トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験

【発明の名称】 軸受装置
【発明者】 【氏名】中尾 宏志

【要約】 【課題】精度良く温度測定を行える、温度検出素子を備えた軸受装置を提供する。

【構成】温度センサ14の少なくとも一部が軸箱12内に埋設されているので、軸箱12からの温度センサ14への熱伝導性を向上させ、温度センサ14の温度を軸箱12の温度に近付けられる。特に、金属基板17が、熱伝導性樹脂板22を介してセンサ筐体15の内底面に密着しているので、熱伝達経路中の温度勾配を小さく抑えることができ、これにより金属基板17上の温度検出素子18の温度が軸箱12及び軸受13の温度に近づき、軸受13の温度を精度良く検出することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受と、
前記軸受を保持した軸箱と、
前記軸箱に取り付けられたセンサ筐体と、
前記センサ筐体に密着した金属基板と、
前記金属基板に実装された温度検出素子とを有することを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記センサ筐体と前記金属基板との間に熱伝導性樹脂を配置したことを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記軸箱と前記センサ筐体との間に熱伝導性樹脂を配置したことを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受装置。
【請求項4】
振動検出素子を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも温度検出素子を備えたセンサ付きの軸受装置に関するもので、温度検出素子から検出する温度から軸受の温度を推定して、軸受の焼付きや機械装置の異常を検出する場合に好適であり、特に信頼性が要求される鉄道車両や自動車、機械設備等に用いて適切に異常判定を行える軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両や自動車等の車軸を支持する軸受装置や機械設備等では、温度センサを用いて軸受装置や機械設備等の温度を測定して、軸受の焼付きや機械装置の異常を検出する技術が知られている。特許文献1に示すように、これら軸受装置や機械設備の温度を検出する温度センサを備えた温度センサ付軸受装置が種々提案されている。
【特許文献1】特開2006−58226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の軸受装置よれば、温度検出素子を収容したセンサ筐体を軸箱に埋設しているので、軸箱からセンサ筐体への熱伝導性を向上させ、軸受の温度を精度良く予想できる。ところで、本発明者によれば、温度検出素子の取り付け方法によっては、軸受と温度検出素子との温度勾配が大きくなり、高精度な温度検出を妨げる恐れがあることが確認された。
【0004】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、精度良く温度測定を行える、温度検出素子を備えた軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の軸受装置は、
軸受と、
前記軸受を保持した軸箱と、
前記軸箱に取り付けられたセンサ筐体と、
前記センサ筐体に密着した金属基板と、
前記金属基板に実装された温度検出素子とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明者の研究によれば、温度バラツキの原因の一つは、温度検出素子をガラスエポキシ樹脂基板に実装した際に、センサ筐体と温度検出素子との間に温度勾配が生じることであると判明した。そこで本発明者は、温度検出素子を金属基板上に実装し、金属基板をセンサ筐体に密着させることで、温度勾配を小さく抑えることができ、それにより高精度な温度検出を行うことができることを見いだし、本発明をなしえたのである。「温度検出素子」としてはサーミスタを用いたものが知られており、例えば特開2005−294477号公報に記載されている。
【0007】
前記センサ筐体と前記金属基板との間に熱伝導性樹脂を配置したので、熱伝導性を更に高め温度勾配を小さく抑えることができる。
【0008】
前記軸箱と前記センサ筐体との間に熱伝導性樹脂を配置したので、熱伝導性を更に高め温度勾配を小さく抑えることができる。
【0009】
振動検出素子を備えると、温度と同時に振動を検出できるので好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態である軸受装置を説明するための正面図であり、図2は、図1の矢印IIで示す部位を拡大した要部拡大部分断面図である。
【0011】
図1において、鉄道車両用軸受装置である軸受装置10は、図示しない車輪を固定した車軸11を、ハウジングである軸箱12に対して回転可能に支持するための軸受13が、車軸11と軸箱12との間に配置されている。
【0012】
軸受13には、車輪の回転に応じて、種々の部材の重量等によるラジアル荷重と任意のアキシアル荷重とが負荷される。なお、軸受13は、複列円すいころ軸受、複列の深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円筒ころ軸受等、公知の各種転がり軸受を使用することができ、転がり軸受の具体的構成は省略する。
【0013】
軸受13の負荷圏側に位置する、即ち車軸11の中心Oを通過する水平面Pより上方に位置する軸箱12の側部表面には、座ぐり部12aが形成されており、この座ぐり部12aには温度センサ14の少なくとも一部が埋設されている。
【0014】
図2において、温度センサ14は、アルミニウム合金等の軸箱12と同一材料からなるセンサ筐体15、センサ筐体15の開口部を密閉するカバー部材16、センサ筐体15の内底面に対して、熱伝導性の良いシリコン樹脂、シリコンペーストや熱伝導性の良いエポキシ樹脂等から形成された薄い熱伝導性樹脂板22を介して密着取付された金属基板17、金属基板17上に実装固定された温度検出素子18、及び、温度検出素子18から出力された測定信号を外部に伝送するため、センサ筐体15に形成されたケーブル取り出し部15aから外部へ引き出される信号ケーブル19を備える。なお、軸箱12の材質は、アルミニウム合金に限定されるものでなく、鉄製であっても良い。また、センサ筐体15の材質もアルミニウム合金に限定されず、ステンレス鋼等であっても良い。しかしながら、アルミニウム合金製のセンサ筐体の方が、熱伝導性が良いので好ましい。又、金属基板17としては、熱伝導性に優れたアルミ基板が好ましいが、鉄基板などの他、金属セラミック基板なども用いることができる。
【0015】
軸箱12に形成された座ぐり部12aの深さは、センサ筐体15内に内蔵された温度検出素子18が軸箱12内に位置し、即ち座ぐり部12aの開口面Sよりも軸箱12側に位置するように設定されている。センサ筐体15は、軸箱12に形成された座ぐり部12a内に、底部15b及び底部15bの周囲を埋設させた状態で、カバー部材16と共に2本のボルト20,20によって軸箱12に固定される。
【0016】
また、座ぐり部12aとセンサ筐体15の周囲との間の隙間には、熱伝導性の良いシリコン樹脂、シリコンペーストや熱伝導性の良いエポキシ樹脂等の熱伝導性樹脂21が充填されている。ただし、シリコン樹脂等をそのまま充填しても良いが、シリコン樹脂の板材をセンサ筐体15の底部15bに接着などで固定しておくと取扱いが容易となるので好ましい。
【0017】
図3は、比較例にかかる図2と同様な拡大断面図である。比較例においては、温度センサ14’のセンサ筐体15が座ぐり部12aに直接取り付けられ、且つセンサ筐体15の内底面に対して空間をあけた状態で配置されたエポキシ基板17’に温度検出素子18を実装している。それ以外の点では、図2に示す実施の形態と同様である。図3の比較例によれば、軸受13からエポキシ基板17’に至るまでの熱伝達経路において、温度勾配が大きくなるという問題がある。
【0018】
これに対し、本実施形態の軸受装置10によれば、温度センサ14の少なくとも一部が軸箱12内に埋設されているので、軸箱12からの温度センサ14への熱伝導性を向上させ、温度センサ14の温度を軸箱12の温度に近付けられる。特に、金属基板17が、熱伝導性樹脂板22を介してセンサ筐体15の内底面に密着しているので、熱伝達経路中の温度勾配を小さく抑えることができ、これにより金属基板17上の温度検出素子18の温度が軸箱12及び軸受13の温度に近づき、軸受13の温度を精度良く検出することができる。更に、鉄道車両の走行中にセンサ筐体15に風があたっても、センサ筐体15の底部15b及び底部15bの周囲が軸箱12に埋設されているので、センサ筐体15の底部15bおよび底部15bの周囲の冷却が抑制され、温度検出誤差の発生を防止することができる。
【0019】
また、温度検出素子18が軸箱12内に埋没されているので、温度検出素子18の温度が軸箱12の温度にほぼ等しくなり、軸受13の温度をより精度良く検出することができる。なお、軸箱12のスペースに余裕がある場合には、センサ筐体15全体を軸箱12に埋設することで、さらに軸受13の温度が精度良く検出することができる。
【0020】
また、座ぐり部12aとセンサ筐体15の周囲との間の隙間はできるだけ小さいほうが望ましいが、座ぐり部12aとセンサ筐体15の周囲に隙間を有する場合には、本実施形態のように、この隙間に熱伝導性の良いシリコン樹脂等、熱伝導性の良い樹脂21を充填することで、熱伝導性を向上することができる。更に、センサ筐体15内に振動検出素子を配置し、温度と振動とを同時に検出することで、軸受13の異常を早期に精度良く発見できる。振動検出素子としては、圧電式、歪みゲージ式など種々のタイプがあるが、よく知られているため詳細は記載しない。
【0021】
以上、本発明を実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、その発明の範囲内で変更・改良が可能であることはもちろんである。例えば、熱伝導性樹脂としては、シリコン樹脂等を単体で用いてもよいが、熱伝導を良くするためのシリカなどの粉末や金属粉をシリコン樹脂に充填したものを使用すると熱伝導の効率を良くできるので好ましい。又、熱伝導性樹脂の代わりに、内部に多数の孔を有した発泡金属を使用しても良い。発泡金属としては、銅合金、ステンレス鋼、アルミニウム合金などがあり、熱伝導係数が大きいとともに適度な弾性があるので、さらに好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態である軸受装置を説明するための正面図である。
【図2】図1の矢印IIで示す部位を拡大した要部拡大部分断面図である。
【図3】比較例にかかる図2と同様な拡大断面図である。
【符号の説明】
【0023】
10 軸受装置
11 車軸
12 軸箱
12a 座ぐり部
13 軸受
14 温度センサ
15 センサ筐体
15a ケーブル取り出し部
15b 底部
16 カバー部材
17’ エポキシ基板
17 金属基板
18 温度検出素子
19 信号ケーブル
20 ボルト
21 熱伝導性樹脂
22 熱伝導性樹脂板
O 中心
P 水平面
S 開口面
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成18年9月8日(2006.9.8)
【代理人】 【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎

【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一


【公開番号】 特開2008−64669(P2008−64669A)
【公開日】 平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願番号】 特願2006−244162(P2006−244162)