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【発明の名称】 トルクの決定方法
【発明者】 【氏名】ゲルハルト ヨーゼフ フリューヴィルス

【氏名】トーマス カラー

【要約】 【課題】車両のシャフトに沿って形成されたトルク伝達経路を介して伝達されたトルクをより正確に決定し得る方法を提供する。

【構成】トルク伝達経路10の第1部位にある第1回転速度センサ18により回転位置信号が生成され、前記トルク伝達経路の第2部位にある第2回転速度センサ20により回転位置信号が生成される。前記トルク伝達経路を既知のトルクが伝達された時点で、瞬時に生成された前記回転位置信号を参照して第1の回転位置信号関連情報が決定される。当該決定された第1の回転位置信号関連情報をオフセット量とされる。その後、瞬時に生成された前記回転位置信号を参照して第2の回転位置信号関連情報が決定される。少なくとも前記オフセット量と第2の回転位置信号関連情報とに基づいて伝達トルクが算出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の少なくとも1つのシャフトに沿って形成されたトルク伝達経路(10)を介して伝達されたトルクの決定方法であって、
前記トルク伝達経路の第1部位に配置された第1回転速度センサ(18)により回転位置信号を生成するとともに、前記トルク伝達経路の第2部位に配置された少なくとも1つの第2回転速度センサ(20)により回転位置信号を生成するステップと、
前記トルク伝達経路を既知のトルクが伝達された時点で、瞬時に生成された前記回転位置信号を参照して第1の回転位置信号関連情報を決定し、当該決定された第1の回転位置信号関連情報をオフセット量とするステップと、
その後、瞬時に生成された前記回転位置信号を参照して第2の回転位置信号関連情報を決定し、少なくとも前記オフセット量と当該決定された第2の回転位置信号関連情報とに基づいて伝達トルクを算出するステップと、
を有することを特徴とする決定方法。
【請求項2】
請求項1記載のトルクの決定方法であって、前記回転位置信号を参照して複数の時点での前記各回転位置信号関連情報を決定するとともに前記トルク伝達経路の遊び量を決定するステップと、前記複数の時点での前記第1および第2の回転位置信号関連情報間の最大差分値を決定するステップと、を有し、
前記伝達トルクは、少なくとも前記オフセット量と前記第2の回転位置信号関連情報と前記遊び量とに基づいて決定されることを特徴とする決定方法。
【請求項3】
請求項2記載のトルクの決定方法であって、前記伝達トルクは、前記第2の回転位置信号関連情報から前記オフセット量と前記遊び量とを減算することによって算出されることを特徴とする決定方法。
【請求項4】
請求項2または3記載のトルクの決定方法であって、前記遊び量は、前記トルク伝達経路が負荷ゼロの状態になる間に測定された回転位置信号を参照するだけで決定されることを特徴とする決定方法。
【請求項5】
請求項2から4のうちのいずれか1項に記載のトルクの決定方法であって、前記遊び量は、ギアチェンジにより負荷反転が生じる間に前記トルク伝達経路で生成された回転位置信号を参照して決定されることを特徴とする決定方法。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか1項に記載のトルクの決定方法であって、前記オフセット量は、前記トルク伝達経路を介して伝達されるトルクがゼロになる時点で生成された回転位置信号を参照して決定されることを特徴とする決定方法。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか1項に記載のトルクの決定方法であって、前記オフセット量は、機械的な遊びを持つ前記トルク伝達経路の一部が遊び支点に接した時点で生成された回転位置信号を参照して決定されることを特徴とする決定方法。
【請求項8】
請求項1から7のうちのいずれか1項に記載のトルクの決定方法であって、前記オフセット量は、前記トルク伝達経路のうち計測対象の伝達経路が前記車両の駆動部と結合していない時点で生成された回転位置信号を参照して決定されることを特徴とする決定方法。
【請求項9】
請求項1から8のうちのいずれか1項に記載のトルクの決定方法であって、前記オフセット量は、前記車両がコーナリング状態にある間に生成された回転位置信号を参照して決定されることを特徴とする決定方法。
【請求項10】
請求項1から9のうちのいずれか1項に記載のトルクの決定方法であって、前記オフセット量は、前記車両の駆動速度が閾値を超えた時点で生成された回転位置信号を参照して決定されることを特徴とする決定方法。
【請求項11】
請求項1から10のうちのいずれか1項に記載のトルクの決定方法であって、少なくとも前記オフセット量と前記第2の回転位置信号関連情報とを参照して捩じり角を算出するステップを有し、
前記トルク伝達経路の所定の剛性に対して前記捩じり角をオフセットして前記伝達トルクを生成することを特徴とする決定方法。
【請求項12】
請求項1から11のうちのいずれか1項に記載のトルクの決定方法であって、算出された前記伝達トルクを閾値と比較し、前記伝達トルクが前記閾値に達しない場合に制御コマンドを生成して前記車両の音波伝達経路を遮断することを特徴とする決定方法。
【請求項13】
請求項1から12のうちのいずれか1項に記載のトルクの決定方法であって、前記第1および第2の回転位置信号関連情報の決定の際に前記回転位置信号のみが考慮され、前記第1および第2の回転位置信号関連情報は、非中断の測定動作期間中に生成されることを特徴とする決定方法。
【請求項14】
請求項1から13のうちのいずれか1項に記載のトルクの決定方法であって、
前記第1回転速度センサ(18)は第1制御部(301)と接続され、前記第2回転速度センサ(20)は第2制御部(302)と接続されており、
当該決定方法は、
前記車両のデータバスを介して前記第1回転速度センサおよび前記第2回転速度センサに送信された複数の通信データの各々の受信時を決定するステップと、
当該決定された受信時を平均化することによって前記第1制御部のクロック周波数と前記第2制御部のクロック周波数とをそれぞれ決定するステップと、
前記第1制御部のクロック周波数と前記第2制御部のクロック周波数との間の周波数差を決定するステップと、
測定された前記回転位置信号に加えて当該決定された周波数差を参照して前記第1および第2の回転位置信号関連情報を決定するステップと、
を含むことを特徴とする決定方法。
【請求項15】
請求項1から14のうちのいずれか1項に記載のトルクの決定方法であって、前記第1および第2回転速度センサの回転位置信号とともにデータバスを介して車両の制御部(30)に送信される通信データにこれに対応する送信タイムスタンプを付するステップを有し、
前記回転位置信号関連情報は、測定された前記回転位置信号に加えて前記送信タイムスタンプを参照して決定されることを特徴とする決定方法。
【請求項16】
請求項1から15のうちのいずれか1項に記載のトルクの決定方法であって、前記回転速度センサ(20)の少なくとも1つは、さらに車両の制動力制御または駆動動的制御に使用されることを特徴とする決定方法。
【請求項17】
少なくとも自己が持つシャフトに沿って伸長するトルク伝達経路を有する車両であって、請求項1から16のうちのいずれか1項に記載の決定方法に従って、前記トルク伝達経路を介して伝達されたトルクを決定するように構成された制御部(30)を備えることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動系のトルク伝達経路を介して伝達されるトルクの決定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シャフトの捻転(捩じり)を参照して回転シャフトのトルク変化を決定することは公知である。たとえば、回転速度センサとともにエンコーダ・ホイールをシャフトの両端部に取り付けて当該両端部間の一端に対する他端の相対的な捩じりを決定することができる。その相対的な捩じりは、シャフトによって伝達されるトルクとの直接的な関係を与える。
【0003】
しかしながら、そのようなプロセスでは、絶対的なトルク値を得ることはできない。すなわち、相対的な捻転または捩じりの測定によって相対的なトルク変化が得られるに過ぎない。公知のトルク決定方法の更なるデメリットは、計測されるトルクの伝達経路が有する機械的遊びが誤って伝達トルクとみなされるという点にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、回転位置信号に基づいて伝達トルクをより正確に決定し得る方法を提供することである。
【0005】
かかる目的は、請求項1の特徴を有する方法により達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の少なくとも1つのシャフトに沿って形成されたトルク伝達経路を介して伝達されたトルクの決定方法を提供する。前記トルク伝達経路の第1部位に配置された第1回転速度センサにより回転位置信号が生成されるとともに、前記トルク伝達経路の第2部位に配置された少なくとも1つの第2回転速度センサにより回転位置信号が生成される。前記トルク伝達経路を既知のトルクが伝達された時点で、瞬時に生成された前記回転位置信号を参照して第1の回転位置信号関連情報が決定され、当該決定された第1の回転位置信号関連情報は、以下、オフセット量と呼ばれる。その後、瞬時に生成された前記回転位置信号を参照して第2の回転位置信号関連情報が決定され、少なくともオフセット量と当該決定された第2の回転位置信号関連情報とに基づいてこの時点での伝達トルクが算出される。
【0007】
少なくとも前記オフセット量を参照し(すなわち、より早い時点での既知の伝達トルクに対する第1の回転位置信号関連情報を参照し)且つ第2の(現在の)回転位置信号関連情報を参照して特定の時点での伝達トルクの決定がなされる。さらに後の時点でオフセット量を考慮して前記伝達トルクの絶対値を計算することができる。以下に説明するように、遊びを持つ駆動系の部位をも考慮に入れて計算することができる。
【0008】
本発明の方法の特に効果的な利点は、車両に何らかの方法で配置された回転速度センサによって部分的にまたは略完全に所望の回転位置信号を供給できるという点にある。たとえば、ブレーキ力制御(アンチロック・ブレーキ・システム:ABS)または動的駆動制御(たとえば、電子安定化プログラム:ESP)に関連してそのような回転位置信号を供給することができる。
【0009】
公知の回転速度センサの典型的なパルス状信号が、たとえば、回転角等や速度に対応する連続的な2つの信号パルス間の時間間隔あるいはパルス繰り返し数を持つ回転位置信号としての役割を果たすことができる。複数個の回転速度センサの回転位置信号と回転信号との間の所定の関連情報(たとえば、差分、あるいは回転位置信号値やその平均値の商や比率)は、本願発明に係る回転信号関連情報として理解されるべきである。回転位置信号は、少なくとも一組のデータ値を形成し、これらデータ値は直接的または間接的に補い合う。
【0010】
発明の詳細な説明、図面あるいは従属請求項において本発明の有利な実施形態を説明する。
【0011】
本発明の有利な実施形態において、駆動系の部品(たとえば、トランスミッションや回転自在なヒンジ接続部)の遊びを考慮に入れるために、少なくとも前記第2の回転位置信号関連情報を決定する前に生成された回転位置信号に対して、複数の時点についてそれぞれ回転位置信号関連情報を決定する。このとき、計測対象の伝達経路についての特定の遊び量を決定し、複数の時点で決定された回転位置信号関連情報相互間の最大差分値を決定する。かかる場合、前記オフセット量、決定された第2の回転位置信号関連情報および遊び量に基づいて(その後の)瞬時伝達トルクが計算される。特に、伝達トルクは、第2の回転位置信号関連情報からオフセット量と遊び量とを減算することによって計算される。
【0012】
一般に、計測対象のトルク伝達経路に対しては、一度、遊び量を決定すれば十分であるが、機械的遊びを長期間観察することで駆動系における摩耗現象を検出することも可能である。
【0013】
効果的な一つの実施形態によれば、いわゆる、伝達経路の負荷ゼロ状態の解放長期観察によって遊び量が決定される。あるいは、単一の負荷ゼロ状態が続く間に、特にギアチェンジにより伝達経路に生じた負荷反転に応じて遊び量が決定される。
【0014】
更に効果的な一つの実施形態によれば、実質的にトルクが伝達経路を介して伝達されないことが分かる時点で前記オフセット量(第1の回転位置信号関連情報)が決定される。前記オフセット量を参照して伝達経路における異なる構成要素の機械的遊びの予想量を考慮に入れるために、伝達経路の構成要素が遊び支点に接触する時点でオフセット量を決定することが効果的である。
【0015】
特に、計測対象の伝達経路が車両の駆動部と非結合状態にある時点でオフセット量を決めることができる。たとえば、解放スラスト動作中、あるいは、車両のトルク伝達クラッチが解放されている期間の総輪駆動車のコーナリング中にオフセット量を決定すればよい。
【0016】
このようなオフセット量は、車速が所定の閾値を超えたときにのみ決定されることが好ましい。これにより、対応する回転位置信号関連情報を十分な精度で決定することが保証される。
【0017】
少なくとも、オフセット量および第2回転位置信号関連情報の決定値とを参照して捩じり角を計算するように伝達トルクの計算を実行することが好ましい。このとき、その捩じり角は、伝達トルクを得るために伝達経路の所定の剛性に対してオフセットされる。当該剛性に対する捩じり角のオフセットは、第2の回転位置信号関連情報の決定量およびオフセット量の相互オフセットの実行後あるいはその実行前に行われる。すなわち、第1および第2の回転位置信号関連情報を各剛性に対してオフセットし、その後、当該オフセットされた値から目的のトルクを決定することができる。
【0018】
更なる実施形態では、第1の回転位置信号関連情報(オフセット量)と第2の回転位置信号関連情報とを決定するために回転位置信号のみが考慮される。計測動作の中断後には、オフセット量を再度決定しなければならない。前記の第1および第2の回転位置信号関連情報は、回転位置センサから連続的に信号を受信する期間内に決定される。
【0019】
本発明の更なる形態によれば、第1回転速度センサは、第1制御部に接続され、第2回転速度センサは第2制御部に接続される。必ずしもトルク決定に直接関係するとは限らない膨大な数の通信データに対してそれぞれの受信時が決定される。そのような通信データは、車両のデータバス(たとえば、CAN)を介して第1制御部と第2制御部とに転送される。第1制御部と第2制御部のそれぞれの(実際の)クロック周波数は、決定された受信時を平均化することにより決定される。第1制御部のクロック周波数と第2制御部のクロック周波数との間の差が決定され、当該決定された周波数差を考慮しつつ計測された回転位置信号を参照して回転位置信号関連情報が決定される。回転速度センサはそれぞれ異なる制御部に接続されており、これら制御部は、当該制御部間のクロック周波数差が補償されるように互いに同期をとっている。
【0020】
本発明の更に他の形態によれば、回転速度センサの回転位置信号とともに通信データがデータバス(たとえばCAN)を介して車両の制御部に転送され、この通信データには、対応する通信タイムスタンプが付加されている。前記通信タイムスタンプを考慮に入れつつ、計測された回転位置信号を参照して回転位置信号関連情報が決定される。複数の制御部が互いに同期しているとは限らずに回転速度センサと関連付けされている場合であっても、信号情報ブロックの各々が対応する時間情報ブロックの各々とリンクしているため、回転位置信号あるいは対応する通信データの処理を時間的に同期して実行することができる。
【0021】
本発明による方法に基づいて、たとえば下記の応用が考えられる。
【0022】
(a)計算された伝達トルクを閾値と比較し、当該伝達トルクが閾値に到達していない場合にトルク伝達経路を解放して車両の音波伝達経路を遮断することができる。よって、本発明による方法は、計測対象のトルク伝達経路の実際の負荷ゼロ状態を確実に認識する点で特に効果的であることが分かる。かかる場合には、対応する制御部は、総輪駆動車の長手方向のトランスファーケースを解放して、たとえばトルク伝達経路によって形成された音波伝達経路を遮断することができる。これにより、トルク伝達経路に沿ったノイズの発生および伝達が効果的に回避できる。
【0023】
(b)計算された伝達トルクをトルク伝達クラッチの所望のトルク値と比較することにより、必要に応じて、所望の設定値とこれに対応するトルク伝達クラッチの制御パラメータとの間の関係を調整することができる。これにより、たとえば、総輪駆動車の駆動トルクの長手方向の伝達を担うクラッチを較正することができる。
【0024】
(c)特に長手方向に長いエンジンや後輪駆動あるいは総輪駆動の場合、駆動系に圧力が印可されそれが緩和するということが所定期間毎に繰り返し起こるときに負荷反転が発生し得る。新車の場合には、負荷反転の特性を測定しこれをエンジン制御機器に記録する。これにより、駆動系に起因する負荷反転を低減させることができる。しかしながら、車両が古くなり駆動系の調子が落ちたとき、負荷反転特性は変化してしまう。上昇した後に負荷反転の緩和で低減するトルクを測定することにより、本発明による方法に基づいて負荷特性に応じた車両エンジンの制御を行えば、経年変化に起因する特性変化に関わらず、そのような負荷反転に対抗することができる。いくつかの方法で、車両の激しい振動を積極的に減衰させることができる。というのも、当該振動は、結局のところ駆動系で不要なトルクの発生で起きた振動といえるからである。このような振動は、当該振動に応じて駆動トルクを変化させて積極的に中和することによりキャンセルし得るものである。
【0025】
(d)伝達トルクの決定のために本発明係る方法は自動トランスミッションにも使用できるという利点を持つ。たとえば、自動化されたスティック・トランスミッション、無段変速機(CVT)付きトランスミッションあるいはデュアルクラッチ・トランスミッションで使用可能である。このようなタイプの自動トランスミッションでは、シフト動作で伝達されたトルクは、車両のシフト動作を運転者に期待される感性に適合させるべく、可能な限り正確に把握しておく必要がある。また、特にトラックの自動シフトトランスミッションに関し、シフト動作の間にけん引力の中断期間を短縮化することが要求される。しかしながら、かかる目的のためには、実際に存在するトルクを段階的に低減させなければならない。本発明に係る方法に基づいて、実際の伝達トルクをシフト動作(伝達制御および駆動トルク制御)に対するベースとして使用できる。
【0026】
(e)本発明に係る方法を使用して駆動系で実際に伝達されたトルクを測定することにより、ブレーキ力の変調に基づいた駆動力調整処理の結果として導入されたブレーキトルクを決定することができる(たとえば、電気安定化プログラム:ESP)。これにより、駆動力調整処理をより良く制御することができ、また、車両は、より一層安定的に確実に本来の進行方向に戻ることができる。
【0027】
(f)エンジン制御のベースとして駆動系で測定されたトルクを使用することができる。通常、エンジントルクの計算にシミュレーション・モデルを使用できるが、このエンジントルクは当該エンジンの経年変化に大きく依存する。本発明に従って、(既知の)ギア比を用いて計算されたトルクを変換することにより、エンジントルクを正確にかつ妥当なものとして決定することができる。
【0028】
(g)車両の現実の負荷を文書化すれば、これを最終的には自動車販売店で取得することができる。このようなことは、駆動系内で実際に伝達されたトルクを常時または定期的に決定し、当該決定されたトルクの値を当該車両に記録しておくことで実現できる。これにより、特定の車両の摩耗現象に関する予想を立てることができるだけでなく、そのような値は、駆動系の構成を現実に状況により良く適合させるために膨大な数の車両につき統計的に価値あるものとすることができる。
【0029】
本発明は、少なくとも車両の駆動系の一部に沿って伸びるトルク伝達経路を持つ車両に係るものでもある。この車両は、上述したタイプの方法に従って、伝達経路を介して伝達したトルクを決定するように構成された制御部を有する。また、かかる目的のために、この車両は、専ら伝達トルクの決定に使用される少なくとも一つの回転速度センサを搭載しており、他の機能を発揮するための回転速度センサも有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図面を参照しつつ実施例の形態でのみ本願発明について以下に説明する。
【0031】
図1は、駆動コンポーネント12、入力シャフト14および少なくとも1つの出力シャフト16を有するトルク伝達経路10を概略的に示す図である。入力シャフト14は駆動コンポーネント12にトルクを伝達し、駆動コンポーネント12は当該トルクを出力シャフト16に順次伝達する。回転速度センサ18,20は、入力シャフトおよび出力シャフトにそれぞれ回転自在に接続されたエンコーダ・ホイール22,24各々の回転角度位置あるいは速度を監視し、それぞれに対応する回転位置信号を生成する。エンコーダ・ホイール22,24は、回転速度センサ18,20が付いた歯車であることが好ましく、回転速度センサ18,20は、それぞれ、当該歯車の歯が当該センサを横切る動きに基づいてパルス信号を生成する。このような回転速度センサ18,20は、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)用回転速度センサとして知られているが如きものである。回転速度センサ20は、車両に何らかの方法で搭載されたABSセンサであることが好ましい。制御部30は、回転速度センサ18,20の信号に基づいてトルク伝達経路10の動作を監視し、当該監視結果から、シャフト14,16によって伝達されたトルクを決定する。
【0032】
図2〜図4にそれぞれ異なる車両の構成を概略的に示す。図2の実施例によれば、トルク伝達経路10Aは駆動系40Aの一部であり、この駆動系40Aは、エンジン(内燃機関エンジン)42Aおよびシフトトランスミッション44Aを有している。エンジン42Aは、シフトトランスミッション44Aを介してトルク伝達経路10Aに作用する駆動トルクを生成する。トルク伝達経路10Aは、差動部12A、カルダン式シャフト14Aおよび半シャフト16Aの一部を含み、これらはそれぞれホイールに接続されている。差動部12Aは、カルダン式シャフト14Aから半シャフト16A,16Aの一方または双方へ駆動トルクを伝達する。以下により詳細に説明する本発明の方法に従って、制御部30Aは、回転速度センサ18A,20Aの信号に基づいてトルク伝達経路10Aを介して伝達されたトルクを決定する。
【0033】
回転速度センサ20A(たとえば、ABSセンサ)は、それぞれ、ホイール付近に配置される。回転速度センサ18Aは、本実施例で図示されるようにトルク伝達経路10Aの長手方向の軸上に配置される。斜線でハッチングされている回転速度センサ18A’は、それぞれ、回転速度センサ18Aの代替位置を示すものである。回転速度センサ18Aが差動部12Aに直接配置されるか、あるいは、エンジン42Aの方に配置されるかは重要ではない。自動トランスミッション、自動シフトトランスミッションあるいは手動トランスミッションでは、回転速度センサは、トランスミッション入力部あるいはトランスミッション出力部に組み込まれるのが標準仕様であるから、それら回転速度センサのうち少なくとも1つを回転速度センサ18Aまたは18A’として使用することができる。かかる場合、ハードウェアを追加することなく伝達トルクを測定することができる。しかしながら、前記の長手方向の軸上に回転速度センサが特になければ、回転速度センサ18Aを配置することが必要となる。
【0034】
たとえばシフトトランスミッションクラッチなどのクラッチは、測定系統に含まれないことが理想である。仮にクラッチが測定系統内に存在するとすれば、測定期間にスリップが生じないことを保証しなければならない。伝達トルクの測定には、トルク伝達経路10Aのトルクによる捩じりまたはトルク伝達経路10Aの捻転の際に強固な接続状態が生ずることが必要である。計測対象であるシャフトの1つが静止状態にあり、他のシャフトが回転可能であるという場合は許されない。
【0035】
図3には、2つのトルク伝達経路10BV,10BHを有する総輪駆動車両の他の実施例が概略的に示されている。トランスファーケース46Bは、図示しないクラッチ手段により駆動トルクを、(常時駆動される)後ろ車軸のトルク伝達経路10BHと(切替可能に駆動される)前車軸のトルク伝達経路10BVとに伝達する。トルク伝達経路10BV,10BHの構成要素は、図2のトルク伝達経路10Aの構成要素と実質的に同じである。回転速度センサ18Bは、トルク伝達経路10BHの長手方向軸上に配置される。たとえば、回転速度センサ18Bは、シフトトランスミッション44Bの出力部に配置されればよい。あるいは、後ろ車軸のトルク伝達経路10BHの長手方向軸上の他の位置に回転速度センサ(図3の符号18B’および18BH’)を配置してもよい。回転速度センサ20BV,20BHは、前車軸あるいは後ろ車軸のセンサ(たとえばABSセンサ)として何らかの形で既に設けられているものであり、各ホイールにあるいは各ホイールの近辺に配置される。制御部30Bは、本発明のトルク決定方法に従って、少なくとも、回転速度センサ18B,20BHの信号に基づいてトルク伝達経路10BHを介して伝達されたトルクを決定する。
【0036】
オプションとして、前車軸のトルク伝達経路10BVの長手方向分岐位置に回転速度センサ18BV’を配置してもよい。かかる場合、制御部30Bは、上記と同様に、回転速度センサ18BV’,20BVの信号に基づいて、トルク伝達経路10BVを介して伝達されたトルクを決定する。
【0037】
図4の実施例では、トルク伝達経路10Cは、エンジン42Cとシフトトランスミッション44Cとを有する駆動系40Cの一部である。トルク伝達経路10Cは、差動部12Cと、カルダン式シャフト14Cと、一組のホイールに接続された一組の半シャフト16Cとを含む。制御部30Cは、4個の回転速度センサ20C,20C,20C’,20C’から供給される信号に基づいて、トルク伝達経路10Cを介して伝達されたトルクを決定する。ここで、回転速度センサ(たとえばABSセンサ)20C,20Cは、それぞれ、ホイール付近の半シャフト16C上に設けられており、回転速度センサ20C’,20C’は、差動部12C付近に設けられている。この実施例では、長手方向の車軸用の速度センサは使用されることはない。
【0038】
本発明は、たとえば上記伝達経路(10,10A,10B)のような伝達経路を介して伝達されたトルクを決定する方法を与えるものである。車両が移動中であれば、上記回転速度センサが電気的なパルス信号を供給する。上記制御部は、これらパルス信号を受信する。各センサのパルス信号を所定の測定開始時点から連続的に計数し、各瞬時位相角または当該瞬時位相角からの角度変化を計算する。
【0039】
いわゆる3センサ配置法(図2または図3)により駆動系の長手方向軸に沿って伝達されたトルクを決定する場合、伝達経路の横断方向分岐位置にある2個のセンサ(たとえばABSセンサ20)を用いて当該方法により位相角φL,φRを計算する。そして、これら位相角φL,φRは、平均化された後、伝達経路の長手方向分岐位置にある回転速度センサ(たとえば回転速度センサ18)を用いて算出された対応する瞬時位相角φGESと関連付けられる。総位相角φGESは、以下の関係式に従って、瞬時回転位置信号関連情報として算出される。
【0040】
【数1】


【0041】
伝達経路を介して伝達されたトルクMKは、一般に、瞬時計算された総位相角φGES(またはその変化量)に比例し、また、伝達経路内の計測対象、言い換えれば、使用されるセンサ間に配置された伝達経路の一部の剛性cに比例するものである。この剛性cは、計測対象となる車両の型に対して検定測定(たとえば、歪みゲージを用いた測定)を1回行うことにより決定できる。そして、下記の関係式に従って瞬時伝達トルクMKが得られる。
【0042】
【数2】


【0043】
よって、総位相角φGES(またはその変化量)が大きいほどに、伝達トルクMKが大きくなる。
【0044】
横方向のトルク、特にホイールの出力シャフトのトルクMQLは、3センサ配置法(図2または図3)により、駆動系に沿った長手方向に伝達されたトルクMKに基づいて計算できる。たとえば差動部12,12A,12Bのような差動部が50:50(左側に対する右側の比率)のトルク分配で使用されたとすれば、ホイールの出力シャフトのトルクMQL,MQRは、下記関係式に従って、長手方向に伝達されたトルクMKの半分として得られる。
【0045】
【数3】


【0046】
差動部が一定のトルク分配、たとえば60:40(左側に対する右側の比率)で使用されたとすれば、下記関係式に従って、2つの横方向のトルクMQL,MQRを加算することにより長手方向のトルクMKが得られる。
【0047】
【数4】


【0048】
差動部が100%固定で使用されたとすれば、差動トルクは、左側ホイールの出力シャフトと右側ホイールの出力シャフトとで得られる。差動が100%で終了することになり次第、左側ホイールまたは右側ホイールの出力シャフトのトルクは、下記関係式に従い、位相角φKを位相角φL,φRと比較することにより計算できる。
【0049】
【数5】


【0050】
ここで、cLは、使用されるセンサ間の左側のトルク伝達経路の剛性であり、cRは、右側のトルク伝達経路の剛性である。
【0051】
上記に基づいて更にいわゆる2センサ配置法あるいは4センサ配置法について説明する。2個のセンサが単一方向にのみ伸びるトルク伝達経路(特に、図4に示されるような横方向に伸びる経路)に関連付けられている。たとえば、伝達経路の左側の横方向分岐位置の総位相角φGES,Lは、瞬時位相角φL,inner,φL,outerから計算することができる。これら瞬時位相角φL,inner,φL,outerは、各伝達経路の内側部分または外側部分に位置する回転速度センサ(たとえば、図4のセンサ20C’,20C)を参照して決定することができる。よって、左側の横方向分岐部分の総位相角φGES,Lは、下記関係式に従って計算することができる。
【0052】
【数6】


【0053】
したがって、右側の横方向分岐部分の総位相角φGES,Rは、下記式により得られる。
【0054】
【数7】


【0055】
伝達経路を介して伝達された(左側の横方向分岐部分または右側の横方向分岐部分の)トルクMQLまたはMQRは、それぞれ、総位相角φGES,LまたはφGES,Rに比例し、また、使用されるセンサ間の伝達経路内の測定対象である横方向分岐部分の剛性cLまたはcRにも比例する。
【0056】
【数8】


【0057】
所定の閾値速度(約3kph)を超えたときに、回転速度センサから測定信号のみが供給される必要があるので、その後の明確な伝達トルクの測定のために絶対値あるいはゼロ点を更に決定しなければならない。それ故、既知のトルクが伝達経路を介して伝達された時点で、瞬時に生成された回転位置信号を参照して第1の回転位置信号関連情報を決定する。そのような関連情報は、以下に説明するようにオフセット量(たとえば、総位相角またはのオフセット量φoffset)としての役割を果たす。かかるオフセット量としては、たとえば、(剛性cを経て変換後の)総位相角のオフセット量φoffset、あるいは、トルクのオフセット量Moffsetが挙げられる。その後の或る時点で、瞬時に生成された回転位置信号を参照して第2の回転位置信号関連情報(たとえば、瞬時総位相角φGES)を決定する。当該決定された第2の回転位置信号関連情報と少なくとも前記オフセット量とに基づいて、特に差分形式により、伝達トルクを計算する。
【0058】
上記した瞬時回転位置信号関連情報の計算方法(たとえば、上記式(1)に従って総位相角φGESを決定する方法)と同じ方法により、各時点で決定された、回転速度センサの回転位置信号あるいは位相角を参照して前記のオフセット量を決定することが可能である。
【0059】
前記オフセット量として使用される(第1の)回転位置信号関連情報は、間接的にのみ考慮される情報である。すなわち、(センサに固有の)異なるオフセット量は、各回転速度センサと関連するものとなる。そのようなオフセット量は、それぞれの場合に、その後に生成された回転位置信号(たとえば、式(1)により与えられる位相角φK,φL,φR)から減算される。説明の便宜上、以下、オフセット量は常に(全てのセンサに共通の)一つの値として考えるものとする。
【0060】
トルクが伝達していない時点(既知の伝達トルクがゼロの時点)では、オフセット量は特に簡単に決定することができる。オフセット量に関する伝達経路に存在し得る機械的遊びを考慮すれば(下記参照)、仮に、オフセット量を決定する時点で、遊びを持つ伝達経路の構成要素が遊び支点(play abutment)と接触していれば好都合である。この点に関しては、たとえば、車両の解放スラスト動作(open thrust operation)や、固有の最小ステアリング角を持つ総輪駆動車のコーナリングといった場合が可能性として存在し得る。
【0061】
解放スラスト動作について:
総輪駆動車の切替可能な車軸が解放されているとき(たとえば、トランスファーケースが完全に解放されているとき)、当該車軸のホイールは何ら駆動を受けずに押し引きされる。必然的に発生するベアリングの摩擦に起因して、当該切替可能な車軸に係合し且つ遊びを持つトルク伝達経路の構成要素は遊び支点に位置付けされる。したがって、同様のことが、単一車軸駆動を持つ車両のシフトトランスミッションのクラッチを解放する際や、解放トランスファーケース搭載の総輪駆動車のシフトトランスミッションのクラッチを解放する際(この際、両方の車軸のホイールが押し引きされる。)にも起こる。非連結状態の各車軸では前記の如き解放スラスト動作に対しては、回転速度センサの瞬時信号は、トルクがゼロの伝達を表すものとすることができる。このようなアプローチでは、車両が、たとえばブレーキをかけない状態で急勾配の坂道を下るときに、それと同時に加速しないことが重要である。
【0062】
固有の最小ステアリング角でのコーナリングについて:
総輪駆動車の場合は特に、厳しいコーナリングのとき(たとえば最小ステアリング角が220°を超えるとき)に或る特定の状況すなわち伝達トルクがゼロとなる状況が存在する。すなわち、厳しいコーナリングでは、前車軸および後ろ車軸は異なる路程を担うことになる。それ故、そのようなコーナリングでは、長手方向の張力の発生を避けるべくトランスファーケースは解放されている必要がある。したがって、総輪駆動車が或るステアリング角で発進するとき、前記切替可能な車軸のホイールについて解放スラスト動作が生じる。
【0063】
上記実施例では、計測対象のトルク伝達経路は、上記の通り、遊びを持つ構成要素(たとえば、トランスミッション、カルダン式ジョイント、定速ジョイントあるいはシャフトを他の構成要素に接続する部材等)を含み得る。当該伝達経路内の遊び現象を考慮して伝達経路に沿った相対的な捩じりや捻転から可能な限り正確にトルクが決定される。また、遊び量を更に減算することにより(たとえば、瞬時に決定された総位相角から位相クリアランス値φplayを減算することにより、あるいは、当該決定された総位相角からこれに対応する遊び量Mplay=c・φplayを減算することにより)、上記の伝達トルクの計算を行うという枠内で計測対象である伝達経路の総クリアランスを考慮することができる。
【0064】
伝達経路内の遊びを決定するために、第1の実施例では、計測対象である伝達経路の負荷ゼロの状態の遊びが決定される。負荷ゼロの状態は、たとえば、単一車軸動作時にシフトトランスミッションのクラッチが解放された場合や、計測対象の車軸の方向に切替可能な総輪動作を行うときにトランスファーケースのクラッチが解放された場合に起こり得る。一般に、そのような負荷ゼロの状態は、短時間(たとえば約1/10秒〜数秒の間)しか続かない。
【0065】
したがって、本発明の効果的な実施例によれば、瞬時センサ信号が参照される各時点について総位相角φGESが決定される。また、その結果得られる総位相角φGESを参照して当該決定された総位相角φGESのうちの最小値と最大値間の最大差分値が決定される。複数の時点で計測を行うことによって総遊び幅(total play range)を確実に検出することができ、また特に、計測対象である伝達経路が負荷ゼロの状態にあるときの遊び支点(左右回転方向への予想最大逆行量)をも確実に検出することができる。ところで、負荷ゼロ状態での回転位置信号関連情報は連続的になるので、総遊び幅は目に見える状態(長期の解放観察状態:open long-term observation)になる。よって、計算された総位相角φGESから決定された最大差分値ΔφGESは、発生した最大遊び量φplayに対応する。
【0066】
他の実施例では、決定された総位相角φGESのうちの最小値と最大値間の最大差分値は、負荷反転を伴うギアチェンジの間に決定される。よって、(総位相角φGESにそれぞれ対応する)回転位置信号関連情報は、駆動系の計測対象部分の遊びの総量が短時間で生じるギアチェンジの間に考慮されることとなる。
【0067】
前記のオフセット量と遊び量とを考慮に入れれば、上記の計算式を下記の如くより正確なものに変形することができる。
【0068】
総位相角の式は以下の通りである。
【0069】
【数9】


【0070】
伝達トルクの式は以下の通りである。
【0071】
【数10】


【0072】
そして、図5は、典型的な動作期間に回転速度センサのパルス信号(回転速度信号)を示す図である。信号S1は、半シャフトセンサ(たとえば、図1〜図4のセンサ20)の信号に対応している。また、信号S2は、長手方向のシャフトセンサの信号(状況に応じて、当該信号に差動部または他の伝達部の車軸減速率を乗算してもよい。また当該シャフトセンサは、たとえば、図1〜図3のセンサ18である。)に対応するか、あるいは、第2の半シャフトセンサ(たとえば、図4のセンサ20C’)の信号に対応している。図5の例では、差動センサのエンコーダ・ホイールは全て同じ構成を有し、車速は一定に維持されるものとする。よって、信号S1のパルス間隔DS1は、通常、信号S2のパルス間隔DS2に対応する。ここで、パルス信号は、見やすいように実際よりもパルス幅を大きくして示されている。結局、回転速度センサのパルス信号は、上記した位相角φと対応することに留意すべきである。
【0073】
期間tAの間、車両は通常動作状態にある。この通常動作状態では、ゼロよりも大きいトルクMTRNが伝達し、これにより計測対象のシャフト(またはトルク伝達経路の他の構成要素)が捩じり状態を示す。期間tAの終端で、車両はスラスト動作(期間tB)の状態に移行し、期間tBのうちの初期期間tB1でシャフトが緩和状態になり、続く期間tB2で遊びが形成される。すなわち、期間tB2では、遊びは、けん引状態に相当する第1の遊び支点から始まる。そして、期間tB2において、トルク伝達経路の構成要素でありスラスト動作に対応する第2の遊び支点に至る。シャフトの緩和と遊びの形成とに起因して、パルス間隔DS2は一時的に変化する(たとえば、パルス間隔DS2’へと若干大きくなる)。シャフトが緩和して遊びが完全に形成された後、パルス間隔DS2は再びパルス間隔DS1と対応することとなり、伝達トルクMTRNはゼロになる(期間tB3)。
【0074】
たとえば、時刻t1の時点で、上記制御部は、パルス信号の連続的な測定を開始してその後に伝達されたトルクMTRNを計算する。期間tBの終端では、車両は再び通常動作状態に変化する(期間tC)。この通常動作状態では、トルクMTRNが伝達される。期間tCのうちの初期期間tC1の間、遊びは再び逆回転方向に減少する。続く期間tC2では、シャフトは再び屈曲する。これら期間tC1,tC2の間、パルス間隔DS2は再び変化して特に減少することとなる(DS2’’になる)。遊びが減少してシャフトが屈曲した後は、パルス間隔DS2はパルス間隔DS1に対応するようになり、伝達トルクMTRNはゼロよりも大きくなる(期間tC3)。たとえば、時刻t2の時点で、上記制御部は、計測されたパルス信号S1,S2の間の関連情報ΔSに基づいて、瞬時に伝達されたトルクMTRNを正確に計算することができる。
【0075】
かかる目的のため、時刻t2の時点でのパルス信号S1,S2(または対応する位相角φ)は、たとえば差分形式により、時刻t1の時点でのパルス信号S1,S2と比較される。この接続状態で、時刻t1の時点でトルク伝達経路の構成要素は前述の第2の遊び支点に接触し、かかる時点でのパルス信号S1,S2の関連情報は上記の通りにオフセット量を形成する。遊びの総量(専ら第2の後退位置から第1の遊び支点への変化に起因するパルス信号の差分)は、かかる接続状態で生じ且つ決定することができる。このような遊びの総量は、たとえば、上記と同様に、特に長時間計測することで差分形式によって取り込むことが可能である。
【0076】
本発明の更に異なる態様について以下に説明する。
【0077】
全ての回転速度センサは単一の(共通した)制御部に接続され、且つ回転位置信号間の同期は何ら問題を起こさないものとする。しかしながら、制御部30は、サブモジュール301,302(図1)を含み、これらサブモジュール301,302はそれぞれ回転位置信号を受信し、データバスを介してデータ通信を実行している。たとえば、制御部302は、既存のABS制御部であり、回転位置信号を含む通信データをデータバスを介して制御部301に送信する。よって、かかる場合、全ての回転速度センサは単一の制御部に接続されていない。したがって、組み込み型制御部301,302のクロック周波数は互いに同期しているか、あるいは、両者のクロック周波数の差は補償され得る。かかる目的のため、データの受信時は、データバスを介して組み込み型制御部301,302に送信される膨大な量の通信データに対して決定される。これら受信時を平均化することで、組み込み型制御部301,302のそれぞれの(実際の)クロック周波数を決定し、これをタイム・クリティカルな回転位置信号を含む特定の通信データを受信するために利用することが可能になる。
【0078】
また、たとえば10ミリ秒の通信間隔でデータバスを介して送信されたメッセージが、受信機に10ミリ秒間隔で到来するとは限らない。その到来間隔はバスの負荷に応じて異なるし、極端な場合には、メッセージが受信機に全く到達しないことがある。回転速度センサの信号を確実に時刻同期処理するために、正確な位相角とタイムスタンプとに相当するパラメータを、回転速度センサから送出される通信データに含め、これをトルク計算を行う制御部(たとえば、制御部301)に送信することができる。その結果到来した位相角情報は制御部301のシステム時間と関連付けされるので、回転速度センサからの大量の信号を時間的に同期して処理することが可能になる。
【0079】
本発明の更に他の態様に関する問題として音波問題の発生がある。すなわち、トルク伝達経路が負荷ゼロの状態になったときに非常に容易に振動が発生するため、音波問題が発生する。本発明のトルク測定の際には負荷ゼロの状態が認められるため、その負荷ゼロの状態に応じて、伝達経路内のトランスファーケースのクラッチが、たとえばトルクが全く伝達されないために解放され得る。クラッチが解放されたとき、たとえば前車軸の駆動系と後ろ車軸の駆動系との間の音波伝達経路が遮断され、これにより音波問題を回避することができる。その後、たとえば制御部から要求指令を発することにより、伝達経路を閉じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明による方法を用いて決定されるトルクを伝達する車両駆動系の一部を示す概略図である。
【図2】本発明による方法を用いて決定されるトルクを伝達する第1の車両駆動系を示す概略図である。
【図3】本発明による方法を用いて決定されるトルクを伝達する第2の車両駆動系を示す概略図である。
【図4】本発明による方法を用いて決定されるトルクを伝達する第3の車両駆動系を示す概略図である。
【図5】回転速度センサによって生成される信号を示す概略図である。
【符号の説明】
【0081】
10,10A,10Bv,10BH,10C トルク伝達経路
12 駆動部
12A,12BH,12C 差動部
14 入力シャフト
14A,14BV,14BH,14C カルダン式シャフト
16 出力シャフト
16A,16BV,16BH,16C 半シャフト
18,18A,18B 回転速度センサ
18A’,18B’,18BV’,18BH’ 回転速度センサ(代替位置)
20,20A,20BV,20BH,20C 回転速度センサ
20C’ 回転速度センサ
22 エンコーダ・ホイール
24 エンコーダ・ホイール
30,301,302,30A,30B,30C 制御部
403a,40B,40C 駆動系
42A,42B,42C エンジン
44A,44B,44C シフトトランスミッション
46B トランスファーケース
【出願人】 【識別番号】507195195
【氏名又は名称】エンジニアリング センター スタイアー ゲゼルシャフトミットベシュレンクターハフトゥング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【出願日】 平成19年6月12日(2007.6.12)
【代理人】 【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦


【公開番号】 特開2008−20439(P2008−20439A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2007−154916(P2007−154916)