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【発明の名称】 分光光度計及びそのスリット装置
【発明者】 【氏名】寺倉 生剛

【要約】 【課題】連続通電できないような小型のソレノイドであっても、容易に最長オン時間を制限して過度の発熱を抑える。

【構成】分光光度計内において光量を調節するスリット機構16と、スリット機構16を切り替えるソレノイド22と、ソレノイド22への通電のオン/オフを制御する制御信号を発生する制御回路24と、ソレノイド22にスリット機構切替え用の電流を流す駆動トランジスタ26と、制御回路24と駆動トランジスタ26の間に配置され、制御信号に基づいて駆動トランジスタ26によるソレノイド22への通電を駆動する駆動信号を発生するとともに、その駆動信号の最長時間を規制する規制回路28を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光光度計内において光量を調節するスリット機構と、
前記スリット機構を切り替えるソレノイドと、
前記ソレノイドへの通電のオン/オフを制御する制御信号を発生する制御回路と、
前記ソレノイドに前記スリット機構切替え用の電流を流す駆動トランジスタと、
前記制御回路と前記駆動トランジスタの間に配置され、前記制御信号に基づいて前記駆動トランジスタによる前記ソレノイドへの通電を駆動する駆動信号を発生するとともに、その駆動信号の最長時間を規制する規制回路と、を備えたスリット装置。
【請求項2】
前記規制回路は、前記制御信号を受け、該信号の立上がり変化で作動して一定時間だけ出力信号を発生するタイマー回路と、前記制御信号と前記タイマー回路の出力信号とのアンド出力として前記駆動信号を発生するアンド回路とを備えた論理回路である請求項1に記載のスリット装置。
【請求項3】
試料室内の試料に測定光を照射し、その透過光又は反射光を検出する分光光度計であって、試料に照射される測定光又は試料から透過光もしくは反射光の光量を調節するスリット装置を備えた分光光度計において、
前記スリット装置として請求項1又は2に記載のスリット装置を備えたことを特徴とする分光光度計。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の吸収スペクトル等を測定する分光光度計と、分光光度計内において光量を調節するスリット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分光光度計は光源からの光を分光器で分光し測定試料に照射することにより、又は光源からの光を測定試料に照射した後に分光器で分光することにより、その各波長における透過率や反射率を測定する装置である。
【0003】
分光光度計の暗箱内には光量を調節するスリット装置が設けられている(特許文献1参照。)。スリット装置でスリットを切り替える時、スリット位置を移動させるためにソレノイドを使用する。ソレノイドを駆動するために、CPU(中央処理装置)からソレノイドの通電をオン/オフ制御する信号が出力され、駆動トランジスタがその信号を受けてソレノイドに電流を流す。
【0004】
ソレノイドは、連続通電時でもコイルからの発熱による温度上昇が大きくならないようにするために、必要な能力以上に大きなものが使用されている。
【特許文献1】特開2003−166878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分光光度計を小型化するためにソレノイドを小型化しようとすると、ソレノイドのコイル通電時の発熱を放熱するだけの十分な体積をもたせることが難しくなるので、温度が上昇してソレノイドを焼損しやすい。また過度の温度上昇は暗箱内に不要なガスの放出を招くので好ましくない。
【0006】
ソレノイドのコイル通電時の発熱を抑えるために、従来は、CPUのプログラムによってソレノイドの通電時間を制限していた。しかしCPUのプログラムのバグ、又は外来ノイズ等によるCPUの暴走が発生すると、場合によってはソレノイドが常にオンとなってしまうおそれがある。そのため、このような問題を回避するには高度な信頼性を持ったプログラムや、十分なEMC耐性(Electric Magnetic Compatibility:電磁耐性)が必要となり、コストの上昇を招く。
【0007】
本発明の目的は、連続通電できないような小型のソレノイドであっても、容易に最長オン時間を制限して過度の発熱を抑えることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスリット装置は分光光度計内において光量を調節するスリット機構と、前記スリット機構を切り替えるソレノイドと、前記ソレノイドへの通電のオン/オフを制御する制御信号を発生する制御回路と、前記ソレノイドに前記スリット機構切替え用の電流を流す駆動トランジスタと、前記制御回路と前記駆動トランジスタの間に配置され、前記制御信号に基づいて前記駆動トランジスタによる前記ソレノイドへの通電を駆動する駆動信号を発生するとともに、その駆動信号の最長時間を規制する規制回路とを備えている。
【0009】
ソレノイドをオフからオンにする場合、CPUから制御信号が出力されると、駆動トランジスタによってスリット機構切替え用の電流が流され、CPUからの制御信号がオフになるとソレノイドへの通電もオフになる。スリット機構切替え用電流の通電時間は、その最長時間が規制回路により定まる時間を越えることはできないので、CPUから制御信号が出力し続けたとしても、規制回路により定まる時間の後に強制的にオフにされる。
【0010】
規制回路の一例は、前記制御信号を受け、該信号の立上がり変化で作動して一定時間だけ出力信号を発生するタイマー回路と、前記制御信号と前記タイマー回路の出力信号とのアンド(AND)出力として前記駆動信号を発生するアンド回路とを備えた論理回路である。
【0011】
この場合、ソレノイドをオフからオンにする場合、CPUから制御信号が出力されると、タイマー回路が作動して一定時間だけオン信号を出力する。CPUからの制御信号とタイマー回路出力信号とのアンドがソレノイド駆動信号となる。
【0012】
CPUから制御信号が出力し続けた場合でも、タイマー回路により定まる一定時間が経過するとソレノイド駆動信号はオフとなる。
【0013】
また、タイマー回路が作動状態でオン信号を出力している状態にある場合でも、CPUからの制御信号がオフとなることによりソレノイド駆動信号はオフとなる。
【0014】
本発明の分光光度計は、試料室内の試料に測定光を照射し、その透過光又は反射光を検出する分光光度計であって、試料に照射される測定光又は試料から透過光もしくは反射光の光量を調節するスリット装置を備えており、そのスリット装置として本発明のスリット装置を備えたものである。
【発明の効果】
【0015】
CPUプログラムとは独立にソレノイド通電時間の最長値を決めることができるので、分光光度計のスリット装置に通電時間制限のあるような小型のソレノイドを採用することができる。
【0016】
また、分光光度計はこのスリット装置を備えているので、暗箱内の温度上昇を抑えることができる。そして、プログラムのバグや暴走した場合に備えてソレノイドの温度上昇を抑えるために温度モニタを追加したり、温度ヒューズなどの過熱保護部品を追加したりする必要がない。プログラムのバグや暴走を完全に防ぐのは難しく、開発コストもかかるが、本発明におけるタイマー回路の追加は容易であり、安価に実現できる。その結果、分光光度計の小型化とコストダウンを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は分光光度計の一実施例を示す概略構成図である。
暗箱10内には分光光度計の光学系を構成する光学素子などが配置されている。光源12からの測定光束は回折格子14、複数のバンド幅変換用スリットが穿設された出口スリット板16及び試料室18を通過し、検出器部20に入射する。検出器部20は光電気変換素子を備え、光強度を電気信号として取り出す。
【0018】
出口スリット板16は分光光度計内において光量を調節するスリット機構を構成するものである。スリット装置はそのスリット機構と、スリット機構の出口スリット板16を切り替えるソレノイド22と、ソレノイド22への通電のオン/オフを制御する制御信号を発生する制御回路としてのCPU24と、ソレノイド22にスリット機構切替え用の電流を流す駆動トランジスタ26と、CPU24と駆動トランジスタ26の間に配置され、制御信号に基づいて駆動トランジスタ26によるソレノイド22への通電を駆動する駆動信号を発生するとともに、その駆動信号の最長時間を規制する規制回路28とを備えている。
【0019】
規制回路28は、この実施例では、論理回路として実現されている。規制回路28は、CPU24からの制御信号を受け、その制御信号の立上がり変化で作動して一定時間だけ出力信号を発生するタイマー回路30と、CPU24からの制御信号とタイマー回路30の出力信号とのアンド出力として駆動トランジスタ26へ供給するソレノイド通電駆動用の駆動信号を発生するアンド回路32を備えている。
【0020】
タイマー回路30にはソレノイド22の連続通電可能時間又はそれよりも短い時間を設定する。この実施例においては、ソレノイド22の連続通電可能時間が1秒であるとして、タイマー回路30のタイマー時間を1秒に設定する。
【0021】
図2により同実施例の動作を説明する。
CPU24がソレノイド22をオンしようとする場合、CPU24がハイレベル信号の制御信号を出力する。タイマー回路30はCPU24から出力された制御信号の立ち上がりエッジを検出してタイマーを始動させ、タイマー回路30の出力信号は1秒間だけハイレベルとなる。CPU24からの制御信号とタイマー回路30の出力信号はアンド回路32に入力されるので、CPU24からの制御信号とタイマー回路30の出力信号の両方がハイレベルのときにアンド出力である駆動信号がハイレベルとなり、駆動トランジスタ26がオンとなり、ソレノイド22に通電される。
【0022】
図2(A)に示されるように、CPU24からハイレベルの制御信号が発生した後、タイマー回路30がオン状態になっている1秒間よりも短い時間で制御信号がローレベルに切り替わると、その時点でソレノイド22の通電が遮断される。これが正常な動作である。
【0023】
一方、図2(B)に示されるように、CPU24からハイレベルの制御信号が発生した後、タイマー回路30がオン状態になっている1秒間よりも長い時間にわたってCPU24がハイレベルの制御信号を出力し続けた場合でも、CPU24からハイレベルの制御信号が発生してから1秒後にタイマー回路30の出力信号がローレベルに切り替わることにより、ソレノイド22の通電が遮断される。これはCPU24が外来信号により誤作動した場合などに相当するが、その場合でもソレノイド22の連続通電の事態は避けることができる。
【0024】
この実施例における規制回路28はタイマー回路30とアンド回路32とを備えた論理回路として実現することができるので、集積回路として実現する場合は、PLD(プログラマブル・ロジック・デバイス)を利用するのが好ましい。PLDは半導体ウエハにトランジスタが予め形成された半製品として用意されており、それに仕様にあわせて配線を形成することにより所望の集積回路が完成するものである。多品種少量の半導体集積回路の生産に適した方法である。
【0025】
また、規制回路28は電子部品を組み合わせて構成することもできる。
さらに、規制回路28はCPU24又は他のCPU24を利用してプログラムとして組み込むことにより実現することもできる。
【0026】
実施例におけるスリット機構の出口スリット板16はスリット幅の異なる2つの穴がつながったものを示している。そのスリット板16を矢印方向に移動させることにより、スリット幅を変更することができる。しかし、図示のスリット板16は概略的に示したものであり、本発明のスリット装置で切り替えられるスリット板はそのようなものに限定されるものではない。
【0027】
図3は他の出口スリット板を備えたスリット機構の例を示したものである。
(A)は回転型切替方式であり、出口スリット板40の回転により適切なスリットを選択する。(B)は直線型切替方式であり、スリット板42の直線移動により適切なスリットを選択するもので、スリットの穴の形状は図1のものと異なるものの、基本的には同じものである。(C)は連続可変型切替方式であり、穴をもち固定されたスリット板44に対してスライド板46の直線移動によりスリット幅を選択するものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】分光光度計の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】同実施例の動作を示す波形図であり、(A)は正常動作時、(B)はCPUの異常動作時を示している。
【図3】スリット機構の他の例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
10 暗箱
12 光源
14 回折格子
16 出口スリット板
18 試料室
20 検出器部
22 ソレノイド
24 CPU
26 駆動トランジスタ
28 規制回路
【出願人】 【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
【出願日】 平成18年7月14日(2006.7.14)
【代理人】 【識別番号】100085464
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 繁雄


【公開番号】 特開2008−20418(P2008−20418A)
【公開日】 平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願番号】 特願2006−194625(P2006−194625)