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【発明の名称】 温度センサおよびその製造方法
【発明者】 【氏名】黒住 章二

【要約】 【課題】金属製カバー内に温度検出素子を収納した温度センサの更なる信頼性、応答性の向上を図る。

【構成】先端閉塞後端開放の有底円筒状の金属製カバー104と一対の電極線102が接続された温度検出素子101とからなる感温部10と、円筒状の金属製保護管123と外部に信号を取り出す一対の信号線121と絶縁部材122とからなる保護管部12と、ネジ部132を有するハウジング部13とを備えた温度センサ1の金属製カバー104と温度検出素子101との間隙を埋める充填剤103によって温度検出素子101が金属製カバー104内で拘持されるとともに、金属製カバー104の底部に充填剤103中に包含される気泡2を排出する気泡排出用貫通孔111を設け、該気泡排出用貫通孔111を封止する封止手段112を設けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が閉塞し他端が開放する有底円筒状の金属製カバーとこの金属製カバーの閉塞端内側に収納され、一対の電極線が接続された温度検出素子からなる感温部と、
上記金属製カバーの開放端に挿嵌される円筒状の金属製保護管と該金属製保護管の内側に設けられ上記電極線と電気的に接続されて外部に信号を取り出す一対の信号線とこれらを絶縁する絶縁部材とからなる保護管部と、
上記保護管部を保持するとともに上記感温部を被測定流体内の所定位置に取付固定するためのネジ部を有するハウジング部とを備えた温度センサであって、
上記金属製カバーと上記温度検出素子との間隙を埋める充填剤によって上記温度検出素子が上記金属製カバー内で拘持されるとともに、
上記金属製カバーの閉塞端底部に気泡排出用貫通孔を有し、該気泡排出用貫通孔によって上記金属製カバーの閉塞端内に取り込まれた気泡が排出されたことを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
上記気泡排出用貫通孔を封止する封止手段を設けた請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
上記気泡排出用貫通孔は直径50μmから直径300μmの範囲の貫通孔である請求項1または2に記載の温度センサ。
【請求項4】
上記気泡排出用貫通孔を複数個設けた請求項1ないし3のいずれか1項に記載の温度センサ。
【請求項5】
上記封止手段はレーザ溶接によって形成した溶接ビード(溶接痕)である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の温度センサ。
【請求項6】
上記金属製カバーの内径は3mm以下である請求項1ないし5のいずれか1項に記載の温度センサ。
【請求項7】
上記充填剤は無機バインダーを含みアルミナを主成分とするセメントである請求項1ないし6のいずれか1項に記載の温度センサ。
【請求項8】
上記金属製カバーは、上記閉塞端側を径小とし、上記開放端側を径大とする段付き有底円筒状である請求項1ないし7のいずれか1項に記載の温度センサ。
【請求項9】
上記温度検出素子は遷移金属酸化物焼結体からなるNTCサーミスタである請求項1ないし8のいずれか1項に記載の温度センサ。
【請求項10】
一端が閉塞し他端が開放する有底円筒状の金属製カバーとこの金属製カバーの閉塞端内側に収納され、一対の電極線が接続された温度検出素子からなる感温部と、
上記金属製カバーの開放端に挿嵌される円筒状の金属製保護管と、該金属製保護管の内側に設けられ上記電極線と電気的に接続されて外部に信号を取り出す一対の信号線と、これらを絶縁する絶縁部材とからなる保護管部と、
上記保護管部を保持するとともに上記感温部を被測定流体内の所定位置に取付固定するためのネジ部を有するハウジング部とを備えた温度センサの製造方法において、
上記金属製カバーの閉塞端底部に気泡排出用の貫通孔を設け、上記金属製カバーと上記温度検出素子との間隙を埋め上記温度検出素子を絶縁保持する充填剤を上記金属製カバー内にスラリー状態で注入し、上記金属製カバーの先端に取り込まれた気泡を上記貫通孔から排出することを特徴とする温度センサ製造方法。
【請求項11】
上記金属製カバーの閉塞端に直径50μmから直径300μmの範囲の貫通孔を穿設する請求項10に記載の温度センサ製造方法。
【請求項12】
複数の貫通孔から上記充填剤に巻き込まれた気泡を排出する請求項10または11に記載の温度センサ製造方法。
【請求項13】
上記温度検出素子を上記スラリー状態の充填剤中に挿入した後、加熱乾燥により上記充填剤を固化することによって上記温度検出素子を固定する請求項10ないし12のいずれかい1項に記載の温度センサ製造方法。
【請求項14】
上記貫通孔を封止手段によって封止する請求項10ないし13のいずれか1項に記載の温度センサ製造方法。
【請求項15】
上記貫通孔にレーザ照射して溶接、封止する請求項10ないし14のいずれか1項に記載の温度センサ製造方法。
【請求項16】
上記金属製カバーの上記閉塞端側を径小とし、上記開放端側を径大とする段付き有底円筒状に絞り加工する請求項10ないし15のいずれか1項に記載の温度センサ製造方法。
【請求項17】
上記金属製カバーの上記小径部の内径は3mm以下に加工する請求項10ないし16のいずれか1項に記載の温度センサ製造方法。
【請求項18】
無機バインダーを含みアルミナを主成分とするセメント用いて上記金属製カバーと上記温度検出素子との間隙を充填する請求項10ないし17のいずれか1項に記載の温度センサ製造方法。
【請求項19】
上記温度検出素子は複数の遷移金属酸化物を含むセラミック原料粉末を用いて成形体を形成し、該成形体に一対の白金線を挿通し、酸化雰囲気にて該成形体と該白金線とを一体的に焼成し、NTCサーミスタとする請求項10ないし18のいずれか1項に記載の温度センサ製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極線に接続された温度検出素子を有底円筒状の金属製カバー内に収納した温度センサに関するものであり、特にディーゼルエンジン自動車排ガス等の被測定流体が流通する流路内に設けられ、車両の振動に晒される環境下で、被測定流体の温度を検出する温度センサに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用排ガス浄化装置の温度制御等を図るために排ガス流路内に設けられる温度センサとして、例えば特許文献1に記載されるような、サーミスタ素子の電極線と接続される金属芯線をシースパイプ内に絶縁保持してなるシース部材を、有底筒状でシース部材の外径よりも小さい内径の小径部と該小径部の後端側に該小径部の外径よりも大径の大径部を備えた金属製チューブ内に挿入しつつ、サーミスタ素子を金属製チューブの先端側内部に配置させ、サーミスタ素子の先端と金属製チューブの内壁先端との間にセメントが充填された温度センサが知られている。
また、特許文献2には例えばY(Cr、Mn)O等を主成分とする遷移金属酸化物を用いた1000℃以上の高温の測定に好適なサーミスタ素子が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−317499号公報
【特許文献2】特開2001−143907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような温度センサであって、図7(a)に示す温度センサ1bにおいては、感温部10bの小径部の内径は極めて小さくなっている。このような場合、図7(b)に示す充填剤103は上記金属カバー104b内にスラリー状態で注入され、その後、温度検出素子101の一対の電極線102と接続された一対の信号線121が絶縁部材122を介して絶縁支持された金属製保護管123が上記金属製カバー104b内に挿入固定される。
この時、スラリー状態の上記充填剤103の表面張力や粘性等の影響により、上記充填剤中に空気が巻き込まれ、図7(b)に示すような気泡2が上記金属製カバー104bの先端内側に発生してしまうことがある。
このような気泡が存在すると金属製カバー104bから温度検出素子101への熱の伝導が妨げられてしまい、温度応答性の低下を招くことになる。
【0005】
また、該気泡2の存在により上記充填剤103の充填が不完全となってしまう場合には、上記温度検出素子101を上記金属製カバー104b内に拘持する上記充填剤103の保持力が低下する。したがって、このような温度センサ1bが車両の振動に晒され、外部から振動を受けると、温度検出素子101の電極線102に局所的な応力集中が起こり、該電極線102の断線に至る場合がある。
【0006】
さらに、このような気泡は不定形であるため、該気泡による応答性の低下にはバラツキがあり、このようなバラツキを電気的処理等により定量的に補正することが困難である。また、金属カバー内に発生する欠陥であるためX線撮影等の手段によらなければ該気泡の有無の発見が困難である。したがって、このような温度センサの信頼性を向上するためには製造工程において該気泡を確実に排除することが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、係る実情に鑑み、更なる応答性の向上と耐震性の向上とを同時に実現し、かつ信頼性に優れた温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明では、一端が閉塞し他端が開放する有底円筒状の金属製カバーとこの金属製カバーの閉塞端内側に収納され、一対の電極線が接続された温度検出素子からなる感温部と、上記金属製カバーの開放端に挿嵌される円筒状の金属製保護管と該金属製保護管の内側に設けられ上記電極線と電気的に接続されて外部に信号を取り出す一対の信号線とこれらを絶縁する絶縁部材とからなる保護管部と、上記保護管部を保持するとともに上記感温部を被測定流体内の所定位置に取付固定するためのネジ部を有するハウジング部とを備えた温度センサであって、上記金属製カバーと上記温度検出素子との間隙を埋める充填剤によって上記温度検出素子が上記金属製カバー内で拘持されるとともに、上記金属製カバーの閉塞端底部に気泡排出用貫通孔を有し、該気泡排出用貫通孔によって上記金属製カバーの閉塞端内に取り込まれた気泡が排出されたことを特徴とする。
【0009】
上記金属製カバー内に上記充填剤を注入する際に上記充填剤中に巻き込まれた気泡を上記気泡排出用貫通孔から排出することによって、上記充填剤中の欠陥を少なくすることができる。したがって、上記温度検出素子は上記金属製カバー内で安定した状態で拘持されるので、外部からの振動等による上記電極線の断線を防止できる。
【0010】
また、上記温度検出素子と上記金属製カバーとの間隙に上記充填剤が均一に充填されることによって、上記温度検出素子への熱伝導が均一化される。したがって、温度センサとしての応答性が安定する。
【0011】
請求項2の発明では、上記気泡排出用貫通孔を封止する封止手段を設けた。
【0012】
上記封止手段によって上記気泡排出用貫通孔が密封されているので、上記温度検出素子が非測定流体によって酸化、還元等の影響を受けない。したがって、温度センサとしての信頼性が確保される。
【0013】
請求項3の発明では、上記気泡排出用貫通孔は直径50μmから直径300μmの範囲の貫通孔である。
【0014】
上記気泡排出用貫通孔が直径50μmより小さいと該気泡の排出が困難となり、上記気泡排出用貫通孔が直径300μmより大きいと充填後の封止が困難となる。
【0015】
請求項4の発明では、上記気泡排出用貫通孔を複数個設けた。
【0016】
上記気泡は不定形であるため、複数の上記気泡排出用貫通孔を設けると、上記気泡の排出確率は高くなり、より確実に該気泡を排除できる。したがって、温度センサとしての信頼性が向上される。
【0017】
請求項5の発明では、上記封止手段はレーザ溶接によって形成した溶接ビード(溶接痕)である。
【0018】
上記溶接ビード(溶接痕)は上記金属製カバー底部と完全に一体となり、上記気泡排出貫通孔を密封することができる。したがって、上記温度検出素子が被測定流体から化学的な変化をもたらすような影響を受けない。
【0019】
請求項6の発明では、上記金属製カバーの内径は3mm以下である。
【0020】
本発明は特に内径3mm以下の極細径の金属製カバーに温度検出素子を収納する温度センサに好適であり、上記温度検出素子と上記金属製カバーとの距離が極めて短いので応答性に優れている。
【0021】
請求項7の発明では、上記充填剤は無機バインダーを含みアルミナを主成分とするセメントである。
【0022】
上記アルミナセメントは低温での加熱乾燥によって固化し、1000℃以上の環境下での使用によっても変化しない化学的に安定でかつ良好な電気絶縁性と良好な熱伝導性を備えた充填剤となる。したがって温度センサとしての応答性が更に向上する。
また、上記アルミナセメントは機械的強度に優れ、上記温度検出素子、上記一対の電極線および上記一対の信号線を一体的にかつ強固に支持固定するので、外部からの振動に対する耐震性が向上する。
【0023】
請求項8の発明では、上記金属製カバーは、上記閉塞端側を径小とし、上記開放端側を径大とする段付き有底円筒状である。
【0024】
このような形状とすることで上記金属製カバー内壁と上記温度検出素子との距離を極めて短くすることができ、温度センサの応答性が向上する、
【0025】
請求項9の発明では、上記温度検出素子は遷移金属酸化物焼結体からなるNTCサーミスタである。
【0026】
上記遷移金属酸化物系NTCサーミスタ素子は1000℃以上1300℃以下の高温において良好な温度検出が可能であるので、自動車の排ガス温度の測定等に好適である。
【0027】
請求項10の発明では一端が閉塞し他端が開放する有底円筒状の金属製カバーとこの金属製カバーの閉塞端内側に収納され、一対の電極線が接続された温度検出素子からなる感温部と、上記金属製カバーの開放端に挿嵌される円筒状の金属製保護管と、該金属製保護管の内側に設けられ上記電極線と電気的に接続されて外部に信号を取り出す一対の信号線と、これらを絶縁する絶縁部材とからなる保護管部と、上記保護管部を保持するとともに上記感温部を被測定流体内の所定位置に取付固定するためのネジ部を有するハウジング部とを備えた温度センサの製造方法において、上記金属製カバーの閉塞端底部に気泡排出用の貫通孔を設け、上記金属製カバーと上記温度検出素子との間隙を埋め上記温度検出素子を絶縁保持する充填剤を上記金属製カバー内にスラリー状態で注入し、上記金属製カバーの先端に取り込まれた気泡を上記貫通孔から排出することを特徴とする。
【0028】
上記充填剤はスラリー状態で上記貫通孔から気泡を排出しながら上記金属製カバー内に注入されるので、上記金属製カバー底部に気泡が残留することなく均一に充填することができる。このような製造工程に従えば、確実に充填剤内への気泡の巻き込みが防止され、充填工程の安定化を図ることができる。したがって、製造工程管理の簡素化が可能となるとともに温度センサの信頼性が向上する。
【0029】
請求項11の発明では上記金属製カバーの閉塞端に直径50μmから直径300μmの範囲の貫通孔を穿設する。
【0030】
上記範囲の貫通孔であれば加工が容易な上に、上記温度検出素子挿入後の封止も容易である。
【0031】
請求項12の発明では、複数の貫通孔から上記充填剤に巻き込まれた気泡を排出する。
【0032】
複数の貫通孔から上記気泡がより効果的に排出される。
【0033】
請求項13の発明では、上記温度検出素子を上記スラリー状態の充填剤中に挿入した後、加熱乾燥により上記充填剤を固化することによって上記温度検出素子を固定する。
【0034】
スラリー状態の上記充填材中に上記温度検出素子が挿入されるので、上記温度検出素子、上記一対の信号線および上記一対の電極線が上記充填剤に完全に覆われる。また、加熱乾燥時に上記貫通孔からも上記充填剤中の分散媒が蒸発するので乾燥がスムーズに行える。
【0035】
請求項14の発明では、上記貫通孔を封止手段によって封止する。
【0036】
上記貫通孔を封止することによって上記金属製カバー内に収納された上記温度検出素子を密封状態におくことができる。
【0037】
請求項15の発明では、上記貫通孔にレーザ照射して溶接、封止する。
【0038】
上記気泡排出用貫通孔はレーザ照射によって容易に溶接封止することができる。
【0039】
請求項16の発明では、上記金属製カバーの上記閉塞端側を径小とし、上記開放端側を径大とする段付き有底円筒状に絞り加工する。
【0040】
上記段付き有底円筒状に絞り加工によって容易に形成できる。
【0041】
請求項17の発明では、上記金属製カバーの上記小径部の内径は3mm以下に加工する。
【0042】
上記温度検出素子と上記金属カバー内壁との距離を極めて短くすることができ、温度センサとしての応答性に優れている。
【0043】
請求項18の発明では、無機バインダーを含みアルミナを主成分とするセメント用いて上記金属製カバーと上記温度検出素子との間隙を充填する。
【0044】
無機バインダーを使用すると低温乾燥だけで硬化し、1000℃以上の高温環境下に耐え得る化学的安定性、機械的強度、高絶縁性にすぐれた充填層が得られる。
【0045】
請求項19の発明では、上記温度検出素子は複数の遷移金属酸化物を含むセラミック原料粉末を用いて成形体を形成し、該成形体に一対の白金線を挿通し、酸化雰囲気にて一体的に焼成し、NTCサーミスタとする。
【0046】
電極線に白金線を用いることで上記遷移金属酸化物と同時に酸化雰囲気下で焼成でき、上記遷移金属酸化物成形体と一対の白金線とが一体的に焼結され、温度の上昇により抵抗が減少するNTC(負温度係数)特性を持ったNTCサーミスタが得られる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、感温部を保持する充填剤中に気泡の発生を防止し、応答性および耐震性に優れた温度センサを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
図1を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1(a)は本発明の実施される温度センサ1の全体構成を示し、温度センサ1は感温部10と保護管部12とハウジング部13とによって構成されている。
ハウジング部13は、SUS等の金属からなり、上記保護管部12を拘持するリブ131と取付け位置固定のためのネジ部132とネジ締めの為の六角部133とが設けられている。
【0049】
図1(b)は本発明の実施形態の要部である上記感温部10の断面詳細図を示し、以下に、上記感温部10の構成について図1(b)を参照して説明する。
【0050】
温度検出素子101は例えば特許文献2にあるようなY(Cr、Mn)Oを主成分とする遷移金属酸化物系NTCサーミスタからなり上記温度検出素子101には一対の白金製の電極線102が一体的に接続されている。
上記移金属酸化物系NTCサーミスタは複数の遷移金属酸化物を含むセラミック原料粉末を用いて、電極線を挿入する一対の挿入孔を有した円柱状の成形体を形成し、上記挿入孔に一対の白金線を挿通し、例えば1600℃の高温で酸化焼成することによって該成形体と該白金線とが一体となった焼結体が得られる。
【0051】
上記電極線102には上記温度検出素子101によって測定された被測定流体の温度に応じた電気信号を外部に取り出す一対の信号線121が、例えばレーザ溶接等によって抵抗接続されている。上記信号線121には例えばSUS、白金−Rh等の耐熱性、良電導性の金属が使用される。
上記信号線121は絶縁部材122を介して例えばSUS等からなる円筒状の金属製保護管123内に絶縁支持されている。
【0052】
金属製カバー104は例えばSUS等の金属からなり、先端閉塞他端開放の有底円筒状をしており、閉塞端側の底部には上記金属製カバー内に上記充填剤を注入する際に上記充填剤中に巻き込まれた気泡を排出する例えば直径100μmの気泡排出用貫通孔111が穿設されている。
また、上記金属製カバー104の開放端側は上記金属製保護管123が挿嵌されるので大径部1041となっており、閉塞端側は内径1.88mm外径2.48の小径部1043となっており、上記大径部1041と上記小径部1043との間は内径2.37mm外径2.97mmの中径部1042として段階的に絞り加工されている。
【0053】
上記気泡排出用貫通孔111は例えばレーザ溶接等の封止手段により溶接封止されており、溶接部には溶接ビード112が形成されている。
【0054】
上記金属製カバー104と上記温度検出素子101、上記電極線102および上記信号線121との間隙は例えばシリカゾル、アルミナゾル等の無機バインダーを含むアルミナを主成分としたアルミナセメント等の充填剤103によって埋められている。
【0055】
上記金属製カバー104と上記金属製保護管123とは例えばレーザ溶接等により、溶接部105で全周に渡り溶接固定されている。
【0056】
上記金属製保護管123の上記温度検出素子101側先端部123bの外径は上記金属製カバー104の上記径中部1042の内径とほぼ同一に設けられており、上記保護管先端部123bと上記金属製カバー104の内壁との間には間隙106が形成され、上記感温部10と上記保護管部12との断熱性を確保している。
上記金属製カバー104の小径部1043の内径は直径1.5mmから直径3.0mmまでの範囲で適宜設定することができる。
【0057】
ここで、図8(a)〜(f)を参照して、従来の温度センサの構造において推定される気泡の発生メカニズムについて、また、図2(a)〜(g)を参照して本発明の効果について説明する。
【0058】
図8(a)に示すように充填ノズル3を上記金属製カバー104bに挿入し、上記充填ノズル3を用いて、スラリー状の上記充填剤103を金属製カバー104bの底部にできるだけ近い位置から上記充填ノズル3を引き上げながら注入する。
上記金属製カバー104bの底壁により近い位置から注入するためには、上記充填ノズル3の外径はできるだけ細い方が好ましいが、上記充填剤103として、上記アルミナセメントを用いた場合、該スラリーの粘度が比較的高粘度であるので、上記充填ノズル3の内径が直径0.9mmより細いと上記充填剤103を上記充填ノズル3から押し出すことが困難となってしまい、必然的に上記充填剤ノズル3の内径、外径が制限される。
【0059】
このため、図8(a)中A部を拡大した図8(b)に示すように、上記充填剤103が上記充填ノズル3から押し出されると、表面張力によって楕円球状にふくらみ、更に押し出されると図8(c)に示すように上記金属製カバー104bの底壁に到達するより先に上記金属製カバー104bの側壁に接触する。
【0060】
この時、上記充填剤103によって、上記金属製カバー104bの側壁と充填ノズル3との間隙が埋められ、上記充填剤103の下方に取り残された空気の抜け道が閉ざされる。
また、上記充填剤103のスラリーは比較的高粘度の擬塑性流体であるため、一旦取り込まれた空気は上記充填剤103を通過することができず図8(d)に示すような気泡2として取り残され、さらに充填剤103の注入を続けると図8(e)に示すように上記金属製カバー104bの閉塞端内に気泡2が残存し、該気泡2を上記充填剤103から取り除くことはできなくなる。
【0061】
この状態で、図8(f)に示すように、金属製保護管123内に絶縁部材122によって絶縁保持された一対の信号線121と接続された一対の電極線102に接続された温度検出素子101をスラリー状の上記充填剤103の中に挿入し、上記充填剤103を加熱乾燥した後、上記金属製カバー104bと上記金属製保護管123とを溶接固定すると、図7(b)に示すように上記温度検出素子101の前方で上記金属製カバー104bの底部に、気泡2が取り残された状態で、上記温度検出素子101が拘持されることになる。
【0062】
一方、本発明の第1の実施形態では、図2(a)に示すように金属製カバー104の閉塞端の底部に気泡排出用貫通孔111が設けてある。
図2(a)に示すように、上記金属製カバー104に充填剤ノズル3を挿入し、上記充填ノズル3を用いて、スラリー状の上記充填剤103を金属製カバー104の底部にできるだけ近い位置から上記充填ノズル3を引き上げながら注入する。
【0063】
スラリー状の充填剤103は図2(a)中A部を拡大した図2(b)に示すように、表面張力によって上記充填ノズル3の先端から楕円球状に膨らんで押し出され、図2(c)に示すように上記金属製カバー104の底部に到達するよりも先に上記金属製カバー104の側壁部に接触し、上記充填剤103の下方に気泡2が閉じこめられる。
ここまでは従来と同様であるが、更に上記充填剤103の注入を続けると、図2(d)に示すように、上記金属製カバー104に設けた貫通孔111から上記気泡2が押し出され、上記気泡2は徐々に小さくなり、消滅する。
この時、超音波などの振動を加えると上記気泡の排出がより効果的となる。
【0064】
図2(e)に示すように所定量の上記充填剤103を注入した後、上記充填ノズル3を引き上げ、図2(f)に示すように金属製保護管123内に絶縁部材122によって絶縁保持された一対の信号線121と接続された一対の電極線102に接続された温度検出素子101をスラリー状の上記充填剤103の中に挿入し、上記充填剤103を加熱乾燥した後、上記金属製カバー104と上記金属製保護管123とを溶接固定すると図2(g)に示すように、上記温度検出素子101と上記金属製カバー104との間の気泡2が除去された状態で、上記温度検出素子101が拘持される。
【0065】
上記充填剤103は高粘度スラリーであるので上記金属製カバー104に設けられた貫通孔111から漏れ出ることは少ない。
【0066】
上記貫通孔111を直径50μm〜170μmの範囲で設けた貫通孔111aとした場合、図3左図(溶接前)に示すように上記充填剤103は上記貫通孔111aから漏れ出すことはない。また、図3中央図に示すように上記貫通孔111aは溶接棒無しでも、例えばレーザ溶接等により直接溶接封止できる。図3右図(溶接後)に示すように、溶接後には上記金属製カバー104の底部に溶接ビード112aが形成され、上記貫通孔111aは完全に密封された状態となる。レーザ溶接の条件としては例えば2.1J〜2.5J、10ms〜14msで行う。
【0067】
上記貫通孔111を直径200μm〜300μmの範囲で設けた貫通孔111bとした場合、図4(a)左図(溶接前)に示すように上記充填剤103は上記貫通孔111bから漏れ出すことはない。また、図4(a)中央図に示すように上記貫通孔111bは溶接棒無しで例えばレーザ溶接等により直接溶接封止をすると、図4(a)右図(溶接後)に示すように、溶接後には上記金属製カバー104の底部に溶接ビード112bが形成され、上記貫通孔111bは溶接封止可能であるが、該ビード112bの中心にはピンホール状のブローホールが形成されたり、滴状の溶接ダレ113bが形成されたりすることもある。
【0068】
このような場合、より好ましくは、図4(b)中央図に示すように上記貫通孔111cは上記金属製カバー104と同材質の例えば直径0.27mmの溶接棒を用いて、レーザ溶接等により溶接すると、図4(b)右図(溶接後)に示すように、溶接後には上記金属製カバー104の底部に略半球状の溶接ビード112cが形成され、上記貫通孔111cは完全に封止できる。
【0069】
上記貫通孔111を直径500μm以上で設けた貫通孔111dとした場合、図5(a)左図(溶接前)に示すように上記充填剤103は上記貫通孔111dから充填剤103dとして示すように漏れ出すことがある。漏れした該充填剤103dを除去した後、図5(a)中央図に示すように上記貫通孔111dは溶接棒無しで例えばレーザ溶接等により直接溶接封止しようとすると、図5(a)右図(溶接後)に示すように、上記貫通孔111dの内周縁に沿って溶接ビード112dが形成されるものの、上記貫通孔111dの封止することはできない。
【0070】
このような場合、図5(b)中央図に示すように上記貫通孔111dは上記金属製カバー104と同材質の溶接棒を用いて、例えばレーザ溶接等により溶接すると、図5(b)右図(溶接後)に示すように、溶接後には上記金属製カバー104の底部に不定形の溶接ビード112eが形成され、上記貫通孔111dは完全に封止できるものの外観的には好ましくない。
【0071】
また、上記気泡排出用貫通孔111を直径50μm以下で設けた場合、上記気泡2が十分排出されず、上記充填剤103内に残留することがある。
したがって、上記気泡排出用貫通孔111は直径50μmから300μmの範囲で設けるのがよい。より好ましくは直径70μmから170μmの範囲で設ければ、溶接棒無しで直接溶接封止が可能でかつ仕上がりも良好である。
【0072】
本発明の第1の実施形態においては図6(a)に示すように、上記金属製カバー104の閉塞端底部中央に上記気泡排出用貫通孔111を1個設けたが、図6(b)に示すように上記金属製カバー104の閉塞端底部に上記気泡排出用貫通孔111を複数個設けた構造としてもよい。また、図6(c)に示すように、上記金属製カバー104の閉塞端底部のみならず上記金属製カバー104の側壁に複数個設けても良い。このような構造とすれば、上記気泡が排出される確率が高くなり、上記金属製カバー内の充填率が更に向上する。
【0073】
当然のことながら、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更が可能であることは言うまでもない。例えば、本発明の実施形態においてはレーザ溶接による封止手段について説明したが、MIG溶接、TIG溶接、アーク溶接、プラズマ溶接等の直接溶接によるものでも良いし、ロー付け、リベット打ち込み、溶射等の肉盛り溶接でも良い。
【0074】
また、本発明の実施形態においては、温度検出素子は円柱状に形成してあるが、平板状であっても、多角柱状であっても良い。
本実施形態においては、上記金属カバーは絞り加工によって形成したが、切削加工によるものでも良い。
本実施形態においては、充填剤に含まれる無機バインダーは加熱乾燥によってアルミナセメントを固化する物を用いたが、自己硬化型の無機バインダーを用いても良い。
さらに、被測定流体として排気ガスに限らず、水、油等の液体であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施形態に係る温度センサの全体構成を示す一部断面図で、(b)は、本発明の要部である図1(a)中の感温部10の詳細断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における充填剤注入から感温部挿入までの本発明の効果を製造工程の順を追って(a)〜(g)で段階的に示す模式図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における直径50μmから直径170μmの気泡排出貫通孔の封止方法および封止後の状態を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における直径200μmの気泡排出貫通孔について(a)は溶接棒を使用しない場合の封止方法および封止後の状態を示す模式図で、(b)は溶接棒をある使用した場合の封止方法および封止後の状態を示す模式図である。
【図5】本発明の比較例における直径500μmの気泡排出貫通孔について(a)は溶接棒を使用しない場合の封止方法および封止後の状態を示す模式図で、(b)は溶接棒をある使用した場合の封止方法および封止後の状態を示す模式図である。
【図6】(a)〜(c)は本発明の気泡排出貫通孔の配置例を示す模式図である。
【図7】(a)は従来の構造における温度センサの全体構成を示す一部断面図で、(b)は、従来の構成における問題点を示す図7(a)中の感温部10の詳細断面図である。
【図8】従来の構成における充填剤注入から感温部挿入までの製造工程を追って、気泡の取り込まれる様子を(a)〜(f)の段階的に示す模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1 温度センサ
10 感温部
101 サーミスタ素子
102 電極線(白金)
103 充填剤(無機バインダー含有アルミナセメント)
104 金属製カバー(SUS)
105 溶接部
106 断熱部
111 気泡排出貫通孔
112 溶接ビード
12 保護管部
121 信号線(SUS)
122 絶縁部材
123 金属製保護管(SUS)
1231 径大部
1232 径中部
1233 径小部
13 ハウジング部
131 保護管部拘持用リブ(SUS)
132 固定用ネジ部
133 締付用六角部
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成18年7月18日(2006.7.18)
【代理人】 【識別番号】100067596
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 求馬


【公開番号】 特開2008−26012(P2008−26012A)
【公開日】 平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願番号】 特願2006−195483(P2006−195483)