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【発明の名称】 異常監視装置
【発明者】 【氏名】橋本 良仁

【氏名】姫澤 秀和

【要約】 【課題】ニューラルネットワークの重みベクトルの設定に必要な設定データを外部装置から受け取り、実使用時には外部装置とは独立して動作する異常監視装置を提供する。

【解決手段】信号入力部2は機器Xの動作を検出するセンサYの出力である電気信号を取り込む。特徴抽出部3は電気信号から検査の対象である対象信号を切り出し、対象信号の特徴を表す特徴ベクトルを抽出する。カテゴリ分類部1は、競合学習型ニューラルネットが用いられ、あらかじめ出力層のニューロンに対応付けた重みベクトルと特徴ベクトルとのユークリッド距離により、特徴ベクトルのカテゴリを分類する。カテゴリ分類部1の各ニューロンに設定される重みベクトルは、サービスインターフェイス4を介して外部装置Bから設定データとして与えられ、異常監視装置Aは設定データが外部装置Bから与えられた後は、外部装置Bを切り離して使用可能になる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の動作を反映する電気信号を対象信号とし信号入力部により取り込んだ対象信号の特徴を表す特徴ベクトルを抽出する特徴抽出部と、ニューラルネットワークを用い各ニューロンに重みベクトルを設定した後に特徴抽出部により抽出した特徴ベクトルのカテゴリを分類するカテゴリ分類部と、カテゴリ分類部における重みベクトルの設定に必要な設定データを外部装置との間で授受するサービスインターフェイスとを一体に備え、設定データの受け取り後には外部装置とは独立して動作することを特徴とする異常監視装置。
【請求項2】
前記設定データは、前記カテゴリ分類部の各ニューロンに設定する重みベクトルであることを特徴とする請求項1記載の異常監視装置。
【請求項3】
カテゴリが既知である学習データを記憶する学習データ記憶部を備え、前記ニューラルネットワークは競合学習型ニューラルネットワークであって、前記カテゴリ分類部は、学習データ記憶部に記憶された学習データが与えられると各ニューロンに重みベクトルを設定する学習モードと、学習モードにより設定された重みベクトルを用いて特徴ベクトルのカテゴリを分類する検査モードとを有し、前記設定データは、学習データ記憶部に記憶する学習データであることを特徴とする請求項1記載の異常監視装置。
【請求項4】
前記特徴抽出部は、電気信号のうち対象信号として取り出す範囲と、対象信号から抽出する特徴ベクトルの種類との少なくとも1要素を調節要素として選択可能であって、前記設定データは調節要素を選択するデータであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の異常監視装置。
【請求項5】
前記外部装置は、検査対象の動作を反映する電気信号を取り込む解析用信号入力部と、解析用信号入力部により取り込んだ電気信号を記憶する信号記憶部と、信号記憶部に記憶させた電気信号から対象信号として取り出す範囲を選択するとともに対象信号の特徴を表す特徴ベクトルを複数種類から選択して抽出する解析用特徴抽出部と、解析用特徴抽出部により抽出した特徴ベクトルを記憶する特徴ベクトル記憶部と、特徴ベクトル記憶部に格納した特徴ベクトルを用いて学習が行われるニューラルネットワークであって学習後には解析用特徴抽出部により抽出した特徴ベクトルのカテゴリを分類する解析用カテゴリ分類部と、検査対象の運転に伴って解析用信号入力部で取り込んだ電気信号について解析用カテゴリ分類部での分類結果を提示する提示手段とを備え、解析用特徴抽出部において電気信号から対象信号を取り出す範囲と対象信号から抽出する特徴ベクトルの種類との組み合わせのうち所望の分類結果が得られる組み合わせを前記特徴抽出部の調節要素として選択可能な範囲で選択し、選択した組み合わせを前記特徴抽出部に与えることを特徴とする請求項4記載の異常監視装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の動作を反映した電気信号の特徴をニューラルネットワークで分類することにより、検査対象の動作の異常の有無を判定する異常監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ニューラルネットワーク(ニューロコンピュータ)の分類機能を利用することにより、検査対象から得られる対象信号を分類する技術が知られている。この種の技術は、音声の認識や機器が正常に動作しているか機器に異常が生じているかを判定する異常監視装置などに用いられている。たとえば、この種の技術を採用した異常監視装置では、機器の動作音や機器の振動をセンサ部(トランスデューサ)により電気信号に変換してセンサ部の出力を対象信号に用い、対象信号の特徴を表す複数の要素からなる特徴ベクトルを抽出し、この特徴ベクトルをニューラルネットワークで分類する技術が種々提案されている。
【0003】
ニューラルネットワークには種々の構成が知られており、たとえば、競合学習型ニューラルネットワーク(自己組織化マップ=SOM)を用いて特徴ベクトルのカテゴリを分類することが提案されている。競合学習型ニューラルネットワークは、入力層と出力層との2層からなるニューラルネットワークであり、学習モードと検査モードとの2動作を行う。
【0004】
学習モードでは、教師信号を用いずに学習データを与える。学習データにカテゴリを与えておけば、出力層のニューロンにカテゴリを対応付けることができ、同種のカテゴリに属するニューロンからなるクラスタを形成することができる。したがって、学習モードでは、出力層のニューロンのクラスタにカテゴリを示すクラスタリングマップを対応付けることができる。
【0005】
検査モードでは、分類しようとする特徴ベクトル(入力データ)を学習済みの競合学習型ニューラルネットワークに与え、クラスタリングマップにおいて発火したニューロンが属するクラスタのカテゴリをクラスタリングマップに照合することによって、入力データのカテゴリを分類することができる(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−354111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のものは、信号入力部に用いるセンサの種類を変更したり、学習データを変更したりすれば、様々な用途に使用することができると考えられるが、学習データは信号入力部から取り込んだ信号を用いて生成しており、学習データのカテゴリを設定するために入力部を設けているものであるから、異常監視装置の規模が大きくなるという問題を有している。
【0007】
一方、この種の異常監視装置は、検査対象である各種装置や各種機器に組み込んで用いることが望ましく、特定用途向けであって検査対象に組み込むか付設して用いることのできる小型の異常監視装置が要望されている。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、ニューラルネットワークの重みベクトルの設定に必要な設定データを外部装置から受け取ることを可能とし、実使用時には外部装置とは独立して動作することで小型化することを可能とした異常監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、検査対象の動作を反映する電気信号を対象信号とし信号入力部により取り込んだ対象信号の特徴を表す特徴ベクトルを抽出する特徴抽出部と、ニューラルネットワークを用い各ニューロンに重みベクトルを設定した後に特徴抽出部により抽出した特徴ベクトルのカテゴリを分類するカテゴリ分類部と、カテゴリ分類部における重みベクトルの設定に必要な設定データを外部装置との間で授受するサービスインターフェイスとを一体に備え、設定データの受け取り後には外部装置とは独立して動作することを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記設定データは、前記カテゴリ分類部の各ニューロンに設定する重みベクトルであることを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明では、請求項1の発明において、カテゴリが既知である学習データを記憶する学習データ記憶部を備え、前記ニューラルネットワークは競合学習型ニューラルネットワークであって、前記カテゴリ分類部は、学習データ記憶部に記憶された学習データが与えられると各ニューロンに重みベクトルを設定する学習モードと、学習モードにより設定された重みベクトルを用いて特徴ベクトルのカテゴリを分類する検査モードとを有し、前記設定データは、学習データ記憶部に記憶する学習データであることを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれかの発明において、前記特徴抽出部は、電気信号のうち対象信号として取り出す範囲と、対象信号から抽出する特徴ベクトルの種類との少なくとも1要素を調節要素として選択可能であって、前記設定データは調節要素を選択するデータであることを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明では、請求項4の発明において、前記外部装置は、検査対象の動作を反映する電気信号を取り込む解析用信号入力部と、解析用信号入力部により取り込んだ電気信号を記憶する信号記憶部と、信号記憶部に記憶させた電気信号から対象信号として取り出す範囲を選択するとともに対象信号の特徴を表す特徴ベクトルを複数種類から選択して抽出する解析用特徴抽出部と、解析用特徴抽出部により抽出した特徴ベクトルを記憶する特徴ベクトル記憶部と、特徴ベクトル記憶部に格納した特徴ベクトルを用いて学習が行われるニューラルネットワークであって学習後には解析用特徴抽出部により抽出した特徴ベクトルのカテゴリを分類する解析用カテゴリ分類部と、検査対象の運転に伴って解析用信号入力部で取り込んだ電気信号について解析用カテゴリ分類部での分類結果を提示する提示手段とを備え、解析用特徴抽出部において電気信号から対象信号を取り出す範囲と対象信号から抽出する特徴ベクトルの種類との組み合わせのうち所望の分類結果が得られる組み合わせを前記特徴抽出部の調節要素として選択可能な範囲で選択し、選択した組み合わせを前記特徴抽出部に与えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明の構成によれば、外部装置との間で設定データを授受するサービスインターフェイスを備え、設定データの受け取り後には外部装置とは独立して動作するものであるから、設定データを外部装置から受け取った後には外部装置が不要であり、設定データを収集するための機能を外部装置として分離することができる。その結果、カテゴリ分類部に重みベクトルを設定するための設定データを収集する機能を持たせる必要がなく、構成が簡単になって小型化が可能な上に構成要素が削減されて低コストで作成することが可能になる。また、複数台の異常監視装置で外部装置を共用することが可能であるから、外部装置に持たせた機能を異常監視装置から分類することにより、複数台の異常監視装置を用いる場合に、共用化によるコストの削減効果が高くなる。さらに、学習データのカテゴリを設定するためのキーボードのような入力部を外部装置に設けておけばよいから、小型化が可能であって、検査対象に組み込んだり検査対象に付設したりすることが可能になる。
【0015】
請求項2の発明の構成によれば、カテゴリ分類部に設定する重みベクトルを設定データとしているから、カテゴリ分類部においては、与えられた重みベクトルを各ニューロンに設定するだけで学習モードによる学習が不要であり、外部装置から設定データを受け取った後にただちに使用することが可能になる。また、複数台の異常監視装置に対して同じ重みベクトルを設定することができるから、同仕様の複数台の検査対象に組み込む際に、各検査対象に組み込むか付設した異常監視装置のカテゴリ分類部の判断結果のばらつきを抑制することができる。
【0016】
請求項3の発明の構成によれば、外部装置から与えられる設定データが学習データであるから、カテゴリ分類部では学習データを用いた学習が必要になるが、複数台の異常監視装置において同じ学習データを共通に使用することができ、同じ学習データを用いて学習したカテゴリ分類部では、重みベクトルのばらつきが少ないと考えられるから、複数台の異常監視装置においてもばらつきの少ない判定結果が期待できる。
【0017】
請求項4の発明の構成によれば、電気信号から対象信号を取り出す範囲と、特徴ベクトルの種類との少なくとも1要素が調節要素になっている。対象信号の範囲は、時間の範囲、周波数の範囲、振幅の範囲などを含む。また、特徴ベクトルの種類は、周波数成分、振幅成分などを要素とする特徴ベクトルの種類を意味する。電気信号から対象信号を取り出す範囲、特徴ベクトルの種類のいずれか1つでも選択可能としておけば、検査対象の動作をよく反映している情報を抽出することができ、判定を容易が容易になって、判定精度の向上につながる。
【0018】
請求項5の発明の構成によれば、外部装置において電気信号を解析用信号入力部から取り込んで信号記憶部に記憶しておき、信号記憶部に記憶した電気信号について対象信号を取り出す範囲を選択し、また特徴ベクトルの種類を選択するから、様々な条件で特徴ベクトルを抽出することができる。様々な条件で抽出した特徴ベクトルをカテゴリ分類部に与えて分類した結果を評価することにより、所望の分類結果が得られる条件を容易に見つけだすことができる。また、得られた条件の組み合わせを異常監視装置の特徴抽出部で設定可能な範囲で選択しているから、異常監視装置において所望の分類結果を得るのに適した条件設定が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に説明する実施形態では、検査対象の動作によって生じる対象信号の特徴ベクトルにより、検査対象の動作が正常か異常かを判別する例を示す。また、検査対象としてはモータのような動力源を備える設備機器を想定するが、検査対象の種類はとくに問わない。
【0020】
本実施形態で説明する異常監視装置Aは、図1に示すように、教師なしの競合学習型ニューラルネットワーク(以下、単に「ニューラルネット」と呼ぶ)からなるカテゴリ分類部1を用いている。カテゴリ分類部1としてのニューラルネットは、図2に示すように、それぞれ入力層21と出力層22との2層からなり、出力層22の各ニューロンN2が入力層21のすべてのニューロンN1とそれぞれ結合された構成を有している。カテゴリ分類部1としてのニューラルネットは、逐次処理型のコンピュータで適宜のアプリケーションプログラムを実行することにより実現する場合を想定しているが、専用のニューロコンピュータを用いることも可能である。
【0021】
カテゴリ分類部1としてのニューラルネットの動作には、一般に、学習モードと検査モードとがあり、学習モードにおいて適宜の学習データを用いて学習した後に、検査モードにおいて実際の対象信号から生成した複数の要素からなる特徴ベクトル(入力データ)のカテゴリを分類する。
【0022】
入力層21のニューロンN1と出力層22のニューロンN2との結合度(重み係数)は可変であり、学習モードにおいて、学習データをカテゴリ分類部1に入力することによりカテゴリ分類部1を学習させ、入力層21の各ニューロンN1と出力層22の各ニューロンN2との重み係数を決める。言い換えると、出力層22の各ニューロンN2には、入力層21の各ニューロンN1との間の重み係数を要素とする重みベクトルが対応付けられる。したがって、重みベクトルは入力層21のニューロンN1と同数の要素を持ち、入力層21に入力される特徴ベクトルの要素の個数と重みベクトルの要素の個数とは一致する。
【0023】
一方、検査モードでは、カテゴリを判定すべき入力データを学習済みのカテゴリ分類部1の入力層21に与えると、出力層22のニューロンN2のうち、重みベクトルと入力データとのユークリッド距離が最小であるニューロンN2が発火する。学習モードにおいて出力層22のニューロンN2にカテゴリが対応付けられていれば、発火したニューロンN2の位置のカテゴリによって入力データのカテゴリを知ることができる。
【0024】
カテゴリ分類部1であるニューラルネットにおける出力層22の各ニューロンN2には後述する手順でカテゴリを対応付ける。また、本実施形態では、カテゴリ分類部1で分類すべきカテゴリは正常と異常との2種類としており、学習モードにおいて正常のカテゴリの学習データのみを入力する。つまり、検査モードにおいて与えられた入力データがカテゴリ分類部1に設定された正常のカテゴリに属さないときには、入力データは異常とみなされる。
【0025】
出力層22の各ニューロンN2のカテゴリには、学習データのカテゴリが反映され、多数個(たとえば、150個)の学習データを与えると、カテゴリ分類部1における出力層22のニューロンN2のうち学習データのカテゴリに対応するニューロンN2に、学習データとのユークリッド距離の小さい重みベクトルが設定される。つまり、学習後に当該学習データを与えることによって、このニューロンN2が発火する。
【0026】
ところで、カテゴリ分類部1により分類する対象信号は、設備機器(以下、単に「機器」という)Xの動作に伴って得られる電気信号であり、たとえば、機器Xの動作時に生じる振動を検出する振動センサYの出力を機器Xの動作を反映する電気信号として用いる。振動センサYとしては、加速度ピックアップを用いるものとする。この電気信号は信号入力部2に取り込まれる。振動センサYは、基本的には、機器Xの動作を検出するトランスデューサと、トランスデューサの出力を後段に送るためのフロントエンド(前置増幅器やフィルタなど)とにより構成される。トランスデューサとしては、機器Xの動作音を検出するマイクロホン、TVカメラ、匂いセンサなどの各種のものを単独または組み合わせて用いることができる。また、機器Xから発生する負荷電流などを電気信号として信号入力部2に取り込むことも可能である。信号入力部2に取り込まれた電気信号は、必要に応じて周波数帯域を制限するなどしてノイズを低減させる前処理が行われた後、特徴抽出部3に与えられ特徴ベクトルが抽出される。
【0027】
特徴抽出部3は、電気信号のうち機器Xの動作を反映している範囲を対象信号として切り出す機能を有している。機器の動作を反映している範囲としては、機器Xが動作している期間であることが重要である。したがって、機器Xの動作に同期したタイミング信号(トリガ信号)を用いたり、対象信号の波形の特徴(たとえば、ひとまとまりの対象信号の開始点と終了点)を用いたりすることによって、信号入力部2の出力から対象信号の切り出し(セグメンテーション)を行うタイミングを決める。たとえば、機器Xから出力される対象信号が周期性を有している場合には、セグメンテーションにより周期毎に分割し、周期毎の特徴ベクトルを抽出する。信号入力部2または特徴抽出部3では対象信号をデジタル信号に変換する。
【0028】
対象信号の範囲を時間で規定した例を図3に示す。図3(a)は機器Xからトリガ信号が発生した時刻t0を開始時刻とし、トリガ信号の発生から一定時間T1が経過した時刻t1を対象信号の終了時刻として切り出す例を示している。このような対象信号は、機器Xからトリガ信号が発生する場合であって、機器Xの動作速度が一定である場合に適している。図3(b)は電気信号の振幅変化を用いて対象信号を切り出す開始時刻t2と終了時刻t3とを決定する例を示している。このような対象信号は、機器Xからトリガ信号が発生しない場合でも切り出すことができ、また機器Xの動作速度が変化する場合でも切り出すことができる。図3(c)は機器Xからトリガ信号が発生した時刻t0を開始時刻とし、対象信号の終了時刻t3は振幅変化を用いて決定している例を示している。この対象信号は、機器Xがトリガ信号を発生し、かつ機器Xの動作速度が変化する場合に用いることができる。
【0029】
特徴抽出部3において対象信号として切り出す範囲は、時間の範囲だけではなく、周波数の範囲や振幅の範囲であってもよく、適宜に範囲を決めて対象信号を切り出すことにより、機器Xの動作の特徴が取り出しやすくなる。特徴抽出部3では、電気信号から対象信号として取り出す範囲を決める方法は、後述する設定データにより指示される。
【0030】
対象信号の範囲を周波数で規定した例を図4に示す。図4(a)は可聴周波数の全域を対象信号とする例であって、特徴ベクトルの要素は図4(b)のように可聴周波数の全域に分布することになる。また、図4(c)は可聴周波数の低周波域を対象信号とする例であって、図4(d)のように特徴ベクトルの要素は可聴周波数の低周波域にのみになる。同様にして図4(e)のように可聴周波数の高周波域を対象信号とすれば、図4(f)のように特徴ベクトルの要素も可聴周波数の高周波域にのみになる。
【0031】
セグメンテーションを行った後の対象信号から抽出する特徴ベクトルは、機器Xの動作を反映する情報であり、対象信号に含まれる情報のうちから適宜に抽出される。どの情報に着目するかは選択可能であり、対象信号を切り出す範囲と同様に設定データにより選択可能になっている。特徴ベクトルとしては、複数の周波数帯域ごとのパワー(周波数成分)を抽出し、周波数成分を要素としたベクトルを特徴ベクトルに用いることができる。周波数成分の抽出には、FFT(高速フーリエ変換)の技術、あるいは多数個のバンドパスフィルタからなるフィルタバンクを用いる。どの周波数帯域のパワーを特徴ベクトルの要素に用いるかは、対象とする機器Xや抽出しようとする異常に応じて適宜に選択される。つまり、周波数帯域は設定データにより選択される。
【0032】
特徴抽出部3では、対象信号を切り出す範囲(あるいはルール)と、特徴ベクトルの種類(どの周波数を要素とするか)との少なくとも一方は調節可能な調節要素であり、調節要素について複数個の選択肢から選択可能になっている。調節要素の選択は後述する設定データによりなされる。
【0033】
特徴抽出部3から周期毎に得られた特徴ベクトルは、特徴ベクトルの抽出のたびにカテゴリ分類部1に与えられる。ニューラルネットからなるカテゴリ分類部1を使用可能とするには、カテゴリ分類部1における出力層22の各ニューロンN2にそれぞれ重みベクトルを設定する必要がある。上述のように、カテゴリ分類部1のニューロンN2に重みベクトルを設定した後に、特徴抽出部3で抽出した特徴ベクトルをカテゴリ分類部1に与えると、特徴ベクトルとのユークリッド距離が最小である重みベクトルが設定されているニューロンN2が発火するから、各ニューロンN2にカテゴリを設定しておくことにより、特徴ベクトルのカテゴリを分類することができる。ここに、出力層22に対応付けたクラスタリングマップを設け、クラスタリングマップにおいて各ニューロンN2にカテゴリを対応付けておけば、発火したニューロンのカテゴリを知ることができる。
【0034】
ところで、本実施形態の特徴は、カテゴリ分類部1の各ニューロンN2に対応付ける重みベクトルを外部装置Bから受け取るサービスインターフェイス4を備えていることであって、サービスインターフェイス4を通して外部装置Bから受け取った重みベクトルは、データ設定部5がカテゴリ分類部1の各ニューロンN2に設定する。カテゴリ分類部1、信号入力部2、特徴抽出部3、サービスインターフェイス4、データ設定部5は、一つのパッケージあるいは器体に収納され、一体に設けられる。また、重みベクトルがカテゴリ設定部1に設定された後には、サービスインターフェイス4から外部装置Bを取り外すことができ、外部装置Bとは独立して単独で動作することができる。
【0035】
本実施形態の異常監視装置Aは、カテゴリ分類部1に用いているニューラルネット1を学習する機能は備えず、各ニューロンN2に対して重みベクトルを直接設定しなければならない。したがって、重みベクトルの生成は外部装置Bにより行い、サービスインターフェイス4を用いて外部装置Bから設定データとして転送するようにしてある。
【0036】
外部装置Bは、汎用のコンピュータで適宜のプログラムを実行することにより実現することができるが、以下に説明する機能を実現する専用装置を用いることも可能である。外部装置Bは、図5に示すように、通信インターフェイス14を備え、接続線Cを介して通信インターフェイス14をサービスインターフェイス4に接続することにより、外部装置Bと異常監視装置Aとの間で通信が可能になる。
【0037】
外部装置Bには、異常監視装置Aのカテゴリ分類部1と同構成を有する解析用カテゴリ分類部11と、機器Xの振動を検出する振動センサYからの電気信号を取り込む解析用信号入力部12と、解析用信号入力部12により取り込んだ電気信号から対象信号を切り出すとともに、対象信号の特徴を表す特徴ベクトルを抽出する解析用特徴抽出部13とが設けられている。解析用特徴抽出部13は、電気信号から対象信号を切り出す範囲を選択することができ、また対象信号の特徴を表す特徴ベクトルの種類を選択することができる。
【0038】
解析用特徴抽出部13における対象信号の範囲および特徴ベクトルの種類は、選択入力部13aによって選択することができ、選択入力部13aにより選択した内容が、異常監視装置Aの特徴抽出部3に与える設定データの内容になる。ただし、外部装置3の選択入力部13aは種々の異常監視装置Aに対応できるように広範囲の選択が可能であり、通常は異常監視装置Aの特徴抽出部3で選択可能な範囲を超える選択が可能になっている。したがって、外部装置Bの解析用特徴抽出部13では、異常監視装置Aの特徴抽出部3の仕様に合わせて選択範囲を制限することにより、異常監視装置Aに適合した範囲の選択を行う。選択範囲の制限は、選択入力部13aにおいて異常監視装置Aの型番を指定することにより指示する。
【0039】
解析用特徴抽出部13で抽出された特徴ベクトルは、既知のカテゴリを付与して特徴ベクトル記憶部15に格納される。特徴ベクトル記憶部15に格納される特徴ベクトルに付与するカテゴリは、カテゴリ入力部15aを用いて与えられる。ここに、選択入力部13aとカテゴリ入力部15aとはキーボードやマウスのような入力装置を共用して実現される。
【0040】
ところで、機器Xの特定の異常(たとえば、ハウジング内への異物混入によるモータの異音やモータの軸受の油切れなど)に対応した特徴ベクトルは、比較的容易に得ることができるが、様々な異常に対応した特徴ベクトルは得るのが困難な場合が多く、また予期しない異常に対してはカテゴリの設定も困難である。したがって、本実施形態では、機器Xの動作が正常である場合に得られる特徴ベクトルに対してのみ正常のカテゴリを付与している。言い換えると、正常のカテゴリが付与されない特徴ベクトルは異常のカテゴリに帰属することになる。このようにして特徴ベクトル記憶部15には、正常のカテゴリを付与した特徴ベクトルと、カテゴリを付与していない特徴ベクトルとが格納される。
【0041】
解析用カテゴリ分類部11は、異常監視装置Aのカテゴリ分類部1と同様に、競合学習型ニューラルネットワークを用いて構成されており、異常監視装置Aでは出力層22のニューロンN2に重みベクトルを直接設定していたから学習が不要であったが、外部装置Bでは解析用カテゴリ分類部11の出力層のニューロンに重みベクトルを設定するために学習が必要である。つまり、解析用カテゴリ分類部11の動作には学習モードと検査モードとがあり、まず学習モードにおいて重みベクトルを設定することが必要である。
【0042】
学習モードにおいては、特徴ベクトル記憶部15に格納された特徴ベクトルのうちカテゴリが正常である特徴ベクトルのみを解析用カテゴリ分類部11に学習データとして入力する。出力層のニューロンが20〜40個程度の競合学習型ニューラルネットワークでは、同カテゴリの特徴ベクトルを学習データとして適数個(たとえば、150個)入力することにより、カテゴリを分類するための重みベクトルを各ニューロンに設定することができる。また、正常のカテゴリを有する特徴ベクトルを与えたときに、当該特徴ベクトルと重みベクトルとのユークリッド距離が規定の閾値以下になるニューロンに正常のカテゴリを設定する。
【0043】
重みベクトルが設定された後は、解析用カテゴリ分類部11を検査モードとし、特徴ベクトルを与えることで正常と異常とのカテゴリの分類が可能になる。ここで、本実施形態では、解析用カテゴリ分類部11において正常に分類されない特徴ベクトルは、異常に分類することになる。実際の分類にあたっては入力した特徴ベクトルと出力層のニューロンに設定されている重みベクトルとのユークリッド距離を求め、ユークリッド距離が最小になるニューロンに設定されているカテゴリが正常であれば特徴ベクトルを正常に分類する。また、正常のカテゴリに属するニューロンの重みベクトルに対してユークリッド距離が規定した閾値以上であるか、ユークリッド距離が最小になったニューロンに正常のカテゴリが設定されていないときには、入力された特徴ベクトルを異常に分類する。
【0044】
検査モードにおいて解析用カテゴリ分類部11に入力する特徴ベクトルは、カテゴリが既知であるものを用いる。つまり、特徴ベクトル記憶部15に格納されている特徴ベクトルを用いる。解析用カテゴリ分類部11において分類された結果は、解析用カテゴリ分類部11の出力層の各ニューロンに領域を対応付けたクラスタリングマップなどの提示手段16によって利用者に提示される。提示手段16としてクラスタリングマップを用いる場合には、ディスプレイ装置の画面にクラスタリングマップを表示し、クラスタリングマップ内の領域をニューロンに対応付けておき、正常のカテゴリのニューロンが発火するときには、クラスタリングマップで正常に対応する領域においてニューロンの発火を示す表示を行う。
【0045】
ところで、解析用特徴抽出部13において対象信号の範囲や特徴ベクトルの種類を選択する際に、入力された電気信号が異なっていると、解析用カテゴリ分類部11での分類結果の相違が、対象信号の範囲や特徴ベクトルの種類の相違によって生じているか、電気信号自身の相違によって生じているかを区別することができない。そこで、解析用信号入力部12と解析用特徴抽出部13との間には、電気信号を記憶する信号記憶部17が設けられている。
【0046】
解析用特徴抽出部13では、信号記憶部17に格納された電気信号を繰り返して用いることにより、同じ電気信号について対象信号の範囲や特徴ベクトルの種類を変更して特徴ベクトルを抽出することが可能になる。つまり、対象信号の範囲や特徴ベクトルの種類の変更による解析用カテゴリ分類部11での分類結果の変化を比較するのが容易になり、提示手段16に示された結果を確認することで、対象信号の範囲と特徴ベクトルの種類との組み合わせについて分類に適した組み合わせを選択することが可能になる。ただし、この組み合わせは、異常監視装置Aの特徴抽出部3における調節要素の選択可能な範囲内で選択される。
【0047】
以上説明したように、外部装置Bでは、信号記憶部17に記憶した電気信号から解析用特徴抽出部13において対象信号を切り出すとともに対象信号の特徴ベクトルを抽出して特徴ベクトル記憶部15に記憶させる。さらに、解析用カテゴリ分類部11を学習モードとし、特徴ベクトル記憶部15に格納した特徴ベクトルを学習データに用いて解析用カテゴリ分類部11の学習を行った後に、特徴ベクトル記憶部15に格納した特徴ベクトルを用いて解析用カテゴリ分類部11での分類結果を提示手段16に提示させるのである。解析用特徴抽出部11における対象信号の範囲と特徴ベクトルの種類とを変化させ、提示手段16に提示される分類結果が所望の状態になったときに、そのときの対象信号の範囲と特徴ベクトルの種類との組み合わせを重みベクトルとともに設定データとするのである。
【0048】
上述したように外部装置Bは異常監視装置Aとは通信可能であって、外部装置Bにおいて上述の手順で決定した設定データを異常監視装置Aに送ることにより、異常監視装置Aの特徴抽出部3における対象信号の範囲と特徴ベクトルの種類とを規定し、またカテゴリ分類部1の重みベクトルを設定する。設定データを特徴抽出部3およびカテゴリ分類部1に設定する処理はデータ設定部5が行う。なお、外部装置Bは、異常監視装置Aに設定されている設定データを読み込む機能も有しており、この機能によって、異常監視装置Aにすでに設定されている設定データを用いて設定データを調節したり、他の異常監視装置Aに設定データを設定したりすることができる。
【0049】
(実施形態2)
実施形態1では、異常監視装置Aのカテゴリ分類部1が学習する機能を備えず、重みベクトルを外部装置Bから設定データとして受け取るものであったが、本実施形態は、異常監視装置Aのカテゴリ分類部1が外部装置Bの解析用カテゴリ分類部11と同様に学習モードと検査モードとを有しているものとする。したがって、外部装置Bは設定データとしてカテゴリ分類部1に重みベクトルを与えるのではなく、解析用カテゴリ分類部11を学習させる際の学習データとして用いた特徴ベクトルを設定データとして異常監視装置Aに与えるようにしてある。
【0050】
図6に示すように、異常監視装置Aには、外部装置Bから受け取った特徴ベクトルを学習データに用いることができるように、学習データ記憶部6を設けてあり、外部装置Bから受け取った特徴ベクトルは学習データ記憶部6に格納される。学習データ記憶部6に格納する特徴ベクトルは、外部装置Bにおいて所望の分類結果が得られたときのものを用いる。
【0051】
実施形態1の構成では、異常監視装置Aは外部装置Bから設定データを受け取り、データ設定部5が設定データを各部に設定すれば異常監視装置Aを使用することができたが、本実施形態では、外部装置Bから設定データを受け取るだけでは異常監視装置Aを用いることができない。本実施形態では、異常監視装置Aが受け取った設定データのうち学習データ記憶部6に格納された特徴ベクトルを学習データに用い、カテゴリ分類部1を学習モードとして学習データにより学習を行うことにより重みベクトルを設定する。
【0052】
本実施形態はカテゴリ分類部1が学習モードを有し、学習モードにおいて重みベクトルを設定する点で実施形態1の構成と異なるものであるが、重みベクトルの設定後には、検査モードとし、信号入力部2で取り込んだ電気信号の特徴ベクトルとカテゴリ分類部1に与えることにより、電気信号のカテゴリを分類することができる。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施形態1を示すブロック図である。
【図2】同上に用いるニューラルネットの概略構成図である。
【図3】同上に用いる特徴抽出部の動作例を示す図である。
【図4】同上に用いる特徴抽出部の動作例を示す図である。
【図5】同上に用いる外部装置の構成例を示すブロック図である。
【図6】実施形態2を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0054】
1 カテゴリ分類部
2 信号入力部
3 特徴抽出部
4 サービスインターフェイス
5 データ設定部
6 学習データ記憶部
11 解析用カテゴリ分類部
12 解析用信号入力部
13 解析用特徴抽出部
14 通信インターフェイス
15 特徴ベクトル記憶部
16 提示手段
17 信号記憶部
21 入力層
22 出力層
A 異常監視装置
B 外部装置
N1 ニューロン
N2 ニューロン
X 機器
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【出願日】 平成18年10月12日(2006.10.12)
【代理人】 【識別番号】100087767
【弁理士】
【氏名又は名称】西川 惠清

【識別番号】100085604
【弁理士】
【氏名又は名称】森 厚夫


【公開番号】 特開2008−96305(P2008−96305A)
【公開日】 平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願番号】 特願2006−278978(P2006−278978)