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【発明の名称】 車輪角加速度検出装置、自動車及び車輪角加速度検出方法
【発明者】 【氏名】石毛 高博
【課題】車輪角加速度の検出精度が向上する車輪角加速度検出装置を提供する。

【構成】車両の車体加速度を連続して検出する車体加速度検出手段で検出した車体加速度及び車両の各車輪の回転体にそれぞれ装着されて車輪加速度を連続して検出する車輪加速度検出手段で検出した車輪加速度に基づき、車輪角加速度を演算する車輪角加速度演算手段とを備えたことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体加速度を連続して検出する車体加速度検出手段と、
車両の各車輪の回転体にそれぞれ装着されて車輪加速度を連続して検出する車輪加速度検出手段と、
前記車体加速度検出手段で検出した前記車体加速度及び前記車輪加速度検出手段で検出した前記車輪加速度に基づき車輪角加速度を演算する車輪角加速度演算手段と、を備えたことを特徴とする車輪角加速度検出装置。
【請求項2】
前記車輪角加速度演算手段は、前記車体加速度検出手段で検出した前記車体加速度及び前記車輪加速度検出手段で検出した前記車輪加速度に基づき、前記車体加速度を車軸中心の加速度に近似して、以下の(1)式を用いて車輪角加速度を演算することを特徴とする請求項1記載の車輪角加速度検出装置。
【数1】


ここで、αK:車輪角加速度、aK:車輪加速度、a0:車体加速度、ωK:車輪角速度、rrK:車体重心位置から車輪加速度検出手段までの相対距離である。
【請求項3】
車両の置かれている状態、或いは前記車輪加速度検出手段の状態の少なくとも何れかに基づき、前記車輪加速度検出手段の検出値の補正を行なう補正手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の車輪角加速度検出装置。
【請求項4】
前記補正手段は、車両の停止状態において、前記回転体に装着した前記車輪加速度検出手段の初期位置角度を演算し、この初期位置角度に基づいて前記車輪加速度検出手段の検出値の補正を行なうことを特徴とする請求項3記載の車輪角加速度検出装置。
【請求項5】
前記車輪加速度検出手段が、ホイールセンタを通過する鉛直方向に対して直交せずに傾角を持って前記回転体に装着されている場合に、前記補正手段は、前記傾角に基づいて前記車輪加速度検出手段の検出値の補正を行なうことを特徴とする請求項3又は4記載の車輪角加速度検出装置。
【請求項6】
前記車輪が特定の対地キャンバ角で傾いている場合に、前記補正手段は、前記対地キャンバ角に基づいて前記車輪加速度検出手段の検出値の補正を行なうことを特徴とする請求項3から5記載の何れか1項に記載の車輪角加速度検出装置。
【請求項7】
車両の停止状態において路面の傾斜角を検出したときに、前記補正手段は、前記路面の傾斜角に基づいて前記車輪加速度検出手段の検出値の補正を行なうことを特徴とする請求項3から6記載の何れか1項に記載の車輪角加速度検出装置。
【請求項8】
前記車輪角加速度演算手段は、特定のサンプリング時間に回転する前記車輪加速度検出手段の回転角度を検出し、この回転角度を前記サンプリング時間で除算することで前記車輪角速度を演算することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の車輪角加速度検出装置。
【請求項9】
車体加速度を連続して検出する車体加速度検出手段と、
各車輪の回転体にそれぞれ装着されて車輪加速度を連続して検出する車輪加速度検出手段と、
前記車体加速度検出手段で検出した前記車体加速度及び前記車輪加速度検出手段で検出した前記車輪加速度に基づき、前記車体加速度を車軸中心の加速度に近似して、以下の(1)式を用いて車輪角加速度を演算する車輪角加速度演算手段と、を備えたことを特徴とする自動車。
【数2】


ここで、αK:車輪角加速度、aK:車輪加速度、a0:車体加速度、ωK:車輪角速度、rrK:車体重心位置から車輪加速度検出手段までの相対距離である。
【請求項10】
車両の車体加速度を連続して検出する車体加速度検出手段と、
車両の各車輪の回転体にそれぞれ装着されて車輪加速度を連続して検出する車輪加速度検出手段と、車輪角加速度演算手段と、を備え、
前記車輪角加速度演算手段は、前記車体加速度検出手段で検出した前記車体加速度及び前記車輪加速度検出手段で検出した前記車輪加速度に基づき、前記車体加速度を車軸中心の加速度に近似して、以下の(1)式を用いて車輪角加速度を演算することを特徴とする車輪角加速度検出方法。
【数3】


ここで、αK:車輪角加速度、aK:車輪加速度、a0:車体加速度、ωK:車輪角速度、rrK:車体重心位置から車輪加速度検出手段までの相対距離である。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪角加速度を検出する車輪角加速度検出装置、自動車及び車輪角加速度検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車輪角加速度は、例えば車輪のスリップ率や制動・駆動力など、車輪の運動状態を制御して車両の運動を制御する車両の走行安定制御装置において使用される。
車輪角加速度を検出する従来方法として、下記(2)式で示すように、車輪速パルスセンサを用いてパルスエッジをサンプリング周期dt毎に検出し、得られたパルスの周波数に基づいて今回の車輪角速度ωK(Z)を演算するとともに、すでに演算している前回の車輪角速度ωK(Z−1)との差分を取ることで車輪角加速度αKを検出する方法が知られている(例えば特許文献1)。
αk=(ωk(Z)−ωk(Z−1))/dt ……… (2)
【0003】
なお、車輪角速度ωk及び車輪角加速度αkに付しているkは、前後左右の車輪の違いを示し、例えば、k=1は左前輪を示し、k=2は左後輪を示し、k=3は右前輪を示し、k=4は右後輪を示している。また、Zは、自然数である。
【特許文献1】特開2005−114738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の車輪角加速度を検出する方法は、車輪の急低速、急ロックが発生するような状況においては、車輪速パルスセンサのパルス分解能が落ちてエッジが所定の時間検出されなくなり、その所定時間の間において前回の車輪角速度ωk(Z−1)と同一の車輪角速度ωk(Z)を出力するため、角加速度αkの差分演算で0(ゼロ)が出力され、本来の車輪角加速度と異なる値を検出してしまう。
【0005】
このように、従来の車輪角加速度を検出する方法は、前回の車輪角速度ωk(Z−1)と今回の車輪角速度ωk(Z)の差分を取ることが必須であり、サンプリングが荒くなる場合には、車輪角加速度αkの検出精度が落ちてしまう事態が生じていた。
本発明の課題は、車輪角加速度の検出精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、車両の車体加速度を連続して検出する車体加速度検出手段と、車両の各車輪の回転体にそれぞれ装着されて車輪加速度を連続して検出する車輪加速度検出手段と、前記車体加速度検出手段で検出した前記車体加速度及び前記車輪加速度検出手段で検出した前記車輪加速度に基づき車輪角加速度を演算する車輪角加速度演算手段と、を備えたことを特徴とする車輪角加速度検出装置である。
【0007】
また、本発明は、車体加速度を連続して検出する車体加速度検出手段と、各車輪の回転体にそれぞれ装着されて車輪加速度を連続して検出する車輪加速度検出手段と、前記車体加速度検出手段で検出した前記車体加速度及び前記車輪加速度検出手段で検出した前記車輪加速度に基づき、前記車体加速度を車軸中心の加速度に近似して、以下の(1)式を用いて車輪角加速度を演算する車輪角加速度演算手段と、を備えたことを特徴とする自動車を提供するものである。
【0008】
【数4】


【0009】
ここで、αK:車輪角加速度、aK:車輪加速度、a0:車体加速度、ωK:車輪角速度、rrK:車体重心位置から車輪加速度検出手段までの相対距離である。
さらに、本発明は、車両の車体加速度を連続して検出する車体加速度検出手段と、車両の各車輪の回転体にそれぞれ装着されて車輪加速度を連続して検出する車輪加速度検出手段と、車輪角加速度演算手段と、を備え、前記車輪角加速度演算手段は、前記車体加速度検出手段で検出した前記車体加速度及び前記車輪加速度検出手段で検出した前記車輪加速度に基づき、前記車体加速度を車軸中心の加速度に近似して、以下の(1)式を用いて車輪角加速度を演算することを特徴とする車輪角加速度検出方法を提供するものである。
【0010】
【数5】


【0011】
ここで、αK:車輪角加速度、aK:車輪加速度、a0:車体加速度、ωK:車輪角速度、rrK:車体重心位置から車輪加速度検出手段までの相対距離である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、運転者が急ブレーキをかけて車輪が急低速、或いは急ロック状態になっても、連続して入力する車体加速度及び車輪加速度に基づいて車輪角加速度を高精度に検出することができる車輪角加速度検出装置を提供することができる。
また、本発明によると、運転者が急ブレーキをかけて車輪が急低速、或いは急ロック状態になっても、連続して入力する車体加速度及び車輪加速度に基づいて車輪角加速度を高精度に検出することができる自動車を提供することができる。
さらに、本発明によると、運転者が急ブレーキをかけて車輪が急低速、或いは急ロック状態になっても、連続して入力する車体加速度及び車輪加速度に基づいて車輪角加速度を高精度に検出することができる車輪角加速度検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図1及び図2は、本発明に係る車両の構成を示す。
図1に示すように、車両の左前輪WFL、左後輪WLL、図示しない右前輪及び右後輪の各ホイール2に、それぞれ車輪加速度センサ4が装着されているとともに、車体6に、車体加速度センサ8と、演算処理部(プロセッサ)10が搭載されている。
【0014】
図2は、車両の左前輪WFLを車幅方向の左側から詳細に示したものであり、車輪加速度センサ4は、左前輪WFLのホイール2のリム面12に装着されている。また、他の車輪(左後輪WLL、右前輪及び右後輪)のホイール2のリム面12にも、それぞれ車輪加速度センサ4が装着されている。
また、車体加速度センサ8の搭載場所は車体6のいずれの場所で良いが、本実施形態では、図2に示すように、車体加速度センサ8は左前輪WFLの車軸中心の延長線上において車体6に搭載されているものとして説明する。
【0015】
車輪加速度センサ4は車輪加速度aKを検出し、その検出値を演算処理部10に出力する。ここで、車輪加速度aKに付しているKは、前後左右の車輪の違いを示し、例えば、K=1は左前輪を示し、K=2は左後輪を示し、K=3は右前輪を示し、K=4は右後輪を示している。以下、この車輪加速度aK以外の値の場合も同様とする。
車体加速度センサ8は車体加速度a0を検出し、その検出値を演算処理部10に出力する。
【0016】
演算処理部10は、車輪角加速度αKを演算する。
図3は、演算処理部10の構成を示すブロック図であり、この演算処理部10は、センサ補正部14と、車輪角速度演算部16とで構成されている。センサ補正部14は、車輪加速度センサ4の検出値の補正を行い、車輪角速度演算部16は、車輪角加速度αKの演算を行なう。
次に、センサ補正部14が行なう車輪加速度センサ4の検出値の補正方法と、車輪角速度演算部16が行なう車輪角加速度αKの演算方法について説明する。
【0017】
(車輪加速度センサ4の検出値の補正方法)
先ず、センサ補正部14が行なう車輪加速度センサ4の検出値の補正方法について説明する。
車両の停止時には、車輪加速度センサ4の加速度検出の精度低下を防止するため、車輪加速度センサ4の検出値の補正が行なわれている。
この際、車輪加速度センサ4がホイール2のリム面に傾角を持って装着されている(リム面12が、ホイールセンタを通過する鉛直方向に対して直交していない)場合、車輪が特定の対地キャンバ角で傾いている場合、さらには路面に傾斜が存在している場合には、重力加速度が、車輪加速度センサ4に対して鉛直方向のみでなく、前後方向又は左右方向にも作用する。したがって、鉛直方向以外に重力加速度が作用することを加味して、以下のような車輪加速度センサ4の検出値の補正を行なう。
【0018】
最初に、車輪加速度センサ4がホイール2のリム面に傾角を持って装着されている場合の車輪加速度センサ4の補正量の導出について説明する。
図4は、右前輪を車両前後方向の前方から示した図であり、ホイール2のリム面12が、ホイールセンタW.C.を通過して鉛直方向に延在している仮想線Lに対して傾角ψで延在しているものとする。
【0019】
ここで、図5に示すように、車両の停止時、車輪加速度センサ4で検出される車輪加速度aKの回転接線方向の加速度成分をaKx、回転法線方向の加速度成分をaKz、回転接線方向及び回転法線方向に対して垂直方向(以下、回転垂直方向と称する)の加速度成分をaKyとする。
また、車両の停止状態における車輪加速度センサ4の初期位置の角度(初期位置角度)θを、下記(3)式、(4)式から演算する。
【0020】
【数6】


【0021】
ここで、車輪加速度センサ4の検出値に対応する初期位置角度θの値は、表1に示す通りとなる。ここで、回転法線方向の加速度成分aKzが「0」であり、回転接線方向の加速度成分をaKxが、+g(重力加速度:9.8m/sec2)である場合には、θ=90°とする。また、回転法線方向の加速度成分aKzが「0」であり、回転接線方向の加速度成分をaKxが、−gである場合には、θ=270°とする。
【0022】
【表1】


【0023】
また、下記(5)式及び(6)式、若しくは下記(7)式を用いることで、回転垂直方向の加速度成分をaKyの補正量aKy´と、回転法線方向の加速度成分をaKzの補正量aKz´を演算する。
【0024】
【数7】


【0025】
そして、車輪加速度センサ4で検出した車輪加速度ベクトルaKを、補正量aKy´、補正量aKz´に基づいて補正する。
次に、車輪が特定の対地キャンバ角で傾いている場合の車輪加速度センサ4の補正量の導出について説明する。
【0026】
図6は、右前輪を車両前後方向の前方から示した図であり、対地キャンバ角がΦとなるように右前輪が傾斜しているものとする。
この場合には、下記(8)式及び(9)式、若しくは下記(10)式を用いることで、車両の停止時に車輪加速度センサ4で検出される車輪加速度aKの回転垂直方向の加速度成分をaKy及び回転法線方向の加速度成分aKzから補正量aKy´及び補正量aKz´を演算する。
【0027】
【数8】


【0028】
そして、車輪角加速度ベクトルαを演算する際に、車輪加速度センサ4で検出した車輪加速度ベクトルaKを、補正量aKy´、補正量aKz´に基づいて補正する。
次に、図7に示すように、路面が特定のピッチ角εで傾斜している場合の車輪加速度センサ4の補正量の導出について説明する。
この場合には、先ず、車両の停止時に、車体加速度センサ8で検出される車体加速度a0の車両前後方向の加速度成分a0x、鉛直方向の加速度成分a0zに基づき、下記(11)式、(12)式を用いてピッチ角εを演算する。
【0029】
【数9】


【0030】
また、下記(13)式及び(14)式、若しくは下記(15)式を用いることで、回転垂直方向の加速度成分aKyの補正量aKy´と、回転法線方向の加速度成分aKzの補正量aKz´を演算する。
【0031】
【数10】


【0032】
そして、車輪角加速度ベクトルαを演算する際に、車輪加速度センサ4で検出した車輪加速度ベクトルaKを、補正量aKy´、補正量aKz´に基づいて補正する。
さらに次に、図8に示すように、路面が特定のカント角σで傾斜している場合の車輪加速度センサ4の補正量の導出について説明する。
この場合には、先ず、車両の停止時に、車体加速度センサ8で検出される車体加速度a0の車幅方向の加速度成分a0y、鉛直方向の加速度成分a0zに基づき、下記(16)式、(17)式を用いてカント角σを演算する。
【0033】
【数11】


【0034】
また、下記(18)式及び(19)式、若しくは下記(20)式を用いることで、回転垂直方向の加速度成分aKyの補正量aKy´と、回転法線方向の加速度成分aKzの補正量aKz´を演算する。
【0035】
【数12】


【0036】
そして、車輪角加速度ベクトルαを演算する際に、車輪加速度センサ4で検出した車輪加速度ベクトルaKを、補正量aKy´、補正量aKz´に基づいて補正する。
【0037】
(車輪角加速度αKの演算方法)
次に、車輪角速度演算部16が行なう車輪角加速度αKの演算方法について説明する。ここで、左前輪WFL、左後輪WLL、右前輪及び右後輪の各ホイール2を、回転体と称する。
先ず、地上に固定した座標系(ωηξζ)を定義し、この座標系の原点から車体重心までの位置ベクトルをベクトルr0、車体重心位置から車輪加速度センサ4までの距離ベクトルをベクトルrrkと定義することで、静止座標系から見た車輪加速度センサ4の位置を表すベクトルrkは、下記(21)式で表される。
【0038】
【数13】


【0039】
また、車体重心位置を移動体の原点座標と定義し、移動座標系をoxyzとする。これにより、車輪加速度センサ4の位置は、車体重心に対する並進運動、回転運動を定義することができる。
そして、前述した(21)式を微分することで、車輪加速度センサ4の静止座標系に対する速度ベクトルvKは、下記(22)式で表すことができる。
【0040】
【数14】


【0041】
なお、(22)式のv0は重心の静止座標系に対する速度ベクトルであり、vrは回転座標上の車輪加速度センサ4位置の重心に対する相対速度であり、(ωK×rrk)は回転による車輪角速度である。
そして、回転体の座標軸をx軸、y軸、z軸とし、x軸回りの角速度をp、y軸回りの角速度をq、z軸回りのrとし、軸方向の右回りを正とし、各軸の単位ベクトルをベクトルi,j、mとすると、前述した車輪角速度ベクトルωKは、下記(23)式で表される。
【0042】
【数15】


【0043】
なお、(23)式では、回転体の座標軸は回転方向をx軸、半径方向をz軸、回転面に対して垂直方向をy軸とし、車体のy軸方向と一致させている。そして、車体側においては、進行方向をx軸で正、鉛直下向きをz軸で正、車幅方向で左向きを正としている。
そして、前述した(21)式をさらに微分すると、車輪加速度センサ4が出力する車輪加速度ベクトルaKを、下記(24)式で演算することができる。
【0044】
【数16】


【0045】
なお、(24)式のa0は車体加速度ベクトルであり、arは車輪加速度センサ4の位置の重心に対する相対加速度ベクトル、2(ωK×Vr)は回転によるコリオリ加速度であり、ωK×(ωK×rrK)は遠心力、ωK×rrKは回転による角加速度である。
ここで、上述した(24)式の近似式を導出するため、車軸中心(ホイールセンタ)W.C.の車体重心に対する運動について考える。
【0046】
先ず、車両前後方向の運動であるが、車体重心に対して進行方向には回転、並進運動がないので剛体とみなすことができる。厳密にはサスペンションの前後剛性が低い車両の場合、重心に対して数mm程度の前後並進運動が生じるが、微小近似できるため、剛体運動とみなし車両前後方向は車体重心の並進運動と同じに近似することができる。
次に、車両上下方向の変位であるが、サスペンションストロークのバウンド、リバウンドは一般に60mm、140mm程度であるが、車体重心の上下変位はバネ下の変位に比べて微小であり、むしろバネ下での上下変位の影響を考慮するほうが好ましい。
【0047】
ただし、車輪加速度センサ4の出力は、(24)式で示したように、ωK×(ωK×rrK)の遠心力の影響が大きく、路面凹凸の上下加速度入力に対して車輪加速度センサ4の出力の方が高くなるため、車軸中心の上下加速度の影響は微小と仮定することができる。
例えば、車速V=100km/hで走行中の車輪角速度ωは、タイヤ半径rtを0.33mとすると、ω=(V/3.6)/rt=(100/3.6)/0.33=84.1[rad/sec]である。したがって、ω2は約7000[rad/sec2]、上下最大加速度az=10[m/sec2]としても影響が微小になる。また、車速Vが40km/hの場合には、ω2は約1000[rad/sec2]となり、1%程度の影響となるため、近似することができる。
【0048】
さらに、車幅方向の並進、回転運動であるが、直進状態では加速度変化が生じないため近似式の成立は自明である。
車両が旋回運動を行っている時は、車体重心に発生する横加速度に加え、ヨー角加速度dγ/dt(γはヨー角速度)と車体重心から前輪/後輪軸までの距離を掛けた値を足すことで、車軸の加速度を求めることができる。したがって、転舵時においても車軸中心に近似した加速度から回転体の加速度を演算することができる。
【0049】
上述した近似方法を用いると、車軸中心から回転体までの距離は相対変化が生じないことになり、上記(24)式において、車輪加速度センサ4の位置の重心に対する相対加速度ベクトルarと、回転によるコリオリ加速度2(ωK×Vr)の成分を0(ゼロ)に近似すると、下記(25)式が得られ、この(25)式に基づき、下記(26)式により車輪角加速度ベクトルαを演算する。
【0050】
【数17】


【0051】
【数18】


【0052】
次に、演算処理部10が行なう処理手順について、図9から図11のフローチャートを参照して説明する。なお、これらフローチャートは、例えば10msec程度に設定されたサンプリング時間ΔT毎にタイマ割込によって実行される。このフローチャートでは、特に通信のためのステップを設けていないが、演算処理によって得られた結果が随時記憶装置に更新記憶されるとともに、必要な情報やプログラムは随時記憶装置から読み込まれる。
【0053】
図9のメインフローチャートでは、先ず、ステップS1でイグニッションスイッチのON状態を判定し、イグニッションスイッチがONである場合にはステップS2に移行し、イグニッションスイッチがOFFである場合には、リターンに移行する。
また、ステップS1の判定でイグニッションスイッチがONである場合に移行するステップS2では、車輪加速度センサ4で検出した車輪加速度aKを読み込むとともに、車体加速度センサ8で検出した車体加速度a0を読み込んでからステップS3に移行する。
【0054】
次いで、ステップS3ではセンサ補正処理ルーチンを行ってからステップS4に移行する。
次いで、ステップS4では、車輪角加速度演算処理ルーチンを行なう。
前述したセンサ補正処理ルーチンは、図10のフローチャートで示す処理を実行する。
図10のフローチャートは、先ず、ステップS5において車両が停止状態であるか否かを判定する。この車両の停止状態の判定方法は、例えば車輪加速度センサ4の検出値が特定時間の間で変化しない場合に、車両が停止状態であると判断する。
【0055】
このステップS5において車両が停止状態にある場合にはステップS6に移行し、車両が走行状態である場合にはリターンに移行する。
ステップS5の判定で車両が停止状態である場合に移行するステップS6では、読み込んだ車体加速度a0の鉛直方向の加速度成分a0Zが、重力加速度g(9.8m/sec2)と同一値であるか否かを判定する。
【0056】
このステップS6において鉛直方向の加速度成分a0Zが重力加速度gと同一値である場合には、ステップS9に移行し、加速度成分a0Zと重力加速度gとが同一値でない場合には、ステップS7に移行する。
ステップS7では、前述した(12)式、(17)式を用いてピッチ角ε、カント角σを演算する。
【0057】
次いで、ステップS8では、演算したピッチ角ε、カント角σに基づき、前述した(13)式及び(14)式、或いは(15)式、(18)式及び(19)式、或いは(20)式を用いて、車輪加速度aKの回転垂直方向の加速度成分aKyの補正量aKy´及び回転法線方向の加速度成分aKzの補正量aKz´を演算する。
次いで、ステップS9では、予め設定されている傾角ψ、対地キャンバ角Φを読み込む。
【0058】
次いで、ステップS10では、車輪加速度センサ4の回転接線方向の加速度成分aKx及び回転法線方向の加速度成分aKzに基づき、前述した(4)式を用いて車輪加速度センサ4の初期位置角度θを演算する。ここで、回転法線方向の加速度成分aKzが「0」であり、回転接線方向の加速度成分aKxが、+g(重力加速度:9.8m/sec2)である場合には、θ=90°とする。また、回転法線方向の加速度成分aKzが「0」であり、回転接線方向の加速度成分aKxが、−gである場合にも、θ=270°とする。
【0059】
次いで、ステップS11では、演算した初期位置角度θをセンサ角度前回値θbとして記憶する。
次いで、ステップS12では、演算した初期位置角度θに基づいて、回転法線方向の加速度成分aKz=g×sinθ、回転接線方向の加速度成分をaKx=g×cosθを演算する。
次いで、ステップS13では、傾角ψ=0(ゼロ)であるか否かを判定し、ψ=0である場合にはステップS15に移行し、ψ≠0である場合にはステップS14に移行する。
【0060】
ステップS14では、傾角ψに基づき、前述した(5)式及び(6)式、或いは(7)式を用いて、車輪加速度aKの回転垂直方向の加速度成分aKyの補正量aKy´´及び回転法線方向の加速度成分aKzの補正量aKz´を演算する。
次いで、ステップS15では、対地キャンバ角Φ=0(ゼロ)であるか否かを判定し、Φ=0である場合にはリターンに移行し、Φ≠0である場合にはステップS16に移行する。
【0061】
ステップS16では、対地キャンバ角Φに基づき、前述した(8)式及び(9)式、或いは(10)式を用いて、車輪加速度aKの回転垂直方向の加速度成分aKyの補正量aKy´及び回転法線方向の加速度成分aKzの補正量aKz´を演算し、その後にリターンに移行する。
一方、図9の車輪角加速度演算処理ルーチンは、図11のフローチャートで示す処理を実行する。
【0062】
図11のフローチャートは、先ず、ステップS17において、予め設定した車体重心位置から車体加速度センサ5までの相対距離rrkを読み込む。
次いで、ステップS18では、下記(27)式から現在の車輪角速度センサ4の位置の角度(センサ角度今回値)θnを演算する。ここで、回転法線方向の加速度成分aKzが「0」であり、回転接線方向の加速度成分aKxが、+g(重力加速度:9.8m/sec2)である場合には、θ=90°とする。また、回転法線方向の加速度成分aKzが「0」であり、回転接線方向の加速度成分aKxが、−gである場合にも、θ=270°とする。
【0063】
【数19】


【0064】
次いで、ステップS19では、センサ角度前回値θbとセンサ角度今回値θnとの差分を、サンプリング時間ΔTで除算することで、車輪角速度ωKを演算する。
次いで、ステップS20では、センサ角度今回値θnを、センサ角度前回値θbとして記憶する。
【0065】
次いで、ステップS21では、図10のセンサ補正処理ルーチンで演算した補正量aKy´、補正量aKz´に基づいて車輪加速度aKの回転垂直方向の加速度成分aKy、回転法線方向の加速度成分aKzを補正する。
そして、ステップS22では、補正した車輪加速度aK、読み込んだ車体加速度a0、相対距離rrk及び演算した車輪角速度ωKに基づき、前述した(26)式を用いて車輪角加速度αkを演算する。
【0066】
(第1実施形態の動作)
次に、本実施形態の動作を説明する。
車両のイグニッションスイッチをONにすると、演算処理部10には、各車輪(左前輪WFL、左後輪WLL、右前輪及び右後輪)に装着した車輪加速度センサ4及び車体6に搭載した車体加速度センサ8から検出値が入力されている(図9のステップS2)。
そして、車両の停止時において路面に傾斜が存在している場合、演算処理部10は、車輪加速度センサ4の検出値の補正量(補正量aKy´、補正量aKz´)を演算する(図10のステップS6〜ステップS8)。また、車輪加速度センサ4がホイール2のリム面に傾角を持って装着されている場合、演算処理部10は、車両の停止時に車輪加速度センサ4の検出値の補正量を演算する(図10のステップS9〜ステップS14)。さらに、車輪が特定の対地キャンバ角で傾いている場合、演算処理部10は、車両の停止時に車輪加速度センサ4の検出値の補正量を演算する(図10のステップS15、ステップS16)。
【0067】
そして、演算処理部10は、運転者が急ブレーキをかけている期間中、サンプリング時間ΔT周期毎に読み込んだ車輪加速度センサ4の検出値の前回値と今回値に基づいて車輪角速度ωKを演算し(図10のステップS11、図11のステップS18〜ステップS20)、前述した補正量(補正量aKy´、補正量aKz´)に基づいて車輪加速度センサ4の検出値を補正する(図11のステップS21)。そして、車輪各速度ωK、車輪加速度センサ4及び車体加速度センサ8の検出値(車輪加速度aK、車体加速度a0)等に基づいて車輪角加速度αKを演算する(図11のステップS22)。
【0068】
この際、運転者が急ブレーキをかけて車輪が急低速、或いは急ロック状態になっても、演算処理部10は、車輪情報として車輪加速度センサ4から車輪加速度aK、車体加速度センサ8から車体加速度a0が連続的に入力され、車輪角加速度αKを演算する。
ここで、図12は、車輪が急ロック状態となったときの理論上の車輪角速度波形と、従来方法の車輪速パルスセンサのパルスエッジを検出して演算した車輪角速度波形とを比較して示したものである。この図12で示すように、従来の車輪角速度波形は、車輪の急ロック時(t=0.07S)にパルスエッジの検出ができず、同一の車輪角速度を連続的に出力し(t=0.06〜0.08S)、次回にパルスエッジを検出した時(t=0.08S)にデータ(車輪角速度)の更新を行なっているが、次回のパルスエッジの検出まで読込みが継続され、同一データを出力した波形となる。
【0069】
そして、図13は、従来方法のパルスエッジの検出により演算した角速度データに基づき、今回値と前回値との差分から得られる車輪角加速度の応答波形を示している。ここでは、路面ノイズを除去した理想条件下において得られる場合のシミュレーションであるが、パルスエッジの検出が前回値と同一、若しくはパルスエッジの検出が更新されず、同一データの保持が設定時間継続されると、理論上の角加速度波形(以下、理論波形と称する)に追従できず、次回のパルスエッジを検出しても、理想波形に追従できない角加速度波形を演算してしまう。
【0070】
一方、図14は、本実施形態の車輪加速度センサ4の検出値により演算した車輪角加速度の応答波形を示しているが、この図14では、理想波形に対して車輪ロックまで追従していることが確認できる。これは、車輪加速度センサ4の検出値に基づいて演算する場合には、前回の検出値との差分をとる必要性がなくなり、直接に角加速度を演算するため得られるデータが連続的であり、前回値の保持による影響がない応答波形となるからである。
【0071】
なお、上述した実施形態において、ホイール2が回転体を構成し、車体加速度センサ8が車体加速度検出手段を構成し、車輪加速度センサ4が車輪加速度検出手段を構成し、演算処理部10の車輪角加速度演算部16が車輪角加速度演算手段を構成し、演算処理部10のセンサ補正部14が補正手段を構成している。
【0072】
(第1実施形態の効果)
(1)本実施形態では、車両の車体加速度を連続して検出する車体加速度検出手段と、車両の各車輪の回転体にそれぞれ装着されて車輪加速度を連続して検出する車輪加速度検出手段と、車体加速度検出手段で検出した車体加速度及び車輪加速度検出手段で検出した車輪加速度に基づき車輪角加速度を演算する車輪角加速度演算手段と、を備えている。
これにより、運転者が急ブレーキをかけて車輪が急低速、或いは急ロック状態になっても、車輪角加速度演算手段は、連続して入力する車体加速度及び車輪加速度に基づいて、車輪角加速度を高精度に検出することができる。
【0073】
(2)また、車輪角加速度演算手段は、車体加速度検出手段で検出した車体加速度及び車輪加速度検出手段で検出した車輪加速度に基づき、車体加速度を車軸中心の加速度に近似して、以下の(1)式を用いて車輪角加速度を演算している。
【0074】
【数20】


【0075】
ここで、αK:車輪角加速度、aK:車輪加速度、a0:車体加速度、ωK:車輪角速度、rrK:車体重心位置から車輪加速度検出手段までの相対距離である。
これにより、車輪角加速度演算手段は、さらに車輪角加速度を高精度に検出することができる。
【0076】
(3)また、車両の置かれている状態、或いは前記車輪加速度検出手段の状態の少なくとも何れかに基づき、車輪加速度検出手段の検出値の補正を行なう補正手段を備えていることから、車輪加速度検出手段の検出精度の低下を防止することができる。
(4)また、補正手段は、車両の停止状態において、回転体に装着した車輪加速度検出手段の初期位置角度を演算し、この初期位置角度に基づいて前記車輪加速度検出手段の検出値の補正を行なうことから、車輪加速度検出手段の検出精度を高めることができる。
【0077】
(5)また、車輪加速度検出手段が、ホイールセンタを通過する鉛直方向に対して直交せずに傾角を持って回転体に装着されている場合に、補正手段は、傾角に基づいて車輪加速度検出手段の検出値の補正を行なうことから、回転体に対する装着状態に応じて車輪加速度検出手段の検出精度を高めることができる。
(6)また、車輪が特定の対地キャンバ角で傾いている場合に、補正手段は、対地キャンバ角に基づいて車輪加速度検出手段の検出値の補正を行なうことから、車輪の傾きに応じて車輪加速度検出手段の検出精度を高めることができる。
【0078】
(7)また、車両の停止状態において路面の傾斜角を検出したときに、補正手段は、路面の傾斜角に基づいて車輪加速度検出手段の検出値の補正を行なうことから、路面の傾斜角に応じて車輪加速度検出手段の検出精度を高めることができる。
(8)また、車輪角加速度演算手段は、特定のサンプリング時間に回転する車輪加速度検出手段の回転角度を検出し、この回転角度をサンプリング時間で除算することで車輪角速度を演算することから、従来のようにパルス分解能が落ちやすい車輪速パルスセンサを使用せずに、高精度に車輪角速度を演算することができる。
【0079】
(応用例)
なお、上記実施形態では、車輪加速度センサ4の装着位置を、ホイール2のリム面12としたが、車輪が回転するときに車輪加速度センサ4と車軸中心との距離の相対変化が生じない位置、例えばハブ回転部分に車輪加速度センサ4を装着すると、車輪加速度センサ4の装着を容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明に係る1実施形態の車輪角加速度検出装置を搭載した車両を示す図である。
【図2】車両の左前輪を車幅方向から示した図である。
【図3】車輪角加速度検出装置を構成する演算処理部を示す図である。
【図4】車輪加速度センサがホイールのリム面に傾角を持って装着されている状態を示す図である。
【図5】車輪の回転に伴い車輪加速度センサが回転している状態を示す図である。
【図6】車輪が特定の対地キャンバ角で傾いている状態を示す図である。
【図7】路面が所定のピッチ角で傾斜している場合に車両が停止している状態を示す図である。
【図8】路面が所定のカント角で傾斜している場合に車両が停止している状態を示す図である。
【図9】車輪角加速度検出装置を構成する演算処理部のメインフローチャートを示す図である。
【図10】演算処理部が行なうセンサ補正処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図11】演算処理部が行なう車輪角加速度処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図12】車輪が急ロック状態となったときの理論上の車輪角速度波形と、従来方法の車輪速パルスセンサのパルスエッジを検出して演算した車輪角速度波形とを比較して示した図である。
【図13】従来方法のパルスエッジの検出により演算した角速度データに基づいて車輪角加速度の応答波形を示した図である。
【図14】本発明により演算した車輪角加速度の応答波形を示した図である。
【符号の説明】
【0081】
2 ホイール
4 車輪加速度センサ
6 車体
8 車体加速度センサ
10 演算処理部
12 リム面
14 センサ補正部
16 車輪角加速度演算部
K 車輪加速度
0 車体加速度
αK 車輪角加速度
ωK 車輪角速度
rK 車体重心位置から車輪加速度センサまでの相対距離
θ 初期位置角度
WFL 左前車輪
WLL 左後車輪
W.C. ホイールセンタ

特許の図
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成18年8月23日(2006.8.23)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也

【識別番号】100075579
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 嘉昭

【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 秀▲てつ▼

【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
【公開番号】 特開2008−51594(P2008−51594A)
【公開日】 平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願番号】 特願2006−226647(P2006−226647)