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サンプル液中の特定成分をインラインで除去する成分除去システム - 特開2008−2916 | j-tokkyo
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【発明の名称】 サンプル液中の特定成分をインラインで除去する成分除去システム
【発明者】 【氏名】本水 昌二

【氏名】秋庭 正典

【要約】 【課題】低コストでかつ構成が簡素である、サンプル液中の分析対象成分をオンサイトでリアルタイムに繰り返し分析する測定システムに有用な、サンプル液中の分析妨害成分をインラインで除去する分析妨害成分除去システムの提供。

【構成】サンプル液中の特定成分をインラインで除去する成分除去システムであって、前記サンプル液をラインに導入する導入手段と、当該サンプル液中の前記特定成分をライン内で沈殿させる手段と、沈殿した前記特定成分をライン内で濾過する濾過手段と、前記濾過手段からの濾液を排出する排出手段と、前記濾過手段に蓄積した前記特定成分を再溶解させて当該濾過手段を洗浄する洗浄手段とを有する、成分除去システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル液中の特定成分をインラインで除去する成分除去システムであって、前記サンプル液をラインに導入する導入手段と、当該サンプル液中の前記特定成分をライン内で沈殿させる手段と、沈殿した前記特定成分をライン内で濾過する濾過手段と、前記濾過手段からの濾液を排出する排出手段と、前記濾過手段に蓄積した前記特定成分を再溶解させて当該濾過手段を洗浄する洗浄手段とを有する、成分除去システム。
【請求項2】
前記特定成分が、前記サンプル液中の分析対象成分の分析を妨害する分析妨害成分である、請求項1記載の成分除去システム。
【請求項3】
前記特定成分が、前記サンプル液の濃縮を妨害する濃縮妨害成分である、請求項1記載の成分除去システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の成分除去システムを内装的又は外装的に有する、サンプル液中の分析対象成分を分析するための測定システム。
【請求項5】
高感度分析システム、例えば、フローインジェクション分析装置(FIA)、シーケンシャルインジェクション分析装置(SIA)、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)、原子吸光分析装置(AA)、気−液クロマトグラフ装置(GLC)、高速液体クロマトグラフ装置(HPCL)又はイオンクロマトグラフ装置(IC)である、請求項4記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル液中の分析対象成分を分析する測定システムに有用な、サンプル液中の特定成分をインラインで除去する成分除去システムに関する。具体的には、本発明は、化学分析用前処理システムに関し、更に詳しくは、(1)フローインジェクション分析等の化学分析における分析妨害成分を効率的に除去する化学分析用前処理システムと、(2)サンプル液を濃縮するためにサンプル液中の濃縮妨害成分を除去する化学分析用前処理システムと、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場等の現場において、オンサイトでリアルタイムに分析対象成分を分析できる技術が求められている。特に、極めて高純度の薬品類が使用される半導体製造プロセスにおいては、当該プロセスで使用される薬液(例えば洗浄液やプロセス液)中の微量成分の存在が、半導体の性能を台無しにする場合がある。そのため、当該微量成分についてリアルタイム・オンサイトで分析することにより、基準を超えて微量成分を含有する薬液の使用を事前に食い止めることが可能となると共に、仮に使用された場合でも初期段階で使用を停止することが可能となるので、製品性能・製品歩留まりの向上を図ることができる。ここで、オンサイトでリアルタイムに分析対象成分を分析する手法として、フロー分析(FA)を挙げることができる。ここで、FAの一つであるフローインジェクション分析(FIA)を簡単に説明すると、流路にキャリア(サンプルを運ぶ流体)を流しておき、適時、キャリアを分析サンプルに置きかえて、これら検出元素が発色する反応試薬と反応させ、キャリアの吸光度と分析試料の応答(例えば吸光度)との差Δを検出して分析対象成分濃度を分析する方法である。即ち、FIAにおいては、キャリアと反応試薬を混合し、これを攪拌・分散等によってよく混ぜた後に、分析対象成分濃度を検出する検出器によって濃度検出(典型的には吸光度分析による吸光度の測定)を行うのであるが、キャリアをある時点でサンプルに置換することにより、吸光度の差分を測定することによってサンプル中の当該元素濃度を決定する。尚、先行特許(特開2004−163191号公報)の内容は、本明細書に組み込まれるものとする。
【0003】
ここで、サンプル液中の分析対象成分を分析するに際し、共存物質の妨害のためにサンプル液をそのまま分析に供することができない場合には、当該共存物質を除去するか(例えば、沈殿、濾過、遠心分離、蒸留、溶媒抽出、イオン交換等)、当該分析対象成分だけを分離するか、当該共存物質をマスキングする等の前処理を行う必要がある。この場合、リアルタイムに適合した前処理としては、サンプル液を取り出してバッチ式に前処理する手法よりも、サンプル液を採取後、測定部まで(或いは、試薬と反応させて発色等させる場合には当該試薬混合部まで)の間のインライン上で当該前処理を行なうことが好適である。
【0004】
例えば、サンプル液がリン酸エッチング液であり、分析対象成分がシリカである場合、シリカの吸光光度法による定量法は、モリブデン酸と反応させて生じる珪モリブデンイエローか、それを還元して生じる珪モリブデンブルーを測定する方法が常法である。しかしながら、モリブデン酸はリンとも反応する結果、リンとシリカが共存すると互いに妨害する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような場合、例えば、イオン交換樹脂等で分析対象成分と当該共存物質とを分離する手法に関しては、この分離カラムをライン上に設置する必要があり、コストが高くなる。また、当該共存物質をキレート剤等でマスキングする手法に関しては、当該共存物質の濃度が余りに高い場合には、当該共存物質の妨害を完全に抑えることができない。更に、沈殿除去法によりサンプル液から当該共存物質を除去する手法に関しては、例えば、ライン上にカラムやフィルターを設置して沈殿物を除去する手法が考えられるが、当該沈殿物が蓄積し、定期的に当該沈殿物を除去する必要がある(例えば、特許文献1に記載されているように、分析後、サンプル液の通過方向と逆方向から洗浄液を送液することにより当該沈殿物を除去する)等、他の手法と比べて面倒な構成になってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、低コストでかつ構成が簡素である、サンプル液中の分析対象成分をオンサイトでリアルタイムに繰り返し分析する測定システムに有用な、サンプル液中の分析妨害成分をインラインで除去する分析妨害成分除去システムを提供することを第一の目的とする。
【0007】
更に、サンプル液中の分析対象成分の分析(又は高感度分析)を可能にするに際しては、前記の分析妨害成分除去の他、サンプル液を濃縮することにより分析対象成分濃度を高める手法もある。この場合、サンプル液中に当該濃縮を妨害する成分が含まれているときには、自動化等を踏まえると、この濃縮妨害成分をインラインで除去することが好適である。しかしながら、例えば沈澱濾過法に基づいてインラインで当該濃縮妨害成分を除去することを想定すると、徐々に濾過手段に当該濃縮妨害成分が蓄積するので、例えば一回の濃縮妨害成分の除去処理毎に、当該濾過手段を取り出して洗浄等を実行する必要がある。そこで、本発明は、このような面倒さが解消された、サンプル液中の濃縮妨害成分をインラインで繰り返し除去可能な濃縮妨害成分除去システムを提供することを第二の目的とする。
【特許文献1】特開2003−202331
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(1)は、サンプル液(実施例ではリン酸水溶液と海水)中の特定成分{分析妨害成分(実施例ではリン酸)、濃縮妨害成分(実施例ではナトリウムイオン)}をインラインで除去する成分除去システム(妨害成分除去システム100)であって、前記サンプル液をライン(ラインL)に導入する導入手段(サンプル液導入手段110)と、当該サンプル液中の前記特定成分をライン内で沈殿させる手段(沈殿手段140)と、沈殿した前記特定成分をライン内で濾過する濾過手段(濾過手段150)と、前記濾過手段(濾過手段150)からの濾液を排出する排出手段(出口170)と、前記濾過手段(濾過手段150)に蓄積した前記特定成分を再溶解させて当該濾過手段(濾過手段150)を洗浄する洗浄手段(洗浄手段160)とを有する、成分除去システム(妨害成分除去システム100)である。
【0009】
本発明(2)は、前記特定成分が、前記サンプル液中の分析対象成分の分析を妨害する分析妨害成分である、前記発明(1)の成分除去システム(分析妨害成分除去システム100)である。
【0010】
本発明(3)は、前記特定成分が、前記サンプル液の濃縮を妨害する濃縮妨害成分である、前記発明(1)の成分除去システム(濃縮妨害成分除去システム100)である。
【0011】
本発明(4)は、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの成分除去システムを内装的又は外装的に有する、サンプル液中の分析対象成分を分析するための測定システム(前処理・分析システム)である。
【0012】
本発明(5)は、高感度分析システム、例えば、フローインジェクション分析装置(FIA)、シーケンシャルインジェクション分析装置(SIA)、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)、原子吸光分析装置(AA)、気−液クロマトグラフ装置(GLC)、高速液体クロマトグラフ装置(HPCL)又はイオンクロマトグラフ装置(IC)である、前記発明(4)の測定システム(前処理・分析システム)である。
【0013】
ここで、本特許請求の範囲及び本明細書における各用語の意味を説明する。まず、「特定成分」とは、例えば、分析対象成分の分析を妨害する分析妨害成分や、サンプル液の濃縮を妨害する濃縮妨害成分を挙げることができる。ここで、特定成分は、一種でなくとも二種以上であってもよい。「前記特定成分をライン内で沈澱させる」とは、当該特定成分自体を沈澱させる(例えば、液のpHを変化させる等して当該特定成分の溶解度を低下させたり、液を冷却して当該特定成分の融点以下とする手法)場合のみならず、当該特定成分の誘導体や分解物、当該特定成分と他の成分とを反応させることにより生成した成分(例えば難溶性塩)を沈澱させることにより、液中から当該特定成分を除去又は量を低減させる場合をも包含する概念である。「分析」とは、定量分析、半定量分析、定性分析のいずれをも包含する。「システム」とは、装置を包含する概念である。「高感度分析システム」とは、例えば、ppmレベル程度以下の感度で分析可能なシステムを指す。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第一に、バッチ方式でなくインラインで特定成分(例えば分析妨害成分)を除去するように構成されているので、FIA等のリアルタイム・オンサイト分析可能な分析装置に対応できると共に、処理操作を自動化できるので再現性・定量性も向上させることが可能となる。第二に、特定成分(例えば分析妨害成分)の除去に分析濾過法を採用しているので、分離用クロマトグラフィーを設置する場合と比較して、コストパフォーマンスに優れる。第三に、濾過手段に蓄積した沈殿物を再溶解させる手段を備えているので、濾過手段の機能を復帰させる際の手間が省けると共に、繰り返しの分析(特にリアルタイム・オンサイト分析では繰り返し分析が要求される)にも対応できる。第四に、例えば分析妨害成分の除去に利用した場合には、系内に存在する分析妨害成分自体を低減させるため、分析妨害成分が高濃度の場合(例えばマトリックス成分である場合)、系内の分析妨害成分を低減させない慣用手法(例えばマスキング剤のみでの隠蔽)と比較し、感度が大きく上昇する。また、濃縮妨害成分の除去に利用した場合にも、サンプル液中の分析対象成分の濃度を上げることができるので、同じく感度が大きく上昇する。特に、FIA等で微量乃至は超微量分析を行う際に、本発明は極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明(第一発明)に係る分析妨害成分除去システムを説明する。まず、図1を参照しながら、本最良形態に係る前処理・分析システムの全体構成を説明する。尚、以下では、リン酸エッチング処理が行われる工場内でのリアルタイム・オンサイト分析を想定して説明することとする。この前処理・分析システムは、サンプル液中の分析妨害成分を除去する前処理を実行する分析妨害成分除去システム100と、当該システム100で前処理されたサンプル液(濾液)中の分析対象成分を測定する分析システム200とから構成される。尚、本最良形態では、分析妨害成分除去システム100と分析システム200を別体(外装)のものとして構成したが、分析システム内に分析妨害成分除去システムが存在する形態(内装)であってもよい。そこで、図1に基づき説明すると、まず、分析妨害成分除去システム100は、エッチング用のリン酸液が流れるメインラインMLから、分析用サンプルとしてリン酸液を取得しラインLに導入するサンプル液導入手段110と、サンプル液を希釈するための希釈手段120と、沈殿反応が生じ易いpHに当該サンプル液を調整するためのpH調整手段130と、サンプル液中の分析妨害成分を沈殿させるための沈殿手段140と、沈殿した分析妨害成分を濾過するための濾過手段150と、分析後、濾過手段150に蓄積した沈殿物を再溶解して当該濾過手段を洗浄する洗浄手段160と、当該濾過された結果の濾液を分析システム200に送液するための、濾過手段150からの濾液を分析システム200に排出する排出手段として機能する出口170とを有する。以下、各要素を説明する。
【0016】
はじめに、サンプル液導入手段110は、メインラインMLからリン酸液を取得するための取液口111と、リン酸液を取得するときのみ開状態とする仕切弁112と、リン酸液をラインLの下流に誘導するポンプ113とを有している。尚、サンプル液をラインLに導入する限り、前記構成には限定されず、例えば、仕切弁やポンプが存在しない変更態様を挙げることができる(例えば、陽圧の場合には当該ポンプを設置する必要は無い)。また、当該仕切弁、以後説明する各種切替弁、各種ポンプの動作は、プログラマブルコントローラ(図示せず)により制御されている。
【0017】
次に、本最良形態においては、沈澱反応の前に、希釈処理及びpH調整処理という前処理を実行するように構成されている。但し、当該前処理は一例に過ぎず、濃縮、酸化還元、抽出、ガス拡散、溶解又は乳化等を適宜選択し又はこれらを組み合わせて実行したり、或いは、前処理を実行しないように構成してもよい。そこで、まず希釈手段から説明する。
【0018】
まず、希釈手段120は、希釈液が蓄えられている希釈液タンク121と、当該希釈液をラインLに導入するためのポンプ122とを有している。尚、本最良形態においては、サンプル液(原液)であるリン酸濃度が非常に高いために当該サンプル液を希釈するよう構成したが、その必要が無い場合には当該手段は不要である。
【0019】
次に、pH調整手段130は、pH調整液が蓄えられているpH調整液タンク131と、当該pH調整液をラインLに導入するためのポンプ132とを有している。尚、本最良形態では、サンプル液(希釈後の液)が酸性であるためにアルカリ液(アンモニア水)をpH調整剤として選択するよう構成されているが、液性に応じ、酸やpH緩衝剤液をpH調整液として用いてもよいことはいうまでもない。尚、本最良形態においては、沈殿反応を生じ易いようなpH域にするためにpH調整液を導入するよう構成したが、その必要が無い場合には当該手段は必要無いことはいうまでもない。
【0020】
次に、沈殿手段140は、サンプル液(希釈・pH調整後の液)中の分析妨害成分を沈殿させるための成分を含有する沈殿剤液が蓄えられている沈殿剤液タンク141と、当該沈殿剤液をラインLに導入するためのポンプ142とを有している。ここで、沈殿剤液は、サンプル液中の分析対象成分に実質的に影響を与えないことを担保しつつ、サンプル液の分析妨害成分を不溶化又は難溶化させることが可能であることが好適である。例えば、リン酸エッチング液を例に採ると、分析対象成分がシリカである場合、分析妨害成分は、マトリックス成分であるリン酸である。ここで、リン酸は、ランタンやカルシウムと反応して不溶性又は難溶性の沈澱を生成することが既知である。したがって、これらカチオンを生じる水溶性塩を沈殿剤液として使用する。尚、リン酸エッチング液以外に関しては、例えば、鉄鋼中の微量金属分析(鉄鋼を酸等で溶解させたものをサンプル液として使用)のための、鉄の除去(水酸化物、キレート沈殿剤)、弗酸中の微量金属分析のための、弗素の除去(Ca、La)、海水中の微量金属分析のための、ナトリウムの除去(クラウンエーテルヘキシル塩、クラウンエーテル+テトラフェニルボレート)、海水中の陰イオン分析のための、塩素の除去(Ag)、骨やセメント中の微量金属分析のための、カルシウムの除去(F)、を挙げることができる。以下、概略を一覧表の形で示す。
【0021】
【表1】


【0022】
尚、沈殿手段は、沈殿反応に時間を要する場合、沈殿反応条件を別途整える必要がある場合、沈殿物を生長させる必要がある場合には、沈殿反応部や沈殿生長部等を別途設置してもよい。尚、本最良形態におけるリン酸エッチング液に関しては、サンプル液と沈殿剤とによる沈殿反応・沈殿生長は、両者を混合したライン内及び濾過手段内で行われる。
【0023】
次に、濾過手段150は、沈殿した分析妨害成分を濾過する限り特に限定されない。尚、沈殿濾過だけではマトリクス成分の完全マスキングが困難な場合には、別途適当なマスキング法等を組み合わせることが好適である。例えば、シリカ分析の場合には、マトリックス成分であるリン酸を沈殿・濾過させ、リン酸濃度を濃リン酸の1/100まで低下させると、既知の手法によりシリカの定量が可能となる。より具体的には、濃リン酸中の10〜100ppmのシリカを測定する場合(ほぼ1万倍の濃度差)、シリカ分析のリン酸の妨害は、100倍濃度以内であればシュウ酸でマスキングできる。したがって、当該沈殿手段・濾過手段によってリン酸濃度を1/100まで低減させることができれば、ケイ素の測定が可能となる。
【0024】
ここで、濾過に関しては、濾別された沈澱がライン中で完全に濾過されて流れ出てこないことと、この沈澱によってラインが閉塞を起こさないことが好適である。これらは、いわゆる緻密な濾過面を構築するのではなく、濾過層を作ってその空隙体積をうまく利用することにより達成できる。具体的には、一概に濾過材を細密充填するのではなく、濾過材が動かない程度でゆるく充填して、空隙率を高く取ることにより達成できる。具体的には、濾過材の空隙率を25〜75%とすることが好適である。ここで、「空隙率」は、周知のように、濾過剤を充填する前に水を満たして内容積を測定し、濾過剤を充填してから同様の操作を行った上で、後者を前者で除した値を指す。また、濾剤に関しては、分析に影響を与えない素材であれば特に限定されず、スチールウールのような真比重の高いものから、綿やセルロースのように低いものまで使用可能である。
【0025】
より具体的な濾過手段150の態様としては、フィルターやカラム、例えば、インラインガラスフィルター、インラインメンブランフィルター、インラインセラミックファイバーカラム濾過装置、インラインテフロン(登録商標)ファイバーカラム濾過装置、インラインガラスファイバーカラム濾過装置、インラインガラスビーズカラム濾過装置を挙げることができる。特に、インラインセラミックファイバーカラム濾過装置やインラインテフロン(登録商標)ファイバーカラム濾過装置が好適である。例えば、使用可能なテフロン(登録商標)材料の一例としては、テフロン(登録商標)ウール{ジーエルサイエンス(株)製、Cat.No.3001-12601}、テフロン(登録商標)不織布{(株)ユニバーサル製}[厚さ0.124mm、重さ83.1g/m2、密度0.67g/cm3;厚さ0.212mm、重さ165.0g/m2、密度0.78g/cm3;厚さ0.322mm、重さ240.0g/m2、密度0.70g/cm3]、テフロン(登録商標)紐{フロン工業(株)製、2.0m/mφ)を挙げることができる。
【0026】
次に、洗浄手段160は、濾過手段150に蓄積した沈殿物を再溶解させるための溶離剤(洗浄剤)が蓄えられている溶離剤液タンク(洗浄剤液タンク)161と、当該溶離剤液をラインL(Ld)に導入するためのポンプ162と、非洗浄時(妨害成分除去時)にはラインLdと出口までのラインLとを液体導通関係にすると共に、洗浄時にはラインLdと洗浄ラインLwとを液体導通関係にするための切替バルブ163とを有している。一回の使用により又は使用を重ねると、沈殿物が濾過手段150に蓄積する。当該洗浄手段160は、当該蓄積した沈殿物を洗浄剤で再溶解して当該システム外に流しだす機能を有する。この再溶解操作により、濾過層は再生されて再利用が可能となる。尚、本最良形態においては、洗浄は沈澱濾過の流れと逆方向となるように構成されている。これにより、「再溶解」と「逆洗」というダブルの洗浄効果が達成できる。但し、沈澱濾過の流れと同じ方向で濾過手段の洗浄を実施してもよく、この場合には、洗浄手段は濾過手段の上流に設置するよう構成する。また、溶離剤液で洗浄した際、濾過手段やラインに溶離剤が残存するため、これを洗浄するための洗浄手段(例えば水洗浄)を更に設けてもよい。
【0027】
ここで、溶離剤(洗浄剤)としては、酸、アルカリ、キレート剤又は有機溶剤等が挙げられる。この中では、取り扱いの容易性等の観点から、酸やアルカリによるpH変化に基づき、生成した沈澱を再溶解することが好適である。例えば、Siの場合、生成した不溶性又は難溶性のリン酸塩(例えばリン酸カルシウム)は、pHを下げる(例えば1程度)ことにより容易に再溶解する。例えば、1M塩酸等の強酸を用いると沈澱は速やかに溶解して濾過層を再生できる。酸度が強ければ溶解に要する時間も短いが、再び水等で洗浄して再測定条件まで戻す必要がある。
【0028】
このように、本最良形態においては、沈殿物を再溶解させるための溶離剤を別途備えるように構成した。しかしながら、沈殿剤を混合する前のサンプル液や前処理液(本最良形態ではpH調整液)が沈殿物を再溶解させることができる場合には、このような溶離剤をわざわざ設ける必要はなく、例えば、洗浄モードにおいては、サンプル液又は前処理液のみを濾過手段に送液するように構成してもよい。即ち、沈澱剤を混合しないことだけで、濾過層は自浄されて再測定の準備が完了するといった簡便さがある。これを繰り返すことで、濾過層は自浄されて繰り返し利用が可能となる。このような場合も、本発明における「洗浄手段」に該当する。
【0029】
以上で、分析妨害成分除去システム100を説明したので、次に、当該システム100からのサンプル液(分析妨害成分が除去された、サンプル液+pH調整液+沈殿剤液の混合液)を導入して、当該サンプル液中の分析対象成分の測定を実行する分析システム200を簡単に説明する。尚、以下の説明では、分析システムとしてFIAを例に採り説明する。
【0030】
そこで図1を参照しながら説明すると、当該分析システムは、まず、分析妨害成分除去システム100の出口160からのサンプル液を受け入れるための入口201を有している。そして、当該入口201の下流には、切替バルブ202が設置されている。また、切替バルブ202には、一定の長さ及び径を有する計量管203と、キャリア液が蓄積されているキャリア液タンク204が接続されている。そして、切替バルブ202を切り替えることにより、サンプル液が計量管203に導かれ一定量のサンプル液が計量管203内に蓄積されると共に、キャリア液や当該計量管203内のサンプル液を測定部211まで送液する経路が構築される。尚、サンプル液やキャリア液の送液等は、ポンプ205で実行される。
【0031】
次に、分析妨害成分除去システム100では除去しきれなかった分析妨害成分による影響を低減させるために、更なる前処理を施してもよい。例えば、図に示すように、分析妨害成分をマスキングするためのマスキング剤が蓄積されたマスキング剤タンク206と、当該マスキング剤をラインに導入するためのポンプ207を設けてもよい。例えば、リン酸エッチング剤の場合、リン酸のマスキング剤としてシュウ酸が好適である。
【0032】
その後、例えば、測定部211が吸光光度計である場合には、サンプル液中の分析対象成分に基づき発色等する試薬(場合により、緩衝液、中和剤、酸化剤等)をサンプル液に混合する。例えば、図に示すように、試薬が蓄積された試薬タンク208と、当該試薬をラインに導入するためのポンプ209と、還元剤が蓄積された還元剤タンク212と、当該還元剤をラインに導入するためのポンプ213を設置する。そして、各反応を起こさせるに適した条件に設定された反応手段(例えば恒温層)RC1〜RC3を介して、測定部211で吸光度を測定する。
【0033】
尚、測定部211は、生じた応答(例えば、色、光、電気伝導度等)を検出可能であれば、どのような検出器でもよい(例えばICP−MS)。
【0034】
次に、図2のフローチャート及び図1のシステム構成図を参照しながら、本最良形態に係る、妨害成分除去システム100における妨害成分除去処理及び濾過手段洗浄処理を説明する。まず、ステップ10で、サンプル液と希釈液とを混合する。具体的には、まず、サンプル導入用仕切弁112を開状態とし、サンプル導入用ポンプ113を駆動させることにより、ラインL内にサンプル液を導入する。そして、これと連動させる形で、希釈液導入用ポンプ122を駆動させることにより、ラインL内に希釈液を導入する。そして、ラインの合流部Xにおいて、サンプル液と希釈液とが混合する結果、サンプル液が適度に希釈される。次に、ステップ20で、サンプル液(希釈されたサンプル液)とpH調整剤液とを混合する。具体的には、サンプル導入用ポンプ113が駆動されることにより、ラインLの合流部Yにサンプル液(希釈されたサンプル液)が送液される一方、当該ポンプ113と連動した形で、pH調整剤液導入用ポンプ132を駆動させることにより、ラインLの合流部YにpH調整剤液も送液される。そして、ラインの合流部Yにおいて、サンプル液(希釈されたサンプル液)とpH調整剤液とが混合する結果、サンプル液のpHが、沈殿反応に適したpH域となる。次に、ステップ30で、サンプル液と沈殿剤液とを混合する。具体的には、上流のポンプの駆動により、ラインLの合流部Zにサンプル液(希釈・pH調整されたサンプル液)が送液される一方、当該ポンプ113と連動した形で、沈殿剤液導入用ポンプ142を駆動させることにより、ラインLの合流部Zに沈殿剤液も送液される。そして、ラインの合流部Zにおいて、サンプル液と沈殿剤液とが混合する結果、サンプル中の妨害成分と沈殿剤液中の成分とで沈殿反応を生じる。次に、ステップ40で、ラインを流れるサンプル液(希釈・pH調整・妨害成分が除去されたサンプル液)が濾過手段150に到達し、当該濾過手段150において、当該サンプル液中の沈殿物が濾過される。その結果、濾過手段150の下流に向けて、妨害成分を含まないか低減したサンプル液がラインに送液されることになる。そして、当該サンプル液中の分析対象成分の分析が、これより下流に設置された分析システム200で実行される。以上が妨害成分除去処理である。
【0035】
次に、分析システム200への送液完了後、ステップ50で、溶離剤液での濾過手段150の洗浄処理を実行する。具体的には、切替バルブ163を切替えると共に、溶離剤液導入用ポンプ162を駆動することにより、ラインL(特にLd)に溶離剤液を導入する。当該溶離剤液は、濾過方向と逆向きにラインLdを流れて濾過手段150に到達する。これにより、濾過手段150に蓄積した沈殿物が当該溶離剤液で再溶解する結果、濾過手段が洗浄される。尚、当該洗浄処理は、分析システム200へサンプル液を送液する度に行っても、又は、ある程度沈殿物が蓄積してから行ってもよい。
【0036】
次に、本発明(第二発明)に係る濃縮妨害成分除去システムを説明する。図3を参照しながら、本最良形態に係る濃縮システムの全体構成を説明する。この濃縮システムは、サンプル液中の濃縮妨害成分を除去する濃縮妨害成分除去システム100と、当該システムで前処理されたサンプル液(濾液)を濃縮する濃縮システム400とから構成される。ここで、濃縮妨害成分除去システム100は、第一発明の分析妨害成分除去システム100と略同一構成である。また、濃縮システム400は、特に限定されず、既知のシステムを採用可能である。ここで、本システムは、イオン交換樹脂カラムによる濃縮に対して特に有用である。イオン交換樹脂カラムによる濃縮の場合、概して液量が大きくなり濃縮に時間とコストがかかるところ、妨害成分を除去する本システムを採用すると、それ程液量が増えないので濃縮を簡単に行うことが可能になる。尚、サンプル液を一度で濃縮できない場合には、濃縮システム400からの濃縮液を再び濃縮妨害成分除去システム100に戻すように構成してもよい(即ち、所望の濃度となるまで何度も当該濃縮液をループさせる)。尚、上記例は、濃縮妨害成分除去システム100と濃縮システム400とがオンライン的に接続した例を示したものであるが、当該濃縮妨害成分除去システム100からの濾液をオフライン的に濃縮するように構成してもよい。
【実施例】
【0037】
実施例1 リン酸エッチング剤液中のシリカ濃度の測定
リン酸エッチング剤中のシリカ濃度を、以下のシステム及び条件で分析した。尚、FIAシステムにおける分析方法は、先行特許(特開2004−163191号公報)での測定方法に基づき行った。尚、比較のため、沈殿濾過を実施しない場合と、マトリックス成分を含まない超純水(UPW)の場合についても同様の試験を行った。
<前処理システム>
サンプル液(原液):15Mリン酸水溶液(85%濃度)(シリカ濃度:1000ppm、500ppm、300ppm)
希釈液:水
pH調整剤液(中和剤液):0.55Mアンモニア水
沈殿剤液:0.3M塩化カルシウム水溶液
濾過手段:外径3mmφ、内径2mmφ、カラム長さ200mmのテフロン(登録商標)ファイバー充填カラム(空隙率:50%){テフロン(登録商標)ウール:ジーエルサイエンス(株)、Cat.No.3001-12601}
前処理条件:サンプル流量(原液:希釈液=1:100)0.1ml/min、pH調整剤液流量0.1ml/min、沈殿剤液流量0.1ml/min、溶離剤液(洗浄剤液)流量0.25ml/min
<FIAシステム>
分析対象成分:シリカ
マスキング剤:4%シュウ酸
発色試薬:(1)0.042Mモリブデン酸アンモニウム、(2)6%アスコルビン酸
キャリア:水
測定条件:各液流量0.25ml/min
【0038】
その結果、まず、前処理システムの出口においては、清澄な濾液が得られた。そして、FIAシステムにおいては、図4に示すように、超純水(UPW)とほぼ同等の、高感度かつ相関係数の高いきれいな検量線を得ることができた。他方、沈殿濾過法を実施しない比較例においては、高濃度のリン酸の強い発色により測定不能であった。
【0039】
実施例2 沈殿物が堆積した濾過手段の洗浄
実施例1による分析を実施した後、十分に沈殿物が堆積した濾過手段を、流量0.25ml/minの1M塩酸で1ml(4分間)洗浄した。その後、次の測定のため、サンプル液(0.85%リン酸)0.5mlを流し、当該サンプル液流量を0.1ml/minまで落とすと同時に、pH緩衝液を流し、実施例1と同様にして再度測定を行った。尚、比較のため、洗浄しない場合も同様の試験を行った。
【0040】
その結果、洗浄した場合においては、実施例1と同様、高感度かつ相関係数の高いきれいな検量線を得ることができた。他方、洗浄を実施しない比較例においては、堆積した沈殿が漏れたり、閉塞して圧力が上がりラインから液漏れを生じ、測定不能であった。
【0041】
実施例3 海水サンプル液の濃縮及び陰イオンの測定
次に、海水サンプル液を濃縮し、当該サンプル液中に微量に存在する陽イオンを分析した。ここで、当該海水中にはナトリウムが多く含まれており、当該海水中の微量成分の測定に際しては、通常、溶媒である水を揮発させて濃縮する方法や、イオン交換樹脂を用いてナトリウムを取る方法がある。しかしながら、前者においては、析出した塩の中に当該微量成分が取り込まれてしまうという問題があり、後者においては、大量のナトリウムを取るために高イオン交換能のイオン交換樹脂を用いた場合、当該微量成分も一緒に取られてしまうという問題がある。そこで、以下の条件に従い、海水サンプル液を濃縮したところ、海水中の微量成分の量を実質的に維持しつつ、濃縮妨害成分であるナトリウムのみを選択的に除去することができた(100ppm未満)。
<前処理システム>
原液:海水
希釈液:水(10倍希釈)
pH調整剤液(中和剤液):無し
沈殿剤液:0.05Mクラウンエーテルヘキシル・リチウム塩水溶液
濾過手段:外径3mmφ、内径2mmφ、カラム長さ200mmのテフロン(登録商標)ファイバー充填カラム(空隙率:50%){テフロン(登録商標)ウール:ジーエルサイエンス(株)、Cat.No.3001-12601}
前処理条件:サンプル流量(原液:希釈液=1:100)0.1ml/min、pH緩衝剤液流量0.1ml/min、沈殿剤液流量0.1ml/min、溶離剤液流量0.25ml/min
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、第一発明の最良形態に係る前処理・分析システムの全体構成を示したものである。
【図2】図2は、第一発明の最良形態に係る妨害成分除去処理及び濾過手段洗浄処理のフローチャートである。
【図3】図3は、第二発明の最良形態に係る濃縮システムの全体構成を示したものである。
【図4】図4は、実施例における、Si濃度と吸光度の検量線である。
【出願人】 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
【識別番号】501210065
【氏名又は名称】株式会社フィアモ
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温

【識別番号】100113930
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 正洋


【公開番号】 特開2008−2916(P2008−2916A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171951(P2006−171951)