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【発明の名称】 車輪速パルス補正装置
【発明者】 【氏名】岡田 清和

【氏名】中村 正樹

【氏名】三浦 直人

【要約】 【課題】多大なインフラの構築を必要とせず、車速パルスの補正の機会が制限されることが少ない車輪速パルス補正装置の提供。

【構成】車輪速パルス補正装置10において、地物の位置情報を格納した地図データベース12と、走行経路上に存在する地物を画像認識する画像認識部20と、第1の地物Aが前記地物画像認識手段により画像認識されたときを起点して、第2の地物Bが前記地物画像認識手段により画像認識されるまでの車輪速センサの出力パルスをカウントする車速パルスカウント部24と、前記地物情報記憶手段に格納された第1の地物A及び第2の地物Bの地物情報に基づいて、第1の地物Aと第2の地物B間の距離Dを特定する相対距離算出部18と、前記2地物間パルスカウント手段によりカウントされたカウント値Cpと、前記2地物間距離特定手段により特定される2地物間距離Dとの関係に基づいて、前記演算式を補正することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪速センサの出力パルスのカウント値から車両の走行距離又は走行速度を求める際の演算式を補正する車輪速パルス補正装置において、
地物の位置又は地物間の距離に関する情報を格納した地物情報記憶手段と、
走行経路上に存在する地物を画像認識する地物画像認識手段と、
第1の地物が前記地物画像認識手段により画像認識されたときを起点して、第2の地物が前記地物画像認識手段により画像認識されるまでの車輪速センサの出力パルスをカウントする2地物間パルスカウント手段と、
前記地物情報記憶手段に格納された地物情報に基づいて、第1の地物と第2の地物間の距離を特定する2地物間距離特定手段と、
前記2地物間パルスカウント手段によりカウントされたカウント値と、前記2地物間距離特定手段により特定される2地物間距離との関係に基づいて、前記演算式を補正することを特徴とする、車輪速パルス補正装置。
【請求項2】
走行経路上に前記地物情報記憶手段に位置情報が格納されている地物が3つ以上存在する場合に、該3以上の地物のうちから前記第1の地物及び第2の地物を選定する地物選定手段を備える、請求項1に記載の車輪速パルス補正装置。
【請求項3】
前記地物選定手段は、該3以上の地物のうちから、認識率の高い地物を、前記第1の地物及び第2の地物として選定する、請求項2に記載の車輪速パルス補正装置。
【請求項4】
前記地物選定手段は、該3以上の地物のうちから、離間距離の大きい2つの地物を、前記第1の地物及び第2の地物として選定する、請求項2又は3に記載の車輪速パルス補正装置。
【請求項5】
前記地物選定手段は、曲率半径が所定値以上ある略走行経路上に存在する2つの地物を、前記第1の地物及び第2の地物として選定する、請求項2〜4のいずれかに記載の車輪速パルス補正装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪速パルス補正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車速パルスの補正システムにおいて、車輪の回転状態を検出することにより、前記回転状態に応じた車速パルスを出力するセンサと、道路上に設けられたインフラから得られた情報に基づき、所定の走行区間における第1の距離を特定する処理部と、前記走行区間を車両が走行した際に出力される前記車速パルスの数をカウントすることによって算出される第2の距離と、前記処理部によって特定された前記第1の距離とに基づいて、前記車速パルスの補正値を算出し、当該補正値に基づいて、前記車速パルスを補正する補正部とを有することを特徴とする車速パルスの補正システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−309399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述の従来技術に記載の構成では、道路上に設けられたインフラから、所定の情報(位置補正情報)を車両に送信する必要があり、かかる通信機能を備えるインフラの整備が必要となる。これに対して、上述の特許文献1にも開示されるように、磁気式レーンマーカーを道路に埋設しておき、車両側で走行道路上の磁気式レーンマーカーを検出し、既知の磁気式レーンマーカー間の間隔を利用して車速パルスを補正することも考えられる。しかしながら、かかる構成においても、磁気式レーンマーカーを埋設した道路上を走行しなくては車速パルスの補正の機会がなく、車速パルスの補正の機会が限られてしまうという問題点がある。
【0004】
そこで、本発明は、多大なインフラの構築を必要とせず、車速パルスの補正の機会が制限されることが少ない車輪速パルス補正装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明は、車輪速センサの出力パルスのカウント値から車両の走行距離又は走行速度を求める際の演算式を補正する車輪速パルス補正装置において、
地物の位置又は地物間の距離に関する情報を格納した地物情報記憶手段と、
走行経路上に存在する地物を画像認識する地物画像認識手段と、
第1の地物が前記地物画像認識手段により画像認識されたときを起点して、第2の地物が前記地物画像認識手段により画像認識されるまでの車輪速センサの出力パルスをカウントする2地物間パルスカウント手段と、
前記地物情報記憶手段に格納された地物情報に基づいて、第1の地物と第2の地物間の距離を特定する2地物間距離特定手段と、
前記2地物間パルスカウント手段によりカウントされたカウント値と、前記2地物間距離特定手段により特定される2地物間距離との関係に基づいて、前記演算式を補正することを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係る車輪速パルス補正装置において、
走行経路上に前記地物情報記憶手段に位置情報が格納されている地物が3つ以上存在する場合に、該3以上の地物のうちから前記第1の地物及び第2の地物を選定する地物選定手段を備えることを特徴とする。これにより、補正に適した地物を選定して補正精度を高めることができる。
【0007】
第3の発明は、第2の発明に係る車輪速パルス補正装置において、
前記地物選定手段は、該3以上の地物のうちから、認識率の高い地物を、前記第1の地物及び第2の地物として選定することを特徴とする。これにより、精度の高い補正に適した地物を適切に選定することができる。
【0008】
第4の発明は、第2又は3の発明に係る車輪速パルス補正装置において、
前記地物選定手段は、該3以上の地物のうちから、離間距離の大きい2つの地物を、前記第1の地物及び第2の地物として選定することを特徴とする。これにより、精度の高い補正に適した地物を適切に選定することができる。
【0009】
第5の発明は、第2〜4のいずれかの発明に係る車輪速パルス補正装置において、
前記地物選定手段は、曲率半径が所定値以上ある略走行経路上に存在する2つの地物を、前記第1の地物及び第2の地物として選定することを特徴とする。これにより、精度の高い補正に適した地物を適切に選定することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多大なインフラの構築を必要とせず、車速パルスの補正の機会が制限されることが少ない車輪速パルス補正装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0012】
図1は、本発明による車輪速パルス補正装置の主要構成の一実施例を示すシステム構成図である。
【0013】
本実施例の車輪速パルス補正装置10は、マイクロコンピュータで構成され、CPU、ROM、RAM、I/O等を備え、画像処理回路(例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)を有してよい。
【0014】
車輪速パルス補正装置10は、図1に示すように、地図データベース12、自車位置特定部14、認識対象選定部16、相対距離算出部18、画像認識部20、周囲画像取得部22、車速パルスカウント部24、及び、車速パルス補正部26を備える。
【0015】
車輪速パルス補正装置10には、車輪速センサ30が接続される。車輪速センサ30は、車輪に設けられ、車輪が所定角度回転する毎にパルス(車速パルス)を出力する。車輪速センサ30は、例えばアクティブセンサ(半導体式車輪速センサ)であってもよいし、パッシブセンサであってよい。例えばアクティブセンサの場合、ゴムに磁性粉が充填された磁気ロータであって、円周方向にN/S極が均等に交互配置された磁気ロータを、車軸と共に回転するように配置し(例えばインナーレースの外周部に取り付け)、磁気ロータが回転するときに生ずる磁界の変化を、例えばナックルに取り付けられたアクティブセンサが検出して車速パルスとして出力する。尚、車輪速センサ30は、車輪の回転数に一対一の関係で対応する如何なるパラメータを検出するセンサにより代替されてもよく、例えば、トランスミッションの出力軸の回転数を検出するセンサにより代替されてもよい。
【0016】
地図データベース12には、地図データが格納されている。地図データは、道路を表す緯度・経度や曲率,勾配,車線数,車線幅,コーナ有無などのレーン形状や道路種別のデータや、その道路の表面に描かれる横断歩道や一時停止線,進行方向矢印,「横断歩道あり」の菱形標識,最高速度標識,転回禁止標識などの各地物ごとの形状データやペイントデータ,位置データ,各地物間の距離データなどである。また、この地図データベース12は、ディスクの交換や更新条件の成立により格納する地図データを最新のものに更新可能であってよい。
【0017】
自車位置特定部14は、GPSアンテナが接続されている。自車位置は、GPS受信機によりGPSアンテナを介してGPS衛星が出力するGPS信号に基づいて測位・演算される。測位方法は、単独測位や相対測位(干渉測位を含む。)等の如何なる方法であってもよい。この際、自車位置は、車速センサやジャイロセンサ等の各種センサの出力や、ビーコン受信機及びFM多重受信機を介して受信される各種情報に基づいて補正されてよい。例えば、相対測位の1つであるD−GPS(Differential GPS)では、自車位置は、4個以上のGPS衛星からの距離を算出することで単独測位され、次いで、既知点に設置された受信機(基準局)から供給されるGPS補正データに基づいて補正される(いわゆるディファレンシャル補正:2つの点で受信されるGPS信号には同一の誤差が含まれるという仮定の下で、誤差を差し引いて測位精度を上げるもの。)。尚、GPS補正データは、例えば全国に複数設置される基準局から周期的(例えば5秒周期)にFM多重により放送され、車両のFM多重受信機で受信される。自車位置は、また、公知のマップマッチング技術により、不定期的に、地図データベース12内の地図データを用いて適宜補正されてよい。例えば、自車位置の軌跡(走行軌跡)と地図データの道路形状の比較が行われ、その際に応じて自車位置が道路上の点に来るように補正される。
【0018】
周囲画像取得部22は、例えばCCDカメラ(以下、「バックカメラ22」という)として具現化される。バックカメラ22は、車両後方の風景を撮像するように搭載され、例えば車両の背面のバックドアパネルに固定される。尚、バックカメラ22は、後述する地物の認識のためのみならず、他の用途、例えば駐車時の後方視界を支援するために利用されてもよい。バックカメラ22は、リアルタイムに車両後方の周囲画像を取得し、所定のフレーム周期のストリーム形式で画像認識部20に供給するものであってよい。
【0019】
図2は、認識対象選定部16、相対距離算出部18、画像認識部20、車速パルスカウント部24、及び、車速パルス補正部26により協働して実現される処理の流れを示すフローチャートである。
【0020】
ステップ100では、認識対象選定部16は、自車位置特定部14及び地図データベース12からの情報に基づいて、自車の走行経路上に存在する各種地物を把握し、後述の補正に適した2つの地物を選定する。
【0021】
ここでは、図3に示すような地物が存在する走行経路を想定し、横断歩道のある一時停止線手前の路面上に描かれる菱形標識Aと、横断歩道の標識Bの2つの地物A,Bが選定されることとする。認識対象選定部16は、認識対象の地物を決定すると、決定した認識対象の地物を認識するように、画像認識部20に要求すると共に、当該地物の特定可能な情報を相対距離算出部18に通知する。
【0022】
ステップ110では、相対距離算出部18は、認識対象選定部16からの通知を受けて、地図データベース12内から地物A,Bに係る地物情報を読み出し、当該2つの地物A,B間の相対距離Dを特定する。尚、2つの地物A,B間の相対距離Dが地物情報として、地図データベース12に格納されていない場合には、相対距離算出部18は、2つの地物A,Bのそれぞれの位置データを地図データベース12から取得し、当該位置データに基づいて、地物A,B間の相対距離Dを算出すればよい。相対距離算出部18は、取得又は算出した地物A,B間の相対距離Dを、車速パルス補正部26に出力する。
【0023】
ステップ120では、画像認識部20は、認識対象選定部16からバックカメラ22を用いた地物Aの画像認識の要求を受けると、バックカメラ22からの後方画像に対する画像処理を開始する。
【0024】
図3(A)に示すように、画像認識部20は、バックカメラ22により地物Aが撮像されると、当該バックカメラ22からの後方画像中の地物Aを認識し、地物Aと自車両との相対距離L0(図3(A)参照)を、例えば三角測量の原理を用いて、把握する。例えば、画像認識部20は、バックカメラ22からの撮像画像についてエッジ抽出などの画像処理を行うことにより、道路表面に描かれる上記の地物の輪郭線を認識し、当該認識した輪郭線を、地物の種類毎に用意された輪郭情報とパターンマッチングを行うことで、認識対象選定部16により選定された地物を認識するものであってよい。尚、この地物の特徴点の抽出に際しては、画像認識部20は、認識対象選定部16から提供されてよい地物等の特徴データに基づいて、事前にその地物等が存在するエリアを把握して、バックカメラ22による撮像画像における当該エリアを重点的に絞って画像処理を行うこととしてもよい。これは、バックカメラ22の撮像画像から特定の地物の抽出を行ううえで効率的・効果的であるからである。
【0025】
本ステップ120において、画像認識部20は、バックカメラ22からの撮像画像に基づいて地物A(1つ目の地物)を認識すると、認識開始フラグを設定する(即ちフラグを立てる)。認識開始フラグは、車速パルスカウント部24に参照される。画像認識部20は、地物Aを認識した後、同様に、自車位置が地物Bに近接した地点から、バックカメラ22から随時供給される撮像画像に対して、地物Bを認識するための処理を行う。
【0026】
ステップ130では、車速パルスカウント部24は、認識開始フラグの設定に応答して、車輪速センサ30からの車速パルスをカウントし始める。即ち、車速パルスカウント部24は、画像認識部20により地物Aが認識された時点から車輪速センサ30からの車速パルスをカウントし始める。
【0027】
ステップ140では、画像認識部20は、地物Bを認識する。即ち、図3(B)に示すように、画像認識部20は、バックカメラ22により地物Bが撮像されると、当該バックカメラ22からの後方画像中の地物Bを認識すると共に、地物Bと自車両との相対距離L1(図3(B)参照)を、例えば三角測量の原理を用いて、把握する。画像認識部20は、バックカメラ22からの撮像画像に基づいて地物B(2つ目の地物)を認識すると、認識開始フラグを解除する(即ちフラグを降ろす)。また、画像認識部20は、上記のステップ120及び本ステップ140の処理により認識した相対距離L0,L1を、車速パルス補正部26に出力する。
【0028】
ステップ150では、車速パルスカウント部24は、認識開始フラグの解除に応答して、車輪速センサ30の車速パルスのカウントを終了する。即ち、車速パルスカウント部24は、画像認識部20により地物Bが認識された時点で、車速パルスのカウントを終了する。車速パルスカウント部24は、カウントした車速パルスのカウント値Cpを、車速パルス補正部26に出力する。
【0029】
ステップ160では、車速パルス補正部26は、相対距離算出部18からの相対距離Dと、車速パルスカウント部24からの車速パルスのカウント値Cpとから、車速パルスの1パルス当たりの距離D0を算出する。ここで、D0は、好ましくは、以下のように算出される。
D0=(D−L0+L1)/Cp
ここで、パラメータL0、L1は、上述の如く、それぞれ、地物A(1つ目の地物)と自車両との相対距離L0、及び、地物B(2つ目の地物)と自車両との相対距離L1である。尚、本例では、地物Aと地物Bの間の相対距離Dの基準点に対応させて、図3に示すように、菱形標識の前方側端部と、横断歩道の標識の後方側端部を基準として、相対距離L0及び相対距離L1を算出している。従って、地物Aと地物Bの間の相対距離Dの基準点が異なれば(例えば、標識の中心点)、当該基準点に対する自車の相対距離L0及び相対距離L1を算出することになる。これにより、選択される地物が道路方向に比較的長い場合であっても、後述の補正を高い精度で行うことができる。
【0030】
このようにして車速パルス補正部26により導出された“車速パルスの1パルス当たりの距離D0”は、図示しない走行距離算出装置又は車速算出装置にて車速距離算出式の補正又は車速算出式の補正のために有効に利用される。例えば、走行距離は、車速パルスのカウント値に距離D0を乗算することにより算出されよいし、車速は、単位時間当たりの車速パルスのパルス数に距離D0を乗算することにより算出されてよい。この場合、距離D0に相当する係数が、車速パルス補正部26からの情報に基づいて補正されることになる。
【0031】
ところで、一般的に、車速パルスの1パルス当たりの距離は、車輪(タイヤ)の動荷重半径に基づいて算出されるが、車輪動荷重半径はタイヤの磨耗状況や車両重量(例えば積載重量)の変動等に依存して動的に変動しうる。
【0032】
これに対して、本実施例よれば、車速パルスの1パルス当たりの距離を動的に補正することができるので、精度の高い走行距離及び車速を検出することができ、これらの用いた各種制御の信頼性が向上する。特に、本実施例は、車速パルスから算出した移動距離ないし自車位置を用いる車両制御に好適である。かかる車両制御としては、例えば、菱形標識を通り過ぎた位置から横断歩道手前の一時停止線を通過するまでの区間、自車位置特定部14による自車位置情報ではなく、地物Aと地物Bの間の相対距離Dと、地物Aに対する自車両の相対距離L0と、その後の車両の移動距離とに基づいて、横断歩道に対する相対的な自車位置(横断歩道に対する道なり距離)を推定し、横断歩道手前の一時停止線で適切に一時停止が実行されるように、警告や自動制動を行う車両制御がある。このような場合には、車速パルスを用いて算出される車両の移動距離の算出精度が車両制御の精度に大きく寄与するからである。また、本実施例は、自車位置特定部14による自車位置情報の取得が不能な状況(例えばトンネル走行中やサイクルスリップ発生時等)に、車輪速センサ30の出力信号を用いて車両位置を推定するアプリケーションに対しても好適である。このようなアプリケーションでは、車速パルスを用いて算出される車両の移動距離の算出精度が車両位置の推定精度に大きく寄与するからである。
【0033】
また、本実施例によれば、位置情報が既知の2つの地物を撮像し、当該それぞれの地物と車両の相対位置関係を画像認識することで、車速パルスの補正(正確には、1パルス当たりの距離の補正)を、既存のインフラを利用して容易に実現することができる。即ち、道路上に存在する既存の地物の位置情報を地図データベース12に格納するだけで、多大なインフラの構築を必要とせずに、車速パルスの補正を行うことができる。
【0034】
尚、本実施例において、図2に示す処理は、例えば1トリップの早い段階に1度実行されるだけでもよいが、好ましくは、いわゆるN増しのため、走行経路上に現れる複数の組の地物に対して実行する。この場合、2つの地物(1組の地物)が認識される毎に、その結果として得られる車速パルスの1パルス当たりの距離を、蓄積し、それらの平均等に基づいて、最終的な距離D0を導出することとしてもよい。この場合、例えば、最新の所定数の結果から得られる平均値に基づいて、車速パルスの1パルス当たりの距離D0を、随時補正(更新)していくこととしてよい。
【0035】
ところで、本実施例によれば、上述の如く、車速パルスの補正に用いる認識対象の地物が走行道路上に多数存在しうるので、車速パルスの補正の機会を適切に選定すること、即ち、上記ステップ100にて2つの地物を適切に選定することで、車速パルスの補正の機会を不要に限定することなく、車速パルスの補正の精度を高めることができる。以下、このような観点から、認識対象選定部16による好ましい地物選定ロジックについて説明する。
【0036】
図4は、認識対象選定部16による地物選定ロジックの一例を示す説明図である。図5には、自車の進行方向前方に、順に、制限速度標識A1,一時停止線B1、菱形標識B2及び横断歩道標識B3の各種地物が存在する略直線状の道路が示されている。以下で説明する地物選定ロジックは、図4に示すように、略直線的に伸びる走行道路上に、3つ以上の認識可能な地物A1,B1,B2…が存在する場合に好適である。尚、ここで、略直線的な走行道路としているのは、車速パルスの補正は、車速パルスに左右差(左右輪間の差)が少ない略直進時に行うのが好適であるためである。但し、補正の機会を適切な確保のため、完全な直線道路でなくても、非常に大きい曲率半径であれば直線道路と同様に扱ってもよい。
【0037】
図4に示す例では、例えば地物A1を起点とした場合、地物A1と地物B1の距離D1,地物A1と地物B2の距離D2,及び、地物A1と地物B3の距離D3に基づいて、車速パルスの補正を行うことが可能である。かかる状況では、認識対象選定部16は、好ましくは、距離が最も大きくなる地物A1と地物B3を認識対象として選定する。この場合、上述の如く、画像認識部20は、地物A1と地物B3を画像認識し、地物A1の認識地点において地物A1に対する車両の相対距離L0(図3(A)参照),及び、地物B3の認識地点において地物B3に対する車両の相対距離L1(図3(B)参照)を求める。相対距離算出部18は、地物A1と地物B3の相対距離D3を、地図データベース12内のデータに基づいて導出する。車速パルスカウント部24は、画像認識部20により地物A1が認識された時点から、画像認識部20により地物B3が認識された時点までの車速パルスをカウントして、カウント値Cpを得る。車速パルス補正部26は、これらのパラメータL0、L1、D3及びCpに基づいて、D0=(D3−L0+L1)/Cpにより、車速パルスの1パルス当たりの距離D0を算出する。
【0038】
このように、認識対象の候補が3つ以上ある場合には、地物A1に対する離間距離が最も大きくなる地物B3を認識対象として選定することで、地物A1に対する離間距離が比較的小さい地物B1を認識対象として選定する場合に比べて、カウント値Cpの大きさに相対して誤差成分が小さくなるので、補正精度を高めることができる。
【0039】
また、例えばナビゲーション装置によるルート案内中等のように、目的地が設定されており、車両が地物B3よりも手前の交差点で左折しないことが予測される場合には、地物B1及び地物B2に対する画像認識処理を行わずに、処理負荷を低減することも可能である。一方、逆に、車両が地物B3よりも手前の交差点で左折することが予測される場合には、認識対象選定部16は、離間距離が比較的小さい地物A1と地物B1を認識対象として選定することとしてもよい。
【0040】
また、図4に示す例において、認識対象選定部16は、全ての取りうる組み合わせとして、地物A1と地物B1の第1の組、地物A1と地物B2の第2の組、地物A1と地物B3の第3の組、地物B1と地物B2の第4の組、地物B1と地物B3の第5の組、地物B2と地物B3の第6の組のうち、離間距離大きい組から順にいずれか2以上の組を選定してもよい。この場合は、画像処理の処理負荷が増えるものの、N数を適切に増やして精度を高めることができる。また、認識対象選定部16は、交差点が存在する場合には、例えば地物B1直後の交差点で左折することにより地物B2及びB3が認識できなくなるような事態(経路変更による不都合)に備えて、交差点の手前の地物を必ず選定することとしてもよい。尚、多数の組を選定して、それぞれの組に対して、車速パルスの1パルス当たりの距離を算出する場合には、それらの平均値を求める際に、精度(2地物間の離間距離)に応じた重み付けを行ってもよい。
【0041】
図5は、認識対象選定部16による地物選定ロジックのその他の一例を示す説明図である。図5には、自車の進行方向前方に、順に、制限速度標識A2,菱形標識B4,横断歩道標識B5,一時停止線B6の各種地物が存在する略直線状の道路が示されている。以下で説明する地物選定ロジックは、図5に示すように、略直線的に伸びる走行道路上に、3つ以上の認識可能な種類の異なる地物A2,B4,B5…が存在する場合に好適である。
【0042】
図6は、地物の種類とその認識率の対応関係の一例を示すマップである。図6には、一例として3種類の地物の認識率が示されているが、実際にはより多数の地物に関する情報が定義される。認識率とは、当該地物を画像認識処理により認識する際の精度に相当し、地物のサイズや特徴(形状)等に依存しうる。例えば、一時停止線は、横方向の線のみであり、菱形標識に比べて特徴量が少なく、認識率が低くなる。また、実際の地物には、例えばペイントのかすれやペイント上にタイヤの急ブレーキ痕が存在しうり、かかる状態に依存して認識率は変化しうる。従って、図6に示すマップ(認識率)は、地物毎に定義され、走行時に学習等により更新されることとしてもよい。
【0043】
図5に示す例では、例えば地物A2を起点とした場合、地物A2と地物B4の距離D4,地物A2と地物B5の距離D5,及び、地物A2と地物B6の距離D6に基づいて、車速パルスの補正を行うことが可能である。かかる状況では、認識対象選定部16は、図6に示すマップを参照して、地物B4〜B6のそれぞれの認識率を比較して、認識率の高い地物(本例では、地物B5)を、選定する。この場合、上述の如く、画像認識部20は、地物A2と地物B5を画像認識し、地物A2の認識地点において地物A2に対する車両の相対距離L0,及び、地物B5の認識地点において地物B5に対する車両の相対距離L1を求める。相対距離算出部18は、地物A2と地物B5の相対距離D5を、地図データベース12内のデータに基づいて導出する。車速パルスカウント部24は、画像認識部20により地物A2が認識された時点から、画像認識部20により地物B5が認識された時点までの車速パルスをカウントして、カウント値Cpを得る。車速パルス補正部26は、これらのパラメータL0、L1、D5及びCpに基づいて、D0=(D5−L0+L1)/Cpにより、車速パルスの1パルス当たりの距離D0を算出する。
【0044】
このように、認識対象の候補が3つ以上ある場合には、認識率が最も高い(認識精度の最も高い)地物B5を認識対象として選定することで、認識率が相対的に低い地物B6を認識対象として選定する場合に比べて、パラメータL1及びCpの誤差成分が小さくなるので、補正精度を高めることができる。また、この場合、例えば地物B5の手前の地物B4については相対距離の画像認識処理を行わないことで、処理負荷を低減することも可能である。
【0045】
また、図5に示す例において、認識対象選定部16は、全ての取りうる組み合わせとして、地物A2と地物B4の第1の組、地物A2と地物B5の第2の組、地物A2と地物B6の第3の組、地物B4と地物B5の第4の組、地物B4と地物B6の第5の組、地物B5と地物B6の第6の組のうち、認識率のから順に複数の組を選定してもよい。この場合は、画像処理の処理負荷が増えるものの、N数を適切に増やして補正精度を高めることができる。尚、多数の組を選定して、それぞれの組に対して、車速パルスの1パルス当たりの距離をそれぞれ算出する場合には、それらの平均値を求める際に、精度(各地物の認識率)に応じた重み付けを行ってもよい。即ち、平均値に対する寄与度を各地物の認識率に応じて可変してもよい。
【0046】
また、図5及び図6に示す例では、画像処理の処理負荷を低減するために、予め定義された認識率(予測値)を用いて地物を選定しているが、各地物に対して実際に画像認識を行い、そのときの実際の認識率(実際値)に基づいて、補正に用いる地物を選定することとしてもよい。
【0047】
また、図5及び図6による地物選定ロジックは、図4を参照して上述した地物選定ロジックと組み合わせて適用することも可能である。この場合、例えば、認識対象選定部16は、例えば略直線的な経路上に存在する複数の認識可能な地物に対して、全ての取りうる組み合わせを想定し、各組み合わせに対して、地物間の距離や認識率に応じた重み付けをし、当該重み付けの結果から最適な組み合わせを選定すればよい。
【0048】
次に、上述の車速パルスの補正精度を更に高めるのに好適なその他の車速パルス補正ロジックについて、図7以降を参照して説明する。
【0049】
図7(A)は、時刻t=tg、即ち地物を捕捉した画像が取得された時点における、菱形標識の位置と車両の位置の関係を概略的に示す。図7(A)には、画像認識部20により演算される菱形標識と車両の相対距離L0が示されている。
【0050】
図7(B)は、時刻t=t1、即ち画像認識完了時点における菱形標識の位置と車両の位置の関係を概略的に示す。図7(B)に示すように、画像認識完了時点t=t1では、時間Δt(=t1−tg)が経過しているため、その間の車両の移動量L0’の分だけ、車両の位置が変化している。
【0051】
ところで、上述の画像認識部20の地物認識処理は、画像処理を伴うため、単純な演算処理に比べて、処理時間が長くなる。従って、上述の如く画像認識部20により地物Aと自車両との相対距離L0が導出された時点t=t1で直ちに、車速パルスカウント部24が車速パルスのカウントを開始した場合であっても、少なくとも画像認識部20の地物認識処理に要する時間分だけ、車両の位置が変化しているため、誤差が生ずることになる。このようなずれは、画像認識部20の地物認識処理に要する時間が微少な時間であって小さいとしても、回避されることが望ましい。
【0052】
そこで、本車速パルス補正ロジックでは、車速パルス補正部26は、画像取得時点t=tgから画像認識完了時点t=t1までの時間Δtと、車速Vに基づいて、時間Δtの間に車両が移動した距離L0’(以下、「補正距離L0’」という)を算出する。尚、車速Vは、車輪速センサ30の出力信号に基づいて演算されてもよいし、他の情報(例えば、トランスミッションのタービン回転数、電気自動車の場合には駆動モータの回転数等)に基づいて演算されてもよい。また、車速Vは、画像認識完了時点t=t1での車速であってもよいし、画像取得時点t=tgでの車速であってもよいし、時間Δtにおける平均車速であってよい。或いは、時間Δtを細分した各時点の車速に基づいて、積分により補正距離L0’を正確に算出してもよい。車速パルス補正部26は、同様に、車速パルスカウント部24のカウント処理の終了をトリガする地物Bの画像認識完了時点に対しても、同様の補正距離L1’を算出する。そして、車速パルス補正部26は、以下の式を用いて、
D0=(D−L0−L0’+L1+L1’)/Cp
相対距離算出部18からの相対距離Dと、車速パルスカウント部24からの車速パルスのカウント値Cpとから、車速パルスの1パルス当たりの距離D0を算出する。
【0053】
このように図7を参照して説明した車速パルス補正ロジックによれば、画像取得時点t=tgから画像認識完了時点t=t1までの時間Δtを考慮して、補正距離L0’(L1’)に基づいて画像認識部20により要した処理時間を補償するので、車速パルスの補正精度を高めることができる。尚、同様の考え方から、車速パルスカウント部24は、例えばデータに付されたタイムスタンプを参考にして、車輪速センサ30の出力信号の記憶データを用いて、相対距離L0を求めるのに用いられた地物Aに係る画像の取得時点から、相対距離L1を求めるのに用いられた地物Bに係る画像の取得時点までの車速パルスをカウントすることとしてもよい。
【0054】
図8は、1組の地物(地物A,B)の検出時点と車速パルスとの関係を示す図である。図8は、横軸に時間をとり、車速パルスの発生態様の一例を時系列で示す。図8には、地物A,Bが認識された時点t=t1、t2が模式的に示されている。
【0055】
ところで、上述の実施例では、車速パルスカウント部24は、上述の如く、地物Aが認識された時点t=t1から地物Bが認識された時点t=t2までの車速パルスP2〜Pnをカウントする。しかしながら、実際には、図8に示すように、車速パルスは、パルス間隔T(k=1,2...)[ms]を有するので、例えば地物Aが認識された時点t=t1がパルス間隔Tのうちのどの時間位置にあるかによって量子化誤差が生ずる。即ち、地物が同じパルス間隔T内で認識されたとしても、最大±1パルス分相当の誤差が生じうる。例えば、図8に示すように、地物Aが認識された時刻がt=t1であり、地物Bが認識された時刻がt=t2である場合と、地物Aが認識された時刻がt=t1’であり、地物Bが認識された時刻がt=t2’ である場合とで、計約2パルス分相当の誤差が生じる。
【0056】
そこで、本車速パルス補正ロジックでは、図9に示すように、車速パルス補正部26は、地物Aが認識された時刻t=t1から車速パルスP2が発生するまでの時間T1Bと、車速パルスの1パルス当たりの距離D0(補正前)とに基づいて、以下の式により、時間T1Bの間に車両が移動した距離La(以下、「補正距離La」という)を算出する。
La=D0×T1B/T
ここで、T[ms]は、前回(k=0)のパルス間隔である。
また、同様に、車速パルス補正部26は、車速パルスP2が発生してから地物Bが認識される時刻t=t2までの時間TnAと、車速パルスの1パルス当たりの距離D0(補正前)とに基づいて、以下の式により、時間TnAの間に車両が移動した距離Lb(以下、「補正距離Lb」という)を算出する。
Lb=D0×TnA/Tn−1
ここで、Tn−1[ms]は、前回(k=n−1)のパルス間隔である。
【0057】
そして、車速パルス補正部26は、以下の式を用いて、
D0=(D−L0−La+L1−Lb)/Cp
相対距離算出部18からの相対距離Dと、車速パルスカウント部24からの車速パルスのカウント値Cpとから、車速パルスの1パルス当たりの距離D0(補正後)を算出する。
【0058】
このように図8及び図9を参照して説明した車速パルス補正ロジックによれば、車速パルスのカウント時に必然的に生じる量子化誤差が補償されるので、車速パルスの補正精度を高めることができる。
【0059】
尚、図8及び図9を参照して説明した車速パルス補正ロジックは、図7を参照して説明した車速パルス補正ロジックと組み合わせて用いることも可能である。この場合、車速パルス補正部26は、以下の式を用いて、
D0=(D−L0−L0’−La+L1+L1’−Lb)/Cp
車速パルスの1パルス当たりの距離D0を算出すればよい(記号については上述参照)。これにより、車速パルスの補正精度を更に高めることができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0061】
例えば、上述の実施例では、認識対象の地物として道路上に描かれたペイント(標識)を取り上げているが、認識対象の地物としては、その他、道路上に設定される各種看板標識や建造物の静止物を含んでよい。これらの地物についても、画像認識が可能であるからである。この場合、これらの地物の位置情報を、地図データベース12に格納しておくことで、同様に、精度の高い車速パルスの補正を行うことができる。
【0062】
また、上述の実施例では、車両の走行時にリアルタイムに画像認識処理が行われ、車速パルスの補正が実行されているが、画像処理結果と車速パルスのカウント値(或いは車輪速センサ30の出力データ)を記憶しておき、事後的に補正することを可能である。
【0063】
また、上述の実施例においては、車両の後部に配設されたバックカメラ22を用いて地物の認識を行うこととしているが、車両の前部に配設されたカメラを用いて地物の認識を行うこととしてもよい。
【0064】
また、上述の実施例においては、地図データベース12を車両に搭載するものとしたが、車両と通信可能な外部センタ(サーバー)に設け、車両が外部センタにその都度通信アクセスしてその地図データベースに格納されているデータを読み出せるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明による車輪速パルス補正装置の主要構成の一実施例を示すシステム構成図である。
【図2】認識対象選定部16、相対距離算出部18、画像認識部20、車速パルスカウント部24、及び、車速パルス補正部26により協働して実現される処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3(A)は、地物Aを認識したときの車両の状態を模式的に示す図であり、図3(B)は、地物Bを認識したときの車両の状態を模式的に示す図である。
【図4】認識対象選定部16による地物選定ロジックの一例を示す説明図である。
【図5】認識対象選定部16による地物選定ロジックのその他の一例を示す説明図である。
【図6】地物の種類とその認識率の対応関係を示すマップである。
【図7】好ましい車速パルス補正ロジックの一例(その1)を示す説明図である。
【図8】好ましい車速パルス補正ロジックの一例(その2)を示す説明図である。
【図9】好ましい車速パルス補正ロジックの一例(その2の続き)を示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
10 車輪速パルス補正装置
12 地図データベース
14 自車位置特定部
16 認識対象選定部
18 相対距離算出部
20 画像認識部
22 周囲画像取得部(バックカメラ)
24 車速パルスカウント部
26 車速パルス補正部
30 車輪速センサ
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
【出願日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【代理人】 【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦


【公開番号】 特開2008−8783(P2008−8783A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−180168(P2006−180168)