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【発明の名称】 センサ、センシング装置、及びセンシング方法
【発明者】 【氏名】納谷 昌之

【氏名】谷 武晴

【要約】 【課題】装置構成が簡易で検出感度が良好な新規のセンサを提供する。

【構成】センサ1は、測定光L1の入射側(図示上側)から、半透過半反射性を有する第1の反射体10と、透光体20と、反射性を有する第2の反射体30とを順次備えた光共振体からなり、光共振体における共振による前記測定光の吸収ピークと、前記光共振体表面及び/又は内部において生じる局在プラズモン共鳴による前記測定光の吸収ピークとが一致している構成としている。センサ1は、第1の反射体10の平均複素屈折率と第2の反射体30の平均複素屈折率と透光体20の平均複素屈折率及び厚みとに応じて特定波長の光を吸収する吸収特性を示し、第1の反射体10から出射光L2が出射されるものであり、吸収特性に応じて変化する出射光L2の物理特性が検出されるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に入射した測定光を前記試料によって異なる物理特性を有する出射光として出射するセンサであって、
前記測定光の入射側から、半透過半反射性を有する第1の反射体と、透光体と、反射性又は半透過半反射性を有する第2の反射体とを順次備えた光共振体からなり、
前記光共振体における共振による前記測定光の吸収ピークと、前記光共振体表面及び/又は内部において生じる局在プラズモン共鳴による前記測定光の吸収ピークとが一致していることを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記試料に接触させられる前記第1の反射体及び/又は前記第2の反射体が、前記測定光の波長よりも小さい凹凸構造を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記試料に接触させられる前記第1の反射体及び/又は前記第2の反射体が、前記透光体の表面に金属がパターン形成された金属層からなることを特徴とする請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記試料に接触させられる前記第1の反射体及び/又は前記第2の反射体が、前記透光体の表面に複数の金属粒子が固着された金属層からなることを特徴とする請求項2に記載のセンサ。
【請求項5】
前記透光体が、前記第1の反射体側の面において開口した前記測定光の波長よりも小さい径の複数の微細孔を有する透光性微細孔体からなり、前記第1の反射体が、前記透光体の表面形状に沿って複数の微細孔を有して形成された金属層からなることを特徴とする請求項5に記載のセンサ。
【請求項6】
前記透光性微細孔体が被陽極酸化金属体の一部を陽極酸化して得られる金属酸化物体からなり、前記第2の反射体が前記被陽極酸化金属体の非陽極酸化部分からなり、前記第1の反射体が前記透光体に成膜された金属層からなることを特徴とする請求項5に記載のセンサ。
【請求項7】
前記透光性微細孔体の前記複数の微細孔の一部に、金属が充填されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記透光性微細孔体の前記複数の微細孔の底部に、金属が充填されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のセンサ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のセンサと、
前記センサに前記測定光を照射する測定光照射手段と、
前記出射光の前記物理特性を検出する検出器とを備えたことを特徴とするセンシング装置。
【請求項10】
前記検出器が、前記出射光の光強度又は光強度の変化量、又は前記出射光の物理特性うち少なくとも一つを検出するものであることを特徴とする請求項9に記載のセンシング装置。
【請求項11】
前記センサが、少なくとも前記第1の反射体から前記出射光が出射されるものであり、前記検出器が、前記第1の反射体から出射された前記出射光の非正反射成分のみを受光して前記物理特性を検出するものであることを特徴とする請求項9又は10に記載のセンシング装置。
【請求項12】
前記測定光照射手段が、前記センサの光入射面に対して非垂直方向から前記測定光を照射する位置に配置されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のセンシング装置。
【請求項13】
前記試料の屈折率及び/又は濃度を分析するものであることを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載のセンシング装置。
【請求項14】
前記試料の屈折率を分析して、前記試料を同定するものであることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載のセンシング装置。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれかに記載のセンサの前記試料の接触側に特定物質と特異的に結合する結合物質を固定してから前記試料を接触させ、該センサに対して前記測定光を照射し、前記出射光の前記物理特性を検出して、前記試料に含まれる前記特定物質の有無及び/又は前記特定物質の量を分析することを特徴とするセンシング方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に入射した測定光を試料によって異なる物理特性を有する出射光として出射するセンサ、これを用いたセンシング装置及びセンシング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体分子の分析等に使用されるセンサとして、局在プラズモン共鳴によって特定波長の反射光の光強度が減衰する現象を利用するセンサが提案されている。局在プラズモンセンサは、装置構成が簡易であり、安価で構造上の制約が少ない利点があるが、検出感度が良好でなく高精度な分析を行うことが難しいとされている。検出感度は、センサ面における金属微細凹凸構造の面内均一性により影響されるため、金属微細凹凸構造を精密に制御して規則性の高い金属微細凹凸構造を作製する方法が開示されている(特許文献1、特許文献2等)。
【特許文献1】特開2004−279364号公報
【特許文献2】特開2004−232027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1及び2に記載の局在プラズモンセンサは、金属を陽極酸化して得られる規則性の高い微細孔構造を利用して金属微細凹凸構造を作製しており、比較的容易に微細構造の制御を可能としている。しかし、局在プラズモン共鳴による吸収ピークは、金属微細凹凸構造における散乱光を含むことから、吸収効果に影響を与えてピーク幅が広がり、充分な感度が得られないため、高精度な分析が難しい。
【0004】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、装置構成が簡易でありながら、局在プラズモンセンサに比して検出感度が良好な新規のセンサ、これを用いたセンシング装置及びセンシング方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のセンサは、試料に入射した測定光を、試料によって異なる物理特性を有する出射光として出射するセンサであって、測定光の入射側から、半透過半反射性を有する第1の反射体と、透光体と、反射性又は半透過半反射性を有する第2の反射体とを順次備えた光共振体からなり、光共振体における共振による測定光の吸収ピークと、光共振体表面及び/又は内部において生じる局在プラズモン共鳴による測定光の吸収ピークとが一致していることを特徴とするものである。
【0006】
本明細書において、「半透過半反射性」とは透過性と反射性を共に有することを意味し、透過率と反射率は任意である。
本発明のセンサにおいて、前記第1の反射体及び/又は第2の反射体は、測定光の波長よりも小さい凹凸構造を有するものであることが好ましい。
ここで、「測定光の波長よりも小さい凹凸構造」とは、凸部及び凹部(ここで言う「凹部」には反射体を厚み方向に貫通する空隙も含まれる)の平均的な大きさ(ここで言う「大きさ」は最大幅を示す)と凹凸の平均的なピッチが測定光の波長よりも小さいことを意味する。
【0007】
本発明のセンサの好適な態様としては、前記第1の反射体及び/又は第2の反射体が、前記透光体の表面に金属がパターン形成された金属層からなるものが挙げられる。
【0008】
本発明のセンサの他の好適な態様としては、前記第1の反射体及び/又は第2の反射体が、前記透光体の表面に複数の金属粒子が固着された金属層からなるものが挙げられる。
【0009】
本発明のセンサの他の好適な態様としては、前記透光体が、前記第1の反射体側の面において開口した前記測定光の波長よりも小さい径の複数の微細孔を有する透光性微細孔体からなり、前記第1の反射体が、前記透光体の表面形状に沿って複数の微細孔を有して形成された金属層からなるものが挙げられる。かかる構成において、微細孔の一部に金属が充填されていてもよいし、微細孔底部にのみ金属が充填されていてもよい。
【0010】
本発明のセンシング装置は、本発明のセンサと、センサに測定光を照射する測定光照射手段と、センサからの出射光の物理特性を検出する検出器とを備えたことを特徴とするものである。
検出器としては、出射光の光強度又は光強度の変化量、又は出射光の物理特性うち少なくとも一つを検出するものが好ましい。
本発明のセンシング装置では、試料の屈折率及び/又は濃度を分析することができ、試料の屈折率を分析して試料を同定することもできる。
【0011】
本発明のセンシング方法は、上記の本発明のセンサの試料の接触側に特定物質と特異的に結合する結合物質を固定してから試料を接触させ、センサに対して測定光を照射し、出射光の前記物理特性を検出して、試料に含まれる特定物質の有無及び/又は特定物質の量を分析することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセンサは、測定光の入射側から、半透過半反射性を有する第1の反射体と、透光体と、反射性又は半透過半反射性を有する第2の反射体とを順次備えた光共振体からなり、光共振体における共振による測定光の吸収ピークと、光共振体表面及び/又は内部において生じる局在プラズモン共鳴による測定光の吸収ピークとが一致している構成としている。
【0013】
かかる構成では、局在プラズモン共鳴に起因する反射ピークを有した出射光が第1の反射体及び/又は第2の反射体から出射される。共振条件及び局在プラズモン共鳴波長は試料の接触によって変化し、それに伴って出射光の物理特性も同様に変化するので、出射光の反射ピークの強度及び波長シフト等を検出することで、試料の分析を行うことができる。
【0014】
一般に、反射ピークは、吸収ピークと比してS/N比が高いことが知られている。従って、本発明によれば、高いS/N比を有する反射ピークによりセンシングを行うことができるので、局在プラズモンセンサに比して検出感度の良好な高精度なセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
「センサの第1実施形態」
図1を参照して、本発明に係る第1実施形態のセンサについて説明する。図1(a)は斜視図、図1(b)は厚み方向断面図(A−A’断面図)である。
【0016】
図1に示す如く、本実施形態のセンサ1は、測定光L1の入射側(図示上側)から、半透過半反射性を有する第1の反射体10と、透光体20と、反射性を有する第2の反射体30とを順次備えたデバイス構造を有する。測定光L1は単波長光でもブロード光でもよく、検出する物理特性に応じて選択される。
【0017】
透光体20は透光性平坦基板からなり、第1の反射体10は透光体20の一方の面に金属細線11が規則的な格子状パターンで形成された金属層からなり、第2の反射体30は透光体20の他方の面に形成されたベタ金属層からなる。
透光体20の材質は特に制限なく、ガラスやアルミナ等の透光性セラミック、アクリル樹脂やカーボネート樹脂等の透光性樹脂等が挙げられる。
【0018】
第1の反射体10及び第2の反射体30の材質としては、任意の反射性金属を使用でき、Au、Ag、Cu、Al、Pt、Ni、Ti、及びこれらの合金等が挙げられる。第1の反射体10及び第2の反射体30はこれら反射性金属を2種以上含むものであってもよい。
ベタ金属層である第2の反射体30は、例えば金属蒸着等により成膜できる。第1の反射体10は例えば、金属蒸着等によりベタ金属層を成膜した後、公知のフォトリソグラフィー加工を実施することで形成できる。
【0019】
第1の反射体10は反射性金属からなるが、空隙であるパターン間隙12を複数有しているので光透過性を有し、半透過半反射性を有する。第1の反射体10の金属細線11の線幅及びピッチは測定光L1の波長よりも小さく設計されており、第1の反射体10は測定光L1の波長よりも小さい凹凸構造を有するものとなっている。凹凸構造が光の波長よりも小さいサイズである場合、光に対しては薄膜であり、第1の反射体10は、電磁メッシュシールド機能を有する半透過半反射性の薄膜となる。
【0020】
本実施形態のセンサ1では、第1の反射体10及び第2の反射体30が、接触した試料によって平均複素屈折率が変わるセンシング体であり、第1の反射体10及び/又は第2の反射体30に試料を接触させて試料の分析を行うことができる。
特に、第1の反射体10は、金属細線11とパターン間隙12との測定光L1の波長よりも小さい凹凸構造を有しているので、第1の反射体10の試料による平均複素屈折率の変化がより高い感度で起こる。これは、第1の反射体10の凹凸構造によって測定光L1の振動等が効果的に起こることなどによると考えられる。したがって、少なくとも第1の反射体10側に試料を接触させて試料の分析を行うことが好ましい。
【0021】
金属細線11のピッチは測定光L1の波長よりも小さい条件を充足すれば特に制限なく、測定光L1として可視光を用いる場合には例えば200nm以下が好ましい。金属細線11のピッチは小さい方が感度の点で好ましい。金属細線11の線幅は特に制限なく、感度の点で小さい方が好ましい。金属細線11の線幅は光によって金属中で振動する電子の平均自由行程以下であることが好ましく、具体的には50nm以下、特に30nm以下であることが好ましい。
【0022】
金属細線11のピッチ及び線幅が小さい方が、1本の金属細線11に占める表面の割合が相対的に大きくなるため、金属細線11の表面特性が第1の反射体10の全体特性に反映されやすくなり、より高い感度が得られる。具体的には、金属細線11のピッチ及び線幅が小さい方が、試料の相違による第1の反射体10の誘電率変化がより大きくなり、試料の相違による第1の反射体10の平均複素屈折率(実効複素屈折率)の変化がより大きくなり、より高い感度が得られる。
【0023】
図1(b)に示す如く、センサ1に測定光L1が入射すると、第1の反射体10の透過率又は反射率に応じて、一部は第1の反射体10の表面で反射され(図示略)、一部は第1の反射体10を透過して透光体20に入射する。透光体20に入射した光は、第1の反射体10と第2の反射体30との間で反射を繰り返す。すなわち、センサ1は、第1の反射体10と第2の反射体30との間で多重反射が起こる光共振体である。
【0024】
かかるデバイスでは、多重反射光による多重干渉が起こり、共振条件を満たす特定波長の光が選択的に吸収される吸収特性を示す。共振条件は第1の反射体10の平均複素屈折率と第2の反射体30の平均複素屈折率と透光体20の平均複素屈折率及び厚みdとに応じて変わるので、これらファクターに応じて特定波長の光を吸収する吸収特性を示し、その吸収特性に応じた測定光L1と異なる物理特性の出射光L2が出射される。本実施形態のセンサ1は、第2の反射体30が反射性を有するので、出射光L2が第1の反射体10からのみ出射される反射型センサである。
【0025】
また、本実施形態のセンサ1は、第1の反射体10と第2の反射体30が金属からなり、第1の反射体10は測定光L1の波長より小さい微細凹凸構造を有するので、第1の反射体10で局在プラズモン共鳴を生じる。
【0026】
局在プラズモン共鳴は、金属の自由電子が光の電場に共鳴して振動することで電場を生じる現象である。特に凹凸構造を有する金属層では、凸部の自由電子が光の電場に共鳴して振動することで凸部周辺に強い電場を生じ、局在プラズモン共鳴が効果的に起こるとされている。本実施形態では、第1の反射体10が測定光L1の波長より小さい凹凸構造を有するので、局在プラズモン共鳴が効果的に起こる。
【0027】
局在プラズモン共鳴が生じる波長(共鳴波長)においては、測定光L1の散乱及び吸収が著しく増大し、センサ1からの出射光強度が著しく低くなる。局在プラズモン共鳴波長及び測定光L1の散乱や吸収の程度は、センサ1の表面の凹凸のサイズ、金属の種類及び表面に接触された試料の屈折率等に依存し、従って、センサ1表面に接触された試料の物理特性により変化する。
【0028】
局在プラズモン共鳴は任意の金属で起こりうるが、第1の反射体10の金属としては、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等が好ましく、金(Au)、銀(Ag)が特に好ましい。
【0029】
本実施形態のセンサ1は、上記した多重干渉による吸収のピークと、局在プラズモン共鳴のピークを重ねることにより生じる反射ピークによりセンシングを行う。そのため、多重干渉による共振波長(λr)と、局在プラズモン共鳴波長(λlp)が略一致するように設計されている(λr≒λlp)。
【0030】
共振条件は、第1の反射体10の平均複素屈折率(n−ik)と第2の反射体30の平均複素屈折率(n−ik)と透光体20の平均複素屈折率(n−ik)及び厚みdとに応じて変わるが、第1の反射体10の平均複素屈折率と第2の反射体30の平均複素の変化による変動量は、透光体20の平均複素屈折率及び透光体20の厚みdの変化による変動量に比して小さいため、多重干渉による共振波長は、数nmのオーダーの精度であれば、透光体20の厚みdによりほぼ決定することができる(−ik、−ik−ikは虚数部を示す。本実施形態では、透光体20の平均複素屈折率の虚数部は0であるのでn−ik=nとなる。)。従って、センサ1において、透光体20の厚みdは、λrとλlpとが略一致するように最適化されている。厚みdが任意の値である場合は、λrとλlpとは、異なる場合もあるし、重なる場合もある。
【0031】
透光体20の厚みdと透光体20内の平均複素屈折率(n−ik)と共振波長λrとは、数nmオーダーの精度において下記式を略充足しており、従って、透光体20内の平均複素屈折率(n−ik)が同じものであれば、透光体20の厚みdを変えるだけで共振波長λrを変化させることができる。
d=(m+1)λr/2(n−ik
(式中、dは透光体20の厚み、λrは共振波長、n−ikは透光体20内の平均複素屈折率、mは整数である。)
後記する第4実施形態のセンサ4のように透光体20が透光性微細孔体からなる場合は、「透光体20内の平均複素屈折率」とは、透光性微細孔体の複素屈折率とその微細孔内の物質(微細孔内に特に充填物質がない場合には空気、微細孔内に充填物質がある場合には充填物質/又は充填物質と空気)の屈折率とを合わせて平均化した平均複素屈折率を意味する。
【0032】
式中のmの値によって透光体20の厚みdは複数の値を有し、多重干渉による可視光波長領域の吸収ピーク波長が1つとなり検出が容易なことから、透光体20の厚みdは300nm以下が好ましく、多重反射が効果的に起こりかつ多重干渉による吸収ピーク波長が可視光域で検出が容易なことから100nm以上が好ましい。上記に記載の通り、透光体20の平均複素屈折率n−ik及び厚みdの変化による影響に比してその程度は小さいものの、第1の反射体10及び第2の反射体30の平均複素屈折率や表面状態によっても、共振条件は影響を受けるため、第1の反射体10及び/又は第2の反射体30に試料が接触することにより、出射光L2の物理特性が変化する。
【0033】
図2(a)に、センサ1において透光体20の厚みdが最適化されていない場合(λr≠λlp)の出射光L2のスペクトル例を示す。図2(a)において、多重干渉による吸収ピーク(Pr)と、局在プラズモン共鳴のピーク(Plp)とは、それぞれ別の波長に現れている。図に示すように、一般的に局在プラズモン共鳴の吸収ピークは多重干渉による吸収ピークに比して感度が良くない。
【0034】
図2(b)に、透光体20の厚みdを最適化し、多重干渉による吸収ピークPrと局在プラズモン共鳴のピークPlpを重ねたときの出射光L2のスペクトル例を示す。わかりやすくするため、元の吸収ピークの形状も示してある。図2(b)に示される出射光L2のスペクトルは、吸収ピークの中に反射ピークPrfを有するW型の形状を示しており、反射ピークPrfの波長λrfは、局在プラズモン共鳴波長λlpと略同一波長である。
【0035】
また、図2(c)は、センサ1の第1の反射体10に異なる試料A、Bを接触させたときの出射光L2のスペクトル例を示しており、試料を変えることで反射ピーク波長がλ1からλ2に変化する様子が示されている。図2(a)〜(c)に示されるスペクトルは、いずれも測定光L1として白色光を用いた場合のスペクトルである。
【0036】
センサ1では、透光体20内における多重反射回数(フィネス)が最大となるよう、光インピーダンスマッチングを取ったデバイス構造とすることが好ましい。かかる構成とすることで、吸収ピークがシャープになり、より高精度な分析を実施でき、好ましい。
【0037】
センサ1では、第1の反射体10及び/又は第2の反射体30(好ましくは第1の反射体10)に試料を接触させると、反射体と試料との相互作用等によって試料が接触した反射体の平均複素屈折率(実効複素屈折率)が変わり、センサ1の共振条件及び局在プラズモン共鳴条件が変化し、吸収特性が変化する。出射光L2の物理特性も、センサ1の吸収特性に応じて変化し、従って、センサ1では出射光L2の物理特性を検出することにより試料の分析を行うことができる。
【0038】
吸収特性によって変化する出射光L2の物理特性としては、出射光L2の光強度又は光強度の変化量、反射ピーク波長又は反射ピーク波長のシフト等が挙げられる。具体的なセンシング装置の構成例については後記する。
【0039】
本実施形態のセンサ1では、試料の屈折率及び/又は濃度を分析することができ、試料の屈折率を分析して試料を同定することもできる。また、試料を接触させる反射体(第1の反射体10及び/又は第2の反射体30)に特定物質と特異的に結合する結合物質を固定してから試料を接触させ、センサ1に対して測定光L1を照射し出射光L2を検出することで、試料に含まれる特定物質の有無及び/又は特定物質の量を分析することもできる。特定物質/結合物質の組合せとしては抗原/抗体(いずれを結合物質としてもよい)等が挙げられ、本実施形態では抗原抗体反応等の経時的な分析も可能である。
本実施形態のセンサ1は以上のように構成されている。
【0040】
上記のように、本実施形態のセンサ1は、測定光の入射側から、半透過半反射性を有する第1の反射体10と、透光体20と、反射性を有する第2の反射体30とを順次備えた光共振体からなり、光共振体における共振による測定光の吸収ピークPrと、光共振体表面(第1の反射体10)において生じる局在プラズモン共鳴による測定光の吸収ピークPlpが一致している構成としている。
【0041】
かかる構成では、第1の反射体10を透過して透光体に入射した光が第1の反射体10と第2の反射体30との間で多重反射し、多重反射光による多重干渉が起こり、共振条件を満たす特定波長の光が選択的に吸収される吸収特性を示す。一方、光共振体表面(第1の反射体10)においては、金属微細凹凸構造による局在プラズモン共鳴が生じる。多重干渉による共振波長λrは、透光体20の厚みdを変化させることにより容易に変えることができるので、透光体20の厚みdを変化させて、共振波長λrと局在プラズモン共鳴の共鳴波長λlpとを一致させることにより、局在プラズモン共鳴に起因する反射ピークPrfを有した出射光L2が第1の反射体10から出射される。
【0042】
一般に反射ピークは、吸収ピークと比してS/N比が高いと言われており、本実施形態のセンサ1においても、反射ピークPrfのバックグラウンドをゼロに近づけることができるため、非常にS/N比の高い反射ピークによりセンシングを行うことができる。従って、本実施形態のセンサ1によれば、局在プラズモン共鳴を用いたセンサに比して、検出感度が良好な、高精度なセンシングを行うことができる。
【0043】
本実施形態では、上記のように、多重干渉による共振波長λrと局在プラズモン共鳴の波長λlpを重ねることにより生じる反射ピークPrfを利用しており、反射ピークPrfは局在プラズモン共鳴に起因するものであることを述べたが、反射ピークPrfの発現要因については、局在プラズモン共鳴に起因するものに限らず、多重干渉による共振と局在プラズモン共鳴との相互作用又は上記デバイス構成特有の現象が含まれていることも考えられる。
【0044】
本実施形態では、第1の反射体10が規則的な格子状パターンの場合について説明したが、第1の反射体10のパターン形状は任意であり、ランダムパターンでもよい。ただし、構造規則性が高い方が共振構造の面内均一性が高く、特性が集約されるので好ましい。
【0045】
「センサの第2実施形態」
図3を参照して、本発明に係る第2実施形態のセンサについて説明する。図3は第1実施形態の図1(b)に対応する断面図である。本実施形態において、第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
【0046】
図3に示す如く、本実施形態のセンサ2は、第1実施形態と同様、測定光L1の入射側(図示上側)から、半透過半反射性を有する第1の反射体10と、透光体20と、半透過半反射性を有する第2の反射体30とを順次備えたデバイス構造を有する。本実施形態が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態では第2の反射体30がベタ金属層からなり反射性を有する反射体であったのに対して、第2の反射体30が第1の反射体10と同様に、金属細線31が規則的な格子状パターンで形成された金属層からなり半透過半反射性を有する点である(第2の反射体30の斜視図は図1(a)の第1の反射体10と同様)。
【0047】
本実施形態のセンサ2も、第1の反射体10及び第2の反射体30が、接触した試料によって平均複素屈折率が変わるセンシング体であり、第1の反射体10及び/又は第2の反射体30に試料を接触させて試料の分析を行うことができる。本実施形態では、第1の反射体10及び第2の反射体30がいずれも、測定光L1の波長より小さい凹凸構造を有するので、いずれに試料を接触させても、試料による反射体の平均複素屈折率の変化が高感度に起こる。
【0048】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1の反射体10を透過して透光体20に入射した光が第1の反射体10と第2の反射体30との間で多重反射し、多重反射光による多重干渉が起こり、共振条件を満たす特定波長の光が選択的に吸収される吸収特性を示す。
【0049】
本実施形態においては、第1の反射体と同様に、第2の反射体30も、測定光L1の波長より小さい微細凹凸構造を有することになるため、第2の反射体30においても局在プラズモン共鳴を生じる。従って、本実施形態においては、光共振体表面及び内部(第1の反射体10及び第2の反射体30)において、金属微細凹凸構造による局在プラズモン共鳴が生じる。
【0050】
本実施形態においても、多重干渉による共振波長λrは、透光体20の厚みdを変化させることにより容易に変えることができるので、透光体20の厚みdを変化させて、共振波長λrと局在プラズモン共鳴λlpの共鳴波長とを一致させることにより、局在プラズモン共鳴に起因する反射ピークPrfを有した出射光L2が第1の反射体10及び/又は第2の反射体30から出射される。
【0051】
第1の反射体10及び/又は第2の反射体30に試料を接触させると、反射体と試料との相互作用等によって試料が接触した反射体の平均複素屈折率(実効複素屈折率)が変わる。従って第2の反射体30が半透過半反射性を有する場合も、吸収特性によって変化する出射光L2の物理特性を検出することで、試料の分析を行うことができる。
【0052】
第2の反射体30が反射性を有する第1実施形態では反射型センサのみが得られるのに対し、第2の反射体30が半透過半反射性を有する本実施形態では、第1の反射体10の平均複素屈折率と第2の反射体30の平均複素屈折率と透光体20の平均複素屈折率及び厚みdとに応じて、第1の反射体10からのみ出射光L2が出射される反射型センサ、第2の反射体30からのみ出射光L2が出射される透過型センサ、第1の反射体10及び第2の反射体30から測定光L2が出射される半透過半反射型センサのいずれかとなる。いずれのタイプのセンサにおいても、第1の反射体10及び第2の反射体30から出射される出射光L2のスペクトル例は第1実施形態の第1の反射体10のスペクトル例と同様である。
【0053】
本実施形態のセンサ2は以上のように構成されており、第2の反射体30が半透過半反射性を有する点を除けば第1実施形態と基本的な構成は同様であるので、第1実施形態と同様の効果を奏する。本実施形態では、第1の反射体10及び第2の反射体30が同一パターンからなる場合について説明したが、異なるパターンでもよい。
【0054】
「センサの第3実施形態」
図4を参照して、本発明に係る第3実施形態のセンサについて説明する。図4(a)は第1実施形態の図1(a)に対応する斜視図、図4(b)はセンサの上面図である。本実施形態において、第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
【0055】
図4に示す如く、本実施形態のセンサ3は、第1実施形態と同様、測定光L1の入射側から、半透過半反射性を有する第1の反射体10と透光体20と反射性を有する第2の反射体30とを順次備えたデバイス構造を有する。
【0056】
本実施形態が第1実施形態と異なる点は、第1実施形態では第1の反射体10がパターン形成された金属層であったのに対して、第1の反射体10が透光体20の表面に略同一径の複数の金属粒子13がマトリクス状に規則配列して固着された金属層からなる点である。金属粒子13の材質は制限なく、第1実施形態の第1の反射体10と同様の金属が例示できる。
【0057】
上記第1の反射体10は例えば、透光体20の表面に金属粒子13の分散溶液をスピンコート法等により塗布し乾燥することで形成できる。分散溶液に樹脂や蛋白質等のバインダを含有させ、バインダを介して金属粒子13を透光体20の表面に固着させることが好ましい。バインダとして蛋白質を用いる場合には、蛋白質同士の結合反応を利用して、金属粒子13を透光体20の表面に固着させることも可能である。
【0058】
第1の反射体10は反射性金属からなるが、空隙である粒子間隙14を複数有しているので光透過性を有し、半透過半反射性を有する。金属粒子13の径及びピッチは測定光L1の波長よりも小さく設計されており、第1の反射体10は測定光L1の波長よりも小さい凹凸構造を有するものとなっている。本実施形態においても、第1の反射体10は、凹凸構造が光の波長よりも小さいので、電磁メッシュシールド機能を有する半透過半反射性の薄膜となる。
【0059】
本実施形態のセンサ3も、第1の反射体10の表面に試料又は試料セルを接触させて試料の分析を行うことができる。
特に、第1の反射体10は、金属粒子13と粒子間隙14との測定光L1の波長よりも小さい凹凸構造を有しているので、第1実施形態と同様の理由で、第1の反射体10の試料による平均複素屈折率の変化がより高い感度で起こる。したがって、少なくとも第1の反射体10側に試料を接触させて試料の分析を行うことが好ましい。
【0060】
金属粒子13のピッチは測定光L1の波長よりも小さい条件を充足すれば特に制限なく、測定光L1として可視光を用いる場合には例えば200nm以下が好ましい。金属粒子13のピッチは小さい方が感度の点で好ましい。
【0061】
金属粒子13の径は特に制限なく、感度の点で小さい方が好ましい。金属粒子13の径は光によって金属中で振動する電子の平均自由行程以下であることが好ましく、具体的には50nm以下、特に30nm以下であることが好ましい。
【0062】
第1実施形態の金属細線11と同様、金属粒子13のピッチ及び径が小さい方が、1個の金属粒子13に占める表面の割合が相対的に大きくなるため、金属粒子13の表面特性が第1の反射体10の全体特性に反映されやすくなり、より高い感度が得られる。
【0063】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1の反射体10を透過して透光体20に入射した光が第1の反射体10と第2の反射体30との間で多重反射し、多重反射光による多重干渉が起こり、共振条件を満たす特定波長の光が選択的に吸収される吸収特性を示す。また、光共振体表面(第1の反射体10)においては、金属微細凹凸構造による局在プラズモン共鳴が生じる。多重干渉による共振波長は、透光体の厚みdを変化させることにより容易に変えることができるので、透光体20の厚みdを変化させて、共振波長λrと局在プラズモン共鳴の共鳴波長λlpとを一致させることにより、局在プラズモン共鳴に起因する反射ピークPrfを有した出射光L2が第1の反射体10から出射される。
【0064】
本実施形態においても、第1の反射体10及び/又は第2の反射体30(好ましくは第1の反射体10)に試料を接触させると、反射体と試料との相互作用等によって試料が接触した反射体の平均複素屈折率(実効複素屈折率)が変わり、センサ3の共振条件及び局在プラズモン共鳴条件が変化し、吸収特性が変化する。出射光L2の物理特性も、センサ3の吸収特性によって変化するため、従って出射光L2の物理特性を検出することにより試料の分析を行うことができる。
本実施形態のラマン分光用デバイス3は以上のように構成されている。
【0065】
本実施形態のラマン分光用デバイス3は、第1の反射体10が金属粒子層からなる点を除けば第1実施形態と基本的な構成は同様であるので、第1実施形態と同様の効果を奏する。
本実施形態では、第1の反射体10が略同一径の複数の金属粒子13がマトリクス状に規則配列して固着された金属層からなる場合について説明したが、金属粒子13は径に分布があってもよく、配列パターンも任意であり、ランダム配列でもよい。また、第2の反射体30がベタ金属層からなる場合について説明したが、第2の反射体30についても第1の反射体10と同様に金属粒子層により構成することができる。かかる構成とした場合は、第2の反射体30が半透過半反射性を有するものとなり、第2実施形態と同様に分析を実施することができる。
【0066】
「センサの第4実施形態」
図5及び図6を参照して、本発明に係る第4実施形態のセンサについて説明する。図5はセンサの斜視図、図6は製造工程図である。本実施形態において、第1実施形態と同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
【0067】
図5に示す如く、本実施形態のセンサ4は、第1実施形態と同様、測定光L1の入射側(図示上側)から、半透過半反射性を有する第1の反射体10と、透光体20と、反射性を有する第2の反射体30とを順次備えたデバイス構造を有する。
【0068】
本実施形態では、第1実施形態と異なり、透光体20は図6に示す被陽極酸化金属体(Al)40の一部を陽極酸化して得られる金属酸化物体(Al)41からなり、第2の反射体30は図6に示す被陽極酸化金属体40の非陽極酸化部分(Al)42からなる。第2の反射体30は反射性を有する。
【0069】
透光体20は、第1の反射体10側から第2の反射体30側に延びる略ストレートな複数の微細孔21が開孔された透光性微細孔体である。複数の微細孔21は第1の反射体10側の面において開口し、第2の反射体30側は閉じられている。透光体20において、複数の微細孔21は測定光L1の波長より小さい径及びピッチで略規則的に配列されている。
【0070】
陽極酸化は、被陽極酸化金属体40を陽極とし陰極と共に電解液に浸漬させ、陽極陰極間に電圧を印加することで実施できる。被陽極酸化金属体40の形状は制限されず、板状等が好ましい。また、支持体の上に被陽極酸化金属体40が層状に成膜されたものなど、支持体付きの形態で用いることも差し支えない。陰極としてはカーボンやアルミニウム等が使用される。電解液としては制限されず、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等の酸を、1種又は2種以上含む酸性電解液が好ましく用いられる。
【0071】
図6に示す如く、被陽極酸化金属体40を陽極酸化すると、表面40sから該面に対して略垂直方向に酸化反応が進行し、金属酸化物体(Al)41が生成される。陽極酸化により生成される金属酸化物体41は、多数の平面視略正六角形状の微細柱状体41aが隙間なく配列した構造を有するものとなる。各微細柱状体41aの略中心部には、表面40sから深さ方向に略ストレートに延びる微細孔21が開孔され、各微細柱状体41aの底面は丸みを帯びた形状となる。陽極酸化により生成される金属酸化物体の構造は、益田秀樹、「陽極酸化法によるメソポーラスアルミナの調製と機能材料としての応用」、材料技術Vol.15,No.10、1997年、p.34等に記載されている。
【0072】
規則配列構造の金属酸化物体41を生成する場合の好適な陽極酸化条件例としては、電解液としてシュウ酸を用いる場合、電解液濃度0.5M、液温14〜16℃、印加電圧40〜40±0.5V等が挙げられる。この条件で生成される微細孔21は例えば、径が5〜200nm、ピッチが10〜400nmである。
【0073】
本実施形態において、第1の反射体10は透光体20への金属蒸着等により成膜され、透光体20の表面形状に沿って形成された金属層からなる。透光体20の微細孔21の開口箇所には金属が成膜されないので、第1の反射体10は略中心部に微細孔16を有する平面視略正六角状の金属体15が隙間なく配列した形状を呈する。第1の反射体10の微細孔16は透光体20の微細孔21と同じパターンで開孔されるので、微細孔16は測定光L1の波長より小さい径及びピッチで略規則的に配列されたものとなる。
【0074】
第1の反射体10は反射性金属からなるが、空隙である微細孔16を複数有しているので光透過性を有し、半透過半反射性を有する。第1の反射体10は、略中心部に微細孔16を有する測定光L1の波長より小さい大きさの平面視略正六角状の金属体15が略規則的に配列されたものであるので、測定光L1の波長よりも小さい凹凸構造を有するものとなっている。本実施形態においても、第1の反射体10は、いわゆる電磁メッシュシールド効果により光に対しては半透過半反射性の薄膜として作用する。
【0075】
本実施形態のセンサ4においても、第1の反射体10及び第2の反射体30が、接触した試料によって平均複素屈折率が変わるセンシング体であり、第1の反射体10及び/又は第2の反射体30に試料を接触させて試料の分析を行うことができる。
【0076】
特に、第1の反射体10は、平面視略正六角状の金属体15と微細孔16との測定光L1の波長よりも小さい凹凸構造を有しているので、第1実施形態と同様の理由で、第1の反射体10の試料による平均複素屈折率の変化がより高い感度で起こる。したがって、少なくとも第1の反射体10側に試料を接触させて試料の分析を行うことが好ましい。
【0077】
金属体15のピッチ(微細孔16のピッチ)は測定光L1の波長よりも小さい条件を充足すれば特に制限なく、測定光L1として可視光を用いる場合には例えば200nm以下が好ましい。金属体15のピッチが小さい方が感度の点で好ましい。
【0078】
隣接する微細孔16の離間距離(隣接する微細孔16の間にある金属体15の幅W)は特に制限なく、感度の点で小さい方が好ましい。幅Wは、第1、第3実施形態の金属細線11の幅、金属粒子13の径に相当する。幅Wは、光によって金属中で振動する電子の平均自由行程以下であることが好ましく、具体的には50nm以下、特に30nm以下であることが好ましい。
【0079】
第1実施形態の金属細線11と同様、金属体15のピッチ及び幅Wが小さい方が、金属体15の表面特性が第1の反射体10の全体特性に反映されやすくなり、より高い感度が得られる。
【0080】
本実施形態のセンサ4は、第2の反射体30が被陽極酸化金属体40の非陽極酸化部分(Al)42からなるので、第2の反射体30表面に微細な凹凸構造を有する。従って、第1実施形態及び第3実施形態とは異なり、反射性を有する第2の反射体30においても局在プラズモン共鳴を起こすことができる。
【0081】
本実施形態のセンサ4において、微細孔21の底部には、金属が充填されていることが好ましく、第1の反射体10の成膜時に同時に蒸着することにより充填されても構わない。この場合、センサ4において、透光性の金属酸化物からなる微細柱状体41a内に形成され、デバイス内に略規則的に配列した微細孔21の底部に金属が充填されることになり、センサ4は、粒径均一性が高く、配列も高い規則性を有した金属微細凹凸造をデバイス内部に有することになるため、局在プラズモン共鳴が効果的に起こり、より高感度な測定を行うことができる。
【0082】
微細孔21の底部に充填される金属は、第1の反射体と同様、金属であればよく、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)等が好ましく、金(Au)、銀(Ag)が特に好ましい。この場合、第1の反射体10の表面及び微細孔21底部において局在プラズモン共鳴を生じるので、より効果的な共鳴を得るために、第1の反射体10の金属と微細孔21の底部に充填される金属は同じ種類であることが好ましい。
【0083】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、第1の反射体10を透過して透光体20に入射した光が第1の反射体10と第2の反射体30との間で多重反射し、多重反射光による多重干渉が起こり、共振条件を満たす特定波長の光が選択的に吸収される吸収特性を示す。また、光共振体表面及び内部(第1の反射体10及び第2の反射体30)においては、金属微細凹凸構造による局在プラズモン共鳴が生じる。本実施形態においても、多重干渉による共振波長λrは、透光体20の厚みdを変化させることにより容易に変えることができるので、透光体20の厚みdを変化させて、共振波長λrと局在プラズモン共鳴の共鳴波長λlpとを一致させることにより、局在プラズモン共鳴に起因する反射ピークPrfを有した出射光L2が第1の反射体10から出射される。
【0084】
第1の反射体10及び/又は第2の反射体30(好ましくは第1の反射体10)に試料を接触させると、反射体と試料との相互作用等によって試料が接触した反射体の平均複素屈折率(実効複素屈折率)が変わり、センサ4の共振条件及び局在プラズモン共鳴条件が変化し、吸収特性が変化する。出射光L2の物理特性も、センサ4の吸収特性によって変化するため、従って出射光L2の物理特性を検出することにより試料の分析を行うことができる。
本実施形態のセンサ4は以上のように構成されている。
【0085】
本実施形態のセンサ4は、透光体20が第1の反射体10側の面において開口した複数の微細孔21を有する透光性微細孔体からなり、第1の反射体10が透光体20の表面形状に沿って複数の微細孔16を有して形成された金属層からなる点を除けば、第1実施形態と基本的な構成は同様であるので、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0086】
本実施形態のセンサ4は、陽極酸化を利用して製造されたものであるので、透光体20の微細孔21及び第1の反射体10の微細孔16が略規則配列されたセンサ4を簡易に製造でき、好ましい。ただし、これら微細孔の配列はランダム配列でもよい。
【0087】
本実施形態においては、微細孔21の底部のみに金属が充填された構造となっているが、微細孔21の底部のみでなく、微細孔21の一部であればより大きい部分に金属が充填された構造とすることもできる。ただしその場合、充填される金属の量は、センサ4において、第1の反射体10を透過して透光体20に入射した光が第1の反射体10と第2の反射体30との間で多重反射し、多重反射光による多重干渉を起こすことができる範囲のものであることが必要である。
【0088】
本実施形態では、透光体20の製造に用いる被陽極酸化金属体40の主成分としてAlのみを挙げたが、陽極酸化可能で生成される金属酸化物が透光性を有するものであれば、任意の金属が使用できる。Al以外では、Ti、Ta、Hf、Zr、Si、In、Zn等が使用できる。被陽極酸化金属体40は、陽極酸化可能な金属を2種以上含むものであってもよい。
【0089】
本実施形態では、第2の反射体30が反射性を有する場合について説明したが、被陽極酸化金属体40の全体を陽極酸化する、あるいは、被陽極酸化金属体40の一部を陽極酸化し、さらに被陽極酸化金属体40の非陽極酸化部分42及びその近傍部分を除去することで、微細孔21が透光体20を貫通する透光体20が得られる。微細孔21が透光体20を貫通する透光体20に透光体20の表面形状に沿って第2の反射体30を形成すれば、第1の反射体10と同様に微細孔を有し半透過半反射性を有する第2の反射体30を形成することができ、第2実施形態と同様に分析を実施できる。
【0090】
「設計変更例」
本発明のセンサにおける第1の反射体10及び第2の反射体30の構成やこれらの組合せは適宜設計変更することができる。例えば、第1〜第4実施形態を組み合わせて第1の反射体10及び第2の反射体30を構成し、本発明のセンサを構成することができる。
【0091】
「センシング装置」
図7に基づいて、本発明に係る第1〜第4実施形態のセンシング装置の構成について説明する。反射型センサ又は半透過半反射型センサを用い、反射光の物理特性を検出する反射型のセンシング装置を例として説明する。
【0092】
図7(a)〜(c)に示すセンシング装置5〜7はいずれも、本発明のセンサSと、センサSに測定光L1を照射する測定光照射手段60と、出射光L2である反射光の物理特性を検出する検出器70とから構成されており、測定光照射手段60と検出器70との組合せが各々異なっている。同じ構成要素には同じ参照符号を付してある。センシング装置5〜7は、反射型のセンシング装置であるので、センサSの光入射面Sinは、光出射面と同様で、本発明のセンサSの第1の反射体10である。
【0093】
本発明のセンサSは、上記本発明のセンサの第1〜第4実施形態に記載したように、デバイス構造に特有の反射ピークPrfを有する出射光L2を出射するため、本発明のセンサSを用いたセンシング装置は、出射光L2の光強度又は光強度の変化量、反射ピーク波長λrf又は反射ピーク波長λrfのシフトのうち、少なくとも1つを検出することにより試料の分析を行う。
【0094】
センシング装置5は、測定光照射手段60がハロゲンランプ、キセノンランプ、クリプトンランプ等のブロード光源61からなり、検出器70が分光器71及びデータ処理部72からなる装置である。測定光照射手段60には必要に応じて、光源61からの出射光を平行光束とするコリメータレンズ及び/又は集光レンズ等を含む導光光学系が備えられる。
【0095】
センシング装置5は、測定光照射手段60によってセンサSに測定光L1としてブロード光を照射し、検出器70によって出射光L2である反射光の分光スペクトルを得、センサSにおける光の吸収特性によって変化する、出射光L2の反射ピーク波長λrf又は基準条件からの反射ピーク波長λrfのシフトを検出して、試料の分析を行うものである(分光スペクトル及び反射ピークは図2(c)を参照)。
【0096】
センシング装置6は、測定光照射手段60がレーザ、発光ダイオード等の単波長光源62からなり、検出器70がフォトダイオード等の光強度検出器73及びデータ処理部72からなる装置である。センシング装置6においても、測定光照射手段60には必要に応じてコリメータレンズ及び/又は集光レンズ等を含む導光光学系が備えられる。
【0097】
センシング装置6は、測定光照射手段60によってセンサSに測定光L1として単波長光を照射し、検出器70によって出射光L2である反射光の光強度を検出して、試料の分析を行うものである。出射光L2は、任意のある波長に着目したとき、試料によって該波長の光強度が変わるため、任意の波長の測定光L1について出射光L2の光強度を検出することで、試料の分析を実施することができるが、本発明のセンサSの上記反射ピーク波長λrf付近の波長を用いると、感度の良い分析を行うことができる。
【0098】
センシング装置6においては、測定光照射手段60として単波長光源62を用いる代わりに、測定光照射手段60をブロード光源61及び光源61からの出射光から特定波長光のみを取り出す分光器等の波長分布可変手段とから構成しても、同様に試料の分析を行うことができる。
【0099】
センシング装置7は、測定光照射手段60が、ブロード光源61及び光源61からの出射光から特定波長光のみを取り出しかつ取り出す特定波長光の波長を経時的に変化させることが可能な分光器等の波長分布変化手段63からなり、検出器70が光強度検出器73及びデータ処理部72からなる装置である。データ処理部72には、波長分布変化手段63から取り出される特定波長光の波長データと光強度検出器73による光強度のデータとが入力され、データ処理が行われる。センシング装置7においても、測定光照射手段60には必要に応じてコリメータレンズ及び/又は集光レンズ等を含む導光光学系が備えられる。
【0100】
センシング装置7は、測定光照射手段60によってセンサSに測定光L1として単波長光を照射すると共に経時的に照射する単波長光の波長を変化させ、検出器70によって出射光L2である反射光の光強度の変化を経時的に測定して、図2(c)に示した分光スペクトルと同様のスペクトルを得、出射光L2の反射ピーク波長λrf又は基準条件からの反射ピーク波長λrfのシフトを検出して、試料の分析を行うものである。
【0101】
以上例示したように、検出器70により、出射光L2の光強度又はその変化量、出射光L2の反射ピーク波長λrf又は基準条件からの反射ピーク波長λrfのシフトのうち少なくとも一つを検出することで、試料の分析が実施できる。
【0102】
センシング装置5〜7では、試料の屈折率及び/又は濃度を分析することができ、試料の屈折率を分析して試料を同定することもできる。また、センサSの試料の接触側に特定物質と特異的に結合する結合物質を固定してから試料を接触させ、センサSに対して測定光L1を照射し出射光L2を検出することで、試料に含まれる特定物質の有無及び/又は特定物質の量を分析することもできる。
【0103】
反射型のセンシング装置5〜7は、検出器70が、センサSの第1の反射体10から出射された出射光L2のうち、非正反射成分のみを受光して出射光L2の物理特性を検出するように、構成されていることが好ましい。正反射成分は光強度が強く、検出する出射光L2に正反射成分が含まれると、本来検出したい出射光L2の物理特性のS/N比が下がり、検出精度が低下する恐れがある。
【0104】
また、同様の理由から、反射型のセンシング装置5〜7では、測定光照射手段60がセンサSの光入射面Sin(第1の反射体10)に対して非垂直方向から測定光L1を照射する位置に配置されていることが好ましい。
【0105】
反射型のセンシング装置についてのみ例示したが、透過型センサ又は半透過半反射型センサを用い、透過光を検出する透過型のセンシング装置では、検出器70を第2の反射体30側に配置するなどして、検出器70が透過光を検出するように構成すればよい。
【実施例】
【0106】
(実施例1)
本発明のセンサについて、測定光として白色光を用いた時に得られるスペクトルを、FDTD法による電磁場解析によりシミュレーションし、試料吸着前後のスペクトル変化を検証した。シミュレーションに用いるモデルとして、センサの第4実施形態に記載のセンサ4を採用した。
【0107】
図8(a)は、モデルとして採用したセンサ4の厚み方向断面図であり、シミュレーション条件が視認しやすいように、一つの微細柱状体を拡大して示してある。図8(a)において、モデルとして採用したセンサ4の全体の構成は、図3に記載されているため、同じ構成要素には同じ参照符号を付して、説明は省略する。
【0108】
図8(a)に示す如く、モデルとしたセンサは、被陽極酸化金属体40=Al、微細孔21の直径=50nm、ピッチP=100nm、第1の反射体=Au、第1の反射体蒸着厚=20nm、透光性微細孔体41(Al)厚d=400nm、底面Al厚d=20nmとし、微細孔21の底部にも第1の反射体10と同様の金属Auが20nm蒸着されているものとし、接触させる試料は、水中に屈折率1.7の吸着物を分散させたものとした。
【0109】
シミュレーションでは、センサ4に、任意の波長の単波長光を、第1の反射体面に略垂直に入射させた時の出射光の反射率を計算し、センサ4からの出射光の吸収特性を検証した。その結果を図8(b)に示す。
【0110】
図8(b)は、各波長におけるセンサ4の表面(第1の反射体10)からの出射光の反射率をプロットしたものであり、センサの吸収特性を示している。図に示されるスペクトルにおいて、本発明のセンサの構成により発現する反射ピークは、800nm付近に現れているピークである。この反射ピークは、略ゼロベースからの反射ピークとなっており、本発明のセンサは、S/N比の高いピークを利用したセンシングができることが確認された。また、吸着前後のスペクトルのシフト量は、その他の吸収ピークに比して大きいことから、本発明のセンサによれば、良好な感度でセンシングを行うことができることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明のセンサは、バイオセンサ等として好ましく利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】(a)は本発明に係る第1実施形態のセンサの斜視図、(b)は厚み方向断面図
【図2】(a)は本発明にかかる第1実施形態のセンサにおいて厚みdが最適化されていない場合の出射光L2のスペクトル例、(b)は厚みdが最適化されたセンサからの出射光L2のスペクトル例、(c)は試料による出射光L2のスペクトル変化例
【図3】(a)は本発明に係る第2実施形態のセンサの厚み方向断面図、
【図4】(a)は本発明に係る第3実施形態のセンサの斜視図、(b)は上面図
【図5】本発明に係る第4実施形態のセンサの斜視図
【図6】(a)〜(c)は図5のセンサの製造工程図
【図7】(a)〜(c)は本発明に係る第1〜第3実施形態のセンシング装置の構成を示す図
【図8】(a)本発明に係る第4実施形態のセンサの拡大断面図、(b)実施例1の出射光吸収特性
【符号の説明】
【0113】
1〜4、S センサ(光共振体)
10 第1の反射体
11 金属細線
12 パターン間隙
13 金属粒子
14 粒子間隙
16 微細孔
20 透光体
21 微細孔
30 第2の反射体
31 金属細線
32 パターン間隙
40 被陽極酸化金属体
41 金属酸化物体
42 非陽極酸化部分
5〜7 センシング装置
60 測定光照射手段
70 検出器
L1 測定光
L2 出射光
X 試料
in 光入射面
【出願人】 【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
【出願日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【代理人】 【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史

【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛


【公開番号】 特開2008−2943(P2008−2943A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−172491(P2006−172491)