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【発明の名称】 表面状態検査装置及び表面状態検査方法
【発明者】 【氏名】斉藤 賢一

【要約】 【課題】物体表面の粗面として、入射光の波長より十分に大きい数十ミクロン程度の粗さを持ち、一定以上の面積を持つ粗面について、ミリメートル前後の局所的な不均一性を、高精度に、迅速に検出することができる表面状態検査装置及び表面状態検査方法を得ること。

【構成】被検査対象の表面を照射するためのレーザー光源、及び該表面からの光回折像の一部を集光する光学系を有し、該表面の粗さの均一度を、該表面からの光回折像強度分布の変化から測定する検査装置において、入射光は所定の入射角度でS偏光で入射され、該法線から入射面内における所定の角度θの方向近傍への回折光を、開口数NAの該光学系で集光し、光学系の近軸像面付近に設置された光束制限手段を介して、光強度検出器で光量変化を測定するときの角度θを適切に設定したこと。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源手段と、
該光源手段から出射した光の光束径を制限する第1の光束制限手段と、
該第1の光束制限手段を通過し、被検査面にはS偏光が入射しており、該被検査面より生ずる光回折光を検出する検出光学系と、
該検出光学系の集光面に配置され、通過光束径を制限する第2の光束制限手段と、
該第2の光束制限手段を通過した光を検出する光検出器と、
該光検出器からの信号を用いて該被検査面の粗さを検査する表面状態検査装置であって、
該光源手段からの光の波長をλ、
該光源手段からの光が被検査面に入射するときの入射面内において、該被検査面への入射光束の光束径をDp、
該検出光学系の光入射側の有効径をW、
該第2の光束制限手段に対する該検出光学系を介した共役点から該検出光学系の入射瞳までの距離をLとするとき
λ/(Dp/L)<W
なる条件を満足することを特徴とする表面状態検査装置。
【請求項2】
平行でS偏光状態の波長λの光を円筒面の一部に、該円筒面の母線と、該円筒面の中心軸とを含む入射面内より入射させる照射工程と、
該円筒面から生ずる光回折像の一部を検出光学系で集光した後、該検出光学系の集光点に配置した光束を制限する光束制限手段を介して光検出器で検出して光回折像の強度分布の変化を求め、それより該円筒面の表面状態を検査する検査工程とを含む表面状態検査方法であって、
該入射面において、該円筒面上の照射領域における表面凹凸部の寸法の入射面内における周波数の平均値をk
円筒面へ入射するときの光束の光束径をDp、
該検出光学系の光入射側の有効径をW、
該光束制限手段に対する該検出光学系を介した共役点から該検出光学系の入射瞳位置までの距離をL
異なる平均値kの複数の表面から予め測定された複数の回折光分布に関して、相対強度変化が最も大きくなるような、照射点における法線に対する回折角度をθ、相対強度変化が最も大きくなる回折角度θに対応する光の入射角をθ、光は照射点に入射角度θで入射しており、該検出光学系は照射点に対して角度θ方向の光回折光を集光しており、
このとき
λ/(Dp/L)<W
1/k < Dp
θ−tan−1{(W/2)/L}<θ <θ+ tan−1{(W/2)/L}
を満たすことを特徴とする表面状態検査方法。
【請求項3】
平行でS偏光状態の波長λの光を円筒面の一部に、該円筒面の母線と、該円筒面の中心軸とを含む入射面内より入射させる照射工程と、
該円筒面から生ずる光回折像の一部を開口数NAの検出光学系で集光した後、該検出光学系の集光点に配置した光束を制限する光束制限手段を介して光検出器で検出して光回折像の強度分布の変化を求め、それより該円筒面の表面状態を検査する検査工程とを含む表面状態検査方法であって、
該円筒面上の粗さが粗と密の異なる2点からの角度θ方向の回折光分布をI(θ)、I(θ)とするとき相対強度変化
|I(θ)/I(θ)−1|
が最も大きくなる回折角度をθ、回折光分布の相対強度変化が最も大きくなる回折角度θのときの光の入射角度をθとするとき、光は照射点に入射角度θで入射しており、該検出光学系は照射点に対して角度θ方向の光回折光を集光しており、
このとき
θ−sin−1(NA)<θ<θ+sin−1(NA)
を満たすことを特徴とする表面状態検査方法。
【請求項4】
前記検出光学系が光回折光を検出するときの角度θは、該角度θへの拡散反射光強度E(k,θ)が、ある平均値k、kの値(k<k)に対して、
E(k,θ) < E(k,θ
であることを特徴とする請求項2又は3の表面状態検査方法。
【請求項5】
光の入射角度θは、平均値k、kの値(k< k)に対して、
E(k,θ)/ E(k,θ
が最大になる角度であることを特徴とする請求項4の表面状態検査方法。
【請求項6】
前記円筒面を一定の角速度で回転させながら、該円筒面の軸方向に該円筒面と入射光とが一定の速度で相対的に平行移動するようにし、一定の時間おきに前記光検出器で光量測定を行うことにより、該円筒面上の2次元での表面状態を検査しており、このとき該円筒面上の測定点間の距離Δが、
Δ< Dp
となるようにしていることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項の表面状態検査方法。
【請求項7】
前記照射工程では前記円筒面上の異なった領域に各々光を照明しており、前記検査工程では、該円筒面上の異なった領域から生ずる光回折光を各々検出して、該円筒面上の複数の領域の表面状態を検査していることを特徴とする請求項2から6のいずれか1項の表面状態検査方法。
【請求項8】
前記入射面内において、前記光束制限手段の光束が通過する幅をH、前記集光光学系が前記円筒面の一部を該光束制限手段面上に結像するときの近軸横倍率をβ、該円筒面上の検出すべき凹凸部の最小の長さをdとするとき
H≦β・d
を満足することを特徴とする請求項2から7のいずれか1項の表面状態検査方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は表面状態検査装置及び表面状態検査方法に関し、例えば円筒面の表面の粗面(粗さ)の均一度を、高精度に測定する際に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物体表面に存在する微小な欠損(キズや異物の付着)の有無を検出する方法として、レーザー光を微細なスポットに集光して、被検査面を照射し、そこから発生する散乱光(光回折光)を検出する方法が知られている。
【0003】
また、物体表面の粗面の粗さ状態を検出する方法として、入射光の波長や入射角を変化させたときの、物体表面からスペックル回折像分布の相互相関関数を求める方法や、干渉計によって位相差を検出する干渉計方法などが知られている(特許文献1)。
【0004】
また、測定対象物の表面物質の特性を利用して表面粗さを測定する検査装置が知られている(特許文献2、3)。
【0005】
一方、一定以上の面積を持つ面を光で走査して表面状態を検査する走査測定方法が知られている。この方法では偏向器と走査光学系の組合せで測定対象の面を走査して検査している。
【特許文献1】特開平5−52540号公報
【特許文献2】特開平11−295240号公報
【特許文献3】特開2000−081325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、物体表面に存在する欠損として、入射光の波長より十分に大きい数十ミクロン程度の粗さ(凹凸)をもち、一定以上の面積を持つ粗面について、ミリメートル前後の局所的な不均一性として高速に検出することができる装置が要請されている。
【0007】
このとき、数〜数十ミクロンの微細なスポット光を物体表面に照射すると回折像は乱れてしまい、そこから微量を検出することが困難となる。
【0008】
前述したスペックルの相関関数を用いる方法は、表面の粗さが入射光の波長より短いことが前提である。このため、広い範囲において多数の点、各々において相関関数を求めることは、時間の制限から現実的でない。
【0009】
前述した、測定方法のうち干渉計方式では、複雑で精密な光学系が必要となる。基本的に粗い表面上から生ずる可視域のレーザー光線によって生成されるスペックルパターンは、2πより大きい標準偏差のランダム位相を有する。このため、通常は得られる位相差には粗い表面のプロファイルに関して有効な情報を含んでいない。
【0010】
これらの各測定方法では、各偏光成分を分岐する分岐手段、あるいは被検査面上の複数の位置で測定する測定手段が必要となり、光の検出、その結果を判定するための各部材より成る装置全体が複雑なものになる傾向があった。
【0011】
また、走査測定方法は高速に精度良く走査することでは優れているが、装置全体が複雑であること、また走査画角によって照射点に対する入射角が異なるため、同じ条件で物体表面全面を照射することが困難となる。
【0012】
このため被走査面上の位置による相対的な変化量を精密に検出することが難しい。検出光学系としてテレセントリックな光学系を用いれば、入射角を一定にすることは可能となるが、測定対象と同程度の大きさの光学部品が必要となり、装置全体が大型化してくる。
【0013】
本発明は、物体表面の粗面として、入射光の波長より十分に大きい数十ミクロン程度の粗さを持ち、一定以上の面積を持つ粗面について、高精度に、迅速に検出することができる表面状態検査装置及び表面状態検査方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の表面状態検査装置は、
光源手段と、
該光源手段から出射した光の光束径を制限する第1の光束制限手段と、
該第1の光束制限手段を通過し、被検査面にはS偏光が入射しており、該被検査面より生ずる光回折光を検出する検出光学系と、
該検出光学系の集光面に配置され、通過光束径を制限する第2の光束制限手段と、
該第2の光束制限手段を通過した光を検出する光検出器と、
該光検出器からの信号を用いて該被検査面の粗さを検査する表面状態検査装置であって、
該光源手段からの光の波長をλ、
該光源手段からの光が被検査面に入射するときの入射面内において、該被検査面への入射光束の光束径をDp、
該検出光学系の光入射側の有効径をW、
該第2の光束制限手段に対する該検出光学系を介した共役点から該検出光学系の入射瞳までの距離をLとするとき
λ/(Dp/L)<W ‥‥‥(1)
なる条件を満足することを特徴としている。
【0015】
また、本発明の表面状態検査方法は、
平行でS偏光状態の波長λの光を円筒面の一部に、該円筒面の母線と、該円筒面の中心軸とを含む入射面内より入射させる照射工程と、
該円筒面から生ずる光回折像の一部を検出光学系で集光した後、該検出光学系の集光点に配置した光束を制限する光束制限手段を介して光検出器で検出して光回折像の強度分布の変化を求め、それより該円筒面の表面状態を検査する検査工程とを含む物体表面検査方法であって、
該入射面において、該円筒面上の照射領域における表面凹凸部の寸法の入射面内における周波数の平均値をK
円筒面へ入射するときの光束の光束径をDp、
該検出光学系の光入射側の有効径をW、
該光束制限手段に対する該検出光学系を介した共役点から該検出光学系の入射瞳位置までの距離をL
異なる平均値kの複数の表面から予め測定された複数の回折光分布に関して、相対強度変化が最も大きくなるような、照射点における法線に対する回折角度をθ、相対強度変化が最も大きくなる回折角度θに対応する光の入射角をθ、光は照射点に入射角度θで入射しており、該検出光学系は照射点に対して角度θ方向の光回折光を集光しており、
このとき
λ/(Dp/L)<W ‥‥‥(1)
1/k < Dp ‥‥‥(2)
θ−tan−1{(W/2)/L}<θ <θ+ tan−1{(W/2)/L}
‥‥‥(3)
を満たすことを特徴としている。
【0016】
この他、本発明の表面状態検査方法は、
平行でS偏光状態の波長λの光を円筒面の一部に、該円筒面の母線と、該円筒面の中心軸とを含む入射面内より入射させる照射工程と、
該円筒面から生ずる光回折像の一部を開口数NAの検出光学系で集光した後、該検出光学系の集光点に配置した光束を制限する光束制限手段を介して光検出器で検出して光回折像の強度分布の変化を求め、それより該円筒面の表面状態を検査する検査工程とを含む表面状態検査方法であって、
該円筒面上の粗さが粗と密の異なる2点からの角度θ方向の回折光分布をI(θ)、I(θ)とするとき相対強度変化
|I(θ)/I(θ)−1|
が最も大きくなる回折角度をθ、回折光分布の相対強度変化が最も大きくなる回折角度θのときの光の入射角度をθとするとき、光は照射点に入射角度θで入射しており、該検出光学系は照射点に対して角度θ方向の光回折光を集光しており、
このとき
θ−sin−1(NA)<θ<θ+sin−1(NA) ‥‥‥(4)
を満たすことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、物体表面の粗面として、入射光の波長より十分に大きい数十ミクロン程度の粗さを持ち、一定以上の面積を持つ粗面について、ミリメートル前後の局所的な不均一性を、高精度に、迅速に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明の実施例1の表面状態検査装置の要部側面図である。図2は図1に示した各部材間の説明図である。図3は実施例1の表面状態検査装置の要部上面図である。
【0020】
図1〜図3において、1は被検査物体であり、円筒形状より成っている。円筒形状の表面(円筒面)の一部が被検査面1aとなっている。
【0021】
2は光源手段であり、He−Neレーザーより成っている。3は被検査物体1の被検面(照射点)1cから生ずる散乱光(光回折光)である。4は光源手段2からの光2aを制限する光束制限手段(第1の光束制限手段)(スリット)である。5は光源手段2からの光2aが被検面1aで正反射したときの正反射光である。
【0022】
8は開口数NAの検出光学系であり、被検面1aから生ずる散乱光(光回折光)の一部を光束制限手段(第2の光束制限手段)6上に集光している。
【0023】
被検面1aと光束制限手段6とは共役関係又は略共役関係にある。
【0024】
光束制限手段6は検出光学系8を通過してきた光の通過光を制限している。7は光検出器であり、光束制限手段6を通過した光を検出している。
【0025】
本実施例における被検査物体1は直径30mm(φ30mm)、軸方向(X方向)の長さが400mmの円筒形状より成り、円筒円形の外側の表面の粗さの周波数の平均値kが1/(50μm)程度で分布している。
【0026】
光源手段2からは、波長λが632.8nm、光量が5mW、被検査物体1上への入射ビーム径がφ1mm(相対強度13.5%)の光(レーザー)2aが出射している。光源手段2からの光2aはスリット4を介して被検査物体1の被検査面1aに入射角θ=70°で入射している。
【0027】
このとき、光2aの広がり角は約0.02°であり、ほぼ平行なビームと見なせるものである。ここでは被検査物体1上の粗面の検出できる最小の異常部の大きさdを2mmと想定している。被検査物体1への照明光2aのX方向(軸方向)の照射領域(照射エリア)Dpは2mmである。
【0028】
このとき、照射点1cからの回折光3の一部が、粗面の法線1bから正反射方向にθS=15°の角度で出射する。
【0029】
本実施例では、照射点1cから距離L=20mmの位置に瞳(入射瞳)が設置された焦点距離12mm、有効径W=10mm(NA0.384)の検出光学系8で取り込まれ、光束制限手段6を介して光検出器7に集められる。また集光光学系8の倍率βは1.5である。
【0030】
光束制限手段8は、検出光学系8の像面に配置され、その開口幅Hは幅H=1.5mmである。尚、迷光を防ぐため、検出光学系8と光検出器7の間は遮光されていることが望ましい。
【0031】
本実施例で測定した結果を2次元画像化したデータを図13に示す。肉眼で観察、あるいは撮像手段で撮影した場合に、非常に視認が難しい微妙な表面粗さの差異に対して、異常部が鮮明に得られていることがわかる。
【0032】
本実施例では被検査物体1の円筒形状の表面(被検査面)1aを光源手段2からの光(ビーム)2aで照明している。円筒形状の表面1aからの光回折像の一部を所定のNAの検出光学系8で検出している。このとき光2aの波長よりも十分に大きい粗さを持つ円筒形状の表面1aの粗さの均一度を、該円筒形状の表面1aからの光回折像の強度分布(光量)の変化から測定している。
【0033】
光源手段2からの光は略平行ビームで円筒面の母線と中心軸を含む平面(XY平面)を入射面として、照射点1cにおける法線1bに対し、θの角度でS偏光状態で入射している。
【0034】
S偏光で入射させるには、例えば偏光板を用いる方法がある。入射面内で法線1bから角度θの方向へ拡散する拡散反射光を検出光学系8で集光している。そして検出光学系8の近軸像面付近に配置した光束制限手段6を介して、光検出器7で光量変化を測定している。
【0035】
このとき得られる光検出器7からの信号に基づいて表面1aの粗さの均一度を求めている。
【0036】
ここで
λを光源手段2からの光2aの波長とする。
を光2aの照射エリアDpでの表面の凹凸の面方向の周波数の平均値とする。
Dpを光2aの入射ビーム径(規格化強度13.5%となる径)の、表面1a上の円筒面母線方向への射影寸法とする。
Lを検出光学系8の瞳位置から被検査物体1の表面上の照射点1cまでの距離とする。
Wを検出光学系8の有効径とする。
θを入射面内での法線1bからの拡散反射光の角度とする。
θを異なる平均値kの複数の表面から予め測定された複数の回折光分布に関して、相対強度変化が最も大きくなるような、照射点1cにおける法線1bに対する回折角度とする。
【0037】
ここで円筒面上の粗さが粗と密の異なる2点からの角度θ方向の回折光分布をI(θ)、I(θ)とするとき相対強度変化PLは
PL=|I(θ)/I(θ)−1| ‥‥‥(5)
である。回折角度θは相対強度変化PLの値が最も大きくなる角度である。
【0038】
入射角θは相対強度変化PLが最も大きくなる回折角度θのときのビーム入射角度である。
【0039】
このとき
λ/(Dp/L)<W ‥‥‥(1)
1/k < Dp ‥‥‥(2)
θ−tan−1{(W/2)/L}<θ <θ+ tan−1{(W/2)/L}
‥‥‥(3)
のうち1以上を満たしている。
【0040】
又は光が照射点に入射角度θで入射しており、NAの検出光学系8は照射点に対して角度θ方向の光回折光を集光している。
【0041】
このとき
θ−sin−1(NA)<θ<θ+sin−1(NA) ‥‥‥(4)
を満たしている。
【0042】
条件式(1)、(2)、(3)又は条件式(4)を満足するように各部材を設定すると、被検査面1aの粗面の中で局所的に粗さの異なる領域に可干渉性の高いレーザービームを入射したときの回折像パターンは、他の均一な部分からの回折像パターンに比べ変化が顕著に現れる。
【0043】
本実施例では、その中でも特に変化の大きい回折角度θが集光光学系8で取り込み角θに含まれるように測定することによって、被検査面1aの僅かな粗さの差も、より感度よく(高精度に)検出している。
【0044】
このとき、被検査面1aの表面の凹凸の大きさは、光2aの波長よりも十分に大きい。このため、照射する領域(光2aのビーム径の表面上の円筒面母線方向(X方向)への射影)Dpが凹凸の表面方向のオーダーを示す1/kと同等又はそれ以下であると、照射された少数の凹凸部が曲面ミラーのように働く。この結果、図4に示すように回折像(スペックル像)41の粒径が大きく乱れたパターンとなる。
【0045】
図5に示すような回折像が得られるのが良い。そこでスペックルの粒径を小さくして、全体の包絡線を滑らかで安定したものにするためには、被検査面1aのある程度の凹凸の数を含む領域を光照射する必要がある。すなわち、凹凸の寸法を示す1/kより十分に大きな領域Dp(1/k<Dp)を光2aで照射する必要がある。
【0046】
更に、スペックルの粒径は、図2に示す回折像の位置から照射点1cまでの距離をLとすると、λ/(Dp/L)で表されるが、検出光学系8の開口Wは少なくともこの粒径以上でなければならない。
【0047】
粒径が開口Wに比べて小さいほど、全体の回折像分布は滑らかなものになり、測定の安定性が増すことになる。
【0048】
ビーム径をある程度太くする際、収束若しくは発散ビームを用い、その中で適当な照射スポットとなる位置に被検査面1aの粗面の位置を合わせるという方法もある。その場合、照射されるビームの波面はビームウエスト径が小さいほど曲率の大きい波面となる。このときは照射領域Dpの中で幾何学的入射角を一定にすることができない。
【0049】
したがって、ビームウエスト径は光2aの照射径と同等、すなわち略平行ビームとなるような値に設定することが望ましい。
【0050】
これにより入射ビーム2aが平面波となり、照射領域Dp内の全域で一定の入射角を確保することができ、異なる条件の回折光が発生するのを防ぐことができる。
【0051】
入射方向に関しては、被検査面としての対象となる粗面が平面でなく図6に示すような円筒面であるとする。このとき、入射面が円筒面91の軸に垂直な面となるように光2aを入射すると、円筒面91が凸面鏡の作用を持ち、回折パターンが入射面内で大きく広がってしまう。
【0052】
また、照射面1aの光2aの入射位置によって入射角θが異なり、異なる条件の回折光が混在した状態となって、検出感度を落とす。このため、図7に示すように入射面は円筒面の母線101と軸102を含む平面102に一致するように設定し、入射面102内では光2aの照射エリア全域Dpで入射角が一定となるようにする。
【0053】
更に、光検出器7での測定値のS/Nを確保するため、入射ビームの偏光状態については、反射率の絶対値が大きくなるS偏光としている。
【0054】
また検出方向については、同様の方法で回折像分布の変化から粗さの変化を調べる例として、回折分布の全域を光検出器でスキャンし、回折分布の空間低周波相当部と、空間高周波相当部の2点で光強度を測定し、その比から求める例がある(図8、第18回SICE学術講演会予稿集p157)。
【0055】
この方法では、回折光分布形状の変化の仕方によっては変化がないか、非常に小さい結果となる場合がある。これに対し、本実施例では、粗面の状態が変化したときの感度が最も大きくなる回折角度θが、集光光学系8の取り込み角θに含まれるような条件、すなわち条件式(3)又は条件式(4)を満たすような特定の1方向θで測定している。
【0056】
回折角度θは、図9に示すように予め複数の異なる平均値kの面に対してあるビーム入射角の条件で測定された複数の回折光分布に対して、相対強度変化(回折光強度)PLが最も大きくなる回折角度である。入射角θは、図11に示すように、その回折角度θにおける相対強度変化PLが最も大きくなるように決められる。
【実施例2】
【0057】
次に本発明の実施例2について説明する。
【0058】
本実施例は、拡散反射光の角度θsが該角度への拡散反射光強度E(k,θ)が、k < k のとき、
E(k,θ) < E(k,θ
であるような角度となるように各部材を設定している。
【0059】
本実施例のような条件下では、図9に示すように凹凸の周波数の平均値kが大きい方(凹凸の粗密が「密」の場合で異常部)I(θ)が、小さい場合(正常部)I(θ)に比べ、凹凸面のフーリエ変換で表される回折分布は、空間低周波成分(正反射方向に近い方向)の強度は弱くなり、空間高周波成分の強度が強くなる。
【0060】
このとき相対的な変化量としては、絶対量の小さい高周波成分の方が大きくなり、粗面状態の僅かな変化に対しても、感度良く検出することができる。
【0061】
図9において、I(θ)は粗さが粗(正常部であり平均値Kが小さい)のときの回折光分布である。
【0062】
(θ)は粗さが密(異常部であり平均値Kが大きい)のときの回折光分布である。
【0063】
検出光学系8で検出するときの角度θ
(θ)/I(θ)<1
を満足する角度である。
【0064】
前述の条件式(5)の相対強度変化PLは図10に示す如く
相対強度変化PL=|異常部の光量/正常部の光量−1|
=|I(θ)/I(θ)−1| ‥‥‥(5)
である。
【実施例3】
【0065】
次に本発明の実施例3について説明する。
【0066】
本実施例では、ビーム入射角度θが、ある平均値k、kの値(k<k)に対して、
E(k,θ)/ E(k,θ
が略最大になるような角度となるように設定している。
【0067】
入射角θについても、ある粗面の条件となる平均値kにおいて、適当なビーム入射角θを設定することによって、前項の相対強度変化PLを最も大きくすることができる。入射角度θを変えたときの、測定結果のコントラストの変化は図11に示すとおりである。
【実施例4】
【0068】
次に本発明の実施例4について説明する。
【0069】
実施例4では被検査面として円筒面を用い、円筒面上の粗さを測定している。
【0070】
実施例4では、図12に示すように円筒面1を一定の角速度で回転させながら、円筒面1の軸方向(X方向)に円筒面1もしくは光源と測定器の測定ユニットSBが一定の速度で平行移動している。そして一定の時間おきに円筒面1からの反射光を検出して光量測定を行うことで円筒面1の2次元の測定値を得ている。
【0071】
このとき、円筒面1上の測定点間の距離をΔは、
Δ< Dp ‥‥‥(6)
としている。
【0072】
これにより測定対象面の全域について、全く同じ入射角、照射領域寸法の条件で走査することが可能になり、位置による厳密な相対変化量を検出することができる。
【0073】
又、ビーム照射域よりも高い空間分解能でデータを得ることができる。
【0074】
特に図12に示すように、円筒面1を回転させながら軸方向(X方向)に移動することで、入射面を円筒面1の母線と軸を含む平面に一致するように設定し、円筒面1全体に関して同じ条件で測定を行っている。
【実施例5】
【0075】
次に本発明の実施例5について説明する。
【0076】
実施例5では、レーザー光源からの光を、1つもしくは2つ以上の半透鏡で複数の光に分岐し、1つの円筒面の複数の位置もしくは複数の円筒面に同時に照射して、各々に対応した複数の測定器で同時に光量測定を行っている。
【0077】
本実施例では、走査光学系を用いて測定時間の短縮化を図り、より高速に測定するのに好適である。
【0078】
本実施例では円筒面を高速に回転させなくても高速な測定が容易となる。特に単一の測定対象の複数の場所、或いは複数の測定対象面に同時に光を照射して、そこからの拡散光を測定することで、単位面積あたりの測定時間を短縮している。
【0079】
その際、入射光は略平行であるため、光源を多数準備する必要はなく、単一(或いは必要最低限の少ない複数)の光源からの出射光を、半透鏡の機能を持つ光学素子で分岐することにより、おのおのの照射点に導いている。また円筒面の軸方向の移動も単一(或いは必要最低限の少ない複数)の手段で実現可能である。
【実施例6】
【0080】
次に本発明の実施例6について説明する。
【0081】
集光光学系8の近軸像面に設けた付近の光束制限手段6の、円筒面1の軸方向への開口幅をH、検出したい最も小さい粗さ不均一領域の幅をd、検出光学系の近軸横倍率をβとする。このとき、
H ≦ β・d ‥‥‥(7)
を満足している。
【0082】
照射点1cによる回折分布の相対変化を、より感度の高い条件で測定する際、光の入射角θを70°を超えるような非常に大きな角度にしなければならない場合も多い。このとき、照射対象面上に照射される光のスポット径の大きさは、円筒面の軸方向に長く伸びた状態となる。
【0083】
たとえば、1mmのビーム径で入射角が70°の場合、照射領域Dpは2.9mmにも広がる。
【0084】
このとき、照射領域内でムラなど検出したい異常部の最小の大きさdが1mm程度であった場合、回折像は正常部と異常部の面からの成分が混合されたものとなり、異常部からの情報のみを感度よく得ることができない。
【0085】
これを解決するため、検出光学系8の像面に設置されるスリットやピンホールなどの光束制限手段6の開口部の幅Hを、必要な空間分解能に相当する値に設定している。
【0086】
たとえば、検出されなければならない最も小さい異常部の大きさのサイズがd[mm]であり、検出光学系8の近軸横倍率がβである場合、光束制限手段6の開口部の幅H[mm]はβ・dと同等又はそれ以下である必要がある。
【0087】
これにより、照射領域が必要分解能を超える場合でも、光束を制限することにより、諸条件を満たし必要な情報を持つ回折光のみを取り込んで、空間的にも感度の高い系が実現可能となる。
【0088】
本実施例では条件式(7)を満足することによって円筒面上の表面の粗さを高精度に測定している。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施例1の要部側面図
【図2】本発明の実施例1の各部材間の説明図
【図3】本発明の実施例1の要部上面図
【図4】照射ビーム径が0.1mmのときの被検査面から生ずる回折像の説明図
【図5】照射ビーム径が0.5mmのときの被検査面から生ずる回折像の説明図
【図6】ビーム入射面が円筒面の軸に垂直となるように入射したときの説明図
【図7】円筒面に光が入射するときの説明図
【図8】従来の測定位置に関する説明図
【図9】粗面の粗さによる回折像分布の説明図
【図10】粗面状態の変化による回折像分布比の説明図
【図11】円筒面の軸方向にスキャンしたときの測定結果の説明図
【図12】スキャン方式を用いた実施例の説明図
【図13】測定結果の2次元画像化データの説明図
【符号の説明】
【0090】
1・・・円筒粗面
2・・・レーザー光源
3・・・回折光
4・・・光束制限手段1
5・・・正反射方向
6・・・光束制限手段2
7・・・光検出器
8・・・検出光学系
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成18年6月21日(2006.6.21)
【代理人】 【識別番号】100086818
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸雄


【公開番号】 特開2008−2891(P2008−2891A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−171552(P2006−171552)