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【発明の名称】 温度履歴表示材組成物
【発明者】 【氏名】中澄 博行

【氏名】山内 孝介

【氏名】兵藤 豊

【氏名】八木 繁幸

【要約】 【課題】簡単な構成で、所望の温度で不可逆に着色する温度履歴表示材組成物を提供する。

【構成】顕色剤粒子と、発色剤を担持した担体を含む発色剤粒子とを有する組成物とすることで、管理温度以上に曝された際に、顕色剤と発色剤とが反応して発色反応が起こり、顕色剤と発色剤の接触は再度冷却しても保たれるので、発色反応は不可逆となり、所望の温度で不可逆に着色する温度履歴表示材組成物となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕色剤粒子と、発色剤を担持した担体を含む発色剤粒子とを有する、温度履歴表示材組成物。
【請求項2】
前記顕色剤粒子と発色剤粒子粒子との少なくとも一方は、その表面が特定温度に融点を持つ感温物質層で被覆されている、請求項1に記載の温度履歴表示材組成物。
【請求項3】
環境温度が感温物質の融点を超えると、前記感温物質層が溶解し、顕色剤と発色剤とが反応し、不可逆的な変化を生じせしめることを特徴とする請求項1または2に記載の温度履歴表示材組成物。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な温度履歴表示材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍技術や冷蔵技術の発達により、多くの食品や医薬品が長期間にわたり、品質や安全性を保つことができるようになった。また、低温輸送技術の発達と普及により、市場にも様々な冷凍食品・冷蔵食品が出回るようになってきている。このため、流通過程あるいは貯蔵過程における温度管理が重要である。特に食品の場合、停電などの不慮の出来事で、所定の温度管理ができなくなると、細菌が繁殖し、腐敗・変質などの原因となる。また、物品が国際的に流通されるようになっている現在、化学業界では、赤道下の船舶輸送時における商品の温度管理(安全性)が問題となっている。物品が、一度でも管理温度以上の温度に曝された否かは、物品を見ただけではわかりにくい。このため、低温保存食品等の個々の物品に、温度インジケータや感温色材などを貼付して、物品の温度管理を行うことが試みられている。
【0003】
物品が、一度でも管理温度以上の温度に曝されたことを容易に判断するためには、物品が、管理温度以上の温度に曝された際に変色し、その後変化しない不可逆型であることが望ましい。低温で不可逆に着色する温度履歴表示体として、例えば、発色剤層と検温剤層と顕色剤層とを備える温度履歴表示体が開発されている(例えば、特許文献1参照)。また、支持体上に染料前駆体および、該染料前駆体と加熱時反応して着色体を形成する顕色剤を主成分として含有する感熱記録層、顔料とバインダーを主成分とする浸透層、融点が0℃以上の感温物質を内包したマイクロカプセル含有層、保護層を順次積層した示温ラベルが開発されている(例えば、特許文献2参照)
【特許文献1】特開平10−287863号公報
【特許文献2】特開2004−184920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの文献に記載の温度履歴表示体や示温ラベルは、シート構造を有する。従って、これらの温度履歴表示体や示温ラベルは事前にラベル等の構造に製造しておく必要がある。また、製造されたラベル等が物品に貼付されるまでに、一定の温度を超えると不可逆な発色反応が起こる。一旦発色すると、不可逆なため実際に使用することができなくなる。このため、これらの温度履歴表示体や示温ラベルには、温度変化機構を作動可能にするスイッチオン機構を備えておく必要がある。
【0005】
このように、従来の温度履歴表示体や示温ラベルは、構造が複雑であり、使用に際し、温度変化機構を作動可能にするための前処理をする必要がある。また、ラベル等を貼付すると、物理的な作用によりはがれるおそれを生じる。
【0006】
すなわち、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、その目的は、簡単な構成で、所望の温度で不可逆に着色する温度履歴表示材組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、顕色剤粒子と、発色剤を担持した担体を含む発色剤粒子とを有する組成物とすることで、上記課題を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
上記構成とすることで、管理温度以上の温度に曝された際に、顕色剤と発色剤とが反応し、発色反応が起こる。顕色剤と発色剤との接触は、再度冷却しても保たれるので、発色反応は、不可逆となる。この結果、簡単な構成で、低温で不可逆に着色する温度履歴表示材組成物を提供することができる。また、本発明は、組成物であるので、例えば、樹脂などを加えて、インクなどの形態で提供できる。この結果、ラベルのように貼付する必要はなく、包装容器に印刷すれば、温度履歴表示材として機能する。
【0009】
上記温度履歴表示材組成物において、上記顕色剤粒子と発色剤粒子との少なくとも一方は、その表面が特定温度に融点を持つ感温物質層で被覆されていると好ましい。組成物中に、顕色剤粒子と、発色剤粒子とが存在すれば、表示材として機能する前に発色する恐れがある。このため、粒子表面が被覆材で被覆されていると好ましい。特に、粒子の表面が特定温度に融点を持つ感温物質層で被覆されていると、所望の温度で感温物質層が溶解し、顕色剤と発色剤とが反応し、不可逆な発色反応が起こるので、所望の温度における温度履歴が容易にわかる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の温度履歴表示材組成物は、固体酸担体を含む顕色剤粒子と、発色剤を担持した担体を含む発色剤粒子とを有するので、簡単な構成で、所望の温度で不可逆に着色することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の温度履歴表示材組成物にかかる顕色剤粒子と発色剤粒子の構造を示す図である。図1に示すように、顕色剤粒子は、感温物質層で被覆されている。また、発色剤粒子は、担体の表面を着色剤(色素)で被覆し、さらに、感温物質層で被覆されている。
【0012】
[顕色剤]
本発明に用いる顕色剤としては、固体酸または固体塩基を用いることができる。固体酸または固体塩基は、色素を発色でき、色素の発色を検知できる色彩を有するものであれば特に制限はなく、公知の固体酸または固体塩基を用いることができる。用いる色素を有効に発色できるものを適宜選択すればよい。固体酸または固体塩基は、例えば、1.単元系金属酸化物 2.複合系金属酸化物 3.金属硫酸塩、金属リン酸塩 4.固型化酸 5.天然鉱物、層状化合物 6.ヘテロポリ酸 7.合成ゼオライト 8.樹脂に大別される。
【0013】
固体酸としては、具体的には、天然の粘土鉱物(あるいは金属担持)、酸性白土、モンモリロナイト(あるいは金属担持)、ハイドロタルサイト(あるいは金属担持)、ヒドロキシアパタイト(あるいは金属担持)、フロリジン、シリカゲルやアルミナに硫酸やリン酸を付着させたもの、陽イオン交換樹脂、シリカ・アルミナ、シリカ・マグネシア、ゼオライト酸、ZnO、Al、TiO、SiO、MgSO、CaSO、CaCO、SnCl、AgClなどが挙げられる。
【0014】
固体塩基としては、具体的には、CaO、MgO、Al、BeO、ZnO、SiO、NaCO、シリカゲルにカセイソーダを付着させたもの、アルミナにカセイカリを付着させたもの、陰イオン交換樹脂、アルカリ金属イオンで交換されたゼオライト、ハイドロタルサイトを高温焼成した後水和したものなどが挙げられる。
【0015】
上記固体酸または固体塩基から適した固体酸または固体塩基の選択は、発色剤との関係で、酸性度・酸強度を考慮して行う。固体の酸強度は、ハメットの酸度関数Hoで表され、Hoの値が小さいほど酸強度が強い。例えば、ニュートラルレッドのように塩基性色が黄、酸性色が赤、pKaが+6.8の指示薬を赤色に変化させる固体酸のHoの値は、+6.8以下のものを選択すればよい。
【0016】
例えば、クリスタルバイオレッドを色素として用いる場合には、シリカゲル、ゼオライト、珪藻土、酸性白土、合成ハイドロタルサイト、モンモリロナイト、活性アルミナ、ZnO、ZrO、α−アルミナなどが好ましい。また、メチルレッドを色素として用いる場合には、シリカゲル、モンモリロナイト、活性アルミナなどが好ましい。また、フェノールフタレインを色素として用いる場合には、ゼオライト、合成ハイドロタルサイト、活性アルミナ、ZnOなどが好ましい。
【0017】
これらの顕色剤は、発色剤粒子と混合した場合に、発色剤分子と接触しやすい粒径を有していればよい。例えば、0.1〜100μm、好ましくは0.5〜75μm程度の粒経を有する粒子である。
【0018】
[発色剤]
本発明で使用する発色剤としては、pHの変化に伴い発色する色素であればよい。例えば、クリスタルバイオレッド(以下、「CVL」ということもある)、メチルレッド(以下、「MR」ということもある)、フェノールフタレイン(以下、「PP」ということもある)、メチルバイオレッド、チモールブルー、ブロモフェノールブルー、メチルオレンジ、ブロモチモールブルー、フェノールレッド、チモールフタレイン、ニュートラルレッド、パラニトロフェノールなどである。これらの発色剤は、上記顕色剤との関係で、好ましい発色をするものを適宜選択すればよい。
【0019】
[担体]
上記発色剤は、担体に担持させて用いる。担体は、色素を担持させた場合に発色しない中性の担体が好ましい。中性担体としては、例えば、珪藻土を炭酸ナトリウムとともに焼成したセライト(登録商標)、α−アルミナ、ZnOなどが使用できる。
【0020】
発色剤を担持させる担体は、その表面に酸点を有する場合がある。この酸点の存在により、発色剤が、温度履歴表示材の使用前に着色するおそれがある。このため、これらの担体は、事前に、水酸化カリウムなどのアルカリ金属塩、トリエチルアミン(以下、「TEA」ということもある)等のアミン化合物などを用いて、酸点を除去しておくと好ましい。
【0021】
[感温物質]
顕色剤粒子と発色剤粒子粒子との少なくとも一方を被覆する感温物質は、所望の管理温度近傍に融点を有するものを適宜用いることができる。例えば、ブチルフェノール(以下、「BP」ということもある)(融点:−7℃)、2−(トリフルオロメチル)フェネチルアルコール(以下、「TPA」ということもある)(融点:−3℃〜−2℃)、トリデカン酸メチル(以下、「MTD」ということもある)(融点:5.5℃)、ミリスチン酸エチル(以下、「EM」ということもある)(融点:10℃〜13℃)、パルミチン酸エチル(以下、「EP」ということもある)(融点:20℃〜25℃)、パルミチン酸メチル(以下、「MP」ということもある)(融点:25℃〜31℃)、ステアリン酸エチル(以下、「SAE」ということもある)(融点:33℃〜35℃)、ドコサン(融点:43℃〜46℃)、ビベンジル(以下、「BB」ということもある)(融点:50℃〜54℃)、3−ヘキサデシロキシ−1,2−プロパンジオール(以下、「HP」ということもある)(融点:64℃)、1,2−ジフェノキシエタン(以下、「DE」ということもある)(融点:95℃)などや、さらに高温度の融点を有するアルコール化合物、エステル化合物、フェノール化合物、脂肪族炭化水素、ケト化合物などが挙げられる。
【0022】
[発色剤の担持]
担体への発色剤の担持は、例えば以下のようにして行う。発色剤を溶解した有機溶媒に担体粉末を入れ、攪拌して担体粉末を分散させる。次に、この懸濁液をロータリーエバポレータを用いて濃縮乾固し、発色剤粒子を得る。担体と発色剤との配合比は、質量比で100:0.05〜150、好ましくは100:0.5〜100であればよい。
【0023】
発色剤を溶解する有機溶媒としては、発色剤が溶解できるものであれば特に制限はなく、公知の有機溶媒を使用できる。例えば、クリスタルバイオレットの場合は、塩化メチレンを用い、メチルレッド、フェノールフタレインを用いる場合は、塩化メチレン/メタノールを用いるなどである。
【0024】
[被覆層の形成]
感温物質をヘキサンなどの有機溶媒に溶解した溶液に、顕色剤粒子または上記発色剤粒子を入れて攪拌し、顕色剤粒子または上記発色剤粒子を分散させる。次に、この懸濁液をロータリーエバポレータを用いて濃縮乾固し、発色剤粒子を得る。担体と発色剤と感温物質との配合比あるいは、顕色剤粒子と感温物質との配合比は、固体酸、固体塩基、発色剤の種類により異なる。例えば、(担体+発色剤)と感温物質との配合比は、質量比で100:10〜1000、好ましくは100:20〜1000であればよい。また、顕色剤粒子と感温物質との配合比は、顕色剤粒子の質量に対して1〜20倍である。
【0025】
濃縮乾固をする際の温度は、感温物質の種類により異なる。例えば、感温物質として、ステアリン酸エチル(SAE)、ドコサン、ビベンジル(BB)を用いる場合には、20℃以下、パルミチン酸エチル(EP)、パルミチン酸メチル(MP)、ミリスチン酸エチル(EM)、トリデカン酸メチル(MTD)を用いる場合は、5℃以下である。
【0026】
感温物質で被覆する方法は、上記方法に限られない。例えば、マイクロカプセル化の液中乾燥法、噴霧法などを用いてもよい。
【0027】
本発明の組成物は、上記得られた粒子を、感温物質を溶解しない溶剤中に分散させて用いられる。これらの組成物は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、石油系樹脂、セルロース系樹脂などの樹脂を含んでいてもよい。また、色調調整剤、増量剤、安定剤、沈降防止剤、界面活性剤、分散剤などの添加剤を含有してもよい。
【0028】
本発明の組成物を、包装容器用の印刷基材へ塗布するのは、感温物質の融点以下の温度で行なわれれば、はけ、ロールコーターによる塗布や、スプレーによる吹き付け、シルクスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷といった印刷加工などが可能である。
【実施例1】
【0029】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0030】
[発色性および着色性の測定]
コーティングした色素担持中性担体20mgとコーティングした顕色剤粒子20mgを混合し、この混合粉末を2等分したものをカバーガラス2枚で挟み込んでサンプルを2組作製した。この2組のサンプルの内一方は加熱せず放置し、その着色の度合いを見た。もう一方は融点測定装置(YANACO MICRO MELTING POINT APPARATUS MP−500D)を用いて加熱溶解させ発色させた。コーティング材がSAEの場合、40℃で1分間加熱を行った。
【0031】
種々のコーティング材を用いたサンプルの発色温度を以下の方法で測定した。コーティング材がDE、HP、ドコサン、SAE、MP、EPの場合は融点測定装置を用いて、毎分約0.3℃で昇温させた。EM、MTDの場合は、サンプルを20mlビーカーに入れ、水浴に浸し、水浴の温度を上昇させて発色する温度を測定した。発色開始と完全に発色した状態は目視によって判断した。昇温はMTDの場合、毎分約0.3℃、EMの場合、毎分約0.1℃で行った。
【0032】
[反射率の測定方法]
白色標準の硫酸バリウム白板でベースライン補正を行った。その後、上記で発色性および着色性の測定作製したサンプルをスライドガラス上に固定し、これを硫酸バリウム白板と測定部の間に挟み込み反射率の測定を行った。反射率は、用いた色素の吸収主波長の反射率を読み取った。
【0033】
昇温温度と反射率の変化の測定方法は以下の方法で行った。加熱により発色させる際、発色温度の範囲内で、上昇させる限界温度の異なるサンプルを複数作成し、それぞれ反射率の測定を行った。例えば、コーティング材がSAEの場合、昇温速度毎分約0.3℃で33℃まで加熱したサンプル、34.5℃まで加熱したサンプル、35.0℃まで加熱したサンプルというように、上昇させる限界温度の異なるサンプルをそれぞれ作成し、それぞれの反射率を測定した。
【0034】
反射率は硫酸バリウムを標準物質としてShimadzu UV−3100およびUV−3100用積分球付属装置ISR−3100(島津製作所(株)製)を用いて測定した。
【0035】
(実施例1〜2)
顕色剤として、シリカゲル(ワコーシル25SIL、粒経15〜30μm、和光純薬工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、シリカゲル:SAE=4:6(質量比)の顕色剤粒子を作成した。SAE600mgをヘキサン5mlに溶解したものに、シリカゲル400mgを加え、1分間攪拌した。その後、ロータリーエバポレータにより20℃以下で濃縮乾固させた。発色剤粒子は、発色剤としてCVL(山田化学工業(株)製)を用い、担体として、セライト(登録商標、セライトコーポレーション製)を用いた。セライトは酸点処理をしないものを用いた。CVL/セライト(質量比)=0.25(実施例1)、0.11(実施例2)とした。CVLを塩化メチレンに溶解したものに、セライトを加え、1分間攪拌した。その後、ロータリーエバポレータにより20℃以下で濃縮乾固させた。また、実施例1は、感温物質として、SAEを用い、SAE/(CVL+セライト)(質量比)=1.5(実施例1)となるように、被覆した。感温物質の被覆は、顕色剤実施例2は、SAEで被覆しないものを用いた。結果を表1に示す。
【0036】
(実施例3〜5)
顕色剤として、シリカゲル(ワコーシル25SIL、粒経15〜30μm、和光純薬工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、シリカゲル:SAE=4:6(質量比)の顕色剤粒子を、実施例1と同様にして作成した。発色剤粒子は、発色剤としてCVL(山田化学工業(株)製)を用い、担体として、セライト(登録商標、セライトコーポレーション製)を、あらかじめSAEでSAE:(セライト)(質量比)=10:1で被覆して、酸点処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にして作成した。CVL/担体(質量比)=1(実施例3)、0.25(実施例4、5)とした。また、感温物質として、SAEを用い、SAE/(担体)(質量比)=1.5(実施例3)、0.25(実施例4、5)となるように、被覆した。着色性・発色性の結果を表1に示す。
【0037】
(実施例6〜10)
顕色剤として、シリカゲル(ワコーシル25SIL、粒経15〜30μm、和光純薬工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、シリカゲル:SAE=4:6(質量比)の顕色剤粒子を実施例1と同様にして作成した。発色剤粒子は、発色剤としてCVL(山田化学工業(株)製)を用い、担体として、セライト(登録商標、セライトコーポレーション製)を、あらかじめTEA中で1時間攪拌し、酸点処理を行ったものを用いた以外は実施例1と同様にして作成した。CVL/担体(質量比)=0.25(実施例6、7)、0.11(実施例8)、0.05(実施例9)、0.01(実施例10)とした。また、感温物質として、SAEを用い、SAE/(担体)(質量比)=0.23(実施例6)、4(実施例7−10)となるように、被覆した。着色性・発色性の結果を表1に示す。
【0038】
(実施例11)
顕色剤として、シリカゲル(ワコーシル25SIL、粒経15〜30μm、和光純薬工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、シリカゲル:SAE=4:6(質量比)の顕色剤粒子を実施例1と同様にして作成した。発色剤粒子は、発色剤としてCVL(山田化学工業(株)製)を用い、担体として、酸化亜鉛を、あらかじめ水酸化カリウムで処理し、酸点処理を行ったものを用いた以外は、実施例1と同様にして作成した。CVL/担体(質量比)=0.05とした。また、感温物質として、SAEを用い、SAE/(担体)(質量比)=4となるように、被覆した。着色性・発色性の結果を表1に示す。

【表1】


【0039】
実施例1からセライトを前処理していないものは、加熱前から発色していることがわかった。実施例2から、発色剤粒子に被覆処理をしていないものも加熱前から発色していることがわかった。また、実施例2から、コーティング材の量が増加するにつれ加熱前の着色は抑えられることがわかる。また、実施例3、4から、発色剤の量が多い、発色性粒子のほうが、加熱前から発色する程度が大きいことがわかる。また、実施例4〜7からコーティング材の量が増えると加熱後の発色性も抑えられていることもわかる。これらの結果から、着色性、発色性共に最適になるコーティング材の量があることがわかる。次に、実施例7〜10について反射率を測定し、色素量と反射率の関係を図2にグラフで示した。図2をみると、色素の量が少ないほど加熱前の着色は抑えられ、加熱後の発色についてはほぼ一定であった。さらに、実施例9、10を比較すると、色素量を減少させるとコーティングの量が減っても同様の着色性を示したので、色素の量を減少させることで加熱前の着色は抑えられることがわかった。また、実施例11から、酸化亜鉛を水酸化カリウムで処理したものも、顕色剤粒子として用いることができることがわかった。
【0040】
(実施例12〜15)
顕色剤として、シリカゲル(ワコーシル25SIL、粒経15〜30μm、和光純薬工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、SAE/シリカゲル(質量比)=0.2(実施例12)、1.5(実施例13)、4(実施例14)の顕色剤粒子を作成した。また、シリカゲル(粒経45〜75μm)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、SAE/シリカゲル(質量比)=0.2(実施例15)の顕色剤粒子を、実施例1と同様の製法で作成した。発色剤粒子は、実施例8と同様のものを用いた。着色性・発色性の結果を表2に示す。
【0041】
(実施例16、17)
顕色剤として、α−アルミナ(和光純薬工業(株)製)(粒経0.5μm:実施例16)、(粒経1μm:実施例17)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、SAE/α−アルミナ(質量比)=0.2(実施例16)、4(実施例17)の顕色剤粒子を実施例1と同様の製法で作成した。発色剤粒子は、実施例8と同様のものを用いた。着色性・発色性の結果を表2に示す。
【0042】
(実施例18〜20)
顕色剤として、活性アルミナ(粒経約45μm、和光純薬工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、SAE/活性アルミナ(質量比)=0.43(実施例18)、1(実施例19)、4(実施例20)の顕色剤粒子を実施例1と同様の製法で作成した。発色剤粒子は、実施例8と同様のものを用いた。着色性・発色性の結果を表2に示す。
【0043】
(実施例21)
顕色剤として、ZrO(和光純薬工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、SAE/ZrO(質量比)=1の顕色剤粒子を実施例1と同様の製法で作成した。発色剤粒子は、実施例8と同様のものを用いた。着色性・発色性の結果を表2に示す。
【0044】
(実施例22)
顕色剤として、ゼオライト(HS−USY、東ソー(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、SAE/ゼオライト(質量比)=4の顕色剤粒子を実施例1と同様の製法で作成した。発色剤粒子は、実施例8と同様のものを用いた。着色性・発色性の結果を表2に示す。
【0045】
(実施例23)
顕色剤として、合成ケイ酸マグネシウム(キョーワード700、粒経45μm以下、協和化学工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、SAE/合成ケイ酸マグネシウム(質量比)=4の顕色剤粒子を実施例1と同様の製法で作成した。発色剤粒子は、実施例8と同様のものを用いた。着色性・発色性の結果を表2に示す。
【0046】
(実施例24)
顕色剤として、合成ケイ酸マグネシウム(キョーワード500、粒経45μm以下、協和化学工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、SAE/合成ケイ酸マグネシウム(質量比)=4の顕色剤粒子を実施例1と同様の製法で作成した。発色剤粒子は、実施例8と同様のものを用いた。着色性・発色性の結果を表2に示す。
【0047】
(実施例25)
顕色剤として、酸性白土(和光純薬工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、SAE/合成ケイ酸マグネシウム(質量比)=4の顕色剤粒子を実施例1と同様の製法で作成した。発色剤粒子は、実施例8と同様のものを用いた。着色性・発色性の結果を表2に示す。
【0048】
(実施例26)
顕色剤として、モンモリロナイト(Johnson Matthey Alfa Products(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、SAE/モンモリロナイト(質量比)=4の顕色剤粒子を実施例1と同様の製法で作成した。発色剤粒子は、実施例8と同様のものを用いた。着色性・発色性の結果を表2に示す。
【表2】


【0049】
また、実施例12〜14および実施例18〜20の着色性・発色性について反射率を測定し、固体酸に対するコーティング材の量と反射率の関係を図3にグラフで表した。図3からわかるように、表中の目視による評価と反射率には相関性が見られた。図3を見るとコーティング材が増加するにつれ加熱前の着色は抑えられ、加熱後の発色についても抑えられている。
【0050】
実施例14、17、20〜26と、実施例15、16とから、固体酸の種類が変化しただけで、着色性・発色性に違いが見られることがわかる。それぞれについて反射率を測定し図4に示した。これは固体酸の酸性質に関係していると考えられた。CVLとの発色が濃い固体酸ほど、加熱後の発色も濃くなり、加熱前の着色も濃くなるという傾向が見られた。CVLの着色が中程度であった活性アルミナは実施例18、19のようにコーティング材の量を減らしても着色性に変化はなく、加熱後の発色は濃くなった。このことから、固体酸のCVLとの着色の度合いによって最適なコーティング材の量があることがわかる。実施例12、15から、粒径が小さい方が加熱後の発色性が良好であることがわかる。これは粒子が小さいほうが重量あたりの表面積が大きいために発色に差が出たと考えられる。
【0051】
(実施例27〜35)
顕色剤として、シリカゲル(ワコーシル25SIL、粒経15〜30μm、和光純薬工業(株)製)を用い、感温物質として、DE(シグマ−アルドリッチ社製)、HP(Wケミカル社製)、BB(和光純薬工業(株)製)、ドコサン(和光純薬工業(株)製)、SAE(和光純薬工業(株)製)、MP(和光純薬工業(株)製)、EP(和光純薬工業(株)製)、EM(和光純薬工業(株)製)、MTD(東京化成工業(株)製)を用いて、感温物質/シリカゲル(質量比)=4の顕色剤粒子を作成した。感温物質として、SAE、ドコサン、BBを用いる場合には、20℃以下、EP、MP、EM、MTDを用いる場合は、2℃以下で、濃縮乾固した以外は、実施例1と同様にした。発色剤粒子は、TEAのみで処理したセライトを担体として、担体重量の0.05倍のCVLを担持し、その上に、質量で4倍の上記感温物質で被覆して、実施例1と同様の製法で作成した。顕色剤粒子と発色剤粒子に用いた感温物質は同一のものを用いた。着色性・発色性の結果を表3に示す。
【表3】


【0052】
表3から、どの感温物質を用いても、着色性、発色性については大きな差異はないことがわかる。感温物質としてBBを用いたものは他に比べ加熱前の着色が見られるが、これは、CVL担持セライトにBBを被覆する際に原因がある可能性があると考えられた。その理由として、BB、CVLはともにその構造にベンゼン環を有しているため、ヘキサン中のBBによってCVLの溶解性が高まり、溶液中にCVLが溶出し、溶媒を減圧留去した際に色素がコーティング表面に露出したことが考えられる。
【0053】
発色温度を測定した結果、どの感温物質を用いた場合でも、感温物質が溶融し始めると同時に発色し始めた。感温物質が完全に溶融すると発色が最も濃くなった。発色温度は感温物質の融点にほぼ一致し、さらに、極めて狭い温度範囲(0.5℃程度)において劇的に発色することが観察された。
【0054】
実施例29の条件で、感温物質にSAEを用いたサンプルの上昇温度による反射率の変化を測定した。結果を図5に示す。図5から、SAEの融点の範囲で反射率の変化が見られ、上昇温度が高くなるにつれて反射率が小さくなっていることがわかる。これは、温度が上昇するにつれてSAEが融解していき、それにつれてサンプルの発色部分が増加していったためであると考えられた。
【0055】
(実施例36)
顕色剤として、シリカゲル(ワコーシル25SIL、粒経15〜30μm、和光純薬工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、シリカゲル:SAE=1:4(質量比)の顕色剤粒子を実施例1と同様の製法で作成した。発色剤粒子は、発色剤としてCVLを用い、担体として、セライト(登録商標、セライトコーポレーション製)を用いた。CVL/担体(質量比)=0.11とした。また、感温物質として、SAEを用い、SAE/(担体)(質量比)=4となるように被覆して、実施例1と同様の製法により、発色剤粒子を得た。実施例36の可視領域における反射スペクトルを図6に示す。
【0056】
(実施例37)
顕色剤として、シリカゲル(ワコーシル25SIL、粒経15〜30μm、和光純薬工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、シリカゲル:SAE=1:4(質量比)の顕色剤粒子を実施例1と同様の製法で作成した。発色剤粒子は、発色剤としてメチルレッド(MR)(和光純薬工業(株)製)を用い、担体として、セライト(登録商標、セライトコーポレーション製)を用いた。MR/担体(質量比)=0.11とした。また、感温物質として、SAEを用い、SAE/(担体)(質量比)=4となるように、被覆して、実施例1と同様の製法により、発色剤粒子を得た。なお、溶媒は、塩化メチレン・メタノール混合溶媒(体積比1:1)を用いた。実施例37の可視領域における反射スペクトルを図7に示す。
【0057】
図6と図7とから、MRを用いたほうは加熱前にも色素による大きな吸収が見られることがわかる。これは、MRは塩基性から中性にかけては黄色であるためである。MRは酸性で赤色となるが、加熱後のスペクトルは、加熱前の吸収波長領域を含んで幅広い波長範囲の吸収がみられた。酸点によって赤く変色する色素と酸点に接触せず黄色のままになった色素があるためと考えられた。
【0058】
(実施例38)
顕色剤として、合成ケイ酸アルミニウム(キョーワード500、協和化学工業(株)製)を用い、感温物質として、SAE(和光純薬工業(株)製)を用いて、シリカゲル:SAE=1:4(質量比)の顕色剤粒子を実施例1と同様の製法で作成した。発色剤粒子は、発色剤としてフェノールフタレイン(PP)(和光純薬工業(株)製)を用い、担体として、セライト(登録商標、セライトコーポレーション製)を用いた。PP/担体(質量比)=0.11とした。また、感温物質として、SAEを用い、SAE/(担体)(質量比)=4となるように、被覆して、実施例1と同様の製法により、発色剤粒子を得た。なお、溶媒は、塩化メチレン・メタノール混合溶媒(体積比4:1)を用いた。実施例38の可視領域における反射スペクトルを図8に示す。
【0059】
図8から、CVLと固体酸を用いた場合と同様にPPと固体塩基を用いても良好に発色することがわかった。
【0060】
(実施例39)
ハイドロタルサイトと置換基にヒドロキシル基を持つPPを用いて、水中で実験を行ったところ、良好に発色した。発色温度は0.2〜1.5℃(昇温速度0.3℃/分)だった。また、−20℃に温度を下げても発色状態は維持された。固体塩基も固体酸と同様一般的に水中では機能しない。しかし、ハイドロタルサイトは層状粘土鉱物で層間に炭酸イオンを保持しており、これがイオン交換することで発色したイオン状態のPPが配位したために良好に発色したと思われる。この実施例から、用いる固体酸または固体塩基を選択することで、水を感温物質として使えることがわかった。
【0061】
(実施例40)
感温物質としてTPA(シグマ−アルドリッチ社製)(融点−3〜−2℃)を用いた。TPAは液体窒素とアセトンを用い−20℃以下で凝固した。ビーカー底部に置いたカバーガラス上でTPAで被覆したCVL担持セライトとTPAで被覆したシリカゲルを混合させ、アイスバスの温度を−20℃から毎分約0.3℃上昇させた結果、−13℃で一部が発色、−1.5℃で解け始め、−0.5℃で全て解け完全に発色した。このことから、TPAも、感温物質として使えることがわかった。
【0062】
(実施例41)
感温物質としてBP(和光純薬工業(株)製)(融点−7℃)を用いた。BPはCVLを青く発色させるため、被覆していないCVL担持セライトとBPを粉体にしたものを混合することでサンプルを作成した。サンプル管にBPをとり、そこに液体窒素を加えて撹拌することでBP粉体を作成した。CVL担持セライトとBP粉体をビーカー底部に置いたカバーガラス上で混合し、アイスバスの温度を上昇させた結果、混合して約1分後バス温が−52℃で一部が発色した。作成したBP粉体は−52℃で溶解し始め徐々に粘性が下がっていった。このことから、BPも、感温物質として使えることがわかった。

【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明の温度履歴表示材組成物にかかる顕色剤粒子と発色剤粒子の構造を示す図である。
【図2】図2は、実施例7、8、9、10について反射率を測定し、色素量と反射率の関係を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例12〜14および実施例18〜20の着色性・発色性について反射率を測定し、固体酸に対するコーティング材の量と反射率の関係を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例14、17、20、22〜26と、実施例15、16の着色性・発色性について反射率を測定し、固体酸の種類と反射率の関係を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例29の条件で、感温物質にSAEを用いたサンプルの上昇温度による反射率の変化を測定した結果を示すグラフである。
【図6】図6は、実施例36の可視領域における反射スペクトルを示すグラフである。
【図7】図7は、実施例37の可視領域における反射スペクトルを示すグラフである。
【図8】図8は、実施例38の可視領域における反射スペクトルを示すグラフである。
【出願人】 【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
【識別番号】000134637
【氏名又は名称】株式会社ナード研究所
【出願日】 平成18年7月10日(2006.7.10)
【代理人】 【識別番号】100110984
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 敬子

【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹


【公開番号】 特開2008−14884(P2008−14884A)
【公開日】 平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願番号】 特願2006−188825(P2006−188825)