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【発明の名称】 潤滑剤の添加成分量の検査方法
【発明者】 【氏名】此本 武美

【要約】 【課題】製造された潤滑剤に所定の添加剤が所定量だけ添加されているかどうかを調べる検査を行なえるようにし、添加成分の品質確認検査を簡便に行なえるようにすることである。

【構成】有色系成分を添加して調製された潤滑剤の前記添加された二硫化モリブデンなどの有色系成分の添加量を調製後に測定して検査する際、予め前記有色系成分の添加量が既知である潤滑剤のUCS色空間における色の座標値L、a*、b*を色彩計で測定しておくと共に、前記有色系成分の所定添加量における座標値と他の添加量における座標値との距離差を色差として算出して有色系成分の添加量と色差との関係を表わす検量線を作成しておき、次に有色系成分の種類が同一でありかつその添加量が異なる測定対象の潤滑剤の色空間における座標値を色彩計で測定し、この座標値と前記所定の添加量における座標値との色差を算出し、この色差に対応する検量線上の有色系成分の添加量を検査値として評価することからなる潤滑剤の添加成分量の検査方法とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色系成分を添加して調製された潤滑剤の前記添加された有色系成分の添加量を調製後に測定して検査する際、予め前記有色系成分の添加量が既知である潤滑剤の色空間における座標値を色彩計で測定しておくと共に、前記有色系成分の所定添加量における座標値と他の添加量における座標値との距離差を色差として算出して有色系成分の添加量と色差との関係を表わす検量線を作成しておき、次に有色系成分の種類が同一でありかつその添加量が異なる測定対象の潤滑剤の色空間における座標値を色彩計で測定し、この座標値と前記所定の添加量における座標値との色差を算出し、この色差に対応する検量線上の有色系成分の添加量を検査値として評価することからなる潤滑剤の添加成分量の検査方法。
【請求項2】
色空間における座標値が、UCS色空間における色の座標値L、a*、b*である請求項1に記載の潤滑剤の添加成分量の検査方法。
【請求項3】
有色系成分が、無機物系添加剤である請求項1または2に記載の潤滑剤の添加成分量の検査方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、軸受などに充填される潤滑剤の品質管理の指標となる潤滑剤の添加成分量の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、潤滑油や潤滑グリースなどの潤滑剤には、耐摩耗剤、極圧剤、酸化防止剤、錆止め剤、防食剤などの様々な添加剤が添加されており、これらは製品とする潤滑剤の機能やグレードに合わせて所定量だけ配合して調製されている。
【0003】
このように調製された製品の潤滑剤は、所定の添加剤が所定量だけ添加されているかどうか、品質確認のための検査を行なうことが好ましく、例えば潤滑剤中の金属成分は、X線分析装置で定量分析することにより品質検査ができる。
【0004】
また、潤滑剤の近赤外スペクトルを多変量解析して性状と性能を予測すると共に、予測値と実測値からなる検量線のモデルパラメータを作成し、未知潤滑剤の近赤外スペクトルの測定結果と前記検量線のモデルパラメータから未知潤滑剤の性状や性能を推定し、この結果により潤滑剤の管理を行なう方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−194124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記した従来技術のうち、X線分析装置で定量分析する場合は、持ち運びが不便な大掛かりなX線分析装置を用いるので、測定に手間がかかるという問題点がある。
【0007】
また、潤滑剤の近赤外スペクトルを多変量解析する方法では、潤滑剤の性能や劣化状態を調べることを可能にしているが、添加剤の配合量を調べて製造直後の品質を調べるという課題を解決するものではなかった。
【0008】
そこで、この発明の課題は、上記した問題点を解決して、製造された潤滑剤に所定の添加剤が所定量だけ添加されているかどうかを調べる検査を行なえるようにし、すなわち潤滑剤の添加成分の品質確認検査を簡便に行なえるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明においては、有色系成分を添加して調製された潤滑剤の前記添加された有色系成分の添加量を調製後に測定して検査する際、予め前記有色系成分の添加量が既知である潤滑剤の色空間における座標値を色彩計で測定しておくと共に、前記有色系成分の所定添加量における座標値と他の添加量における座標値との距離差を色差として算出して有色系成分の添加量と色差との関係を表わす検量線を作成しておき、次に有色系成分の種類が同一でありかつその添加量が異なる測定対象の潤滑剤の色空間における座標値を色彩計で測定し、この座標値と前記所定の添加量における座標値との色差を算出し、この色差に対応する検量線上の有色系成分の添加量を検査値として評価することからなる潤滑剤の添加成分量の検査方法としたのである。
【0010】
上記したように構成されるこの発明の検査方法では、検査に先立って、複数(可及的に多数であることが好ましい。)の既知添加量の潤滑剤の色空間における色の座標値を色彩計で測定しておき、有色系成分の所定の添加量における座標値と他の添加量(他の添加量として0としても良い)における座標値との距離差を色差として算出し、有色系成分の添加量と色差との関係を表わす検量線を作成しておく。
【0011】
次に品質管理の対象となる有色系成分添加量未知の潤滑剤の座標値を色彩計で測定するには、有色系成分の種類が同一でありかつ添加量が異なる測定対象の潤滑剤の色空間における座標値を色彩計で測定する。
そして、この座標値と前記所定の添加量における座標値との色差を算出し、この色差に対応する検量線上の有色系成分の添加量を検査値として評価する。
【0012】
このように検査して算出された有色系成分の検査値は、配合されているべき配合量と比較して差異があれば、実際に製品の潤滑剤に添加されている有色系成分量が過剰または不足する可能性があり、再調整などの回復処理を迅速に行なえるように管理することができる。
【0013】
この発明の検査方法としては、種々に規定される色空間について適用できるものであるが、特に色空間における座標値が、UCS色空間における色の座標値L、a*、b*である場合も行なうことができるものである。
【0014】
有色系成分としては、種々の添加剤に使用される無機物系化合物または有機物系化合物が挙げられる。無機物系の添加剤としては、例えば極圧剤として用いられる二硫化モリブデンまたはグラファイトなどが添加量に比例した着色性が現れるので、測定しやすい有色系成分として好ましいものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、潤滑剤の色空間における複数の座標値を色彩計で測定し、これを色差として算出して有色系成分の添加量と色差との関係を特定し、測定対象の潤滑剤について色差に対応する検量線上の有色系成分の添加量を検査値として評価する方法であるから、製造された潤滑剤に所定の添加剤が所定量だけ添加されているかどうかを調べる検査が色彩計で行なえるようになり、潤滑剤の添加成分の品質確認検査を簡便に行なえるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の実施形態として、以下に無機物系添加剤などの有色系成分を所定量添加して調製された潤滑グリースなどの潤滑剤について、添加された有色系成分の添加量を調製後に測定して検査する方法について詳細に説明する。
【0017】
先ず、測定する以前に予め前記有色系成分の添加量が既知である潤滑剤の色空間における座標値を色彩計で測定しておくと共に、前記有色系成分の所定(0以上)の添加量における座標値と他に変量とする添加量における座標値との距離差を色差として算出して有色系成分の添加量と色差との関係を表わす検量線を作成しておく。
【0018】
ここで、この発明における測定対象となる有色系成分としては、潤滑剤について通常、配合される添加剤であって配合量に対する着色性の関係が明瞭に現れるものが好ましく、すなわち色彩計で検知可能な成分であれば良く、例えば無機物系添加剤もしくは金属成分を含む添加剤である二硫化モリブデン(鋼灰色)やグラファイト(黒または鋼灰色)などが挙げられる。また、錆止め剤としての亜硝酸ナトリウム(白色または微黄色)なども挙げられる。
【0019】
そして、この発明では、有色系成分が2色または3色以上の複数成分であっても、各成分の混合率を算出することにより、複数の添加剤を配合する場合でも合計添加量などを測定することが可能である。
【0020】
この発明における潤滑剤は、有色系成分が配合された組成物からなる潤滑剤であればよく、具体的には潤滑油または潤滑グリースである。
【0021】
この発明でいう色空間としては、色を数値化する方法として、刺激値直読方法と分光側色方法により色彩計で座標として測定される色空間を示すものであり、例えばLa*b*表色系、ハンターLab表色系、XYZ(Yxy)表色系、マンセル表色系、LC*h表色系などが挙げられる。
【0022】
XYZ表色系は、(Yxy)表色系とも称されるが、国際照明委員会が定めた表示基準であり、XYZの3種の色光を原刺激とする混色系の表色系であって、Yは赤、Yは緑、Zは青の色光である。なお、一般に光の三刺激値は、分光測色方法により求められ、国際照明委員会によって三刺激値に記号X、Y、Zを用いることが定められている。
【0023】
マンセル表色系またはLC*h表色系は、色を色相H(またはh)、明度V(またはL)、彩度C(またはC)の3つの属性で表す表色系である。
【0024】
図1に示すようなLa*b*表色系は、わが国の工業分野での色彩管理における色差の測定に最も広く用いられている表色系であり、Lは0〜100に区分された明度であり、a*はプラス方向に赤、マイナス方向に緑を示し、bはプラス方向に黄色、マイナス方向に青を示している。
【0025】
三次元の色立体として把握される座標上の値として、例えばL、a*、b*表色系における座標値のL、a*、b*は、色差を求めるための周知の光電色度計(受光器に光電池を用いた光電管)とも呼ばれる色差計によって求められる。すなわち、色差計としては、Richard S. Hunter による「Color and Color-Difference Meter」などを使用できる。
【0026】
次に、この発明では、有色系成分の種類が同一でありかつ添加量が異なる測定対象の潤滑剤の色空間における座標値を色彩計で測定する。そして、この座標値と前記所定の添加量における座標値との色差を算出し、この色差に対応する検量線上の有色系成分の添加量を検査値として評価する。
【0027】
ここで、この発明でいう色差とは、色の違いを数値で表したものであり、代表例としては、La*b*表色系における色差ΔEabの計算は、La*b*の差の2乗値の和の平方根を求めるものであり、式で示せば下記の式で示されるものである。
【0028】
ΔEab=〔(ΔL+(Δa*)+(Δb*)1/2
(但し、ΔL、Δa*、Δb*はそれぞれLa*b*の差である。)
【0029】
このような表色系に対して、予め前記有色系成分の添加量が既知である潤滑剤の色空間における座標値を色彩計で測定しておく。その際に、添加量が0の場合を含め、できるだけ細かい間隔で多くの添加量の数値を変量として、座標値のデータを集めておくことが、精密な検量線を作成するために好ましい。
【0030】
すなわち、これら有色系成分の所定添加量における座標値は、前記添加量と異なる他の添加量における座標値と比較し、その距離差を前記した式における色差ΔEabとして算出し、これにより有色系成分の添加量と色差との関係を表わす図2に示すような検量線を作成する。
【0031】
次に有色系成分の種類が同一でありかつその添加量が異なる測定対象の潤滑剤の色空間における座標値を色彩計で測定する。
【0032】
このときに得られる座標値と、添加量0における座標値(またはその他の所定の添加量における座標値であってもよい。)との色差を算出し、この色差に対応する検量線上の有色系成分の添加量を検査値として評価することができる。
【実施例1】
【0033】
ウレア系潤滑グリースに添加剤として二硫化モリブデンのみを添加した場合を実施例として以下に説明する。
【0034】
有色系成分の添加量が既知である潤滑剤として、ウレア系潤滑グリースに、二硫化モリブデンの添加量(重量%)を、それぞれ0、0.4、0.5、0.6、1.0、2.0、3.0添加したものを調製した。
【0035】
この7種類の添加量既知の潤滑グリースを三刺激値直読方法による色彩計(コニカミノルタセンシング社製)で測定し、結果をLa*b*表色系により図1に示した。
【0036】
二硫化モリブデンの添加量(重量%)に対応する座標値の例を以下に列挙する。
二硫化モリブデン添加量 0重量%:(L*,a*,b)=(63.853,-0.779,24.572)
二硫化モリブデン添加量0.4重量%:(L*,a*,b)=(39.188,-2.352,-0.702)
二硫化モリブデン添加量0.5重量%:(L*,a*,b)=(36.886,-1.596,-1.699)
二硫化モリブデン添加量0.6重量%:(L*,a*,b)=(36.590,-1.655,-1.862)
二硫化モリブデン添加量1.0重量%:(L*,a*,b)=(33.856,-0.803,-2.640)
二硫化モリブデン添加量2.0重量%:(L*,a*,b)=(30.198, 0.246,-2.818)
二硫化モリブデン添加量3.0重量%:(L*,a*,b)=(29.4 ,0.437,-2.649)
【0037】
重回帰式は、以下の式で示される。
重回帰式:−1.392×L−0.979×a+1.179×b+29.123
【0038】
次に、有色系成分の添加量0における座標値と、他の添加量(0.4、0.5、0.6、1.0、2.0、3.0重量%)における座標値との距離差を色差ΔEabとして算出して有色系成分の添加量と色差との関係を表わす検量線を作成する。有色系成分としての二硫化モリブデンの添加量(重量%)に対応する色差ΔEabの例を以下に列挙し、これらの関係を表す検量線を図2に示した。
二硫化モリブデン添加量0.4重量%:ΔEab =35.350
二硫化モリブデン添加量0.5重量%:ΔEab =37.657
二硫化モリブデン添加量0.6重量%:ΔEab =37.984
二硫化モリブデン添加量1.0重量%:ΔEab =40.501
二硫化モリブデン添加量2.0重量%:ΔEab =43.404
二硫化モリブデン添加量3.0重量%:ΔEab =43.926
【0039】
このようにすると、その後に色彩計で二硫化モリブデンの添加量が未知の潤滑グリース(二硫化モリブデン以外の組成については、上記の組成既知の潤滑グリースと同じ。)について色彩計で座標値を測定するとき、例えば添加量0の場合の座標値との色差ΔEabを求めると、この色差ΔEabに対応する検量線上の二硫化モリブデンの添加量を実際の検査値として求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1で用いた潤滑グリースのLa*b*表色系図
【図2】色差ΔEabと二硫化モリブデンの添加量の関係を示す検量線
【出願人】 【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
【出願日】 平成18年8月11日(2006.8.11)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二

【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久

【識別番号】100112575
【弁理士】
【氏名又は名称】田川 孝由

【識別番号】100084858
【弁理士】
【氏名又は名称】東尾 正博


【公開番号】 特開2008−45918(P2008−45918A)
【公開日】 平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願番号】 特願2006−219840(P2006−219840)