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【発明の名称】 触覚センサ、触覚センサの製造方法および触覚センサユニット
【発明者】 【氏名】山下 馨

【氏名】パブロ バッカロ

【氏名】野間 春生

【要約】 【課題】外圧の大きさおよび方向を高感度で検出することができるとともに製造が容易な触覚センサ、およびその製造方法ならびに触覚センサユニットを提供することである。

【構成】触覚センサ100は、カンチレバーCLおよびエラストマー層105を有する。カンチレバーCLは、ノンドープ層103aおよびドープ層103bを有する。ドープ層103bの格子定数はノンドープ層103aの格子定数より小さい。これにより、カンチレバーCLは湾曲している。ドープ層103bは、結晶シリコン膜にホウ素を添加することにより形成されている。エラストマー層105に外圧が加わることにより、カンチレバーCLが変形する。カンチレバーCLが変形することにより、ドープ層103bのピエゾ抵抗が変化する。したがって、ドープ層103bのピエゾ抵抗の変化を検出することにより、触覚センサ100に作用する外圧の大きさおよび方向を検出することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に第1の膜からなる支持部および第2の膜からなる可動部をこの順に備え、
前記第2の膜は半導体材料からなり、第1の格子定数を有する第1の層と、第1の格子定数よりも小さな第2の格子定数を有する第2の層とを順に含み、前記第1および第2の層の少なくとも一方は、不純物元素の添加により一導電型を有し、
前記第1の格子定数と前記第2の格子定数との差に起因して前記可動部が湾曲するとともに、前記可動部の一部が前記支持部を介して前記基板に固定され、
前記基板上の前記支持部および前記可動部が弾性を有する被覆層で封止されたことを特徴とする触覚センサ。
【請求項2】
前記基板は結晶半導体からなり、前記第1の膜は酸化膜からなり、前記第2の膜は結晶半導体からなることを特徴とする請求項1記載の触覚センサ。
【請求項3】
前記可動部の前記第1および第2の層のうち一導電型を有する層に接触するように設けられた第1の電極および第2の電極をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2記載の触覚センサ。
【請求項4】
前記被覆層はエラストマーからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の触覚センサ。
【請求項5】
共通の基板と、
前記基板上にそれぞれ異なる向きに設けられた複数の触覚センサとを備え、
前記複数の触覚センサの各々は、前記基板上に第1の膜からなる支持部および第2の膜からなる可動部をこの順に備え、前記第2の膜は半導体材料からなり、第1の格子定数を有する第1の層と、第1の格子定数よりも小さな第2の格子定数を有する第2の層とを順に含み、前記第1および第2の層の少なくとも一方は、不純物元素の添加により一導電型を有し、前記第1の格子定数と前記第1の格子定数との差に起因して前記可動部が湾曲するとともに、前記可動部の一部が前記支持部を介して前記基板に固定され、
前記基板上の前記複数の触覚センサは、弾性を有する被覆層で封止されたことを特徴とする触覚センサユニット。
【請求項6】
基板上に第1の膜、および半導体材料からなる第2の膜を順に備える積層基板を用意する工程と、
前記第2の膜に不純物元素を添加することにより、前記第2の膜を第1の格子定数を有する第1の層と、前記第1の格子定数よりも小さな第2の格子定数を有する第2の層とに分離するとともに、前記第1および第2の層の少なくとも一方を一導電型に転換させる工程と、
前記第2の膜の所定領域を取り囲むように前記第2の膜の領域を除去する工程と、
前記第1の膜を一部の領域を除いて除去することにより、前記第2の膜の一部が前記第1の膜を介して前記基板に固定された状態で前記第1の格子定数と前記第2の格子定数との差に起因して前記第2の膜の前記所定領域を湾曲させる工程と、
前記基板上の前記第1の膜および前記第2の膜を弾性を有する被覆層で封止する工程とを備えたことを特徴とする触覚センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚センサ、触覚センサの製造方法および触覚センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロボットの手足等には触覚センサが用いられている。例えば、特許文献1に記載されている触覚センサにおいては、半導体基板上に層間絶縁膜が形成され、層間絶縁膜上に、複数の下部電極および支持部材によって支持される上部電極が配置されている。また、上部電極上には複数の突起が形成されている。
【0003】
このような構成において、突起が対象物に触れることにより上部電極が変形し、上部電極と下部電極との間の静電容量が変化する。それにより、突起に加えられた力を検出することができる。
【特許文献1】特開2004−264172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、触覚センサの表面を押圧する力、すなわち触覚センサの表面に対して垂直な方向に働く力を検出することができる。しかしながら、触覚センサの表面に沿って働く力、すなわち触覚センサの表面に対して平行な方向に働く力を高感度で検出することができない。
【0005】
本発明の目的は、外圧の大きさおよび方向を高感度で検出することができるとともに製造が容易な触覚センサ、およびその製造方法ならびに触覚センサユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)第1の発明に係る触覚センサは、基板上に第1の膜からなる支持部および第2の膜からなる可動部をこの順に備え、第2の膜は半導体材料からなり、第1の格子定数を有する第1の層と、第1の格子定数よりも小さな第2の格子定数を有する第2の層とを順に含み、第1および第2の層の少なくとも一方は、不純物元素の添加により一導電型を有し、第1の格子定数と第2の格子定数との差に起因して可動部が湾曲するとともに、可動部の一部が支持部を介して基板に固定され、基板上の支持部および可動部が弾性を有する被覆層で封止されたものである。
【0007】
その触覚センサにおいては、被覆層に外圧が加わった場合、被覆層の内部応力が変化し、可動部が変形する。ここで、可動部となる第2の膜は半導体材料からなり、第1の層と第2の層とを順に含み、第1および第2の層の少なくとも一方は、不純物元素の添加により一導電型を有している。したがって、可動部を構成する第1および第2の層のうち一導電型を有する層をピエゾ抵抗素子として機能させることができる。この場合、上記一導電型を有する層のピエゾ抵抗の変化量を検出することにより、被覆層に加わる外圧の大きさを検出することができる。
【0008】
また、この触覚センサにおいては、可動部は、湾曲するとともに一部が支持部を介して基板に固定されている。この場合、被覆層に加わる外圧の方向によって、可動部の変形する方向が変わる。また、可動部の変形する方向によって、上記一導電型を有する層のピエゾ抵抗の変化の方向(増加または減少)が異なる。したがって、上記一導電型を有する層のピエゾ抵抗の変化の方向を検出することにより、被覆層に発生する応力の方向を判別することができる。
【0009】
つまり、この触覚センサにおいては、上記一導電型を有する層のピエゾ抵抗の変化量および変化の方向を検出することにより、触覚センサに作用する外圧の大きさおよび方向を高感度で検出することが可能となる。
【0010】
また、この触覚センサにおいては、第2の膜に不純物元素を添加することにより第2の膜に格子定数の異なる2つの層を形成している。それにより、第2の膜を湾曲させ、可動部を形成している。すなわち、この触覚センサにおいては、半導体材料からなる単一の膜(第2の膜)に不純物元素を添加することにより可動部が形成されている。
【0011】
この場合、エピタキシャル成長技術により積層した複数の膜により可動部を形成する場合に比べて、可動部の強度を格段に向上させることができる。これにより、触覚センサの信頼性が向上する。また、エピタキシャル成長技術を用いる必要がないので、容易かつ低コストで触覚センサを製造することができる。
【0012】
(2)基板は結晶半導体からなり、第1の膜は酸化膜からなり、第2の膜は結晶半導体からなってもよい。この場合、触覚センサを十分容易に製造することができる。また、基板に信号処理回路を形成することが可能となる。
【0013】
基板は結晶シリコンからなり、第1の膜はシリコン酸化膜からなり、第2の膜は結晶シリコンからなってもよい。
【0014】
この場合、SOI(Silicon On Insulator:絶縁体上半導体構造)基板を用いて触覚センサを製造することができる。それにより、触覚センサの製造コストをさらに低減することができるとともに、触覚センサの製造がさらに容易になる。
【0015】
第2の膜は4B族元素からなり、不純物元素は3B族元素または5B族元素からなってもよい。この場合、第2の膜の第1の層または第2の層が良好に一導電型を有することができる。
【0016】
(3)触覚センサは、可動部の第1および第2の層のうち一導電型を有する層に接触するように設けられた第1の電極および第2の電極をさらに備えてもよい。
【0017】
この触覚センサにおいては、第1および第2の電極を通して第2の膜の一導電型を有する層に一定の電流を供給した場合、可動部の変形により第1の電極と第2の電極との間の電圧が変化する。あるいは、第1および第2の電極に一定の電圧を印加した場合、可動部の変形により上記一導電型を有する層に流れる電流が変化する。したがって、可動部のピエゾ抵抗の変化量を、第1および第2の電極を通して電圧の変化または電流の変化として検出することができる。その結果、外圧の大きさを確実に検出することができる。
【0018】
(4)被覆層はエラストマーからなってもよい。この場合、被覆層に加わる外圧を可動部に確実に伝達することができる。それにより、外圧の大きさおよび方向をより高感度で検出することが可能となる。
【0019】
(5)第2の発明に係る触覚センサユニットは、共通の基板と、基板上にそれぞれ異なる向きに設けられた複数の触覚センサとを備え、複数の触覚センサの各々は、基板上に第1の膜からなる支持部および第2の膜からなる可動部をこの順に備え、第2の膜は半導体材料からなり、第1の格子定数を有する第1の層と、第1の格子定数よりも小さな第2の格子定数を有する第2の層とを順に含み、第1および第2の層の少なくとも一方は、不純物元素の添加により一導電型を有し、第1の格子定数と第1の格子定数との差に起因して可動部が湾曲するとともに、可動部の一部が支持部を介して基板に固定され、基板上の複数の触覚センサは、弾性を有する被覆層で封止されたものである。
【0020】
この触覚センサユニットにおいては、上記の第1の発明に係る触覚センサと同様の構成を有する複数の触覚センサがそれぞれ異なる向きに設けられている。この場合、各触覚センサのピエゾ抵抗の変化量および変化の方向を検出することにより、触覚センサユニットの表面に平行な方向に働く力をより高感度で検出することができる。すなわち、触覚センサユニットに作用する外圧の大きさおよび方向をより高感度で検出することが可能となる。
【0021】
(6)第3の発明に係る触覚センサの製造方法は、基板上に第1の膜、および半導体材料からなる第2の膜を順に備える積層基板を用意する工程と、第2の膜に不純物元素を添加することにより、第2の膜を第1の格子定数を有する第1の層と、第1の格子定数よりも小さな第2の格子定数を有する第2の層とに分離するとともに、第1および第2の層の少なくとも一方を一導電型に転換させる工程と、第2の膜の所定領域を取り囲むように第2の膜の領域を除去する工程と、第1の膜を一部の領域を除いて除去することにより、第2の膜の一部が第1の膜を介して基板に固定された状態で第1の格子定数と第2の格子定数との差に起因して第2の膜の所定領域を湾曲させる工程と、基板上の第1の膜および第2の膜を弾性を有する被覆層で封止する工程とを備えたものである。
【0022】
その製造方法において製造された触覚センサにおいては、被覆層に外圧が加わった場合、被覆層の内部応力が変化し、第2の膜の湾曲する部分(以下、湾曲部と称する)が変形する。ここで、第2の膜は半導体材料からなり、第1の層と第2の層とを順に含み、第1および第2の層の少なくとも一方は、不純物元素の添加により一導電型を有している。したがって、上記一導電型を有する層をピエゾ抵抗素子として機能させることができる。この場合、上記一導電型を有する層のピエゾ抵抗の変化量を検出することにより、被覆層に加わる外圧の大きさを検出することができる。
【0023】
また、この製造方法により製造された触覚センサにおいては、被覆層に加わる外圧の方向によって、第2の膜の湾曲部の変形する方向が変わる。また、湾曲部の変形する方向によって、上記一導電型を有する層のピエゾ抵抗の変化の方向(増加または減少)が異なる。したがって、上記一導電型を有する層のピエゾ抵抗の変化の方向を検出することにより、被覆層に発生する応力の方向を判別することができる。
【0024】
つまり、この製造方法により製造された触覚センサにおいては、上記一導電型を有する層のピエゾ抵抗の変化量および変化の方向を検出することにより、触覚センサに作用する外圧の大きさおよび方向を高感度で検出することが可能となる。
【0025】
また、この製造方法においては、第2の膜に不純物元素を添加することにより第2の膜に格子定数の異なる2つの層を形成している。それにより、第2の膜を湾曲させている。すなわち、この製造方法においては、半導体材料からなる単一の膜(第2の膜)に不純物元素を添加することにより湾曲部を形成している。
【0026】
この場合、エピタキシャル成長技術により積層した複数の膜により湾曲部を形成する場合に比べて、湾曲部の強度を格段に向上させることができる。これにより、触覚センサの信頼性が向上する。また、エピタキシャル成長技術を用いる必要がないので、容易かつ低コストで触覚センサを製造することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、第2の膜の一導電型を有する層のピエゾ抵抗の変化量および変化の方向を検出することにより、触覚センサに作用する外圧の大きさおよび方向を高感度で検出することが可能となる。
【0028】
また、本発明においては、第2の膜に不純物元素を添加することにより第2の膜に格子定数の異なる2つの層を形成している。それにより、第2の膜を湾曲させている。すなわち、半導体材料からなる単一の膜(第2の膜)に不純物元素を添加することにより第2の膜を湾曲させている。
【0029】
この場合、エピタキシャル成長技術により複数の膜を積層し、当該積層膜を湾曲させる場合に比べて、湾曲部の強度が格段に向上する。これにより、触覚センサの信頼性が向上する。また、エピタキシャル成長技術を用いる必要がないので、容易かつ低コストで触覚センサを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態に係る触覚センサおよび触覚センサユニットについて図面を参照しながら説明する。
【0031】
(1)触覚センサ
(a)製造方法
図1〜図7は、本発明の一実施の形態に係る触覚センサの製造方法を示す工程図であり、(a)は模式的断面図、(b)は模式的平面図である。なお、図1〜図7および後述する図8においては、位置関係を明確にするために互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印を付している。X方向およびY方向は水平面内で互いに直交し、Z方向は鉛直方向に相当する。
【0032】
まず、図1に示すように、SOI(Silicon On Insulator:絶縁体上半導体構造)基板1000を用意する。SOI基板1000は、結晶シリコン基板101、埋め込み酸化膜102および結晶シリコン膜103を有する。結晶シリコン膜103の厚さは、例えば、200nmである。埋め込み酸化膜102は、例えば酸化シリコン(SiO)からなる。
【0033】
次に、図2に示すように、熱拡散またはイオン注入により結晶シリコン膜103にホウ素(B)を添加する。これにより、結晶シリコン膜103は、ノンドープ層103aとp型のドープ層103bとに分かれる。ドープ層103bの厚さは、例えば、100nmである。また、ドープ層103bにおけるホウ素の濃度は、例えば、0.2原子%(10/cm)である。
【0034】
次に、図3に示すように、SOI基板1000の一端側でドープ層103b上に、フォトリソグラフィ、および蒸着またはスパッタリングにより矩形の電極104a,104bを形成する。電極104a,104bは、例えば、アルミニウム(Al)からなる。
【0035】
次に、図4に示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、電極104a,104b下の領域および中央部の略U字状の領域を除くノンドープ層103aおよびドープ層103bを除去する。なお、エッチングとしては、例えば、ウェットエッチング法を用いることができる。エッチング液としては、例えば、2,6-ヒドロキシナフトエ酸(HNA)を用いることができる。なお、上記略U字状に残されたノンドープ層103aおよびドープ層103bが後述するカンチレバーCLとなる。
【0036】
次に、図5に示すように、エッチングにより埋め込み酸化膜102の所定の領域を除去する。エッチング液としては、例えば、フッ化水素(HF)を用いることができる。
【0037】
ここで、上述したように、ドープ層103bは、結晶シリコン膜103(図1)にホウ素を添加することにより形成されている。また、ドープ層103bにおけるホウ素の濃度は、0.2原子%(1020/cm)に設定されている。これにより、ドープ層103bの格子定数は、シリコン(Si)の格子定数(約5.4295Å)に比べて約0.0028Å小さくなっている。
【0038】
この場合、ノンドープ層103aとドープ層103bとの境界面において格子定数の差に起因して歪が発生する。そのため、埋め込み酸化膜102の上記所定の領域を除去した場合、上記境界面の歪を緩和するように、図6に示すようにノンドープ層103aおよびドープ層103bの一端側が上方に向かって湾曲する。これにより、XY平面において略U字状でかつXZ平面において湾曲するカンチレバーCLが形成される。
【0039】
なお、例えば、カンチレバーCLのXZ平面における曲率半径は約400μmであり、カンチレバーCLの長手方向の長さは約600μmである。また、ノンドープ層103aとドープ層103bとの間に発生する歪は、例えば、約5×10−4である。
【0040】
次に、図6の状態で、水洗浄、IPA(イソプロピルアルコール)洗浄、およびt−ブチルアルコール洗浄を行う。その後、フリーズドライ(真空凍結乾燥)を行う。
【0041】
次に、図7に示すように、結晶シリコン基板101上で、埋め込み酸化膜102、ノンドープ層103a、ドープ層103bおよび電極104a,104bをエラストマー層105に埋設する。これにより、触覚センサ100が完成する。なお、エラストマー層105としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂またはシリコン樹脂等を用いることができる。本実施の形態においては、PDMS(ポリジメチルシロキサン:polydimethylsiloxane)樹脂を用いる。
【0042】
(b)外圧検出方法
次に、触覚センサ100(図7)の外圧検出方法について説明する。
【0043】
本実施の形態においては、略U字形状を有するp型のドープ層103bの一端に電極104aが形成され、他端に電極104bが形成されている。これにより、ドープ層103bを、ピエゾ抵抗素子として機能させることができる。
【0044】
図7の構成においては、エラストマー層105に外圧が加わることにより、エラストマー層105の内部応力が変化し、カンチレバーCLが変形する。それにより、ドープ層103bのピエゾ抵抗が変化する。ここで、電極104a,104bを通してカンチレバーCLのドープ層103bに一定の電流を供給した場合、カンチレバーCLの変形により電極104a,104b間の電圧が変化する。あるいは、電極104a,104b間に一定の電圧を印加した場合、カンチレバーCLの変形によりドープ層103bに流れる電流が変化する。したがって、このピエゾ抵抗の変化量を、電極104a,104bを通して電圧の変化または電流の変化として検出することができる。その結果、外圧の大きさを検出することができる。
【0045】
また、本実施の形態においては、カンチレバーCLは、一端側が斜め上方に向かって湾曲している。このため、例えば、エラストマー層105において、図7に示す矢印Aの方向にせん断応力が発生した場合、カンチレバーCLは曲率半径が大きくなるように変形する。一方、例えば、エラストマー層105において、図7に示す矢印Bの方向にせん断応力が発生した場合、カンチレバーCLは曲率半径が小さくなるように変形する。
【0046】
そのため、矢印Aの方向にせん断応力が発生した場合と矢印Bの方向にせん断応力が発生した場合とでは、ドープ層103bのピエゾ抵抗の変化の方向(増加する方向または減少する方向)が逆になる。つまり、ピエゾ抵抗の変化の方向を検出することにより、エラストマー層105に発生するせん断応力の方向を判別することができる。
【0047】
したがって、ドープ層103bのピエゾ抵抗の変化量および変化の方向を検出することにより、触覚センサ100に作用する力の大きさおよおび方向を正確に検出することが可能となる。
【0048】
(c)効果
以上のように、本実施の形態に係る触覚センサ100においては、SOI基板1000の結晶シリコン膜103にホウ素を添加することにより、カンチレバーCLを作製している。つまり、エピタキシャル成長技術を用いることなく、既製品(SOI基板1000)を用いてカンチレバーCLを作製することができる。したがって、容易かつ低コストで触覚センサ100を製造することができる。
【0049】
また、カンチレバーCLを構成するノンドープ層103aとドープ層103bとは、結晶シリコン膜103(図1)に形成されている。つまり、カンチレバーCLは、単一の結晶シリコン膜103によって形成されている。この場合、エピタキシャル成長技術により積層した複数の膜によりカンチレバーを形成する場合に比べて、カンチレバーCLの強度を格段に向上させることができる。これにより、触覚センサ100の信頼性が向上する。
【0050】
また、エピタキシャル成長技術を用いる必要がないので、例えば、SOI基板1000の結晶シリコン基板101に信号処理回路が形成されている場合にも、その信号処理回路を劣化および故障させることなく、カンチレバーCLを作製することができる。
【0051】
また、本実施の形態に係る触覚センサ100においては、エラストマー層105内においてカンチレバーCLが湾曲した状態で設けられている。この場合、エラストマー層105に加わる外力の方向によって、ドープ層103bのピエゾ抵抗の変化の方向(増加する方向または減少する方向)が異なる。
【0052】
そのため、ピエゾ抵抗の変化の方向を検出することにより、エラストマー層105に発生するせん断応力の方向を判別することができる。したがって、ドープ層103bのピエゾ抵抗の変化量および変化の方向を検出することにより、触覚センサ100に作用する力の大きさおよおび方向を高感度で検出することが可能となる。
【0053】
(2)触覚センサユニット
次に、本発明の一実施の形態に係る触覚センサユニットについて図面を参照しながら説明する。
【0054】
(a)構成
図8は、本実施の形態に係る触覚センサユニットを示す概略斜視図である。
【0055】
図8に示すように、本実施の形態に係る触覚センサユニット200は、図7の触覚センサ100と同様の構成を有する複数の触覚センサ201,202,203,204を含む。
【0056】
なお、図8の触覚センサユニット200においては、触覚センサ201,202,203,204は、共通の結晶シリコン基板101aおよび共通のエラストマー膜105aを有する。結晶シリコン基板101aには、触覚センサ201,202,203,204から出力される電圧信号または電流信号を処理するための処理回路(図示せず)が形成されている。
【0057】
本実施の形態においては、触覚センサ201のカンチレバーCL1と触覚センサ203のカンチレバーCL3とが互いに対向し、触覚センサ202のカンチレバーCL2と触覚センサ204のカンチレバーCL4とが互いに対向するように配置されている。
【0058】
また、触覚センサ201,203と触覚センサ202,204とは互いに直交する向きに配置されている。図8においては、カンチレバーCL1,CL3がX方向に沿うように触覚センサ201,203が配置され、カンチレバーCL3,CL4がY方向に沿うように触覚センサ202,204が配置されている。
【0059】
(b)効果
以上のように、本実施の形態に係る触覚センサユニット200においては、触覚センサ201,203が互いに対向しかつX軸方向に沿うように配置され、触覚センサ202,204が互いに対向しかつY軸方向に沿うように配置されている。
【0060】
この場合、4つの触覚センサ201〜204の検出結果に基づいて、触覚センサユニット200のXY平面上のあらゆる方向のせん断応力を検出することができる。また、4つの触覚センサ201〜204を設けることにより、外力の加わる位置およびエラストマー膜105a内の応力分布を詳細に検出することができる。これらの結果、触覚センサユニット200に作用する外圧の方向および大きさをより正確に検出することが可能となる。
【0061】
本実施の形態に係る触覚センサユニット200は、例えば、義手、義足またはロボットの手足(指)等の人口皮膚として効果的に用いることができる。
【0062】
例えば、触覚センサユニット200をロボットの手(指)の人工皮膚として用いた場合、ロボットが手(指)によって物体を保持する際に、物体の重量によってロボットの手(指)に作用する鉛直方向の力(せん断応力)の大きさを正確に検出することができる。したがって、ロボットの制御システムは、検出されたせん断応力に基づいて、物体が手(指)から落下することを防止できる最低限の握力を出力するようにロボットを制御することができる。
【0063】
このように、本実施の形態に係る触覚センサユニット200をロボットに設けた場合、ロボットが物体または人体に過剰な力を加えることを防止できるので、ロボットの動作を人間により近づけることが可能となる。また、ロボットが物体または人体に過剰な力を加えることを防止することにより、ロボットの安全性を格段に向上させることができる。
【0064】
(3)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0065】
上記実施の形態では、結晶シリコン基板101が基板に相当し、埋め込み酸化膜102が第1の膜に相当し、結晶シリコン膜103が第2の膜に相当し、カンチレバーCLが可動部に相当し、ノンドープ層103aが第1の層に相当し、ドープ層103bが第2の層に相当し、エラストマー層105,105aが被覆層に相当し、電極104a,104bが第1および第2の電極に相当し、結晶シリコン基板101aが共通の基板に相当し、触覚センサ201,202,203,204が複数の触覚センサに相当する。
【0066】
(4)他の実施の形態
上記実施の形態では、結晶シリコン膜103内の上部領域にp型不純物元素としてホウ素を添加した例について説明したが、これに限定されず、結晶シリコン膜103内の上部領域の格子定数が結晶シリコン膜103内の下部領域の格子定数よりも小さくなるように、結晶シリコン膜103内の上部領域または下部領域に他のp型またはn型の不純物元素を添加してもよい。
【0067】
例えば、他の不純物元素として、N(窒素)、Al(アルミニウム)、またはP(リン)等を用いてもよい。また、結晶シリコン膜103内の下部領域にp型またはn型の不純物元素を添加することにより、結晶シリコン膜103内の下部領域の格子定数を結晶シリコン膜103内の上部領域の格子定数よりも大きくしてもよい。
【0068】
また、結晶シリコン膜103は、ノンドープ層103aおよびドープ層103bが格子定数の差に起因して湾曲することができれば、単結晶シリコンからなってもよく、あるいは多結晶シリコンからなってもよい。
【0069】
また、結晶シリコン基板、酸化膜および結晶シリコン膜からなるSOI基板の代わりに、他の材料からなる積層基板を用いてもよい。例えば、SiC(炭化シリコン)基板、酸化膜およびSiC膜からなる積層基板を用いてもよい。
【0070】
また、積層基板の絶縁膜は酸化膜に限らず、窒化膜等の他の絶縁膜であってもよい。
【0071】
さらに、カンレレバーCLの形状はU字形状に限らず、V字形状、W字形状、他の任意の形状に形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、圧力を検知するセンサ等に効果的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】触覚センサの製造方法を示す工程図である。
【図2】触覚センサの製造方法を示す工程図である。
【図3】触覚センサの製造方法を示す工程図である。
【図4】触覚センサの製造方法を示す工程図である。
【図5】触覚センサの製造方法を示す工程図である。
【図6】触覚センサの製造方法を示す工程図である。
【図7】触覚センサの製造方法を示す工程図である。
【図8】触覚センサユニットを示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0074】
100 触覚センサ
101,101a 結晶シリコン基板
102 埋め込み酸化膜
103,103a 結晶シリコン膜
103b ドープ層
104a,104b 電極
105,105a エラストマー層
200 触覚センサユニット
201〜204 触覚センサ
1000 SOI基板
CL,CL1〜CL4 カンチレバー
【出願人】 【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
【出願日】 平成18年6月30日(2006.6.30)
【代理人】 【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人


【公開番号】 特開2008−8854(P2008−8854A)
【公開日】 平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願番号】 特願2006−182008(P2006−182008)