測位精度判断部12、誤認識フラグ保持部13、基準データ演算部14、誤認識フラグ判定部15、差分値演算部16および誤認識判別部17により、測位データの誤認識判別装置が構成されるとともに、この誤認識判別装置についてはGPS受信機1と同じブイに搭載されている。勿論、GPS受信機1以外の構成部分については、陸上の施設に設置してもよく、この場合、GPS受信機1にて得られた測位データ、測位精度データなどは無線などを介して陸上の施設に送られることになる。
【0028】
次に、上記海面観測システムにおける海面変位の観測方法を、特に測位データの誤認識判別方法に着目して説明する。
まず、RTK方式を用いたGPS受信機1からの測位データは測位データ蓄積部2に蓄積されるとともに、同じくGPS受信機1から出力された測位精度データは第1測位精度判断部11に入力されてフィックス解であるか否かが判断される。
【0029】
第1測位精度判断部11において、測位精度がフィックス解であると判断された場合には、誤認識フラグ判定部15で誤認識フラグがオンかオフであるかが判定され、オフである場合には、測位データ蓄積部2にそのまま測位データがフィックス解として蓄積される。なお、誤認識フラグがオフである場合に、当該誤認識フラグ判定部15から測位データ蓄積部2にその測位データが有効(データの採用)であることを知らせる指令を出力させるようにしてもよい(後述する図3のフローチャート参照)。
【0030】
一方、第1測位精度判断部11でフロート解以下であると判断された場合には、さらに測位精度データが第2測位精度判断部12に入力されてDGPS解以下であるか否かが判断される。なお、フロート解以下であると判断された場合、測位データについては、ダミーデータが測位データ蓄積部2に蓄積される。
【0031】
この第2測位精度判断部12において、DGPS解以下であると判断された場合には、誤認識フラグ保持部13に誤認識フラグをオンにする指令が出力されてフラグが「1」に設定される。また、この第2測位精度判断部12から基準データ演算部14に演算指令が出力されて、所定時間範囲での平均水位η′および標準偏差σが求められ、そして平均水位η′が差分値演算部16に出力される。
【0032】
一方、誤認識フラグ判定部15で誤認識フラグ保持部13におけるフラグがオンであると判定された場合には、その旨が差分値演算部16に入力されて当該測位データ(海面位置)ηと平均水位η′との差分値Δηが求められ、この差分値Δηが誤認識判別部17に出力される。
【0033】
そして、この誤認識判別部17にて、この差分値Δηが所定の閾値Aと比較されて、閾値より大きい場合には、測位データが跳躍しており誤認識データすなわちミスフィックスであると判別される。
【0034】
誤認識データであると判別された場合には、当該測位データが無効であることを示すダミーデータに置き換えるための無効処理指令がデータ抽出部3に出力される。
一方、誤認識判別部17で誤認識データでないと判別された場合には、誤認識フラグ保持部13にフラグをオフにする指令が出力されて、フラグのリセットが行われる。勿論、この場合でも、データ抽出部3には、誤認識データでない旨が出力されており、当該判別に係る測位データはそのままフィルター処理が施され、所定のデータとして、例えばフィルターが津波成分を検出し得るものであれば、津波成分を含んだデータすなわち観測データが抽出される。
【0035】
ところで、上記説明において、誤認識フラグ保持部に誤認識フラグをオンにする指令を出力する部分を、誤認識データが発生している可能性があるという警告を出力するということもできる。この意味で、誤認識フラグ保持部を警告出力部または警告信号保持部ということもでき、また誤認識フラグを立てる(オンにする)ステップを警告ステップということもできる。
【0036】
なお、上述した誤認識判別方法の主要手順をフローチャートで示すと、図3のようになる。
ここで、上述した誤認識判別方法をステップ形式にて概略的に表わすと、以下のようになる。
【0037】
すなわち、この誤認識判別方法は、リアルタイム・キネマティック方式により得られたGPS測位データが誤認識データであるか否かを判別する方法であって、
リアルタイム・キネマティック方式を用いたGPS受信機にて得られた測位精度データを順次入力してフィックス解よりも精度が低いか否かを判断する測位精度判断ステップと、
この測位精度判断ステップにてフィックス解よりも精度が低いと判断された場合に、誤認識データである可能性を示す誤認識フラグを立てる警告ステップと、
上記測位精度判断ステップにおいて引き続き入力される測位精度データがフィックス解であると判断された場合で且つ誤認識フラグが立っている場合に、当該誤認識フラグが立つ以前におけるフィックス解状態の測位データを用いて、現在の測位データが誤認識データであるか否かの判別を行う誤認識判別ステップとを具備した方法である。
【0038】
また、上述した誤認識判別方法をステップ形式にて、より詳しく表わすと、以下のようになる。
すなわち、この誤認識判別方法は、リアルタイム・キネマティック方式により得られたGPS測位データが誤認識データであるか否かを判別する方法であって、
リアルタイム・キネマティック方式を用いたGPS受信機にて得られた測位精度データを順次入力してフィックス解(整数値バイアスの確定状態)よりも精度が低いか否かを判断する測位精度判断ステップと、
この測位精度判断ステップにてフィックス解よりも精度が低いと判断された場合に、誤認識データである可能性を示す誤認識フラグを立てる誤認識フラグ保持ステップと、
上記測位精度判断ステップにてフィックス解よりも精度が低いと判断された場合に、当該誤認識フラグが立つ以前におけるフィックス解状態で且つ所定時間範囲での測位データの平均値および標準偏差を求める基準データ演算ステップと、
上記測位精度判断ステップにて引き続き入力される測位精度データがフィックス解であると判断された場合に、上記誤認識フラグ保持ステップにおいて誤認識フラグが立っているか否かを判定する誤認識フラグ判定ステップと、
この誤認識フラグ判定ステップにて誤認識フラグが立っていると判定された場合に、上記基準データ演算ステップにて求められた測位データの平均値と現在の測位データとの差分値を求める差分値演算ステップと、
この差分値演算ステップにて求められた差分値と所定の閾値とを比較して誤認識データであるか否かを判別する誤認識判別ステップとを具備し、
且つ上記閾値として、基準データ演算ステップからの測位データの標準偏差に、測位データの変動周期に基づく係数を掛けた値を用いる方法である。
【0039】
このように、RTK方式によるGPS受信機から得られた測位データに対して、当該GPS受信機から出力される測位精度データを用いて、測位精度レベルを判断するとともに、この測位精度レベルが、DGPS解以下である場合に、データの跳躍の有無を誤認識判別部にて判別するようにしたので、当該データの跳躍によるデータの誤認識、すなわちミスフィックスのデータを採用するのを防止することができ、したがって正確な観測データを得ることができる。例えば、観測データが津波成分である場合には、データの跳躍現象により、津波でないのに津波であるという誤報を出す虞がなくなり、津波警報の信頼性を高めることができる。
【0040】
また、この測位精度レベルが、DGPS解以下である場合(実際の観測結果では、DGPS解以下の場合に跳躍現象が多く発生している事実を、本発明者等が突き止めている)に、データの跳躍の有無を誤認識判別部にて判別するようにしたので、常時、データの跳躍の有無を判別する必要がないため、演算部に余分な負荷をかけることなく、効率良く、誤認識が殆どない観測データを得ることができる。
【0041】
また、上記誤認識判別部で、誤認識データではなく正しいフィックス解であると判別された場合に、誤認識フラグをオフにするようにして、誤認識データによる跳躍現象が生じなかったものとして、その警告(警戒)が解かれることになる。すなわち、警戒しつづけることによる計算ステップの増加分(Δηの計算と誤認識の判別)は演算部の負荷の増大に繋がり、GPS受信機がブイなどに設けられたバッテリー駆動の場合には、バッテリーの消費電力を節約することができる。
【0042】
さらに、測位データ蓄積部に、測位データの他に、測位精度レベルおよび測位データについての有効・無効を示すデータを蓄積しておき、誤認識フラグがオンになった際に、誤認識フラグがオンになる直前の所定時間範囲αの有効データを用いて平均水位η’と標準偏差σとを計算するようにしてもよい。
【0043】
ところで、上記実施の形態においては、測位精度レベルがDGPS以下の場合に、誤認識フラグを立てるように説明したが、例えばフロート解以下の場合に、誤認識フラグを立てるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係るGPS測位データの誤認識判別装置を用いた海面観測システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】同誤認識判別方法の概念を説明するためのグラフである。
【図3】同海面計測システムにおけるGPS測位データの誤認識判別方法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1 GPS受信機
2 測位データ蓄積部
3 データ抽出部
11 第1測位精度判断部
12 第2測位精度判断部
13 誤認識フラグ保持部
14 基準データ演算部
15 誤認識フラグ判定部
16 差分値演算部
17 誤認識判別部
【出願人】 【識別番号】501241911
【氏名又は名称】独立行政法人港湾空港技術研究所
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
【出願日】 平成18年6月23日(2006.6.23)
【代理人】 【識別番号】100113859
【弁理士】
【氏名又は名称】板垣 孝夫

【識別番号】100068087
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘

【識別番号】100096437
【弁理士】
【氏名又は名称】笹原 敏司

【識別番号】100100000
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 洋平


【公開番号】 特開2008−2975(P2008−2975A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−173311(P2006−173311)