トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験

【発明の名称】 シート材情報検知装置、シート材処理装置、およびシート材情報検知方法
【発明者】 【氏名】川崎 岳彦

【氏名】金子 典夫

【要約】 【課題】シート材の高速搬送に対応して、幅広い機械的性質のシート材から精度の高いシート材情報を取得できるシート材情報検知装置を提供する。

【構成】支持部材14によって撓み変形可能に支持されたシート材の表面に、印加用ばね4で付勢された運動部材1を打ち込んで衝突させる。衝突過程における運動部材1の刻々の速度をレーザードップラー速度計の計測部17が検知する。制御回路121は、運動部材1がシート材に衝突する直前の運動部材1の速度、シート材が対向部材15に衝突するまでの撓み変形の時間、シート材が対向部材15に衝突した以降の圧縮変形の時間を計測して、シート材情報として制御部120へ出力する。シート材が対向部材15に衝突したタイミングは、対向部材15に接続された圧電素子16の出力によって検知する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能に支持されてシート材に対する衝突面が形成された運動部材と、
前記衝突面に対向させてシート材を支持する支持部材と、を備え、
前記支持部材に支持されたシート材に前記運動部材を衝突させるシート材情報検知装置において、
シート材への衝突過程における前記運動部材の位置と速度との少なくとも一方を検知する運動検知手段と、
前記衝突過程における前記運動検知手段の出力を検知してシート材情報を出力する出力手段と、を備えたことを特徴とするシート材情報検知装置。
【請求項2】
前記運動検知手段は、前記運動部材の刻々の位置を光学的に検知する光学センサであることを特徴とする請求項1記載のシート材情報検知装置。
【請求項3】
前記運動検知手段は、前記運動部材の刻々の速度を検知するレーザードップラー速度計であることを特徴とする請求項1記載のシート材情報検知装置。
【請求項4】
前記運動部材は、直線運動、又は回転運動が可能に支持されていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載のシート材情報検知装置。
【請求項5】
前記支持部材は、前記運動部材の衝突によって撓み変形が可能にシート材を支持し、
撓み変形したシート材を介して前記運動部材を受け止める衝撃受け部材と、
前記運動部材を受け止める過程で前記衝撃受け部材に作用する衝撃力を検知する衝撃検知手段と、を備えることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項記載のシート材情報検知装置。
【請求項6】
前記出力手段は、前記衝撃検知手段の出力に基いて前記衝突過程におけるシート材の圧縮過程の開始を検知し、前記圧縮過程における前記運動検知手段の出力に基いてシート材情報を出力することを特徴とする請求項5記載のシート材情報検知装置。
【請求項7】
前記衝撃検知手段は、前記衝突過程におけるシート材の撓み抵抗が差し引かれた衝撃力を検知し、
前記出力手段は、前記衝撃検知手段の出力に基いて前記衝突過程におけるシート材の圧縮過程の開始を検知し、前記圧縮過程における前記運動検知手段の出力と前記衝撃検知手段によって検知された衝撃力とに基いてシート材情報を出力することを特徴とする請求項5記載のシート材情報検知装置。
【請求項8】
前記衝撃検知手段は、前記衝突過程におけるシート材の撓み抵抗が差し引かれた衝撃力を検知し、
前記出力手段は、前記衝撃力のピーク値が予め定めたしきい値を越える場合には、検知された前記衝撃力に基いてシート材情報を出力することを特徴とする請求項5記載のシート材情報検知装置。
【請求項9】
少なくとも2種類の衝突速度を設定することができる加速機構をさらに有することを特徴とする請求項1乃至8いずれか1項記載のシート材情報検知装置。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれか1項記載のシート材情報検知装置と、
前記シート材情報検知装置によってシート材情報を検知されたシート材を処理する処理手段と、
前記シート材情報に基いて前記処理手段におけるシート材の処理条件を調整する調整手段と、を備えたことを特徴とするシート材処理装置。
【請求項11】
シート材の表面に向かって移動可能に支持された運動部材をシート材に向かって加速して衝突させる第1工程と、
シート材に衝突した後の前記運動部材の位置と速度との少なくとも一方を検知してシート材情報を出力する第2工程と、を備えたことを特徴とするシート材情報検知方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材に運動部材を衝突させてシート材を識別可能な出力を発生するシート材情報検知装置、詳しくはシート材を介して衝撃力を検知する機構に関する。また、シート材処理装置及びシート材情報検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置(LBP、複写機、インクジェットプリンタ、など)に代表されるシート材処理装置では、処理されるシート材の種類が多様化しており、シート材処理装置を使用するユーザーや使用環境も多様化している。画像形成装置に限って言えば、このように多様化したシート材に対して、高品質化(高画質化・処理の高速化など)の要求が高まっている。反面、シート材の多様化、処理内容の多様化に伴って、ユーザーが設定すべき項目数が膨大になって、最適な処理条件の設定が困難になっている。そこで、シート材処理装置に各種のセンサを配置して、シート材の大きさ、厚み、材質等のシート材情報を自動的に識別して、最適な処理条件を自動設定する技術が一部実用化されている。
【0003】
特許文献1には、衝撃印加部材をシート材に衝突させ、シート材を介した衝撃を圧電素子で検知するシート材情報検知装置が示される。ここでは、衝撃を受けて変形する圧電素子の電圧出力を検知し、検知した電圧出力のピーク値を判別してシート材の種類を特定している。圧電素子は、衝撃受け部材と緩衝部材とで挟み込まれ、シート材を介して衝撃受け部材が受け止めた衝撃が圧電素子によって検知される。
【0004】
特許文献2には、テクスチャ、光沢度、インクの吸収度、輝度、グロス、色反射、色深度、粒状性、白み、湿度、熱損失、接着性、付着性等、様々なシート材情報をデータベース化して、複数のプリンタで共有するシステムが示される。設定画面を通じてシート材が指定されると、選択されたプリンタへデータベースから必要なシート材情報が取り出されて、シート材情報に応じて最適化された処理条件がプリンタに自動設定される。
【0005】
特許文献3には、剛性の高い一対の部材で挟み込んだシート材に圧縮衝撃力を作用させてシート材情報を検知するシート材情報検知装置が示される。ここでは、一方の部材側から衝撃圧縮力をシート材に伝播させることにより、他方の部材に配置した圧電素子から、シート材の圧縮特性、減衰特性に応じた衝撃圧縮力が検知される。
【0006】
特許文献4には、シート材の搬送経路にシート材情報検知装置を配置した画像形成装置が示される。ここでは、搬送経路を通過するシート材に接触させた部材の変位を計測してシート材の比抵抗や水分量を測定している。
【0007】
【特許文献1】特開2005−024550号公報
【特許文献2】特開2004−38983号公報
【特許文献3】特開2002−310866号公報
【特許文献4】特開平10−152245号公報
【非特許文献1】日本木材学会編、「パルプおよび紙」、文永堂出版株式会社刊、1991年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示されるシート材情報検知装置は、シート材を介して衝撃力を検知して、弾性係数、減衰係数といったシート材の機械的性質を、高速搬送にも十分に対応して再現性高く精密に検知できる。
【0009】
しかし、運動部材、運動部材の加速機構、衝撃受け部材(支持部材)の組み合わせが決まると、精度高く検知できるシート材の範囲が限られてしまう。薄いシート材に最適化させた軽い運動部材は、極端に厚いシート材の表面では跳ね返されて衝撃が衝撃受け部材に届かない。しかし、運動部材を重くしたり、衝突速度を大きくしたりすると、薄いシート材の撓み抵抗を無視した大きな衝撃力が検知されるので、薄いシート材を精度高く識別できない。シート材に衝突跡が残ってしまう可能性も高まる。
【0010】
特許文献2に示されるシステムは、データベースにアクセスして必要なデータを取得して演算処理を行うので、シート材処理の処理条件が設定されるまでに長時間を要する。従って、これから処理しようとするシート材の1枚、1枚について処理条件を設定するリアルタイムの処理には不適当である。
【0011】
特許文献3に示されるシート材情報検知装置は、シート材の大きな面積に圧縮力を及ぼすために、重い大きな打撃部材が必要である。また、一対の部材でシート材を挟み込む動作を要するので、時間がかかり、シート材の搬送経路に配置してシート材の1枚、1枚について試験を行うとシート材の高速搬送に追い付けない。
【0012】
特許文献4に示されるシート材情報検知装置は、シート材の表面を摩擦するだけなので、撓み抵抗、圧縮抵抗、減衰性能と言ったシート材の機械的性質を測定できない。大きな圧力を加えるとシート材を損傷させる可能性がある。
【0013】
また、シート材処理装置においては、シート材の搬送や定着加圧等の工程で、シート材に対して撓みや圧縮の荷重印加を伴う機械的操作が行われる。さらに、近年、処理高速化の要請から、このシート材に対する機械的操作も高速化している。このため、このような機械的操作の動作設定を調整して最適化するために、シート材の動的挙動に関わる特性の検知が必要になって来た。そして、非特許文献1に示されるように、紙等のシート材は粘弾性的性質を持っており、撓み変形や圧縮変形における動的挙動は、荷重印加に対する緩和現象との相関により、荷重印加速度に依存している。
【0014】
このため、シート材の処理に有益な情報を得るためには、荷重印加における荷重印加速度の情報が重要である。しかし、特許文献1〜4では、このようなシート材の撓み変形や圧縮変形における動的挙動に関わる特性の情報が十分には得られない。
【0015】
本発明は、シート材の高速搬送に対応して、幅広い機械的性質のシート材から精度の高いシート材情報を取得できるシート材情報検知装置を提供することを目的としている。
【0016】
好ましくは、比較的に軽い運動部材を比較的に小さな衝突速度でシート材に衝突させて、比較的に撓み抵抗の高いシート材からも、精度の高いシート材情報を取得できるシート材情報検知装置を提供する。
【0017】
さらに好ましくは、シート材情報検知装置と機構部分(運動部材、加速機構、支持部材)を共有し、精度の高いシート材情報を取得できるシート材の機械的性質の範囲を拡大したシート材情報検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のシート材情報検知装置は、移動可能に支持されてシート材に対する衝突面が形成された運動部材と、前記衝突面に対向させてシート材を支持する支持部材とを備え、前記支持部材に支持されたシート材に前記運動部材を衝突させるものである。シート材への衝突過程における前記運動部材の位置と速度との少なくとも一方を検知する運動検知手段と、前記衝突過程における前記運動検知手段の出力を検知してシート材情報を出力する出力手段とを備えている。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシート材情報検知装置は、衝撃を印加されたシート材表面の挙動を、運動部材が追跡して、運動検知手段が運動部材の速度または変位として拾い上げる。従って、運動部材がシート材に衝突する際の運動量(速度×質量)と、衝突によるシート材表面の挙動(変形量、変形時間、変形過程等)を、特許文献1の装置よりも直接的かつ正確に検知できる。これにより、従来よりも精密に、シート材の曲げと圧縮に係る弾性と減衰性能とを評価できる。
【0020】
本発明のシート材情報検知装置は、「運動部材が表面で反発される場合」でも、速度変化や変位情報として、シート材の機械的性質を反映した出力が得られる。本発明によれば運動部材の運動量が過小な場合(十分な衝撃力が検知されない)でも、速度変化や変位情報としてシート材の撓み抵抗や剛性を精度高く識別できる(図7参照)。比較的に軽い運動部材を比較的に小さな衝突速度でシート材に衝突させることにより、検知可能な衝突過程の継続時間を引き延ばして計測精度を高めることができる。
【0021】
本発明のシート材情報検知装置は、例えば特許文献1に開示されている従来のシート材情報検知装置と機構部分(運動部材、加速機構、支持部材)の多くを共有できるためコスト的にも有利である。その結果、運動部材を用いた共通な衝撃印加によって、従来のシート材情報検知装置からもシート材情報を並列に取得させることも選択できる。
【0022】
本発明のシート材情報検知装置は、運動部材の速度と変位との少なくとも一方を検知する単独の使用でも、上述したように優れた効果を奏する。しかし、上述した機構部分の共通性や衝撃印加の共有を利用して、特許文献1のシート材情報検知装置と並存させる配置および制御では、さらに優れた効果を奏する。特許文献1のシート材情報検知装置と並列または相補的にシート材情報を取得したり、それぞれの出力をタイミング信号として相互に利用したりすることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態であるシート材情報検知装置100について、図面を参照して詳細に説明する。本発明のシート材情報検知装置は、以下に説明する実施形態の限定的な構成には限定されない。シート材に対して運動部材を衝突させてシート材を識別する限りにおいて、各実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実現可能である。
【0024】
本実施形態では、静電写真方式の画像形成装置300にシート材情報検知装置100を搭載して、衝撃力によるシート材情報と、速度によるシート材情報と、を複合的に利用した例を説明する。しかし、本実施形態のシート材情報検知装置100は、インクジェット方式の画像形成装置や各種印刷装置、シート材加工装置、シート材積載装置、ソーター等にも搭載可能である。そして、速度(あるいは位置)だけに基づいてシート材情報を取得する制御を採用してもよい。
【0025】
なお、特許文献1〜4に示される画像形成装置の構成、動作、制御、シート材情報検知装置の動作原理、信号処理等については、繰り返しの煩雑を回避すべく、図示を省略して詳細な説明も省略する。
【0026】
<第1実施形態>
図1は画像形成装置の構成の説明図、図2は第1実施形態のシート材情報検知装置の構成の説明図、図3は運動部材の衝突過程の説明図である。図4は運動検知部による検知結果の説明図、図5はシート材情報検知装置の動作を説明するフローチャートである。
【0027】
図1に示すように、画像形成装置300は、画像形成プロセス部340によってシート材Pに画像形成するカラー複写機である。読み取りユニット311は、カラー原稿312の画像情報を読み取る。読み取った情報は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のトナーに対応した色別信号に変換される。
【0028】
一方、カセット321内に収容されたシート材Pは、送出ローラー322で搬送部112へと送られる。搬送部112に近接する場所には、シート材情報検知装置100が設けられている。シート材情報検知装置100は、送出ローラー322から搬送部112へ受け渡されるシート材Pの搬送位置を上下に挟み込んで配置され、通過するシート材Pのシート材情報(機械特性)を検知する。
【0029】
制御部120は、画像形成プロセス部340で画像形成が行われる前に、シート材情報検知装置100が検知したシート材Pのシート材情報を識別して最適な搬送条件、転写条件、定着条件等を設定する。
【0030】
次に、シート材Pは、転写装置ドラム330へと送られる。転写装置ドラム330の周面には、誘電体シートが設けられている。シート材Pは、吸着コロナ放電器331によって帯電した転写ドラム330の表面に吸着担持される。その後、画像形成プロセス部340では、転写コロナ放電器332の作用によって、感光ドラム323上のトナー像がシート材Pに転写される。
【0031】
感光ドラム323の表面は、ブレードクリーナ324で清掃される。そして、前露光ランプ325及び前除電器326により、前回の画像形成による感光体表面層に残留する影響が除去される。次に、感光ドラム323の表面は、一次帯電器327で一様に帯電される。このときの帯電量は、シート材情報検知装置100が検知したシート材Pのシート材情報に基づいて決定される。
【0032】
レーザービームスキャナ328は、読み取られたカラー原稿312の色別信号をもとに、感光ドラム323の表面を走査して静電潜像を形成する。現像器329は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色の現像ユニットから成る。それぞれの色に対応した現像ユニットが、感光ドラム323の真下に順次移動して、感光ドラム323上の潜像をトナー像に現像する。
【0033】
シート材Pは、4色のトナー像が順次転写されるまで転写ドラム330に吸着保持されており、その後、分離爪333の作動により転写ドラム330から分離される。分離されたシート材Pは、搬送ベルト334により加熱ローラー定着器335に送られ、加熱加圧を受けて表面にトナー像を定着される。このときの定着温度は、シート材情報検知装置100が検知したシート材Pのシート材情報に基づき決定される。
【0034】
定着終了後のシート材Pは、トレー336に排出される。又、転写終了後の感光ドラム323の表面上に残留したトナーは、ブレードクリーナ324で清掃されて、次の画像形成サイクルに入る。
【0035】
図2に示すように、シート材情報検知装置100は、搬送されて来たシート材の表面に運動部材1を打ち出して衝突させ、衝突過程における運動部材1の運動を計測部17により計測する。シート材は、支持部材14によって支持される。運動部材1は、印加用ばね4によってシート材の表面に向かって常時付勢され、モーター5とカム6とを用いた機構によって持ち上げて解放される。図2は、印加用ばね4が圧縮されて、運動部材1が停止状態にある時点の様子を模式的に示す。
【0036】
運動部材1は、軸受け3によって図2中の上下方向へ運動自由に支持され、加速機構との連動に用いる円板状のプレート2を上端に固定してある。加速機構は、加速力を付与する印加用ばね4と、印加用ばね4を伸縮動作させるモーター5と、モーター5の出力軸に固定されたカム6とを含み、運動部材1に所定の衝突速度を付与する。
【0037】
モーター5の出力軸の反対側に、モーター5の回転角度調整に用いる位置出し機構が配置される。位置出し機構は、位置検知用の貫通口8を形成してモーター5の出力軸に固定した位置出しホイール7と、貫通口8を検知するフォトインタラプタ9とを含む。
【0038】
モーター5は、ドライバ122から、コネクタ11、配線10を通じて駆動電力を供給される。ドライバ122は、制御回路121から入力された制御信号に従ってモーター5の回転角と回転速度とを制御する。制御回路121は、フォトインタラプタ9の出力を参照してモーター5を制御し、画像形成装置300の制御部120から指令されたタイミングでシート材に運動部材1を打ち込む。
【0039】
計測部17は、被測定物である運動部材1の刻々の位置を計測して、速度に対応した電圧信号を制御回路121に出力する。計測部17には、速度追従性が高いレーザードップラー速度計を採用した。計測部17は、レーザー光を照射する光源18と、反射板20からの反射光を検知する受光部19とを有しており、反射板20の移動速度に応じた周波数シフトを検知する。
【0040】
制御回路121は、高速のアナログ波形アナライザを内蔵しており、計測部17の出力を検知して速度変化を解析する。制御回路121は、運動部材1の打ち込みに同期して計測部17の出力取り込みを開始し、衝突過程の運動部材の速度変化を検知し、検知結果を制御部120に出力する。図1に示す制御部120は、制御回路121の検知結果に基いてシート材を識別し、シート材の搬送速度や画像形成プロセス部における各種の処理条件を調整する。
【0041】
運動部材1の上端に固定したプレート2に、計測の補助のため、光源18からの光を反射する反射板(計測補助部材)20を固定した。運動部材1、加速機構、計測部17は、ハウジング21に組み立て、ダンパー22を介して第1搬送ガイド23に取り付けた。
【0042】
第1搬送ガイド23は、第2搬送ガイド24に対向して、対向間隔にシート材の搬送経路25を構成する。第2搬送ガイド24に、不図示のダンパー部材を介して支持部材14を取り付けてある。シート材は、搬送経路25を、図2中の左側から右方向へ搬送され、支持部材14によって撓み変形可能に支持された状態で、運動部材1を打ち込まれる。
【0043】
シート材を支持する支持部材14は、二箇所の凸部12の間にシート材の撓みを許容する凹部13を形成してある。凹部13の運動部材1と対向する位置に、シート材を介して運動部材1を受け止める対向部材15が配置される。対向部材15は、支持部材14の凹部13に固定されたスペーサ27との間に圧電素子16を挟み込んで、支持部材14と一体に接着固定されている。圧電素子16の電気容量の変化は、出力回路(チャージアンプ)123によって電圧信号に変換されて制御回路121に取り込まれる。
【0044】
制御回路121は、運動部材1を用いた1サイクル2回の打ち込みによる衝撃力(圧電素子16の出力)のピーク値を検知して、制御部120に出力する。図1に示す制御部120は、計測部17が検知した速度変化に加えて、衝撃力のピーク値によってもシート材を識別する。また、後述するように、圧電素子16は、衝撃力が検知され始めるタイミングを検知して、計測部17による圧縮過程の計測を開始させる。
【0045】
運動部材1は、先端部(シート材Pに接触する側)と、印加用ばね4を貫通させた軸部と、カム6に係合させたプレート2とを一体に接続して構成した。先端部は、ステンレス材にて構成し、シート材との接触面は半径20mmの球面加工を施した。運動部材1の全体の質量は、軸とプレート2とを合わせて4gである。
【0046】
運動部材1の質量は、検知対象のシート材に応じて適宜決定される。シート材の厚みが50μm乃至250μm内外の情報用紙などに適用する場合、運動部材1の質量は、1g〜20gの範囲が好ましい。厚く剛度の高いシート材の場合は質量を大きく、薄く剛度の低いシート材に用いる場合は質量を小さくすることが望ましいが、後述するように、特許文献1に比較すると、運動部材1の質量に対するシート材の許容範囲は相当広い。
【0047】
運動部材1は、中間軸部の上下を軸受け3にて保持されて、図中上下方向に直動運動が可能である。軸受け3は、摩擦抵抗の少ない樹脂材料より構成し、第1実施形態ではフッ素系樹脂を用いた。
【0048】
モーター5は、所定の停止位置より1回転する過程で、カム6を必要な角度回転して停止させる動作を繰り返して最終的に元の停止位置に復帰させる。モーター5にはステッピングモーターを用いた。カム6は、1回転する過程で2回、印加用ばね4の圧縮/解放を行い、運動部材1を持ち上げて印加用ばね4の付勢に委ねる。印加用ばね4の復元力に駆動されて所定の衝突速度まで加速された運動部材1がシート材に衝突してシート材を撓み変形させる。
【0049】
運動部材1の衝突速度は、検知対象のシート材と、画像形成装置300における荷重印加条件とを鑑みて適宜決定される。
【0050】
より好ましくは、画像形成装置300における荷重印加速度よりも大きい衝突速度と、小さい衝突速度とで、1回ずつ以上の回数の衝突を発生させて、シート材情報の検知を行う。大きい衝突速度によるシート材情報と、小さい衝突速度によるシート材情報とからシート材の動的挙動の速度依存性を判別できる。
【0051】
第1実施形態では、カム6を2段にして1周2回の衝突を行わせている。カム6の各段は、回転中心からの距離が異なり、各段による印加用ばね4の圧縮量を異なるものとすることにより、各回の衝突時に異なる衝突速度が運動部材1に付与される。第1実施形態では、搬送速度0.3m/sec.のシート材搬送の制御を行うので、1回目の衝突速度は0.4m/sec.、2回目の衝突速度は0.23m/sec.に設計した。モーター5によるカム6の回転では、駆動に伴って発生する不要な振動が減衰するのを待つために、途中で回転を一時休止する工程を入れている。
【0052】
モーター5の出力軸に固定された位置出しホイール7には、停止位置検知用の貫通口8を設けてあり、カム6が停止位置に達した際に、フォトインタラプタ9が貫通口8を検知する。カム6の停止位置は、カム6が1回転する過程で最も印加用ばね4を圧縮して解放する位置の直前に定めた。カム6を停止位置に誘導すると、運動部材1が最もシート材から離れる。
【0053】
第1実施形態では、所定回転角度でカム6がプレート2を解放して、印加用ばね4により運動部材1を打ち出す工程を2回連続して行う。カム6が停止位置から回転開始して1回転して再び停止位置に戻るまでが1サイクルとなり、1サイクルの所要時間は0.2秒、2回の打ち出しの間隔は0.1秒に設計した。1サイクルのスタートは、シート材の搬送経路25に配置された不図示のシート材通過検知センサーの信号を受けて、所定時間後に定めてある。
【0054】
支持部材14は、全体を剛性の高い樹脂で構成し、凸部12のシート材と接触する面の一部にステンレス板を貼り付けた。凸部12は、シート材の搬送方向になだらかな曲面を設けて、エッジとシート材との正面衝突を避けた。
【0055】
対向部材15にはステンレス材を用い、運動部材1に対向する面には、運動部材1の先端部と同じ曲面を形成した。支持部材14の凸部12と対向部材15との間には、凸部12の頂上と、対向部材15の頂上との間に、高さの差が0.3mmとなる段差構造を設けた。支持部材14は、凸部12でシート材を支持して、段差構造でシート材の撓み変形を許容して運動部材1を受け止める。
【0056】
対向部材15の下に圧電素子16が埋設される。圧電素子16は、運動部材1がシート材を介して対向部材15に接触した際に出力を発生するので、接触タイミングを検知するのに用いている。
【0057】
なお、計測部17は、運動部材1の運動を計測する限りにおいて、光源18と受光部19とを持つ反射型素子以外にも種々選択が可能である。光源18、受光部19、反射板20、および付随する光学系やデータ処理系に用いるものの組み合わせにも、様々な構成が可能である。第1実施形態では、レーザー光の干渉を検知する速度計であるレーザードップラー速度計を用いる系を例として説明する。レーザードップラー速度計は、反射板20の移動速度を高精度かつリアルタイムに直接計測できる。
【0058】
計測部17に採用可能な他の例としては、反射板に設けたマークや目盛りを追尾して速度を計測する方法や、反射板20の移動に伴う反射光量の増減によって移動位置を計測する方法も、図2の構成にて可能である。また、磁気パターンや光学パターンを読み取って座標位置を測定する各種エンコーダを採用してもよい。
【0059】
図3は、第1実施形態の構成において、運動部材1を衝突させてシート材に撓み変形と圧縮変形を生じせしめる1回の衝突過程を時系列的に示す。図3中、(a)は衝突前、(b)は衝突直後、(c)は衝撃検知状態、(d)は反発状態である。図3の(a)〜(d)は、株式会社フォトロン製高速度カメラFASTCAM−512PCI型(登録商標)にて高速撮影して分析した結果である。ここでは、図2に示したシート材情報検知装置100を搬送経路25の下流側から見て、説明に必要な最低限の構成のみを示している。
【0060】
図3の(a)に示すように、運動部材1は、所定の衝突速度(v0)まで加速されてシート材Pに衝突する。シート材Pは、不図示の搬送ローラーによって、支持部材14の凸部12に対して押し付けられるように搬送されている。第1実施形態のような衝撃印加による張力に対しては、凸部12は、摩擦力によって実質的に固定端として機能する。
【0061】
図3の(b)に示すように、運動部材1がシート材Pに衝突すると、シート材Pが支持部材14の凸部12に支持されて両持ちの撓み変形を生じる。撓み変形の過程で、運動部材1は、シート材Pの撓み変形に伴うばね力の抵抗を受けて減速する。シート材Pの撓み変形による減速過程は、ばね力の抵抗によって運動部材1の速度が0になるか、もしくはシート材Pが対向部材15に突き当たるかで終了する。
【0062】
運動部材1の運動量に比較してシート材の抵抗が優勢であれば、シート材Pが対向部材15に突き当たる以前に、図3の(d)に示すリバウンド過程へと移行する。シート材Pの抵抗に比較して運動部材1の運動量が優勢であれば、撓み変形の終了時の速度(v1)が0以上となり、図3の(c)に示した圧縮過程へ移行する。
【0063】
従って、制御回路121が計測部17の出力を検知してシート材の撓み変形過程における速度変化を検知することにより、シート材Pの撓み変形での動的挙動が識別可能となる。計測部17が検知する運動部材1の速度によって、撓み変形過程の開始を検知できる。図2に示す制御回路121が計測部17の出力を検知して、シート材の撓み変形の開始から終了までの時間を計測する。これにより、シート材Pが対向部材15に突き当たらなかった場合でも、つまり、圧電素子16が衝撃力を検知しなかった場合でも、シート材Pのばね力や撓み抵抗を測定できる。
【0064】
もちろん、図3の(b)で示したシート材Pの撓み変形過程においても、運動部材1からシート材Pを介して凸部12を下方へ押す力の伝達はある。しかし、周辺部材を含む各部材は、シート材の撓み剛性よりもはるかに大きな圧縮剛度を持つので、撓み変形過程では、周辺部材の変形は無視できる。しかし、圧縮変形過程では、周辺部材の変形が無視できないので、圧縮変形過程の終了時の速度(v2)は、必ずしも0にはならない(図4参照)。従って、計測部17の出力からは圧縮変形過程の終了時を判別できない。そこで、第1実施形態では、制御回路121(図2)が圧電素子16の出力を検知して、圧縮変形過程の開始と終了の時刻を判別し、圧縮変形過程の継続時間を演算している。圧縮変形過程では、圧電素子16より出力電圧が生じるので、これを感知して衝突タイミングに関する情報を得ることができる。
【0065】
制御回路121(図2)は、計測部17の出力を検知して撓み変形終了時の速度(v1)を求め、圧電素子16の出力から圧縮変形過程の継続時間を求める。そして、撓み変形終了時の速度(v1)と圧縮変形過程の継続時間とに基いて、シート材Pの厚み、圧縮弾性、圧縮剛性等に関連するシート材情報を取得する。言い換えれば、シート材の圧縮変形過程での速度変化を検知することにより、シート材Pの圧縮の動的挙動を検知する。
【0066】
圧縮過程が終了すると、図3の(d)に示すリバウンド過程に移行する。運動部材1がシート材Pや対向部材15等の反発を受けて反転移動を開始する。制御回路121(図2)は、リバウンド過程における運動部材1の速度を計測して、衝突速度(v0、v1)と比較することにより、シート材の反発係数、減衰係数、tanδ等に関連するシート材情報を取得する。
【0067】
図1に示す画像形成装置300の制御部120は、1サイクル2回の運動部材1の打ち込みが終了する毎に、制御回路121から上記のような別々の方法で検知された複数のシート材情報を受け取る。そして、複数のシート材情報のなかで確度の低いものを捨てて、確度の高いシート材情報によるシート材の識別結果の多数決によって、最終的な識別結果を作成する。
【0068】
なお、好ましくは、リバウンド過程でモーター5を起動させ、次の反転落下に至る前にカム6により運動部材1を引き上げて、シート材への再衝突を防止することが望ましい。
【0069】
シート材に対する運動部材1の衝突過程における計測部17と圧電素子16とによる計測結果を図4に示す。衝突対象のシート材としては、NeenahPaperInc.製、CLASSIC Laid Text紙70lb(登録商標)を用いた。図4は、運動部材1が所定の衝突速度(v0)に達して衝突し、リバウンドする様子が抽出され、衝突過程における運動部材1の移動速度の変化と、その際の圧電素子からの発生電圧とを併記している。
【0070】
衝突速度(v0)は0.23m/sec.である。続くシート材の撓み変形過程を経て、撓み変形過程の終了時の速度(v1)の0.17m/sec.まで、およそ1.3msec.で減速する。続いて圧縮変形過程を経て圧縮過程の終了時の速度(v2)の0.09m/sec.まで、およそ0.2msec.で減速する。
【0071】
シート材の圧縮変形過程では、その開始と同時に対向部材に仕込んだ圧電素子に衝撃力が伝播して電圧が発生する。さらに周辺部材等による若干の減速を受けた後、バウンドして衝突過程が終了する。図4のデータにより、シート材Pの当該速度における撓みばね定数は、およそ5000N/mと評価された。
【0072】
図5のフローチャートを参照して、第1実施形態のシート材情報検知装置100の動作を説明する。図5に示す制御は、シート材情報検知装置100を画像形成装置300に搭載し、画像形成のタイミングと同期させてシート材情報検知を行う場合である。
【0073】
図5に示すように、シート材情報検知装置100の動作がスタートする(S11)。スタートは、シート材情報検知装置100を搭載する画像形成装置300において、シート材処理の動作が開始したことを受けて行われる。
【0074】
続いて、画像形成装置300の制御部120からシート材情報検知装置100の制御回路121にシート材搬送情報が入力される(S12)。シート材搬送情報とは、シート材の位置や速度に関する情報であり、シート材がシート材情報検知装置100の位置を通過するタイミングを意味する。シート材搬送情報に対応してシート材情報検知装置100の動作タイミングが決定される。シート材搬送情報は、画像形成装置300のシート材通過センサの信号や、画像形成装置300の動作開始(コピーボタンが押された)等の情報を処理したものである。
【0075】
続いて、シート材搬送情報を受けて、制御回路121は、シート材情報検知の制御を開始する(S13)。例えば、搬送経路25の上流側に配置されたシート材通過センサがシート材の通過を検知してから、一定時間経過後に、制御回路121からシート材情報検知装置100のモーター5へ動作開始の信号が送られる。モーター5の動作開始と同期して、計測部17が計測を開始する。
【0076】
続いて、制御回路121は、計測部17の出力を検知して衝突速度(v0)の計測を行う。衝突速度(v0)は、シート材Pに運動部材1が衝突する直前における運動部材1の速度である。衝突速度(v0)の計測タイミングは、シート材への衝突に伴う運動部材1の減速が開始される直前とする(図4参照)。
【0077】
なお、運動部材1の衝突タイミングが明らかな場合は、衝突速度(v0)の計測タイミングは、カム6によるプレート2の解放からの計時により決定してもよい。しかし、シート材の厚み差やばたつき等により、運動部材1がシート材に衝突するまでの運動距離が変動し、プレート2の解放から計時したタイミングが実際の衝突タイミングとずれる可能性がある。このような場合、最後の過程まで運動部材1の運動を追跡計測した後に計測結果を遡及して、衝突による減速が開始された直前の速度を求め、衝突速度(v0)としてもよい。
【0078】
続いて、制御回路121は、衝突速度(v0)が適正か否かを判断する(S14)。衝突速度(v0)が適正か否かは、設計した衝突速度からの偏差が許容範囲であるか否かで判断される。また、前項で述べた衝突による減速が確認できない場合なども不適正と判断する。これにより、運動部材1の支持機構や加速機構の不良による速度異常、シート材の搬送異常等を検知できる。シート材無しで衝撃を与えてしまう事態を回避できる。判定機構は、シート材情報検知装置100の制御回路121に設けている。以後の工程は、本工程の判断結果によって以下の2つの場合に分岐する。
【0079】
衝突速度が不適正の場合(S14のNO)は、以後の過程の中止、もしくは以後の過程で得られたシート材情報のキャンセルを行う(S17)。以後の工程の中止とは、運動部材1のシート材への衝突を回避することである。具体的には、カム6の回転を瞬時に変更して運動部材1を引き上げることが好ましい例である。以後の工程で得られたシート材情報のキャンセルとは、シート材情報出力を行わないということである。
【0080】
その後、シート材情報検知装置100が異常であるという異常情報出力を行う(S18)。異常情報は、後述するシート材情報の一部として画像形成装置300に送られ、適切なリカバリーに用いられる。例として、故障情報として画像形成装置300のタッチパネルに表示したり、ネットワーク上で適切な接続PCや保守依頼先等に情報を送ったりする。より好ましくは、画像形成装置300に設けられた他のセンサ類の情報等も併せて、異常の原因を特定することが好ましい。
【0081】
例えば、画像形成装置300では異常を感知したものの、搬送経路25の上流側および下流側のシート材通過センサがともにシート材の通過を感知している場合がある。このとき、制御回路121は、シート材情報検知装置100自体の異常であると判断する。
【0082】
例えば、上流側のシート材通過センサがシート材の通過を感知しても、下流側のシート材通過センサがシート材を感知しない場合、制御回路121は、シート材の詰まり(ジャム)が発生したと判断する。
【0083】
異常情報の出力後、シート材情報検知装置100の動作を終了する(S19)。動作終了時には、運動部材1を停止位置に戻し、再スタートに備える。
【0084】
一方、衝突速度(v0)が適正な場合(S14のYES)、シート材情報の検知を行う(S15)。シート材情報の検知については図3、図4を参照して説明したとおりである。好ましくは、衝突速度(v0)を基準値として、以後の速度変化を相対値化し、シート材情報の検知に用いる。
【0085】
続いて、検知したシート材情報を出力する(S16)。シート材情報の出力は、画像形成装置300の制御部120に対して行う。出力されるシート材情報としては以下のような好ましい形態がある。
(1)運動速度に関する情報をそのまま出力する。
(2)運動速度からシート材の機械特性や物性値を算出して出力する。
(3)前記(1)、(2)のいずれかより、シート材の種類や状態を判別して出力する。
【0086】
シート材情報出力後に、シート材情報検知装置の動作を終了する(S19)。動作終了時には、運動部材1を停止位置に戻して再スタートに備える。
【0087】
シート材情報検知装置100は、シート材に衝突する運動部材1と、運動部材1に所定の速度を付与する加速機構と、シート材を支持する支持部材14と、運動部材1の運動を計測する計測部17とを有する。これにより、シート材の動的挙動に関わる特性の情報を検知して出力するシート材情報検知装置100を提供できる。そして、シート材の撓み変形の機械特性と圧縮変形の機械特性とを1回の衝突で個別独立に検知でき、これらの機械特性の速度依存性も評価できる。従って、確度の低いシート材情報を利用しないで済み、複数のシート材情報に裏付けられた確実なシート材の識別を行うことができ、画像形成やシート材搬送における荷重印加制御に有益な情報が得られる。
【0088】
<第2実施形態>
図6は第2実施形態におけるシート材処理装置の制御のフローチャート、図7は計測部と圧電素子とを用いたシート材情報出力の説明図である。第2実施形態では、図2〜図4を参照して説明したシート材情報検知装置100を画像形成装置300以外のシート材処理装置へ搭載した場合の制御を説明する。
【0089】
まず、シート材処理装置がシート材処理動作をスタートして、シート材の搬送を開始する(S21)。シート材処理動作のスタートは、シート材処理装置のユーザー(オペレーター)が、装置本体のスタートボタンを押す、あるいは接続された外部コンピュータやカメラ等の周辺機器から処理命令を送るなどして開始される。
【0090】
続いて、シート材情報検知装置100の動作がスタートする。該スタートは、シート材情報検知装置100を搭載するシート材処理装置において、シート材処理の動作が開始したことを受けて行われる。
【0091】
続いて、シート材情報検知装置100の制御回路121に、シート材搬送情報が入力される(S22)。シート材搬送情報は、シート材の位置や速度に関する情報であり、シート材がシート材情報検知装置100の測定位置に到達するタイミングを通知する。シート材搬送情報に対応してシート材情報検知装置100における外力印加等のタイミングが決定される。シート材搬送情報は、例えばシート材処理装置のシート材通過センサの信号や、シート材処理装置の動作開始等の情報を処理したものである。
【0092】
続いて、シート材搬送情報を受けて、シート材情報検知装置100は、シート材情報検知の動作を開始する(S23)。制御回路121は、モーター5を作動させて運動部材1を持ち上げて解放し、印加用ばね4に加速された運動部材1がシート材に衝突する。制御回路121は、解放後の計測部17の出力を追跡して衝突速度(v0:図4の速度曲線の変曲点に至る直前の速度)を求める。
【0093】
制御回路121は、シート材情報検知動作の開始後、衝突速度(v0)が適正か否かを判別する(S24)。衝突速度(v0)が適正でなかった場合(S24のNO)、以後の過程の中止、もしくは以後の過程で得られたシート材情報のキャンセルを行う(S31)。さらに、シート材情報検知装置100が異常であるという異常情報出力を行う(S32)。
【0094】
続いて、制御回路121の通報に基いて、シート材処理装置は、シート材処理を実行するか中止するかを判断する(S33)。異常が軽微な場合(S33のYES)、必ずしもシート材処理を中止する必要は無いので、シート材情報検知装置100の動作を停止した上で、予め設定されたデフォルト条件にてシート材処理を実行する。異常が軽微であるという判断は、搬送経路25を通じたシート材処理装置内のシート材の搬送が正常に行われていることが確認できた場合に適用される。また、繰り返しのシート材処理において低確率で突発的に異常が発生した場合にも適用される。
【0095】
しかし、異常が及ぼす影響が甚大と判断される場合(S33のNO)は、シート材処理を中止する(S35、S36)。シート材処理の中止は、搬送停止またはシート材を排紙し(S35)、シート材処理装置の異常表示や適宜復帰指示を行う(S36)。また、必要に応じて次のシート材処理への影響を判断し、適切な処理を行う。以上の処理をもって動作終了する(S29)。
【0096】
次に、衝突速度(v0)が適正であった場合(S24のYES)について説明する。シート材情報検知装置100は、シート材を介して対向部材15で運動部材1を受け止める(S25)。モーター5によるカム6の1回転の駆動に伴って、運動部材1は連続して2回シート材の表面に打ち出される。1回目の打ち出しで、運動部材1は、印加用ばね4を大きく圧縮して打ち出され、大きな衝突速度(v0)でシート材に衝突する。続く2回目の打ち出しで、運動部材1は、印加用ばね4を小さく圧縮して打ち出され、小さな衝突速度(v0)でシート材に衝突する。
【0097】
続いて、制御回路121は、2回の衝突過程における計測部17の出力結果と圧電素子16の出力結果とに基いてシート材情報を形成してシート材処理装置に出力する(S26)。
【0098】
シート材処理装置では、制御回路121から送信されたシート材情報に基づいて、シート材処理条件が決定され、決定されたシート材処理条件に基づき、画像形成等のシート材処理が行われる(S27)。シート材処理装置においては、シート材情報に基づいて処理プロセスが決定され、処理の各工程において必要な制御が行われる。シート材処理装置において特に重要な制御は、シート材の搬送に関わる制御である。剛度の高いシート材に対しては搬送ローラーの荷重の値を大きくする。また、シート材の機械特性の速度依存性を考慮して適切な荷重印加速度を決定する。以上の処理をもって動作終了する(S29)。
【0099】
図7に示すように、シート材処理装置100が運動部材1をシート材に向かって2回打ち出した際に、圧電素子16で衝撃力を検知できない場合がある。図3を参照して上述したように、シート材の撓み抵抗が大きいと、運動部材1は、シート材を対向部材15まで後退させて圧電素子16に衝撃力を作用させることができない。
【0100】
そこで、制御回路121は、1回目、2回目とも圧電素子16に衝撃力が検知された場合には、1回目の衝撃力のピーク値と、2回目の衝撃力のピーク値とをシート材処理装置に出力する。シート材処理装置では、圧電素子16の出力による1回目の衝撃力のピーク値と、2回目の衝撃力のピーク値との組み合わせで分類したデータベースを参照してシート材を特定する。
【0101】
このように、圧電素子16に大きな衝撃力が作用する場合、運動部材1は高速で対向部材15に達してしまう。これにより、シート材の撓み/圧縮の時間が短くなり、通常のプロセッサでは計測部17の出力を用いた速度解析の精度を確保できない。反面、圧電素子16の出力のピーク値は、簡単な回路構成で瞬時に検知できるので、圧電素子16の出力によるシート材の高精度の判別が可能である。
【0102】
なお、サンプリング間隔の十分に短い高速の専用チップ(DSP)を利用した場合には、高速の衝突過程でも、高コストの代償を払って計測部17の出力を用いた速度解析の精度を確保できる。従って、計測部17の出力ですべての衝突過程を評価することも可能であるが、現時点ではそれほど実用的とは言い難い。
【0103】
2回の打ち出しの1回目だけ衝撃力が検知された場合は、1回目の衝撃力のピークも低くて、圧電素子16の出力だけでは判別精度が悪くなる。そこで、制御回路121は、圧電素子16の出力でタイミング検知して上述したシートの圧縮変形過程の継続時間を計測し、計測部17の出力を解析して衝突速度(v0、v1)を抽出する。そして、圧縮変形過程の計測結果を、計測部17の出力による撓み変形過程の計測結果とともにシート材処理装置に送信する。
【0104】
1回目も2回目も衝撃力が検知されない場合は、圧電素子16の出力からは何の情報も得られない。一方で、シート材は、運動部材1を受け止めてゆっくり反発するので、シート材の撓み変形過程および反発過程は、計測部17の出力を用いて高精度に追跡できる。そこで、制御回路121は、図3、図4を参照して上述したように、計測部17の出力を速度分析して、撓み変形過程の継続時間を抽出する。リバウンド過程における運動部材1の速度を計測して、衝突速度(v0、v1)と比較し、解析結果をまとめてシート材処理装置に送信する。
【0105】
以上、第2実施形態のシート材処理装置によれば、シート材の動的挙動に関わる特性の情報に基づき、適切なシート材処理を行うことのできるシート材処理装置を提供できる。特に、シート材の搬送等の機械処理にとって適切な処理条件の決定が可能となり、シート材の詰まり等のトラブルを低減できる。
【0106】
<実施形態3>
図8は第3実施形態のシート材情報検知装置の構成の説明図である。第3実施形態のシート材情報検知装置200は、主要構成要素として、シート材に衝突する運動部材31と、運動部材31に所定の速度を付与する加速手段と、シート材を支持する支持部材と、運動部材31の運動を計測する計測手段とからなる。第3実施形態は、運動部材31を軸受け33を中心にしてスイングさせる回転的な運動でシート材と衝突させる。また、計測部47は、第1実施形態におけるレーザードップラー速度計よりも低コストな透過型光学センサを採用した。計測部47は、発光部48と受光部49との間隔を遮光板50が移動するもので、運動部材31の移動に伴って遮光板50による遮光状態が変化することを検知する。これ以外の基本構成は、第1実施形態と同様なので、図8中、図2と共通する構成には共通の記号を付して詳細な説明を省略する。図8は、圧縮された印加用ばね34が解放されて、運動部材31が運動状態にある時点の様子を模式的に示している。
【0107】
図8に示すように、シート材に衝突する運動部材31は、後述する加速機構との連動に用いるプレート32の片端側に固定されている。プレート32は、運動部材31を固定した反対側が回転式の軸受け33に軸止されている。これにより、運動部材31は、軸受け33を中心とする回転方向に運動自由である。
【0108】
運動部材31に所定の衝突速度を付与する加速機構は、加速のための力を付与する印加用ばね34と、印加用ばね34の伸縮を制御するカム36と、カム36を駆動するモーター5とを含む。モーター5の出力軸の一端側にカム36が固定される。カム36は、印加用ばね34の圧縮/解放を行う。カム36は、プレート32の中ほどに設けた切り欠き部のエッジを係止して持ち上げることにより、印加用ばね34を圧縮変形させる。カム36は、回転に伴ってプレート32の係止を解放し、運動部材31を印加用ばね34の付勢に委ねてシート材に衝突させる。
【0109】
印加用ばね34は、カム36によって動作するプレート32と、ハウジング21に固定されたサポートメンバー46との間に挟まれ、カム36の動きによって圧縮/解放される。印加用ばね34は、不図示のサポート部材によって不要な屈曲を発生しないで伸縮自由となるように保持されている。
【0110】
モーター5の回転角度調整に用いる位置出し機構は、第1実施形態と同様、モーター5の出力軸の他端側に固定された位置出しホイール7と、位置検知用のフォトインタラプタ9とを含む。モーター5には、配線10とコネクタ11を介して、不図示のドライバより駆動電力が供給される。
【0111】
シート材を支持する支持部材14は、シート材の搬送方向の前後に配置された二箇所の凸部12の間に凹部13を形成してある。凹部13の運動部材31と対向する位置に対向部材15が固定されている。
【0112】
運動部材31の運動を計測する計測部47は、光源48と受光部49を持つ。光源48と受光部49とは、運動部材31の運動方向に沿って動きを検知できるように配置される。また、計測の補助のため、光源48からの光を遮る遮光板(計測補助部材)50をプレート32の運動部材31側に固定した。計測部47は、受光部49に入射する光源48からの光量が遮光板50の運動によって変化することを検知して、運動部材1の位置および速度を検知する。計測部47は、サポートメンバー46に固定してある。
【0113】
運動部材1、加速機構、計測部47は、ハウジング21に組み立て、ダンパー22を介して第1搬送ガイド23に取り付けた。第1搬送ガイド23は、第2搬送ガイド24との対向間隔に搬送経路25を形成する。第2搬送ガイド24に不図示のダンパーを介して支持部材14を取り付けた。シート材は、搬送経路25内を搬送されて、シート材情報検知装置200に到達し、加速された運動部材1を打ち込まれる。シート材情報検知装置200は、上記の構成を持ち、第1実施形態のシート材情報検知装置100と同様の検知動作を行う。
【0114】
第2実施形態によれば、シート材の動的挙動に関わる特性の情報を検知して出力するシート材情報検知装置200を提供できる。シート材の撓み変形過程と圧縮変形過程とを検知して機械特性を確実に反映したシート材情報を出力できる。さらに、シート材の機械特性の速度依存性を検知できるので、シート材処理における荷重印加制御に有益なシート材情報を出力できる。また、運動部材31を回転自由に保持したことにより、回転抵抗が小さく安定して衝突運動のばらつきが小さくなるので、シート材情報の検知誤差が低減し、耐久性も向上する。これにより、シート材の動的挙動に関わる特性の情報に基づき、適切なシート材処理を行うことのできるシート材処理装置を提供できる。特に、シート材の搬送等の機械処理にとって適切な処理条件の決定が可能となり、シート材の詰まり等のトラブルを低減できる。
【0115】
<変形例のシート材情報検知装置>
図2に示すように、第1実施形態のシート材情報検知装置100は、加速機構によって所定の衝突速度を付与した運動部材1を支持部材14に支持させたシート材に衝突させる。衝突過程では、運動部材1がシート材に衝突して、シート材に撓みや圧縮の動的変形を与え、その過程の各段階における運動部材1の加減速等の運動を計測部17により計測する。特に、運動部材1がシート材に衝突する瞬間の衝突速度(v0)と、シート材の動的変形過程で受ける減速量とを検知し、シート材の動的挙動をシート材情報として出力する。また、必要に応じて、このような動的挙動のシート材情報を処理して、シート材の撓みや圧縮のばね定数等の機械的定数や、ヤング率等の物性値や、これらと相関の高いシート材の種類や状態等の諸情報を導出して出力することも好ましい。機械的性質に大きな影響を及ぼす水分量を算出することも可能である。
【0116】
運動部材は、所定の質量をもち、シート材との衝突により荷重印加を行う部材である。運動部材としては、衝突に際しての変形やガタがないものを用いる。運動部材の材質や形状は、シート材との衝突や付随する接触による磨耗や、塑性変形や弾性変形変形が最小限であり、じん性が高くクラックの発生がないものが好ましい。具体的には、材質としてはステンレス等の金属材料が好ましい。
【0117】
運動部材は、その形状としては球状もしくは棒状で、シート材と衝突する先端部は曲面とすることが好ましい。曲面とすることにより、衝突に際して運動部材もしくはシート材の振動により、衝突角度が変動した場合でも安定した衝撃印加が可能であり、磨耗も局所的なものは少なくなり平準化される。曲面には、一部平坦部を設けてもよい。平坦部を衝突させることで、衝突部分のシート材を均一に圧縮し、シート材の密度むらに起因する誤差を低減できる。
【0118】
運動部材は、衝突に際してシート材と接触している間は、できるだけ他の部材や周辺との力学的な結合が小さい事が好ましい。力学的な結合とは、例えば、部材同士が直接擦れあうことや、磁気や静電気力等により相互に力を及ぼしあうことや、空気や液体等の流体を介した粘性抵抗などである。これらの力学的な結合による作用力は、一般に運動部材の速度に対して非線形性を持つため、計測された運動からシート材の特性を解析するための信号処理において、複雑な解析を必要とするためである。
【0119】
尚、運動部材の速度に対する影響が比較的単純であるもの、例えばばね力による結合や重力の影響などは、作用力がほぼ線形で、信号処理により作用力成分を除去することが容易であるから許容される。
【0120】
運動部材は、衝突に際してシート材以外との力学的な結合が極力少なく、スムーズに運動可能なように支持される。運動部材の運動は、直線的動作または回転動作が好ましい。運動部材の支持においては、第2実施形態で説明した回転動作可能な軸受けの方が一般に運動抵抗が小さく安定しており、運動のばらつきが小さい。
【0121】
さらに、運動部材には、好ましくは、計測手段による運動の計測が容易なように計測補助部を設ける。計測補助部とは、例えば計測手段が光学的なものである場合は、反射板や遮蔽板、目盛りなどである。
【0122】
加速機構は、運動部材に所定の速度を付与する。シート材との衝突における最初の接触時の速度である衝突速度(v0)が最適値となるように、重力や振動、諸々の運動抵抗の影響を考慮して加速機構と運動部材との組み合わせを定める。
【0123】
衝突速度(v0)は、運動部材がシート材に圧痕等を残さない範囲で、シート材の剛性を鑑みて適宜決定されるが、衝突時の加速度は可能な限り小さいことが好ましい。シート材の厚みばらつきや、シート材情報検知装置100の固定精度などに起因して運動部材の衝突までの運動距離が変動した場合でも、安定した速度での衝突が可能だからである。衝突速度(v0)にもよるが、好ましい範囲としては、運動距離1mmについて、速度の変動が5%以内、より好ましくは1%以内の加速度がよい。
【0124】
加速度を小さくする方法としては、加速機構による加速と、重力による加減速とを適宜相殺して用いる。加速機構により付与される運動部材の運動は、できるだけ一軸方向のみとするのが、後工程での運動部材の運動の計測とその解析の簡便化の点で好ましい。この観点から言えば、もっとも好ましいのは第1実施形態で説明した直線的な運動である。
【0125】
また、回転軸を中心に運動部材をスイングさせる回転的な運動も好ましいが、この場合は回転半径を可能な範囲で大きくして衝突位置のずれによる角度ずれを抑制することが望ましい。以上を鑑みて、加速機構として最も好適な例は、コイルばねを印加用ばねとして用い、圧縮により加速のためのエネルギーを蓄積し、その解放により運動部材に運動エネルギーを付与して加速する。印加用ばねの圧縮/解放には、カムとモーターを用いるのがよい。また、加速機構として他の好ましい例は、ソレノイド等の磁気機構である。
【0126】
このような衝突は、1回のシート情報検知に際して1回でもよいが、好ましくは複数回行う。複数回の衝突を行う場合、同一値の衝撃力を印加することで、出力値を平均化して精度を上げることも好ましい。より好ましくは、運動部材を、少なくとも二種類の異なる衝突速度で複数回シート材に衝突させる。これにより、シート材の挙動の荷重印加速度依存性を計測し、シート材の粘弾性の情報を抽出できる。従って、運動部材に少なくとも二種類の異なる衝突速度を付与する変速機構を設けることが好ましい。変速機構の好ましい例は、印加用ばねとカムとモーターによる加速機構において、カムを多段とし、印加用ばねに複数の異なる圧縮量を与えて、その解放時に異なる速度を付与する。複数回の衝突は、シート材の複数の個所に同時、あるいは時間差を設けて衝突させてもよい。シート材の複数の個所に衝突させて情報を検知することで、同一個所に複数回の衝突が起きることを回避し、一回目の衝突で発生するシート材の変形の影響を回避できる。
【0127】
シート材を支持する構造は、シート材の一部と接触して支持し、シート材の支持点を実質的な固定端とする機能を有する。より好ましくは、シート材を運動部材の衝突により撓み可能に支持する。具体的な例は、凸部12と凹部13とよりなる溝構造を持つ高い剛性を有する第1実施形態の支持部材14である。機能としては、凸部12とシート材を接触させて摩擦力により支持し、運動部材1との衝突によりシート材を凹部13の内部へと撓み変形させる。また、必要であれば、シート材を介して凸部12に圧接するサポート部材を別途設け、凸部12においてシート材を挟持して強固に支持させても良い。
【0128】
シート材の支持方法としては、シート材を一点もしくは一直線で支持してシート材の自由端側に衝撃を与える片持ちや、シート材を二点もしくは二直線で支持し二つの支持部の間に衝撃を与える両持ち式は好ましい態様である。特にシート材として紙を用いる場合などに顕著であるが、これら片持ち支持や両持ち支持といった支持部が二ヶ所以下の場合、シート材の漉き目などに起因する特性の異法性の影響を受ける。これを回避するためには、支持部を3ヶ所以上にして支持部の間に運動部材を衝突させるか、あるいは周状に支持してその内側に運動部材を衝突させる。
【0129】
また、シート材を介して運動部材と衝突する衝撃受け部材を設けることが好ましい。衝撃受け部材は、シート材に対して運動部材から加えられる力を受け止めて、挟まれるシート材に圧縮変形を発生させる台座である。圧縮変形とは、シート材の厚み方向に加えた力による、同じ厚み方向の変形を指す。衝撃受け部材は、具体的には、運動部材1と対向する方向に平面もしくは緩やかな曲面を持ち高い剛性を有する第1実施形態の対向部材15である。上述した支持部材の一部を対向部材としても良く、例えば溝構造の凹部13で対向部材を代用しても良い。
【0130】
支持部材や対向部材には、圧電素子等の感圧センサを取り付けておくのも好ましい。これにより、シート材の接触や運動部材の衝突を感知し、計測部のデータ取得タイミングの設定など、情報取得の補助情報を得ることができる。
【0131】
運動部材の運動を計測する計測部は、シート材の運動過程での運動部材の加減速の少なくとも一部を計測する。すなわち、加速機構により所定の速度を付与した運動部材がシート材に衝突してシート材に撓み変形や圧縮変形と言った動的変形を与える過程で、運動部材の速度または位置を計測する。好ましい計測対象は、運動部材の位置の時間変化、運動部材の速度、特に、衝突直前からシート材に接触している間の速度変化を精密計測できるものが好ましい。より好ましくは、シート材の反発によりシート材との接触状態から離脱した後までの速度変化を追えるものが好ましい。また、もうひとつの好ましい要件は、計測部の運動部材に対する力学的な結合が小さいことである。以上の要件より、計測手段としては光学的な検出装置が好ましい。
【0132】
光学的な検知装置としては、例えば発光部と受光部を持ち、両者の間の光路内に運動部材もしくは運動部材に設けた遮光板を配し、運動部材の運動によって遮光状態が変化することを検知する透過型の光学センサを用いてもよい。
【0133】
他の例としては、発光部と受光部を持ち、運動部材もしくは運動部材に設けた反射板に照射した光の反射から計測する反射型装置を用いてもよい。この構成では、反射板に設けたマークや目盛りを追尾して速度を計測する方法や、反射光量により移動を計測することもできる。さらに、より好ましくは、レーザードップラー速度計を用い、反射光の干渉により高精度に運動部材の速度を計測する。
【0134】
シート材とは、紙(普通紙、光沢紙、コート紙、再生紙、など)、樹脂等のフィルム、OHTシートなどであり、シート状になった画像記録メディアを主に対象とする。所定寸法にカットされたもの(カット紙)、ロール状に巻かれたもの(ロール紙)など、形態は問わない。また、一枚の物であっても、二枚以上が重なって貼り合わされたものでもよい。本明細書中では、所定寸法にカットされたシート材をその一例として説明している。
【0135】
シート材情報とは、シート材処理において必要となるシート材に関する情報の全てが含まれる。特に重要なものは、主に物理的な性質や形状およびそれに関連する諸情報である。このような情報の例を列挙すると、シート材の厚み、密度、弾性率、粘性、振動特性、凹凸、表面粗さ、状態、変形状態、強度、弾性変形/塑性変形のし易さ、伸び量、色味、変色、反射率、変形(伸び、屈曲、つぶれ、破断、折れ曲がりなど)、透過率、カールの状態、気体や液体の透過性、熱拡散率や熱容量等の熱物性、などである。紙の場合、繊維、填量、コート層等のむらに関する情報も含まれる。
【0136】
また、含水率は、シート材の物理的な性質や形状に大きな影響を与えるので、とりわけ重要な属性である。シート材情報として、他に重要なものは、前記物性に影響を与える埋設物の情報である。埋設物の例を列挙すると、IDタグ等の素子類、押し花や木の葉等の自然物などである。他には、既に形成された画像、異物の付着、汚れ、メディアのサイズや形状、端部等の折れ曲がり、切断や穴あけ等の加工状態、ラミネートやコーティング、ステイプル等の付着である。また、面内方向に何枚かのメディアが貼り合わせられていたり、2枚以上が全部又は一部重なっていたりするかどうか等も重要な情報である。
【0137】
シート材処理装置の例は、複写機、レーザービームプリンタ、インクジェットプリンタ等、シート材に対して、文字や映像等を記録する画像形成装置である。現在の代表的な画像形成装置では、処理工程の一環としてカール補正や、スタック、製本のためのソート、パンチ穴あけ、ステイプル等が行われることも一般的である。以上述べたように、シート材処理とは、セットされるメディアが画像形成装置より排出されるまでの全プロセスを対象とする。
【0138】
また、シート材処理の他の例は、シート材に記録された内容を読み取ることである。シート材に記録された内容とは、画像や文字、刻印、磁気記録されたデータ類、埋設されたIDタグ等に記録されたデータなど、種類や形態を問わない。
【0139】
また、シート材処理装置の他の例は、シート材を搬送してシート材に記録された情報を読み取る装置(所謂ドキュメントスキャナーなど)、紙幣や切符等の繰り出し装置、シート材の折り畳みや穴あけ等の加工を行う各種加工装置がある。
【0140】
シート材処理装置では、シート材情報検知装置で得られたシート材情報に基づき、シート材の処理条件を変更、調整もしくは制御する。特に、シート材情報として得られるシート材の撓み変形や圧縮変形の動的挙動に関わる特性の情報は、シート材に対する撓みや圧縮の荷重印加を伴う機械的操作が行われるシート材の搬送や色材定着時の加圧等の工程の処理条件制御に有効に用いられる。
【0141】
シート材の撓み変形や圧縮変形の動的挙動に関わる特性の情報は、紙の様々の属性と深い関連性をもつため、他にも好適に制御できる処理条件は多数ある。処理条件の一例としては、電子写真におけるトナー、インクジェットプリンタにおけるインクを主とする、色材のメディアへの転写に関わる画像形成条件である。すなわち、シート材情報に対応して画像形成条件を変える、または画像形成の制御条件を変えるなどして、画像形成条件調整を行うことができる。例を挙げると、シート材の撓み易さから厚みを推算して導出し、厚みが小さいシート材には薄い紙に適したモードで画像を形成し、厚みが大きいシート材には厚い紙に適したモードで画像形成を行う。
【0142】
画像形成条件として制御する好ましい別の例は、第一に、色材の転写量の調整である。たとえば、メディアに対するトナーの供給量、インクの付着量などである。第二に、色材の定着条件の調整である。たとえば、定着温度、定着圧力などである。シート材処理装置では、以上のようにして決定されたシート材処理条件にて、シート材処理を行う。ただし、シート材処理条件に関しては、以上述べてきた条件に限るものではない。
【0143】
シート材処理条件の決定は、入力されるデータを処理してシート材処理装置の動作を決定するプロセッサにて行われる。当該プロセッサは、画像形成装置内、シート材処理装置内、シート材情報検知装置のいずれに設けても良い。外部コンピュータ等に機能を預託しても構わない。
【0144】
シート材情報検知装置において、出力される値が一定の閾値範囲を超えるなどして異常と判断される場合、これを示す異状信号を出力することも好ましい。この場合は、シート材処理装置のほかのセンサ類の出力やユーザーの入力値などを参照し、後の処理を決定する。例えば、異状が軽微と判断される場合は、適当なシート材処理の標準条件をあらかじめ決定しておき、この条件でシート材処理を行うのが好ましい。また、異状が重篤と判断される場合、シート材の処理を休止もしくは停止することもできる。いずれの場合でも、警報の発令、修理に関する情報を表示するなど、使用者に適切な情報を提供することが好ましい。
【0145】
第1実施形態のシート材情報検知装置100は、移動可能に支持されてシート材に対する衝突面が形成された運動部材1と、前記衝突面に対向させてシート材を支持する支持部材14とを備え、支持部材14に支持されたシート材に運動部材1を衝突させる。シート材への衝突過程における運動部材1の速度を検知する計測部17と、前記衝突過程における計測部17の出力を検知してシート材情報を出力する制御回路121とを備える。
【0146】
シート材情報検知装置100は、衝撃を印加されたシート材表面の挙動を、運動部材1が追跡して、計測部17が運動部材1の速度として拾い上げる。従って、運動部材1がシート材に衝突する際の運動量(速度×質量)と、衝突によるシート材表面の挙動(変形量、変形時間、変形過程、衝突時刻等)を直接的かつ正確に検知できる。
【0147】
第1実施形態における計測部17は、運動部材1の刻々の速度を検知するレーザードップラー速度計であるが、第2実施形態における計測部47は、運動部材31の刻々の位置を光学的に検知する光学センサである。
【0148】
第1実施形態における運動部材1は、直線運動が可能に支持されているが、第2実施形態における運動部材31は、回転運動が可能に支持されている。
【0149】
第1実施形態における支持部材14は、運動部材1の衝突によって撓み変形が可能にシート材を支持する。そして、撓み変形したシート材を介して運動部材1を受け止める対向部材15と、運動部材1を受け止める過程で対向部材15に作用する衝撃力を検知する圧電素子16とを備える。
【0150】
第1実施形態における制御回路121は、圧電素子16の出力に基いて前記衝突過程におけるシート材の圧縮過程の開始を検知し、前記圧縮過程における計測部17の出力に基いてシート材情報を出力する。
【0151】
第1実施形態における圧電素子16は、前記衝突過程におけるシート材の撓み抵抗が差し引かれた衝撃力を検知する。制御回路121は、圧電素子16の出力に基いて衝突過程におけるシート材の圧縮過程の開始を検知し、前記圧縮過程における計測部17の出力と圧電素子16によって検知された衝撃力とに基いてシート材情報を出力する。
【0152】
第1実施形態における圧電素子16は、前記衝突過程におけるシート材の撓み抵抗が差し引かれた衝撃力を検知する。制御回路121は、前記衝撃力のピーク値が予め定めたしきい値を越える場合には、検知された前記衝撃力に基いてシート材情報を出力する。
【0153】
第1実施形態における制御回路121は、印加用ばね4を制御して少なくとも2種類の衝突速度を設定するとともに、運動部材1を連続して複数回シート材に衝突させる。
【0154】
画像形成装置300は、シート材情報検知装置100と、シート材情報検知手段100によってシート材情報を検知されたシート材を処理する画像形成プロセス部340とを備える。さらに画像形成装置300は、シート材情報に基いて画像形成プロセス部340におけるシート材の処理条件を調整する制御部120とを備える。
【0155】
シート材情報検知装置100は、シート材の表面に向かって移動可能に支持された運動部材1をシート材に向かって加速して衝突させる第1工程を実行する。次いで、シート材に衝突した後の運動部材1の位置と速度との少なくとも一方を検知してシート材情報を出力する第2工程を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】画像形成装置の構成の説明図である。
【図2】第1実施形態のシート材情報検知装置の構成の説明図である。
【図3】運動部材の衝突過程の説明図である。
【図4】運動検知部による検知結果の説明図である。
【図5】シート材情報検知装置の動作を説明するフローチャートである。
【図6】第2実施形態におけるシート材処理装置の制御のフローチャートである。
【図7】計測部と圧電素子とを用いたシート材情報出力の説明図である。
【図8】第3実施形態のシート材情報検知装置の構成の説明図である。
【符号の説明】
【0157】
1、31 運動部材
2、32 プレート
3、33 軸受け
4、5、6 加速手段(印加用ばね、モーター、カム)
7 位置出しホイール
8 貫通口
9 フォトインタラプタ
12 凸部
13 凹部
14 支持部材
15 衝撃受け部材(対向部材)
16 衝撃検知手段(圧電素子)
17 運動検知手段(計測部)
18 光源
19 受光部
20 反射板
23 第1搬送ガイド
24 第2搬送ガイド
25 搬送経路
100 シート材情報検知装置
300 シート材処理装置(画像形成装置)
340 処理手段(画像形成プロセス部)
【出願人】 【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
【出願日】 平成18年6月20日(2006.6.20)
【代理人】 【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫

【識別番号】100089510
【弁理士】
【氏名又は名称】田北 嵩晴


【公開番号】 特開2008−2857(P2008−2857A)
【公開日】 平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願番号】 特願2006−170769(P2006−170769)